説明

ドリップバッグ

【課題】アルミ蒸着フィルム袋内に保存されているドリップバッグにおいて、通水性濾過性シート内に充填してあるコーヒー成分で掛止部材に用いる単層もしくは多層板紙構造を有している紙基材が着色されるのを抑制でき、コーヒードリップ時のお湯もしくはコーヒー液が紙基材に吸収するのを防止できるドリップバックを提供するものである。
【解決手段】上端部に開口部を有する通水性濾過性シート袋本体と袋本体の対向する2面の外表面に配置された掛止部材を備えたドリップバッグであって、掛止部材が湿潤紙力増強剤を含んだ単層もしくは多層板紙構造を有している紙基材からなり、該紙基材表裏面に水溶性高分子が塗工されており、好ましくは該記掛止部材の断面吸水度が1.0g/1000mm以下であるドリップバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等の容器の上部に掛止することにより容易にドリップ式コーヒーなどを入れられるようにするワンドリップコーヒー(以下、ドリップバッグ)に関するものである。詳しく述べるならば、本発明は袋本体の側面に貼合された掛止部材である紙基材にコーヒー成分由来の着色が少なく、耐水性が良好な掛止部材を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、手軽に本格的なコーヒーを楽しむことを可能とするコーヒーの入れ方として、ペーパードリップ方式が広く普及している。このペーパードリップ方式では、通常、数杯分のコーヒーが一度に抽出される。一方、近年、一人暮らしをする者が多くなり、また、核家族化や出生率の低下等により一家族の構成人数も少なくなっている。そのため、従来のように一度に数杯分のコーヒーを抽出することが基本とされているペーパードリップ方式に替えて、一杯分のコーヒーの抽出を手軽に行える使い捨てのドリップバッグが種々の製品形態で市場に出ている。
【0003】
中でも、簡略な構成を有するものとしては、コーヒーの粉を入れた通水性濾過性シートからなる袋本体と、その袋本体をカップに掛止させるために、袋本体の側面に貼合された紙製等の掛止部材からなるドリップバッグがある。このドリップバッグは、形成材料の省資源化を図ることができ、低コストに製造することができる。また、製品のコンパクト化が可能となる。(特許文献1、特許文献2)
【特許文献1】特開2004−230143号公報
【特許文献2】特開2004−357929号公報
【0004】
このドリップパックは、一袋ずつ窒素ガスが充填されたアルミ蒸着フィルム袋に入れられ密閉性の高い状態で長期間保存できるが故に新たな問題が生じることがある。例えば、ドリップバッグに使用されている紙製の掛止部材がコーヒー成分により茶色に変色し、消費者に新鮮さが感じられなくなる。または、長期間保存後に開封して使用した場合、紙製の掛止部材が紙層内で剥離して、実用に支障をきたすことなどが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルミ蒸着フィルム袋内に保存されているドリップバッグにおいて、通水性濾過性シート内に充填してあるコーヒー成分で掛止部材に用いる単層もしくは多層板紙構造を有している紙基材が着色されるのを抑制でき、コーヒードリップ時のお湯もしくはコーヒー液が紙基材に吸収するのを防止できるドリップバックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アルミ蒸着フィルム袋内に保存されているドリップバッグにおいて、ドリップバッグの袋本体の側面に貼合された単層・多層板紙からなる掛止部材の表裏面に着色が発生する現象を鋭意検証した結果、着色原因はコーヒー由来の気化成分であって、気化成分が紙基材の内部へ侵入しないように高いバリア層を表裏面に設けることにより、着色を抑制できることを見出した。また、コーヒードリップ時のお湯もしくはコーヒー液等の液体が紙基材に浸透しないように耐水性を強化することで紙基材の柔軟化や層間剥離を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下を含包する。
(1)上端部に開口部を有する通水性濾過性シート袋本体と袋本体の対向する2面の外表面に配置された掛止部材を備えたドリップバッグであって、掛止部材が湿潤紙力増強剤を含んだ単層もしくは多層板紙構造を有している紙基材からなり、該紙基材表裏面に水溶性高分子が塗工されているドリップバッグ。
【0008】
(2)前記水溶性高分子がポリビニルアルコールである(1)記載のドリップバッグ。
【0009】
(3)前記湿潤紙力増強剤がポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂である(1)または(2)のいずれか1項記載のドリップバッグ。
【0010】
(4)前記掛止部材の断面吸水度が1.0g/1000mm以下である(1)〜(3)のいずれか1項記載のドリップバッグ。
【0011】
(5)前記掛止部材の少なくとも片面に耐水基材が設けられている(1)〜(4)のいずれか1項記載のドリップバッグ。
【0012】
(6)該耐水基材がポリオレフィン系樹脂又は飽和ポリエステル樹脂である(5)記載のドリップバッグ。
【発明の効果】
【0013】
本発明のドリップバッグは、アルミ蒸着フィルム袋内に保存されている間にドリップバッグの袋本体の側面に貼合された単層・多層板紙からなる掛止部材の表裏面にコーヒー成分由来の着色が発生することを抑制し、消費者が見た目に違和感を持たないようにできる。
