説明

ドロネダロンと少なくとも1つの利尿薬の組み合わせおよびこの治療的使用

本発明は、ドロネダロン、またはこの医薬的に許容される塩の1つと、少なくとも1つの利尿剤との組み合わせ、およびこの治療的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドロネダロン、またはこの医薬的に許容される塩と、少なくとも1つの利尿薬の組み合わせ、およびこの治療利用に関する。
【背景技術】
【0002】
2−n−ブチル−3−[4−(3−ジ−n−ブチルアミノプロポキシ)ベンゾイル]−5−メチルスルホンアミドベンゾフラン、即ちドロネダロン、およびこの医薬的に許容される塩は、欧州特許EP0 471 609 B1に記載されている。
【0003】
ドロネダロンは、カリウム、ナトリウムおよびカルシウムチャネルを遮断し、ならびにまた抗アドレナリン作動特性を有する。
【0004】
ドロネダロンは、心房細動または心房粗動を提示する患者における洞調律の維持に有効である抗不整脈薬である。
【0005】
本出願人は驚くべきことに、ドロネダロンが、血中カリウムレベルを調節するこの能力により、心房細動または心房粗動の病歴を有する患者における心血管系の入院および死亡を有意に減少させることを発見した。
【0006】
実際、抗不整脈治療を必要とするいずれの調律障害も有さない、心筋梗塞後の左心室機能低下を有する患者における梗塞後の死亡を減少させるためのベンゾフラン誘導体の使用は、特許出願WO98/40067およびWO97/34597から公知である。
【0007】
しかし、これらの出願は、心室細動または心室粗動の病歴を有する患者における心血管系の入院および/または死亡を減少させるためのドロネダロンの、特に血中カリウムレベルを調節するこの能力による、使用を開示しておらず、示唆もしていない。
【0008】
カリウムは、主要な細胞内イオンであり、生理機能に不可欠な役割を果たす。
【0009】
具体的には、このイオンは、主要な浸透圧活性細胞内イオンであり、細胞内体積の調整に重要な役割を果たす。
【0010】
一定した安定なカリウム濃度は、酵素系の機能にとって不可欠であり、良好な成長および細胞分裂にとっても重要である。
【0011】
カリウムは、細胞膜の静止電位を確定する一因となり、従って、カリウム濃度の変化、特に、細胞外区画のカリウム濃度の変化は、神経、筋肉および心臓系における細胞興奮性に影響を及ぼす。
【0012】
カリウム濃度の低下が、心室レベルで心臓の興奮性亢進を増加させ、その結果、重篤で潜在的に致死的な調律障害が生ずる場合があることは公知である。
【0013】
カリウム濃度の低下の有害な役割は、異なる臨床状態において実証されている。
【0014】
例えば、心不全に罹患している患者において、カリウム濃度の低下は、致死的調律障害につながる場合があり;「カリウム保持」効果を有する利尿薬は、この集団において有益な効果を証明してきた。
【0015】
激しい身体運動を突然停止した結果として起こるカリウム濃度の急速な低下も、一定の突然死の原因になることがある。
【0016】
カリウム濃度の低下の寄与の可能性は、抗精神病薬での治療を受けている患者の突然死において、および急性アルコール離脱症候群においても言及されている。
【0017】
カリウム摂取量が低減された食事習慣は、素因を有する個体の場合には構造的心臓病状が一切なくとも突然死につながることがある。
【0018】
致命的心臓興奮性亢進のリスクは、細胞再分極の持続時間を延長する抗不整脈治療薬、例えばソタロール(Sotalex(登録商標))を受けている患者において特に大きい。これらの薬剤は、重篤で潜在的に致死的な心室頻拍であるトルサード・ド・ポワントを、実際に誘導することがある。トルサード・ド・ポワントは、カリウム濃度の低下によって促進される。
【0019】
最後に、カリウム濃度の低下が心房細動を誘導することは証明されている(Manoach M.,J.Mol.Cell.Cardiol.,1998,30(6):A4[8])。
【0020】
潜在的に致命的な心調律障害のリスクが高いもう1つの臨床状態は、利尿薬での治療を受けている患者によって代表される。多くの適応症(最も一般的には動脈性高血圧、ならびに心不全、腎不全、ネフローゼ症候群、硬変および緑内障)において広く処方されているこれらの薬物は、「カリウム保持性」利尿薬を除き、カリウム濃度の低下のリスクに患者をさらす。
【0021】
特に心臓の収縮機能の欠陥もしくは左心室機能不全を提示するまたは心筋梗塞後の患者の場合、利尿薬での治療後のカリウム濃度の低下の合併症は、突然死であり得る。
【0022】
