説明

ドラフトローラのクリーニング装置、ドラフト装置、及び繊維機械

【課題】ドラフトローラのクリーニング装置において、無端ベルトに付着した風綿等の付着物を容易に除去でき、優れた清掃効果が得られる構成を提供する。
【解決手段】ドラフトローラのクリーニング装置60は、ドラフトローラの周面に接触してその表面を清掃する清掃面を有する清掃ベルト74と、この清掃ベルト74の前記清掃面に接触可能な傾斜パイルブラシと、を備える。この傾斜パイルブラシは、回転可能なブラシローラ76の外周面に固定されている。ブラシローラ76は、清掃ベルト74を支持する第2ローラ72と、ロープ79により連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、ドラフト装置に使用するドラフトローラをクリーニングするクリーニング装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績機、粗紡機等において、スライバを延伸して繊維束にするためのドラフト装置を備える構成が知られている。このドラフト装置は複数のドラフトローラを備えており、このドラフトローラが速度をそれぞれ異ならせながら回転駆動されることで、スライバをドラフトする。
【0003】
この種のドラフト装置でスライバをドラフトする際、風綿等がドラフトローラの周面に付着することが多い。例えば、スライバの原料が綿の場合は綿糖による風綿が発生し、スライバの原料が化学繊維の場合は油剤その他の風綿が発生する。
【0004】
ドラフトローラの周面に風綿等の異物が大量に付着すると、細糸ムラや糸切れ等の原因になる。従って、これを回避すべく、ドラフトローラの周面を清掃するクリーニング装置を設けた構成が知られている。
【0005】
例えば特許文献1は、ドラフトローラ周面に接触してその表面を清掃する無端ベルトを備え、この無端ベルトを間欠的に回転送りする構成のクリーニング装置を開示する。特許文献1のクリーニング装置は、無端ベルトの外周面の付着物を掻き出すための鋸歯状の掻き出し部を備えている。この掻き出し部は、無端ベルトの外周面に当接されることにより、無端ベルトの外周面の付着物を掻き出すように構成されている。
【特許文献1】特開2006−83475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のクリーニング装置は、掻き出し部を無端ベルトの外周面に強い力で押し付けないと、無端ベルトの外周面に強力に付着した風綿等を除去することができなかった。一方で、掻き出し部を過度の力で無端ベルトに押し付けると、無端ベルトが損傷して寿命が縮まるおそれがあった。
【0007】
従って、清掃効果を発揮させつつ無端ベルトを傷めないように掻き出し部を無端ベルトに押し付ける力を調整することが困難であり、この点で改善の余地が残されていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ドラフトローラのクリーニング装置において、無端ベルトに付着した風綿等の付着物を容易に除去でき、優れた清掃効果が得られる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成のドラフトローラのクリーニング装置が提供される。即ち、このクリーニング装置は、ドラフトローラの周面に接触してその表面を清掃する清掃面を有する無端ベルトと、この無端ベルトの前記清掃面に接触可能な傾斜パイルブラシと、を備える。
【0011】
これにより、傾斜パイルブラシを強い力で押し当てなくても、無端ベルトの清掃面の付着物を効果的に絡め取って、良好に清掃することができる。従って、無端ベルトを傷めることなく、ドラフトローラの清掃効果を向上させることができる。
【0012】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、回転可能なブラシローラを備え、前記傾斜パイルブラシは前記ブラシローラの外周面に固定されていることが好ましい。
【0013】
これにより、ブラシローラの回転による連続的な清掃が可能になり、清掃効果を一層向上させることができる。
【0014】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このクリーニング装置は、前記無端ベルトを支持するベルト支持ローラを備える。前記ブラシローラは前記ベルト支持ローラと連結されている。
【0015】
これにより、ブラシローラの駆動のための構成が簡素化され、製造コストを低減できる。
