説明

ナノチューブの比率が高い伝導性複合繊維の製造方法

【課題】熱伝導性および/または電気伝導性を付与するナノチューブ、特にカーボンナノチューブを高比率で含む、ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーをベースにした伝導性複合繊維を提供する。
【解決手段】安定剤を用いることによってビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマー溶液中に分散したナノチューブを安定化し、この分散液を凝固溶液中に注入してプレファイバーを形成し、洗浄、乾燥して伝導性複合繊維とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性および/または電気伝導性を付与するナノチューブ、特にカーボンナノチューブを高比率で含む、ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーをベースにした伝導性複合繊維を製造する方法に関するものである。
本発明はさらに、本発明方法で得られる伝導性複合繊維と、その使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(またはCNT)は炭素から得られる5角形、6角形および/または7角形の規則的に配置された原子から成る中空かつ閉じた管状の結晶構造を有するということは知られている。一般にCNTは一枚または複数の巻かれたグラファイトのシートから成り、単一壁(Single Wall Nanotubes、SWNT)と多重壁(Multi Wall Nanotubes、MWNT)に別けられる。
【0003】
CNTは多くの顕著な特性、すなわち電子的、熱的、化学的および機械的性質を有する。その用途としては自動車、海洋および航空産業用の複合材料、エレクトロ機械のアクチュエータ、ケーブル、抵抗ワイヤー、化学物質検出器、エネルギーの貯蔵および変換装置、電子発光ディスプレイ、電子部品および機能性織物等が挙げられる。自動車、航空および電子分野ではCNTのような伝導性充填材によって摩擦発生時に熱の放散および電荷の放散を行うことができる。
【0004】
一般に、CNTは合成時に不規則な粉末の形となるため、その特性を使用するのが難しい。特に、マクロスケールでその機械的および/または電気的特性を使用するためにはCNTを多量かつ所定方向に配向させる必要がある。
【0005】
CNTをポリマー繊維中に混和する最も一般的な方法は溶融状態にある一種以上の熱可塑性ポリマーとナノチューブとを混合し、得られた混合物を押し出して一本の繊維または複数の繊維にする。この方法は例えば特許文献1(国際特許出願第WO 00/69958号公報)に記載されている。残念なことに、この方法で溶融ポリマー中にナノチューブを添加した混合物は、ナノチューブ画分が増加し、粘度が極めて高レベルになり、ナノチューブの比率の高い繊維は製造できない。
【0006】
他の方法はCNTの凝固を介して繊維を製造する特許文献2(フランス国特許出願第2,805,179号公報)に提案されている。この方法ではナノチューブの分散液を凝固(coagulating)ポリマー溶液と並流(co−flow)で注入することに本質がある。この方法によってカーボンナノチューブの質量濃度が10%以上である複合繊維を製造できる。この繊維は良好な電気特性および機械特性を有する。特に有効な凝固剤(coagulant)はポリビニルアルコール(PVA)である。このポリビニルアルコールはナノチューブの界面に吸着され、ナノチューブは互いに接着し、繊維を形成する。しかし、この方法は速度が遅く、工業的スケールで実施するのには適していない。同じ技術に基づいた連続法は特許文献3(フランス国特許出願第2,921,075号公報)に記載されている。その主たる欠点は複雑な設備を使用する必要がある点である。
【0007】
CNT充填ポリマー繊維を製造する他の方法は、押出前にナノチューブとポリマーとを混合して単一溶液にし、この溶液をポリマーを凝固させる静的な浴中または流れの中に注入する方法である。ポリマーと混合されたナノチューブは構造体内部に捕捉され、最終品はカーボンナノチューブが充填された複合繊維になる。この原理の利点はナノチューブの凝固を直接利用せずに、ポリマーの凝固を利用する点にある。ポリマーの凝固によって洗浄、乾燥、引抜き、巻取り等のハンドリングと、凝固浴からの抜取りが容易にでき、圧密繊維がより速く得られる。溶剤中で凝固してポリマー繊維を押出し、それを加工することは公知である。
