説明

ナノチューブ−アミノ酸及びその製造方法

本発明は、アミノ酸基を用いて側壁官能基化されたカーボンナノチューブ(CNTs)を含む組成物に関し、カーボンナノチューブを含むアミノ酸組成物に関する。本発明はまた、このような組成物の簡易で比較的に廉価な製造方法に関する。このような組成物は、CNTsの医用生体用途を大きく拡大すると予想されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロバートA.ウェルチ財団(the Robert A. Welch Foundation)の助成第C−0109号、及びテキサス高等教育調整委員会の先端技術プログラム(the Texas Higher Education Coordinating Board's Advanced Technology Program)の助成第003604−0026−2001号からの援助によりなされた。
関連出願に対するクロスリファレンス
【0002】
本出願は、2004年1月21日に出願された米国仮出願第60/537,982号に対する優先権を請求する。
【0003】
本発明は一般にカーボンナノチューブに関し、特に中にカーボンナノチューブが組み込まれたアミノ酸に関する。
【背景技術】
【0004】
医学及び生物学的用途のためのカーボンナノスケール材料の潜在的な使用に、現在大きな関心が持たれている。この関心は少なくとも部分的には、こうした材料の多く、特にインビボ環境条件下でかご開口部に関して安定なかご様ナノ構造を有するものの球形または円柱形の表面形態によって喚起されている。しかしながら、生体適合性となるためには、このようなカーボンナノ材料は、生理的溶液中の改良された溶解度及び生体標的への選択的結合親和性の両方を促進することができる有機基を用いて表面官能基化される必要がある。従って、カーボンナノケージ材料の共有結合官能基化のための簡易で費用効果的な化学的方法を開発することは、大きな基本的及び工業的重要性を有する領域となった。この研究は、医用生体用途のために大いに有望である−これは、修飾カーボンナノチューブが細胞膜を横断し、細胞の核に入る能力、及びこれが最高10μMまでの濃度で細胞に対して無毒であることによって最近証明された[Pantarotto et al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 6160; Pantarotto et al., Chem. Commun. 2004, 16-17]。適切な化学を使用して、様々な生物活性分子をカーボンナノ構造に共有結合で付着することができる。
【0005】
カーボンナノチューブ(CNTs、akaフラーレンパイプ)は、概念上それ自体の上に巻き上がり、フラーレンキャップによって末端が閉じたグラフェン(graphene)シートを含むナノスケール炭素構造である。単層カーボンナノチューブ(SWNTs)は、単一のこのようなグラフェン円筒のみを含むが、多層ナノチューブは、ロシアの入れ子人形のものに類似した仕方で1つが別のものの内部に入れ子になっている2つ以上の同軸グラフェン層で作られている。SWNT直径は一般に、0.4〜4nmの範囲にわたる。こうしたナノチューブは、100nm〜数マイクロメートル(ミクロン)の長さ、またはより長いとすることができる。1993年におけるその最初の製造[Iijima et al., Nature, 1993, 363, 603; Bethune et al., Nature, 1993, 363, 605; Endo et al., Phys. Chem. Solids. 1993, 54, 1841]以来、SWNTsは、その類のない機械的、光学的、電子的、及び他の性質が理由となって広範に研究されてきた。例えば、SWNTsの注目すべき引張強さは、強化繊維及びポリマーナノコンポジットにおけるその使用をもたらした[Zhu et al., Nano Lett. 2003, 3, 1107及びこの中の参考文献]。
【0006】
SWNTsは通常自己組織化して、凝集体または束になり、ここで最高数百までのチューブがファンデルワールス力で結合する。医用生体用途を含む多くの用途の場合、こうした束からの個々のナノチューブの分離は不可欠である。このような分離は、加工及び操作にとって必要な一般的な有機溶媒及び/または水中のナノチューブの分散及び可溶化を改良する。SWNT表面の共有結合性修飾は一般に、ナノチューブの溶解度及び加工性を改良することによってこの問題を解決するのを助ける。ナノチューブ末端の化学的官能基化は一般に、こうした材料の電子的及びバルク性質を変化させないが、側壁官能基化は、ナノチューブの固有の性質を確かにかなり変更する。しかしながら、化学のこの新たな分野における記録された結果の範囲は、主にナノチューブの現在の高コストが理由となって限定されている。