説明

ドライブプレート回転装置

【課題】簡易かつ安価な装置構成で、確実に所望する回転角度を保持しつつ、ドライブプレートを回転させることができるドライブプレート回転装置を提供する。
【解決手段】回転が入力される入力軸2bと、該入力軸2bに入力された回転を減速して出力する出力軸2cと、を備える減速機2と、入力軸2bに回転を入力するための駆動軸3cを備え、該駆動軸3cの回転角度を制御可能に構成される回転駆動装置3と、を備え、エンジン51のクランクシャフト52の一端部(締結ボルト52b)に、ソケット部2dを連結して、回転駆動装置3によって、駆動軸3cを所定の角度で回転させることによって、ドライブプレート55を、所定の角度(例えば60度ごと)で回転させるためのドライブプレート回転装置1であって、減速機2を、出力軸2cに回転を入力しても該出力軸2cおよび入力軸2bが回転しない特性(セルフロック特性)を有する減速機2により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンにトルクコンバータを組み付けるときに使用するドライブプレートを回転させるための装置であるドライブプレート回転装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにトルクコンバータを組み付けるときには、ドライブプレートに形成されるトルクコンバータを締結するためのボルト孔を、サービスホール(覗き穴)に対面する(視認できる)位置に配置する必要があるため、所定の回転角度ごと(例えば、60度ごと)にドライブプレートを回転させる必要が生じる。しかしながら、ドライブプレートを軸支するクランクシャフトには、ピストンの圧縮抵抗等に起因するクランクシャフトの回転角度に応じた反力が生じるため、このような反力に抗してドライブプレートの回転角度を確実に保持する必要がある。
【0003】
このため、従来、クランクシャフトから生じる反力に抗する方法としては、モーターと減速機を用いる技術が一般的に知られている。そして、モーターが有するブレーキ力によって、前記反力に抗することができるようにするため、減速比が非常に大きい減速機を用いて、入力軸に作用する反力を低減させる構成としている。この場合、減速機の減速比が大きいため、高回転型のモーターを使用して作業効率を確保するようにしている。
【0004】
また、ボルトの挿入位置を割り出しつつ、エンジンのクランクシャフトを回転させることができる装置が知られており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
特許文献1に開示された従来技術では、クランクシャフトを回転駆動する駆動軸上に、外周に等間隔で切欠部を形成した円盤状のインデックスプレートを固設するとともに、切欠部に挿通可能なストッパを備える構成とし、所定の回転角度において、切欠部にストッパを挿通することによって、クランクシャフトの反力に抗してドライブプレートの回転角度を保持する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−56930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の一般的な方法では、高回転型のモーターと減速比の非常に大きい減速機を使用する構成であるため、装置コストが増大するという問題があった。
また、特許文献1に開示されている従来技術では、ドライブプレートを回転および停止させる度に、反力を負担するストッパを抜き差しする工程を経なければならず、装置構成や作業の複雑化、および、装置の大型化、専用化等が生じていた。
【0007】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、簡易かつ安価な装置構成で、確実に所望する回転角度を保持しつつ、ドライブプレートを回転させることができるドライブプレート回転装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、回転が入力される入力軸と、該入力軸に入力された回転を減速して出力する出力軸と、を備える減速機と、前記入力軸に回転を入力するための駆動軸を備え、該駆動軸の回転角度を制御可能に構成される回転駆動装置と、を備え、エンジンのクランクシャフトの一端部に、前記出力軸を連結して、前記回転駆動装置によって、前記駆動軸を所定の角度で回転させることによって、前記クランクシャフトの他端部に備えられるドライブプレートを、前記所定の角度で回転させるための装置であるドライブプレート回転装置であって、前記減速機を、前記入力軸に回転を入力すると前記出力軸が回転するが、前記出力軸に回転を入力しても該出力軸および前記入力軸が回転しない特性であるセルフロック特性を有する減速機によって構成するものである。
