ドラフトチャンバ
【課題】開扉時の前面開口部に障害物があった場合でも、作業空間内の有害物質が開口の上部から外部に漏洩することを効果的に防止できるとともに、閉扉時の空気の流れを良好なものとしたドラフトチャンバを提供する。
【解決手段】扉2の枠部を構成する下部横サッシ6と縦サッシ7とを、中空材により構成して、互いに連通させ、上端部を筐体1の上部に取り付けた下方を向くガイド管10を、縦サッシ7に、扉2の上下方向の開閉移動時に気密を保って摺動しうるように内嵌または外嵌し、ガイド管10の上端部に接続した送風手段8によりガイド管10内に供給された空気を、縦サッシ7および下部横サッシ6の中空部を通って、下部横サッシ6に設けた送風口16、17より、筐体内に噴出しうるようにする。
【解決手段】扉2の枠部を構成する下部横サッシ6と縦サッシ7とを、中空材により構成して、互いに連通させ、上端部を筐体1の上部に取り付けた下方を向くガイド管10を、縦サッシ7に、扉2の上下方向の開閉移動時に気密を保って摺動しうるように内嵌または外嵌し、ガイド管10の上端部に接続した送風手段8によりガイド管10内に供給された空気を、縦サッシ7および下部横サッシ6の中空部を通って、下部横サッシ6に設けた送風口16、17より、筐体内に噴出しうるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラフトチャンバに関し、特にそのエアカーテンの吹付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
実験室などで使用されるドラフトチャンバは、その前面開口部に設けたガラスの扉を閉じた状態でも、上昇させて開いた状態でも、チャンバ本体を形成する筐体内の空気は、排気口へ有効に吸引されて、筐体内は常時負圧に維持されることにより、筐体内で発生したガスが、室内に漏出することを阻止し、作業者の安全性を確保できるようになっている。
【0003】
しかし、前面開口部に、空気の流れを阻害する障害物、例えば実験器具や、人の手などがあるときには、気流が乱れ、排気ダクトの吸引力が弱い場合には、筐体内に発生した有害ガスが外部に漏れ出るおそれがある。
【0004】
これに対処するべく、下記特許文献1、2には、前面開口部周縁から作業空間内に向って送風する機構を設けることにより、障害物があった場合でも、内方に向って空気を強制的に供給し、有害物質の漏洩を防止する機構が記載されている。
【特許文献1】特表2005−502856号公報
【特許文献2】特開2005−288243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献のいずれにおいても、前面開口部の全周に、空気を作業空間内に向って送風する機構が設けられている訳ではなく、特に、扉を開いた際の扉の直下の部位における安全性は十分とは言えない。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、扉を開いているときの前面開口部に障害物があった場合でも、作業空間内の有害物質が開口の上部から外部に漏洩することを効果的に防止できるとともに、扉を閉じたときの空気の流れを良好なものとした、ドラフトチャンバを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)前面が開口する筐体と、筐体の内部空間に連通するようにして、筐体に接続された排気ダクトと、筐体の前面開口部に、上下方向に開閉可能に配設された扉とを備えるドラフトチャンバにおいて、前記扉の枠部を構成する扉の下端部に配設した下部横サッシと、左右1対の縦サッシの少なくとも一方とを、中空部を有するものとするとともに、中空部同士が互いに連通するようにして、下部横サッシの側端に一方の縦サッシの下端部を結合し、上端部を筐体の上部に取り付けた下方を向くガイド管を、前記縦サッシに、前記扉の上下方向の開閉移動時に、気密を保って摺動しうるように内嵌または外嵌し、前記ガイド管の上端部に接続した送風手段によりガイド管内に供給された空気を、前記縦サッシおよび下部横サッシの中空部を通って、下部横サッシに設けた送風口より、筐体内、または下方に向かって噴出しうるようにする。
【0008】
(2)上記(1)項において、下部横サッシに、下方を向く送風口と、後方を向く送風口とを設け、かつ前記両送風口への縦サッシ側からの空気の供給を切り換える切換手段を設ける。
【0009】
(3)上記(2)項において、切換手段を、扉が予め定めた高さより下方に位置しているときは、下方を向く送風口への空気の供給を遮断して、後方を向く送風口のみへ空気を供給し、扉が予め定めた高さより上方に位置しているときは、下方を向く送風口のみへ空気を供給して、後方を向く送風口への空気の供給を遮断するものとする。
