説明

ドラフトローラのクリーニング装置、ドラフト装置、及び繊維機械

【課題】清掃ベルトによってドラフトローラを清掃するクリーニング装置において、清掃ベルトを円滑に間欠送りできる構成を提供する。
【解決手段】ドラフトローラのクリーニング装置60は、第1ローラ71と、無端状の清掃ベルト74と、ギア部材63と、回転突起65と、ストッパ部70と、を備える。清掃ベルト74は第1ローラ71に巻き掛けられて支持されるとともに、ドラフトローラ(サードローラ15等)の周面に接触してその表面を清掃する。ギア部材63は、第1ローラ71と一体的に回転する。回転突起65は、ミドルローラ16と一体的に回転するとともに、ギア部材63に対し係脱可能に構成されている。ストッパ部70は円弧面状のストッパ面68を備える。このストッパ面68は、回転突起65とギア部材63との係合が解除されているときに、ギア部材63の回転を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、ドラフト装置に使用するドラフトローラをクリーニングするクリーニング装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績機、粗紡機等において、スライバを延伸して繊維束にするためのドラフト装置を備える構成が知られている。このドラフト装置は複数のドラフトローラを備えており、このドラフトローラが速度をそれぞれ異ならせながら回転駆動されることで、スライバをドラフトする。
【0003】
この種のドラフト装置でスライバをドラフトする際、風綿等がドラフトローラの周面に付着することが多い。例えば、スライバの原料が綿の場合は綿糖による風綿が発生し、スライバの原料が化学繊維の場合は油剤その他の風綿が発生する。
【0004】
ドラフトローラの周面に風綿等の異物が大量に付着すると、細糸ムラや糸切れ等の原因になる。従って、これを回避すべく、ドラフトローラの周面を清掃するクリーニング装置を設けた構成が知られている。例えば特許文献1は、ドラフトローラ周面に接触してその表面を清掃する無端ベルトを備え、この無端ベルトを間欠的に回転送りする構成のクリーニング装置を開示する。
【0005】
特許文献1のクリーニング装置は、ドラフトローラに送りカム部を備える一方、無端ベルトを巻回するローラの従動軸にギア部を形成し、送りカム部が1回転する毎にギア部を1歯ずつ送るように構成されている。特許文献1は、この間欠送りにより、ドラフトローラと無端ベルトとの間で極端な速度差を生じさせることができ、ドラフトローラ外周面の付着物を確実に掻き出して除去できるとする。
【特許文献1】特開2006−83475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のクリーニング装置では、無端ベルトが停止しているときも、駆動されるドラフトローラの表面が当該無端ベルトに接している。従って、無端ベルトとドラフトローラの圧接力が強いと、無端ベルトがドラフトローラに連れ回ってしまうことがあった。連れ回りが生じると、無端ベルトを巻回するローラの前記ギア部の回転位相がズレてしまい、送りカム部がギア部の歯部に乗り上げて、無端ベルトの送り失敗や、送りカム部及びギア歯の破損の原因となることがあった。
【0007】
上記の無端ベルトの連れ回りは、無端ベルトとドラフトローラの圧接力を弱めることで軽減することができる。しかし、その圧接力の調整には微妙な加減が要求され、ドラフトローラの清掃効果を良好に発揮させつつ連れ回りを防止することは大変困難であった。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成を備えるドラフトローラのクリーニング装置が提供される。即ち、このクリーニング装置は、ベルト支持ローラと、無端ベルトと、ギアと、回転係合部と、ストッパ部と、を備える。前記無端ベルトは、前記ベルト支持ローラに巻き掛けられるとともに、ドラフトローラの周面に接触してその表面を清掃する。前記ギアは、前記ベルト支持ローラと一体的に回転する。前記回転係合部は、ドラフトローラと一体的に回転するとともに、前記ギアに対し係脱可能に構成されている。前記ストッパ部は、前記回転係合部と前記ギアとの係合が解除されているときに、前記ギアの回転を規制する。
【0010】
この構成により、回転係合部とギアとの係合解除時には、ドラフトローラの回転に伴って無端ベルトが連れ回ろうとした場合でも、ギアの回転がストッパ部によって規制される。この結果、ギアの回転位相を、回転係合部との係合をスムーズに実現できる位置に保持することができる。従って、回転係合部によるギアの間欠送りが確実に行われるので、ベルト送りの失敗や、間欠送り機構の破損等を防止することができる。
