ナノコンポジット磁石およびその製造方法
【課題】 硬磁性ナノ粒子と軟磁性ナノ粒子とを複合して優れた磁気特性を有するナノコンポジット磁石およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 多数の硬磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に最密規則配列した硬磁性ナノ粒子層と、これと同じ配列形式で軟磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に最密規則配列した軟磁性ナノ粒子層とが交互に積層して成り、全体として規則超格子構造を有するナノコンポジット磁石。ラングミュア−ブロジェット法により、基板上に、上記硬磁性ナノ粒子層および上記軟磁性ナノ粒子層のうちのいずれか一方の層を形成する工程と該一方の層上に他方の層を形成する工程と少なくとも一回行なうことを特徴とするナノコンポジット磁石の製造方法。
【解決手段】 多数の硬磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に最密規則配列した硬磁性ナノ粒子層と、これと同じ配列形式で軟磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に最密規則配列した軟磁性ナノ粒子層とが交互に積層して成り、全体として規則超格子構造を有するナノコンポジット磁石。ラングミュア−ブロジェット法により、基板上に、上記硬磁性ナノ粒子層および上記軟磁性ナノ粒子層のうちのいずれか一方の層を形成する工程と該一方の層上に他方の層を形成する工程と少なくとも一回行なうことを特徴とするナノコンポジット磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬磁性ナノ粒子と軟磁性ナノ粒子とを複合させて成るナノコンポジット磁石およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬磁性材料と軟磁性材料をそれぞれ特徴付ける性質は保磁力と最大磁化である。すなわち両者の対比において、硬磁性材料は保磁力が大きく永久磁石として高性能を発揮するが最大磁束密度(最大磁化)は小さいのに対して、軟磁性材料は保磁力が小さく最大磁束密度が大きいため低鉄損のトランス鉄心等として高性能を発揮する。
【0003】
永久磁石用の材料としては、保磁力と最大磁束密度が共に大きいほど、すなわち減磁曲線における最大エネルギー積(BHmax)が大きいほど、強力な磁力を安定して維持できる優れた磁石材料と言える。
【0004】
硬磁性相と軟磁性相とをナノスケール(数十nm以下)で微細に混在させると、両者の長所を併せ持つ優れた性能の磁石が得られることが期待される。
【0005】
非特許文献1には、α−Fe軟磁性ナノ粒子とFePt硬磁性ナノ粒子とを混合してランダムに配列させたナノコンポジット磁石が提案されている。しかし、単なるランダムな混合であって、規則的な配列ではないため、軟磁性ナノ粒子に対して硬磁性ナノ粒子からの相互作用が十分に到達せず、磁気特性の大きな向上は達成できない。
【0006】
非特許文献2には、NdFeB系急冷アモルファスリボンを作製し、熱処理を施すことによりアモルファス相からナノサイズの磁性体を析出させたナノコンポジット磁石が提案されている。しかし、急冷リボンでは粒径が粗大になり過ぎる傾向があり、軟磁性相の大きさが交換結合長を超えてしまい、また軟磁性相が磁気的性質の低い化合物になってしまい、高い磁気特性は得られない。また磁性相の配列も規則的な配列ではない。
【0007】
一方、特許文献1には、磁性を持つ超微粒子をLB膜法で薄膜とする際に、50層積層することが記載されている。また、LB膜を形成する際に外部磁界で磁気的方位を揃えるこが記載されている。ただし、用いる超微粒子は1種類であり、硬磁性粒子と軟磁性粒子との複合ではない。
【0008】
【非特許文献1】J. P. Liu et al., Nature, 420, 395-398(2002)
【非特許文献2】S. Hirosawa et al., Proc. 13th Int'l. Workshop, p87(1994)
【特許文献1】特許第2708457号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、硬磁性ナノ粒子と軟磁性ナノ粒子とを複合して優れた磁気特性を有するナノコンポジット磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、多数の硬磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に最密規則配列した硬磁性ナノ粒子層と、これと同じ配列形式で軟磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に最密規則配列した軟磁性ナノ粒子層とが交互に積層して成り、全体として規則超格子構造を有するナノコンポジット磁石が提供される。
【0011】
また、上記本発明のナノコンポジット磁石の製造方法であって、ラングミュア−ブロジェット法により、基板上に、上記硬磁性ナノ粒子層および上記軟磁性ナノ粒子層のうちのいずれか一方の層を形成する工程と該一方の層上に他方の層を形成する工程と少なくとも一回行なうことを特徴とするナノコンポジット磁石の製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のナノコンポジット磁石は、それぞれ平面状に最密規則配列した硬磁性ナノ粒子層と軟磁性ナノ粒子層とが交互に積層して全体として規則超格子構造を構成しているので、軟磁性ナノ粒子に対する硬磁性ナノ粒子からの相互作用が最大限に発揮され、優れた磁気特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔実施形態1〕
図1に、本発明のナノコンポジット磁石の規則超格子構造を模式的に示す。同図の(1)は硬磁性ナノ粒子層と軟磁性ナノ粒子層の交互積層方向に平行な断面図、(2)は積層面に平行な断面図、(3)は斜視図である。
【0014】
図示したナノコンポジット磁石100は、多数の硬磁性ナノ粒子Hが上下の重なり無く平面状に規則配列した硬磁性ナノ粒子層LHと、これと同じ配列形式で軟磁性ナノ粒子Sが上下の重なり無く平面状に規則配列した軟磁性ナノ粒子層LSとが交互に積層して成り、全体として規則超格子構造を有する。
【0015】
なお図1において、最密六方配列した硬磁性ナノ粒子Hの3粒子が作る三角形の中心に配置された軟磁性ナノ粒子S同士は間隔を空けて示してあるが、これは軟磁性ナノ粒子Sと重なってその下にある硬磁性ナノ粒子Hの配置を特に図1(2)で見やすく図示する便宜のためであり、実際には軟磁性ナノ粒子Sも硬磁性ナノ粒子Hと同じ配列形式の最密六方に配列されている。
【0016】
図2を参照して、図1に示した規則超格子構造の本発明のナノコンポジット磁石100の製造方法を説明する。
【0017】
図2(1)に示すように、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)により、基板10上に、硬磁性ナノ粒子Hの層LHを形成する。
【0018】
次に、図2(2)に示すように、上記で形成した硬磁性ナノ粒子Hの層LHの上に、LB法により軟磁性ナノ粒子Sの層LSを形成する。
【0019】
更に、図2(3)に示すように、上記で形成した軟磁性ナノ粒子Sの層LSの上に、再びLB法により硬磁性ナノ粒子Hの層LHを形成する。
【0020】