SWNT側壁の修飾において直面するさらなる問題は、その比較的に不満足な反応性に関連している−主として、反応性のより高いフラーレンを基準としてナノチューブ壁のはるかに低い湾曲[M. S. Dresselhaus, G. Dresselhaus, P. C. Eklund, Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes, Academic Press, San Diego, 1996, Vol. 1]、並びにグラフェン壁に付着した官能基の数及びサイズが増大すると共に管状構造内部の歪みが増大することが理由となっている。ナノチューブの骨組みを構成する炭素原子の全てのsp−結合状態は、付加タイプ反応の優勢な発生を促進する。こうした反応の最も良く特徴付けられた例は、ニトレン、アゾメチンイリド及びジアゾニウム塩から発生したアリールラジカルのSWNTsへの付加を含む[V. N. Khabashesku, J. L. Margrave, Chemistry of Carbon Nanotubes in Encyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology, Ed. H. S. Nalwa, American Scientific Publishers, 2004; Bahr et al., J. Mater. Chem., 2002, 12, 1952; Holzinger et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 4002]。
【0007】
SWNTsの最初の側壁官能基化は、直接フッ素化によってフッ素基を付着することによって成し遂げられ、結果はフルオロナノチューブだった[Mickelson et al., Chem. Phys. Lett., 1998, 296, 188]。こうしたフッ素化ナノチューブ誘導体は、アルコール及び他の極性溶媒中に可溶であることが見い出された[Mickelson et al., J. Phys. Chem. B, 1999, 103, 4318]。顕微鏡検査による研究は、初期の状態のSWNTsの場合に見られるものよりも10倍小さい直径を有する束を与えるためのこのようなフルオロナノチューブの非ロープ化−従ってその改良された分散及び加工性をもたらすことを示す。
【0008】
フルオロナノチューブにおけるC−F結合はかなり弱く、従ってフッ素は、湿式化学方法を使用して置換または除去できることが示された[Boul et al., Chem. Phys. Lett., 1999, 310, 367]。出願人らは、フルオロナノチューブにおけるフッ素置換反応に基づいてこのようなアプローチを使用して、アミノ−及びヒドロキシル−基末端SWNT誘導体の一群の製造方法を開発した[V. N. Khabashesku, J. L. Margrave, Chemistry of Carbon Nanotubes in Encyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology, Ed. H. S. Nalwa, American Scientific Publishers, 2004; Khabashesku et al., Acc. Chem. Res. 2002, 35 (12), 1087; Stevens et al., Nano Lett. 2003, 3, 331; Zhang et al., Chem. Mater. 2004. 16(11), 2005;及び2003年11月14日に出願され、共通に譲渡された同時係属の米国特許出願第10/714,187号]。
【0009】
“アミノ−ナノチューブ”は、触媒としてのピリジン(Py)の存在下でフルオロナノチューブ分散系をジアミンNH(CHNH(n=2〜6)中100℃で1〜3時間加熱することによって製造された[Stevens et al., Nano Lett. 2003, 3, 331]。製造されたアミノ−ナノチューブ中の第一級末端アミノ基の存在は、アミノ酸及びペプチドに関して生化学において常用して使用されるニンヒドリンを用いた呈色反応(カイサー試験(Kaiser test))によって、及びナイロン−ナノチューブポリマー材料を製造するための塩化アジポイルとの反応におけるC(=O)NHペプチド結合の形成によって確定された。熱重量分析(TGA)の重量損失及びX線のエネルギー分散型分析(EDAX)データに基づいて、このようなアミノ−ナノチューブにおける側壁官能基化度は、カーボンナノチューブの8〜12個の炭素原子当り1官能基であると推定された。
【0010】