【0016】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、前記無端ベルトが駆動されると、前記ブラシローラは、その外周面で当該無端ベルトの前記清掃面を逆向きに擦るように回転することが好ましい。
【0017】
これにより、ブラシローラの外周面の傾斜パイルブラシに絡め取られた風綿等が、無端ベルトとブラシローラの擦り合わせ作用により、帯状に丸められつつブラシ表面から浮き上がる。従って、風綿等をブラシローラの外周面から容易に除去できるので、清掃が一層容易になる。
【0018】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このクリーニング装置は、前記ブラシローラを回転可能に支持するローラフレームを備える。前記ブラシローラはこのローラフレームに対し着脱可能に取り付けられる。
【0019】
これにより、例えば長期間の使用に伴ってブラシローラ外周面のブラシにヘタリが生じ、又はブラシに風綿等が多量に蓄積された場合に、他のブラシローラに交換することで、元の良好な清掃効果を発揮する状態に容易に戻すことができる。
【0020】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、前記ブラシローラの径は前記ドラフトローラの径より大きいことが好ましい。
【0021】
これにより、大径のブラシローラの外周面に、広い面積の傾斜パイルブラシを設けることができる。従って、風綿等がブラシに多少蓄積しても無端ベルトを安定して良好に清掃できるので、メンテナンスの必要頻度を少なくできる。
【0022】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記傾斜パイルブラシは可撓性のブラシシートの表面に形成され、このブラシシートが前記ブラシローラの外周面に固定されている。前記ブラシシートの長手方向端部の輪郭は、前記傾斜パイルブラシにおいてパイルの倒伏方向を示す方向指示部を含む。
【0023】
これにより、ブラシローラの製造時において、ブラシシートをブラシローラに対して正規と逆方向に取り付けてしまうミスを簡単に防止できる。また、ブラシローラを正規と逆方向にクリーニング装置に取り付けてしまうミスを簡単に防止できる。
【0024】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、サクションパイプを備え、このサクションパイプの吸引口が前記傾斜パイルブラシに対面していることが好ましい。
【0025】
これにより、傾斜パイルブラシに絡め取られた風綿等を、サクションパイプで吸引して除去できる。従って、傾斜パイルブラシに蓄積した付着物を取り除くメンテナンス作業が不要になり、オペレータの負担を著しく軽減できる。
【0026】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このクリーニング装置は第2サクションパイプを備え、この第2サクションパイプの吸引口は前記ドラフトローラの外周面に対面している。前記第2サクションパイプと負圧源とを接続する経路のストレート部から50°以上70°以下の角度をなして分岐路を分岐させ、この分岐路を前記サクションパイプに接続する。
【0027】
これにより、サクションパイプにより傾斜パイルブラシ上の風綿等を良好に吸引できると同時に、第2サクションパイプ側の圧力損失を抑えることができる。
【0028】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このクリーニング装置は、前記無端ベルトにテンションを付与するテンション機構を備える。このテンション機構により前記無端ベルトが前記傾斜パイルブラシに押圧されている。このテンション機構は前記無端ベルトのテンションを解除可能に構成されている。
【0029】
これにより、テンション機構による無端ベルトへのテンション付与を解除することで、無端ベルトと傾斜パイルブラシとの圧接を解除でき、この状態で傾斜パイルブラシを容易に交換することができる。従って、メンテナンス作業の負担を軽減できる。
【0030】
本発明の他の観点によれば、前記クリーニング装置を備えるドラフト装置、及び、このドラフト装置を備える繊維機械が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、並設された多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2を備えた、繊維機械としての紡績機1を示している。
