説明

ドリッパー

【課題】 本発明はどのような形状のフィルターを用いてもコーヒーの風味を損なわずコーヒーが抽出できるドリッパーを提供することを目的とする。
【解決手段】 フィルターを載置する面に複数のリブを形成したドリッパーにおいて、前記リブ間を形成する面を外側に凸となる曲面とし、かつ少なくとも対峙する一対の前記リブにフィルターをはみ出させるスリットを形成した。また、はみ出したフィルターを固定する固定部をドリッパーの外側壁に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターを装着するドリッパーに関し、ドリッパーでフィルターを固定できるものである。
【背景技術】
【0002】
漏斗状のドリッパーとして、図7に示すコーヒードリッパーがある。このコーヒードリッパーは、漏斗部の内周に、下方から上方に向かって相互に間隔が広がる螺旋状に複数のリブが配置され、かつこのリブが下方に向かうにしたがって順次高くなるように隆起するように構成され、ペーパーフィルターが漏斗部の内周に密着することなく、通気が均一に行われコーヒー粉の蒸らしが均一かつ円滑に行われ、抽出されるコーヒーの風味を損なわないものであった。
【特許文献1】実登3116219号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したコーヒードリッパーは、漏斗部が円錐型をしており、おいしいコーヒーを入れるためには使用するペーパーフィルターも円錐型のものを用いる必要があった。けれども、市販されているペーパーフィルターには扇形(台形状)のものもあり、この扇形のペーパーフィルターを用いる場合には、円錐状に折り曲げてからドリッパーにセットしなければならなかった。
【0004】
しかし、このようにペーパーフィルターを円錐状に折り曲げて使用する場合、折り曲げられた部分が漏斗部の内周に密着するようになり、上記したような風味を損なわないコーヒーを入れることは難しかった。
【0005】
したがって、本発明はどのような形状のフィルターを用いてもコーヒーの風味を損なわずコーヒーが抽出できるドリッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1に対応する発明は、フィルターを載置する面に複数のリブを形成したドリッパーにおいて、前記リブ間を形成する面を外側に凸となる曲面とし、かつ少なくとも対峙する一対の前記リブにフィルターをはみ出させるスリットを形成した。
【0007】
このように、リブにスリットを形成することにより、ドリッパーの内面とフィルターの形状が類似しておらず、フィルターが大きな場合でも、フィルターを折り曲げることなくフィルターをはみ出させドリッパーにセットすることができる。また、リブ間を外側に凸となる曲面としたことにより、抽出時にフィルターが外側に膨らんだとしても、フィルターはリブと線接触の状態となり、リブ間を構成する面に触れにくくなり、フィルターへの通気が均一になる。
【0008】
請求項2に対応する発明は、フィルターを載置する面に複数のリブを形成したドリッパーにおいて、前記リブ間を形成する面を外側に凸となる曲面とし、ドリッパーをその鉛直方向に形成した分割面をもって少なくとも二分割できる構造とし、前記分割面間にフィルターを挟持できるようにした。このように、フィルターを挟持できることにより、フィルターを折り曲げ大きさを調整しても、折り曲げた箇所をドリッパーで挟むようにすることができ、抽出時、曲面にフィルターを密着させる虞を低減できる。
【0009】
また、リブ間を外側に凸となる曲面としたことにより、抽出時にフィルターが外側に膨らんだとしても、フィルターはリブと線接触の状態となり、リブ間を構成する面に触れにくくなり、フィルターへの通気が均一になる。
【0010】
請求項3に対応する発明は、請求項2に対応する発明に記載されたドリッパーにおいて、分割位置を対峙するリブとした。このように、リブの位置でドリッパーを分割したことにより、フィルターをリブの位置で挟持することができる。したがって、抽出時にフィルターが外側に膨らんだとしても、ドリッパーとフィルターとの接触箇所を増やすことなく保持することができる。また、ドリッパーを分割したことにより、ドリッパーの洗浄を容易にすることができる。
【0011】
請求項4に対応する発明は、請求項2または3に対応する発明に記載されたドリッパーにおいて、フィルターをはみ出させて挟持できるようにした。このように、フィルターをはみ出せるようにしたので、ドリッパーの内面とフィルターの形状が類似しておらず、フィルターが大きな場合でも、フィルターを折り曲げることなくフィルターをセットすることができる。
【0012】
請求項5に対応する発明は、請求項1または4に対応する発明に記載のドリッパーにおいて、ドリッパーからはみ出したフィルターを固定する固定部を形成するようにした。このように、はみ出したフィルターを固定できるようにしたことにより、抽出時にドリッパーが外側に膨らんだとしても、フィルターの曲面への密着をより効果的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明はドリッパーに装着するフィルターがドリッパーの形状よりも大きいものであっても、ドリッパーに形成したスリットによって、フィルターをはみ出させることができる。フィルターをはみ出させることによって、扇形や円錐形のフィルターの形状や大きさにとらわれることなく使用できる。
【0014】