以下、同様に硬磁性ナノ粒子層LHと軟磁性ナノ粒子層LSとを交互に積層することにより、図1の規則超格子構造を持つナノコンポジット磁石100が得られる。
【0021】
図3に、LB法により本発明の積層構造を形成するための装置を示す。
【0022】
トラフ20内に水22が満たされており、バリア24は上部が水面22S上に飛び出して配置されている。基板10は水22内に浸漬した状態から引上げ器26により、制御された速度で引上げられる。硬磁性ナノ粒子Hの供給槽28には硬磁性ナノ粒子Hを疎水性の界面活性剤に分散させた分散液HAが収容され、軟磁性ナノ粒子Sの供給槽30には軟磁性ナノ粒子Sを疎水性の界面活性剤に分散させた分散液SAが収容されている。供給槽28、30の下端にはそれぞれ供給量調整用のバルブ32、34を介して延びた供給ノズル36、38が水面22Sの上方に配置されている。バルブ制御器40によりバルブ32、34の開度をそれぞれ独立に制御できる。基板引上げ器26およびバルブ制御器40は電源42からそれぞれ電力を供給される。
【0023】
図3および図4を参照し、LB法によって基板10上に硬磁性ナノ粒子層LHを形成する図2(1)の工程の実行手順を説明する。
【0024】
まず図4(1)に示したように、水面22S上へ硬磁性ナノ粒子Hを供給する段階を説明する。図3に示した硬磁性ナノ粒子供給槽28のバルブ32をバルブ制御装置40により所定開度に開放し、所定時間後に閉鎖する。これにより、図4(1)に示すように、バリア24と基板10との間の水面22S上に所定量の硬磁性ナノ粒子Hが供給されて浮遊する。図5(1)に示すように、個々の硬磁性ナノ粒子Hは表面が界面活性剤による疎水性の高分子配位子Xで包まれているので、水22の表面張力により水面22S上に浮遊して自由な状態で分散する。
【0025】
次に、図4(2)に示すように、バリア24を矢印Pで示したように徐々に基板10の方へ移動させると、水面22S上に自由分散していた硬磁性ナノ粒子Hが押圧され、押圧力に対して最もエネルギーの低い状態である最密六方に配列され、硬磁性ナノ粒子Hの二次元膜Fが形成される。二次元膜Fの更に詳細な平面構造は、図5(2)に示すように、界面活性剤による高分子配位子Xにより硬磁性ナノ粒子Hの粒子間隔が規定された最密六方配列である。個々の硬磁性ナノ粒子H自体は、表面エネルギーを最低にするようにほぼ球形になっている。
【0026】
次に、図4(3)に示すように、引上げ器26を作動させて基板10を制御された所定速度で引上げると、水面22S上に形成された硬磁性ナノ粒子Hの二次元膜Fがそのまま基板10の表面に吸着されて基板10と一緒に引上げられる。
【0027】
こうして基板10上にLB膜として形成した硬磁性ナノ粒子層LHの上に、次に説明する図2(2)の工程において、同様にしてLB膜としての軟磁性ナノ粒子層LSを形成する。その前準備として、硬磁性ナノ粒子層LHを軟磁性ナノ粒子層LSを形成する下地として安定化させる。安定化の一方法としては、硬磁性ナノ粒子Hの分散媒である界面活性剤として紫外線硬化性のものを用い、図4(3)に示すように、基板10上に吸着された硬磁性ナノ粒子層LHに、紫外線照射装置44から紫外線46を照射して硬磁性ナノ粒子層LHを硬化させる。これにより硬磁性ナノ粒子層LHはそれ自体として強固に一体化すると同時に基板10とも強固に接合され、安定した下地として機能できるようになる。これにより図2(1)に示したように基板10上に硬磁性ナノ粒子Hが規則配列した硬磁性ナノ粒子層LHが形成される。
【0028】
次に、同じく図3および図4を参照し、LB法によって硬化済硬磁性ナノ粒子層LH上に軟磁性ナノ粒子層LSを形成する図2(2)の工程の実行手順を説明する。基本的には上述した基板10上への硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同じである。
【0029】
まず図4(1)に示したように、水面22S上へ軟磁性ナノ粒子Sを供給する段階を説明する。図3に示した硬軟磁性ナノ粒子供給槽30のバルブ34をバルブ制御装置40により所定開度に開放し、所定時間後に閉鎖する。これにより、図4(1)に示すように、バリア24と基板10との間の水面22S上に所定量の軟磁性ナノ粒子Sが供給されて浮遊する。図5(1)に示すように、個々の軟磁性ナノ粒子Sは表面が界面活性剤による疎水性の高分子配位子Xで包まれているので、水22の表面張力により水面22S上に浮遊して自由な状態で分散する。
【0030】
次に、図4(2)に示すように、バリア24を矢印Pで示したように徐々に基板10の方へ移動させると、水面22S上に自由分散していた軟磁性ナノ粒子Sが押圧され、押圧力に対して最もエネルギーの低い状態である最密六方に配列され、軟磁性ナノ粒子Sの二次元膜Fが形成される。二次元膜Fの更に詳細な平面構造は、図5(2)に示すように、界面活性剤による高分子配位子Xにより軟磁性ナノ粒子Sの間隔が規定された最密六方配列である。個々の軟磁性ナノ粒子S自体は、表面エネルギーを最低にするようにほぼ球形になっている。
【0031】
次に、図4(3)に示すように、引上げ器26を作動させて基板10を制御された所定速度で引上げると、水面22S上に形成された軟磁性ナノ粒子Sの二次元膜Fがそのまま基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの表面に吸着されてこれと一緒に引上げられる。
【0032】
こうして基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの上にLB膜として形成された軟磁性ナノ粒子層LSの上に、次に説明する図2(3)の工程において、同様にしてLB膜としての硬磁性ナノ粒子層LHを再び形成する。その前準備として、軟磁性ナノ粒子層LSを硬磁性ナノ粒子層LHを形成する下地として安定化させる。安定化の一方法としては、軟磁性ナノ粒子Sの分散媒である界面活性剤として紫外線硬化性のものを用い、図4(3)に示すように、基板10上に吸着された軟磁性ナノ粒子層LSに、紫外線照射装置44から紫外線46を照射して軟磁性ナノ粒子層LSを硬化させる。これにより軟磁性ナノ粒子層LSはそれ自体として強固に一体化すると同時に、下地である硬磁性ナノ粒子層LHとも強固に接合され、安定した下地として機能できるようになる。これにより図2(2)に示したように基板10上の硬磁性ナノ粒子層LH上に、軟磁性ナノ粒子Sが規則配列した硬磁性ナノ粒子層LSが形成される。
【0033】
次に、図2(3)に示すように軟磁性ナノ粒子層LS上に硬磁性ナノ粒子層LHを形成する。実行手順は図2(1)を参照して説明した最初の硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同様であるので、説明は省略する。
【0034】
図2〜5を参照して説明した操作を必要回数行なうことにより、図1に示す本発明の規則超格子構造のナノコンポジット磁石100が得られる。
【0035】
なお、ナノコンポジット磁石100は硬磁性ナノ粒子Hに硬磁性特性を発現させるために必要な熱処理を施すことができる。その際、上記の紫外線硬化した界面活性剤がナノ粒子間の拡散障壁として機能し、ナノ粒子の粗大化を防止する作用も発揮する。
【0036】
〔実施形態2〕
上記の実施形態1では、水中に浸漬した基板を水面に対して垂直に引上げる垂直浸漬法によるLB法を用いた場合を説明したが、本実施形態では、基板をほぼ水平にしてLB膜を付着させる水平付着法によるLB法を用いた場合を説明する。
【0037】
