説明

ナノスケール重合炭化水素粒子並びにその粒子の製造及び使用方法

【課題】多孔質フィルムを製造するのに適した、イオン添加剤を添加することなく製造することができる架橋、重合されたナノスケールの炭化水素粒子を含む組成物の提供。
【解決手段】本発明は、架橋、重合された炭化水素粒子を含む組成物であって、前記粒子が30nmよりも小さい重量平均直径を有し、この粒子が3.0以下の体積膨潤係数を示し、この組成物が金属イオンを本質的に含有せず、そしてこの粒子が3.0よりも小さい多分散度(ポリスチレン相対Mw/Mn)を有することによって特徴づけられる組成物並びにそれから多孔質フィルムを製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度ナノスケール炭化水素粒子、そのような粒子の乳化重合技術を使用する製造方法及びナノ多孔質フィルムを製造する際のそのような粒子の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に小さい架橋した炭化水素ベースのポリマー粒子は乳化重合技術によって製造することができる。何れかの界面活性剤、即ちアニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤を使用できることを広く記載した幾つかの教示が存在するが、粒子サイズの問題についての具体的な教示はない(例えば非特許文献1)か、又は非イオン性界面活性剤は、単独で、非常に小さい粒子を製造する際に有効ではない傾向があること及び所望の小さい粒子サイズを得るために、少量のアニオン性界面活性剤を添加する必要があることを述べている。例えば非特許文献2及び非特許文献3を参照されたい。Capek等は、非特許文献4に於いて、イオン性開始剤が非イオン性ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート界面活性剤により小さい粒子サイズ(約44〜80nm)を達成する際の助けになり得ることを教示している。
【0003】
【非特許文献1】Donescu等、「短鎖共界面活性剤を含有するマイクロエマルジョンへのモノマーの影響(The Influence of Monomers upon Microemulsions with Short Chain Cosurfactant)」、J. Dispersion Sci. and Tech.、第22巻、第2〜3号、2001年、第231〜244頁
【非特許文献2】「合成樹脂エマルジョンの応用(The Applications of Synthetic Resin Emulsions)」、H.Warson著、エルネスト・ベン社(Ernest Benn Ltd.)、1972年、第88頁
【非特許文献3】Larpent及びTadros、「水中油滴型マイクロエマルジョンを使用するマイクロラテックス分散液の製造(Preparation of Microlatex Dispersions Using Oil-in-Water Microemulsions)」、Colloid Polym.Sci.、第269巻、第1171〜1183頁(1991年)
【非特許文献4】「非イオン性乳化剤によるスチレンの微細乳化重合について(On the Fine Emulsion Polymerization of Styrene With Non-Ionic Emulsifier)」、Polymer.Bull.、第43巻、第417〜424頁(1999年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術に於ける教示とは反対に、本発明者等は、如何なるイオン添加剤を添加することなく、非イオン性界面活性剤及び非イオン性開始剤を使用して、非常に小さい粒子(30nmよりも小さい重量平均直径)を得ることができるという驚くべき発見をした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、架橋、重合された炭化水素粒子を含む組成物であって、前記粒子が30nmよりも小さい重量平均直径を有し、この粒子が3.0以下の体積膨潤係数を示し、この粒子が金属イオンを本質的に含有せず、この粒子が3.0よりも小さい多分散度(Mw/Mn)を有し、そして好ましくは、この粒子がピーク分子量範囲について絶対値が0.4よりも小さいその勾配の勾配を有するマーク−ホーウィンク(Mark-Houwink)プロットによって特徴づけられることを特徴とする組成物である。
【0006】
他の態様に従えば、本発明は、このような架橋、重合された炭化水素粒子の多孔質熱硬化フィルムの製造方法である。
【0007】
「重合炭化水素粒子」によって、炭素、水素、酸素及び窒素原子から本質的になるポリマー粒子を意味する。更に好ましくは、この重合炭化水素粒子は炭素、水素及び酸素原子から本質的になる。
【0008】
前記架橋、重合された炭化水素粒子は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と少なくとも1種の水性相成分とを組合せ、遊離基重合することができる、少なくとも1種のモノマーを添加し、炭素、水素、酸素及び窒素原子から選択された原子から本質的になる遊離基開始剤を添加し、そして加熱して、30nmよりも小さい重量平均直径を有する重合粒子を生成せしめることによって、組成物を製造することを含んでなり、組合せ、添加及び加熱の全ての工程に於いて、前記炭化水素粒子を含む組成物がイオン性界面活性剤を本質的に含まず、炭素、水素、酸素及び窒素以外の原子を含む開始剤又は開始剤残渣を本質的に含まず、そして添加工程と加熱工程とを任意の順序で行なう組成物の製造方法である。任意的に、この方法は、粒子を沈殿させる追加の工程並びに金属及び/又はイオンを除去する精製の追加の工程の一方又は両方を更に含む。本発明は、この方法によって製造された重合炭化水素粒子を含む
【0009】
「イオン性界面活性剤を本質的に含まない」によって、イオン性界面活性剤を重合混合物に添加しないこと及び不純物として存在し得る任意のイオン性界面活性剤が成分の重量基準で50部/100万よりも少ない量で存在することを意味する。更に好ましくはこの混合物はイオン性界面活性剤を含まない。
【0010】