本発明はドリッパーを少なくとも二分割できる構造とし、フィルターをドリッパーで挟持できるので、フィルター曲面への密着を防げるので、通気が均一に行われ、かつコーヒー粉の蒸らしが均一かつ円滑に行われ、風味のよいコーヒーを抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明のドリッパーを図面を参照して詳細に説明する。図1および2は本発明のドリッパー1の概念を示したものであり、フィルター載置部2と、このフィルター載置部2の外周面に形成された鍔部3と、この鍔部3に形成された取っ手4から構成されている。
【0017】
前記フィルター載置部2は、ポリプロピレンのような硬質の樹脂製で、漏斗状で最下部には抽出液滴下用の孔が形成されており、漏斗状の面には複数のリブ状のフィルター接触部5と、このフィルター接触部5間を外方に凸となるような曲面6とを形成し、このフィルター接触部5のうち、対峙する一対のフィルター接触部5にスリット7を形成したものである。このスリット7近傍の外周面には、フィルター固定部8が形成されている。このフィルター固定部8は、スリット7を挟むように凸部9を三組形成し、シリコンのような軟質の樹脂製でこの凸部9に嵌合する凹部が形成された嵌合部材10を備えている(図3参照)。このフィルター固定部8の凹部が形成された嵌合部材10をフィルター載置部2から取り外し可能なものとしても、スリット7を挟んだ一方側のみを固定したものとしてもよい。固定する方法としては、接着、溶着はもちろんのこと、嵌合部材10を一体成形したものであってもよい。嵌合部材10をフィルター載置部2と一体成形する場合には、嵌合部材10も硬質の樹脂で成形される。
【0018】
なお、図2ではスリット7をフィルター載置部2の上端から形成するようにしたが、フィルター接触部5に線上の孔形状にスリット7を形成してもよい(後述する図5に示す分割ドリッパーを嵌め合わせたときのような状態)。また、フィルター載置部2の外周面上方にフィルター固定部8を固めて形成するようにしたが、外周面に均等(上段、中段、下段)に3個形成するようにしてもよいし、スリット7に沿って線上の凸部9を形成してもよい。
【0019】
鍔部3は、ポリプロピレン樹脂製でフィルター載置部2の外周面を囲むようなドーナツ状に形成され、スリット7に対応する位置には、はみ出したフィルターのはみ出しおよび固定を邪魔しないように、切欠きを形成している。この切欠きは、スリット7近傍の鍔部3内周側の一部を弧状や多角形状に切欠いたものでも、鍔部3の内周側から外周側まで貫通するような切欠きでもよい。
【0020】
取っ手4は、ポリプロピレン樹脂製で前記鍔部3から外方へ伸ばした形状のものとし、鍔部3と一体成形されている。
【0021】
このドリッパー1に市販されている扇形のフィルター(2〜4杯用)をスリット7にはみ出すようにセットし、はみ出した部分をフィルター載置部2の外周面に形成した凸部9を覆うように被せ、次に、嵌合部材10の凹部をフィルターが介在する状態で凸部9に嵌合する(図4参照)。なお、フィルター固定部8でフィルターを固定するとき、コーヒー抽出時にフィルターがフィルター接触部5と必ず接触するように、ドリッパー内のフィルターに余裕をもたせて固定することができる。そして、フィルター内にコーヒー粉を一人分約10gとして30g入れ、湯を注いでコーヒーを抽出する。このとき、フィルターは、注がれた湯により外側へ膨らむが、フィルターはフィルター固定部8により固定されているので、フィルターの側面は、フィルター接触部5と接触するのみとなり、曲面6とは接触しない。このように、フィルターを面接触でなく、線接触とすることにより、フィルターへの通気が均一になり、コーヒーの風味を損なわない効果を有している。また、フィルターの側面のほとんどが非接触であることから、フィルターの側面から染み出す抽出されたコーヒーがゆっくりと下方へ流れていく。このように、ゆっくりと抽出することにより、ネルドリップ(布ドリップ)に近い味と香り、コクを引き出すことができる。
【0022】
なお、コーヒー抽出時での扇形のフィルターが受ける重力は、上記したように、フィルター固定部8でフィルターが必ずフィルター接触部5に接触するように固定できるので、フィルター接触部5の中腹(鍔部3が形成されている近傍)でそのほとんどが支えられるようになって、フィルター固定部8には下方向に引っ張られる力がかかりにくくなっている。したがって、フィルター固定部8でフィルターを固定しても破損する心配がない。
【0023】
また、図4に示すように、フィルターはドリッパー載置部2の底部にまで到達するようにしておらず、フィルターの底部とドリッパー載置部2の底部とに空間を設けるようにしたので、フィルターの底部が下に突出する形状をとれるようになり滴下する滴をまとめることができ、抽出液の滴下をスムーズにすることができる。
【実施例2】
【0024】
この実施例は、図5に示すように、上記実施例1とスリット7の形状とフィルター固定部8の設置位置が異なり、他は同じ構成のドリッパー1をスリット7の形成されているフィルター接触部5のところで縦に二分割した例であり、鍔部3も同時に分割するものである。この分割ドリッパーの一方の分割面(スリットのところには除く)には、凹溝を形成し他方の分割面には凸溝を形成し、これを嵌め合わすことにより接合している(図6参照)。ドリッパー1へのフィルターのセットは、二分割されているドリッパー1を組み立てるときに行うことができる。そして、セットされたフィルターはドリッパー1からはみ出すので、実施例1と同様にフィルター固定部8により固定する。