【0008】
この方法はナノチューブ充填ポリビニルアルコール繊維を製造するために非特許文献1(Zhang達、PVA/SWNT複合繊維のゲル紡糸、ポリマー45 (2004) 8801-8807)で採用している。この文献にはではPVAとCNTを水とジメチルスルフォキシド(DMSO)との混合物溶液に入れ、この分散液を−25℃に冷却したメタノールから成る凝固溶液中に注入して複合繊維を製造する方法が記載されている。しかし、PVA自体がナノチューブを凝固させるため、高濃度のナノチューブ分散液を、PVA溶液中に凝集体を形成させずに、形成するのは難しい。また、この凝集体の存在によって繊維内に不均一性が生じ、その物理特性および織地の均一性が損なわれる。このような理由からZhang達に記載の繊維に含まれるカーボンナノチューブの最大質量濃度は3%である。
【0009】
PVAに対するCNTの比が40重量%になるPVA/CNT複合繊維の製造方法は非特許文献2(Xue達, PVA/カーボンナノチューブをベースにした導電性糸、複合材料構造体78 (2007) 271-277)に記載されている。この方法では、CNTをPVA水溶液に分散する。しかし、このような高濃度では、得られた繊維は均一にならず、ナノチューブは不均に分散し、凝集体が形成される。
【0010】
本発明者は上記方法を採用し、CNTを酸化処理してその表面に極性基を形成することを考えた。しかし、この解決策ではPVA存在下でのCNTの凝固を防止できない。ラウリル硫酸ナトリウム型イオン性界面活性剤の使用でもこの凝固を防止できない。本発明者はさらに、この問題を解決するためにポリ(アクリル酸)を加えることを考えたが、ポリ(アクリル酸)はPVAの最終的凝固、従って、繊維の形成を抑制することがわかった。
【0011】
従って、ナノチューブを高比率で含む、すなわち、少なくとも5重量%のナノチューブを含む、均一な伝導性複合繊維を製造できる単純な方法を提案するというニーズが依然としてある。さらに、機械的破断閾値が100MPa以上の繊維を製造するというニーズもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際特許出願第WO 00/69958号公報
【特許文献2】フランス国特許出願第2,805,179号公報
【特許文献3】フランス国特許出願第2,921,075号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Zhang達(PVA/SWNT複合繊維のゲル紡糸、ポリマー45 (2004) 8801-8807)
【非特許文献2】Xue達(PVA/カーボンナノチューブをベースにした導電性糸、複合材料構造体78 (2007) 271-277)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者は、安定剤を用いることによってビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマー溶液中に分散したナノチューブを安定化させる伝導性複合繊維の製造方法によってこれらのニーズが満たされるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の対象は、下記(a)〜(e)の一連の段階を含む、伝導性複合繊維の製造方法にある:
(a)周期表のIIIa、IVaおよびVa族の元素の中から選択される少なくとも一種の化学元素から成る熱伝導および/または電気伝導を付与するナノチューブを、ナノチューブに共有結合または非共有結合で結合された少なくとも一種の安定剤の存在下で、ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーの溶液中に分散して分散液を形成し、
(b)上記の分散液を凝固溶液中に注入してプレファイバーを形成し、
(c)上記プレファイバーを取り出し、
(d)必要な場合には、上記プレファイバーを洗浄し、
(e)上記プレファイバーを乾燥して、繊維の全重量に対して5〜70重量%のナノチューブを含む繊維を得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】直径が40μmの円形繊維を示す走査顕微鏡図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明方法は、伝導性複合繊維の形成を損なわない限り、必要に応じて上記段階の予備段階、中間段階および/または後段階を含むことができるということは理解できよう。