「炭素、水素及び酸素及び窒素以外の原子を含む開始剤を本質的に含まない」によって、このような開始剤を混合物に添加しないこと及び不純物として存在し得るこのような任意の開始剤が、成分の重量基準で50部/100万よりも少ない量で存在することを意味する。更に好ましくは、この混合物は炭素、水素及び酸素以外の原子を含む開始剤を本質的に含まない。
【0011】
「体積膨潤係数」によって、膨潤しないときの粒子の体積で割った、同じモノマー(群)をベースにした非架橋ポリマーの良好な溶媒である溶媒中の粒子の体積を意味する。良好な溶媒は、その溶媒中でのポリマー−溶媒相互作用の大きさがポリマー−ポリマー相互作用のものよりも大きく、それ故その溶媒中でポリマー鎖が最大に伸びているものである。「ポリマー科学の教科書(Textbook of Polymer Science)」、F.W.Billmeyer,Jr.著、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、1984年刊、第154頁参照。ポリスチレン及び多数の他の炭化水素粒子に対しては、テトラヒドロフラン(THF)が使用される好ましい溶媒である。体積膨潤係数は、詳細な説明で更に概説するように、SEC/DVから便利に決定することができる。
【0012】
「金属イオンを本質的に含まない」によって、粒子が、成分の重量基準で、5部/100万よりも少ない何れか1種の金属イオン汚染物質を含むことを意味する。更に好ましくは、粒子は2ppmよりも少ない何れか1種の金属イオンを含有する。全金属イオン含有量は、好ましくは、10ppmよりも少ない、更に好ましくは5ppmよりも少ない、最も好ましくは2ppmよりも少ない。
【0013】
「ピーク分子量範囲」によって、粒子について第25百分順位〜第75百分順位(percentile)を規定する分子量を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法は、ナノスケール粒子を製造する先行技術方法によって要求されるイオン性界面活性剤及びそれらの付随金属イオンの除去が、困難であり、不十分であるので、イオン的に純粋であるナノスケール重合炭化水素粒子を製造するための有効な手段であるという利点を有する。界面活性剤がイオン性であると、イオン性成分(例えば金属イオン、硫酸塩等)の残渣は、除去することが不可能ではないにしても極めて困難である。少なくとも幾らかのイオン種(species)の存在無しには、非常に小さい粒子サイズを達成することが困難であるという先行技術に於ける教示を考えると、実質的に全ての非イオン性界面活性剤(species)種を使用する本発明の方法が30nmよりも小さい粒子重量平均直径を達成したことは驚くべきことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
非イオン性界面活性剤は、水又は他の水性重合媒体中でモノマー混合物を乳化し、そして好ましくは水性相中で、モノマー混合物をミクロ乳化し、形成されたナノ粒子生成物を安定化させる、任意の公知の非イオン性界面活性剤とすることができる。このような非イオン性界面活性剤の例には、ポリオキシエチレン化アルキルフェノール(アルキルフェノール「エトキシラート」又はAPE);ポリオキシエチレン化直鎖アルコール(アルコール「エトキシラート」又はAE);ポリオキシエチレン化第二級アルコール、ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレン化メルカプタン;長鎖カルボン酸エステル;天然脂肪酸のグリセリル及びポリグリセリルエステル;プロピレングリコール、ソルビトール及びポリオキシエチレン化ソルビトールエステル;ポリオキシエチレングリコールエステル及びポリオキシエチレン化脂肪酸;アルカノールアミン縮合物;アルカノールアミド;アルキルジエタノールアミン、1:1アルカノールアミン−脂肪酸縮合物;2:1アルカノールアミン−脂肪酸縮合物;第三級アセチレン性グリコール(例えば、R12C(OH)C=C(OH)R12);ポリオキシエチレン化シリコーン;n−アルキルピロリドン;ポリオキシエチレン化1,2−アルカンジオール及び1,2−アリールアルカンジオール並びにアルキルポリグリコシドが含まれる。アルキルポリエトキシラート、ポリオキシエチレン化1,2−アルカンジオール及びアルキルアリールポリエトキシラートが好ましい。市販の非イオン性界面活性剤の例には、ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)からのテルギトール(Tergitol)(商標)界面活性剤及びダウ・ケミカル社からのトリトン(Triton)(商標)界面活性剤が含まれる。使用する界面活性剤の量は、水又は他の水性重合媒体中で、形成されたナノ粒子生成物を少なくとも実質的に安定化させるために十分でなくてはならない。この正確な量は、選択された界面活性剤並びに他の成分の特性(identity)に依存して変化するであろう。この量は、また、反応を、回分式反応として、半回分式反応として又は連続式反応として運転するかどうかに依存して変化する。回分式反応は、一般的に、最高量の界面活性剤を必要とする。半回分式反応及び連続式反応に於いて、粒子が成長するとき表面対体積比が減少するので、界面活性剤は再び利用されるようになり、それで回分式反応に於けると同じ量の所定のサイズの粒子を製造するために、より少ない界面活性剤が必要であろう。本発明者等は、3:1〜1:20、更に好ましくは2.5:1〜1:15の界面活性剤:モノマー重量比が有用であることを見出した。有用な範囲は、実際には、これよりも広くすることができる。
【0016】
水性相成分は水であってよく又は水と親水性溶媒との組合せであってよく又は親水性溶媒であってよい。使用される水性相の量は、反応混合物の全重量基準で、好ましくは少なくとも40重量%、更に好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%である。使用される水性相の量は、好ましくは99重量%以下、更に好ましくは95重量%以下、なお更に好ましくは90重量%以下、更に好ましくは85重量%以下である。
【0017】