【0032】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11と、巻取装置12と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は紡績機1本体のケーシング6の上部に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11で下方へ送られ、糸の欠陥を検出して糸切断を行って糸欠陥部分を除去するためのクリアラー(糸欠陥検出器)32を経て、巻取装置12によって巻き取られ、パッケージ33を形成する。
【0033】
この紡績機1は、ブロアボックス80と、原動機ボックス81と、を備えている。また、図では省略しているが、紡績機1は、互いに独立に走行可能な糸継台車と玉揚台車とを備える。糸継台車と玉揚台車は何れも、紡績ユニット2が並べられる方向に走行自在に設けられている。
【0034】
図2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11の構成を示す拡大側面図である。図2に示すように、ドラフト装置7は、スライバ13を延伸して繊維束8にするためのドラフトローラを備える。前記ドラフトローラは、互いに対向して配置されるトップローラとボトムローラにより構成されている。
【0035】
トップローラは、バックローラ14、サードローラ15、エプロンベルト18を装架したミドルローラ16、及びフロントローラ17の4つのローラから構成されている。これらのトップローラ14〜17は、ドラフト装置7が備えるカバー状のクレードル20に取り付けられている。一方、ボトムローラは、バックボトムローラ24、サードボトムローラ25、エプロンベルト28を装架したミドルボトムローラ26、及びフロントボトムローラ27の4つのローラから構成されている。それぞれのボトムローラ24〜27はドラフト装置7本体側に取り付けられるとともに、前記トップローラ14〜17に対向するように配置されている。
【0036】
クレードル20の内部には図略のスプリングボックスが備えられ、このスプリングボックスによって、前記トップローラ14〜17が前記ボトムローラ24〜27に対し押圧されるように付勢される。これによって、スライバ13をトップローラ14〜17とボトムローラ24〜27とでニップすることができる。
【0037】
前記クレードル20は、図1に示すように2つの紡績ユニット2に対して1つ設けられ、前記トップローラ14〜17及びボトムローラ24〜27はクレードル20の両側の面に1つずつ取り付けられる。
【0038】
以上の構成で、ドラフト装置7に送られたスライバ13は、速度をそれぞれ異ならせながら回転駆動されるドラフトローラによって延伸され、繊維束8となって紡績装置9へ送られる。紡績装置9は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を空気紡績する。空気紡績された繊維束8は、紡績糸10となって糸送り装置11に送られる。
【0039】
糸送り装置11は、図2に示すように、紡績機1本体のケーシングに支持されたデリベリローラ30と、デリベリローラ30に接離自在に設けられたニップローラ31と、を備える。この構成で、紡績装置9から排出された紡績糸10をデリベリローラ30とニップローラ31との間に挟んでデリベリローラ30を回転駆動させることにより、紡績糸10を巻取装置12側へ送ることができる。
【0040】
前記クレードル20は回動軸部29を備えており、この回動軸部29を中心として回動することにより、ドラフト装置7に対して開閉可能に構成されている。また、クレードル20には、メンテナンス作業時にクレードル20を開くためのクレードルハンドル23が取り付けられている。
【0041】
ドラフト装置7の上方には、ドラフトローラを清掃するクリーニング装置60が備えられている。このクリーニング装置60はフレーム61を備え、このフレーム61はクレードル20の側面に固定されている。
【0042】
図3は、ドラフト装置7とクリーニング装置60を示す斜視図である。図2及び図3に示すように、前記フレーム61には、第1ローラ71と第2ローラ(ベルト支持ローラ)72が回転可能に支持されている。また、フレーム61には付勢レバー62が回動可能に取り付けられ、この付勢レバー62の先端にはテンションローラ73が回転可能に支持されている。
【0043】