【0011】
前記クリーニング装置においては、前記ストッパ部は、前記ドラフトローラと一体的に回転する円弧面状の規制面を備えることが好ましい。
【0012】
この構成により、簡単な構成で、必要に応じてギアの回転位相が変化しないように保持することができる。
【0013】
前記クリーニング装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このクリーニング装置は、前記ギアと一体的に回転可能な規制部材を備える。この規制部材には凹部が形成されている。前記回転係合部と前記ギアとの係合が解除されているときは、前記ストッパ部の前記規制面が前記凹部と対面することで前記ギアの回転を阻止する。前記回転係合部と前記ギアとが係合しているときは、前記規制面が前記凹部と対面しなくなることで前記ギアの回転を許容する。
【0014】
この構成により、規制部材と規制面とを備える簡単な構成で、必要に応じてギアの回転位相が変化しないように保持することができる。
【0015】
前記クリーニング装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このクリーニング装置は、前記ドラフトローラと一体的に回転する陥没部を備える。前記回転係合部と前記ギアとが係合しているときは、前記凹部の端部が前記陥没部を通過するように構成されている。
【0016】
この構成により、ギアと回転係合部との係合時には、陥没部により、確実に規制を解除してギアを回転させることができる。従って、無端ベルトの円滑な送りを簡単な構成で実現できる。
【0017】
前記クリーニング装置においては、前記凹部は、前記規制面に対応した輪郭を有する円弧状に形成されていることが好ましい。
【0018】
この構成により、ギアの回転規制時において当該ギアを適当な位置にガタつきなく保持できるので、ギアと回転係合部との一層円滑な係合を実現できる。
【0019】
前記クリーニング装置においては、前記規制部材と前記ギアとが一体形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成により、構成を簡素化できるとともに、ギアの回転規制を一層確実に行うことができる。
【0021】
本発明の他の観点によれば、前記クリーニング装置を備えるドラフト装置、及び、このドラフト装置を備える繊維機械が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、並設された多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2を備えた、繊維機械としての紡績機1を示している。
【0023】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11と、巻取装置12と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は紡績機1本体のケーシング6の上部に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11で下方へ送られ、糸の欠陥を検出して糸切断を行って糸欠陥部分を除去するためのクリアラー(糸欠陥検出器)52を経て、巻取装置12によって巻き取られ、パッケージ45を形成する。
【0024】
この紡績機1は、ブロアボックス80と、原動機ボックス81と、を備えている。また、図では省略しているが、紡績機1は、互いに独立に走行可能な糸継台車と玉揚台車とを備える。糸継台車と玉揚台車は何れも、紡績ユニット2が並べられる方向に走行自在に設けられている。
【0025】
図2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11の構成を示す拡大側面図である。図2に示すように、ドラフト装置7は、スライバ13を延伸して繊維束8にするためのドラフトローラを備える。前記ドラフトローラは、互いに対向して配置されるトップローラとボトムローラにより構成されている。
【0026】
トップローラは、バックローラ14、サードローラ15、エプロンベルト18を装架したミドルローラ16、及びフロントローラ17の4つのローラから構成されている。これらのトップローラ14〜17は、ドラフト装置7が備えるカバー状のクレードル20に取り付けられている。一方、ボトムローラは、バックボトムローラ24、サードボトムローラ25、エプロンベルト28を装架したミドルボトムローラ26、及びフロントボトムローラ27の4つのローラから構成されている。それぞれのボトムローラ24〜27はドラフト装置7本体側に取り付けられるとともに、前記トップローラ14〜17に対向するように配置されている。