開始剤は、炭素、水素、酸素及び/又は窒素から本質的になる任意の遊離基開始剤であるが、更に好ましくは炭素、水素及び酸素から本質的になる。本明細書で使用する「本質的になる(consisting essentially of)」は、化合物の特性を実質的に変化させる成分が実質的に有効な量で存在しないことをいう、米国特許法の下での一般的な意味である。適当な開始剤には、例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩及びH22/アスコルビン酸若しくはtert−ブチルヒドロペルオキシド/アスコルビン酸のようなレドックス開始剤又はジ−t−ブチルペルオキシド、ペルオキシ安息香酸t−ブチル若しくは2,2’−アゾイソブチロニトリルのような油溶性開始剤が含まれる。添加される開始剤の量は、モノマーの100重量部当たり、好ましくは0.01〜5.0重量部、更に好ましくは0.02〜3.0重量部、最も好ましくは0.05〜2.5重量部である。
【0018】
モノマーは遊離基重合することができるモノマーである。モノマーは、好ましくは、炭素、水素、窒素及び/又は酸素から選択された、更に好ましくは炭素、水素及び酸素から選択された原子のみから本質的になる化合物である。適当なモノマーには、少なくとも1個の不飽和炭素−炭素結合を含有するものが含まれる。単一種類のモノマーを使用することができ又は異なったモノマーを一緒に使用することができる。1個の、反応のために利用可能な不飽和炭素−炭素結合を有するモノマーの例には、スチレン(例えばスチレン、アルキル置換スチレン、アリール−アルキル置換スチレン、アルキニルアリールアルキル置換スチレン等);アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル(例えばアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル等);ビニル(例えば酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル等);アリル化合物(例えばアクリル酸アリル);アルケン(例えばブテン、ヘキセン、ヘプテン等)が含まれる。2個以上の、反応のために利用可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物の例には、アルカジエン(例えばブタジエン、イソプレン);ジビニルベンゼン又は1,3−ジイソプロペニルベンゼン;アルキレングリコールジアクリラート等が含まれる。
【0019】
一つの好ましい態様に従って、重合(重合された)炭化水素粒子は架橋されている。このような好ましい態様に於いて、モノマーの少なくとも幾らかは、2個以上の不飽和炭素−炭素結合を有するであろう。スチレンモノマーをジビニルベンゼン又は1,3−ジイソプロペニルベンゼンと共に使用することが、特に好ましい態様である。使用する場合には、架橋性モノマー(即ち2個以上の反応に利用可能な炭素−炭素二重結合を有するモノマー)の量は、モノマーの全重量基準で、好ましくは約100重量%未満、更に好ましくは70重量%未満、最も好ましくは50重量%未満であり、好ましくは1重量%よりも多く、更に好ましくは5重量%よりも多い。組成物に添加されるモノマーの全量は、組成物の全重量基準で、1〜65重量%、好ましくは3〜45重量%、更に好ましくは5〜35重量%の範囲内である。
【0020】
任意的に、追加の疎水性溶媒をモノマーに添加することができる。適当な溶媒の非限定例としては、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、シクロヘキサン、ヘキサン、キシレン、オクタン等及びこれらの組合せ物が含まれる。使用する場合、疎水性溶媒の量は、疎水性相の1〜95重量%、好ましくは2〜70重量%、最も好ましくは5〜50重量%であってよい。疎水性相の全量は、全混合物の1〜60%、好ましくは3〜45%、更に好ましくは5〜35%であるべきである。
【0021】
本発明に従って、前記粒子は、回分式方法として、多回分式方法として、半回分式方法として又は連続式方法として製造することができる。適当な反応温度は25〜120℃の範囲内である。
【0022】
1.回分式乳化重合
回分式乳化重合は、幾つかの方式で実施することができる。例えば水相可溶性開始剤を使用する場合、モノマー混合物、水性相及び界面活性剤からエマルジョンを形成し、所望の重合温度まで加熱し、そして使用する場合には水溶性開始剤及びレドックス試薬を、重合の開始時に実質的に全部添加することができる。その代わりに、モノマー混合物を、全部一度に、反応温度で界面活性剤水溶液に添加し、続いて開始剤(群)を添加することができる。油溶性開始剤を使用する場合、これらは通常、乳化の前にモノマー相中に溶解させる。次いで、エマルジョンを、モノマー/開始剤混合物、水性相及び界面活性剤から形成し、所望の重合温度にまで加熱して、重合を実施することができる。その代わりに、モノマー/開始剤混合物を、全部一度に、反応温度で界面活性剤水溶液に添加することができる。得られたエマルジョンを、所望のモノマー転化度に到達するまで、数分間乃至数時間、反応温度で保持することができる。重合を完結させるために、追加の開始剤装入物を添加することができ、反応物を、実質的に完結した後加熱して、更に完全な重合を実施することができる。
【0023】
2.多回分式
粒子を製造する他の方式は、上記の重合を実施し、次いでモノマーの第二の回分に於いて、システムの流動性を維持するために十分な水を添加し、攪拌して乳化させ、(水溶性開始剤及び任意にレドックス試薬を使用する場合)再び開始剤を添加し、重合しそして所望なだけ多数回繰り返すことである。油溶性開始剤を使用する場合は、これをモノマー装入物中に溶解させることができる。この方式に於いて、他の場合に可能であるものよりも高いモノマー対界面活性剤の比が、重合内で達成できる。得られたエマルジョンを、所望のモノマー転化度に到達するまで、数分間乃至数時間、反応温度で保持することができる。重合を完結させるために、追加の開始剤装入物を添加することができ、反応物を、実質的に完結した後、加熱して、更に完全な重合を実施することができる。
【0024】
3.半回分式
これらの粒子を製造する他の方式は、モノマー及び開始剤を、重合温度で界面活性剤溶液に連続的に添加して、半回分式でモノマーを重合させることである。回分式重合と同様に、この方式を多数の方式で実施することができる。例えば水溶性開始剤を、モノマー流れとは別の流れ中に添加することができ、油溶性開始剤を、別に添加するか又はモノマー流れ中に溶解させることができる。モノマー流れには1種又はそれ以上のモノマーが含有されていてよく又はそれぞれのモノマーを別の流れ中に(同時に又は逐次的に又は同時であるがそれぞれを時間と共に変化する速度で)添加することができる。水性相成分及び界面活性剤を、重合の経過に亘って添加することもできる。得られたエマルジョンを、所望のモノマー転化度に到達するまで、数分間乃至数時間、反応温度で保持することができる。重合を完結させるために、追加の開始剤装入物を添加することができ、反応物を、実質的に完結した後加熱して、更に完全な重合を実施することができる。