利尿薬は、動脈性高血圧、うっ血性心不全、腎不全、ネフローゼ症候群、肝硬変または緑内障などの多様な状態の治療においてこれらの効力のために広く処方されている。
【0023】
カリウム保持性利尿薬を除き、利尿薬に基づく治療の主な結果の1つは、結果として低カリウム血症を生じさせる場合がある、カリウム排泄増加である。
【0024】
今では、低カリウム血症が心臓興奮性を増加させ、その結果、一定の患者において心室性不整脈および突然死を生じさせることは、公知である(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】欧州特許第0 471 609号明細書
【特許文献2】国際公開第98/40067号
【特許文献3】国際公開第97/34597号
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Manoach M.,J.Mol.Cell.Cardiol.,1998,30(6):A4[8]
【非特許文献2】Cooperら,Circulation,1999,100,1311−1315頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
血中カリウムレベルの調整に関する効果および特に心房細動または心房粗動の病歴を有する患者におけるこの効果が証明されている、治療における抗不整脈薬と利尿薬の組み合わせは、今までのところない。
【課題を解決するための手段】
【0028】
従って、本発明の主題は、血中カリウムレベルを調整するための、特に低カリウム血症の予防において使用するための、薬物を調製するための、ドロネダロンおよびこの医薬的に許容される塩と少なくとも1つの利尿薬、特に非カリウム保持性利尿薬との組み合わせの使用でもある。
【0029】
本発明の主題は、心房細動または心房粗動の病歴を有する患者において、特に、血中カリウムレベルの調整により、さらに特に低カリウム血症の予防により、心血管系の入院のおよび/または死亡、特に心血管性の死亡、さらに特に突然死を予防する際に使用するための薬物を調製するための、ドロネダロン、およびこの医薬的に許容される塩と、少なくとも1つの利尿薬、特に非カリウム保持性利尿薬との組み合わせの使用でもある。
【0030】
従って、本発明の主題は、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン、アミロライドおよびスピロノラクトンを除く少なくとも1つの利尿薬と、特に、フロセミド、ヒドロクロロチアジドおよびメトラゾンを除く非カリウム保持性利尿薬と、ドロネダロンとのまたはこの医薬的に許容される塩との組み合わせでもある。
【0031】
前記利尿薬は、1mg/日と2g/日の間で選択される治療有効用量で投与される。
【0032】
前記併用は、同時的である場合もあり、別々である場合もあり、または逐次的である場合もある。
【0033】
ドロネダロンの医薬的に許容される塩には、塩酸塩を挙げることができる。
【0034】
用語「非カリウム保持性利尿薬」は、カリウム排泄を増加させる利尿薬を意味すると解釈される。
【0035】
用語「心血管系の入院」は、以下の病理の少なくとも1つに起因する入院を意味すると解釈される(Hohnloserら,Journal of cardiovascular electrophysiology,January 2008,vol.19,No.1,pages 69−73):
アテローム性動脈硬化症に関するもの、
心筋梗塞または不安定性狭心症、
安定性狭心症または非定型胸部疼痛、
失神、
一過性虚血事象または脳卒中(頭蓋内大出血を除く。)、
心房細動および他の上室調律障害、
非致命的心停止、
心室性不整脈、
心臓移植を除く、心血管手術、
心臓移植、
心臓刺激装置(ペースメーカー)、植込み型除細動器(「ICD」)または別の心臓用装置の体内移植、
経皮的冠動脈、脳血管または末梢インターベーション、
動脈圧変動(失神を除く、低血圧、高血圧)、
多量の出血/大出血(2つ以上の血球ペレットを必要とするものまたは任意の頭蓋内大出血)、
肺塞栓症または深在静脈血栓症、
心臓に起因する急性肺水腫または呼吸困難を含む、うっ血性心不全の悪化。
【0036】
用語「死亡」は、心血管的なものであれ、非心血管的のものであれ、未知のものであれ、任意の原因による死亡を包含する。
【0037】
本発明の文脈において、用語「心血管性の死亡」は、任意の心血管的原因による死亡(非心血管的原因によるものを除く任意の死)、特に、不整脈死とも呼ばれる不整脈に起因する死、およびさらに特に、突然死とも呼ばれる心血管に起因する突然死を包含する。
【0038】