【0010】
請求項2においては、前記セルフロック特性を有する減速機の、前記入力軸と前記出力軸を回転可能に支持する部位である本体部を、前記回転駆動装置と一体的に固定する状態と、前記本体部の前記回転駆動装置に対する固定を解除した状態と、を切り換えるロック解除装置を備えるものである。
【0011】
請求項3においては、前記セルフロック特性を有する減速機を、前記入力軸と前記出力軸を同軸上に配置するものにより構成するものである。
【0012】
請求項4においては、前記回転駆動装置を、ナットを締結するための汎用工具であるナットランナーにより構成するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、ドライブプレートの回転角度を精度良く保持することができるドライブプレート回転装置を、簡易に構成することができる。
【0015】
請求項2においては、出力軸がクランクシャフトから受ける反力を容易に開放することができ、ドライブプレート回転装置をエンジンから容易に引き離すことができる。
【0016】
請求項3においては、ドライブプレート回転装置を、コンパクトに構成することができる。
【0017】
請求項4においては、ドライブプレート回転装置を、安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】エンジンに対するドライブプレート回転装置の配置状態を示す側面模式図。
【図2】ドライブプレートとトルクコンバータの締結部位を示す斜視模式図。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置の全体構成を示す模式図、(a)側面模式図、(b)平面模式図。
【図4】本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置に備えられる減速機におけるセルフロック特性の説明図。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置の全体構成を示す模式図、(a)側面模式図、(b)正面部分模式図。
【図6】本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置に備えられる減速機におけるセルフロック特性の説明図。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置に備えられるロック解除装置の作動状況を示す模式図、(a)側面模式図、(b)正面部分模式図。
【図8】本発明の第三の実施形態に係るドライブプレート回転装置の全体構成を示す模式図、(a)側面模式図、(b)正面部分模式図。
【図9】ドライブプレート回転装置によるドライブプレートの回転結果を示す図、(a)本発明に係るドライブプレート回転装置の測定結果を示す図、(b)従来のドライブプレート回転装置の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、エンジンとトルクコンバータの組み付け作業の概要について、図1および図2を用いて説明をする。
エンジンとトルクコンバータの組み付け作業を行う場合には、図1に示す如く、架台50上に、エンジン51をクランクシャフト52の軸心が水平となる所定の姿勢で配置しておく。
また、架台50上には、トルクコンバータ53を、エンジン51に対してカバー53aを締結して、所定の姿勢で配置しておく。
【0020】
このような配置状態において、エンジン51の下部に形成される開口部であるサービスホール51aからは、カバー53a内に配置されたドライブプレート55を視認することができる。また、ドライブプレート55の裏側には、トルクコンバータ53におけるドライブプレート55との接続部である接続プレート56が配置されており、ドライブプレート55と接続プレート56を締結することによって、エンジン51の動力をトルクコンバータ53に伝達する構成としている。
【0021】
そして、図2に示す如く、エンジン51とトルクコンバータ53を組み付ける作業では、このサービスホール51aから、ボルト54を1本ずつ挿入して、ドライブプレート55と接続プレート56を1箇所ずつ締結して行うようにしている。
本実施形態に示すドライブプレート55の表面には、ドライブプレート55の回転軸心を中心とする同一円上の60度ずつ角度が異なる位置に、合計6箇所のボルト孔55a・55a・・・が形成されている。
また、接続プレート56の表面には、該接続プレート56の回転軸心を中心とする同一円上の60度ずつ角度が異なる位置に、ドライブプレート55のボルト孔55a・55a・・・に対応する合計6箇所のナット孔56a・56a・・・が形成されている。