水平付着法を行なうための装置は、垂直浸漬法に用いた図3の装置と基本的な構造は共通であり、図6に示したように、図3の装置で基板10を浸漬した位置と対応する位置にもう一つのバリア24Aが配置されている点、そしてほぼ水平に保持された基板10が昇降器(図示せず。図3の引上げ器26に対応)によって昇降される点のみが異なる。
図3および図6を参照し、水平付着法によるLB法によって基板10上に硬磁性ナノ粒子層LHを形成する図2(1)の工程の実行手順を説明する。
【0038】
まず図6(1)に示したように、実施形態1と同様の手順で、水面22S上へ硬磁性ナノ粒子Hを供給する。この段階では、水平に保持された基板10は水面22Sの上方に停止させておく。
【0039】
次に、図6(2)に示すように、バリア24を矢印Pで示したように徐々にバリア24Aの方へ移動させると、水面22S上に自由分散していた硬磁性ナノ粒子Hが押圧され、押圧力に対して最もエネルギーの低い状態である最密六方に配列され、硬磁性ナノ粒子Hの二次元膜Fが形成される。二次元膜Fの更に詳細な平面構造は、実施形態1において図5(2)を参照して説明したとおりである。
【0040】
この状態で、昇降器(図示せず)を作動させて基板10をほぼ水平な姿勢を保ちながら水面22Sにできるだけ接近させ、僅かに一端を傾けて二次元膜Fに接触させ、二次元膜Fを基板10の表面に付着させる。
【0041】
次に、図6(3)に示すように、昇降器を作動させて基板10を制御された所定速度で上昇させると、水面22S上に形成された硬磁性ナノ粒子Hの二次元膜Fがそのまま基板10の表面に吸着されて基板10と一緒に引き上げられる。
【0042】
こうして基板10上にLB膜として形成した硬磁性ナノ粒子層LHの上に、次に説明する図2(2)の工程において、同様にしてLB膜としての軟磁性ナノ粒子層LSを形成する。その前準備として、硬磁性ナノ粒子層LHを軟磁性ナノ粒子層LSを形成する下地として安定化させる。安定化の一方法は、実施形態1と同様である。これにより硬磁性ナノ粒子層LHはそれ自体として強固に一体化すると同時に基板10とも強固に接合され、安定した下地として機能できるようになる。これにより図2(1)に示したように基板10上に硬磁性ナノ粒子Hが規則配列した硬磁性ナノ粒子層LHが形成される。
【0043】
次に、同じく図3および図6を参照し、LB法によって硬化済硬磁性ナノ粒子層LH上に軟磁性ナノ粒子層LSを形成する図2(2)の工程の実行手順を説明する。基本的には上述した基板10上への硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同じである。
【0044】
まず図6(1)に示したように、実施形態1と同様の手順で、水面22S上へ軟磁性ナノ粒子Sを供給する。この段階では、水平に保持された基板10は水面22Sの上方に停止させておく。
【0045】
次に、図6(2)に示すように、バリア24を矢印Pで示したように徐々にバリア24Aの方へ移動させると、水面22S上に自由分散していた軟磁性ナノ粒子Sが押圧され、押圧力に対して最もエネルギーの低い状態である最密六方に配列され、軟磁性ナノ粒子Sの二次元膜Fが形成される。二次元膜Fの更に詳細な平面構造は、実施形態1において図5(2)を参照して説明したとおりである。
【0046】
この状態で、昇降器(図示せず)を作動させて基板10をほぼ水平な姿勢を保ちながら水面22Sにできるだけ接近させ、僅かに一端を傾けて二次元膜Fに接触させ、二次元膜Fを基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの表面に付着させる。
【0047】
次に、図6(3)に示すように、昇降器を作動させて基板10を制御された所定速度で引上げると、水面22S上に形成された軟磁性ナノ粒子Sの二次元膜Fがそのまま基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの表面に吸着されてこれと一緒に引上げられる。
【0048】
こうして基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの上にLB膜として形成された軟磁性ナノ粒子層LSの上に、次に説明する図2(3)の工程において、同様にしてLB膜としての硬磁性ナノ粒子層LHを再び形成する。その前準備として、軟磁性ナノ粒子層LSを硬磁性ナノ粒子層LHを形成する下地として安定化させる。安定化の一方法は、実施形態1と同様である。これにより硬磁性ナノ粒子層LSはそれ自体として強固に一体化すると同時に、下地である硬磁性ナノ粒子層LHとも強固に接合され、安定した下地として機能できるようになる。これにより図2(2)に示したように基板10上の硬磁性ナノ粒子層LH上に、軟磁性ナノ粒子Sが規則配列した硬磁性ナノ粒子層LSが形成される。
【0049】
次に、図2(3)に示すように軟磁性ナノ粒子層LS上に硬磁性ナノ粒子層LHを形成する。実行手順は図2(1)を参照して説明した最初の硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同様であるので、説明は省略する。
【0050】
図2、3、5、6を参照して説明した操作を必要回数行なうことにより、図1に示す本発明の規則超格子構造のナノコンポジット磁石100が得られる。
【0051】
なお、ナノコンポジット磁石100は硬磁性ナノ粒子Hに硬磁性特性を発現させるために必要な熱処理を施すことができる。その際、上記の紫外線硬化した界面活性剤がナノ粒子間の拡散障壁として機能し、ナノ粒子の粗大化を防止する作用も発揮する。
【0052】
〔実施形態3〕
本発明の望ましい一実施形態として、LB法を行なう際に、硬磁性ナノ粒子Hまたは軟磁性ナノ粒子Sを水面22S上に規則配列させる工程を実行中に磁場を印加することにより、個々のナノ粒子(H、S)の容易磁化方位を揃えることができ、それによりナノコンポジット磁石100の角形性を高めることができる。
【0053】
図7に、図3のLB製膜装置200に磁場印加機能を付加した装置例を示す。
【0054】
図示したLB製膜装置300は、トラフ20の外周を取り巻いて水面22Sのレベルに磁場誘導コイル48を設置した点以外は、図3のLB製膜装置200と同じ構成である。
【0055】
図8は、実施形態1の図4(2)の工程に対応する工程を示しており、バリア24の押圧により硬磁性ナノ粒子Hまたは軟磁性ナノ粒子Sを基板10との間に最密六方の規則配列する際に、上記の磁場誘導コイル48を作動させて、二次元膜Fに磁場Mを印加する。この状態で、図4(3)の基板引上げ工程を行なうと、図9(1)に示したように基板10上には容易磁化方位mが揃った硬磁性ナノ粒子Hの層LHが形成される。以下実施形態1での最初の硬磁性ナノ粒子層LHの形成工程を行なう。
【0056】
次いで、図4(2)の工程で上記と同様に磁場Mを印加する以外は実施形態1の軟磁性ナノ粒子層LSの形成と同様の処理を行なう。これにより図9(2)に示したように基板10上の硬磁性ナノ粒子層LH上に軟磁性ナノ粒子層LSが形成される。形成された軟磁性ナノ粒子層LSはその下地となっている硬磁性ナノ粒子層LHと同様に容易磁化方位mが揃っている。
【0057】
次に、図4(2)の工程で上記と同様に磁場Mを印加する以外は実施形態1の二番目の硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同様の処理を行なう。これにより図9(3)に示したように基板10上に、全てのナノ粒子の容易磁化方位mの揃った硬磁性ナノ粒子層LH/軟磁性ナノ粒子層LS/硬磁性ナノ粒子層LHの規則超格子構造が得られる。
【0058】