【0027】
クレードル20の内部には図略のスプリングボックスが備えられ、このスプリングボックスによって、前記トップローラ14〜17が前記ボトムローラ24〜27に対し押圧されるように付勢される。これによって、スライバ13をトップローラ14〜17とボトムローラ24〜27とでニップすることができる。
【0028】
前記クレードル20は、図1に示すように2つの紡績ユニット2に対して1つ設けられ、前記トップローラ14〜17及びボトムローラ24〜27はクレードル20の両側の面に1つずつ取り付けられる。
【0029】
以上の構成で、ドラフト装置7に送られたスライバ13は、速度をそれぞれ異ならせながら回転駆動されるドラフトローラによって延伸され、繊維束8となって紡績装置9へ送られる。紡績装置9は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を空気紡績する。空気紡績された繊維束8は、紡績糸10となって糸送り装置11に送られる。
【0030】
糸送り装置11は、図2に示すように、紡績機1本体のケーシングに支持されたデリベリローラ39と、デリベリローラ39に接離自在に設けられたニップローラ40と、を備える。この構成で、紡績装置9から排出された紡績糸10をデリベリローラ39とニップローラ40との間に挟んでデリベリローラ39を回転駆動させることにより、紡績糸10を巻取装置12側へ送ることができる。
【0031】
前記クレードル20は回動軸部29を備えており、この回動軸部29を中心として回動することにより、ドラフト装置7に対して開閉可能に構成されている。また、クレードル20には、メンテナンス作業時にクレードル20を開くためのクレードルハンドル23が取り付けられている。
【0032】
ドラフト装置7の上方には、ドラフトローラを清掃するクリーニング装置60が備えられている。このクリーニング装置60はフレーム61を備え、このフレーム61はクレードル20の側面に固定されている。
【0033】
図3は、ドラフト装置7とクリーニング装置60を示す斜視図である。図2及び図3に示すように、フレーム61には、第1ローラ(ベルト支持ローラ)71と第2ローラ72が回転可能に支持されている。また、フレーム61には付勢レバー62が回動可能に取り付けられるとともに、この付勢レバー62の先端にはテンションローラ73が回転可能に支持されている。
【0034】
前記第1ローラ71、第2ローラ72、及びテンションローラ73には、無端状の清掃ベルト(無端ベルト)74が巻き掛けられている。清掃ベルト74は、図2に示すように、トップローラ14〜17のうち、バックローラ14、サードローラ15、及びミドルローラ16(エプロンベルト18)の外周面に接触するように配置されている。前記付勢レバー62には図略の付勢バネが取り付けられており、清掃ベルト74にテンションを付与する方向に付勢レバー62を付勢している。
【0035】
以上の構成で、バックローラ14、サードローラ15、及びエプロンベルト18は、その外周面を前記清掃ベルト74に接触させた状態で回転する。これにより、ドラフトローラ外周面の付着物を清掃ベルト74により清掃することができる。
【0036】
前記第1ローラ71は、ミドルローラ16の近傍に配置されている。また、第1ローラ71には、数枚のギア歯を有するギア部材63が固定されている。一方、ミドルローラ16の軸方向一端にはボス部64が突設される。このボス部64は大径部及び小径部を有する段付き状に構成されており、そのうち小径部から回転突起(送りカム部、回転係合部)65が突出されている。この回転突起65は径方向を向くように形成されており、その先端がギア部材63の歯に対し係合可能に構成されている。
【0037】
回転突起65はミドルローラ16とともに回転し、1周するごとに前記ギア部材63の歯溝に係合して、ギア部材63を1歯分ずつ回転させる。これにより第1ローラ71が回転され、清掃ベルト74が適宜の量だけ送られる。
【0038】
この結果、ミドルローラ16が1回転するごとに、清掃ベルト74の新鮮な清掃面がトップローラ14、サードローラ15、及びエプロンベルト18に接触するようになり、その清掃効果を高めることができる。また、この間欠送りにより、必要なとき以外は清掃ベルト74の駆動を止めて、清掃対象としてのトップローラ14、サードローラ15、及びエプロンベルト18それぞれの外周面に対して大きな相対速度差を付与することができる。この結果、一層良好な清掃効果が得られる。