フルオロナノチューブはまた、2つの簡易で廉価な方法による一連の“ヒドロキシル−ナノチューブ”の製造のための前駆体として使用されてきた。第1の方法においては、フルオロナノチューブは、LiOHを用いて前処理したジオール及びトリオールと反応する。第2の方法においては、ピリジンの存在下でのアミノアルコールとの反応を利用する[Zhang et al., Chem. Mater. 2004, 16(11), 2055]。このような“ヒドロキシル−ナノチューブ”誘導体における側壁官能基化度は、使用した誘導体化方法及びアルコール試薬に依存して、毎15〜25個のナノチューブ炭素当り1官能基の範囲内であると推定された。“ヒドロキシル−ナノチューブ”は、極性溶媒の例えば水、エタノール及びジメチルホルムアミド中の安定な懸濁液/溶液を形成し、コポリマー及びセラミックスナノ製造におけるその改良された加工、並びに生体材料とのその適合性を促進する。
【0011】
SWNTsを誘導体化(官能基化)するための別の新規なアプローチは、過酸化アシル、例えば、コハク酸またはグルタル酸過酸化物から発生した官能性有機ラジカルをSWNT側壁に付加することを含む。この方法によって製造された“カルボキシル−ナノチューブ”は、アミドを形成するためのSOCl及びジアミンとのそれに続く反応によって特徴付けられ、−COOH基−末端カルボキシ−アルキルラジカルのSWNTsへの共有結合付着の化学的証拠を提出した。初期の状態のSWNTsと比較して、“カルボキシル−ナノチューブ”は、極性溶媒、例えば、アルコール(イソプロパノール中1.25mg/ml)及び水中の改良された溶解度を示す。カルボキシル−末端基を用いたSWNT側壁官能基化度は、熱重量−質量分析(TG−MS)データに基づいて、毎24個のナノチューブ炭素当り約1官能基であると推定された[Peng et al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 15174;2003年11月14日に出願され、共通に譲渡された同時係属の米国特許出願第10/714,014号]。官能基のナノチューブ側壁への付着は、透過型電子顕微鏡検査(TEM)によって直接に検証され、画像は単一ナノチューブの“でこぼこ”及び“毛状”の表面を表した。
【0012】
側壁表面で官能基を用いて誘導体化されたSWNTsの製造は、生体材料におけるその水素結合能力及びそのそれぞれの末端−NH、−COOH及び−OH基の化学反応性を使用する用途の例えばバイオセンサー、薬物送達のためのビヒクル、ナノチューブ−強化生体高分子、並びに組織工学及び整形外科学及び歯科学におけるインプラントのためのセラミックスにおけるその使用を可能にする。側壁官能基、並びにナノチューブ表面の活性化不飽和炭素−炭素結合はまた遊離基捕捉剤として働くことができ、恐らくエージング処理用途における高い抗酸化剤活性を証明することができる。こうしたナノ系に関する関連実験データはまだ知られていないが、抗酸化剤としての同様に官能基化されたフラーレンC60誘導体の研究は既に進行中である。このような化学を使用してカーボンナノチューブをアミノ酸のような生体分子中に直接に取り入れる方法は、CNTsのこのような医用生体用途をさらに拡大する可能性がある。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、アミノ酸基を用いて側壁官能基化されたカーボンナノチューブ(CNTs)を含む組成物に関し、カーボンナノチューブを含むアミノ酸組成物に関する。本発明はまた、このような組成物の簡易で比較的に廉価な製造方法に関する。
【0014】
幾つかの具体例においては、フッ素化単層カーボンナノチューブ(フルオロナノチューブ)は、ピリジンの存在下でアミノ酸またはアミノ酸エステルと反応する。このような具体例においては、アミノ酸はフルオロナノチューブと反応して、アミノ基によってC−N結合を形成し、加工におけるHFを無くし、アミノ酸基を用いて官能基化され、一般式:
SWNT−[−NH−(CH−)−COOH]
[式中、nは約1〜約20の範囲にわたり、mは約1〜約10,000の範囲にわたる。]
を有するカーボンナノチューブ生成物を与える。
【0015】
幾つかの具体例においては、カーボンナノチューブは過酸化物種と反応して、カルボン酸官能基を含む官能基化カーボンナノチューブ中間体種を与える。こうした中間体種は次にヘル−フォルハート−ゼリンスキー−タイプ反応(Hell-Volhard-Zelinskii-type reaction)及びそれに続くアミノ化を受けて、一般式:
SWNT−[−(CH−)−CH(NH)−COOH]
[式中、nは約1〜約20の範囲にわたり、mは約1〜約10,000の範囲にわたる。]
を有する官能基化カーボンナノチューブ生成物を与え、
ここで、このような組成物は、一般式:
N−C(H)(R)−C(O)−OH、