以上の操作を必要回数行なうことにより、図1に示したナノコンポジット磁石100と同様の規則超格子構造を有し、全ナノ粒子の容易磁化方位mが揃ったナノコンポジット磁石が得られる。
【実施例】
【0059】
〔実施例1〕
実施形態1に示した規則超格子構造を持つナノコンポジット磁石100について、シミュレーション計算を行なって磁気特性を評価した。比較として不規則配列についても同様のシミュレーション計算を行なった。
【0060】
<磁気特性の評価>
軟磁性ナノ粒子SをFeナノ粒子とし、硬磁性ナノ粒子HをNd2−Fe14−Bナノ粒子としてFe/Nd2−Fe14−Bナノコンポジット磁石の最大エネルギー積(BHmax)および最大磁束密度のシミュレーション計算を行なった結果を図11に示す。
【0061】
図中、本発明の規則配列と比較のための不規則配列は、下記の規則度により区別した。
例えば図10(a)に示す正規の二次元配列を規則度1とする。このとき、ハッチング区画と白抜き区画の占有すべき位置をそれぞれα副格子およびβ副格子として、下記のように規則度Sを定義する。
S=〔(正規の副格子点にある磁性相の個数)−(正規でない副格子点に磁性相の個数)〕/(全格子数)
一例として図10(b)に示す配列の規則度Sを計算する。同図中で○印の副格子点は正規の配置、それ以外の副格子点は正規でない配置である。すなわち、正規の配置となっている副格子点の個数は10、正規の配置となっていない副格子点の個数は6であるから、この場合の規則度Sは下記のように算出される。
S=[10−6]/16=4/16=0.25
図11に示したように、本発明の規則配列構造は比較例の不規則配列構造に比べて最大エネルギー積(BHmax)が約1.5まで高まることが分かる。
【0062】
<シミュレーション方法の説明>
シミュレーションにおいて数値計算には下記の式を用いた。
【0063】
LLG型磁気スピン動力学方程式(LLG:ランダウ−リフシッツ−ギルバード)
dM(r)/dt=−γ[M(r)×Heff(r)]+(α/Msat)(M(r)×dM(r)/dt)
自由エネルギー汎関数微分形式の有効磁場方程式
Heff=−δf(r)/δM(r)=Heff−2Kanis(M(r)n)n−2▽(A▽M(r))+Hd(r)
また、各係数は表1の値を用いた。
【0064】
【表1】
【0065】
〔実施例2〕
実施形態3に示した磁場印加による容易磁化方位の配向の効果をシミュレーション計算により評価した。計算には下記の式を用いた。
【0066】
容易磁化方位の空間分布の計算への付与
fd(θ)=(1/(2πσ)1/2)exp(−θ2/2σ2)
ただし、σ:標準偏差、n=(cosθcosφ,cosθsinφ,sinθ)[φは任意]である。
【0067】
図12にシミュレーション結果を示す。図中、サンプル1は本発明のナノコンポジット磁石であり、容易磁化方位の配向度の分散(σ2)が100と最も小さく、サンプル2、3は配向度の分散σ2がそれぞれ1000、5000と大きい。
【0068】
比較として示したNd2−Fe14−B硬磁性ナノ粒子単磁区材(サンプル4)は保磁力が大きく角形性を持つが、最大磁化が小さい。一方α−Fe軟磁性ナノ粒子単磁区材(サンプル5)は保磁力はほぼゼロであるが最大磁化が大きい。
【0069】
本発明により容易磁化方位の配向度の分散を小さくすることにより角形性が顕著に向上することが分かる。
【0070】
なお、以上の実施例においては、硬磁性ナノ粒子としてNd2−Fe14−B三元合金を用い、軟磁性ナノ粒子としてα−Feを用いたが、本発明のナノコンポジット磁石においてこれらに限定する必要はない。硬磁性ナノ粒子としては例えばSm2Co17、SmCO5、Sm2Fe17N3、FePt、FePd、CoPt、MnBi等を用いることができるし、軟磁性ナノ粒子としてはFeCo合金、Co単金属、Ni合金等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、硬磁性ナノ粒子と軟磁性ナノ粒子とを複合して優れた磁気特性を有するナノコンポジット磁石およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明のナノコンポジット磁石の規則超格子構造を示す模式図であり、同図の(1)は硬磁性ナノ粒子層と軟磁性ナノ粒子層の交互積層方向に平行な断面図、(2)は積層面に平行な断面図、(3)は斜視図である。
【図2】図2は、本発明の方法に従いラングミュア−ブロジェット法(LB法)により規則配列した硬磁性ナノ粒子層と軟磁性ナノ粒子層とを交互に積層して本発明の規則超格子構造を形成する工程を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明に用いるLB製膜装置の構成例を示す断面図である。
【図4】図4は、LB法のうち垂直浸漬法により硬磁性ナノ粒子または軟磁性ナノ粒子を基板上に製膜する手順を示す断面図である。
【図5】図5は、(1)LB製膜に用いる本発明の硬磁性ナノ粒子または軟磁性ナノ粒子の詳細な形態および(2)これらのナノ粒子がLB法により液面上に最密六方配列した二次元膜の詳細な形態をそれぞれ示す模式図である。
【図6】図6は、LB法のうち水平付着法により硬磁性ナノ粒子または軟磁性ナノ粒子を基板上に製膜する手順を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の望ましい一実施形態により電磁誘導コイルを備えたLB製膜装置を示す断面図である。
【図8】図8は、図6の装置により液面上の二次元膜に磁場を印加している状況を示す断面図である。
【図9】図9は、磁場印加を適用したLB法により容易磁化方向を揃えた硬磁性ナノ粒子または軟磁性ナノ粒子を基板上に製膜する手順を示す断面図である。
【図10】図10は、二次元配列の規則度の定義を説明する平面図である。
【図11】図11は、本発明による規則超格子構造を有するナノコンポジット磁石の最大磁束密度および最大エネルギー積を、不規則構造の場合と比較して示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の望ましい実施形態により容易磁化方位の配向度を種々に設定した場合の角形性を、単磁区の硬磁性磁石と軟磁性磁石と比較して示すグラフである。
【符号の説明】
【0073】
100 本発明のナノコンポジット磁石
200 LB製膜装置
300 磁場印加機能を備えたLB製膜装置
H 硬磁性ナノ粒子
LH 硬磁性ナノ粒子層
S 軟磁性ナノ粒子
LS 軟磁性ナノ粒子層
10 基板
20 トラフ
22 水
22S 水面
24 バリア
26 引上げ器
28 硬磁性ナノ粒子Hの供給槽
30 軟磁性ナノ粒子Sの供給槽
HA 硬磁性ナノ粒子Hの疎水性界面活性剤中分散液
SA 軟磁性ナノ粒子Sの疎水性界面活性剤中分散液
32 硬磁性ナノ粒子Hの供給槽28の供給量調整用バルブ
34 軟磁性ナノ粒子Sの供給槽30の供給量調整用バルブ
36 硬磁性ナノ粒子Hの供給槽28の供給用ノズル
38 軟磁性ナノ粒子Sの供給槽30の供給用ノズル
40 バルブ制御器
42 電源
X 疎水性高分子配位子
F 水面22S上のナノ粒子二次元膜
44 紫外線照射装置
46 紫外線
48 磁場誘導コイル
M 磁場
m 容易磁化方位
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬磁性ナノ粒子と軟磁性ナノ粒子とを複合させて成るナノコンポジット磁石およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬磁性材料と軟磁性材料をそれぞれ特徴付ける性質は保磁力と最大磁化である。すなわち両者の対比において、硬磁性材料は保磁力が大きく永久磁石として高性能を発揮するが最大磁束密度(最大磁化)は小さいのに対して、軟磁性材料は保磁力が小さく最大磁束密度が大きいため低鉄損のトランス鉄心等として高性能を発揮する。
