説明

ドープ切替方法及び光学フィルム製造装置

【課題】ドープの切り替え時において膜厚が一定の光学フィルムを製造し、かつ、ドープの切り替えを短時間で行う。
【解決手段】三方弁Bから共通ラインL3に流出する第2ドープを漸次増大させ、かつ三方弁Bから共通ラインL3に流出する第1ドープを漸次減少させるドープ切替工程が実施され、このドープ切替工程の実施に際して、ポンプCP2の流量が一定流量にされた状態で、三方弁Bに流入される第2ドープの圧力又は流量が一定になるように第2循環バルブが制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液流延法により光学フィルムを製造する技術に関するものであり、特に流延ダイに供給する2種類のドープを切り替える技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビでは、視野角を拡大させるために、位相差フィルムを使用した偏光板が広く用いられている。現状の偏光板は、偏光子を、液晶セル側に配置された位相差フィルムと、偏光板保護フィルムとで挟んで構成されている。
【0003】
ここで、位相差フィルムは、樹脂や添加剤を変更することで特性が確保されるので、偏光板保護フィルムとはドープ(溶液)の組成が異なっている。したがって、1台の光学フィルム製造装置を用いて位相差フィルムと偏光板フィルムとを製造するためには、位相差フィルムのドープと偏光板保護フィルムのドープとを切り替える必要がある。
【0004】
溶液流延法による従来の光学フィルム製造装置としては、無端ベルトにドープを流延する流延ダイと、流延ダイに第1ドープ又は第2ドープを供給する共通ラインとを備える装置が知られている。
【0005】
また、引用文献1には、流延ダイにドープを供給するポンプを第1ポンプから第2ポンプに切り替えるに際し、使用中である第1ポンプの流量を減らすとともに切り替え対象である第2ポンプの流量を増やす流量切替工程を行う流量切換工程中に、第1圧力センサが検出した圧力値に基づき流量調整弁を制御し、出口経路の圧力変動を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−68440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来の装置では、組成の異なるドープを切り替える場合、第2ドープを共通ラインに注入し、共通ラインに残存する第1ドープを押し出すことで、ドープの切り替えが行われていた。
【0008】
しかしながら、配管中をドープがショートカットし、壁面のドープがなかなか押し出されないため、切り替えに時間がかかるという問題がある。
【0009】
また、特許文献1の技術において、流量切替工程は、光学フィルムの膜厚を変更するために送液ポンプの切り替えが実施されており、ドープの種類を切り替えるために実施されるものではない。
【0010】
そのため、特許文献1の流量切替工程では、第1ポンプの流量を漸次減少させると同時に、切り替え対象となる第2ポンプの流量が漸次増大されている。
【0011】
よって、特許文献1の技術をドープの種類を切り替える技術に適用したとしても、流延ダイに一定の流量のドープを供給することができず、製造を止めることなく一定の膜厚の光学フィルムを製造することは困難である。
【0012】
本発明の目的は、ドープの切り替え時において膜厚が一定の光学フィルムを製造し、かつ、ドープの切り替えを短時間で行うことができるドープ切り替え方法及び光学フィルム製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の一局面によるドープ切替方法は、溶液流延法により光学フィルムを製造する光学フィルム製造装置において、流延ダイに供給するドープを第1ドープから第2ドープに切り替えるドープ切替方法であって、前記光学フィルム製造装置は、三方弁と、前記三方弁に前記第1ドープを供給する第1供給ラインと、前記三方弁に前記第2ドープを供給する第2供給ラインと、前記第1供給ラインに接続され、前記第1ドープを循環させる第1循環ラインと、前記第2供給ラインに接続され、前記第2ドープを循環させる第2循環ラインと、前記三方弁から流出するドープを前記流延ダイに供給する共通ラインと、前記第1及び第2循環ラインに設けられた第1及び第2循環バルブと、前記第1及び第2供給ラインに設けられた第1及び第2ポンプとを備え、前記三方弁から前記共通ラインに流出する第2ドープを漸次増大させ、かつ前記三方弁から前記共通ラインに流出する第1ドープを漸次減少させるドープ切替工程を備え、前記ドープ切替工程は、前記第2ポンプの流量を一定流量にした状態で、前記三方弁に流入される前記第2ドープの圧力又は流量が一定になるように前記第2循環バルブを制御することを特徴とする。
【0014】
本発明の別の一局面による光学フィルム製造装置は、溶液流延法により光学フィルムを製造する光学フィルム製造装置であって、三方弁と、前記三方弁に第1ドープを供給する第1供給ラインと、前記第1ドープを循環させる第1循環ラインと、前記三方弁に第2ドープを供給する第2供給ラインと、前記第2ドープを循環させる第2循環ラインと、前記三方弁から流出するドープを前記流延ダイに供給する共通ラインと、前記第1及び第2循環ラインに設けられた第1及び第2循環バルブと、前記第1及び第2供給ラインに設けられた第1及び第2ポンプと、前記三方弁から前記共通ラインに流出する第2ドープを漸次増大させ、かつ前記三方弁から前記共通ラインに流出する第1ドープを漸次減少させる制御部とを備え、前記制御部は、前記第2ポンプの流量を一定流量にした状態で、前記三方弁に流入される前記第2ドープの圧力又は流量が一定になるように前記第2循環バルブを制御することを特徴とする。