前記第1ローラ71、第2ローラ72、及びテンションローラ73には、無端状の清掃ベルト(無端ベルト)74が巻き掛けられている。清掃ベルト74は、図2に示すように、その外周面(清掃面)が、トップローラ14〜17のうち、バックローラ14、サードローラ15、及びミドルローラ16(エプロンベルト18)の外周面に接触するように配置されている。前記付勢レバー62には図略の付勢バネが取り付けられており、清掃ベルト74にテンションを付与する方向に付勢レバー62を付勢している。テンションローラ73、付勢レバー62、及び付勢バネにより、清掃ベルト74にテンションを付与するためのテンション機構が構成されている。なお、このテンション機構は、付勢バネに抗する向きに付勢レバー62を手で掴んで回動することで、清掃ベルト74のテンションを解除し、弛ませた状態とすることができる。
【0044】
以上の構成で、バックローラ14、サードローラ15、及びエプロンベルト18は、その外周面を前記清掃ベルト74に接触させた状態で回転する。これにより、ドラフトローラ外周面の付着物を清掃ベルト74により清掃することができる。
【0045】
前記第1ローラ71は、ミドルローラ16の近傍に配置されている。また、第1ローラ71には、数枚のギア歯を有するギア部材63が固定されている。一方、ミドルローラ16の軸方向一端にはボス部64が突設され、このボス部64から回転突起(送りカム部、回転係合部)65が突出されている。この回転突起65は径方向を向くように形成されており、その先端が前記ギア部材63に対し係合可能に構成されている。
【0046】
回転突起65はミドルローラ16とともに回転し、1周するごとに前記ギア部材63に係合して、ギア部材63を1歯分ずつ回転させる。これにより第1ローラ71が回転され、清掃ベルト74が適宜の量だけ送られる。
【0047】
この結果、ミドルローラ16が1回転するごとに、清掃ベルト74の新鮮な清掃面がトップローラ14、サードローラ15、及びエプロンベルト18に接触するようになり、その清掃効果を高めることができる。また、この間欠送りにより、必要なとき以外は清掃ベルト74の駆動を止めて、清掃対象としてのトップローラ14、サードローラ15、及びエプロンベルト18それぞれの外周面に対して大きな相対速度差を付与することができる。この結果、一層良好な清掃効果が得られる。
【0048】
クリーニング装置60はローラフレーム75を備え、このローラフレーム75は前記第2ローラ72の近傍に配置されている。また、クリーニング装置60は、ローラフレーム75に着脱可能なブラシローラ76を備えている。このブラシローラ76の径は、清掃対象のドラフトローラ(バックローラ14、サードローラ15及びミドルローラ16)の径よりも大きく構成されている。
【0049】
このブラシローラ76の外周面には、可撓性のブラシシート77が巻き付けられ、接着により固定されている。このブラシシート77はいわゆる傾斜パイル地として構成されており、所定の方向へ倒伏させた短いパイルが多数植え付けられたものである。以上により、ブラシローラ76の外周面に傾斜パイルブラシが構成される。ブラシローラ76は、この傾斜パイルブラシを前記清掃ベルト74の外周面(清掃面)に接触させるように配置される。前記清掃ベルト74は前記テンション機構によってテンションが付与されており、これによって清掃ベルト74が前記傾斜パイルブラシに押圧される。
【0050】
前記ローラフレーム75にはプーリ78が回転可能に支持されている。このプーリ78及び第2ローラ72にはロープ79が巻き掛けられており、これによって、プーリ78と第2ローラ72とが連結される。前記ブラシローラ76をローラフレーム75にセットしたとき、当該ブラシローラ76は前記プーリ78に対し相対回転不能に連結される。なお、この構成の詳細は後述する。
【0051】
次に、ドラフトローラの付着物を吸引して除去するための構成について説明する。図2に示すように、クレードル20の上面にはサクションカバー85が設置され、このサクションカバー85の側面には、第1サクションパイプ86及び第2サクションパイプ87が備えられている。第1サクションパイプ86及び第2サクションパイプ87は、それぞれ前記ブロアボックス(負圧源)80に接続されている。
【0052】
第1サクションパイプ86はブラシローラ76の近傍位置まで延長されて、その先端の吸引口を前記ブラシローラ76の外周面の傾斜パイルブラシに近接させている。第2サクションパイプ87はフロントローラ17の近傍位置まで延長されて、その先端の吸引口をフロントローラ17の外周面に近接させている。これにより、ブラシローラ76及びフロントローラ17の表面の付着物を吸引して除去することができる。
【0053】