【0003】
永久磁石用の材料としては、保磁力と最大磁束密度が共に大きいほど、すなわち減磁曲線における最大エネルギー積(BHmax)が大きいほど、強力な磁力を安定して維持できる優れた磁石材料と言える。
【0004】
硬磁性相と軟磁性相とをナノスケール(数十nm以下)で微細に混在させると、両者の長所を併せ持つ優れた性能の磁石が得られることが期待される。
【0005】
非特許文献1には、α−Fe軟磁性ナノ粒子とFePt硬磁性ナノ粒子とを混合してランダムに配列させたナノコンポジット磁石が提案されている。しかし、単なるランダムな混合であって、規則的な配列ではないため、軟磁性ナノ粒子に対して硬磁性ナノ粒子からの相互作用が十分に到達せず、磁気特性の大きな向上は達成できない。
【0006】
非特許文献2には、NdFeB系急冷アモルファスリボンを作製し、熱処理を施すことによりアモルファス相からナノサイズの磁性体を析出させたナノコンポジット磁石が提案されている。しかし、急冷リボンでは粒径が粗大になり過ぎる傾向があり、軟磁性相の大きさが交換結合長を超えてしまい、また軟磁性相が磁気的性質の低い化合物になってしまい、高い磁気特性は得られない。また磁性相の配列も規則的な配列ではない。
【0007】
一方、特許文献1には、磁性を持つ超微粒子をLB膜法で薄膜とする際に、50層積層することが記載されている。また、LB膜を形成する際に外部磁界で磁気的方位を揃えるこが記載されている。ただし、用いる超微粒子は1種類であり、硬磁性粒子と軟磁性粒子との複合ではない。
【0008】
【非特許文献1】J. P. Liu et al., Nature, 420, 395-398(2002)
【非特許文献2】S. Hirosawa et al., Proc. 13th Int'l. Workshop, p87(1994)
【特許文献1】特許第2708457号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、硬磁性ナノ粒子と軟磁性ナノ粒子とを複合して優れた磁気特性を有するナノコンポジット磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、多数の硬磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に最密規則配列した硬磁性ナノ粒子層と、これと同じ配列形式で軟磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に最密規則配列した軟磁性ナノ粒子層とが交互に積層して成り、全体として規則超格子構造を有するナノコンポジット磁石が提供される。
【0011】
また、上記本発明のナノコンポジット磁石の製造方法であって、ラングミュア−ブロジェット法により、基板上に、上記硬磁性ナノ粒子層および上記軟磁性ナノ粒子層のうちのいずれか一方の層を形成する工程と該一方の層上に他方の層を形成する工程と少なくとも一回行なうことを特徴とするナノコンポジット磁石の製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のナノコンポジット磁石は、それぞれ平面状に最密規則配列した硬磁性ナノ粒子層と軟磁性ナノ粒子層とが交互に積層して全体として規則超格子構造を構成しているので、軟磁性ナノ粒子に対する硬磁性ナノ粒子からの相互作用が最大限に発揮され、優れた磁気特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔実施形態1〕
図1に、本発明のナノコンポジット磁石の規則超格子構造を模式的に示す。同図の(1)は硬磁性ナノ粒子層と軟磁性ナノ粒子層の交互積層方向に平行な断面図、(2)は積層面に平行な断面図、(3)は斜視図である。
【0014】
図示したナノコンポジット磁石100は、多数の硬磁性ナノ粒子Hが上下の重なり無く平面状に規則配列した硬磁性ナノ粒子層LHと、これと同じ配列形式で軟磁性ナノ粒子Sが上下の重なり無く平面状に規則配列した軟磁性ナノ粒子層LSとが交互に積層して成り、全体として規則超格子構造を有する。
【0015】
なお図1において、最密六方配列した硬磁性ナノ粒子Hの3粒子が作る三角形の中心に配置された軟磁性ナノ粒子S同士は間隔を空けて示してあるが、これは軟磁性ナノ粒子Sと重なってその下にある硬磁性ナノ粒子Hの配置を特に図1(2)で見やすく図示する便宜のためであり、実際には軟磁性ナノ粒子Sも硬磁性ナノ粒子Hと同じ配列形式の最密六方に配列されている。
【0016】
図2を参照して、図1に示した規則超格子構造の本発明のナノコンポジット磁石100の製造方法を説明する。
【0017】
図2(1)に示すように、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)により、基板10上に、硬磁性ナノ粒子Hの層LHを形成する。
【0018】
次に、図2(2)に示すように、上記で形成した硬磁性ナノ粒子Hの層LHの上に、LB法により軟磁性ナノ粒子Sの層LSを形成する。
【0019】
更に、図2(3)に示すように、上記で形成した軟磁性ナノ粒子Sの層LSの上に、再びLB法により硬磁性ナノ粒子Hの層LHを形成する。
【0020】
以下、同様に硬磁性ナノ粒子層LHと軟磁性ナノ粒子層LSとを交互に積層することにより、図1の規則超格子構造を持つナノコンポジット磁石100が得られる。
【0021】
図3に、LB法により本発明の積層構造を形成するための装置を示す。
【0022】
トラフ20内に水22が満たされており、バリア24は上部が水面22S上に飛び出して配置されている。基板10は水22内に浸漬した状態から引上げ器26により、制御された速度で引上げられる。硬磁性ナノ粒子Hの供給槽28には硬磁性ナノ粒子Hを疎水性の界面活性剤に分散させた分散液HAが収容され、軟磁性ナノ粒子Sの供給槽30には軟磁性ナノ粒子Sを疎水性の界面活性剤に分散させた分散液SAが収容されている。供給槽28、30の下端にはそれぞれ供給量調整用のバルブ32、34を介して延びた供給ノズル36、38が水面22Sの上方に配置されている。バルブ制御器40によりバルブ32、34の開度をそれぞれ独立に制御できる。基板引上げ器26およびバルブ制御器40は電源42からそれぞれ電力を供給される。
【0023】
図3および図4を参照し、LB法によって基板10上に硬磁性ナノ粒子層LHを形成する図2(1)の工程の実行手順を説明する。
【0024】
まず図4(1)に示したように、水面22S上へ硬磁性ナノ粒子Hを供給する段階を説明する。図3に示した硬磁性ナノ粒子供給槽28のバルブ32をバルブ制御装置40により所定開度に開放し、所定時間後に閉鎖する。これにより、図4(1)に示すように、バリア24と基板10との間の水面22S上に所定量の硬磁性ナノ粒子Hが供給されて浮遊する。図5(1)に示すように、個々の硬磁性ナノ粒子Hは表面が界面活性剤による疎水性の高分子配位子Xで包まれているので、水22の表面張力により水面22S上に浮遊して自由な状態で分散する。
【0025】
次に、図4(2)に示すように、バリア24を矢印Pで示したように徐々に基板10の方へ移動させると、水面22S上に自由分散していた硬磁性ナノ粒子Hが押圧され、押圧力に対して最もエネルギーの低い状態である最密六方に配列され、硬磁性ナノ粒子Hの二次元膜Fが形成される。二次元膜Fの更に詳細な平面構造は、図5(2)に示すように、界面活性剤による高分子配位子Xにより硬磁性ナノ粒子Hの粒子間隔が規定された最密六方配列である。個々の硬磁性ナノ粒子H自体は、表面エネルギーを最低にするようにほぼ球形になっている。