また、コーヒードリップ時のお湯、もしくはコーヒー液等の液体が紙基材に浸透しないように耐水性を強化することで紙基材の柔軟化や層間剥離を防止でき、掛止部材の機能を十分発揮できる効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、紙基材の表裏面へ水溶性高分子を含有する表面処理剤を用いてバリア層を設けることが重要である。バリア層を設けることで、ドリップバッグの通水性濾過性シート袋に充填してあるコーヒー粉から気化した着色成分が紙基材の表面や内部に浸透して着色されるのを抑制できるため好ましい。一方、バリア層を紙表面へ均一に設けられない場合には、気化成分が自由に通過できるためパルプ繊維の表面や交点に吸着し着色が進行するため好ましくない。
【0015】
本発明の表面処理剤である水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、澱粉、ポリアクリルアミド、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−ビニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられるが、本発明では、ポリビニルアルコールを含有させることが好ましい。ポリビニルアルコールは安価でバリア性能に富んでおり、食品用途としても安全性が高く基材表面への塗工適性も良好である事から好ましい。
【0016】
ポリビニルアルコールの中でも高重合度グレード程、コーヒー成分由来の気化性ガスが透過しにくくなるため好ましい。重合度1000〜2500、更に好ましくは1500〜2000のものがバリア性と浸透性のバランスが良いため好ましい。また、ケン化度が高いグレード程、耐水性が高くなるため好ましく、ケン化度98〜99の完全ケン化物を用いるのがより好ましい。
【0017】
本発明において、基材表面に表面処理剤を 塗工・含浸する手段としては、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーターやサイズプレスやキャレンダーコーター等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパーコーター等が挙げられるが、本発明では特に限定されない。
【0018】
前記、表面処理剤の 塗工・含浸量は0.1〜1.0g/m以下であることが好ましい。多量に 塗工又は含浸すれば粘度によっては表面より深く浸透することも可能であるが、経済的には不利である。
【0019】
本発明のドリップバッグの紙基材からなる掛止部材は、湿潤紙力剤によって耐水化処理されていることが好ましい。通水性濾過性シート内に充填してあるコーヒー粉へお湯を注ぎ込み、カップ内に抽出されたコーヒー液でドリップバッグの紙基材が柔軟化したり、多層板紙構造の場合には層間剥離が発生して掛止部材としての機能を果たさない問題が発生する。一般的にサイズ剤として用いられるロジン系サイズ剤やアルキルケテンダイマー等の内添薬品で十分なサイズ性が得られるが、コーヒー粉から気化してきた着色成分が紙基材に付着した場合には、急激にサイズ度が低下する場合がある。パルプスラリー中に添加された湿潤紙力剤は、セルロース分子間で形成している耐水性に乏しい水素結合領域を被覆保護するか、または、水素結合領域内で樹脂間の硬化反応で三次元化した網目構造をとり、繊維を固定して侵入した水分子による繊維の膨潤や繊維間水素結合が壊れるのを防いで、湿潤強度を出すことができるため、着色成分が紙基材に付着した場合でも前述の問題を発生させることがない。
【0020】
製紙業界で一般的に使用される湿潤紙力剤としては、尿素またはメラミンをホルムアルデヒドで反応させ、メチロール化されたジメチルロール尿素やトリメチロールメラミンを生成するメラミン−ホルムアルデヒドおよび尿素−ホルムアルデヒド樹脂やポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン系樹脂、ポリエチレンイミン等が挙げられる。本発明では、尿素やメラミン樹脂と比較して湿潤強度が遥かに優れている非ホルムアルデヒド樹脂であるポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0021】
湿潤紙力剤の添加量は、パルプ絶乾質量に対して0.1〜0.5質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜0.3質量%の割合で添加するのがより好ましい。0.1質量%未満では、湿潤強度が弱いため耐水性に乏しくなり、0.5質量%より多く添加しても耐水性の大きな向上は期待できない。
【0022】
本発明のドリップバッグの紙基材からなる掛止部材の断面吸水度は、1.0g/1000mm以下であることが好ましい。1.0g/1000mmより多く吸水すると紙基材の柔軟化や層間剥離が発生して掛止部材の機能を発揮できない。
【0023】
本発明のドリップバッグの紙基材からなる掛止部材には、耐水性を向上させるために表裏面に耐水用の基材を設けることが好ましい。耐水用の基材を設けることでコーヒードリップ時のお湯もしくはコーヒー液等の液体が紙基材の表裏面から浸透することを防止することができる。
【0024】