【実施例3】
【0025】
図示していないが、この実施例は、ドリッパー1の分割面にスリット7が形成されていない点が、上記実施例2と異なる例である。上記実施例2と同様にドリッパー1の分割面には、図6に示すような凸溝と凹溝が形成されこれらを合わせることにより接合している。この実施例でもフィルターの取り付けは、ドリッパー1を接合する際、分割面にフィルターを介在させ、ドリッパーの接合と同時にフィルターも取り付けるようにしたものである。
【0026】
なお、この接合部近傍にはフィルター固定部8も形成してあるので、はみ出している部分をこのフィルター固定部8でさらに固定してもかまわない。フィルターをはみ出させることなく、ドリッパー接合時にフィルターを固定した場合、フィルター固定部8は、ドリッパー1の接合を補強することに使用できる。
【実施例4】
【0027】
図示していないが、この実施例はドリッパー1を三分割とした例である。ドリッパー1の分割は、まず対峙するフィルター接触部5で二分割とし、分割された一方をさらにフィルター接触部5で二分割として、三分割にしたものである。そして、この三箇所の分割面にはスリットを形成せず、フィルター固定部8が形成されている。この三分割のドリッパーにフィルターをセットさせるときには、フィルターを半分に折り、この折り目とフィルターの接合部を分割面で挟持する。具体的には、折り目の部分は、対峙するフィルター接触部5に形成した分割面で挟持し、残ったフィルター接触部5の分割面でフィルターの接合部を挟持する。この際、フィルターのはみ出しが少ない場合は、上記したようにフィルター固定部8はドリッパー1の接合の補強のために使用することができる。なお、ドリッパー1を四分割する場合には、ドリッパーを等分できるように、対峙する二対のフィルター接触部5で分割する。
【0028】
上記のようにドリッパー1を平面視三等配または四等配位置で分割するようにしてもよく、このように多等配位置でフィルターを固定した場合、各固定位置間のフィルター面に張力を持たせて支持できるため、湯を注いだ際に、フィルターがドリッパー1の内周面により密着しにくくなり、通気性を確保しやすい。
【0029】
上記実施例で示したフィルター固定部8は、スリット7または分割面を横断するように形成されたものであったが、一方側に凸部9と嵌合部材10を形成、またはクリップを設けフィルターのはみ出した部分を挟持するようにしてもよい。要するにフィルター固定部8は、湯を注いだときに、フィルターのはみ出した部分を、ドリッパー1内に引き戻されないように固定できればよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
フィルター載置部2にスリット7以外の開口部を形成することにより、抽出液用容器にフィルターを浸漬してフィルター内の被抽出物(紅茶葉や緑茶葉)から抽出液を得る用途にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例を概念的に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施例を概念的に示す側面図である。
【図3】本発明の一実施例のフィルター固定部を概念的に示す図である。
【図4】本発明のドリッパーにフィルターを固定したときの概念図である。
【図5】本発明の他の実施例を概念的に示す側面図である。
【図6】本発明の他の実施例の接合構造を概念的に示す図である。
【図7】従来のドリッパーの概念図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ドリッパー、2 フィルター載置部、3 鍔部、4 取っ手、5 フィルター接触部(リブ)、6 曲面、7 スリット、8 フィルター固定部、9 凸部、10 嵌合部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターを載置する面に複数のリブを形成したドリッパーにおいて、前記リブ間を形成する面を外側に凸となる曲面とし、かつ少なくとも対峙する一対の前記リブにフィルターをはみ出させるスリットを形成したことを特徴とするドリッパー。
【請求項2】
フィルターを載置する面に複数のリブを形成したドリッパーにおいて、前記リブ間を形成する面を外側に凸となる曲面とし、ドリッパーをその鉛直方向に形成した分割面をもって少なくとも二分割できる構造とし、前記分割面間にフィルターを挟持できることを特徴とするドリッパー。
【請求項3】
分割位置を対峙するリブとしたことを特徴とする請求項2記載のドリッパー。
【請求項4】
ドリッパーからフィルターをはみ出させて挟持できることを特徴とする請求項2または3記載のドリッパー。
【請求項5】
はみ出したフィルターを固定する固定部を形成したことを特徴とする請求項1または4記載のドリッパー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−212256(P2008−212256A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50920(P2007−50920)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000158208)AGCテクノグラス株式会社 (81)
【Fターム(参考)】