【0010】
(4)上記(2)または(3)項において、切換手段を、縦サッシから送られてきた空気を、下方を向く送風口と後方を向く送風口とのいずれかに選択的に供給するように切り換えるバタフライ弁と、扉が、下限位置より予め定めた高さまで上昇したとき、ガイド管の下端に当接して回動させられ、前記バタフライ弁を、空気を後方を向く送風口へ供給する後向噴出位置から、空気を下方を向く送風口へ供給する下向噴出位置へ切り換える作動片とを備えるものとする。
【0011】
(5)上記(4)項において、下部横サッシまたは縦サッシ内に、バタフライ弁または作動片を、後向噴出位置に向かって常時付勢する付勢手段を設ける。
【0012】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、ガイド管と縦サッシとの嵌合部に、隙間を閉塞する気密性シール部材を設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次の効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、扉を開いているときも、閉じているときも、扉の下端部における下部横サッシに設けた送風口より、空気を筐体内、または下方に向かって噴出させることができるので、特に、扉を開いているときに、空気を筐体内に向かって噴出させることにより、扉の下端部の後方に滞留している筐体内の空気を、排気ダクトに向かって誘導することができるとともに、空気を下方に向かって噴出させることにより、筐体の前面開口部にエアカーテンを形成することができ、このエアカーテンにより、筐体内の作業空間と、外部とを分離でき、前面開口部に障害物があった場合においても、作業空間内の有害物質が開口の上部から外部に漏洩することを、効果的に防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によると、切換手段を切り換えることにより、下部横サッシから噴出する空気を、下方に向けたり、後方に向けたりすることができるので、扉を開いているときは、空気を下方に向けて、エアカーテンを形成することにより、大きく開いた筐体の前面開口を、エアカーテンの作用で閉塞し、作業空間内の有害物質が開口の上部から外部に漏洩することを、確実に防止することができるとともに、扉を全閉位置または微開位置まで閉じたときは、空気を後方に向けて、扉の下端と開口の下縁との間隙から、作業空間内の有害物質が外部に漏洩するのを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によると、扉が予め定めた高さより下方に位置しているときは、切換手段により、下部横サッシから噴出する空気が後方に向けられ、扉が予め定めた高さより上方に位置しているときは、同じく下方に向けられるので、その都度、人の手により切換手段を操作する必要がなく、操作性が向上する。
【0016】
請求項4記載の発明によると、ガイド管と扉の昇降とを利用して、簡単な構造で、切換手段を、扉の昇降に連動して、自動的に切り換わるようにすることができる。
【0017】
請求項5記載の発明によると、扉が予め定めた高さより下方に移動したとき、バタフライ弁が、付勢手段の付勢力により、後向噴出位置に確実に復帰させられる。
【0018】
請求項6記載の発明によると、ガイド管と縦サッシとの嵌合部から空気が洩れるのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明のドラフトチャンバの一実施形態における閉扉状態の一部を縦断して示す外観斜視図、図2は、同じく、開扉状態の一部を縦断して示す外観斜視図である。
このドラフトチャンバは、チャンバ本体を構成する筐体1と、筐体1の前面開口部に、上下方向に開閉可能として配設した透明ガラス製の扉2とを備えている。
【0020】
筐体1は、天板1a、両側板1b(図1および図2においては、一方の側板のみを示す)、背面板1c、および作業台1dを備えており、それらと、前面に配設された扉2とにより囲まれた内部を、作業空間としている。作業台1cの下方の空間の前面は、観音開き式とした前面扉1eにより開閉可能に閉鎖され、その中には、配管や実験器具などが収納されている。
【0021】
筐体1の前面開口部の上部には、扉2を上昇させたときに、その前面を覆う前面板3が設けられており、また天板1aには、図示しない排気ダクトに接続された吸引孔4が設けられ、さらに、背面板1cの前面には、排気誘導用のバッフル板5が設けられている。