耐水用の基材としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂やポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等を任意に用いることが可能である。これらの中でもポリオレフィン系樹脂は安価で基材との密着性や製造性の面で好適に用いられる。また、飽和ポリエステル系樹脂は高価であるがガス透過性が低いため気化性ガスを抑える効果が大きいた
め好ましい。耐水用の基材を紙基材の表裏面に設ける方法としては、ウエットラミネーション、ホットメルトラミネーション、押出ラミネーション、ドライラミネーション、サーマルラミネーション等いずれの方法でも良く、特に限定されるものではない。耐水用の基材の厚さは、5〜50μmが好ましく、15〜35μmが更に好ましい。基材の厚さが5μmより薄いと耐水効果に乏しく、膜強度も不十分である。50μmより厚いと不経済であるとともに掛止部材加工時に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0025】
本発明の通水性濾過性シートからなる袋本体は、所定量のコーヒー粉を充填し、お湯を注ぎ込んだ場合にコーヒーが抽出可能であれば種々の袋を用いることができる。 例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の再生セルロース、木材パルプや非木材パルプと合成繊維からなる織布あるいは不織布が知られており、本発明においては、何れの織布あるいは不織布を用いて通水性濾過性シートを得ることができる。
【0026】
本発明のドリップバッグの紙基材からなる掛止部材に使用する原料パルプには表面処理剤の浸透性を向上させ、表面に均一なバリア層を形成させるものであれば制限はなく、各種のものが使用でき、例えば、化学パルプ(広葉樹、針葉樹)、機械パルプ、古紙パルプ、非木材繊維パルプ、合成パルプ等がある。これらのパルプは単独でも、二種以上混合使用しても良い。
【0027】
本発明では、前述の種々のパルプを使用することができるが、表層の空隙構造を均一にし、表面処理剤の浸透を良くするためには広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を使用することが好ましい。針葉樹晒クラフトパルプは繊維幅が広く表面処理剤の浸透を妨げるため、本発明では、針葉樹晒クラフトパルプの配合率は50%以下が好ましく、30%以下にすることが更に好ましい。
【0028】
表面処理剤で紙基材の表裏面に均一なバリア層を設けるには、表層に使用する広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)のルーメン幅(L1)/繊維幅(L2)の比が0.40以下のパルプ繊維を配置することが好ましい。L1/L2比が小さいことによりパルプ繊維の形態が均一になる結果として、パルプ繊維のネットワーク間の空隙が均一になり、表面処理剤を均一に塗工することができる。L1/L2比が0.4よりも大きいパルプ繊維を配置すると、繊維幅が広いことにより表面処理剤の浸透を妨げるため好ましくない。L1/L2比が0.40以下のパルプとしては、ユーカリ材としてはグランディス、サリグナ、グ
ロブラス、アカシア材としてはメランシーなどから製造されたパルプが好適である。これらの材種から製造したパルプはカヤーニ繊維長分布測定による数平均繊維長0.1mm以下のファイン分と称される短繊維が10%以下であるが、ファイン分が少ないことも表面処理剤の塗工には好適である。
【0029】
本発明において、用いられる原料パルプは、JIS P 8121のカナダ標準形に準じたフリーネスが200〜650mlの範囲となるものを用いることが好適である。フリーネスが200ml未満の場合、パルプ繊維の水切れが悪いため、搾水された紙表面が緻密になりやすく表面処理剤の浸透が妨げられる。また、フリーネスが650mlを超えると紙表面が粗くなり表面処理剤が浸透しすぎる問題が発生する。また、本発明における抄紙時のpHは酸性抄紙である4.5付近から6〜8程度の中性抄紙領域で必要に応じて任意に選択することが可能である。
【0030】
本発明では、必要に応じて種々の内添薬品を使用できる。例えば、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ワックスエマルジョン等の撥水剤、ロジン系サイズ剤、スチレン・マレイン酸、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸など、天然および合成の製紙用の内添サイズ剤、各種紙力増強剤、澱粉、濾水歩留り向上剤、耐水化剤、消泡剤、タルク等の填料、染料等を使用することができる。
【0031】
本発明のドリップバッグの紙基材からなる掛止部材の坪量は、掛止部材の機能としてある程度の剛性が必要となるため、100〜300g/m程度が必要である。このような坪量範囲であるため、抄造方法としては、地合いの取り易い多層抄きが好ましい。
【0032】
本発明のドリップバッグを製造するための抄紙機、表面処理の為の加工機などは特に制限はない。例えば、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機での単層や抄き合わせによって抄紙され、前記の通り薬品の内添や 塗工により、表裏面に加工が施されドリップバッグが製造される。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の質量基準の数値である。また、全ての例について抄造した紙はJIS P8111に準じて前処理を行った後、着色試験に供した。着色性の試験条件の詳細は下記の通りである。