そして、ボルト孔55aとナット孔56aを位置合わせしておき、ボルト孔55aにボルト54を挿通するとともに、該ボルト54をナット孔56aに螺合させることによって、ドライブプレート55と接続プレート56を締結するようにしている。
【0022】
そして、ドライブプレート55を60度ずつ回転させて、ボルト孔55a・55a・・・をサービスホール51aに対面する所定の位置に配置するために、本発明に係るドライブプレート回転装置を用いるようにしている。
即ち、ドライブプレート回転装置には、ドライブプレート55を精度良く60度ごとに回転させることができる機能を有し、かつ、ドライブプレート55を回転させる際にクランクシャフト52において生じる反力に抗し得る機能を有することが求められる。
【0023】
本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置1は、図1に示すように、クランクプーリー52aの締結ボルト52bを利用してクランクシャフト52の前端部(即ち、図1における左端部)に接続して使用する構成としている。
即ち、ドライブプレート回転装置1は、クランクシャフト52を回転させることによって、ドライブプレート55を回転させることができる装置であり、さらに、ドライブプレート回転装置1により、クランクシャフト52の回転角度を調整することによって、ドライブプレート55の回転角度を調整することができる装置である。
このため、ドライブプレート回転装置1は、クランクシャフト52の回転角度を精度良く保持しつつ回転させるための用途にも使用することができる。
【0024】
次に、本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置について、図3および図4を用いて説明をする。
図3(a)(b)に示す如く、本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置1は、減速機2、回転駆動装置3、支持スタンド4等を備えている。
【0025】
減速機2は、本体部2a、入力軸2b、出力軸2c等を備えており、入力軸2bに入力された回転を本体部2a内の調整機構によって減速して、出力軸2cから回転出力を行うものである。
出力軸2cの端部には、締結ボルト52bに対応する凹形状を有するソケット部2dを付設している。
そして、ソケット部2dに締結ボルト52bを嵌合させることによって、クランクシャフト52とドライブプレート回転装置1を接続する構成としている。
【0026】
ここで、本発明に係るドライブプレート回転装置に使用される減速機は、入力軸側に回転を入力すると、出力軸は減速されて回転するが、出力軸側に回転を入力しても、出力軸が前記調整機構によりロックされて回転せず、入力軸には回転が伝達されない特性(以下、セルフロック特性と呼ぶ)を備えている。
【0027】
図3(a)(b)および図4に示す如く、本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置1では、セルフロック特性を有する減速機として、ウォームギア5(ウォーム5aとウォームホイール5bの組合せ)からなる調整機構を備えた減速機2を採用する構成としている。また、減速機2は、入力軸2bと出力軸2cが同一軸心上にはなく、入力軸2bの方向と出力軸2cの方向が、段違いで90度方向転換される構成としている。
【0028】
減速機2は、図4に示すように、入力軸2bを入力側として軸廻りに回転させると、該入力軸2b上に配設されたウォーム5aが回転され、さらに、出力軸2c上に軸支されるとともにウォーム5aに噛合するウォームホイール5bが回転される。そして最終的には、ウォームホイール5bを軸支している出力軸2cが回転される。
【0029】
一方、出力軸2cを入力側として軸廻りに回転させようとしても、該出力軸2cはウォームホイール5bがウォーム5aにより係止されるため、出力軸2cを回転させることができず、このため、入力軸2bも回転されない構成としている。
減速機2では、ウォーム5aのねじり角を安息角よりも小さくすることによってセルフロック特性を実現している。
【0030】
図3(a)(b)に示す如く、回転駆動装置3は、入力軸2bを所定の回転角度で回転させるための装置であり、モーター部3aと制御盤3bを備えている。
モーター部3aは駆動軸3cを備えており、該駆動軸3cと入力軸2bを接続部材3dによって同一軸心上で相対回転不能に固定する構成としている。
【0031】
そして、出力軸2cの回転角度が所望する回転角度となるように、駆動軸3cを所定の回転角度で回転させる構成としている。