【0018】
本明細書で「〜」という表現は両限界値を含むものである。
本発明で「繊維」とは、直径が100nm〜300nm(ナノメートル)、さらには2〜50μm(マイクロメートル)のストランドを意味する。さらに、この構造体は多孔性であってもよい。繊維は機械部品の強度を確保するためのもので、流体輸送用の管またはパイプラインを構成するものではない。
【0019】
ナノチューブは周期表のIIIa、IVaおよびVa族の元素の中から選択される少なくとも一種の化学元素から成る。ナノチューブは熱伝導および/または電気伝導を確実に行うことができなければならない。従って、ナノチューブは硼素、炭素、窒素、燐または珪素を含むことができる。例えば、ナノチューブは炭素、窒化炭素、窒化硼素、炭化硼素、燐化硼素、窒化燐、窒化硼素炭素または珪素で構成でき、または、これらを含むことができる。
【0020】
カーボンナノチューブ(「CNT」)を用いるのが好ましく、中空、グラファイトカーボンフィブリルで、各フィブリルはフィブリルの軸線に沿って配向された一つまたは複数のグラファイト管状壁を含む。通常のナノチューブの平均直径は0.1〜100nm(ナノメートル)、好ましくは0.4〜50nm(ナノメートル)、より好ましくは1〜30nm(ナノメートル)であり、有利には0.1〜10μm(マイクロメートル)である。その長さ/直径比は好ましくは10以上、より好ましくは一般に100以上、さらに好ましくは1000以上にする。その比表面積は例えば100〜500m2/g(限界値を含む)、一般には多重壁ナノチューブで100〜300m2/gで、単一壁ナノチューブの場合は1300m2/gにも達することができる。その見掛け密度は特に0.05〜0.5g/cm3(限界値を含む)にすることができる。多重壁カーボンナノチューブは例えば5〜15枚(または壁)、さらに好ましくは7〜10枚のシートを含むことができる。これらのナノチューブは処理または未処理にすることができる。
【0021】
カーボンナノチューブは市販されており、公知の方法で製造できる。未処理カーボンナノチューブは特にアルケマ(ARKEMA France)社から商品名グラフィストレングス(Graphistrength、登録商標)C100の名称で市販されている。
【0022】
カーボンナノチューブの合成方法には電気放電法、レーザアブレーション法等があるが、化学的蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)を用いると大量生産に適した多量のカーボンナノチューブを低コストで製造することができる。この方法の基本は比較的高温度で炭素源を触媒上に注入することにある。この触媒は無機固体、例えばアルミナ、シリカまたはマグネシアに担持された金属、例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデンにすることができる。炭素源はメタン、エタン、エチレン、アセチレン、エタノール、バイオエタノール、メタノール、一酸化炭素と水素との混合物(HiPCO法)にすることができる。
【0023】
特許文献4(国際特許第WO 86/03455A1号公報、Hyperion Catalysis Internationl Inc)に記載のカーボンナノチューブの合成方法は金属、特に鉄、コバルトまたはニッケルをベースにした粒子と炭素ベースの化合物のガスとを850℃〜1200℃の温度で接触させる。金属ベースの粒子に対する炭素ベースの化合物の乾燥重量比は少なくとも約100:1である。
【特許文献4】国際特許第WO 86/03455A1号公報(Hyperion Catalysis Internationl Inc)
【0024】
所望の場合、ナノチューブを本発明方法で使用する前に必要に応じて精製、処理(例えば、酸化処理)および/または粉砕することができる。
【0025】
ナノチューブの粉砕はコールド条件下または加熱条件下に公知の装置、例えばボールミル、ハンマーミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ガスジェットミル、または、もつれたナノチューブのネットワークを寸法を小さくすることができるその他の任意の粉砕システムを用いた公知の方法で実行できる。この粉砕段階はガスジェット粉砕技術、特に、空気ジェットミルまたはボールミルで実行するのが好ましい。