【0026】
次に、図4(3)に示すように、引上げ器26を作動させて基板10を制御された所定速度で引上げると、水面22S上に形成された硬磁性ナノ粒子Hの二次元膜Fがそのまま基板10の表面に吸着されて基板10と一緒に引上げられる。
【0027】
こうして基板10上にLB膜として形成した硬磁性ナノ粒子層LHの上に、次に説明する図2(2)の工程において、同様にしてLB膜としての軟磁性ナノ粒子層LSを形成する。その前準備として、硬磁性ナノ粒子層LHを軟磁性ナノ粒子層LSを形成する下地として安定化させる。安定化の一方法としては、硬磁性ナノ粒子Hの分散媒である界面活性剤として紫外線硬化性のものを用い、図4(3)に示すように、基板10上に吸着された硬磁性ナノ粒子層LHに、紫外線照射装置44から紫外線46を照射して硬磁性ナノ粒子層LHを硬化させる。これにより硬磁性ナノ粒子層LHはそれ自体として強固に一体化すると同時に基板10とも強固に接合され、安定した下地として機能できるようになる。これにより図2(1)に示したように基板10上に硬磁性ナノ粒子Hが規則配列した硬磁性ナノ粒子層LHが形成される。
【0028】
次に、同じく図3および図4を参照し、LB法によって硬化済硬磁性ナノ粒子層LH上に軟磁性ナノ粒子層LSを形成する図2(2)の工程の実行手順を説明する。基本的には上述した基板10上への硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同じである。
【0029】
まず図4(1)に示したように、水面22S上へ軟磁性ナノ粒子Sを供給する段階を説明する。図3に示した硬軟磁性ナノ粒子供給槽30のバルブ34をバルブ制御装置40により所定開度に開放し、所定時間後に閉鎖する。これにより、図4(1)に示すように、バリア24と基板10との間の水面22S上に所定量の軟磁性ナノ粒子Sが供給されて浮遊する。図5(1)に示すように、個々の軟磁性ナノ粒子Sは表面が界面活性剤による疎水性の高分子配位子Xで包まれているので、水22の表面張力により水面22S上に浮遊して自由な状態で分散する。
【0030】
次に、図4(2)に示すように、バリア24を矢印Pで示したように徐々に基板10の方へ移動させると、水面22S上に自由分散していた軟磁性ナノ粒子Sが押圧され、押圧力に対して最もエネルギーの低い状態である最密六方に配列され、軟磁性ナノ粒子Sの二次元膜Fが形成される。二次元膜Fの更に詳細な平面構造は、図5(2)に示すように、界面活性剤による高分子配位子Xにより軟磁性ナノ粒子Sの間隔が規定された最密六方配列である。個々の軟磁性ナノ粒子S自体は、表面エネルギーを最低にするようにほぼ球形になっている。
【0031】
次に、図4(3)に示すように、引上げ器26を作動させて基板10を制御された所定速度で引上げると、水面22S上に形成された軟磁性ナノ粒子Sの二次元膜Fがそのまま基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの表面に吸着されてこれと一緒に引上げられる。
【0032】
こうして基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの上にLB膜として形成された軟磁性ナノ粒子層LSの上に、次に説明する図2(3)の工程において、同様にしてLB膜としての硬磁性ナノ粒子層LHを再び形成する。その前準備として、軟磁性ナノ粒子層LSを硬磁性ナノ粒子層LHを形成する下地として安定化させる。安定化の一方法としては、軟磁性ナノ粒子Sの分散媒である界面活性剤として紫外線硬化性のものを用い、図4(3)に示すように、基板10上に吸着された軟磁性ナノ粒子層LSに、紫外線照射装置44から紫外線46を照射して軟磁性ナノ粒子層LSを硬化させる。これにより軟磁性ナノ粒子層LSはそれ自体として強固に一体化すると同時に、下地である硬磁性ナノ粒子層LHとも強固に接合され、安定した下地として機能できるようになる。これにより図2(2)に示したように基板10上の硬磁性ナノ粒子層LH上に、軟磁性ナノ粒子Sが規則配列した硬磁性ナノ粒子層LSが形成される。
【0033】
次に、図2(3)に示すように軟磁性ナノ粒子層LS上に硬磁性ナノ粒子層LHを形成する。実行手順は図2(1)を参照して説明した最初の硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同様であるので、説明は省略する。
【0034】
図2〜5を参照して説明した操作を必要回数行なうことにより、図1に示す本発明の規則超格子構造のナノコンポジット磁石100が得られる。
【0035】
なお、ナノコンポジット磁石100は硬磁性ナノ粒子Hに硬磁性特性を発現させるために必要な熱処理を施すことができる。その際、上記の紫外線硬化した界面活性剤がナノ粒子間の拡散障壁として機能し、ナノ粒子の粗大化を防止する作用も発揮する。
【0036】
〔実施形態2〕
上記の実施形態1では、水中に浸漬した基板を水面に対して垂直に引上げる垂直浸漬法によるLB法を用いた場合を説明したが、本実施形態では、基板をほぼ水平にしてLB膜を付着させる水平付着法によるLB法を用いた場合を説明する。
【0037】
水平付着法を行なうための装置は、垂直浸漬法に用いた図3の装置と基本的な構造は共通であり、図6に示したように、図3の装置で基板10を浸漬した位置と対応する位置にもう一つのバリア24Aが配置されている点、そしてほぼ水平に保持された基板10が昇降器(図示せず。図3の引上げ器26に対応)によって昇降される点のみが異なる。
図3および図6を参照し、水平付着法によるLB法によって基板10上に硬磁性ナノ粒子層LHを形成する図2(1)の工程の実行手順を説明する。
【0038】
まず図6(1)に示したように、実施形態1と同様の手順で、水面22S上へ硬磁性ナノ粒子Hを供給する。この段階では、水平に保持された基板10は水面22Sの上方に停止させておく。
【0039】
次に、図6(2)に示すように、バリア24を矢印Pで示したように徐々にバリア24Aの方へ移動させると、水面22S上に自由分散していた硬磁性ナノ粒子Hが押圧され、押圧力に対して最もエネルギーの低い状態である最密六方に配列され、硬磁性ナノ粒子Hの二次元膜Fが形成される。二次元膜Fの更に詳細な平面構造は、実施形態1において図5(2)を参照して説明したとおりである。
【0040】
この状態で、昇降器(図示せず)を作動させて基板10をほぼ水平な姿勢を保ちながら水面22Sにできるだけ接近させ、僅かに一端を傾けて二次元膜Fに接触させ、二次元膜Fを基板10の表面に付着させる。
【0041】
次に、図6(3)に示すように、昇降器を作動させて基板10を制御された所定速度で上昇させると、水面22S上に形成された硬磁性ナノ粒子Hの二次元膜Fがそのまま基板10の表面に吸着されて基板10と一緒に引き上げられる。
【0042】
こうして基板10上にLB膜として形成した硬磁性ナノ粒子層LHの上に、次に説明する図2(2)の工程において、同様にしてLB膜としての軟磁性ナノ粒子層LSを形成する。その前準備として、硬磁性ナノ粒子層LHを軟磁性ナノ粒子層LSを形成する下地として安定化させる。安定化の一方法は、実施形態1と同様である。これにより硬磁性ナノ粒子層LHはそれ自体として強固に一体化すると同時に基板10とも強固に接合され、安定した下地として機能できるようになる。これにより図2(1)に示したように基板10上に硬磁性ナノ粒子Hが規則配列した硬磁性ナノ粒子層LHが形成される。
【0043】