【0022】
扉2の下縁には、把手を兼用した下部横サッシ6が設けられ、扉2の左右両側縁には縦サッシ7(図1および図2には、一方の縦サッシのみを示している)が設けられており、扉2は、図示しない複数のプーリに案内されたワイヤを介して、バランスウエイトに連結され、軽力で上下動させうるようになっている。
【0023】
各サッシ6、7は、中空の角管状をなし、縦サッシ7の下端部は、下部横サッシ6の側端に、それらの中空部同士が連通するようにして、結合されている。縦サッシ7の下端は閉塞され、同じく上端は開口している。
【0024】
前面板3の背面側において、天板1aの上方には、送風手段であるエアポンプ8が配設されている。エアポンプ8の空気吐出端の左右には、1対のエアホース9が分岐して接続されている。各エアホース9の先端には、上端部が筐体1の両側上部に取り付けられて、下方を向くガイド管10の上端が接続されている。
各ガイド管10は、扉2の上下方向の開閉移動時に、気密を保って摺動しうるようにして、各縦サッシ7の上端開口より、その中空部内に内嵌され、エアポンプ8から吐出される空気を、縦サッシ7を通じて下部横サッシ6に供給しうるようにようになっている。
【0025】
図3は、ガイド管10と縦サッシ7の上端部の嵌合部分を示すものであり、各縦サッシ7の上端には、ゴムまたは軟質合成樹脂からなる気密性のシール部材11が嵌合固定されている。シール部材11の中央に設けた挿通孔11aの内面は滑性面となっており、この挿通孔11aには、ガイド管10の外周面が、気密状態で円滑に摺動可能として嵌合されている。ガイド管10の下端には、後述する作動片20を押圧するための押圧子10aが、下向きに突設されている。
【0026】
図4は、下部横サッシ6と縦サッシ7との接合部を分解して示すものであり、縦サッシ7の下部側面に形成された開口には、下部横サッシ6の側端部に設けた方形の隔壁12が気密に嵌合されている。
【0027】
隔壁12の上奥部には、縦サッシ7に連通する連通孔13が設けられ、中央には、軸孔14が設けられている。下部横サッシ6内の前後方向の中央には、軸孔14に接する高さまで起立する左右方向を向く隔壁15が一体に設けられている。
【0028】
隔壁15によって仕切られた下部横サッシ6の後面には、後方に向けて開口する多数の横長の送風口16が、左右方向に並べて設けられており、また隔壁15によって仕切られた下部横サッシ6の前部底面には、下方に向けて開口する多数の横長の送風口17が、左右方向に並べて設けられている。
【0029】
軸孔14には、左右方向を向く回動軸18が挿通されており、回動軸18における下部横サッシ6内の部分には、下部横サッシ6に内接し、かつ隔壁15と協働して、連通孔13から下部横サッシ6内に送給された空気を、送風口16、17のいずれか一方に選択的に送給するように切替えるバタフライ弁19が、一体的に形成されている。
【0030】
軸孔14を通って、縦サッシ7内に進入した回動軸18の軸端部には、バタフライ弁19と直交する方向を向く作動片20と、回動軸18に巻回され、一端が作動片20に、かつ他端が縦サッシ7の内面に係止されることにより、作動片20を、図5(a)および図6(a)に示すほぼ水平の後向噴出位置に向けて付勢する付勢手段であるねじりコイルばね21とが設けられている。
【0031】
回動軸18、バタフライ弁19、作動片20、およびガイド管10の下端に設けられた押圧子10a等により、後方を向く送風口16と下方を向く送風口17とへの縦サッシ側からの空気の供給を切り換える切換手段が形成されている。
【0032】
下部横サッシ6の上面および縦サッシ7の内側面には、ガラス板嵌め込み用の受けレール22が一体に設けられている。
【0033】
扉2が、筐体1の前面開口部を全閉位置(または微開位置)まで閉じた状態(図1参照)では、図5(a)および図6(a)に示すように、バタフライ弁19は、上方を向く後向噴出位置に位置し、連通孔13は下部横サッシ6の後面側の送風口16に連通し、エアポンプ8から送られてきた空気は、ガイド管10、縦サッシ7、連通孔13、下部横サッシ6、およびその後面側の送風口16を順次通り、筐体1の作業空間内において矢印に示すように、後方に向けて、水平に吹き出す。これにより、下部横サッシ6と筐体1の開口の下縁との間に多少の隙間が生じている場合であっても、その送風圧力により有害ガスが外部に漏洩することを防止することができる。
【0034】