尚、本実施形態では、モーター部3aとしては、駆動軸3cの回転角度が制御可能なサーボ機構を備える汎用的なサーボモーターを採用し、また、制御盤3bとしては、当該サーボ機構を制御するために個別の回路設計等がなされた制御盤を採用する構成としている。
【0032】
支持スタンド4は、減速機2および回転駆動装置3を、所定の位置・姿勢で支持するための装置であり、減速機2と回転駆動装置3を一体的に支持するための支持部4aを備えている。また、支持スタンド4は、該支持スタンド4自身を床上で移動可能とするためのキャスター等の手段を備える基台部4bを備えている。
さらに、支持部4aは、基台部4bに対して、鉛直軸方向に変位させることができる昇降装置4cを介して支持されており、減速機2および回転駆動装置3を上下に一体的に変位させて、出力軸2cの軸心高さを、エンジン51のクランクシャフト52の軸心高さに一致させるように調整することができる構成としている。
【0033】
尚、本実施形態では、ドライブプレート回転装置1を支持スタンド4によって、床上から支持する態様としているが、本発明に係るドライブプレート回転装置の構成をこれに限定するものではなく、例えば、ホイストやウインチ等を用いて、吊り下げて支持する態様とすることも可能である。
【0034】
次に、本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置について、図5〜図7を用いて説明をする。
図5に示す如く、本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置11は、減速機12、回転駆動装置3、支持スタンド14、ロック解除装置16等を備えている。
即ち、本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置11は、本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置1と、回転駆動装置3等の構成は共通しているが、減速機12の構成が相違しており、減速機12に対応する支持スタンド14を採用するとともに、新たにロック解除装置16を備える構成としている。
【0035】
減速機12は、本体部12a、入力軸12b、出力軸12c等を備えており、入力軸12bに入力された回転を本体部12a内の調整機構(図示せず)によって減速して、出力軸12cから回転出力を行うものである。
【0036】
ここで、本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置11は、セルフロック特性を有する減速機として、図6に示すような入力軸12bと出力軸12cが同一軸心上に配置される(所謂、インラインタイプの)減速機12を採用する構成としている。また、本実施形態に係る減速機12としては、遊星歯車機構からなる調整機構(図示せず)によって、セルフロック特性を実現している減速機(例えば、商品名:Syoji Lock((有)庄司歯車エンジニアリング製))を採用している。
【0037】
また、減速機12は、入力軸12bと出力軸12cが同一軸心上に配置されるため、本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置11は、本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置1に比して、よりコンパクトな構成となっている。
【0038】
即ち、本発明の第二の実施形態に係る各ドライブプレート回転装置11においては、セルフロック特性を有する減速機12を、入力軸12bと出力軸12cを同軸上に配置するものにより構成するものである。
このような構成により、ドライブプレート回転装置11を、コンパクトに構成することができる。
【0039】
支持スタンド14は、減速機12および回転駆動装置3を、所定の位置・姿勢で支持するための装置であり、減速機12と回転駆動装置3を一体的に支持するための支持部14aを備えている。また、支持スタンド14は、該支持スタンド14自身を床上で移動可能とするためのキャスター等の手段を備える基台部14bを備えている。
さらに、支持部14aでは、基台部14bに対して、鉛直軸方向に変位させることができる昇降装置14cを介して支持されており、減速機12および回転駆動装置3を上下に一体的に変位させて、出力軸12cの軸心高さを、エンジン51のクランクシャフト52の軸心高さに一致させるように調整することができる構成としている。
【0040】
また、ドライブプレート回転装置11では、エンジン51に対するドライブプレート回転装置11の着脱を容易にするための機構であるロック解除装置16を備えている。