次に、同じく図3および図6を参照し、LB法によって硬化済硬磁性ナノ粒子層LH上に軟磁性ナノ粒子層LSを形成する図2(2)の工程の実行手順を説明する。基本的には上述した基板10上への硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同じである。
【0044】
まず図6(1)に示したように、実施形態1と同様の手順で、水面22S上へ軟磁性ナノ粒子Sを供給する。この段階では、水平に保持された基板10は水面22Sの上方に停止させておく。
【0045】
次に、図6(2)に示すように、バリア24を矢印Pで示したように徐々にバリア24Aの方へ移動させると、水面22S上に自由分散していた軟磁性ナノ粒子Sが押圧され、押圧力に対して最もエネルギーの低い状態である最密六方に配列され、軟磁性ナノ粒子Sの二次元膜Fが形成される。二次元膜Fの更に詳細な平面構造は、実施形態1において図5(2)を参照して説明したとおりである。
【0046】
この状態で、昇降器(図示せず)を作動させて基板10をほぼ水平な姿勢を保ちながら水面22Sにできるだけ接近させ、僅かに一端を傾けて二次元膜Fに接触させ、二次元膜Fを基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの表面に付着させる。
【0047】
次に、図6(3)に示すように、昇降器を作動させて基板10を制御された所定速度で引上げると、水面22S上に形成された軟磁性ナノ粒子Sの二次元膜Fがそのまま基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの表面に吸着されてこれと一緒に引上げられる。
【0048】
こうして基板10上の硬磁性ナノ粒子層LHの上にLB膜として形成された軟磁性ナノ粒子層LSの上に、次に説明する図2(3)の工程において、同様にしてLB膜としての硬磁性ナノ粒子層LHを再び形成する。その前準備として、軟磁性ナノ粒子層LSを硬磁性ナノ粒子層LHを形成する下地として安定化させる。安定化の一方法は、実施形態1と同様である。これにより硬磁性ナノ粒子層LSはそれ自体として強固に一体化すると同時に、下地である硬磁性ナノ粒子層LHとも強固に接合され、安定した下地として機能できるようになる。これにより図2(2)に示したように基板10上の硬磁性ナノ粒子層LH上に、軟磁性ナノ粒子Sが規則配列した硬磁性ナノ粒子層LSが形成される。
【0049】
次に、図2(3)に示すように軟磁性ナノ粒子層LS上に硬磁性ナノ粒子層LHを形成する。実行手順は図2(1)を参照して説明した最初の硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同様であるので、説明は省略する。
【0050】
図2、3、5、6を参照して説明した操作を必要回数行なうことにより、図1に示す本発明の規則超格子構造のナノコンポジット磁石100が得られる。
【0051】
なお、ナノコンポジット磁石100は硬磁性ナノ粒子Hに硬磁性特性を発現させるために必要な熱処理を施すことができる。その際、上記の紫外線硬化した界面活性剤がナノ粒子間の拡散障壁として機能し、ナノ粒子の粗大化を防止する作用も発揮する。
【0052】
〔実施形態3〕
本発明の望ましい一実施形態として、LB法を行なう際に、硬磁性ナノ粒子Hまたは軟磁性ナノ粒子Sを水面22S上に規則配列させる工程を実行中に磁場を印加することにより、個々のナノ粒子(H、S)の容易磁化方位を揃えることができ、それによりナノコンポジット磁石100の角形性を高めることができる。
【0053】
図7に、図3のLB製膜装置200に磁場印加機能を付加した装置例を示す。
【0054】
図示したLB製膜装置300は、トラフ20の外周を取り巻いて水面22Sのレベルに磁場誘導コイル48を設置した点以外は、図3のLB製膜装置200と同じ構成である。
【0055】
図8は、実施形態1の図4(2)の工程に対応する工程を示しており、バリア24の押圧により硬磁性ナノ粒子Hまたは軟磁性ナノ粒子Sを基板10との間に最密六方の規則配列する際に、上記の磁場誘導コイル48を作動させて、二次元膜Fに磁場Mを印加する。この状態で、図4(3)の基板引上げ工程を行なうと、図9(1)に示したように基板10上には容易磁化方位mが揃った硬磁性ナノ粒子Hの層LHが形成される。以下実施形態1での最初の硬磁性ナノ粒子層LHの形成工程を行なう。
【0056】
次いで、図4(2)の工程で上記と同様に磁場Mを印加する以外は実施形態1の軟磁性ナノ粒子層LSの形成と同様の処理を行なう。これにより図9(2)に示したように基板10上の硬磁性ナノ粒子層LH上に軟磁性ナノ粒子層LSが形成される。形成された軟磁性ナノ粒子層LSはその下地となっている硬磁性ナノ粒子層LHと同様に容易磁化方位mが揃っている。
【0057】
次に、図4(2)の工程で上記と同様に磁場Mを印加する以外は実施形態1の二番目の硬磁性ナノ粒子層LHの形成と同様の処理を行なう。これにより図9(3)に示したように基板10上に、全てのナノ粒子の容易磁化方位mの揃った硬磁性ナノ粒子層LH/軟磁性ナノ粒子層LS/硬磁性ナノ粒子層LHの規則超格子構造が得られる。
【0058】
以上の操作を必要回数行なうことにより、図1に示したナノコンポジット磁石100と同様の規則超格子構造を有し、全ナノ粒子の容易磁化方位mが揃ったナノコンポジット磁石が得られる。
【実施例】
【0059】
〔実施例1〕
実施形態1に示した規則超格子構造を持つナノコンポジット磁石100について、シミュレーション計算を行なって磁気特性を評価した。比較として不規則配列についても同様のシミュレーション計算を行なった。
【0060】
<磁気特性の評価>
軟磁性ナノ粒子SをFeナノ粒子とし、硬磁性ナノ粒子HをNd2−Fe14−Bナノ粒子としてFe/Nd2−Fe14−Bナノコンポジット磁石の最大エネルギー積(BHmax)および最大磁束密度のシミュレーション計算を行なった結果を図11に示す。
【0061】
図中、本発明の規則配列と比較のための不規則配列は、下記の規則度により区別した。
例えば図10(a)に示す正規の二次元配列を規則度1とする。このとき、ハッチング区画と白抜き区画の占有すべき位置をそれぞれα副格子およびβ副格子として、下記のように規則度Sを定義する。
S=〔(正規の副格子点にある磁性相の個数)−(正規でない副格子点に磁性相の個数)〕/(全格子数)
一例として図10(b)に示す配列の規則度Sを計算する。同図中で○印の副格子点は正規の配置、それ以外の副格子点は正規でない配置である。すなわち、正規の配置となっている副格子点の個数は10、正規の配置となっていない副格子点の個数は6であるから、この場合の規則度Sは下記のように算出される。
S=[10−6]/16=4/16=0.25
図11に示したように、本発明の規則配列構造は比較例の不規則配列構造に比べて最大エネルギー積(BHmax)が約1.5まで高まることが分かる。
【0062】
<シミュレーション方法の説明>
シミュレーションにおいて数値計算には下記の式を用いた。
【0063】
LLG型磁気スピン動力学方程式(LLG:ランダウ−リフシッツ−ギルバード)
dM(r)/dt=−γ[M(r)×Heff(r)]+(α/Msat)(M(r)×dM(r)/dt)
自由エネルギー汎関数微分形式の有効磁場方程式
Heff=−δf(r)/δM(r)=Heff−2Kanis(M(r)n)n−2▽(A▽M(r))+Hd(r)
また、各係数は表1の値を用いた。
【0064】
【表1】
【0065】
〔実施例2〕
実施形態3に示した磁場印加による容易磁化方位の配向の効果をシミュレーション計算により評価した。計算には下記の式を用いた。