用語「突然死」は、新たな症状の出現後1時間以内もしくは1時間未満に発生する死または前兆のない予期せぬ死を一般に指す。
【0039】
「心房細動もしくは心房粗動の病歴を有する」、「発作性もしくは持続性心房細動もしくは心房粗動を有する」または「心房細動の病歴を有するまたは心房粗動もしくは心房細動の経験があるまたは心房粗動の病歴を有する」とう表現は、心房細動もしくは粗動の1つ以上のエピソードを過去に提示したことがある患者、および/またはドロネダロンもしくはこの医薬的に許容される塩を用いた時点で心房細動もしくは心房粗動を患う患者を意味する。
【0040】
より詳細には、心房細動もしくは心房粗動の1つ以上のエピソードを過去に提示したことがある患者は、ランダム分布の少なくとも3か月以上前に、例えば3か月と6か月の間に、これらのエピソードを提示したことがある。
【0041】
心房細動または心房粗動の病歴を有する患者には、以下のリスク因子の少なくとも1つも示す患者も挙げることができる:
70歳以上、より詳細には75歳以上の年齢、
高血圧、
糖尿病、
脳卒中のまたは全身性閉塞症の病歴
心エコー法によって測定される50mm以上の左房径、
二次元エコー法によって測定される、40%未満の左室駆動率。
【0042】
心房細動または心房粗動の病歴を有する患者には、追加のリスク因子、即ち、以下の病理の少なくとも1つも示す患者も挙げることができる:
高血圧、
基礎構造性心疾患、
頻拍、
冠動脈疾患、
非リウマチ性心臓弁膜症、
虚血起源の拡張型心筋症
心房細動もしくは粗動のアブレーション、例えばカテーテル・アブレーションもしくは心内膜心筋アブレーション、
心房細動もしくは粗動以外の上室頻拍、
心臓弁膜手術の病歴、
非虚血性拡張型心筋症、
肥大型心筋症、
リウマチ性弁疾患、
持続性心室頻拍、
先天性心臓障害、
アブレーション、例えば、心房細動もしくは粗動以外の頻拍以外のためのカテーテル・アブレーション、
心室細動、
および/または
心臓刺激装置、
植込み型除細動器(「ICD」)
から選択される少なくとも1つの心臓用装置。
【0043】
「血中カリウムレベルを調整する」という表現は、前記レベルの低下または起こり得る上昇を予防することを意味すると解釈される。
【0044】
非カリウム保持性利尿薬の主な種類は、
チアジド系利尿薬、
ループ利尿薬、
近位型利尿薬(浸透圧剤、炭酸脱水酵素阻害剤)
である。
【0045】
これらの治療的使用のために、ドロネダロンおよびこの医薬的に許容される塩は、医薬組成物に一般に導入される。
【0046】
これらの医薬組成物は、ドロネダロンのまたはこの医薬的に許容される塩の有効用量を含有し、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤も含有する。
【0047】
前記賦形剤は、当業者に公知の通常の賦形剤から、所望される医薬形態および投与方法に従って選択される。
【0048】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、表面(topical)、局所、気管内、鼻腔内、経皮または直腸内投与のための前記医薬組成物において、ドロネダロン、またはこの塩は、上述の場合、従来の製薬用賦形剤との混合物として、単位投与形態で動物におよびヒトに投与され得る。
【0049】
適する単位投与形態は、経口投与のための形態、例えば錠剤、ソフトまたはハード・ゲル・カプセル、粉末、顆粒および経口溶液または懸濁液、舌下、口腔内、気管内、眼内または鼻腔内投与形態、吸入による投与のための形態、表面、経皮、皮下、筋肉内または静脈内投与形態、直腸内投与形態、ならびにインプラントを含む。表面投与については、ドロネダロンおよびこの医薬的に許容される塩をクリーム、ゲル、軟膏またはローションで使用することができる。
【0050】
例として、錠剤形態でのドロネダロンまたはこの医薬的に許容される塩の単位投与形態は、以下の例のうちの1つに対応し得る:
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
1日あたりの経口投与されるドロネダロンの用量は、1回以上の摂取で、800mgに達することがある。
【0056】
より詳細には、投与されるドロネダロンの用量は、食物と共に摂取され得る。
【0057】
より詳細には、1日あたりの経口投与されるドロネダロンの用量は、食事と共に2回の摂取で、800mgに達することがある。
【0058】
より詳細には、1日あたりの経口投与されるドロネダロンの用量は、食事と共に1日あたり2回の摂取頻度で、例えば朝食および夕食と共に摂取され得る。
【0059】
より詳細には、2回の摂取は、同じ量を含み得る。