【0025】
4.連続式
重合は、また、連続式又は「栓流(プラグフロー)」方式で運転することができ、この場合、水性モノマーエマルジョンと開始剤とを、所望の重合温度で一緒に混合し、適当な長さのパイプの中に注入し、そして重合を完結させるために十分な時間に亘って、パイプにポンプ輸送する。更なるモノマー又は開始剤等のような試薬並びに所望により更なる界面活性剤又は他の水性相成分を、パイプに沿った種々の点で重合エマルジョンに添加することができ、そしてパイプの異なった領域を、必要に応じて異なった温度に加熱又は冷却することができる。生成物ラテックスを、パイプの端部から連続的に取り出すことができる。
【0026】
上記の方法の何れかによって、粒子を製造した後、ラテックスを、水中で少なくとも部分的に可溶性であり、そして得られた水性相−溶媒混合物中で、形成されたポリマーが実質的に不溶性である有機溶媒又は溶媒混合物と混合することによって、粒子を沈殿させることができる。前記溶媒の必要量は、形成されたポリマーの実質的に全部をラテックスから沈殿させるために十分でなくてはならない。このような溶媒の例には、これらに限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン及びメタノールが含まれる。この工程は、次いで乾燥させて使用できるか又は次に使用するために、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メシチレン若しくはジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート(DPMA)のような適当な有機溶媒中に再懸濁させることができる粒子を分離する。沈殿は、また、実質的量の界面活性剤残渣を除去する際に有用である。
【0027】
この粒子は、また、当該技術分野で公知である種々の方法、例えば(1)沈殿の前にイオン交換樹脂床を通過させること、(2)沈殿させ、脱イオン水及び任意的にそれが不溶性である溶媒で十分に洗浄すること又は(3)沈殿させ、粒子を有機溶媒中に分散させ、そして分散液を、その溶媒中でシリカゲル若しくはアルミナカラムに通過させることによって精製することができる。
【0028】
沈殿後に、乾燥工程を使用することができるが、粒子を、粒子上の残留反応性基が反応を起こし、そしてアグロメレーション及び粒子サイズの増加を起こすことができるような温度にまで加熱しないことが重要である。
【0029】
本発明は、架橋、重合させた炭化水素粒子を含む組成物であって、この粒子が30nmよりも小さい重量平均直径を有し、この粒子が3.0よりも小さい体積膨潤係数を示し、この組成物が金属イオンを本質的に含まず、この粒子が3.0よりも小さい多分散度(Mw/Mn)を有し、そしてこの粒子がピーク分子量範囲について0.4よりも小さいその勾配の絶対値を有するマーク−ホーウィンクプロットによって特徴づけられることを特徴とする組成物である。これらの粒子は、上記の方法によって便利に製造できるが、これらの粒子をある種のイオン性界面活性剤及び/又はイオン性開始剤を使用する従来の方法によって製造することも実施可能である。しかしながら、このような例に於いては、精製工程が必要であり及び/又は一層複雑である。好ましくは、この粒子は、更に、熱重量分析(10℃/分の温度上昇速度で、25℃から600℃まで)によって決定したときに、不活性雰囲気内の熱分解によって、サンプルの初期重量の、10%よりも少ない、更に好ましくは5%よりも少ない、最も好ましくは1%以下の重量を有する残渣が明らかになることを特徴とする。
【0030】
この粒子の重量平均直径は、30nmよりも小さく、更に好ましくは25nmよりも小さく、最も好ましくは20nmよりも小さい。この粒子の重量平均直径は、好ましくは1.5nmよりも大きく、更に好ましくは1.7nmよりも大きく、最も好ましくは2.0nmよりも大きい。
【0031】
この平均直径は、汎用較正及び示差粘度法検出付きのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/DV)によって決定することができる。
【0032】
SEC/DV試験は、下記のようにして実施される。サンプル及び標準物質、好ましくはポリスチレンのための良溶媒を選択する。テトラヒドロフランが好ましい溶媒である。SEC分離のために使用されるカラムには、多孔質架橋PS粒子などが含有され、これは、溶液中のサイズ(流体力学的体積)に従って、ポリスチレン及び類似の化合物を分離するためによく適合している。溶媒付与及びサンプル導入のために、一般的な高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置を使用する。溶離サンプル濃度を検出するために、示差屈折率検出器を使用する。溶離ポリマー溶液の比粘度を検出するために、示差粘度計を使用する。これらの検出器は、例えば、ウォーターズ社(Waters)からモデル2410示差屈折率検出器及びビスコテック社(Viscotek, Inc.)からモデルH502示差粘度計で市販されている。SECシステムに注入された濃度は低いので、それぞれのSEC溶離体積増分での比粘度の濃度に対する比は、特定の体積増分内に溶離するポリマーの極限粘度数の妥当な推定値を与える。
【0033】
SEC/DV試験によって、サンプルについての下記の特性、即ち絶対分子量分布(並びに数平均分子量、重量平均分子量及びz−平均分子量);折り畳み(collapsed)及び膨潤(即ち、溶媒中)粒子サイズ分布(並びにピーク及び重量平均直径);マーク−ホーウィンクプロット(log[η]対logM、ここで、[η]は極限粘度数であり、Mは分子量である);試験溶媒中の体積膨潤係数(VSF)並びにPS−見掛け分子量分布(並びに分子量平均及び多分散度)の決定が可能になる。汎用較正曲線は、狭い分子量分布ポリスチレン(PS)及び更に好ましくは、また、狭い分子量分布ポリエチレンオキシド(PEO)標準物質も使用して決定される。この曲線は、log([η]*M)対溶離体積のプロットである。[η]*Mの積は、流体力学的体積に比例する。理想的SECは、流体力学的体積に従って分子を区分けするので、単一の汎用較正曲線が、ポリマー組成又は構造から独立に得られる。即ち、各SEC溶離体積増分での汎用較正曲線及び極限粘度数を知ることによって、未知サンプルの絶対分子量を、各溶離体積増分で計算することができる。