【0026】
粗ナノチューブまたは粉砕ナノチューブの精製は硫酸溶液を用いた洗浄によって無機残渣および製造方法に起因する金属不純物を除去することで行なうことができる。硫酸に対するナノチューブの重量比は1:2〜1:3(限界値を含む)にすることができる。この精製操作は90〜120℃の温度で、例えば5〜10時間の時間で実行できる。この操作後に精製されたナノチューブを水ですすぎ洗いし、乾燥させることができる。精製は一般に1000℃以上の高温熱処理で行うこともできる。
【0027】
ナノチューブの酸化反応は0.5〜15重量%のNaOCl、好ましくは1〜10重量%のNaOC1を含むナトリウムハイポクロライド溶液と接触させて実行できる。ナトリウムハイポクロライドに対するナノチューブの重量比は例えば1:0.1から1:1にすることができる。酸化反応は60℃以下の温度、好ましくは室温で数分から24時間行なうことができる。この酸化反応操作の後に酸化されたナノチューブを濾過および/または遠心分離、洗浄、乾燥するのが有利である。
【0028】
同様に、金属触媒残渣を除去するために少なくとも1000℃、例えば1200℃でナノチューブを熱処理することもできる。
本発明方法の第1段階では、ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマー溶液中で、ナノチューブに共有結合または非共有結合で結合された少なくとも一種の安定剤の存在下で、ナノチューブ分散液を形成する。ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーはポリ(ビニルアルコール)であるのが有利である。
【0029】
その分子量は製造した溶液の種類およびポリマーの種類に依存し、5000〜300,000g/モルにすることができる。その加水分解度は96%以上、さらには99%以上にすることができる。
【0030】
本発明で「安定剤」とは、溶液中にナノチューブを均一に分散させることができ、ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーの存在下でのナノチューブの凝固は防止するが、凝固溶液中のビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーの凝固は妨げない化合物を意味する。
【0031】
本発明の一種以上の安定剤はナノチューブに共有結合または非共有結合で結合される。
安定剤がナノチューブに非共有結合される場合、安定剤は実質的に非イオン性の界面活性剤の中から選択できる。
本発明で「実質的に非イオン性の界面活性剤」とは、例えば非特許文献3で挙げられている非イオン性両親媒性化合物、好ましくはHLB(親水性親油性バランス)が13〜16のもの、および、親水ブロックと親油ブロックとを含み且つ低イオン性(例えば、0〜10重量%のイオン性モノマーおよび90〜100%の非イオン性モノマー)であるブロックコポリマーを意味する。
【非特許文献3】2008 McCutcheonの「乳化剤および洗浄剤」
【0032】
ナノチューブに非共有結合で結合された一種以上の安定剤は例えば下記(i)〜(v)の中から選択できる:
(i)ポリオールエステル、特に:
必要に応じてポリエトキシ化された脂肪酸とソルビタンのエステル、例えばTween(登録商標)ファミリーの界面活性剤、
脂肪酸とグリセロールのエステル、
脂肪酸とショ糖のエステル、
脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、
(ii)ポリエーテル変性ポリシロキサン、
(iii)脂肪アルコールとポリエチレングリコールのエーテル、例えば、Brij(登録商標)ファミリーの界面活性剤、
(iV)アルキルポリグリコシド、
(v)ポリエチレン−ポリエチレングリコールブロックコポリマー。
【0033】
安定剤がナノチューブに共有結合された第2の場合、好ましい安定剤としては親水基、有利にはナノチューブにグラフトしたポリエチレングリコール基が挙げられる。
【0034】
反応性単位、例えばポリエチレングリコール基のナノチューブ表面へのグラフトは当業者に周知の任意の方法で行うことができる。例えば、当業者は非特許文献4を参考にできる。
【非特許文献4】B.Zhao達「水溶性単一壁カーボンナノチューブグラフトコポリマーの合成および特徴付け」J.Am.Chem.Soc.(2005)Vol.127 No.22