扉2の閉止状態から、これを持上げ、筐体1の前面開口を開いた状態(図2参照)とすると、ガイド管10の押圧子10aが作動片20に当接して、作動片20は、ねじりコイルばね21の付勢力に抗して、下方を向く下向噴出位置まで回動させられるとともに、図5(b)および図6(b)に示すように、バタフライ弁19は後方を向く下向噴出位置まで回動させられる。その結果、連通孔13より下部横サッシ6内に流入した空気は、後面側の送風口16に向かうのが妨げられ、矢印で示すように、底面側の送風口17より下向きに吹き出し、筐体1の前面開口部にエアカーテンを形成する。このエアカーテンの作用により、作業空間と外部とが隔離され、筐体1の開口上部より有害ガスが外部に漏洩するのが防止される。
【0035】
なお、上記実施形態では、ガイド管10の先端を切欠いてその一部を押圧子10aとしたが、ガイド管10の先端を斜めに切欠いて、押圧子10aを形成すると、扉2の上昇に伴って、作動片20を徐々に押下げて、空気の後向噴出量と、下向噴出量との比率を順次変更するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のドラフトチャンバの一実施形態における閉扉状態の一部を縦断して示す外観斜視図である。
【図2】同じく、開扉状態の一部を縦断して示す外観斜視図である。
【図3】図1のIII部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図4】下部横サッシと縦サッシの接合部の構成を示す一部切欠き分解斜視図である。
【図5】(a)は、閉扉時の扉の一部を切り欠いて示す斜視図、(b)は、開扉時の扉の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図6】(a)は、閉扉時の要部の縦断側面図、(b)は、開扉時の要部の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 筐体
1a天板
1b側板
1c背面板
1d作業台
1e扉
2 扉
3 前面板
4 吸引孔
5 バッフル板
6 下部横サッシ
7 縦サッシ
8 エアポンプ(送風手段)
9 エアホース
10 ガイド管
10a押圧子
11 シール部材
11a挿通孔
12 隔壁
13 連通孔
14 軸孔
15 隔壁
16、17 送風口
18 回動軸
19 バタフライ弁(切換手段)
20 作動片
21 ねじりコイルばね(付勢手段)
22 受けレール
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラフトチャンバに関し、特にそのエアカーテンの吹付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
実験室などで使用されるドラフトチャンバは、その前面開口部に設けたガラスの扉を閉じた状態でも、上昇させて開いた状態でも、チャンバ本体を形成する筐体内の空気は、排気口へ有効に吸引されて、筐体内は常時負圧に維持されることにより、筐体内で発生したガスが、室内に漏出することを阻止し、作業者の安全性を確保できるようになっている。
【0003】
しかし、前面開口部に、空気の流れを阻害する障害物、例えば実験器具や、人の手などがあるときには、気流が乱れ、排気ダクトの吸引力が弱い場合には、筐体内に発生した有害ガスが外部に漏れ出るおそれがある。
【0004】
これに対処するべく、下記特許文献1、2には、前面開口部周縁から作業空間内に向って送風する機構を設けることにより、障害物があった場合でも、内方に向って空気を強制的に供給し、有害物質の漏洩を防止する機構が記載されている。
【特許文献1】特表2005−502856号公報
【特許文献2】特開2005−288243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献のいずれにおいても、前面開口部の全周に、空気を作業空間内に向って送風する機構が設けられている訳ではなく、特に、扉を開いた際の扉の直下の部位における安全性は十分とは言えない。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、扉を開いているときの前面開口部に障害物があった場合でも、作業空間内の有害物質が開口の上部から外部に漏洩することを効果的に防止できるとともに、扉を閉じたときの空気の流れを良好なものとした、ドラフトチャンバを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)前面が開口する筐体と、筐体の内部空間に連通するようにして、筐体に接続された排気ダクトと、筐体の前面開口部に、上下方向に開閉可能に配設された扉とを備えるドラフトチャンバにおいて、前記扉の枠部を構成する扉の下端部に配設した下部横サッシと、左右1対の縦サッシの少なくとも一方とを、中空部を有するものとするとともに、中空部同士が互いに連通するようにして、下部横サッシの側端に一方の縦サッシの下端部を結合し、上端部を筐体の上部に取り付けた下方を向くガイド管を、前記縦サッシに、前記扉の上下方向の開閉移動時に、気密を保って摺動しうるように内嵌または外嵌し、前記ガイド管の上端部に接続した送風手段によりガイド管内に供給された空気を、前記縦サッシおよび下部横サッシの中空部を通って、下部横サッシに設けた送風口より、筐体内、または下方に向かって噴出しうるようにする。