【0034】
乾燥折り畳み粒子の重量平均直径Dwは下記のようにして計算される。
【0035】
各溶離体積増分での絶対M及びポリマー濃度データによって、絶対分子量平均及び分布の計算が可能になる。絶対分子量軸を粒子サイズ軸に変換することは、下記の式:
【0036】
【数1】

【0037】
(式中、Mwはg/モルでの絶対重量平均分子量であり、Lはアボガドロ数であり、密度はg/cm3での乾燥ポリマーの密度であり、1021はcm3をnm3に変換するための係数であり、そして球形状が仮定される(V=4/3πr3)。係数2はr(半径)をDw(重量平均直径)に変換する)
に従って実施される。
【0038】
体積膨潤係数(VSF)は、また、SEC/DV試験から便利に決定される。特に、VSFは非膨潤体積で割った膨潤体積として定義される。SEC/DV実験は良溶媒中で実施されるので、この実験の間に測定された嵩極限粘度数(bulk intrinsic viscosity)は、膨潤状態でそのようになされる。球の非膨潤極限粘度数は、アインシュタイン式:
【0039】
【数2】

【0040】
により予測することができる。ここで、φは粒子の体積分率である。VSFは下記の式(下記の式に密度を掛けて、一般化する)に従って計算される。
VSF=膨潤体積/非膨潤体積=[η](膨潤)/[η](非膨潤)
=[η](膨潤)*(乾燥ポリマーの密度)/2.5
ここで、[η](膨潤)は、SEC/DV実験で決定された嵩極限粘度数(溶質の体積/質量)である。乾燥PSの密度(1g/cm3)は本発明の好ましい架橋ポリスチレン粒子の場合のために使用される。
【0041】
製造された粒子の重量平均直径の決定のための第二の方法は標準的SEC−レーザー光散乱(SEC−LLS)法によるものである。標準的SEC方法が使用され、溶離サンプルの検出は、3個の角度で散乱強度を測定する、静的レーザー光散乱検出器による。絶対重量平均分子量は、下記の文献、即ち(1)「ポリマー化学(Polymer Chemistry)」、Malcolm P.Stevens著、第2版、オックスフォード大学出版社(Oxford University Press)、1990年刊、第53〜57頁;(2)「ポリマー科学の教科書」、Fred W.Billmeyer,Jr.著、第3版、ウィリー−インターサイエンス出版社(Wiley-Interscience Publishers)、1984年刊、第199〜204頁;(3)Philip Wyatt、「巨大分子の絶対キャラクタリゼーション(Absolute Characterization of Macromolecules)」、Analytica Chemica Acta、第272巻、第1〜40頁(1993年)に記載されているように、この方法によって直接的に決定することができ、そして折り畳み重量平均直径(collapsed weight average diameter)Dwは、下記の式:
【0042】
【数3】

【0043】
(式中、Mwはg/モルでの絶対重量平均分子量であり、Lはアボガドロ数であり、密度はg/cm3での乾燥ポリマーの密度であり、1021はcm3をnm3に変換するための係数であり、そして密度は乾燥ポリスチレンの密度であり、そして球形状が仮定される(V=4/3πr3)。係数2はr(半径)をDw(重量平均直径)に変換する。)
によって、これから計算できる。
【0044】
z−平均粒子直径を決定する第三の方法は、前記の文献に記載されているような、テトラヒドロフラン(THF)のような良溶媒中の動的光散乱の標準的方法によるものである。この方法によって決定される、膨潤z−平均直径、Dz良溶媒から、折り畳みz−平均直径、Dzを下記の式:
【0045】
【数4】

【0046】
(式中、VSF良溶媒は、前記のような良溶媒中で、示差粘度法によって決定されるものである)
から計算することができる。
【0047】
z−平均折り畳み粒子直径は、下記の式:
【0048】
【数5】

【0049】
(ここで、Mw及びMzは、前記のSEC DV法から決定された、絶対重量平均分子量及びz−平均分子量である。)によって、重量平均折り畳み粒子直径に変換することができる。
【0050】
この組成物には、金属イオンが本質的に含有されていない。金属含有量は、標準的高周波誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP−MS)又は中性子放射化分析(NAA)法によって決定された。
【0051】
この粒子は、3.0よりも小さい、好ましくは2.5よりも小さい、更に好ましくは2.0よりも小さい多分散度(Mw/Mn)を有する。多分散度は、4,000,000から578までの絶対ピーク分子量を有する線状ポリスチレン標準物質に対する、分子量分布から得られる。多分散度は、組成物についての粒子サイズに於ける変動の近似値を与える。
【0052】
最後に、この粒子は、ピーク分子量範囲について、0.4よりも小さい、好ましくは0.3よりも小さい、更に好ましくは0.2よりも小さい絶対値の勾配を有するマーク−ホーウィンクプロットによって特徴付けられる。マーク−ホーウィンクプロット上の勾配は粒子形状の指標を与え、0.7の勾配は実質的に線状のポリマーの特徴であり、そして0の勾配は三次元ニュートン物体(例えば、球状)の特徴である。検査すべきマーク−ホーウィンクプロットの勾配は第25重量百分順位に対応するM(絶対分子量)から第75重量百分順位に対応するものまでである。
【0053】