【0035】
この文献に記載の方法では、ナノチューブをジメチルホルムアミド(DMF)中に分散して塩化オキシアリルと接触させ、得られた分散液をポリエチレングリコール(PEG)と接触させる。こうしてグラフトされたナノチューブを精製する。
【0036】
さらに、本発明方法の第1段階で製造した分散液は溶剤、好ましくは水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、フェノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびこれらの混合物の中から選択される溶剤を含む。溶剤は水、DMSOおよびこれらの任意の比率の混合物の中から選択するのが好ましい。
【0037】
溶剤が水分散液の場合、下記の中から選択可能な一種以上の酸の添加によって水分散液のpHを3〜5に維持するのが好ましい:無機酸、例えば硫酸、硝酸および塩酸、有機酸、例えば酢酸、酒石酸およびシュウ酸、および有機酸と有機酸塩との混合物、例えばクエン酸とクエン酸ナトリウム、酢酸と酢酸ナトリウム、酒石酸と酒石酸カリウム、酒石酸とクエン酸ナトリウムとの混合物。
さらに、分散液は、硼酸、硼酸塩またはこれらの混合物を含むことができる。
さらに、分散液は、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化リチウム、ロダン酸塩およびこれらの混合物の中から選択される塩を含むこともできる。これらによって、分散液のレオロジー特性を最適化し、繊維の形成を促進することができる。
【0038】
本発明の一つの有利な実施例では、分散液を超音波またはロータ−ステータ装置またはボールミルを用いて製造する。分散液は周囲温度または例えば40〜120℃に加熱することによって製造できる。
本発明方法の第1段階で製造された分散液は、溶剤を含めた分散液の全重量に対して、2〜30重量%のビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーと、0.1〜5%のナノチューブと、0.1〜5重量%の安定剤とを含むことができる。
【0039】
本発明方法の第2段階では、第1段階で得られた上記分散液を凝固溶液中に注入してモノフィラメントまたはマルチフィラメントの形のプレファイバー(prefiber、予備繊維)を形成する。
本発明で「凝固(coagulation)溶液」とはビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーの凝固を引き起こす溶液を意味する。
【0040】
この溶液は当業者に周知であり、ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーをベースにした繊維の製造方法は多数の文献の対象となっている。一般的に、最もよく見られる技術はPVAの湿式紡糸(例えば米国特許第3,850,901号明細書、米国特許第3,852,402号明細書および米国特許第4,612,157号明細書参照)およびPVAの乾式ジェット湿式紡糸(例えば米国特許第4,603,083号明細書、米国特許第4,698,194号明細書、米国特許第4,971,861号明細書、米国特許第5,208,104号明細書および米国特許第7,026,049号明細書参照)である。
【特許文献5】米国特許第3,850,901号明細書
【特許文献6】米国特許第3,852,402号明細書
【特許文献7】米国特許第4,612,157号明細書
【特許文献8】米国特許第4,603,083号明細書
【特許文献9】米国特許第4,698,194号明細書
【特許文献10】米国特許第4,971,861号明細書
【特許文献11】米国特許第5,208,104号明細書
【特許文献12】米国特許第7,026,049号明細書
【0041】
本発明の有利な一実施例では、凝固溶液は水、アルコール、ポリオール、ケトンおよびこれらの混合物の中から選択される溶剤、好ましくは水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエンおよびこれらの混合物の中から選択される溶剤、さらに好ましくは水、メタノール、エタノール、グリコール、アセトンおよびこれらの混合物の中から選択される溶剤を含む。
【0042】