【0060】
より高いまたはより低い投薬量が適する特別な場合があり得、このような投薬量は、本発明の状況を逸脱しない。通常の実施に従って、それぞれの患者に適切な投薬量は、投与方法、前記患者の体重、病状、体表、心拍出量および応答に従って医師により決定される。
【0061】
この態様のもう一つのものによると、本発明は、上に示した病理を治療するための方法にも関し、この方法は、ドロネダロンまたはこの医薬的に許容される塩の有効用量の患者への投与を含む。
【0062】
添付の図面を参照して以降はデータにより本発明を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】24ヶ月の期間にわたって入院についてのまたは任意の原因からの死についての累積率でKaplan Meier曲線を表す。
【図2】30ヶ月の期間にわたって入院についてのまたは心血管性の死についての累積率でKaplan Meier曲線を表す。
【図3】30ヶ月の期間にわたって入院についてのまたは突然死についての累積率でKaplan Meier曲線を表す。
【図4】30ヶ月の期間にわたって入院についての累積率でKaplan Meier曲線を表す。
【図5】30ヶ月の期間にわたって任意の原因からの死についての累積率でKaplan Meier曲線を表す。
【図6】30ヶ月の期間にわたって心血管性の死についての累積率でKaplan Meier曲線を表す。
【図7】30ヶ月の期間にわたって突然死についての累積率でKaplan Meier曲線を表す。
【図8】30ヶ月の期間にわたって初回投与と最終投与の間のカリウムの平均変化量を表す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
心房細動または心房粗動の病歴を有する患者の2つの治療群(塩酸ドロネダロンで治療した群およびプラセボで治療した群)におけるランダム分布での前向き、多国籍、多施設、二重盲検臨床試験において、塩酸ドロネダロンにより、心血管系の入院のまたは死亡の予防におけるドロネダロンおよびこの医薬的に許容される塩の効力をプラセボとの比較で立証した。
【0065】
I.患者選択
組み入れ時、患者は、心房細動もしくは粗動の病歴を有さなければならず、および/または正常洞調律の状態である場合もあり、心房細動もしくは粗動の状態である場合もあった。
【0066】
患者の動員は、以下の組み入れ基準を考慮して行った:
組み入れ基準:
1)以下のリスク因子の1つを提示しなければならなかった:
場合によっては下のリスク因子の少なくとも1つを兼備する、70歳以上の年齢、またはさらに75歳より高齢:
高血圧(少なくとも2つの異なる種類の抗高血圧薬を摂取している者)、
糖尿病、
脳卒中(一過性虚血性事象もしくは完全脳卒中)または全身性塞栓症の病歴、
心エコー法によって測定される50mm以上の左房径、
二次元エコー法によって測定される、40%未満の左室駆動率;
2)心房細動または粗動の存在または病歴を実証するために過去6か月間に行った心電図を利用できること;
3)正常な洞調律の存在または不在を実証するために過去6か月間に行った心電図を利用できること。
【0067】
II.期間および治療
プラセボ、またはドロネダロン400mgに対応する塩酸ドロネダロンの量を含有する錠剤を、午前中、朝食中または朝食直後に1錠、および夕方、夕食中または夕食直後に1錠の割合で使用して治療を開始した。
【0068】
予想治療期間は、それぞれの患者を試験に組み入れたときによって様々であり、組み入れた最後の患者についての最低12か月から、全試験期間(12か月+組み入れ期間)に対応する最大、即ち組み入れた最初の患者についてのおおよそ30ヶ月までにわたることがあった。
【0069】
III.結果
この治験において得られた結果をこれらの数値についてKaplan Meier法によって分析し、Coxの比例効果回帰モデルを用いて相対リスク(RR)を予測した。
【0070】
相対リスク(RR)は、ドロネダロンを用いた患者の中での入院のまたは死の発生率の、プラセボを用いた患者に対する比である。
【0071】
所与の事象(入院、死、心血管性の死など)の減少百分率xを次のように計算する:
x=1−相対リスク
【0072】
III.1.心血管系の入院に関するおよび死亡に関する結果(主判断基準)
この試験に組み入れた4628人の患者のうち、2301人が塩酸ドロネダロンで治療した群の部分であった。
【0073】
塩酸ドロネダロンで治療した群での734に対して、プラセボ群では917の事象を記録した。
【0074】
算出相対リスクは、p=2×10−8で0.758、即ち塩酸ドロネダロンでの24.2%の心血管系の入院および死の減少であり、この結果は、非常に有意である。