この粒子は、粒子の内部及び表面上に、残留反応性ビニル基を保有していると思われる。更に、この粒子は、内部及び/又は表面上に、残留オレフィン以外の官能基を含有するかもしれない。例えばこの粒子はヒドロキシル、カルボキシラート、ハロゲン、アミン、アミド、エステル又はアセチレン官能基を含有していてよい。これらの官能基はα−クロロメチルスチレン、クロロスチレン、2−ヒドロキシエチルアクリレート若しくはメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート若しくはメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート若しくはメタクリレート、フェニルエチニルスチレン、ビニル安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、ジビニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン等のようなモノマーの残留成分として存在するかもしれず、又は触媒上での粒子中のビニル基と水素との反応のような、残留ビニル基と官能化化合物との反応により若しくは少なくとも1個の水素−ホウ素結合を有する試薬と反応し、続いて得られるホウ素−炭素結合が酸化して、アルコール官能基を形成することにより、加えることができる。
【0054】
本発明者等は、本発明の粒子が、架橋多孔質フィルムを製造する際のポロゲン(porogen)として特に有用であることを見出した。この用途に於いて、この粒子を、架橋マトリックス材料の前駆体と組合せる又は混合する。このようなマトリックス材料の例には、ダウ・ケミカル社からのサイクロテン(Cyclotene)(商標)樹脂のような、ベンゾシクロブテンベースの樹脂及びダウ・ケミカル社からのシルク(SiLK)(商標)ポリアリーレン樹脂のような、ポリアリーレン樹脂及びポリアリーレンエーテル樹脂、シルセスキオキサン等が含まれる。好ましくはポロゲンはマトリックス前駆体にグラフト化される。これは、ポロゲン上の残留エチレン性不飽和基が、モノマー上の反応性基と反応するために利用されるので、B−段階(部分重合)の前にポロゲンをモノマーに添加することによって達成することができる。また、幾らかのB−段階がポロゲンの添加の前に起こってもよく、混合物を、ポロゲン上の残留エチレン性不飽和基がB−段階反応生成物中の残留反応性基と反応を起こすために十分な条件に付すことによって、ポロゲンをグラフト化させることができる。次いで、この混合物を基体の上に被覆する(好ましくは、例えば公知の方法によるスピンコーティングにより溶媒被覆する)。マトリックスを硬化させ、ポロゲンをその熱分解温度を過ぎて加熱することによって、ポロゲンを除去する。これらのような多孔質フィルムは、フィルムが導電性金属線をお互いから分離し、電気的に絶縁する集積回路物品を製造する際に有用である。
【実施例】
【0055】
試薬:スチレン(S、99%、アルドリッチ社(Aldrich))、ジビニルベンゼン(DVB、工業用、80%、アルドリッチ社)、1,3−ジイソプロペニルベンゼン(DIB、96%、アルドリッチ社)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(アルドリッチ社)、H22(30%水溶液、フィッシャー社(Fisher))、tert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP、70%、アルドリッチ社)、アスコルビン酸(アルドリッチ社)、1−ペンタノール(フィッシャー社)、エーロゾル−OT(Aerosol-OT)(商標)イオン性界面活性剤(AOT、10%水溶液、シグマ社(Sigma))、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、98%、アルドリッチ社)、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナン(9−BBN、テトラヒドロフラン中0.5M、アルドリッチ社)、テルギトールNP(商標)シリーズノニルフェノールエトキシレート(ダウ・ケミカル社)及びテルギトール15−s(商標)(ダウ・ケミカル社)シリーズ第二級アルコールエトキシレートを、受け入れたまま使用した。全ての重合は、超純粋脱イオン水(UPDI−H2O、バーンスティード(Barnstead)精製剤を通過させた、導電率<10-17Ω-1)中で窒素下で実施した。フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)HPLCグレード溶媒を、受け入れたまま通して使用した。
【0056】
回分式重合:モノマー混合物、界面活性剤混合物及び水を、ゆっくり攪拌して混合することによって、エマルジョンを製造した。このエマルジョンを、オーバーヘッド攪拌(700〜1000rpm)を有する、適切なサイズの温度制御し、N2パージした反応器(ガラス又はステンレススチール)の中に導入した。このエマルジョンを攪拌し、少なくとも20分間窒素でパージした。30%H22又は70%TBHP及び適切なアスコルビン酸溶液(通常、2重量%水溶液)を、設定温度(他に記載しない限り30℃)で急速に導入した。重合を、表Aに記載した場合を除いて、1時間続けた。5〜17℃の発熱が、典型的に、開始後3〜15分で観察された。
【0057】
粒子単離:方法1:与えられた体積のラテックスに、等体積のメチルエチルケトン(MEK)を添加した。得られた懸濁液を、2000rpmで20分間遠心分離した(IEC
Centra GP8R;1500G力)。この液体をデカンテーションし、固体を1:1 UPDI H2O:アセトンの1×最初の体積中に再懸濁させ、遠心分離し、デカンテーションし(2回繰り返す)、固体を乾燥空気の流れ中で約70時間乾燥させた。
【0058】
粒子単離:方法2:与えられた体積のラテックスに、等体積のMEKを添加した。得られた懸濁液を、上記のようにして遠心分離した。この液体をデカンテーションし、次いで固体をUPDI H2O中にブレンドし、次いでアセトン(等体積)に添加した。次いで、これを濾過し、数倍の体積の、メタノール又は1:1 UPDI H2O:アセトン、次いでUPDI H2O、次いでメタノールで洗浄した。固体を乾燥空気の流れ中で約70時間乾燥させた。
【0059】
粒子単離:方法3:与えられた体積のラテックスに、等体積のMEKを添加した。得られた懸濁液を、上記のようにして遠心分離した。この液体をデカンテーションし、固体を最小量のTHF溶媒中に溶解させ、次いで、このTHF溶液を、5〜10倍過剰のメタノールにゆっくり添加することによって、沈殿させ、濾過し、フィルターケークをメタノールで洗浄し、上記のようにして乾燥させた。
【0060】
例1
この前記方法のうちの代表的回分式重合を示す。回分式重合運転を、前記の一般的回分式重合手順に従って実施し、初期エマルジョンを表A中の配合に従って製造し、これは、表Aに記載したサイズ及び粒子特性を有していた。この粒子を、方法2によって単離した。