以上の構成で、ミドルローラ16の回転突起65によって清掃ベルト74が駆動されると、第2ローラ72が回転し、これにロープ79を介して連結されるプーリ78も回転する。この結果、ブラシローラ76は図4に示すように、駆動される清掃ベルト74の外周面を逆向きに擦るように回転される。
【0054】
以上により、清掃ベルト74の表面に付着する風綿等は、ブラシローラ76の外周面の短い傾斜パイルによって絡め取られ、良好に清掃される。ブラシローラ76に絡め取られた付着物は、ブラシローラ76の回転に伴って第1サクションパイプ86の吸引口近傍まで移動し、当該第1サクションパイプ86に吸い込まれて除去される。
【0055】
なお、上述のとおり、清掃ベルト74とブラシローラ76とはロープ79により連動されている。従って、清掃ベルト74が駆動されると、図4の矢印に示すように、清掃ベルト74の外周面とブラシローラ76の外周面との接触箇所では、逆向きに擦り合わせるような作用が営まれることになる。この結果、ブラシローラ76に絡め取られた風綿等が、帯状に丸められつつブラシローラ76の表面から若干浮き上がり、図4の符号90のような状態になる。従って、付着物90がブラシローラ76の表面から剥がれるのが容易になるので、第1サクションパイプ86によって簡単に吸引除去することができる。
【0056】
図5はクレードル20及びサクションカバー85を上側から見た図であり、サクションカバー85の内部においてブロアボックス80と第1サクションパイプ86及び第2サクションパイプ87とを接続する構成が示されている。
【0057】
サクションカバー85の内部には、パイプからなる吸引経路88が設けられている。この吸引経路88の一端はブロアボックス80に接続されている。吸引経路88の他端は、適宜屈曲してサクションカバー85の側面に開口を形成し、この部分に前記第2サクションパイプ87の基部が接続されている。
【0058】
また、吸引経路88のストレート部の中途位置からは、分岐路89が分岐されている。この分岐路89もサクションカバー85の側面に開口を形成し、この開口に前記第1サクションパイプ86の基部が接続される。
【0059】
第1サクションパイプ86の吸引口は、図4等に示すように、ブラシローラ76の外周面に沿う円弧状に形成されている。これにより、ブラシローラ76の外周面と吸引口との間の隙間を小さくして、第1サクションパイプ86の流量を減らすことができる。この結果、小さな容量のブロアボックス80でも、第1サクションパイプ86及び第2サクションパイプ87による良好な吸引効果が得られる。
【0060】
また、前記分岐路89と前記ストレート部とがなす角度(図5の角度A1)は、50°以上70°以下の角度であり、本実施形態では60°とされている。これにより、分岐路89の分岐箇所での圧力損失を小さく抑え、第2サクションパイプ87でフロントローラ17の外周面を良好に吸引することができる。なお、角度A1が50°未満であると、第2サクションパイプ87側に過度の圧力損失が生じてしまう。一方、角度A1が70°を上回ると、第1サクションパイプ86側の吸引圧力が弱まり、ブラシローラ76上の付着物90を良好に吸引することができない。
【0061】
次に、クリーニング装置60に対するブラシローラ76の装着のための構成について、図6を参照して説明する。図6はブラシローラ76をクリーニング装置60のローラフレーム75に装着する様子を示す斜視図である。
【0062】
ローラフレーム75に支持される前記プーリ78は、その中心部に装着ボス91を備えている。この装着ボス91はプーリ78から略截頭円錐状に突出するよう形成されており、その中心に嵌合凹部92が形成されている。
【0063】
装着ボス91はプーリ78に対し、軸方向にスライド可能に取り付けられている。また、プーリ78の内部には図略のバネが設置されており、装着ボス91を突出方向に付勢している。
【0064】
前記装着ボス91の嵌合凹部92には突起93が形成されている。一方、前記ブラシローラ76の軸部94には、前記突起93に嵌合可能な溝95が形成されている。
【0065】
以上の構成で、図6の矢印で示すようにブラシローラ76をローラフレーム75内に差し込んでいくと、プーリ78の装着ボス91が、ブラシローラ76の軸部94によって押し込まれる。そして、ブラシローラ76の軸部94の位置が嵌合凹部92に一致し、かつ他側の軸部96がローラフレーム75の図略の軸受に差し込まれると、装着ボス91が再び突出し、軸部94と嵌合凹部92とが嵌合する。また、嵌合凹部92の突起93と軸部94の溝95が嵌合することで、プーリ78とブラシローラ76が相対回転不能に連結される。以上により、ブラシローラ76のクリーニング装置60への装着が完了する。
