説明

ドラム式洗濯機

【課題】高濃度洗剤水を洗濯物に満遍なく浸透させて、洗浄性能を向上する。
【解決手段】水槽2内に回転可能に設けられたドラム3と、ドラムを回転駆動するモータ7と、水槽に洗濯水を給水する給水手段8と、水槽内の洗濯水の水位を検知する水位検知手段24と、水槽内の洗濯水をドラム内に循環させる循環手段15と、洗い、すすぎ、脱水等の工程を制御する制御手段20とを備え、制御手段は、洗い工程の前に高濃度洗剤水を水槽内へ投入し、ドラムを遠心力が重力より大きく、かつ、ドラム内の高濃度洗剤水が洗濯物を通して水槽内へ排出される回転数で回転させ、水槽内に排出された高濃度洗剤水を循環手段によりドラム内の洗濯物に散布するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯物を洗うドラム式洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドラム式洗濯機は、洗い工程の前に少量の水で洗剤を溶かす高濃度洗剤水生成工程と、この高濃度洗剤水を衣類に浸透させる高濃度洗剤水浸透工程を設け、洗浄性能を向上させることが考えられている。
【0003】
高濃度洗剤水生成工程では、ドラムの低部が水面に接する程度の水を供給し、共振回転数以下の60〜100r/minでドラムを回転させて洗剤を溶解する。また、高濃度洗剤水浸透工程では、高濃度洗剤水をバッフルの孔からドラム内の衣類に散布するようにしたものである。また、高濃度洗剤水を薄め、ドラムを120°回転させた後、回転を停止もしくは遅くして高濃度洗剤水を衣類等に散布するようにしたものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−6767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、高濃度洗剤水をドラム内の洗濯物に満遍なく浸透させることが難しく、洗いムラが生じるという問題があった。その理由は、高濃度洗剤水は少量の水で生成され、洗濯物に散布した少量の高濃度洗剤水を浸透させることができないからである。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高濃度洗剤水をドラム内の洗濯物に満遍なく浸透させて、洗いムラがなく洗浄性能を向上させたドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のドラム式洗濯機は、水槽内に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽に洗濯水を給水する給水手段と、前記水槽内の洗濯水の水位を検知する水位検知手段と、前記水槽内の洗濯水を前記ドラム内に循環させる循環手段と、前記モータ等を制御し、洗い、すすぎ、脱水等の工程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、洗い工程の前に高濃度洗剤水を前記水槽内へ投入し、前記ドラムを遠心力が重力より大きく、かつ、前記ドラム内の高濃度洗剤水が洗濯物を通して前記水槽内へ排出される回転数で回転させ、前記水槽内に排出された高濃度洗剤水を前記循環手段により前記ドラム内の洗濯物に散布するようにしたものである。
【0008】
これによって、ドラム内の洗濯物に散布した高濃度洗剤水を、遠心力により洗濯物を通過させて水槽内へ排出することができ、ドラム内の洗濯物に高濃度洗剤水を満遍なく浸透させることにより、洗いムラをなくして洗浄性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドラム式洗濯機は、高濃度洗剤水をドラム内の洗濯物に満遍なく浸透させるこ
とができ、洗いムラをなくして洗浄性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1のドラム式洗濯機の概略構成図
【図2】同ドラム式洗濯機のブロック図
【図3】同ドラム式洗濯機の動作を示すタイムチャート
【図4】同ドラム式洗濯機の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態2のドラム式洗濯機の動作を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、筐体内に弾性支持した水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽に洗濯水を給水する給水手段と、前記水槽内の洗濯水の水位を検知する水位検知手段と、前記水槽内の洗濯水を前記ドラム内に循環させる循環手段と、前記モータ等を制御し、洗い、すすぎ、脱水等の工程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、洗い工程の前に高濃度洗剤水を前記水槽内へ投入し、前記ドラムを遠心力が重力より大きく、かつ、前記ドラム内の高濃度洗剤水が洗濯物を通して前記水槽内へ排出される回転数で回転させ、前記水槽内に排出された高濃度洗剤水を前記循環手段により前記ドラム内の洗濯物に散布するようにしたことにより、水槽内の高濃度洗剤水をドラム内の洗濯物に効率よく散布することができるとともに、ドラム内の洗濯物に散布した高濃度洗剤水を遠心力により洗濯物を通過させて水槽内へ排出することができる。