[式中、Rは、SWNT及びこれに付着した他のアミノ酸官能基の全てを含む。]
のアミノ酸とみなすことができる。
【0016】
本明細書において説明する方法によって製造された一連の官能基化CNTs及びナノチューブ−アミノ酸(ナノチューブアミノ酸組成物)は、水、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、及び他の極性溶媒中の改良された溶解度を示し、これは、生体系、ポリペプチド合成及び薬物送達との適合性にとって重要である。その上、本明細書において説明する、このようなナノチューブ−アミノ酸組成物の本発明の製造方法は、簡易で効果的であり、限定された数の工程を用いて拡大するのに適している。ナノチューブ−アミノ酸の潜在的な使用は、標的薬物送達のための生体系における使用を含む。
【0017】
本発明の方法及び組成物は、このタイプの側壁官能基化の同様の方法が存在しないという点で新規である。可能な変形例は、ペプチド、オリゴヌクレオチド、及びタンパク質のナノチューブの側壁への直接付着並びに多層及び二層カーボンナノチューブのための証明された方法の延長を含む。
【0018】
上文は、下記の本発明の詳細な説明がより良く理解されるために、本発明の特徴をかなり広く略述した。本発明の請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴及び利点を下文で説明する。
【0019】
本発明及びその利点のより完全な理解のために、ここから添付図面と共に以下の説明を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、アミノ酸基を用いて側壁官能基化されたカーボンナノチューブを含むナノチューブ−アミノ酸組成物に関し、カーボンナノチューブを含むアミノ酸組成物に関する。本発明はまた、このような組成物の簡易で比較的に廉価な製造方法に関する。
【0021】
本発明によれば、カーボンナノチューブ(CNTs)としては、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)、二層カーボンナノチューブ(DWNTs)、多層カーボンナノチューブ(MWNTs)、及びこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されるものではない。CNTsの全ての製造方法は、炭素質不純物を有する製品を与える。加えて、SWNTsの大部分の製造方法及びMWNTsの多くの製造方法は、不純物として生成物中に残る金属触媒を使用する。本明細書において説明する実施例は一般に、HiPco方法によって製造された単層カーボンナノチューブ(SWNTs)を用いて行われたが、本明細書において説明する方法及び組成物は一般に、任意の周知の方法によって製造された全てのカーボンナノチューブに適用できる−但しこれらは、その反応性が理由となって本明細書において説明する化学の影響を受けやすいことは理解されるはずである。その上、ナノチューブは、本明細書において説明する化学修飾にさらされる前に、切断、長さ分類、キラリティー分類、精製等を含む任意の数の合成後連続工程にさらされることができる。
【0022】
幾つかの具体例においては、本発明のナノチューブアミノ酸組成物は、アミノ酸基を用いて側壁官能基化され、一般式:
SWNT−[−NH−(CH−)−COOH]
[式中、nは約1〜約20の範囲にわたり、mは約1〜約10,000の範囲にわたる。]
を有する官能基化SWNTsである。
【0023】
このような上記に説明したナノチューブアミノ酸組成物は、様々な長さ及び直径を有することができる。長さは一般に約5nm〜約5μmの範囲内であるが、より長いとすることができる。ナノチューブアミノ酸の直径は、官能基化のタイプ及び程度に依存して変化するが、基礎となるナノチューブは一般に約0.5nm〜約3nmの範囲内の直径を有する、とはいえナノチューブアミノ酸組成物が官能基化MWNTを含む場合、これは大きく増大し得る。
【0024】
幾つかの具体例においては、フルオロナノチューブを、ナノチューブアミノ酸組成物を製造するための前駆体として使用する。フルオロナノチューブまたはフッ素化SWNTs(F−SWNTs)は、本発明によれば、側壁及び末端に付着したフッ素を有するSWNTsを含む(注:このようなF−SWNTsの末端は開放していてよい)。フルオロナノチューブは、化学量論的な式CF[式中、nは一般に約0.01〜約0.50、より典型的に約0.1〜約0.5の範囲にわたる。]を有する。このようなフルオロナノチューブは、共通に譲渡された同時係属の米国特許出願第09/787,473号;及びI.W. Chiang, Ph. D. Dissertation, Rice University, 2001;及びGu et al, Nano Lett., 2002, 2, 1009において説明されている。