【0015】
これらの構成によれば、三方弁から共通ラインに流出する第2ドープを漸次増大させ、かつ三方弁から共通ラインに流出する第1ドープを漸次減少させるドープ切替工程が実施され、このドープ切替工程の実施に際して、第2ポンプの流量が一定流量にされた状態で、三方弁に流入される第2ドープの圧力又は流量が一定になるように第2循環バルブが制御されている。
【0016】
つまり、三方弁に流入される第2ドープの圧力又は流量が一定にされているため、三方弁から流出される第1ドープの流量が漸次減少するにつれて三方弁から流出される第2ドープの流量が漸次増大する結果、三方弁から共通ラインに流出するドープの流量を一定にすることができる。
【0017】
これにより、ドープの切り替え時であっても、膜厚が一定の光学フィルムを製造することができ、光学フィルムの製造を中止することなく、ドープの切り替えを行うことができる。
【0018】
また、第1供給ラインと第2供給ラインとは、三方弁及び共通ラインを介して流延ダイに接続されているため、第1供給ラインと第2供給ラインとを直接流延ダイに接続する構成に比べて、第1ドープの押し出し量を少なくすることができる。
【0019】
その結果、ドープの切り替えを短時間(例えば数時間程度)で終了させることができる。
【0020】
(2)前記第1及び第2ドープは粘度が10Pa・s(パスカル秒)以上、1000Pa・s以下であることが好ましい。
【0021】
この構成は、本ドープ切り替え方法に適用される第1及び第2ドープの粘度を規定するものであり、比較的、粘度の高いドープを規定している。
【0022】
(3)前記共通ラインの配管容量は、100L(リットル)以上、1000L以下であることが好ましい。
【0023】
この構成は、共通ラインの配管容量を規定するものである。
【0024】
(4)前記三方弁は、前記第1及び第2ドープの流量を調節する第1及び第2弁を含み、前記ドープ切替工程は、前記第2弁を漸次開くと同時に前記三方弁に流入する第2ドープの圧力又は流量が一定になるように前記第2循環バルブの開度を調節することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、比較的、簡便な制御により三方弁に流入する第2ドープの圧力又は流量を一定にすることができる。
【0026】
(5)前記ドープ切替工程は、前記第1循環バルブを閉じた状態で、前記第1ポンプの流量を漸次減少させると同時に前記第1弁を漸次閉じることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、第1循環バルブを閉じた状態で、第1ポンプの流量が漸次減少されると同時に第1弁が漸次閉じられるため、第1ドープの逆流を防止して、三方弁に流入する第1ドープの流量をある程度確保しながら、三方弁から共通ラインに流出する第1ドープの流量を漸次減少させることができる。
【0028】
(6)前記ドープ切替工程は、前記第1循環バルブを開いた状態で、前記第1ポンプの流量を一定にすると同時に前記第1弁を漸次閉じることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、第1循環バルブを開いた状態で、第1ポンプの流量を一定にすると同時に第1弁を漸次閉じているため、第1ドープの逆流を防止して、三方弁に流入する第1ドープの流量をある程度確保しながら、三方弁から共通ラインに流出する第1ドープの流量を漸次減少させることができる。
【0030】
(7)前記ドープ切替工程は、前記第2ポンプの前記一定流量を光学フィルムの製造時の流量にすることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、第2ポンプの流量が光学フィルムの製造時の流量にされるため、三方弁から流出するドープの流量を光学フィルムの製造時の流量程度にすることができ、ドープの切り替え時において、好ましい膜厚の光学フィルムを製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ドープの切り替え時においても、膜厚が一定の光学フィルムを製造することができ、光学フィルムの製造を中止することなく、ドープを切り替えることができる。また、ドープの切り替えを短時間で終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態によるドープ切替方法が実施される光学フィルム製造装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるドープ切替工程のタイミングチャートを示している。
【図3】本発明の一実施の形態によるドープ切替工程を採用したときのタイミングチャートを示している。
【図4】実施例を纏めた表である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態によるドープ切替方法について説明する。図1は、本発明の一実施の形態によるドープ切替方法が実施される光学フィルム製造装置の全体構成を示す概略図である。この光学フィルム製造装置は、溶液流延法により光学フィルムを製造するものであり、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)を流延ダイDに供給する供給工程と、走行する無端ベルト支持体12上にドープを流延して流延膜を形成する流延工程と、流延膜を無端ベルト支持体12から剥離する剥離工程と、剥離した流延膜を乾燥させる乾燥工程とを実施する。なお、光学フィルムの製造装置としては、図1に示すものに限定されず、他の構成のものを採用してもよい。