【0039】
図2に示すように、クレードル20の上面にはサクションボックス85が配置され、このサクションボックス85の側面には、第1吸引パイプ86及び第2吸引パイプ87が備えられている。第1吸引パイプ86及び第2吸引パイプ87は、それぞれ図略の負圧源に接続されている。
【0040】
第1吸引パイプ86はフロントローラ17の近傍位置まで延長されて、その先端の吸引口をフロントローラ17の外周面に近接させている。第2吸引パイプ87は清掃ベルト74の近傍位置まで延長されて、その先端の吸引口を清掃ベルト74の表面(清掃面)に近接させている。これにより、フロントローラ17及び清掃ベルト74の表面の付着物を吸引して除去することができる。
【0041】
図3に示すように、前記ギア部材63の軸方向一端には規制プレート66が一体形成されている。この規制プレート66の周縁には複数の円弧面状の凹部67が設けられており、この結果、規制プレート66は略星形状となっている。この凹部67は、ギア部材63のギア歯の1枚につき1つ設けられるように、等間隔で形成されている。
【0042】
一方、前記ミドルローラ16に形成されたボス部64のうち大径部の周囲には、円弧面状のストッパ面(規制面)68が形成されている。この円弧面状のストッパ面68の円弧中心は、前記ミドルローラ16の軸心と一致している。これらボス部64及び規制プレート66により、ギア部材63の回転を規制可能なストッパ部70が構成されている。
【0043】
また、ボス部64の大径部の一部を切欠くようにして、円弧状の陥没部69が形成されている。この陥没部69の形成位置は、前記回転突起65にほぼ相当する位置とされている。
【0044】
図4は、ミドルローラ16及び第1ローラ71の近傍の様子を示す側面拡大図である。図4には回転突起65とギア部材63が係合していない状態が示され、このときは、規制プレート66の凹部67がボス部64のストッパ面68に対面している。言い換えれば、ボス部64の円弧状のストッパ面68が凹部67に入り込んで、当該凹部67の円弧面にほぼ合致した状態となっている。
【0045】
この状態では、ミドルローラ16(エプロンベルト18)やサードローラ15、バックローラ14の回転に伴って清掃ベルト74が連れ回ろうとしても、ギア部材63の回転は規制プレート66によって確実に防止される。従って、ギア部材63は回転突起65に対しスムーズに係合可能な回転位相に常に保持されるので、回転突起65がギア部材63に対し、図5に示すように容易に係合できる。この結果、ギア部材63のギア歯に対する回転突起65の乗上げや、清掃ベルト74の送りの失敗等が防止される。
【0046】
図5に示すように回転突起65がギア部材63に対面するのとほぼ同時に、前記ボス部64のストッパ面68が前記規制プレート66(凹部67)と対面しなくなり、代わりに陥没部69が規制プレート66に対面するようになる。この結果、規制プレート66の凹部67の縁に位置する部分(相対的に凸となっている部分)が陥没部69を通過させるようにして、規制プレート66及びギア部材63を回転させることができる。
【0047】
回転突起65は1周につきギア部材63を1歯分だけ回転させ、この結果、清掃ベルト74が所定量だけ送られる。このベルト送りが終了して、回転突起65がギア部材63との係合を解除するのとほぼ同時に、陥没部69が規制プレート66に対面しなくなる。更に、ギア部材63の回転方向で後続側に位置する凹部67が、ミドルローラ16側のストッパ面68に対面する。この結果、ギア部材63の回転は、回転突起65が1周するまで再び規制される。
【0048】
なお、本実施形態の構成は、間欠送り機構として公知とされている所謂ゼネバ機構と比較しても、メンテナンス作業を簡素化できる点で有利である。即ち、仮にミドルローラ16と前記第1ローラ71との間にゼネバ機構が設置された場合、ゼネバ歯車の原動側のピンが従動歯車の溝に係合することで間欠送りが行われることになる。この構成で、ドラフトローラのメンテナンス等のためにクレードルハンドル23を持ち上げてクレードル20を開くと、ミドルローラ16と第1ローラ71との軸間距離が変化するため、ゼネバ歯車の原動側のピンと従動歯車の溝との係合が解除される。そして、メンテナンスが終了して再びクレードル20を閉じる際に、ゼネバ歯車のピンと溝を再び係合させるべく従動歯車の位相を所定の位置に合わせなければならない場合があり、煩雑な作業が要求される。一方、本実施形態によれば、クレードル20を閉じるときの回転突起65とギア部材63との係合は常に容易に行われるので、メンテナンス作業時の負担を軽減できる。