【0066】
なお、ブラシローラ76の外周面に巻き付けられる前記ブラシシート77は、当該ブラシローラ76の外周とほぼ等しい長さを有する細長い形状に構成されている。そして、このブラシシート77の長手方向端部の輪郭は、矢印を崩したような図形97(方向指示部)を含んでいる。また、この図形97が示す方向は、ブラシにおけるパイルの倒伏方向と一致させている。
【0067】
以上の構成のブラシシート77は、その端部を見ることで、傾斜パイルブラシの方向を簡単に確認することができる。従って、ブラシローラ76の製造時にブラシシート77を正規と反対の向きに取り付けてしまうミスを防止できる。また、ブラシローラ76の外周面に巻かれたブラシシート77の継ぎ目を見れば傾斜パイルブラシの方向が簡単に判るので、クリーニング装置60にブラシローラ76を正規と反対の向きに取り付けてしまうミスを容易に防止することができる。
【0068】
以上に示すように、本実施形態の紡績機1が備えるドラフト装置7は、以下の構成のクリーニング装置60を備えている。即ち、このクリーニング装置60は、ドラフトローラの外周面に接触してその表面を清掃する清掃面を有する清掃ベルト74と、この清掃ベルト74の前記清掃面に接触可能な傾斜パイルブラシと、を備える。
【0069】
これにより、傾斜パイルブラシを強い力で清掃ベルト74に押し当てなくても、その表面の付着物を効果的に絡め取って、良好に清掃することができる。本実施形態では、(清掃ベルト74にテンションを付与するための)付勢レバー62の付勢力によって、清掃ベルト74をブラシローラ76の外周面に圧接しており、この程度の圧接力でも良好な清掃効果が得られる。従って、清掃ベルト74を傷めることなく、ドラフトローラの清掃効果を向上させることができる。
【0070】
また、前記クリーニング装置60は回転可能なブラシローラ76を備え、前記傾斜パイルブラシは前記ブラシローラ76の外周面に固定されている。
【0071】
これにより、ブラシローラ76の回転による清掃ベルト74の連続的な清掃が可能になり、清掃効果を一層高めることができる。
【0072】
また、前記クリーニング装置60は第2ローラ72を備え、この第2ローラ72は前記清掃ベルト74を支持するように構成されている。そして、前記ブラシローラ76は前記第2ローラ72とロープ79等を介して連結されている。
【0073】
これにより、ブラシローラ76を回転駆動するための構成が簡素化され、製造コストを低減できる。
【0074】
また、本実施形態のクリーニング装置60においては、清掃ベルト74が駆動されると、ブラシローラ76は、その外周面で当該清掃ベルト74の前記清掃面を逆向きに擦るように回転する。
【0075】
これにより、ブラシローラ76の外周面の傾斜パイルブラシに絡め取られた風綿等が、清掃ベルト74とブラシローラ76の擦り合わせ作用によって、帯状に丸められつつブラシ表面から浮き上がることになる(図4の付着物90)。従って、風綿等の付着物90をブラシローラ76の外周面から容易に除去できるので、清掃が一層容易になる。
【0076】
また、前記クリーニング装置60はローラフレーム75を備え、このローラフレーム75はブラシローラ76を回転可能に支持している。そして、前記ブラシローラ76は前記ローラフレーム75に対し着脱可能に取り付けられる。
【0077】
これにより、例えば長期間の使用に伴ってブラシローラ76の外周面のブラシにヘタリが生じたり、ブラシに風綿等が多量に蓄積された場合に、他のブラシローラに交換することで、元の良好な清掃効果を発揮する状態に容易に戻すことができる。
【0078】
また、前記ブラシローラ76の径は、前記ドラフトローラ(バックローラ14、サードローラ15、及びミドルローラ16)の径より大きく構成されている。
【0079】
これにより、大径のブラシローラ76の外周面に、広い面積の傾斜パイルブラシを設けることができる。従って、風綿等がブラシに多少蓄積しても清掃ベルト74を安定して良好に清掃できるので、メンテナンスの必要頻度を少なくできる。
【0080】
また、本実施形態において、前記傾斜パイルブラシは可撓性のブラシシート77の表面に形成され、このブラシシート77が前記ブラシローラ76の外周面に固定されている。そして、ブラシシート77の長手方向端部の輪郭は、傾斜パイルブラシにおいてパイルの倒伏方向を示す図形97を含む。
【0081】