【0035】
光学フィルム製造装置は、上記の供給工程を実施する供給部A1と、上記の流延工程、剥離工程、及び乾燥工程を実施するフィルム形成部A2と、光学フィルム製造装置の全体制御を司るコントローラCと、オペレータからの指示を受け付ける操作部Mとを備えている。
【0036】
フィルム形成部A2は、無端ベルト支持体12、剥離ローラ14、延伸装置15、乾燥装置16、及び巻取装置18等を備える。無端ベルト支持体12は、一対の駆動ローラと従動ローラとによって駆動可能に支持され、流延ダイDから流延されたドープ19からなるウェブを形成し、搬送しながら乾燥させることによって光学フィルムとする。
【0037】
剥離ローラ14は、光学フィルムを無端ベルト支持体12から剥離する。延伸装置15は、剥離された光学フィルムを光学フィルムの搬送方向に垂直な方向(幅方向)に延伸する。乾燥装置16は、延伸された光学フィルムを搬送ローラで搬送させながら、乾燥させる。
【0038】
無端ベルト支持体12は、表面が鏡面の、無限に走行する金属製の無端ベルトである。無端ベルトとしては、光学フィルムの剥離性の点から、例えば、ステンレス鋼等からなるベルトが好ましく用いられる。流延ダイDによって流延する流延膜の幅は、無端ベルト支持体12の幅を有効活用する観点から、無端ベルト支持体12の幅に対して、80〜99%とすることが好ましい。また、無端ベルト支持体12の代わりに、表面が鏡面の、回転する金属製のドラム(無端ドラム支持体)を用いてもよい。
【0039】
そして、無端ベルト支持体12は、その表面上に形成された流延膜(ウェブ)を搬送しながら、ドープ中の溶媒を乾燥させる。この乾燥は、例えば、無端ベルト支持体12を加熱したり、加熱風をウェブに吹き付けることによって行う。その際、ウェブの温度が、ドープの溶液によっても異なるが、溶媒の蒸発時間に伴う搬送速度や生産性等を考慮して、−5〜70℃の範囲が好ましく、0〜60℃の範囲がより好ましい。ウェブの温度は、高いほど溶媒の乾燥速度を早くできるので好ましいが、高すぎると、発泡したり、平面性が劣化する傾向がある。
【0040】
無端ベルト支持体12を加熱する場合、例えば、無端ベルト支持体12上のウェブを赤外線ヒータで加熱する方法、無端ベルト支持体12の表面及び裏面を赤外線ヒータで加熱する方法、無端ベルト支持体12の裏面に加熱風を吹き付けて加熱する方法等が挙げられ、必要に応じて適宜選択することが可能である。
【0041】
また、加熱風を吹き付ける場合、その加熱風の風圧は、溶媒蒸発の均一性等を考慮し、50〜5000Paであることが好ましい。加熱風の温度は、一定の温度で乾燥してもよいし、無端ベルト支持体12の走行方向で数段階の温度に分けて供給してもよい。
【0042】
無端ベルト支持体12の上にドープ19を流延した後、無端ベルト支持体12からウェブを剥離するまでの間での時間は、作製する樹脂フィルムの膜厚、使用する溶媒によっても異なるが、無端ベルト支持体12からの剥離性を考慮し、0.5〜5分間の範囲であることが好ましい。
【0043】
無端ベルト支持体12の走行速度は、例えば、50〜300m/分程度であることが好ましい。また、流延ダイDから吐出されるドープの流速に対する、無端ベルト支持体12の走行速度の比(ドラフト比)は、0.5〜2程度であることが好ましい。このドラフト比がこの範囲内であると、安定して流延膜を形成させることができる。例えば、ドラフト比が大きすぎると、流延膜が幅方向に縮小されるネックインという現象を発生させる傾向があり、そうなると、広幅の樹脂フィルムを形成できなくなる。
【0044】
剥離ローラ14は、無端ベルト支持体12のドープ19が流延される側の表面近傍に配置されており、無端ベルト支持体12と剥離ローラ14との距離は、1〜100mmであることが好ましい。剥離ローラ14を支点として、乾燥されたウェブ(光学フィルム)に張力をかけて引っ張ることによって、乾燥されたウェブ(光学フィルム)が剥離される。無端ベルト支持体12から光学フィルムを剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によって光学フィルムは、光学フィルムの搬送方向(Machine Direction:MD方向)に延伸する。このため、無端ベルト支持体12から光学フィルムを剥離する際の剥離張力及び搬送張力は、50〜400N/mにすることが好ましい。
【0045】
また、光学フィルムを無端ベルト支持体12から剥離する時の光学フィルムの残留溶媒率は、無端ベルト支持体12からの剥離性、剥離時の残留溶媒率、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後にできあがる樹脂フィルムの物理特性等を考慮し、30〜200質量%であることが好ましい。なお、光学フィルムの残留溶媒率は、下記式(1)で定義される。
【0046】
残留溶媒率(質量%)={(M−M)/M}×100 (1)
ここで、Mは、光学フィルムの任意時点での質量を示し、Mは、Mを測定した光学フィルムを115℃で1時間乾燥させた後の質量を示す。
【0047】
延伸装置15は、光学フィルムを搬送方向に垂直な方向(Transverse Direction:TD方向)(幅方向)に延伸させる。具体的には、光学フィルムの搬送方向に垂直な方向の両側端部を把持手段であるクリップ等で把持して、対向するクリップ間の距離を大きくすることによって、TD方向に延伸する。