【0049】
以上に示すように、本実施形態の紡績機1が備えるドラフト装置7は、以下の構成のクリーニング装置60を備えている。即ち、このクリーニング装置60は、第1ローラ71と、清掃ベルト74と、ギア部材63と、回転突起65と、ストッパ部70と、を備える。清掃ベルト74は、第1ローラ71に巻き掛けられるとともに、ミドルローラ16(エプロンベルト18)、サードローラ15、及びバックローラ14の周面に接触してその表面を清掃する。ギア部材63は、第1ローラ71と一体的に回転するように構成される。回転突起65は、ドラフトローラ(ミドルローラ16)と一体的に回転するとともに、前記ギア部材63に対し係脱可能に構成されている。ストッパ部70は、回転突起65とギア部材63との係合が解除されているときに、図4に示すように、前記ギア部材63の回転を規制する。
【0050】
これにより、回転突起65とギア部材63とが係合を解除している状態(図4の状態)では、ドラフトローラの回転に伴って清掃ベルト74が連れ回ろうとしても、ギア部材63の回転がストッパ部70によって規制される。この結果、ギア部材63の回転位相を、回転突起65との係合をスムーズに実現できる位置に保持することができる。従って、回転突起65によるギア部材63の間欠送りが確実に行われるので、清掃ベルト74の送りの失敗や、間欠送り機構の破損等を防止することができる。
【0051】
また、本実施形態において、前記ストッパ部70は、ミドルローラ16と一体的に回転する円弧面状のストッパ面68を備えている。
【0052】
これにより、簡単な構成で、ギア部材63の回転位相を必要に応じて保持することができる。また、ストッパ面68の円弧中心がミドルローラ16の軸心に一致しているので、円弧角やその位置を適宜設定することで、ミドルローラ16(回転突起65)の回転位相に基づいて、ギア部材63の回転規制/規制解除のタイミングを精度良く決定することができる。
【0053】
また、本実施形態のクリーニング装置60は、前記第1ローラ71と一体的に回転可能な規制プレート66を備えており、この規制プレート66には凹部67が形成されている。そして、前記回転突起65と前記ギア部材63との係合が解除されているときは、図4に示すように、前記ストッパ部70のストッパ面68が前記凹部67と対面することで前記ギア部材63の回転を阻止する。一方、前記回転突起65と前記ギア部材63とが係合しているときは、図5に示すように、前記ストッパ面68が前記凹部67との対面を解除することで前記ギア部材63の回転を許容する。
【0054】
これにより、規制プレート66及びストッパ面68とを備える簡単な構成で、ギア部材63の回転位相を必要に応じて保持することができる。
【0055】
また、本実施形態のクリーニング装置60は、ミドルローラ16と一体的に回転する陥没部69を備えている。そして、前記回転突起65と前記ギア部材63とが係合しているときは、図5に示すように、前記凹部67の縁部(規制プレート66の星形の頂点に相当する部分で、相対的に凸となっている部分)が前記陥没部69を通過するように構成されている。
【0056】
これにより、ギア部材63と回転突起65とが係合している状態(図5の状態)では、陥没部69により、確実に規制を解除してギア部材63をスムーズに回転させることができる。従って、清掃ベルト74の円滑な送りが実現できる。
【0057】
また、本実施形態のクリーニング装置60においては、前記凹部67は、円弧面状の前記ストッパ面68に対応した輪郭を有する円弧状に形成されている。
【0058】
これにより、ギア部材63の回転規制時において、ガタつきがない状態でギア部材63を回転規制することができる。これにより、ギア部材63と回転突起65との一層円滑な係合を実現できる。
【0059】
また、本実施形態のクリーニング装置60においては、前記規制プレート66と前記ギア部材63とが一体形成されている。
【0060】
これにより、構成を簡素化できるとともに、ギア部材63の回転規制を一層確実に行うことができる。
【0061】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0062】
上記実施形態のクリーニング装置60は、ミドルローラ16から駆動力を得て清掃ベルト74を間欠送りするように構成しているが、例えばバックローラ14等、他のドラフトローラから駆動力を得る構成に変更することができる。
【0063】
上記実施形態のクリーニング装置60は、ミドルローラ16(エプロンベルト18)、サードローラ15、及びバックローラ14を清掃ベルト74による清掃対象としている。しかしながら、清掃ベルト74が清掃対象とするドラフトローラは任意に変更することができ、例えばフロントローラ17を清掃ベルト74で清掃することもできる。