これにより、ブラシシート77におけるパイルの倒伏方向を簡単に確認できる。従って、ブラシローラ76の製造時において、ブラシシート77をブラシローラ76に対して正規と逆方向に取り付けてしまうミスを簡単に防止できる。また、ブラシローラ76を正規と逆方向にクリーニング装置60に取り付けてしまうミスを簡単に防止できる。
【0082】
また、本実施形態のクリーニング装置60は第1サクションパイプ86を備え、この第1サクションパイプ86の吸引口が、ブラシローラ76の外周面の傾斜パイルブラシに対面している。
【0083】
これにより、傾斜パイルブラシに絡め取られた風綿等を、第1サクションパイプ86で吸引して除去できる。従って、傾斜パイルブラシに蓄積した付着物90を取り除くメンテナンス作業が不要になり、オペレータの負担を著しく軽減できる。
【0084】
また、本実施形態のクリーニング装置60は第2サクションパイプ87を備え、この第2サクションパイプ87の吸引口はフロントローラ17の外周面に対面している。そして、第2サクションパイプ87とブロアボックス80とを接続する吸引経路88のストレート部から50°以上70°以下の角度(60°)をなして分岐路89を分岐させ、この分岐路89を前記第1サクションパイプ86に接続している。
【0085】
これにより、第1サクションパイプ86によりブラシローラ76の外周面の付着物90を良好に吸引できると同時に、第2サクションパイプ87側の圧力損失を抑え、フロントローラ17を良好に清掃することができる。
【0086】
また、本実施形態のクリーニング装置60は、テンションローラ73と付勢レバー62と付勢バネによりなるテンション機構を備え、このテンション機構によって清掃ベルト74にテンションを付与することで、当該清掃ベルト74をブラシローラ76の外周面(傾斜パイルブラシ)に押圧する構成になっている。そして、このテンション機構は、前記付勢レバー62を前記付勢バネに抗して回動させることにより、清掃ベルト74のテンションを解除できるように構成されている。
【0087】
これにより、付勢レバー62を回動させて清掃ベルト74へのテンション付与を解除することで、清掃ベルト74と傾斜パイルブラシとの圧接を解除でき、これによりブラシローラ76(傾斜パイルブラシ)を容易に交換することができる。従って、メンテナンス作業の負担を軽減できる。
【0088】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0089】
ブラシローラ76の外周面に傾斜パイルブラシを設置することに代えて、例えばパッドに傾斜パイルブラシを設け、このパッドを前記清掃ベルト74の表面に接触させる構成に変更することができる。
【0090】
ブラシローラ76の外周面を吸引する第1サクションパイプ86は、省略することができる。この場合、ブラシローラ76の外周面の付着物90をオペレータが手で摘んで取り除くことが考えられる。あるいは、ある程度付着物が蓄積したらブラシローラ76ごと新しいものに交換するようにしても良い。
【0091】
清掃ベルト74とブラシローラ76とを、ロープ79に代えて、例えば伝動ベルトによって連結する構成に変更することができる。あるいは、前記第2ローラ72に駆動ギアを設けるとともに、前記ブラシローラ76に連結可能な従動ギアを前記プーリ78の代わりに設け、この従動ギアと前記駆動ギアの双方に噛合する中間ギアを備えることで、清掃ベルト74とブラシローラ76とを連結する構成に変更することができる。また、清掃ベルト74とブラシローラ76を連動させずに、例えば電動モータを別途備えて、この電動モータによりブラシローラ76を駆動する構成に変更することができる。
【0092】
上記実施形態のクリーニング装置60は、ミドルローラ16(エプロンベルト18)、サードローラ15、及びバックローラ14を清掃ベルト74による清掃対象としている。しかしながら、清掃ベルト74が清掃対象とするドラフトローラは任意に変更することができ、例えばフロントローラ17を清掃ベルト74で清掃することもできる。
【0093】
上記のクリーニング装置60は、ドラフトローラの構成(例えば、ドラフトローラの数)が異なる他の形式のドラフト装置に適用することができる。
【0094】
上記のクリーニング装置60を備えたドラフト装置7は、上記の紡績機1のほか、例えば粗紡機等の他の繊維機械に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の正面図。
【図2】ドラフト装置及びドラフトローラのクリーニング装置を示す側面図。
【図3】ドラフト装置及びドラフトローラのクリーニング装置を示す斜視図。