【0048】
乾燥装置16は、複数の搬送ローラを備え、そのローラ間を光学フィルムを搬送させる間に光学フィルムを乾燥させる。その際、加熱空気、赤外線等を単独で用いて乾燥してもよいし、加熱空気と赤外線とを併用して乾燥してもよい。簡便さの点から加熱空気を用いることが好ましい。乾燥温度としては、光学フィルムの残留溶媒率により、好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮むら、伸縮量の安定性等を考慮し、30〜180℃の範囲で残留溶媒率により適宜選択して決めればよい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、2〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。また、乾燥装置16内を搬送される間に、光学フィルムを、MD方向に延伸させることもできる。
【0049】
巻取装置18は、乾燥装置16で、乾燥された光学フィルムを必要量の長さに巻き芯に巻き取る。なお、巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮による擦り傷、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、特に限定なく使用でき、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0050】
流延ダイDにドープを供給する供給部A1は、釜K1,K2、供給ラインL1,L2(第1,第2供給ライン)、循環ラインL11,L21(第1,第2循環ライン)、ポンプCP1,CP2(第1,第2ポンプ)、循環バルブV1,V2(第1,第2循環バルブ)、三方弁B、共通ラインL3、圧力計P1〜P3、及び流延ダイDを備えている。
【0051】
釜K1は、第1ドープを貯蔵する。釜K2は、第2ドープを貯蔵する。供給ラインL1は、釜K1と三方弁Bとの間に配設された例えば管状の部材により構成され、釜K1に貯蔵された第1ドープを三方弁Bに供給する。供給ラインL2は、釜K2と三方弁Bとの間に配設された例えば管状の部材により構成され、釜K2に貯蔵された第2ドープを三方弁Bに供給する。
【0052】
循環ラインL11は、三方弁B及びポンプCP1間の供給ラインL1上の所定の位置と、釜K1との間に配設された管状の部材により構成され、供給ラインL1を流れる第1ドープを釜K1に戻すことにより、第1ドープを循環させる。
【0053】
循環ラインL21は、三方弁B及びポンプCP2間の供給ラインL2上の所定の位置と、釜K2との間に配設された管状の部材により構成され、供給ラインL2を流れる第2ドープを釜K1に戻すことにより、第2ドープを循環させる。
【0054】
ポンプCP1は、例えばギアポンプにより構成され、供給ラインL1内の第1ドープを釜K1から三方弁Bに向けて流す。ここで、ポンプCP1は、コントローラCの制御に従って第1ドープの流量を調節してもよいし、オペレータの操作に従って第1ドープの流量を調節してもよい。オペレータの操作による場合、例えばポンプCP1に流量調節用の調節部を設け、この調節部をオペレータに操作させることでポンプCP1の流量を調節する態様を採用してもよいし、操作部MにポンプCP1の流量を調節するための調節部を設け、オペレータがこの調節部を操作することでポンプCP1の流量を調節する態様を採用してもよい。
【0055】
ポンプCP2は、例えばギアポンプにより構成され、供給ラインL2内の第2ドープを釜K2から三方弁Bに向けて流す。ここで、ポンプCP2は、コントローラCの制御に従って第2ドープの流量を調節してもよいし、オペレータの操作に従って第2ドープの流量を調節してもよい。オペレータの操作による場合、例えば、ポンプCP2に流量調整するための調節部を設け、この調節部をオペレータに操作させることでポンプCP2の流量を調節する態様を採用してもよいし、操作部MにポンプCP2の流量を調節するための調節部を設け、オペレータがこの調節部を操作することでポンプCP2の流量を調節する態様を採用してもよい。
【0056】
循環バルブV1は、循環ラインL11上に配設され、コントローラCの制御によって、又はオペレータからの操作によって、開度が調節され、供給ラインL1から循環ラインL11を介して釜K1に戻される第1ドープの流量を調節する。ここで、オペレータの操作によって循環バルブV1の開度を調節する場合、循環バルブV1をオペレータが直接操作する態様を採用してもよいし、操作部Mに循環バルブV1を操作するための操作ボタンを設け、オペレータがこの操作ボタンを操作することで循環バルブV1の開度を調節する態様を採用してもよい。
【0057】
循環バルブV2は、循環ラインL21上に配設され、コントローラCの制御によって、又はオペレータからの操作によって、開度が調節され、供給ラインL2から循環ラインL21を介して釜K2に戻される第2ドープの流量を調節する。ここで、オペレータの操作によって循環バルブV2の開度を調節する場合、循環バルブV2をオペレータが直接操作する態様を採用してもよいし、操作部Mに循環バルブV2を操作するための操作ボタンを設け、オペレータがこの操作ボタンを操作することで循環バルブV2の開度を調節する態様を採用してもよい。
【0058】
三方弁Bは、流入口H1,H2、流出口H3、弁B1,B2を備えている。流入口H1は、供給ラインL1が接続され、第1ドープが流入される。流入口H2は、供給ラインL2が接続され、第2ドープが流入される。流出口H3は、共通ラインL3が接続され、第1ドープと第2ドープとを共通ラインL3に流出させる。
