説明

ドラムコアの巻線方法及びその巻線装置

【課題】小型のドラムコアの自動供給し、工程不良の低減や作業能率の向上を図り、生産性に優れたドラムコアの巻線方法を提供する。また、構造がシンプルで低コストで作製可能なドラムコアの巻線装置を提供する。
【解決手段】
本発明のドラムコアの巻線方法は、複数のドラムコアを整列収納するドラムコア収納部を具え、ドラムコア収納部からドラムコアを1つずつ間欠的にガイド部内に供給する。ガイド部内を複動可能な2本のシャフトを具え、ガイド部内でドラムコアの両端の鍔部を2本のシャフトにより挟持し、2本のシャフトで挟持した状態でドラムコアを巻線位置まで誘導する。巻線位置においてドラムコアを2本のシャフトで挟持した状態で、シャフトの回転により巻線することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドラムコアの巻線方法及びその巻線装置に関し、特にドラムコアの供給機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラムコアに線材を巻線したドラムタイプの磁気素子が電子機器などに広く用いられている。近年における電子機器の小型化や高機能化により、それらに用いられている磁気素子についても小型化や低背化が要求されている。磁気素子の小型化に伴ってドラムコアも小型化や低背化している。
【0003】
従来の一般的なドラムコアの巻線方法は、作業者が直接巻線チャックなどの巻治具にドラムコアを固定し、巻治具に固定されたドラムコアに線材を巻線していた。しかしながら、小型のドラムコアは機械的強度が弱く、小型であるためその取り扱いも難しい。そのため、この方法ではドラムコアの破損や仕損じなどの工程不良の増加や作業能率の低下、製造コストの上昇が生じてしまい生産性を悪化させていた。そこで、小型のドラムコアを巻線装置へ自動供給することが望まれている。
【特許文献1】特開2006−351836号
【特許文献2】特開2006−253578号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コア部材を巻線装置に自動供給する方法は従来から研究されており、例えば、特許文献1や特許文献2などに開示されている。特許文献1には、搬入機を用いてコア部材を巻線装置の巻線チャックへ受け渡す方法が開示されている。しかし、この方法では搬入機を新たに設ける必要がある。また、搬入機からコア部材を受け取るために高い加工精度の巻線チャックを複雑な形状で作成する必要がある。そのため、この方法では巻線装置が複雑化するとともに大型化し、作製コストの上昇なども招いてしまう。
【0005】
また、従来の巻線チャックは、ドラムコアを保持する際にドラムコアの鍔部を把持して固定する。そのため、巻線チャックの把持力が弱いと巻線時に線材のテンションによってドラムコアが位置ズレしたり、巻線チャックから離脱してしまうことがあった。しかし、位置ズレや離脱を防ぐために巻線チャックの把持力を強くすると、鍔部が薄い小型のドラムコアは機械的強度が弱いためチッピングや破損などの不良が生じやすかった。そのため、巻線チャックの把持力を安易に強くすることはできなかった。
【0006】
特許文献2には、複数のドラムコアを整列収納部に収納し、整列収納部からガイド部の穴口部内へドラムコアを少なくとも1つ供給した後、シャフトを用いてドラムコアを巻治具まで誘導する方法が開示されている。この方法では特許文献1のように搬入機を新たに設ける必要はない。しかし、ドラムコアを巻治具まで誘導するときにドラムコアはその鍔部の一方面からのみ付勢される。そのため、図8(a)に示すような両端の鍔部2aの径が同じドラムコアを用いても、ガイド部内でドラムコアのバランスが崩れやすく、ドラムコアが引っ掛かったり、傾斜した状態で巻治具に誘導されるためドラムコアの破損が生じることもあった。
【0007】