【0075】
得られた結果を再現する図1は、治療開始後、直ちに2つの累積曲線の明確な分離を示し、この分離は、この試験期間を通して継時的に持続している。
【0076】
III.2.心血管系の入院に関するおよび心血管系の死亡に関する結果
この試験に組み入れた4628人の患者のうち、2301人が塩酸ドロネダロンで治療した群の部分であった。
【0077】
塩酸ドロネダロンで治療した群での701に対して、プラセボ群では892の事象を記録した。
【0078】
算出相対リスクは、p=45×10−10で0.745、即ち塩酸ドロネダロンでの25.5%の心血管系の入院および心血管系の死の減少であり、この結果は非常に有意である。
【0079】
得られた結果を再現する図2は、治療開始後、直ちに2つの累積曲線の明確な分離を示し、この分離は、この試験期間を通して継時的に持続している。
【0080】
III.3.心血管系の入院および突然死に関する結果
この試験に組み入れた4628人の患者のうち、2301人が塩酸ドロネダロンで治療した群の部分であった。
【0081】
塩酸ドロネダロンで治療した群での684に対して、プラセボ群では873の事象を記録した。
【0082】
算出相対リスクは、p=48×10−10で0.743、即ち塩酸ドロネダロンでの25.5%の心血管系の入院および突然死の減少であり、この結果は非常に有意である。
【0083】
得られた結果を再現する図3は、治療開始後、直ちに2つの累積曲線の明確な分離を示し、この分離は、この試験期間を通して継時的に持続している。
【0084】
III.4.心血管系の入院に関する結果
この試験に組み入れた4628人の患者のうち、2301人が塩酸ドロネダロンで治療した群の部分であった。
【0085】
塩酸ドロネダロンで治療した群での675に対して、プラセボ群では859の事象を記録した。
【0086】
算出相対リスクは、p=9×10−9で0.745、即ち塩酸ドロネダロンでの25.5%の心血管系の入院の減少である。
【0087】
得られた結果を再現する図4は、治療開始後、直ちに2つの累積曲線の明確な分離を示し、この分離は、この試験期間を通して継時的に持続している。
【0088】
III.5.任意の原因からの死亡に関する結果
この試験に組み入れた4628人の患者のうち、2301人が塩酸ドロネダロンで治療した群の部分であった。
【0089】
塩酸ドロネダロンで治療した群での116に対して、プラセボ群では139の死を記録した。
【0090】
算出相対リスクは、p=0.1758で0.844、即ち塩酸ドロネダロンでの15.6%の心血管系の入院の減少である。
【0091】
得られた結果を再現する図5は、治療開始後、直ちに2つの累積曲線の明確な分離を示し、この分離は、この試験期間を通して継時的に持続している。
【0092】
III.6.心血管性の死亡に関する結果
この試験に組み入れた4628人の患者のうち、2301人が塩酸ドロネダロンで治療した群の部分であった。
【0093】
塩酸ドロネダロンで治療した群での65に対して、プラセボ群では94の心血管性の死を記録した。
【0094】
算出相対リスクは、p=0.0252で0.698、即ち塩酸ドロネダロンでの30.2%の心血管系性の死亡の減少である。
【0095】
得られた結果を再現する図6は、治療開始後、直ちに2つの累積曲線の明確な分離を示し、この分離は、この試験期間を通して継時的に持続している。
【0096】
III.7.突然死に関する結果
この試験に組み入れた4628人の患者のうち、2301人が塩酸ドロネダロンで治療した群の部分であった。
【0097】
塩酸ドロネダロンで治療した群での14に対して、プラセボ群では35の突然死を記録した。
【0098】
算出相対リスクは、p=0.0031で0.405、即ち塩酸ドロネダロンでの59.5%の突然死の減少である。
【0099】
得られた結果を再現する図7は、治療開始後、直ちに2つの累積曲線の明確な分離を示し、この分離は、この試験期間を通して継時的に持続している。
【0100】
III.8.血中カリウムレベルの調整
この試験では、生体パラメータの監視に関連して試験期間を通して採取した通常血液サンプルの分析結果により、カリウム濃度調節効果を明確に立証する。
【0101】
この試験の薬物の初回投与と最終投与の間の(mmol/lでの)カリウムの変化量を図8に含める。図8において、Bは基底レベルを示し、Dは日を示し、およびMは月を示す。
【0102】
第24月の後の、試験中の出発値を考慮に入れての、血中カリウムレベルの変化の共分散の分析は、プラセボと比較してドロネダロンに有利になるような有意差を示す(p<0.0001)。