【0025】
F−SWNTsを含む反応は一般に、Stevens et al., Nano Lett., 2003, 3(3), 331-336において説明されている。図1(スキーム1)を参照すると、幾つかの具体例においては、フルオロナノチューブ1は、ピリジン(Py)の存在下、高温(例えば、150℃)でアミノエステル2と反応して中間体3を与える。中間体3は次に典型的に加水分解処理を受けてナノチューブ−アミノ酸4を与える。かなりの変化が、官能基化の程度及び官能基化において用いるアミノ酸エステルに存在する。
【0026】
幾つかの具体例においては、本発明のナノチューブアミノ酸組成物は一般式:
SWNT−[−(CH−)−CH(NH)−COOH]
[式中、nは約1〜約20の範囲にわたり、mは約1〜約10,000の範囲にわたる。]を有し、ここで、このような組成物は一般式:
N−C(H)(R)−C(O)−OH
[式中、Rは、SWNT及びこれに付着した他のアミノ酸官能基の全てを含む点基(point group)として扱われる。]
のアミノ酸とみなすことができる。
【0027】
先に説明したアミノ酸組成物と同様に、このような上記に説明したナノチューブアミノ酸組成物は、様々な長さ及び直径を有することができる。長さは一般に約5nm〜約5μmの範囲内であるが、より長いとすることができる。ナノチューブアミノ酸の直径は、官能基化のタイプ及び程度に依存して変化するが、基礎となるナノチューブは一般に約0.5nm〜約3nmの範囲内の直径を有する、とはいえナノチューブアミノ酸組成物が官能基化MWNTを含む場合、これは大きく増大することがある。
【0028】
幾つかの具体例においては、SWNTsは過酸化物種と反応して、さらなる官能基化を受けることができる官能基化SWNT中間体種を形成する。このような過酸化物反応の例に関しては、Khabashesku et al., Acc. Chem. Res., 2002, 35, 1087を参照されたい。図2(スキーム2)を参照すると、SWNTs5は、過酸化物種の例えば過酸化物種6と反応して、官能基化SWNT中間体7を与える。官能基化SWNT中間体7は次にヘル−フォルハート−ゼリンスキータイプ反応を受けて、臭素化(または塩素化)種8を与える。臭素化種8を次にアミノ化してアミノ酸生成物9を与える。
【0029】
MWNTsを上記に説明した組成物及び方法中に取り入れることの他に、多数の他の変形例が存在する。特に、このような化学は、ナノダイヤモンド並びにより広いクラスのフラーレン及びフラーレン材料に適用することができる。
【0030】
以下の実施例を、本発明の特定の具体例を証明するために提供する。下記の実施例において開示する方法は、単に本発明の模範的な具体例を表すことは、当業者であれば了解されるはずである。しかしながら、当業者であれば、本開示を考慮して、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、説明され依然として同様なまたは類似の結果を得る具体例に多くの変更を行い得ることは了解されよう。
【実施例】
【0031】
実施例1
この実施例において説明されている方法は、図2(スキーム2)に示すように、過酸化物に基づくSWNTsの官能基化を使用して、カルボキシ−エチル基をチューブ側壁に付着する。一旦このカルボキシ−エチル基を付着して7を与えたら、臭素化反応を実行して官能基上の水素のうちの1つを置換する。最後に、アンモニアを使用してハロカーボン官能基をアミノ化して、アミノ酸官能基化チューブを製造する。
【0032】
カルボキシ−エチルチューブ7を生成するために、HiPcoSWNTsをオルト−ジクロロベンゼン(o−DCB)中に分散させ、80〜100℃、窒素パージ下で約72時間還流した。アミンをカルボキシ−エチル基の上に置換するためには、α水素のうちの1つをまず臭素原子で置換しなければならない。これは一般的な反応であり、還流下で液体元素状臭素との反応によって実行され、元素状赤リンまたはPBrによって触媒される。臭素は官能基と反応して、HBrを生じ、α水素の代わりにBrで置換して8を生成する。
【0033】
上記に説明した臭素化のための反応条件は、40〜60℃で無水CCl中、約4時間の還流である。一旦臭素がアルファ(α)位に存在したら、アンモニアとの液相反応は臭化水素酸の別の分子を生じ、−NH基を臭素原子の場所に付着してナノチューブ−アミノ酸生成物9を与える。
実施例2
【0034】
この実施例においては、図1(スキーム1)に示すように、フッ素化SWNTs(F−SWNTs)は、アミノ酸官能性と直接に反応した。
【0035】