したがって、ドラム内の洗濯物に高濃度洗剤水を満遍なく浸透させることができ、洗いムラをなくして洗浄性能を向上させることができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、洗い工程の前にドラムを遠心力が重力より大きく、かつ、前記ドラム内の高濃度洗剤水が水槽内へ排出される回転数を維持した状態で、高濃度洗剤水を前記水槽内へ投入するようにしたことにより、乾いた洗濯物を遠心力によってドラムの内面に偏りなく張り付いた状態にし、遠心力によって形成された洗濯物の中心部の空洞に高濃度洗剤水を散水することができ、ドラムの内面に張り付いて高速で回転している洗濯物に高濃度洗剤水を満遍なく浸透させることができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の制御手段は、洗い工程の前にドラムを遠心力が重力より大きく、かつ、前記ドラム内の高濃度洗剤水が水槽内へ排出される回転数を維持した状態で、前記水槽内の高濃度洗剤水の水位を検知するようにしたことにより、遠心力によってドラム内の洗濯物に含まれている高濃度洗剤水が水槽内へ排出されている状態で、水位を精度よく的確に検知することができる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の循環手段を循環ポンプで構成し、制御手段は、前記循環ポンプの駆動を制御する水位検知手段の閾値を、前記循環ポンプの吸い込み口が水槽内の高濃度洗剤水の水面から露出しない高さに設定したことにより、循環ポンプの吸い込み口が常時高濃度洗剤水の水面下に位置し、エア噛み現象を防止してドラム内の洗濯物への散水量を安定的に確保することができる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、水槽内に投入された高濃度洗剤水を加熱する加熱手段と、前記水槽内の高濃度洗剤水の温度を検知する温度検知手段を設け、制御手段は、高濃度洗剤水を所定の温度に加熱するようにしたことにより、投入された洗剤を少量の水で迅速に溶かすことができ、高濃度洗剤水を効果的に生成することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本案が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態のドラム式洗濯機の概略構成図、図2は、同ドラム式洗濯機のブロック図、図3は、同ドラム式洗濯機の動作を示すタイムチャート、図4は、同ドラム式洗濯機の動作を示すフローチャートである。
【0018】
図1〜図4において、ドラム式洗濯機の筐体1は、その内部には洗濯水を溜める水槽2を前上がりに傾斜させた状態に配設しており、吊り下げばね(図示せず)およびダンパー(図示せず)によって弾性支持している。水槽2内には、衣類等の洗濯物を収容する有底円筒状のドラム3が回転可能に設けられている。ドラム3の周側壁面には、複数のバッフル4と、水槽2内と連通する多数の小孔5が設けられ、前面側には洗濯物を出し入れする開口部6が設けられている。
【0019】
ドラム3を回転駆動するモータ7は、水槽2の後面に取り付けられている。モータ7はブラシレス直流モータで構成され、インバータ制御によって回転速度が自在に変化させることができるようになっている。水槽2内に洗濯水を供給する給水手段としての給水弁8は、給水路9中に設けた洗剤を投入する洗剤ケース10を介して水槽2内に洗濯水を供給する。
【0020】
水槽2内の底部には洗濯水を溜める水溜部11が設けられている。この水溜部11内に水槽2内に溜められる洗濯水の水面と略平行にヒータ12が配設され、水溜部11に溜められた洗濯水を洗濯に適した所定の温度(例えば、30〜40℃)に加熱することができる。水溜部11の温度はサーミスタ等の温度検知手段13によって検知する。
【0021】
水槽2内の水溜部11に溜められた洗濯水は、循環水路14に設けた循環手段としての循環ポンプ15によってドラム3内へ循環させることができる。水溜部11の底部に循環水路14と連通した洗濯水を吸い込む吸い込み部16を設け、ドラム3の前面側に設けた開口部6の上部に、ドラム3内に向けて洗濯水が吐出されるように吐出部17を設けている。
【0022】
循環水路14には循環ポンプ15の下流側に切換弁18が設けてあり、吐出部17に通じる循環水路14と、洗濯水を機外へ排出する排水路19のいずれかに選択的に切換えることができる。洗いおよびすすぎ時は、水溜部11内の洗濯水を循環水路14を通して吐出部17からドラム3内の洗濯物に向けて吐出することができ、洗いおよびすすぎ後の洗濯水を排水路19を通して機外へ排出することができる。