【0103】
従って、ドロネダロンは、血中カリウムレベルの調整を可能にする。
【0104】
III.9.利尿薬に基づく治療を追加で受ける試験における患者に関する結果
この試験の臨床結果は、特に、利尿治療薬の投与によって悪化するカリウム減少のリスクにさらされている患者において、カリウムの調節が突然死のリスクを低下させるという仮説を裏付ける。実際、ドロネダロンによる突然死のリスクの低下、即ちプラセボと比較した突然死の予防は、利尿薬を用いた患者ではおよそ70.4%、および利尿薬を摂取しなかった患者ではおよそ34%であった。
【0105】
さらに、このリスクの低下は、利尿薬での治療を受けるべきである患者、例えば高血圧患者の群でのほうが大きく、高血圧でない患者において観察されたおよそ45.5%の低下に対して、このリスクの低下はおよそ62%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房細動または心房粗動の病歴を有する患者における、心血管系の入院のおよび/または死亡、特に心血管性の死亡の予防において使用するための薬物を調製するための、ドロネダロン、またはこの医薬的に許容される塩と、少なくとも1つの利尿薬の組み合わせの使用。
【請求項2】
血中カリウムレベルを調整するための薬物を調製するための、ドロネダロン、またはこの医薬的に許容される塩と、少なくとも1つの利尿薬の組み合わせの使用。
【請求項3】
前記少なくとも1つの利尿薬が、非カリウム保持性利尿薬であることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の使用。
【請求項4】
低カリウム血症の予防において使用するための薬物を調製するための、請求項2および3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
患者がまた、以下のリスク因子の少なくとも1つを示すことを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の使用:
高血圧、
糖尿病、
脳卒中のまたは全身性閉塞症の病歴
心エコー法によって測定される50mm以上の左房径、
二次元エコー法によって測定される、40%未満の左室駆動率。
【請求項6】
患者がまた、以下の病理の少なくとも1つを示すことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の使用:
高血圧、
基礎構造性心疾患、
頻拍、
冠動脈疾患、
非リウマチ性心臓弁膜症、
虚血起源の拡張型心筋症
心房細動もしくは粗動のカテーテル・アブレーション
心房細動もしくは粗動以外の上室頻拍、
弁膜手術の病歴、
非虚血性拡張型心筋症、
肥大型心筋症、
リウマチ性弁疾患、
持続性心室頻拍、
先天性心臓障害、
心房細動もしくは粗動以外の頻拍のためのカテーテル・アブレーション、
心室細動、
および/または
心臓刺激装置、
植込み型除細動器(「ICD」)
から選択される少なくとも1つの心臓用装置。
【請求項7】
1日あたりの経口投与されるドロネダロンの用量が、1回以上の摂取で、800mgに達することがあることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の使用。
【請求項8】
フロセミド、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン、アミロライド、スピロノラクトンおよびマンニトールを除く少なくとも1つの利尿薬と、ドロネダロン、またはこの医薬的に許容される塩との組み合わせ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの利尿薬が、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、メトラゾンおよびマンニトールを除く、非カリウム保持性利尿薬であることを特徴とする、請求項8に記載の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−517694(P2011−517694A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504499(P2011−504499)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000450
【国際公開番号】WO2009/133310
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】