ドライブプレート回転装置11の使用時には、クランクシャフト52の回転によって生じる反力が出力軸12cに作用し、ソケット部12dと締結ボルト52bを引き離すのが容易でないという問題が生じる。
【0041】
図7に示す如く、ロック解除装置16は、減速機12と回転駆動装置3を一体的に固定している状態を保持したりあるいは解除したりすることができる装置であり、減速機12の本体部12aから突設されるローター12eと、該ローター12eを挟持可能な装置であって、回転駆動装置3と一体的に固設される一対の押圧装置16a・16aによって構成されている。押圧装置16aとしては、汎用的なエアシリンダ等を採用することができる。
【0042】
そして、各押圧装置16a・16aは押圧部16b・16bを備えており、各押圧部16b・16bによって、ローター12eを挟持することによって、減速機12と回転駆動装置3が一体化する構成としている。
そして、この減速機12と回転駆動装置3が一体化された状態では、減速機12の本体部12aは、入力軸12b廻りに回転させることはできない。
【0043】
一方、各押圧装置16a・16aの各押圧部16b・16bによるローター12eの挟持を解除した状態では、減速機12の本体部12aと回転駆動装置3が駆動軸3cおよび入力軸12bだけで接続された状態となり、減速機12の本体部12aを、入力軸12b廻りに正転逆転いずれにも回転させることが可能になる。
【0044】
このとき、減速機12の出力軸12cは常にセルフロックされた状態であるものの、本体部12aを回転させると、出力軸12cは本体部12aの回転に伴って回転される。尚、このとき出力軸12cは、本体部12aの回転に従って、本体部12aに対してその回転量に応じた相対回転もしている。
出力軸12cに、クランクシャフト52において生じる反力が作用している場合、当該反力が作用している方向に本体部12aを回転させることによって、出力軸12cに作用する反力を開放することができる。
【0045】
また、ロック解除装置16は、ドライブプレート回転装置11とエンジン51の引き離しを容易にする機能だけでなく、エンジン51に対するドライブプレート回転装置11の装着を容易にする機能をも発揮する。
ドライブプレート回転装置11をエンジン51に装着するときに、ローター12eを各押圧装置16a・16aによって挟持しない状態としておくことによって、本体部12aを、入力軸12b廻りに回転させながら、クランクシャフト52の締結ボルト52bと出力軸12c先端のソケット部12dの位相を合わせることが可能になり、エンジン51に対するドライブプレート回転装置11の装着がより容易になる。
【0046】
即ち、本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置11は、セルフロック特性を有する減速機12の入力軸12bと出力軸12cを回転可能に支持する本体部2aを、回転駆動装置3と一体的に固定する状態と、本体部2aの回転駆動装置3に対する固定を解除した状態と、を切り換えるロック解除装置16を備えるものである。
このような構成により、出力軸12cがクランクシャフト52から受ける反力を容易に開放することができ、ドライブプレート回転装置11をエンジン51から容易に引き離すことができる。
【0047】
尚、本実施形態では、ロック解除装置16を、各押圧装置16a・16a等によって構成しているが、本発明に係るドライブプレート回転装置に備えられるロック解除装置の構成をこれに限定するものではなく、回転駆動装置と減速機の本体部の固定および非固定を切り換え可能とする構成であればよく、種々の態様の装置構成を採用することができる。
【0048】
次に、本発明の第三の実施形態に係るドライブプレート回転装置について、図8を用いて説明をする。
図8に示す如く、本発明の第三の実施形態に係るドライブプレート回転装置21は、減速機12、回転駆動装置23、支持スタンド24、ロック解除装置16等を備えている。
即ち、本発明の第三の実施形態に係るドライブプレート回転装置21は、本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置11と、減速機12、ロック解除装置16等の構成は共通しているが、回転駆動装置23の構成が相違しており、また、回転駆動装置23に対応する支持スタンド24を採用する構成としている。
【0049】
回転駆動装置23は、入力軸12bを所定の回転角度で回転させるための装置であり、モーター部23aと制御盤23bを備えている。そして、本実施形態では、回転駆動装置23として、ナットを締結する用途に用いられるサーボモーターを備えた汎用装置(所謂、ナットランナー)を採用している。また、制御盤23bとしては、当該ナットランナーに付属する簡易な制御盤を採用する構成としている。