【0034】
<着色性の試験方法>
実施例、比較例で製造した掛止部材用基材の抄紙機流れ方向を縦、流れ方向と直角の方向を横とし、縦7cm、横5cmの紙基材を採取した。予めJIS P 8150に準拠して試験前の紙基材表裏面のCIE三刺激値からL、a、bを分光白色度測色計SC−10WNスガ試験機(株)製により測定する。ガラス瓶(日本山村硝子製、マヨネーズ450、容量477ml)の中に市販レギュラー コーヒー粉(Blendy)7gを投入する。次にガラス瓶内蓋の内側中心にクリップ等で紙基材を吊り下げ蓋をして、更に外蓋を装着する。蓋を装着して密閉したガラス瓶を恒温加熱器内において60℃で1週間保管する。保管終了後に紙基材を取り出して前述と同様にしてL、a、bを測定する。
試験前後の差、△L、△a、△bから色差△Eを次式にて算出する。
【0035】
【数1】

【0036】
<着色評価>
表裏面の着色度合いを目視で確認する。
○:着色が少ない。
△:着色がやや多い。
×:着色が多い。
【0037】
<断面吸水度>
実施例、比較例で製造した掛止部材用基材の抄紙機流れ方向を縦、流れ方向と直角の方向を横とし、縦9cm、横6cmにカットする。前記に記載の着色性試験を実施後に紙基材の厚さT(mm/100)をJIS P 8118に準拠して測定後、電子天秤にて重量W(mg)を測定する。水深5cmの水中に90秒間浸漬後、フィルム表面(耐水基材面)に付着した水を濾紙にて拭き取り再び重量W(mg)を測定する。断面吸水度M(g/1000mm)を次式にて算出する。
【0038】
【数2】

【0039】
<層間剥離>
断面吸水度試験後の断面部を目視で確認する。
○:まったく層間剥離が発生しない。
△:層間剥離がやや発生した。
×:層間剥離が多発して柔軟化した。
【0040】
<実施例>
実施例1
表層、中層、裏層でパルプを使い分け、表裏層用にはLBKP100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス400mlのパルプスラリーを調成した。中層用にはNBKP20%、LBKP80%の配合で混合叩解を行いカナディアンスタンダードフリーネス350mlのパルプスラリーを調成した。それぞれのパルプスラリーに硫酸バンドを添加してpH4.5に調整し、内添サイズ剤としてロジン系サイズ剤(荒川化学工業(株)製サイズパインN−771)を対パルプ0.2%、内添紙力増強剤としてポリアクリルアミド(荒川化学工業(株)製ポリストロン−1250)を対パルプ0.3%、湿潤紙力増
強剤としてポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製WS−4024)を対パルプ0.3%添加した。以上の条件のパルプスラリーを円網抄紙機で、それぞれ表層50g/m、中層120g/m、裏層50g/mで抄合わせ、抄紙機に設置されたチャンピオンコーターで表裏それぞれに表面処理剤であるポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製P7000 完全ケン化 高重合度)を0.20g/m塗工した後、カレンダーで平滑化処理し、坪量220g/mのドリップバッグ掛止部材用の紙基材を製造した。紙基材に耐水基材である低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 ノバテックLD LC522 融点111℃)を押出ラミネーション法によって、厚さ20μを貼り合わせて、掛止部材用基材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0041】
実施例2
実施例1と同様のパルプスラリーに硫酸バンドを使用してpH6.0に調整し、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマーサイズ剤(星光PMC(株)製AD−1606)を対パルプ0.25%、表面処理剤としてポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA117 完全ケン化 高重合度)を塗工量0.95g/mとした以外は実施例1と同様にしてドリップバッグ掛止部材用の紙基材を製造した。また、実施例1と同様にして掛止部材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0042】
実施例3
実施例1とは異なるLBKP100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス400mlのパルプスラリーを調成した。抄紙機に設置されたサイズプレス機にて表面処理剤である酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製 エースA)を塗工し、塗工量0.70g/mとした以外は実施例1と同様にしてドリップバッグ掛止部材用の紙基材を製造した。また、耐水基材である高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 ノバテックHD HF560 融点134℃)を用いた以外は実施例1と同様にして掛止部材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0043】