HiPcoSWNTsをフッ素化して、CFのほぼ化学量論にした。こうしたF−SWNTsを還流下で、保護されたグリシンエステルと反応させた。エステルはアミノ酸のカルボン酸基を保護し、それによって酸の自己重合を防ぐ。アミノ基はチューブ壁表面でフッ素と反応し、HF及び側壁への炭素−窒素結合を生じる。従って、グリシンはフッ素を置換し、ナノチューブを官能基化することができる。
【0036】
上記に説明したプロセスのための反応条件は次の通り。自己重合を防ぐためにエトキシ基で保護されたグリシン(グリシンエチルエステル)をフルオロナノチューブと反応させ、ここでグリシン:フルオロナノチューブの質量比は25:1だった。反応を2時間75℃で音波処理しながら進行させ、その後生成物をエタノール中で洗浄した。
【0037】
さらなる化学がアミノ酸のカルボン酸末端基を用いて行われることを促進するために、酸基を脱保護できる;すなわち、エステルを除去し、ゆるく結合した酸性水素を置換することが重要である。この反応を実行するために、わずかに塩基性の試薬を一般に使用し、その結果これが酸素−アルキルエステル結合を攻撃するようにする。加水分解を、50%/50%v:v水/エタノール溶液中、希薄な濃度のアルカリ炭酸塩または重炭酸塩(通常炭酸ナトリウム)を用いて実行する。数時間の反応時間の後、生成物をろ過し、追加のエタノールを用いて洗浄し、次に希薄な1MHCl中に浸漬して脱保護された側基を酸性化する。
【0038】
図3Aは、グリシンエステルとの上記に説明した反応を示す。得られたグリシン−ナノチューブにおける側壁官能基化度は、毎12個のナノチューブ炭素当り1グリシン基もの高さであると推定された。加えて、図3Bに示すように、フルオロナノチューブは、システインと直接に反応してシステイン−ナノチューブを生成した。グリシン−ナノチューブとは異なり、システイン−ナノチューブにおける側壁官能基化度はより低いことが見い出され:毎24個のナノチューブ炭素原子当り約1システイン基だった。この方法によって製造されたナノチューブアミノ酸組成物は、水、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、及び他の極性溶媒中の改良された溶解度を示し、これは、生体系、ポリペプチド合成及び薬物送達との適合性には不可欠である。
実施例3
【0039】
この実施例は、本発明のナノチューブ−アミノ酸に受けさせることができるさらなる反応計画を示す。
【0040】
ペプチド合成は通常、合成の継続時間の間ポリマー樹脂支持体を使用して実行され、この終りにトリフルオロ酢酸を使用して、ポリペプチドを支持体から切断する。このプロトコルをナノチューブ−ペプチド生成物に適用することによって適度な成功が既に実現されているが、条件はまだ最適化されていない。製品を切断するためにかなりの熱が必要であり、アミノ化チューブの炭素−窒素結合はかなり強いことを示唆する。
【0041】
一旦1つのアミノ酸がチューブ壁に付着したら、単にさらなるアミノ酸を所望の順序及び量で加えることによってナノチューブをペプチド合成のための支持体として使用するのは比較的に簡単になる。特に興味深いのは、ナノチューブは、従来の支持体と異なり、生体適合性があり、従って合成の完了時にペプチド製品から切断する必要は無いと思われるという事実である。そこから、タンパク質含有カーボンナノチューブの可能性を理解するのは容易である:単数または複数のタンパク質を所望の通りに合成して、現在可能なよりもさらに正確に身体中の特定の部位または特定の種類の組織さえも標的にし、それによって薬物送達のための及び様々なフラーレン−カプセル封入金属用途の例えば磁気共鳴イメージング(MRI)または癌治療のための造影剤のための新たな手段を生じる可能性がある。
【0042】
本明細書において参照する全ての特許及び刊行物を、本明細書によって参考文献によって取り入れる。上記に説明した具体例の上記に説明した構造、機能、及び作動の幾つかは本発明を実施する必要は無く、単に模範的な具体例または具体例の完成のために説明に含ませていることは理解されよう。加えて、上記に説明し、参照した特許及び刊行物において述べる特定の構造、機能、及び作動を本発明と共に実施することができるが、これらはその実施に不可欠では無いことは理解されよう。従って、添付の請求の範囲によって定義する本発明の精神及び範囲から実際に逸脱することなく、本発明を特に説明したものとは異なって実施してよいことは理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】反応スキーム1を表す。
【図2】反応スキーム2を表す。
【図3A】フルオロナノチューブとグリシンエステル(A)との反応を表す。
【図3B】フルオロナノチューブとシステイン(B)との反応を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
SWNT−[−NH−(CH−)−COOH]
[式中、nは約1と約20との間であり、mは約1と約10,000との間である。]