【0008】
(2)上記(1)項において、下部横サッシに、下方を向く送風口と、後方を向く送風口とを設け、かつ前記両送風口への縦サッシ側からの空気の供給を切り換える切換手段を設ける。
【0009】
(3)上記(2)項において、切換手段を、扉が予め定めた高さより下方に位置しているときは、下方を向く送風口への空気の供給を遮断して、後方を向く送風口のみへ空気を供給し、扉が予め定めた高さより上方に位置しているときは、下方を向く送風口のみへ空気を供給して、後方を向く送風口への空気の供給を遮断するものとする。
【0010】
(4)上記(2)または(3)項において、切換手段を、縦サッシから送られてきた空気を、下方を向く送風口と後方を向く送風口とのいずれかに選択的に供給するように切り換えるバタフライ弁と、扉が、下限位置より予め定めた高さまで上昇したとき、ガイド管の下端に当接して回動させられ、前記バタフライ弁を、空気を後方を向く送風口へ供給する後向噴出位置から、空気を下方を向く送風口へ供給する下向噴出位置へ切り換える作動片とを備えるものとする。
【0011】
(5)上記(4)項において、下部横サッシまたは縦サッシ内に、バタフライ弁または作動片を、後向噴出位置に向かって常時付勢する付勢手段を設ける。
【0012】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、ガイド管と縦サッシとの嵌合部に、隙間を閉塞する気密性シール部材を設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次の効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、扉を開いているときも、閉じているときも、扉の下端部における下部横サッシに設けた送風口より、空気を筐体内、または下方に向かって噴出させることができるので、特に、扉を開いているときに、空気を筐体内に向かって噴出させることにより、扉の下端部の後方に滞留している筐体内の空気を、排気ダクトに向かって誘導することができるとともに、空気を下方に向かって噴出させることにより、筐体の前面開口部にエアカーテンを形成することができ、このエアカーテンにより、筐体内の作業空間と、外部とを分離でき、前面開口部に障害物があった場合においても、作業空間内の有害物質が開口の上部から外部に漏洩することを、効果的に防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によると、切換手段を切り換えることにより、下部横サッシから噴出する空気を、下方に向けたり、後方に向けたりすることができるので、扉を開いているときは、空気を下方に向けて、エアカーテンを形成することにより、大きく開いた筐体の前面開口を、エアカーテンの作用で閉塞し、作業空間内の有害物質が開口の上部から外部に漏洩することを、確実に防止することができるとともに、扉を全閉位置または微開位置まで閉じたときは、空気を後方に向けて、扉の下端と開口の下縁との間隙から、作業空間内の有害物質が外部に漏洩するのを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によると、扉が予め定めた高さより下方に位置しているときは、切換手段により、下部横サッシから噴出する空気が後方に向けられ、扉が予め定めた高さより上方に位置しているときは、同じく下方に向けられるので、その都度、人の手により切換手段を操作する必要がなく、操作性が向上する。
【0016】
請求項4記載の発明によると、ガイド管と扉の昇降とを利用して、簡単な構造で、切換手段を、扉の昇降に連動して、自動的に切り換わるようにすることができる。
【0017】
請求項5記載の発明によると、扉が予め定めた高さより下方に移動したとき、バタフライ弁が、付勢手段の付勢力により、後向噴出位置に確実に復帰させられる。
【0018】