【図4】清掃ブラシの表面の付着物を傾斜パイルブラシが絡め取っている様子を示す側面拡大図。
【図5】サクションカバーの内部の吸引経路の構成を示す図。
【図6】ブラシローラをクリーニング装置のフレームに装着する様子を示す斜視図。
【符号の説明】
【0096】
1 紡績機(繊維機械)
14 バックローラ(ドラフトローラ)
15 サードローラ(ドラフトローラ)
16 ミドルローラ(ドラフトローラ)
60 クリーニング装置
72 第2ローラ(ベルト支持ローラ)
74 清掃ベルト(無端ベルト)
75 ローラフレーム(フレーム)
76 ブラシローラ
77 ブラシシート
79 ロープ
80 ブロアボックス(負圧源)
86 第1サクションパイプ(サクションパイプ)
87 第2サクションパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフトローラの周面に接触してその表面を清掃する清掃面を有する無端ベルトと、
この無端ベルトの前記清掃面に接触可能な傾斜パイルブラシと、
を備えることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
回転可能なブラシローラを備え、前記傾斜パイルブラシは前記ブラシローラの外周面に固定されていることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記無端ベルトを支持するベルト支持ローラを備え、
前記ブラシローラは前記ベルト支持ローラと連結されていることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記無端ベルトが駆動されると、前記ブラシローラは、その外周面で当該無端ベルトの前記清掃面を逆向きに擦るように回転することを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記ブラシローラを回転可能に支持するローラフレームを備え、
前記ブラシローラはこのローラフレームに対し着脱可能に取り付けられることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項6】
請求項2から5までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記ブラシローラの径は前記ドラフトローラの径より大きいことを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項7】
請求項2から6までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記傾斜パイルブラシは可撓性のブラシシートの表面に形成され、このブラシシートが前記ブラシローラの外周面に固定されており、
前記ブラシシートの長手方向端部の輪郭は、前記傾斜パイルブラシにおいてパイルの倒伏方向を示す方向指示部を含むことを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
サクションパイプを備え、このサクションパイプの吸引口が前記傾斜パイルブラシに対面していることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項9】
請求項8に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
第2サクションパイプを備え、この第2サクションパイプの吸引口は前記ドラフトローラの外周面に対面しており、
前記第2サクションパイプと負圧源とを接続する経路のストレート部から50°以上70°以下の角度をなして分岐路を分岐させ、この分岐路を前記サクションパイプに接続したことを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記無端ベルトにテンションを付与するテンション機構を備え、このテンション機構により前記無端ベルトが前記傾斜パイルブラシに押圧されており、
このテンション機構は前記無端ベルトのテンションを解除可能に構成されていることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置を備えるドラフト装置。
【請求項12】
請求項11に記載のドラフト装置を備える繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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