【0059】
弁B1は、コントローラCの制御に従って、又はオペレータの操作に従って、開度が調節され、共通ラインL3に流出する第1ドープの流量を調節する。弁B2は、コントローラCの制御に従って、又はオペレータの操作に従って、開度が調節され、共通ラインL3に流出する第2ドープの流量を調節する。
【0060】
ここで、オペレータの操作によって弁B1,B2の開度を調節する場合、弁B1,B2をオペレータが直接操作する態様を採用してもよいし、操作部Mに弁B1,B2を操作するための操作ボタンを設け、この操作ボタンを操作することで弁B1,B2の開度を調節する態様を採用してもよい。
【0061】
共通ラインL3は、三方弁Bと流延ダイDとの間に配設された管状の部材により構成され、三方弁Bから流出されたドープを流延ダイDに供給する。ここで、共通ラインL3におけるドープの容量としては、例えば、100L(リットル)以上、1000L以下であることが好ましい。共通ラインL3の容量を小さくすることで、ドープの切り替えを短時間で行うことができる。
【0062】
このように、供給ラインL1と供給ラインL2とは、三方弁B及び共通ラインL3を介して流延ダイDに接続されているため、供給ラインL1と供給ラインL2とを直接、流延ダイDに接続する構成に比べて、第1ドープの押し出し量を少なくすることができる。その結果、ドープの切り替えを短時間(例えば数時間程度)で終了させることができる。
【0063】
圧力計P1は、供給ラインL1の下流側の所定の位置(例えば三方弁Bの近傍)に設けられ、供給ラインL1を流れる第1ドープの圧力を検出し、検出データをコントローラCに出力する。
【0064】
圧力計P2は、供給ラインL2の下流側の所定の位置(例えば三方弁Bの近傍)に設けられ、供給ラインL2を流れる第2ドープの圧力を検出し、検出データをコントローラCに出力する。
【0065】
圧力計P3は、共通ラインL3の所定の位置(例えば三方弁Bの近傍)に設けられ、共通ラインL3を流れるドープの圧力を検出し、検出データをコントローラCに出力する。
【0066】
流延ダイDは、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)19を無端ベルト支持体12の表面上に流延する。ここで、流延ダイDは、上端部に接続された共通ラインL3からドープ19が供給される。そして、その供給されたドープ19が流延ダイDから無端ベルト支持体12に吐出され、無端ベルト支持体12上にウェブが形成される。
【0067】
なお、圧力計P1〜P3の検出データは、コントローラCの制御の下、表示部Eに表示されるようにしてもよいし、圧力計P1〜P3に表示部Eを設け、この表示部Eに表示されるようにしてもよい。
【0068】
コントローラCは、光学フィルム製造装置の全体制御を司る。
【0069】
以下、本実施形態で使用する樹脂溶液(ドープ)の組成について説明する。
【0070】
本実施形態で使用する樹脂溶液は、透明性樹脂を溶媒に溶解させたものである。
【0071】
透明性樹脂は、溶液流延法等によって基板状に成形したときに透明性を有する樹脂であればよく、特に制限されないが、溶液流延法等による製造が容易であること、ハードコート層等の他の機能層との接着性に優れていること、光学的に等方性であること等が好ましい。なお、ここで透明性とは、可視光の透過率が60%以上であることであり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0072】
前記透明性樹脂としては、具体的には、例えば、セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂;ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、セロファン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等のビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルケトンイミド樹脂;ポリアミド系樹脂;フッ素系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系樹脂が好ましい。さらに、セルロースエステル系樹脂が好ましく、セルロースエステル系樹脂の中でも、セルロースアセテート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルローストリアセテート樹脂が好ましく、セルローストリアセテート樹脂が特に好ましい。また、前記透明性樹脂は、上記例示した透明性樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
次に、流延ダイDに供給するドープを第1ドープから第2ドープに切り替える本実施の形態によるドープ切替工程について説明する。
【0074】
まず、三方弁Bから共通ラインL3に流出する第2ドープが漸次増大され、かつ三方弁Bから共通ラインL3に流出する第1ドープが漸次減少されるように三方弁Bが調節される。
【0075】
このとき、コントローラCが、ポンプCP2の流量が一定流量になるように制御した状態で、圧力計P2をモニタして、三方弁Bに流入される第2ドープの圧力が一定になるように循環バルブV2を制御するようにしてもよい。或いは、オペレータが、ポンプCP2の流量を一定流量にセットし、圧力計P2をモニタしながら、三方弁Bに流入される第2ドープの圧力が一定になるように操作部Mを操作して循環バルブV2を調節するようにしてもよい。