請求項6記載の発明によると、ガイド管と縦サッシとの嵌合部から空気が洩れるのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明のドラフトチャンバの一実施形態における閉扉状態の一部を縦断して示す外観斜視図、図2は、同じく、開扉状態の一部を縦断して示す外観斜視図である。
このドラフトチャンバは、チャンバ本体を構成する筐体1と、筐体1の前面開口部に、上下方向に開閉可能として配設した透明ガラス製の扉2とを備えている。
【0020】
筐体1は、天板1a、両側板1b(図1および図2においては、一方の側板のみを示す)、背面板1c、および作業台1dを備えており、それらと、前面に配設された扉2とにより囲まれた内部を、作業空間としている。作業台1cの下方の空間の前面は、観音開き式とした前面扉1eにより開閉可能に閉鎖され、その中には、配管や実験器具などが収納されている。
【0021】
筐体1の前面開口部の上部には、扉2を上昇させたときに、その前面を覆う前面板3が設けられており、また天板1aには、図示しない排気ダクトに接続された吸引孔4が設けられ、さらに、背面板1cの前面には、排気誘導用のバッフル板5が設けられている。
【0022】
扉2の下縁には、把手を兼用した下部横サッシ6が設けられ、扉2の左右両側縁には縦サッシ7(図1および図2には、一方の縦サッシのみを示している)が設けられており、扉2は、図示しない複数のプーリに案内されたワイヤを介して、バランスウエイトに連結され、軽力で上下動させうるようになっている。
【0023】
各サッシ6、7は、中空の角管状をなし、縦サッシ7の下端部は、下部横サッシ6の側端に、それらの中空部同士が連通するようにして、結合されている。縦サッシ7の下端は閉塞され、同じく上端は開口している。
【0024】
前面板3の背面側において、天板1aの上方には、送風手段であるエアポンプ8が配設されている。エアポンプ8の空気吐出端の左右には、1対のエアホース9が分岐して接続されている。各エアホース9の先端には、上端部が筐体1の両側上部に取り付けられて、下方を向くガイド管10の上端が接続されている。
各ガイド管10は、扉2の上下方向の開閉移動時に、気密を保って摺動しうるようにして、各縦サッシ7の上端開口より、その中空部内に内嵌され、エアポンプ8から吐出される空気を、縦サッシ7を通じて下部横サッシ6に供給しうるようにようになっている。
【0025】
図3は、ガイド管10と縦サッシ7の上端部の嵌合部分を示すものであり、各縦サッシ7の上端には、ゴムまたは軟質合成樹脂からなる気密性のシール部材11が嵌合固定されている。シール部材11の中央に設けた挿通孔11aの内面は滑性面となっており、この挿通孔11aには、ガイド管10の外周面が、気密状態で円滑に摺動可能として嵌合されている。ガイド管10の下端には、後述する作動片20を押圧するための押圧子10aが、下向きに突設されている。
【0026】
図4は、下部横サッシ6と縦サッシ7との接合部を分解して示すものであり、縦サッシ7の下部側面に形成された開口には、下部横サッシ6の側端部に設けた方形の隔壁12が気密に嵌合されている。
【0027】
隔壁12の上奥部には、縦サッシ7に連通する連通孔13が設けられ、中央には、軸孔14が設けられている。下部横サッシ6内の前後方向の中央には、軸孔14に接する高さまで起立する左右方向を向く隔壁15が一体に設けられている。
【0028】
隔壁15によって仕切られた下部横サッシ6の後面には、後方に向けて開口する多数の横長の送風口16が、左右方向に並べて設けられており、また隔壁15によって仕切られた下部横サッシ6の前部底面には、下方に向けて開口する多数の横長の送風口17が、左右方向に並べて設けられている。
【0029】
軸孔14には、左右方向を向く回動軸18が挿通されており、回動軸18における下部横サッシ6内の部分には、下部横サッシ6に内接し、かつ隔壁15と協働して、連通孔13から下部横サッシ6内に送給された空気を、送風口16、17のいずれか一方に選択的に送給するように切替えるバタフライ弁19が、一体的に形成されている。
【0030】
軸孔14を通って、縦サッシ7内に進入した回動軸18の軸端部には、バタフライ弁19と直交する方向を向く作動片20と、回動軸18に巻回され、一端が作動片20に、かつ他端が縦サッシ7の内面に係止されることにより、作動片20を、図5(a)および図6(a)に示すほぼ水平の後向噴出位置に向けて付勢する付勢手段であるねじりコイルばね21とが設けられている。
【0031】
回動軸18、バタフライ弁19、作動片20、およびガイド管10の下端に設けられた押圧子10a等により、後方を向く送風口16と下方を向く送風口17とへの縦サッシ側からの空気の供給を切り換える切換手段が形成されている。
【0032】