このような回転駆動装置23は、サーボ機構を有する汎用的なモーター部3aや専用設計の制御盤3b等からなる回転駆動装置3に比して、装置自体がコンパクトであり、また、安価である。
【0050】
モーター部23aは駆動軸23cを備えており、該駆動軸23cと入力軸12bを接続部材23dによって同一軸心上で相対回転不能に固定する構成としている。
そして、出力軸12cの回転角度が所望する回転角度となるように、駆動軸23cを所定の回転角度で回転させる構成としている。
【0051】
尚、本実施形態では、本発明の第二の実施形態に係るドライブプレート回転装置11の回転駆動装置3を回転駆動装置23に置き換えた態様としているが、本発明の第一の実施形態に係るドライブプレート回転装置1の回転駆動装置3を回転駆動装置23に置き換えることも可能である。
【0052】
支持スタンド24は、減速機12および回転駆動装置23を、所定の位置・姿勢で支持するための装置であり、減速機12と回転駆動装置23を一体的に支持するための支持部24aを備えている。また、支持スタンド24は、該支持スタンド24自身を床上で移動可能とするためのキャスター等の手段を備える基台部24bを備えている。
さらに、支持部24aでは、基台部24bに対して、鉛直軸方向に変位させることができる昇降装置24cを介して支持されており、減速機12および回転駆動装置23を上下に一体的に変位させて、出力軸12cの軸心高さを、エンジン51のクランクシャフト52の軸心高さに調整することができる構成としている。
【0053】
即ち、本発明の第三の実施形態に係るドライブプレート回転装置21においては、回転駆動装置23を、ナットを締結するための汎用工具であるナットランナーにより構成するものである。
このような構成により、ドライブプレート回転装置21を、安価に構成することができる。
【0054】
次に、本発明に係るドライブプレート回転装置を用いた場合のドライブプレートとトルクコンバータの一連の締結作業の状況について、図8および図9を用いて説明をする。
尚、本実施形態では、本発明の第三の実施形態に係るドライブプレート回転装置21を用いた場合の作業状況について例示して説明をする。
【0055】
図8に示す如く、クランクプーリー52aの締結ボルト52bに、出力軸12cのソケット部12dを嵌合させて、エンジン51に対してドライブプレート回転装置21を装着する。
【0056】
次に、回転駆動装置(ナットランナー)23を作動させて、駆動軸23cの回転角度を所定の回転角度とする。
【0057】
ここで、駆動軸23cの回転角度と出力軸12cの回転角度の関係と、そのときに駆動軸23cの回転の要する回転トルクの関係を、図9に示している。
図9(b)は従来の場合であり、図9(a)が、本実施形態の場合を示している。
この測定結果によると、図9(b)に示す従来の場合には、出力軸を0度から60度まで回転させるために必要な回転トルクは60N・m程度であり、また、回転を止めると、回転駆動装置の有するブレーキ力ではクランクシャフトの反力に抗して回転角度を保持することができず、出力軸の回転角度が、約37度変化してしまっている。
このように、ドライブプレート55を所望する角度に保持することができないと、効率よくエンジン51とトルクコンバータ53の組み付け作業を行うことができない。
【0058】
一方、図9(a)に示す本発明に係る場合には、出力軸12cを0度から60度まで回転させるために必要な回転トルクは2N・m程度であり、従来に比して、所要回転トルクが大幅に小さくなっている。これは、セルフロック特性を有する減速機12を採用したことにより、入力軸12b側には出力軸12c側に作用する反力が伝達されないためと考えられる。またこれにより、回転駆動装置23として、発生可能な回転トルクが従来の回転駆動装置3に比して小さいナットランナーを採用しても、ドライブプレート回転装置21を成立させることが可能になっている。
【0059】
また、回転駆動装置23による回転を止めても、出力軸12cの回転角度が変化しておらず、所定の角度(60度)を確実に保持している。これは、減速機12の有するセルフロック特性により、反力に抗して、出力軸12cの回転角度を確実に保持できているためであると考えられる。
【0060】
このように、本発明の第三の実施形態に係るドライブプレート回転装置21は、ナットランナーを回転駆動装置23として採用しており、本発明の第一および第二の実施形態に係る各ドライブプレート回転装置1・11に比してより簡易な構成としながら、ドライブプレート55を精度良く60度ごとに回転させることができ、かつ、ドライブプレート55を回転させる際にクランクシャフト52において生じる反力に耐え得るものとなっている。