【0023】
筐体1内に設けられた制御手段20は、モータ7、給水弁8、ヒータ12、循環ポンプ15、切換弁18等を駆動し、洗い、すすぎ、脱水の各工程を逐次制御する。
【0024】
以上のように構成されたドラム式洗濯機について、以下その動作、作用を説明する。洗濯は、洗い、すすぎ、脱水の各工程からなり、最初に、一般的な標準コースの洗い工程について説明する。
【0025】
まず、筐体1の前面側に開閉自在に設けた扉21を開いて開口部6からドラム3内に洗濯物を投入し、操作部22の電源スイッチ(図示せず)をオンし、スタートスイッチ(図示せず)を操作して運転を開始すると、布量検知手段23により投入された洗濯物の量が検知され、給水弁8が動作して給水が開始されるとともに、モータ7を駆動する。
【0026】
水量は投入される布量に応じてあらかじめ設定されており、洗剤ケース10内に投入された洗剤とともに水槽2内に洗濯水が給水されるとともに、水位検知手段24により設定
量の洗濯水が給水されたことを検知すると、給水弁8を閉じて給水を停止する。
【0027】
洗い行程では、モータ7によってドラム3を例えば50rpmで正逆回転駆動し、ドラム3内の洗濯物はバッフル4によって持ち上げられ、ドラム3内の上方から水面上に落下させてたたき洗いがおこなわれる。ドラム3の回転数は、回転数検知手段25によって検知され、制御手段20により制御される。
【0028】
給水された洗濯水の温度が低いときはヒータ12に通電し、水溜部11の洗濯水を洗濯に適した温度に加熱する。温水洗浄時の洗濯水の加熱温度は、一般的には30〜40℃であり、給水時の温度が例えば10℃以下の低温時に加熱すると洗浄効果を高める上で効果的である。
【0029】
水槽2の底部に溜められた洗濯水はヒータ12によって加熱され、水溜部11の温度はその外底部に設けた温度検知手段13によって検知し、制御手段20によって洗濯水があらかじめ設定された温度になるように制御される。制御手段20は、切換弁18を循環水路14側に切換えるとともに、循環ポンプ15はあらかじめ設定された回転数で駆動し、所定量の洗濯水をドラム3内に循環させて、ドラム3内で撹拌されている洗濯物に洗濯水を浸透させることができる。
【0030】
水溜部11で加熱された温水を吐出部17から吐出して洗濯物に迅速に浸透させることにより、洗剤の溶解を促進させるとともに、衣類から汚れを分離する作用を強めて洗浄効果を高めることができる。
【0031】
循環ポンプ15により水溜部11内の洗濯水をドラム3内へ循環させることによって、水槽2内の水位が低下する。温度検知手段13によって検知した水溜部11の温度が所定温度(例えば、70℃)を超えると、循環ポンプ15の回転数を減少させて洗濯水を循環させる能力を低下させるようにしている。
【0032】
これにより、洗濯水の循環量が減少し、水槽2内の水位を上昇させることができる。水位が上昇すると水溜部11の温度が低下し、再び設定された温度に制御される。ヒータ12は上昇した洗濯水に水没し、制御手段20によって安定的に設定温度が維持される。したがって、ヒータ12は、洗濯水の水面から露出することなく洗濯水に放熱可能な状態を保持し、洗濯水を最適な温度に加熱しながらドラム3内に循環させることができる。
【0033】
次に、洗剤水浸透コースについて説明する。洗剤水浸透コースを設定すると、洗い工程の前に、洗剤水浸透工程が実行される。洗剤水浸透工程は、洗い工程の前に高濃度洗剤水をドラム3内の洗濯物に浸透させるために実行される工程であり、その動作、作用を図3および図4により説明する。
【0034】
まず、洗剤水浸透コースが設定され、洗濯がスタート(ステップ100)すると、最初にドラム3内に投入された洗濯物の量を布量検知手段23により検知する。制御手段20は、ドラム3を例えば50rpmで正逆回転させ、モータ7のトルクの大小によって、予め設定した布量のテーブル(図示しない)と照し合せて、ドラム3内の洗濯物の量を検知する(ステップ101)。
【0035】
次に、ドラム3を例えば50rpmで正転方向に回転させ(ステップ102)ながら、検知した布量に設定された規定水量Wに対して、約30%少ない水量W1を洗剤ケース10内の洗剤を流しながら水槽2内に給水する。投入された洗濯物の容量が例えば8kgの場合、規定水量Wは21Lであり、これより約30%少ない約15Lの水が給水される(ステップ103)。
【0036】
次に、設定された水位かどうかを判定する。この時の水位は規定よりも約30%少ない水位に設定されている(ステップ104)。設定された水位に到達していれば、給水を停止する(ステップ105)。規定水量Wより約30%少ない水量W1で洗剤を溶解し、水槽2内に給水しているので、洗い時の洗剤濃度と比較して高濃度の洗剤水が生成されている。
【0037】