下部横サッシ6の上面および縦サッシ7の内側面には、ガラス板嵌め込み用の受けレール22が一体に設けられている。
【0033】
扉2が、筐体1の前面開口部を全閉位置(または微開位置)まで閉じた状態(図1参照)では、図5(a)および図6(a)に示すように、バタフライ弁19は、上方を向く後向噴出位置に位置し、連通孔13は下部横サッシ6の後面側の送風口16に連通し、エアポンプ8から送られてきた空気は、ガイド管10、縦サッシ7、連通孔13、下部横サッシ6、およびその後面側の送風口16を順次通り、筐体1の作業空間内において矢印に示すように、後方に向けて、水平に吹き出す。これにより、下部横サッシ6と筐体1の開口の下縁との間に多少の隙間が生じている場合であっても、その送風圧力により有害ガスが外部に漏洩することを防止することができる。
【0034】
扉2の閉止状態から、これを持上げ、筐体1の前面開口を開いた状態(図2参照)とすると、ガイド管10の押圧子10aが作動片20に当接して、作動片20は、ねじりコイルばね21の付勢力に抗して、下方を向く下向噴出位置まで回動させられるとともに、図5(b)および図6(b)に示すように、バタフライ弁19は後方を向く下向噴出位置まで回動させられる。その結果、連通孔13より下部横サッシ6内に流入した空気は、後面側の送風口16に向かうのが妨げられ、矢印で示すように、底面側の送風口17より下向きに吹き出し、筐体1の前面開口部にエアカーテンを形成する。このエアカーテンの作用により、作業空間と外部とが隔離され、筐体1の開口上部より有害ガスが外部に漏洩するのが防止される。
【0035】
なお、上記実施形態では、ガイド管10の先端を切欠いてその一部を押圧子10aとしたが、ガイド管10の先端を斜めに切欠いて、押圧子10aを形成すると、扉2の上昇に伴って、作動片20を徐々に押下げて、空気の後向噴出量と、下向噴出量との比率を順次変更するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のドラフトチャンバの一実施形態における閉扉状態の一部を縦断して示す外観斜視図である。
【図2】同じく、開扉状態の一部を縦断して示す外観斜視図である。
【図3】図1のIII部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図4】下部横サッシと縦サッシの接合部の構成を示す一部切欠き分解斜視図である。
【図5】(a)は、閉扉時の扉の一部を切り欠いて示す斜視図、(b)は、開扉時の扉の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図6】(a)は、閉扉時の要部の縦断側面図、(b)は、開扉時の要部の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 筐体
1a天板
1b側板
1c背面板
1d作業台
1e扉
2 扉
3 前面板
4 吸引孔
5 バッフル板
6 下部横サッシ
7 縦サッシ
8 エアポンプ(送風手段)
9 エアホース
10 ガイド管
10a押圧子
11 シール部材
11a挿通孔
12 隔壁
13 連通孔
14 軸孔
15 隔壁
16、17 送風口
18 回動軸
19 バタフライ弁(切換手段)
20 作動片
21 ねじりコイルばね(付勢手段)
22 受けレール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口する筐体と、筐体の内部空間に連通するようにして、筐体に接続された排気ダクトと、筐体の前面開口部に、上下方向に開閉可能に配設された扉とを備えるドラフトチャンバにおいて、
前記扉の枠部を構成する扉の下端部に配設した下部横サッシと、左右1対の縦サッシの少なくとも一方とを、中空部を有するものとするとともに、中空部同士が互いに連通するようにして、下部横サッシの側端に一方の縦サッシの下端部を結合し、上端部を筐体の上部に取り付けた下方を向くガイド管を、前記縦サッシに、前記扉の上下方向の開閉移動時に、気密を保って摺動しうるように内嵌または外嵌し、前記ガイド管の上端部に接続した送風手段によりガイド管内に供給された空気を、前記縦サッシおよび下部横サッシの中空部を通って、下部横サッシに設けた送風口より、筐体内、または下方に向かって噴出しうるようにしたことを特徴とするドラフトチャンバ。
【請求項2】
下部横サッシに、下方を向く送風口と、後方を向く送風口とを設け、かつ前記両送風口への縦サッシ側からの空気の供給を切り換える切換手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のドラフトチャンバ。