【0076】
具体的には、コントローラC又はオペレータは、弁B2を漸次開くと同時に三方弁Bに流入する第2ドープの圧力が一定になるように循環バルブV2の開度を調節することでドープ切替工程を実施する。これにより、比較的、簡便な手順により三方弁Bに流入する第2ドープの圧力を一定にすることができる。なお、コントローラCが圧力計P2をモニタして、循環バルブV2を制御する場合、コントローラCは、例えばPID(Proportional Integral Differential)制御、PI(Proportional Integral)制御等を採用すればよい。
【0077】
このようにドープ切替工程が実施されることで、三方弁Bに流入される第2ドープの圧力が一定にされているため、三方弁Bから流出される第1ドープの流量が漸次減少するにつれて三方弁Bから流出される第2ドープの流量が漸次増大する結果、三方弁Bから共通ラインL3に流出するドープの流量を一定にすることができる。その結果、ドープの切り替えを短時間(例えば数時間程度)で終了させることができる。
【0078】
また、上記のドープ切替工程において、循環バルブV1を閉じた状態で、ポンプCP1の流量を漸次減少させると同時に弁B1を漸次閉じることが好ましい。これにより、第1ドープの逆流を防止して、三方弁Bに流入する第1ドープの流量をある程度確保しながら、三方弁Bから共通ラインL3に流出する第1ドープの流量を漸次減少させることができる。なお、この手順は、コントローラCが自動で行ってもよいし、オペレータが手動で行ってもよい。
【0079】
また、第1及び第2ドープとしては、粘度が10Pa・s(パスカル秒)以上の比較的、粘度の高いドープが採用されている。
【0080】
また、上記のドープ切替工程において、ポンプCP2の一定流量を光学フィルムの製造時の流量にすることが好ましい。これにより、ポンプCP2の流量が光学フィルムの製造時の流量にされるため、三方弁Bから流出するドープの流量を光学フィルムの製造時の流量程度にすることができ、ドープの切り替え時において、好ましい膜厚の光学フィルムを製造することができる。なお、この手順は、コントローラC又はオペレータが予め定められた流量をセットするようにすればよい。
【0081】
図2は、本実施の形態によるドープ切替工程のタイミングチャートを示している。1〜6段目の波形は、それぞれ、循環バルブV1の開度、循環バルブV2の開度、ポンプCP1の流量、ポンプCP2の流量、弁B1の開度、及び弁B2の開度を示している。なお、ドープ切替工程は、操作部Mがオペレータからドープ切替工程を開始するための指示を受け付けることで開始される。
【0082】
図2の6段目に示すように、弁B2は、全閉から全開に向けて開度が一定の割合で漸次増大されている。また、図2の4段目に示すように、ポンプCP2の流量は一定とされている。また、図2の2段目に示すように、コントローラC又はオペレータは、圧力計P2により測定された第2ドープの圧力値が一定になるように、循環バルブV2の開度を調節しており、これに伴って、循環バルブV2の開度は漸次減少している。
【0083】
図2の1段目に示すように、ドープ切替工程の実施中、循環バルブV1は全閉にされている。また、図2の3段目に示すように、ポンプCP1は、例えば流量が所定値R1(例えば最大値)から所定値R2(R2<R1;例えば0)となるように漸次減少されている。
【0084】
また、図2の5段目に示すように、弁B1は、開度が全開から全閉となるように一定の割合で漸次減少されている。
【0085】
これにより、共通ラインL3の第1ドープは、第2ドープにより押し出され、ドープ切替工程の終了時には、第1ドープは第2ドープにより完全に押し出され、共通ラインL3は第2ドープで満たされている。
【0086】
なお、図2の3段目に示すポンプCP1の流量が減少する割合、図2の5段目に示す弁B1の開度が漸次減少する割合、及び図2の6段目に示す弁B2の開度が漸次増大する割合は、ドープ切替工程を開始してから終了するまでに要する時間に基づいて予め定められた値が採用されている。また、ドープ切替工程を開始してから終了するまでに要する時間としては、共通ラインL3から第1ドープが除去されるまでの時間を実験により求め、求めた時間を採用すればよい。具体的には、ドープ切替工程に要する時間としては、共通ラインL3の例えば3倍程度の第2ドープを共通ラインL3から流出する時間を採用することができ、例えば数分〜数時間程度の時間を採用することができる。
【0087】
ここで、操作部Mがドープ切替工程の開始の指示を受け付けると、コントローラCは、予め定められた割合で、ポンプCP1の流量が漸次減少し、弁B1の開度が漸次減少し、弁B2の開度が漸次増大するように、ポンプCP1、弁B1,B2をシーケンス制御すると同時に、コントローラC又はオペレータは、圧力計P2により測定された圧力値が一定となるように、循環バルブV2をフィードバック制御すればよい。
【0088】
このように、本実施の形態によるドープ切替方法によれば、ドープの切り替え時においても、膜厚が一定の光学フィルムを製造することができ、光学フィルムの製造を中止することなく、ドープを切り替えることができる。また、ドープの切り替えを短時間で終了させることができる。
【0089】