【0061】
【表1】

【0062】
例2
この前記方法のうち多回分式重合を示す。52.5gのテルギトール(商標)NP−15、160gのUPDI H2O及び38.5gの90/10(w/w)スチレン/ジビニルベンゼンモノマー混合物を含有するエマルジョン配合物を、一般的手順に記載したようにして、30℃で、3.9mLのTBHP及び4.8mLの2%アスコルビン酸を使用して、1時間重合させた(第一サンプル)。次いで、追加の75mLのUPDI H2O及びモノマー混合物40.0gを添加し、この反応物を1時間攪拌し、次いでTBHP3.0mL及び2%アスコルビン酸5.0mLで、30℃で開始させ、反応物を1時間攪拌した(第二サンプル)。次いで、追加の50mLのUPDI H2O及びモノマー混合物40.0gを添加し、次いで3.0mLのTBHP及び2%アスコルビン酸5.0mLで、30℃で開始させ、反応物を1時間攪拌した(第三サンプル)。次いで、追加の50mLのUPDI H2O及びモノマー混合物40.0gを添加し、次いでTBHP3.0mL及び2%アスコルビン酸5.0mLで、30℃で開始させ、反応物を1時間攪拌した(第四サンプル)。この粒子を、方法2によって単離した。
【0063】
比較例1
一般的回分式手順に従って、表Aに示した反応剤を使用して重合を実施し、粒子を方法3によって単離した。Na+はNAAによって27+/−1ppmであると決定された。
【0064】
例3
金属除去のためのイオン交換
このは、前記方法によって製造された粒子のカチオン交換による精製方法を示す。一般的回分式手順に従って重合を実施し、粒子は単離しなかった。得られたラテックスを、2個のアリコートに分割し、一方は処理しないブランクであり、一方は、洗浄した(UPDI H2O)ダウエックス(Dowex)50−W XT強酸性(H+形)カチオン交換樹脂の7”×3/4”直径のカラムに通すことによって処理した。結果を下記の表に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
例4
このは、イオン性界面活性剤で製造された粒子を精製することが可能であるが、金属レベルは本発明の方法によって製造された粒子に於けるよりも高いままであることを示す。それにもかかわらず、このような精製された粒子は本発明の組成物の限界に適合することができる。
【0067】
フラスコ内で、攪拌しながら、下記の物質、即ちスチレン(15.6g)、ジビニルベンゼン(80%;0.83g)、ドデシル硫酸ナトリウム(45.1g)、1−ペンタノール(16.1g)、4−ヒドロキシブチルアクリラート(0.177g)及びUPDI水(423g)を室温で混合した。この混合物を目視で透明になるまで攪拌した。この混合物を窒素ガスで20分間パージし、そして窒素下で30℃に加熱した。過酸化水素(30%水溶液、1.23mL)及びアスコルビン酸の2%水溶液(2.05mL)を添加した。重合を60分間続けた。固体を方法1によって単離した。SEC DV分析によって、粒子直径が14.4nmであり、体積膨潤係数が3.0であることが示された。精製:1.5gの得られたポリマーを15mLのCH2Cl2中に溶解させ、CH2Cl2で溶離するシリカゲル(70〜230メッシュ)上でクロマトグラフィー処理した。溶媒を蒸発させた後、1.39gを回収した。金属含有量をICP/MSによって決定し、表Bに記載した。
【0068】
例5
半回分式重合:テルギトール(商標)15−s−15界面活性剤(52.8g)及び水(211.2g)を、窒素で覆った反応器に添加し、攪拌し、窒素ガスで30分間パージし、設定温度(30℃)まで加熱した。スチレン(45.0g)及びジビニルベンゼン−80(3.0g)、1,3−ジイソプロペニルベンゼン(9.0g)及び4−tert−ブチルスチレン(3.0g)からなるモノマー混合物並びに二つの開始剤流、即ち30重量%の過酸化水素(9.0g)の一つ及び2.0重量%のアスコルビン酸水溶液(3.0g)の一つを90分間かけて連続的に添加した。添加速度は、モノマー混合物について43.9mL/時並びにH22について6.0mL/時及びアスコルビン酸溶液について2.0mL/時であった。この反応を、添加の完結後5分間進めた。SEC DV法による重量平均直径は15.4nmであり、体積膨潤係数は2.10であり(SEC DV結果は、ポリスチレン及びポリオキシエチレンに対して較正したカラムを使用して得た)、そしてPS−相対多分散度は1.30であった。動的光散乱によって決定された折り畳みz−平均直径は、17.5nmであった。SEC−LLS法によって決定された絶対重量平均分子量から計算した折り畳み重量平均直径は16.6nmであった。この粒子を方法2によって単離した。金属レベルを表Bに示す。窒素下で500℃で熱処理した後の残渣は、TGA分析によって決定したところ、0.37重量%であった。マーク−ホーウィンクプロット及び分子量分布プロットを図1に示す。
【0069】
図1に於いて、分子量分布プロットについてのy軸はlogMに対する示差重量画分(dw/dlogM)であり、一方x軸は対数目盛でプロットした分子量(M)である。マーク−ホーウィンクプロットについて、y軸は対数目盛でプロットしたMに対して、対数目盛でプロットしたデシリットル/グラムでの極限粘度数である。極限粘度数値(IVで示す)は四角で表し、dw/dlogM値は滑らかな黒線によって表す。
【0070】
【表3】

【0071】
例6
このはポロゲンとして例5の粒子を使用する、多孔質フィルムの製造を示す。サイドアームガス入口バルブを取り付けた丸底フラスコの中に、式:
【0072】
【化1】

【0073】