【請求項3】
切換手段を、扉が予め定めた高さより下方に位置しているときは、下方を向く送風口への空気の供給を遮断して、後方を向く送風口のみへ空気を供給し、扉が予め定めた高さより上方に位置しているときは、下方を向く送風口のみへ空気を供給して、後方を向く送風口への空気の供給を遮断するものとしたことを特徴とする請求項2記載のドラフトチャンバ。
【請求項4】
切換手段を、縦サッシから送られてきた空気を、下方を向く送風口と後方を向く送風口とのいずれかに選択的に供給するように切り換えるバタフライ弁と、扉が、下限位置より予め定めた高さまで上昇したとき、ガイド管の下端に当接して回動させられ、前記バタフライ弁を、空気を後方を向く送風口へ供給する後向噴出位置から、空気を下方を向く送風口へ供給する下向噴出位置へ切り換える作動片とを備えるものとしたことを特徴とする請求項2または3記載のドラフトチャンバ。
【請求項5】
下部横サッシまたは縦サッシ内に、バタフライ弁または作動片を、後向噴出位置に向かって常時付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項4記載のドラフトチャンバ。
【請求項6】
ガイド管と縦サッシとの嵌合部に、隙間を閉塞する気密性シール部材を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のドラフトチャンバ。
【請求項1】
前面が開口する筐体と、筐体の内部空間に連通するようにして、筐体に接続された排気ダクトと、筐体の前面開口部に、上下方向に開閉可能に配設された扉とを備えるドラフトチャンバにおいて、
前記扉の枠部を構成する扉の下端部に配設した下部横サッシと、左右1対の縦サッシの少なくとも一方とを、中空部を有するものとするとともに、中空部同士が互いに連通するようにして、下部横サッシの側端に一方の縦サッシの下端部を結合し、上端部を筐体の上部に取り付けた下方を向くガイド管を、前記縦サッシに、前記扉の上下方向の開閉移動時に、気密を保って摺動しうるように内嵌または外嵌し、前記ガイド管の上端部に接続した送風手段によりガイド管内に供給された空気を、前記縦サッシおよび下部横サッシの中空部を通って、下部横サッシに設けた送風口より、筐体内、または下方に向かって噴出しうるようにしたことを特徴とするドラフトチャンバ。
【請求項2】
下部横サッシに、下方を向く送風口と、後方を向く送風口とを設け、かつ前記両送風口への縦サッシ側からの空気の供給を切り換える切換手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のドラフトチャンバ。
【請求項3】
切換手段を、扉が予め定めた高さより下方に位置しているときは、下方を向く送風口への空気の供給を遮断して、後方を向く送風口のみへ空気を供給し、扉が予め定めた高さより上方に位置しているときは、下方を向く送風口のみへ空気を供給して、後方を向く送風口への空気の供給を遮断するものとしたことを特徴とする請求項2記載のドラフトチャンバ。
【請求項4】
切換手段を、縦サッシから送られてきた空気を、下方を向く送風口と後方を向く送風口とのいずれかに選択的に供給するように切り換えるバタフライ弁と、扉が、下限位置より予め定めた高さまで上昇したとき、ガイド管の下端に当接して回動させられ、前記バタフライ弁を、空気を後方を向く送風口へ供給する後向噴出位置から、空気を下方を向く送風口へ供給する下向噴出位置へ切り換える作動片とを備えるものとしたことを特徴とする請求項2または3記載のドラフトチャンバ。
【請求項5】
下部横サッシまたは縦サッシ内に、バタフライ弁または作動片を、後向噴出位置に向かって常時付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項4記載のドラフトチャンバ。
【請求項6】
ガイド管と縦サッシとの嵌合部に、隙間を閉塞する気密性シール部材を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のドラフトチャンバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2008−114179(P2008−114179A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301536(P2006−301536)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】
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