さらに、図8(b)に示すような両端の鍔部2aの径が異なるドラムコアを用いた場合には、ドラムコアがガイド部内で傾斜した状態になるため、このようなドラムコアを供給することはできなかった。そのため、この方法を用いてドラムコアを安定して供給することは難しかった。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、小型のドラムコアを自動供給し、工程不良の低減や作業能率の向上を図り、生産性に優れたドラムコアの巻線方法を提供することである。また、本発明の第2の目的は、ドラムコアを自動供給する構成を複雑化させずに低コストで作製可能なドラムコアの巻線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のドラムコアの巻線方法は、複数のドラムコアを整列収納するドラムコア収納部を具え、ドラムコア収納部からドラムコアを1つずつ間欠的にガイド部内に供給する。ガイド部内を複動可能な2本のシャフトを具え、ガイド部内でドラムコアの両端の鍔部を2本のシャフトによりドラムコアを挟持し、2本のシャフトで挟持した状態でドラムコアを巻線位置まで誘導する。巻線位置においてドラムコアを2本のシャフトで挟持した状態で、シャフトの回転により巻線することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のドラムコアの巻線方法は、ドラムコアが巻線装置の巻線位置まで誘導されるとき、ドラムコア収納部において整列収納され、ガイド部内で1つずつ間欠的に供給される。そして、その後にドラムコアは2本のシャフトによって両端の鍔部を挟持した状態で巻線位置まで誘導される。そのため、ドラムコアは位置ズレやバランスを崩さず、容易に精度よく、両端の鍔部の径が異なるドラムコアを用いても巻線位置まで自動供給することができる。従って、本発明の巻線方法は、ドラムコアの破損などの工程不良の低減や作業能率の向上を容易に達成でき、非常に生産性に優れる。
【0011】
本発明のドラムコアの巻線方法では、2本のシャフトによってドラムコアの両端の鍔部を挟持し、さらにガイドシリンダとシャフトガイドによってドラムコアの外周をカバーする。そのため、巻線する際に線材のテンションが高くても、ドラムコアの位置ズレや離脱が生じない。また、従来のようにドラムコアの鍔部の外周を把持して固定しないため、薄い鍔部のドラムコアを使用してもチッピングや破損することなく巻線することができる。
【0012】
本発明のドラムコアの巻線装置は非常にシンプルな構造であるため、巻線装置が複雑化したり、大型化したりせず、低コストで作製が可能である。また、本発明のドラムコアの巻線装置は、従来のようにドラムコアの鍔部の外周を把持して固定しないため、高い加工精度での作製を必要とせず、さらにドラムコアのチッピングや破損なども生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図7を参照しながら、本発明のドラムコアの巻線方法とドラムコアの巻線装置についての実施例を説明する。図1〜図7に本発明の実施例に係るドラムコアの主な巻線工程の概略図を示す。図1〜図7はそれぞれ、図1は初期状態、図2と図3はドラムコアを間欠供給する状態、図4はドラムコアを挟持する状態、図5はドラムコアを誘導する状態、図6はドラムコアに線材を巻線する状態、図7はコイルを排出する状態を示す。なお、本実施例では、図8(b)に示すような両端の鍔部の径が異なるドラムコアに線材を外外巻きで巻線する方法を説明する。
【0014】
まず、本発明の巻線装置は図1に示すように、ドラムコア収納部1、ガイドブロック3、第1のストッパーピン4、第2のストッパーピン5、ガイドシリンダ6、第1のシャフト7、第2のシャフト8、シャフトガイド9を有する。なお、ガイドブロック3とガイドシリンダ6が特許請求の範囲におけるガイド部に相当する。
【0015】
ドラムコア収納部1は、ガイドブロック3に装着可能なカートリッジ構造を有し、複数のドラムコア2を整列した状態で収納することができる。ドラムコア収納部1をガイドブロック3に装着すると、ドラムコア収納部1内の複数のドラムコア2はガイドブロック3内に供給される。ガイドブロック3は、その送路3a内に突き出してドラムコア2の供給を止める第1のストッパーピン4と第2のストッパーピン5を有し、第1のストッパーピン4と第2のストッパーピン5との間にはドラムコア2が1つだけ収まる間隔を有する。なお、本実施例の初期状態では第1のストッパーピン4と第2のストッパーピン5がガイドブロック3の送路3aに突き出し、その間にドラムコア2が1つ収まった状態にする。
【0016】
ガイドシリンダ6は中空構造であり、その中空部6aはガイドブロック3の送路3aと繋がる。ガイドブロック3は第1のシャフト7を送路3a内に導入するためのシャフト導入口3bを有し、シャフト導入口3bと中空部6aはそれらの中心が同一直線上になるように配される。第1のシャフト7は、シャフト導入口3bから挿入され、ガイドブロック3の送路3aの一部とガイドシリンダ6の中空部6a内を複動する。なお、本実施例の初期状態では第1のシャフト7をその端部がガイドシリンダ6の端部付近になるようセットする。