次に、ドラム3の回転数を上昇させ、遠心力が重力よりも大きい回転数、例えば、200rpmで洗濯物がドラム3の内周面に張り付く状態にする(ステップ106)。
【0038】
そして、ドラム3の回転数を200rpmに維持した状態で、水槽2内の高濃度洗剤水の水位が規定水位よりも高いか否かを判定する(ステップ107)。
【0039】
水槽2内の水位が規定水位より所定量、例えば、20〜30mm高くなった場合、循環ポンプ15を駆動する(ステップ108)。これにより、遠心力でできた洗濯物の中心付近にできる空洞に向けて高濃度洗剤水を噴射することができ、ドラム3の内周面に張り付いている洗濯物に対して満遍なく散布することができる。したがって、洗濯物に散布された高濃度洗剤水は、遠心力により洗濯物に浸透し、これを通過して水槽2内へ排出される。
【0040】
このとき、高濃度洗剤水は、規定水量Wより約30%少ない水量W1で生成し、給水されているので、循環ポンプ15を駆動するとドラム3内への循環水量を確保することができないことから、ドラム3内の洗濯物から遠心力によって高濃度洗剤水を絞り出すことにより、洗濯物に対して効率よく高濃度洗剤水を噴射することが可能となる。
【0041】
また、このときの規定水位は、循環ポンプ15の駆動を制御する水位検知手段24の閾値を、循環ポンプ15の吸い込み口(図示せず)が水槽2内の高濃度洗剤水の水面から露出しない高さ、例えば、水槽2内の底面より30mm高い位置に設定してあり、循環ポンプ15の吸い込み口が常時高濃度洗剤水の水面下に位置し、エア噛み現象を防止してドラム3内の洗濯物への散水量を安定的に確保することができる。
【0042】
なお、ステップ107で、高濃度洗剤水の水位が規定水位よりも20mm低くなった場合、水槽2内に給水しながら循環ポンプ15を駆動する(ステップ109)。
【0043】
次に、設定時間T1(例えば、1分)か否かを判定する(ステップ110)。なお、設定時間T1は、30秒〜1分の間であれば同等の結果が得られる。
【0044】
設定時間T1が経過すると、ドラム3の回転数を200rpmから正転方向に50rpmで回転(ステップ111)させながら、残りの水量、すなわち、規定水量Wの21Lに対して約30%少なく給水された約15Lとの差である、6Lの洗濯水を水槽2内へ給水する(ステップ112)。
【0045】
次に、設定水位かどうかを判定する(ステップ113)。このときの設定水位を規定水量となるように、例えば、21Lに設定する。規定水位になった場合、給水を停止(ステップ114)する。最後に、循環ポンプ15の駆動を停止(ステップ115)し、洗い工程の前段階での高濃度洗剤水の噴射を終了し、洗剤水浸透工程から洗い工程に移る(ステップ116)。
【0046】
以上のように、本実施の形態では、洗い工程の前に高濃度洗剤水を水槽2内へ投入し、ドラム3を遠心力が重力より大きく、かつ、ドラム3内の高濃度洗剤水が洗濯物を通して
水槽2内へ排出される回転数で回転させ、水槽2内に排出された高濃度洗剤水を循環手段15によりドラム3内の洗濯物に散布するようにしたものであり、水槽2内の高濃度洗剤水をドラム3内の洗濯物に効率よく散布することができるとともに、ドラム3内の洗濯物に散布した高濃度洗剤水を遠心力により洗濯物を通過させて水槽2内へ排出することができ、ドラム3内の洗濯物に高濃度洗剤水を満遍なく浸透させることにより、洗いムラをなくして、洗浄性能を向上させることができるものである。
【0047】
また、洗い工程の前にドラム3を遠心力が重力より大きく、かつ、ドラム3内の高濃度洗剤水が水槽2内へ排出される回転数を維持した状態で、水槽2内の高濃度洗剤水の水位を検知するようにしたものであり、遠心力によってドラム3内の洗濯物に含まれている高濃度洗剤水が水槽2内へ排出されている状態で、水位を精度よく的確に検知することができる。
【0048】
また、循環ポンプ15の駆動を制御する水位検知手段24の閾値を、循環ポンプ15の吸い込み口が水槽2内の高濃度洗剤水の水面から露出しない高さに設定したものであり、循環ポンプ15の吸い込み口が常時高濃度洗剤水の水面下に位置し、エア噛み現象を防止してドラム3内の洗濯物への散水量を安定的に確保することができる。
【0049】
また、水槽2内に投入された高濃度洗剤水を加熱するヒータ12と、水槽2内の高濃度洗剤水の温度を検知する温度検知手段13を設け、高濃度洗剤水を所定の温度に加熱するようにしたものであり、投入された洗剤を少量の水で迅速に溶かすことができ、高濃度洗剤水を効果的に生成することができる。
【0050】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態のドラム式洗濯機の動作を示すタイムチャートである。本実施の形態の特徴は、洗剤水浸透工程において、洗い工程の前にドラム3を遠心力が重力より大きく、かつ、ドラム3内の高濃度洗剤水が水槽2内へ排出される回転数を維持した状態で、高濃度洗剤水を水槽2内へ投入するようにしたものである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0051】