【0064】
ミドルローラ16のボス部64に、回転突起65を2つ以上備えるように構成することもできる。また、ギア部材63の歯数は任意に設定することができる。
【0065】
ギア部材63と規制プレート66は、一体形成せず、別体の部品で構成するように変更することができる。また、規制プレート66の代わりに、例えばブロック状の規制部材を用いる構成に変更することができる。
【0066】
ギア部材63と規制プレート66の少なくとも何れか一方を、第1ローラ71に一体形成するように変更することができる。
【0067】
規制プレート66の凹部67の形状、陥没部69の形状、回転突起65の形状等は、適宜変更することができる。
【0068】
上記のクリーニング装置60は、ドラフトローラの構成(例えば、ドラフトローラの数)が異なる他の形式のドラフト装置に適用することができる。
【0069】
上記のクリーニング装置60を備えたドラフト装置7は、上記の紡績機1のほか、例えば粗紡機等の他の繊維機械に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の正面図。
【図2】ドラフト装置及びドラフトローラのクリーニング装置を示す側面図。
【図3】ドラフト装置及びドラフトローラのクリーニング装置を示す斜視図。
【図4】ギア部材の回転が規制されている様子を示す側面拡大図。
【図5】ギア部材に回転突起が係合して回転され、清掃ベルトが送られる様子を示す側面拡大図。
【符号の説明】
【0071】
1 紡績機(繊維機械)
14 バックローラ(ドラフトローラ)
15 サードローラ(ドラフトローラ)
16 ミドルローラ(ドラフトローラ)
60 クリーニング装置
63 ギア部材(ギア)
65 回転突起(回転係合部)
66 規制プレート(規制部材)
67 凹部
68 ストッパ面(規制面)
69 陥没部
70 ストッパ部
71 第1ローラ(ベルト支持ローラ)
74 清掃ベルト(無端ベルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト支持ローラと、
このベルト支持ローラに巻き掛けられるとともに、ドラフトローラの周面に接触してその表面を清掃する無端ベルトと、
前記ベルト支持ローラと一体的に回転するギアと、
ドラフトローラと一体的に回転するとともに、前記ギアに対し係脱可能な回転係合部と、
この回転係合部と前記ギアとの係合が解除されているときに、前記ギアの回転を規制するストッパ部と、
を備えることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記ストッパ部は、前記ドラフトローラと一体的に回転する円弧面状の規制面を備えることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記ギアと一体的に回転可能な規制部材を備え、この規制部材には凹部が形成され、
前記回転係合部と前記ギアとの係合が解除されているときは、前記ストッパ部の前記規制面が前記凹部と対面することで前記ギアの回転を阻止し、
前記回転係合部と前記ギアとが係合しているときは、前記規制面が前記凹部と対面しなくなることで前記ギアの回転を許容することを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記ドラフトローラと一体的に回転する陥没部を備え、
前記回転係合部と前記ギアとが係合しているときは、前記凹部の縁部が前記陥没部を通過するように構成されていることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記凹部は、前記規制面に対応した輪郭を有する円弧状に形成されていることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項6】
請求項3から5までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記規制部材と前記ギアとが一体形成されていることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置を備えるドラフト装置。
【請求項8】
請求項7に記載のドラフト装置を備える繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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