を有するナノチューブ−アミノ酸組成物。
【請求項2】
前記組成物の長さは約5nmと約5μmとの間である、請求項1に記載のナノチューブアミノ酸組成物。
【請求項3】
前記組成物の水溶解度は、非官能基化SWNTsのものを超える、請求項1に記載のナノチューブアミノ酸組成物。
【請求項4】
a)複数のフッ素化SWNTsを提供する工程と;
b)前記フッ素化SWNTsをアミノ酸のエステルと反応させて、アミノエステル−官能基化SWNTを形成する工程と;
c)前記アミノエステル−官能基化SWNTを加水分解して、ナノチューブ−アミノ酸組成物4を与える工程と;を含む方法。
【請求項5】
前記フッ素化SWNTsは化学量論CF[式中、nは約0.01〜約0.5の範囲にわたる。]を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応させる工程はピリジン触媒をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記反応させる工程は、約25℃約〜150℃の範囲にわたる反応温度を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
加水分解する工程はアルカリ炭酸塩の使用を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記加水分解する工程はアルカリ重炭酸塩の使用を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
一般式:
SWNT−[−(CH−)−CH(NH)−COOH]
[式中、nは約1〜約20の範囲にわたり、mは約1〜約10,000の範囲にわたる。]
を有するナノチューブ−アミノ酸組成物。
【請求項11】
このような組成物は一般式:
N−C(H)(R)−C(O)−OH
[式中、Rは、SWNT及びこれに付着した他のアミノ酸官能基の全てを含む点基として扱われる。]
を有するアミノ酸とみなされる、請求項10に記載のナノチューブアミノ酸組成物。
【請求項12】
前記組成物の長さは約5nmと約5μmとの間である、請求項10に記載のナノチューブアミノ酸組成物。
【請求項13】
前記組成物の水溶解度は、非官能基化SWNTsのものを超える、請求項10に記載のナノチューブアミノ酸組成物。
【請求項14】
a)SWNTsを過酸化物種6と反応させて、カルボン酸−官能基化SWNT種7を与える工程と;
b)カルボン酸−官能基化SWNT種7をBrと反応させて、臭素化SWNT種8を与える工程と;
c)臭素化SWNT種8をNHと反応させて、ナノチューブ−アミノ酸生成物9を与える工程と;を含む方法。
【請求項15】
前記SWNTsは約5nm〜約5μmの範囲にわたる長さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記SWNTsは約0.5nm〜約3nmの範囲にわたる直径を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
SWNTsを過酸化物種と反応させる工程は、オルト−ジクロロベンゼン、キシレン、トルエン、メシチレン、ベンゼン、クロロベンゼン、及びこれらの組合せからなる群から選択される適切な溶媒媒質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記の、SWNTsを過酸化物種と反応させる工程は熱の適用を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
カルボン酸−官能基化SWNT種7をBrと反応させる工程は、元素状リン、PBr、及びこれらの組合せからなる群から選択される触媒を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記の、カルボン酸−官能基化SWNT種7をBrと反応させる工程はCCl中で実行される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2007−518802(P2007−518802A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551173(P2006−551173)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/001310
【国際公開番号】WO2005/070828
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(501105635)ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ (26)
【Fターム(参考)】