【0017】
シャフトガイド9は中空構造であり、第2のシャフト8はその中空部9aに挿入される。シャフトガイド9は、ガイドブロック3のシャフト導入口3bとガイドシリンダ6の中空部6aの中心が通る直線上にその中空部9aの中心が通るよう配される。シャフトガイド9は中空部9aの中心が通る直線方向に移動可能で、シャフトガイド9を移動させることによってガイドシリンダ6と接近又は離間させることができる。なお、本実施例の初期状態ではガイドシリンダ6とシャフトガイド9との間隔はドラムコア2の高さよりも小さくする。
【0018】
第2のシャフト8は、シャフトガイド9の中空部9aに挿入され、ガイドブロック3の送路3aの一部とガイドシリンダ6の中空部6aとシャフトガイド9の中空部9a内を複動する。なお、本実施例の初期状態では第2のシャフト8をその端部がシャフトガイド9の端部付近になるようセットする。線材10は線材供給機構(図示せず)から所定量引き出し、所定の位置にセットする。
【0019】
次に図2に示すように、第1のシャフト7と第2のシャフト8にそれぞれ外力を与えて、それらの間の空間がガイドブロック3の送路3aと繋がる位置まで移動させる。次に送路3a内の第2のストッパーピン5の突き出しを解除し、第1のストッパーピン4と第2のストッパーピン5の間に収納されていたドラムコア2を第1のシャフト7と第2のシャフト8の間の空間に供給する。このとき、第1のストッパーピン4と第2のストッパーピン5の間に収納されていたドラムコア2以外の複数のドラムコア2は第1のストッパーピン4によって供給されない。
【0020】
次に図3に示すように、第2のストッパーピン5を再び送路3a内に突き出し、その後第1のストッパーピン4の突き出しを解除する。これにより、第1のストッパーピン4のによって止められていたドラムコア2がドラムコア1つ分だけ落下し、第2のストッパーピン4によって保持される。このとき、ドラムコア収納部1内からガイドブロック3内にドラムコア2が1つ供給される。
【0021】
次に図4に示すように、第1のシャフト7と第2のシャフト8に外力を加え、ドラムコア2をドラムコア2の鍔部の両側から挟持する。そして、第1のストッパーピン4を再び送路3a内に突き出す。これにより、第1のストッパーピン4と第2のストッパーピン5との間にはドラムコア2が1つだけ収納されるとともに、このドラムコア2を複数のドラムコア2と分離する。この第1のストッパーピン4と第2のストッパーピン5の一連の動作によってドラムコア2を1つずつ間欠的に供給することができ、これらが特許請求の範囲における間欠供給機構に相当する。
【0022】
次に図5に示すように、第1のシャフト7と第2のシャフト8で挟持した状態で、ドラムコア2をガイドブロック3の送路3aからガイドシリンダ6の中空部6aに通して巻線位置まで誘導する。
【0023】
次に図6に示すように、巻線位置に誘導したドラムコア2に線材10を所定数巻線する。このとき、ドラムコア2は第1のシャフト7と第2のシャフト8で挟持して固定する。さらに、ドラムコア2の両鍔部のそれぞれをガイドシリンダ6の中空部6aとシャフトガイド9の中空部9a内に侵入させて、ドラムコア2の線材10を巻線する部分のみが露出した状態で固定する。これにより、ドラムコア2は、第1のシャフト7と第2のシャフト8によってドラムコア2の両端の鍔部を挟持し、さらにガイドシリンダ6とシャフトガイド9によってドラムコア2の外周が保持される。そのため、線材10を巻線する際に線材10のテンションが高くても、ドラムコア2の位置ズレや離脱が生じない。また、従来のようにドラムコアの鍔部を把持して固定しないため、薄い鍔部のドラムコアを使用しても破損することなく線材を巻線できる。
【0024】
外外巻きでドラムコア2に線材10を巻線させる方法は、例えば、ガイドシリンダ6、第1のシャフト7、第2のシャフト8、シャフトガイド9を回転させてドラムコア2を自転させ、さらに同時に線材チャック(図示せず)に挟持されている線材10の端部をドラムコア2に対して公転させて巻線する。
【0025】
次に図7に示すように、第2のシャフト8とシャフトガイド9を移動させて、ガイドシリンダ6と第1のシャフト7から第2のシャフト8とシャフトガイド9を離間させる。離間させた後、線材10を鋏で切り離してコイル11を排出する。コイル排出後、再び第1のシャフト7、第2のシャフト8、シャフトガイド9を初期位置に移動させて初期状態に戻し、巻線動作を連続して行う。
【0026】