なお、上記のドープ切替工程では、弁B2を漸次開くと同時に、三方弁Bに流入する第2ドープの圧力が一定になるように循環バルブV2の開度が調節されていたが、これに限定されない。すなわち、弁B2を漸次開くと同時に三方弁Bに流入する第2ドープの圧力ではなく流量が一定になるように循環バルブV2の開度を調節する、いわゆる流量制御によりドープ切替工程を実施してもよい。この場合、圧力計P1〜P3に替えて、流量計を設ければよい。この場合も、コントローラCが循環バルブV2の開度を調節する形態では、コントローラCは、PID制御、PI制御等を採用して、第2ドープの流量を一定にすればよい。
【0090】
また、上記のドープ切替工程では、第1ドープを第2ドープに切り替えるようにしたが、これに限定されず、第2ドープを第1ドープに切り替えるようにしてもよい。この場合、第1ドープを第2ドープに切り替える場合と同様にして、第2ドープを第1ドープに切り替えればよい。
【0091】
また、上記のドープ切替工程では、循環バルブV1を閉じた状態で、ポンプCP1の流量を漸次減少させると同時に弁B1を漸次閉じるようにしたが、これに限定されない。すなわち、循環バルブV1を開いた状態で、ポンプCP1の流量を一定にすると同時に弁B1を漸次閉じるようにしもよい。
【0092】
図3は、このドープ切替工程を採用したときのタイミングチャートを示している。図3の1段目に示すように、循環バルブV1は全開とされ、図3の3段目に示すように、ポンプCP1の流量は一定にされ、弁B1は開度が一定の割合で漸次減少している。
【0093】
これにより、第1ドープの逆流を防止して、三方弁Bに流入する第1ドープの流量をある程度確保しながら、三方弁Bから共通ラインL3に流出する第1ドープの流量を漸次減少させることができる。
【0094】
具体的には、コントローラC又はオペレータは、弁B2を漸次開くと同時に三方弁Bに流入する第2ドープの圧力が一定になるように循環バルブV2の開度を調節することでドープ切替工程を実施する。これにより、比較的、簡便な制御により三方弁Bに流入する第2ドープの圧力を一定にすることができる。
【0095】
次に、本発明の実施例について説明する。図4は、実施例を纏めた表である。この表は、以下の3つのドープ組成1〜ドープ組成3のうち任意の2つのドープ組成を第1及び第2ドープとして採用してたときの10種類の実施例1〜10を示している。
【0096】
〈ドープ組成1〉
セルローストリアセテート(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1) 100
トリフェニルフォスフェート 8
エチルフタリルエチルグリコレート 2
メチレンクロライド 440
エタノール 40
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 0.2
〈ドープ組成2〉
セルローストリアセテートプロピオネート 100
(アセチル基置換度+プロピオニル基置換度=2.4 Mn=6000、Mw=180000、Mw/Mn=3.00)
トリフェニルフォスフェート 8
エチルフタリルエチルグリコレート 2
メチレンクロライド 360
エタノール 60
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 0.2
〈ドープ組成3〉
ノルボルネン樹脂(アートンG、ジェイエスアール社製) 100質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2
トリフェニルフォスクエート 8
メチレンクロライド 250
エタノール 10
【0097】
図4の表において、供給ライン1は図1の供給ラインL1を示し、供給ライン2は図1の供給ラインL2を示している。「ドープ種」は、ドープ組成1〜3のうちいずれを採用したかを示し、表に示す「1」〜「3」はそれぞれ、ドープ組成1〜3を用いたことを示している。
【0098】
「粘度」は、35℃におけるドープの粘度を示している。「流量」は、どのように流量を変化させたかを示し、「down」は流量を低下させたことを示し、「一定」は流量を一定にしたことを示している。
【0099】
「循環ラインバルブ」は、図1に示す循環バルブV1,V2をどのように制御したかを示している。「制御方法」は循環ラインL21の循環バルブV2をどのように制御したかを示している。「三方弁出側流量偏差」は、三方弁Bの流出口H3から流出されたドープの流量の平均値AVE1に対する、平均値AVE1と流量の各測定値Rとの差の絶対値(=|R−AVE1|)の平均値の割合(=(|R−AVE1|の平均値/AVE1)×100)を示す。「三方弁以降の配管」は図1に示す共通ラインL3の容量をリットル(L)単位で示したものである。「三方弁切り替え後配管容量3倍押し出し後の膜厚偏差」は、供給ラインL1から供給ラインL2への切り替えを開始してから、共通ラインL3の3倍の容量の第2のドープを共通ラインL3から流出させた以降において、製造される光学フィルムの膜厚の偏差を示している。
【0100】
なお、図4の表における比較例1、比較例2は、本実施の形態によるドープ製造方法とは異なる手法を用いてドープの切り替えを行ったものである。比較例1では、供給ライン1の圧力が一定になるように供給ライン1の循環ラインバルブ(循環バルブV1)が制御されている。比較例2では、供給ライン1の循環ラインバルブ(循環バルブV1)と、供給ライン2の循環ラインバルブ(循環バルブV2)が共に閉じられ、循環ラインを使用することなく、供給ライン1(供給ラインL1)の圧力が一定になるようにポンプCP1の流量が制御され、供給ライン2(供給ラインL2)の圧力が一定になるように、ポンプCP2の流量が漸次増大されている。
【0101】