のモノマー3.00g、上記の実施例5に記載した粒子1.28g、γ−ブチロラクトン溶媒8.0mL及びテフロン(登録商標)攪拌棒を添加した。この反応フラスコをシリコンゴム隔膜キャップで密閉した後、この混合物を、排気及び乾燥した酸素を含有しない窒素ガスによるパージを繰り返すことによって、脱気した。次いで、これを攪拌しながら約150℃の油浴中に置き、次いで浴の温度を200〜205℃まで上昇させ、この温度で5時間維持した。反応が完結して、加熱した油浴から取り出すことによって反応混合物を冷却し、12.6mLのシクロヘキサノンを添加して、反応生成物を15重量%の全固体にまで希釈した。この最終混合物を、0.45μmナイロンフィルター膜を使用して濾過し、混合物の一部を、クリーンルーム環境内でシリコンウェーハ上にスピンコートした。このウェーハを、窒素雰囲気下で150℃で2分間ホットプレート上に置いて、溶媒を除去し、次いで室温にまで冷却した。次いで、被覆したウェーハを炉の中に置き、窒素雰囲気中で7℃/分の加熱速度で430℃まで加熱し、この温度で40分間保持した。室温にまで冷却し、得られた架橋した多孔質誘電体フィルムを、その屈折率、光散乱特性を測定し、細孔サイズを決定する際の助けにするために透過型電子顕微鏡写真(TEM)を得ることによって特性化(characterization)した。屈折率について、非多孔質ポリマーフィルムについての1.6335に比較して、1.4691の値が得られた。これは、このフィルムが実際に多孔質であったことを示す。TEMを使用するサンプルフィルムの検査によって、約13nmの平均細孔サイズと共に、約7〜32nmの細孔サイズ範囲が明らかになった。
【0074】
例7
架橋ポリスチレンナノ粒子のヒドロホウ素化
このは、代替官能基(この場合、ヒドロキシル基)を有するナノ粒子を得る一つの方法を示す。例1と同様の粒子1gを、10mLのTHF及びTHF中の9−ボラビシクロノナン(9−BBN)の溶液(0.5M、7mL)と混合した。この反応混合物を還流まで加熱し、この温度で1時間攪拌した。30℃まで冷却した後、NaOH(3M、5mL)を添加した。最後に、この混合物を1.5mLの30%過酸化水素で急冷し(quench)、塩化メチレンで抽出した。溶媒を蒸発させた後、架橋ポリスチレン粒子混合物をメタノールの中に沈殿させて、ヒドロキシル官能化架橋ポリスチレン粒子を得た。ヒドロキシル決定は、当該技術分野で公知のように、テトラヒドロフラン中でトルエンスルホニルイソシアネートでの滴定により行い、架橋ポリスチレン分子当たり28個のOH基を得、IR分光法により3590cm-1でのOH伸縮バンドが示される。同じ方法を使用して、架橋剤として1,3−ジイソプロペニルベンゼンではなくジビニルベンゼンで製造した架橋ポリスチレンナノ粒子を、ヒドロキシ官能化粒子に転化させた。この場合、Sundell等、Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.Div.Polym.Chem.)、1993年、第34巻、第546頁に開示されているラマン分光法に基づいて、相対ビニル含有量が、0.136から0.074に減少した。
【0075】
例8
アクリル酸メチル8g、メタクリル酸メチル8g及びメタクリル酸アリル4gを、活性化塩基性酸化アルミニウム(50〜200ミクロン)で別々に処理して阻害物質を除去し、次いで一緒にした。テルギトールNP30(エトキシル化ノニルフェノール界面活性剤)(70%活性の61.29g)及びローディア社(Rhodia Inc.)からのイゲパル(Igepal)CO−660エトキシル化ノニルフェノール界面活性剤6.87gを、200mLの脱イオン水中に溶解させ、攪拌したジャケット付き反応器に導入した。次いで、この反応器を、攪拌機を200rpmで動かしながら30分間窒素でパージした。10%過酸化水素の溶液10mL及び1%アスコルビン酸の溶液10mLを、連続的に反応器の中に導入した。次の混合物、即ち、4mL/時の速度でモノマー混合物16.9mL、2.0mL/時の速度で10%過酸化水素溶液10mL及び2.0mL/時の速度で1%アスコルビン酸溶液10mLを、注射器ポンプによって反応器の中に注入した。この反応器を200rpmで攪拌し、窒素で20mL/分でパージし、温度を24℃で一定に保持した。得られた生成物の数平均粒子サイズ及び体積平均粒子サイズを決定するために光子相関分光法を使用した。数平均粒子サイズは16.1nmであり、他方、体積平均粒子サイズは21.6nmであった。
【0076】
上記の組成物に、等体積のメタノールを添加し、得られた沈殿を2000rpm及び5℃で30分間遠心分離した。上澄み液をデカンテーションし、固体を100mLのアセトン中に再懸濁させた。この懸濁液を、200mLの脱イオン水の添加によって沈殿させ、遠心分離し、上澄み液をデカンテーションした。固体を一夜乾燥させた。
【0077】
例6に記載した手順に従って、このの粒子で、多孔質フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の代表的粒子のサンプルについて、分子量分布のプロット及びマーク−ホーウィンクプロット(対数目盛での極限粘度数対分子量)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋、重合された炭化水素粒子を含む組成物であって、前記粒子が30nmよりも小さい重量平均直径を有し、この粒子が3.0以下の体積膨潤係数を示し、この組成物が金属イオンを本質的に含有せず、そしてこの粒子が3.0よりも小さい多分散度(ポリスチレン相対Mw/Mn)を有することによって特徴づけられる組成物。
【請求項2】
粒子がピーク分子量範囲について絶対値が0.4よりも小さい勾配を有するマーク−ホーウィンクプロットによって特徴づけられる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
硬化性マトリックス前駆体中に分散された粒子を更に含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
溶剤及び請求項3に記載の組成物を含む組成物を基体の上に被覆することによって被覆組成物を製造し、マトリックス前駆体を硬化させて架橋したマトリックスポリマーを形成し、そして粒子の熱分解温度よりも高い温度まで加熱して、フィルム内に細孔を形成することを含んでなる架橋した多孔質フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−41038(P2009−41038A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274544(P2008−274544)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【分割の表示】特願2003−569684(P2003−569684)の分割
【原出願日】平成15年2月12日(2003.2.12)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】