【0066】
容易磁化方位の空間分布の計算への付与
fd(θ)=(1/(2πσ)1/2)exp(−θ2/2σ2)
ただし、σ:標準偏差、n=(cosθcosφ,cosθsinφ,sinθ)[φは任意]である。
【0067】
図12にシミュレーション結果を示す。図中、サンプル1は本発明のナノコンポジット磁石であり、容易磁化方位の配向度の分散(σ2)が100と最も小さく、サンプル2、3は配向度の分散σ2がそれぞれ1000、5000と大きい。
【0068】
比較として示したNd2−Fe14−B硬磁性ナノ粒子単磁区材(サンプル4)は保磁力が大きく角形性を持つが、最大磁化が小さい。一方α−Fe軟磁性ナノ粒子単磁区材(サンプル5)は保磁力はほぼゼロであるが最大磁化が大きい。
【0069】
本発明により容易磁化方位の配向度の分散を小さくすることにより角形性が顕著に向上することが分かる。
【0070】
なお、以上の実施例においては、硬磁性ナノ粒子としてNd2−Fe14−B三元合金を用い、軟磁性ナノ粒子としてα−Feを用いたが、本発明のナノコンポジット磁石においてこれらに限定する必要はない。硬磁性ナノ粒子としては例えばSm2Co17、SmCO5、Sm2Fe17N3、FePt、FePd、CoPt、MnBi等を用いることができるし、軟磁性ナノ粒子としてはFeCo合金、Co単金属、Ni合金等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、硬磁性ナノ粒子と軟磁性ナノ粒子とを複合して優れた磁気特性を有するナノコンポジット磁石およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明のナノコンポジット磁石の規則超格子構造を示す模式図であり、同図の(1)は硬磁性ナノ粒子層と軟磁性ナノ粒子層の交互積層方向に平行な断面図、(2)は積層面に平行な断面図、(3)は斜視図である。
【図2】図2は、本発明の方法に従いラングミュア−ブロジェット法(LB法)により規則配列した硬磁性ナノ粒子層と軟磁性ナノ粒子層とを交互に積層して本発明の規則超格子構造を形成する工程を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明に用いるLB製膜装置の構成例を示す断面図である。
【図4】図4は、LB法のうち垂直浸漬法により硬磁性ナノ粒子または軟磁性ナノ粒子を基板上に製膜する手順を示す断面図である。
【図5】図5は、(1)LB製膜に用いる本発明の硬磁性ナノ粒子または軟磁性ナノ粒子の詳細な形態および(2)これらのナノ粒子がLB法により液面上に最密六方配列した二次元膜の詳細な形態をそれぞれ示す模式図である。
【図6】図6は、LB法のうち水平付着法により硬磁性ナノ粒子または軟磁性ナノ粒子を基板上に製膜する手順を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の望ましい一実施形態により電磁誘導コイルを備えたLB製膜装置を示す断面図である。
【図8】図8は、図6の装置により液面上の二次元膜に磁場を印加している状況を示す断面図である。
【図9】図9は、磁場印加を適用したLB法により容易磁化方向を揃えた硬磁性ナノ粒子または軟磁性ナノ粒子を基板上に製膜する手順を示す断面図である。
【図10】図10は、二次元配列の規則度の定義を説明する平面図である。
【図11】図11は、本発明による規則超格子構造を有するナノコンポジット磁石の最大磁束密度および最大エネルギー積を、不規則構造の場合と比較して示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の望ましい実施形態により容易磁化方位の配向度を種々に設定した場合の角形性を、単磁区の硬磁性磁石と軟磁性磁石と比較して示すグラフである。
【符号の説明】
【0073】
100 本発明のナノコンポジット磁石
200 LB製膜装置
300 磁場印加機能を備えたLB製膜装置
H 硬磁性ナノ粒子
LH 硬磁性ナノ粒子層
S 軟磁性ナノ粒子
LS 軟磁性ナノ粒子層
10 基板
20 トラフ
22 水
22S 水面
24 バリア
26 引上げ器
28 硬磁性ナノ粒子Hの供給槽
30 軟磁性ナノ粒子Sの供給槽
HA 硬磁性ナノ粒子Hの疎水性界面活性剤中分散液
SA 軟磁性ナノ粒子Sの疎水性界面活性剤中分散液
32 硬磁性ナノ粒子Hの供給槽28の供給量調整用バルブ
34 軟磁性ナノ粒子Sの供給槽30の供給量調整用バルブ
36 硬磁性ナノ粒子Hの供給槽28の供給用ノズル
38 軟磁性ナノ粒子Sの供給槽30の供給用ノズル
40 バルブ制御器
42 電源
X 疎水性高分子配位子
F 水面22S上のナノ粒子二次元膜
44 紫外線照射装置
46 紫外線
48 磁場誘導コイル
M 磁場
m 容易磁化方位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の硬磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に規則配列した硬磁性ナノ粒子層と、これと同じ配列形式で軟磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に規則配列した軟磁性ナノ粒子層とが交互に積層して成り、全体として規則超格子構造を有するナノコンポジット磁石。
【請求項2】
請求項1記載のナノコンポジット磁石の製造方法であって、ラングミュア−ブロジェット法により、基板上に、上記硬磁性ナノ粒子層および上記軟磁性ナノ粒子層のうちのいずれか一方の層を形成する工程と該一方の層上に他方の層を形成する工程とを少なくとも一回行なうことを特徴とするナノコンポジット磁石の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、ラングミュア−ブロジェット法を行なう際に、上記硬磁性ナノ粒子および上記軟磁性ナノ粒子を液面上に規則配列させつつ磁場を印加することを特徴とするナノコンポジット磁石の製造方法。
【請求項1】
多数の硬磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に規則配列した硬磁性ナノ粒子層と、これと同じ配列形式で軟磁性ナノ粒子が上下の重なり無く平面状に規則配列した軟磁性ナノ粒子層とが交互に積層して成り、全体として規則超格子構造を有するナノコンポジット磁石。
【請求項2】
請求項1記載のナノコンポジット磁石の製造方法であって、ラングミュア−ブロジェット法により、基板上に、上記硬磁性ナノ粒子層および上記軟磁性ナノ粒子層のうちのいずれか一方の層を形成する工程と該一方の層上に他方の層を形成する工程とを少なくとも一回行なうことを特徴とするナノコンポジット磁石の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、ラングミュア−ブロジェット法を行なう際に、上記硬磁性ナノ粒子および上記軟磁性ナノ粒子を液面上に規則配列させつつ磁場を印加することを特徴とするナノコンポジット磁石の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−109705(P2007−109705A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296269(P2005−296269)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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