実施例4
湿潤紙力剤をメラミン樹脂(住友ケムテックス(株)製スミレーズレジン8%AC)を対パルプ0.2%、表面処理剤として、ポリアクリルアミド(荒川化学工業(株)製 ポリマセット−512、分子量20万)を塗工量0.95g/mをキャレンダーで塗工した以外は実施例2と同様にして、ドリップバッグ掛止部材用の紙基材を製造した。また、実施例1と同様にして掛止部材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0044】
実施例5
湿潤紙力剤をメラミン樹脂(住友ケムテックス(株)製スミレーズレジン8%AC)を対パルプ0.2%、表面処理剤として、カチオン化澱粉(王子コーンスターチ(株)製 エースK−250)を塗工量0.95g/mで塗工した以外は実施例3と同様にして、ドリップバッグ掛止部材用の紙基材を製造した。また、ポリプロピレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 ノバテックPP FL30H 融点166℃)を用いた以外は実施例1と同様にして掛止部材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0045】
実施例6
表面処理剤として、カチオン化澱粉(王子コーンスターチ(株)製 エースK−250)を塗工量0.20g/mで塗工した以外は実施例3と同様にして、ドリップバッグ掛止部材用の紙基材を製造した。また、実施例1と同様にして掛止部材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0046】
実施例7
ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱レイヨン(株)製 ダイヤナイトFX−0012 融点260℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、ドリップバッグ掛止部材用紙基材ならびに掛止部材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0047】
比較例1
表面処理剤を塗工しない以外は実施例1と同様にして、ドリップバッグ掛止部材用の紙基材を製造した。また、実施例1と同様にして掛止部材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0048】
比較例2
湿潤紙力増強剤を無添加にした以外は実施例2と同様にして、ドリップバッグ掛止部材用の紙基材を製造した。また、実施例1と同様にして掛止部材を製造し、着色性、断面吸水度ならびに層間剥離の状態を観察した。
【0049】
前記実施例および比較例の表面処理剤の塗工量、着色性、断面吸水度、層間剥離状態の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
ポリプロピレン製の目付け15g/mと20g/mのスパンボンド不織布2層を重合せた通水性濾過性シート袋本体と実施例で製造したそれぞれの掛止部材を対向する2面の外表面に貼合わせた後、通水性濾過性シート中に市販レギュラー コーヒー粉(Blendy)7gを投入してドリップバッグを製造した。それぞれのドリップバックを上記、着色試験と同様に密閉したガラス瓶を恒温加熱器内において60℃で1週間保管した後、着色を目視で観察したが何れも着色は見られず、コーヒー抽出後も柔軟化や層間剥離はなかった。
【0052】
表1に示されるように、本発明に係わる実施例1〜7のドリップバッグは、コーヒー成分由来の着色が少なく、着色した場合にも断面吸水度を低く抑えることができるため、柔軟化や層間剥離が発生しないという特徴を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に開口部を有する通水性濾過性シート袋本体と袋本体の対向する2面の外表面に配置された掛止部材を備えたドリップバッグであって、掛止部材が湿潤紙力増強剤を含んだ単層もしくは多層板紙構造を有している紙基材からなり、該紙基材表裏面に水溶性高分子が塗工されていることを特徴とするドリップバッグ。
【請求項2】
前記水溶性高分子がポリビニルアルコールである請求項1記載のドリップバッグ。
【請求項3】
前記湿潤紙力増強剤がポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載のドリップバッグ。
【請求項4】
前記掛止部材の断面吸水度が1.0g/1000mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のドリップバッグ。
【請求項5】
前記掛止部材の少なくとも片面に耐水基材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4記載のドリップバッグ。
【請求項6】
前記耐水基材がポリオレフィン系樹脂または飽和ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項5記載のドリップバッグ。

【公開番号】特開2010−42234(P2010−42234A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315653(P2008−315653)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】