なお、実施例1〜8、比較例1、2においては、三方弁Bは弁B1の開度が漸次減少され、弁B2の開度が漸次増大されている。また、実施例1〜4、6〜8では圧力制御、すなわち、供給ライン2のドープの圧力が一定になるように循環バルブV2の開度が制御されているが、実施例5では、流量制御、すなわち、供給ライン2のドープの流量が一定になるように、循環バルブV2の開度が制御されている。
【0102】
実施例1〜8においては、「三方弁出側流量偏差」が1%〜5%と良好な実験結果が得られているのに対して、比較例1、2においては、「三方弁出側流量偏差」が12%となっており、本実施の形態によるドープ切替方法の方が、共通ラインL3に流れるドープの流量が安定していることが分かる。
【0103】
また、これに起因して、実施例1〜8では、膜厚偏差が1%前後、特に実施例4では、膜厚偏差が「0.5%」で極めて低くなっているのに対し、比較例1、2では膜厚偏差が「8%」と実施例1〜8に比べて遙かに大きくなっており、本実施の形態によるドープ切替方法の方が、膜厚が安定していることが分かる。
【符号の説明】
【0104】
A1 供給部
A2 フィルム形成部
B 三方弁
B1,B2 弁
C コントローラ
CP1,CP2 ポンプ
D 流延ダイ
H1,H2 流入口
H3 流出口
K1,K2 釜
L1,L2 供給ライン
L11,L21 循環ライン
L3 共通ライン
M 操作部
P1 圧力計
P2 圧力計
V1,V2 循環バルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液流延法により光学フィルムを製造する光学フィルム製造装置において、流延ダイに供給するドープを第1ドープから第2ドープに切り替えるドープ切替方法であって、
前記光学フィルム製造装置は、
三方弁と、
前記三方弁に前記第1ドープを供給する第1供給ラインと、
前記三方弁に前記第2ドープを供給する第2供給ラインと、
前記第1供給ラインに接続され、前記第1ドープを循環させる第1循環ラインと、
前記第2供給ラインに接続され、前記第2ドープを循環させる第2循環ラインと、
前記三方弁から流出するドープを前記流延ダイに供給する共通ラインと、
前記第1及び第2循環ラインに設けられた第1及び第2循環バルブと、
前記第1及び第2供給ラインに設けられた第1及び第2ポンプとを備え、
前記三方弁から前記共通ラインに流出する第2ドープを漸次増大させ、かつ前記三方弁から前記共通ラインに流出する第1ドープを漸次減少させるドープ切替工程を備え、
前記ドープ切替工程は、前記第2ポンプの流量を一定流量にした状態で、前記三方弁に流入される前記第2ドープの圧力又は流量が一定になるように前記第2循環バルブを制御することを特徴とするドープ切替方法。
【請求項2】
前記第1及び第2ドープは粘度が10Pa・s以上、1000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1記載のドープ切替方法。
【請求項3】
前記共通ラインの配管容量は、100L以上、1000L以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のドープ切替方法。
【請求項4】
前記三方弁は、前記第1及び第2ドープの流量を調節する第1及び第2弁を含み、
前記ドープ切替工程は、前記第2弁を漸次開くと同時に前記三方弁に流入する第2ドープの圧力又は流量が一定になるように前記第2循環バルブの開度を調節することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドープ切替方法。
【請求項5】
前記ドープ切替工程は、前記第1循環バルブを閉じた状態で、前記第1ポンプの流量を漸次減少させると同時に前記第1弁を漸次閉じることを特徴とする請求項4記載のドープ切替方法。
【請求項6】
前記ドープ切替工程は、前記第1循環バルブを開いた状態で、前記第1ポンプの流量を一定にすると同時に前記第1弁を漸次閉じることを特徴とする請求項4記載のドープ切替方法。
【請求項7】
前記ドープ切替工程は、前記第2ポンプの前記一定流量を光学フィルムの製造時の流量にすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のドープ切替方法。
【請求項8】
溶液流延法により光学フィルムを製造する光学フィルム製造装置であって、
三方弁と、
前記三方弁に第1ドープを供給する第1供給ラインと、
前記第1ドープを循環させる第1循環ラインと、
前記三方弁に第2ドープを供給する第2供給ラインと、
前記第2ドープを循環させる第2循環ラインと、
前記三方弁から流出するドープを前記流延ダイに供給する共通ラインと、
前記第1及び第2循環ラインに設けられた第1及び第2循環バルブと、
前記第1及び第2供給ラインに設けられた第1及び第2ポンプと、
前記三方弁から前記共通ラインに流出する第2ドープを漸次増大させ、かつ前記三方弁から前記共通ラインに流出する第1ドープを漸次減少させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記第2ポンプの流量を一定流量にした状態で、前記三方弁に流入される前記第2ドープの圧力又は流量が一定になるように前記第2循環バルブを制御することを特徴とする光学フィルム製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−240875(P2010−240875A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89098(P2009−89098)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】