上記実施例では、ドラムコア収納部をカートリッジ構造にしたが、それに限られることはなく、例えばガイドブロックと一体となった構造でも実施できる。そして、上記実施例では外外巻きでドラムコアに線材を巻線させたが、線材の巻き方はどのようなものでも実施できる。
【0027】
上記実施例では、間欠供給機構として2本のストッパーピンを使用したスライドシャッタ形分離機構を用いたが、その他の止めはずし式分離機構のロッカーアーム形分離機構などを用いても実施できる。シャトル形分離機構などの切り取り式分離機構を用いても実施できるが、ドラムコア同士の噛み込みが生じる可能性があるため止めはずし式分離機構を用いる方が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係るドラムコアの巻線方法の一部を示す概略図であり、初期状態を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るドラムコアの巻線方法の一部を示す概略図であり、ドラムコアを間欠供給する状態を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るドラムコアの巻線方法の一部を示す概略図であり、ドラムコアを間欠供給する状態を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るドラムコアの巻線方法の一部を示す概略図であり、ドラムコアを挟持する状態を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係るドラムコアの巻線方法の一部を示す概略図であり、ドラムコアを誘導する状態を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係るドラムコアの巻線方法の一部を示す概略図であり、ドラムコアに線材を巻線する状態を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係るドラムコアの巻線方法の一部を示す概略図であり、コイルを排出する状態を示す図である。
【図8】一般的なドラムコアの側面図であり、(a)は両端の鍔部の径が同じドラムコア、(b)は両端の鍔部の径が異なるドラムコアである。
【符号の説明】
【0029】
1:ドラムコア収納部、2:ドラムコア、2a:鍔部、3:ガイドブロック、3a:送路、3b:シャフト導入口、4:第1のストッパーピン、5:第2のストッパーピン、6:ガイドシリンダ、6a:中空部、7:第1のシャフト、8:第2のシャフト、9:シャフトガイド、9a:中空部、10:線材、11:コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に鍔を有するドラムコアに巻線するドラムコアの巻線方法において、
複数のドラムコアを整列収納するドラムコア収納部を具え、該ドラムコア収納部から該ドラムコアを1つずつ間欠的にガイド部内に供給し、
該ガイド部内を複動可能な2本のシャフトを具え、該ガイド部内で該ドラムコアの両端の鍔部を2本のシャフトにより挟持し、
該ドラムコアを該2本のシャフトで挟持した状態で巻線位置まで誘導し、該2本のシャフトの回転により巻線することを特徴とするドラムコアの巻線方法。
【請求項2】
両端に鍔を有するドラムコアに巻線するドラムコアの巻線装置において、
複数のドラムコアを整列して収納するドラムコア収納部と、
該ドラムコア収納部から該ドラムコアを1つずつ間欠的に供給する間欠供給機構を有し、なおかつ、間欠供給された該ドラムコアを巻線位置まで誘導するガイド部と、
該ガイド部に挿入され、該ガイド部内を複動可能な2本のシャフトと、を具備し、
該ガイド部内で該ドラムコアの両端の鍔部を該2本のシャフトにより挟持し、
該ドラムコアを該2本のシャフトで挟持した状態で巻線位置まで誘導し、該2本のシャフトの回転により巻線することを特徴とするドラムコアの巻線装置。
【請求項3】
前記間欠供給機構が止めはずし式分離機構を有することを特徴とする請求項2に記載のドラムコアの巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−50317(P2010−50317A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213799(P2008−213799)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】