【0061】
また、本発明の第一および第二の実施形態に係る各ドライブプレート回転装置1・11においても、簡易な構成で、本発明の第三の実施形態に係るドライブプレート回転装置21と同様に、ドライブプレート55を精度良く60度ごとに回転させることができ、かつ、ドライブプレート55を回転させる際にクランクシャフト52において生じる反力に耐え得るものとなっている。
【0062】
即ち、本発明の第一〜第三の実施形態に係る各ドライブプレート回転装置1・11・21は、回転が入力される入力軸2bあるいは入力軸12bと、該入力軸2bあるいは入力軸12bに入力された回転を減速して出力する出力軸2cあるいは出力軸12cと、を備える減速機2あるいは減速機12と、入力軸2bあるいは入力軸12bに回転を入力するための駆動軸3cあるいは駆動軸23cを備え、該駆動軸3cあるいは駆動軸23cの回転角度を制御可能に構成される回転駆動装置3あるいは回転駆動装置23と、を備え、エンジン51のクランクシャフト52の一端部(締結ボルト52b)に、ソケット部2dあるいはソケット部12dを連結して、回転駆動装置3あるいは回転駆動装置23によって、駆動軸3cあるいは駆動軸23cを所定の角度で回転させることによって、クランクシャフト52の他端部に備えられるドライブプレート55を、所定の角度(例えば60度ごと)で回転させるための各ドライブプレート回転装置1・11・21であって、減速機2あるいは減速機12を、出力軸2c側あるいは出力軸12c側に回転を入力しても該出力軸2cあるいは出力軸12cが回転しない特性(即ち、セルフロック特性)を有する減速機2あるいは減速機12によって構成するものである。
このような構成により、ドライブプレート55の回転角度を精度良く保持することができる各ドライブプレート回転装置1・11・21を、簡易に構成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ドライブプレート回転装置(第一の実施形態)
2 減速機
3 回転駆動装置
4 支持スタンド
11 ドライブプレート回転装置(第二の実施形態)
12 減速機
14 支持スタンド
16 ロック解除装置
21 ドライブプレート回転装置(第三の実施形態)
23 回転駆動装置
24 支持スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転が入力される入力軸と、該入力軸に入力された回転を減速して出力する出力軸と、を備える減速機と、
前記入力軸に回転を入力するための駆動軸を備え、該駆動軸の回転角度を制御可能に構成される回転駆動装置と、
を備え、
エンジンのクランクシャフトの一端部に、前記出力軸を連結して、
前記回転駆動装置によって、前記駆動軸を所定の角度で回転させることによって、
前記クランクシャフトの他端部に備えられるドライブプレートを、前記所定の角度で回転させるための装置であるドライブプレート回転装置であって、
前記減速機を、
前記入力軸に回転を入力すると前記出力軸が回転するが、前記出力軸に回転を入力しても該出力軸および前記入力軸が回転しない特性であるセルフロック特性を有する減速機によって構成する、
ことを特徴とするドライブプレート回転装置。
【請求項2】
前記セルフロック特性を有する減速機の、前記入力軸と前記出力軸を回転可能に支持する部位である本体部を、前記回転駆動装置と一体的に固定する状態と、
前記本体部の前記回転駆動装置に対する固定を解除した状態と、
を切り換えるロック解除装置を備える、
ことを特徴とする請求項1記載のドライブプレート回転装置。
【請求項3】
前記セルフロック特性を有する減速機を、
前記入力軸と前記出力軸を同軸上に配置するものにより構成する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のドライブプレート回転装置。
【請求項4】
前記回転駆動装置を、
ナットを締結するための汎用工具であるナットランナーにより構成する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のドライブプレート回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30328(P2012−30328A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172898(P2010−172898)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】