洗剤水浸透コースが設定され、洗濯がスタートすると、最初にドラム3内に投入された洗濯物の量を布量検知手段23により検知する。制御手段20は、ドラム3を例えば50rpmで正逆回転させ、モータ7のトルクの大小によって、予め設定した布量のテーブル(図示しない)と照し合せて、ドラム3内の洗濯物の量を検知する。
【0052】
次に、ドラム3の回転数を上昇させ、遠心力が重力よりも大きい回転数、例えば、200rpmで洗濯物がドラム3の内周面に張り付く状態にする。ドラム3の回転数を200rpmに維持した状態で、検知した布量に設定された規定水量Wに対して、約30%少ない水量W1を洗剤ケース10内の洗剤を流しながら水槽2内に給水する。投入された洗濯物の容量が例えば8kgの場合、規定水量Wは21Lであり、これより約30%少ない約15Lの水が給水される。
【0053】
このとき、高濃度洗剤水は、規定水量Wより約30%少ない水量W1で生成し、給水されているが、ドラム3内の洗濯物に含まれている高濃度洗剤水を遠心力によって絞り出すことにより、洗濯物に対して効率よく高濃度洗剤水を噴射することが可能となる。
【0054】
上記の構成により、ドラム3内の洗濯物が乾いた状態でドラム3を回転させることができ、洗濯物に偏りが生じることなく、洗濯物が遠心力によってドラム3の内面に張り付いた状態にすることができるとともに、給水されていない状態であるため、ドラム3の回転
に洗濯水の抵抗がなく、低振動で、かつ、迅速に高速回転数へ立ち上げることができる。そして、遠心力によって洗濯物の中心部に形成された空洞に高濃度洗剤水を散水することができ、ドラム3の内面に張り付いて高速で回転している洗濯物に高濃度洗剤水を満遍なく浸透させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、高濃度洗剤水をドラム内の洗濯物に満遍なく浸透させることができ、洗いムラをなくして洗浄性能を向上させることができるので、ドラム式洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 筐体
2 水槽
3 ドラム
7 モータ
8 給水弁(給水手段)
15 循環ポンプ(循環手段)
20 制御手段
24 水位検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に弾性支持した水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記水槽に洗濯水を給水する給水手段と、前記水槽内の洗濯水の水位を検知する水位検知手段と、前記水槽内の洗濯水を前記ドラム内に循環させる循環手段と、前記モータ等を制御し、洗い、すすぎ、脱水等の工程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、洗い工程の前に高濃度洗剤水を前記水槽内へ投入し、前記ドラムを遠心力が重力より大きく、かつ、前記ドラム内の高濃度洗剤水が洗濯物を通して前記水槽内へ排出される回転数で回転させ、前記水槽内に排出された高濃度洗剤水を前記循環手段により前記ドラム内の洗濯物に散布するようにしたドラム式洗濯機。
【請求項2】
制御手段は、洗い工程の前にドラムを遠心力が重力より大きく、かつ、前記ドラム内の高濃度洗剤水が水槽内へ排出される回転数を維持した状態で、高濃度洗剤水を前記水槽内へ投入するようにした請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
制御手段は、洗い工程の前にドラムを遠心力が重力より大きく、かつ、前記ドラム内の高濃度洗剤水が水槽内へ排出される回転数を維持した状態で、前記水槽内の高濃度洗剤水の水位を検知するようにした請求項1または2記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
循環手段を循環ポンプで構成し、制御手段は、前記循環ポンプの駆動を制御する水位検知手段の閾値を、前記循環ポンプの吸い込み口が水槽内の高濃度洗剤水の水面から露出しない高さに設定した請求項1〜3のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
水槽内に投入された高濃度洗剤水を加熱する加熱手段と、前記水槽内の高濃度洗剤水の温度を検知する温度検知手段を設け、制御手段は、高濃度洗剤水を所定の温度に加熱するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−52056(P2013−52056A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191327(P2011−191327)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】