凝固溶液の溶剤が実質的に水の場合、凝固溶液の温度は10〜80℃であるのが有利である。凝固溶液の溶剤が実質的に有機物、例えばメタノールの場合には凝固溶液の温度は−30〜10℃であるのが有利である。凝固溶液はさらに、アルカリ塩または脱水塩、例えば硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびこれらの混合物の中から選択される、ビニルアルコールホモまたはコポリマーの凝固を促進するための一種以上の塩を含むことができる。
【0043】
さらに、凝固溶液は機械特性、繊維の耐水性を改善させるおよび/または繊維の押出しを促進させる一種以上の追加の化合物を含むことができる。従って、凝固溶液は硼酸、硼酸塩およびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一種の化合物を含むことができる。
凝固溶液は塩飽和溶液であるのが好ましい。
【0044】
分散液は本発明方法の第2段階で、一つまたは一組のニードルおよび/または一つまたは一組の無孔円筒形または円錐形のノズルを介して、静的(固定浴)または動的(流れ)な凝固溶液中に注入するのが有利である。分散液の平均注入速度は0.1m/分〜50m/分、好ましくは0.5m/分〜20m/分にすることができる。
凝固溶液はビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーをプレファイバーの形で凝固して凝集させる。ナノチューブは凝固するポリマー中に捕捉される。
本発明方法の次の段階は凝固溶液からプレファイバーを連続的または非連続的に抜き取ることにある。
【0045】
プレファイバーを抜き取った後に、必要に応じて一回または複数回、洗浄することができる。洗浄タンクは水を含むのが好ましい。洗浄段階によって繊維の周辺ポリマーの一部を除去でき、それによってプレファイバーのナノチューブ組成物を(最大で70重量%)増やすことができる。さらに、洗浄浴はプレファイバーの組成物を変性できるまたは互いに化学的に相互作用する試薬を含むことができる。特に、化学的または物理的架橋剤、特に硼酸塩またはジアルデヒドを浴に添加してプレファイバーを強化できる。洗浄段階によってさらに、繊維の機械特性または電気特性に有害な試薬、特に界面活性剤を除去することができる。
【0046】
本発明方法には乾燥段階が含まれる。この段階は抜取り後に直ちに行なうか、洗浄後に続けて行なうことができる。特に、ポリマーリッチな繊維を得るのが要求される場合には抜取り直後にプレファイバーを乾燥するのが望ましい。乾燥操作はオーブン内で行うのが好ましい。オーブンではオーブンの内部ダクト内を循環するガスによってプレファイバーを乾燥する。乾燥操作は赤外線輻射で行うこともできる。
【0047】
本発明方法は巻取り段階を含むことができ、乾燥段階と巻取り段階との間に熱間引抜き段階を置くことができる。本発明方法はさらに溶剤中での延伸操作を何度も含むことができる。
【0048】
引抜き段階はビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーのガラス転移温度(Tg)より高い温度、好ましくはその溶融温度(存在する場合)より低い温度で行うことができる。この段階は米国特許第6,331,265号明細書に記載されている。
【特許文献13】米国特許第6,331,265号明細書
【0049】
この段階でナノチューブおよびポリマーを繊維の軸線に沿ってほぼ同じ方向に配向でき、その機械特性、特にヤング率および破断閾値を改善できる。延伸比は引抜き後の繊維の長さと引抜き前の繊維の長さとの比で定義され、1〜20、好ましくは1〜10(限界値含む)にすることができる。引抜き操作は一回または複数回実施できるが、各引抜き操作の間に繊維がわずかに弛緩させる。この引抜き操作は繊維を回転速度の異なるローラ群に通して行うのが好ましい。すなわち、繊維を巻き戻すローラの回転速度を繊維を受けるローラより遅くする。所望の引抜き温度にするためには、ローラ間に配置したオーブン中を繊維を通すか、加熱ローラを使用するか、これら2つの方法を組合せることができる。この引抜き操作によって繊維を圧密でき、高い応力レベルを破断閾値で達成できる。
【0050】
本発明の他の対象は、本発明方法で得られる伝導性複合繊維にある。
得られる伝導性複合繊維の特徴は繊維の全重量に対して5〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%のナノチューブを含み、従って、ナノチューブを高比率で含む複合繊維が得られる点にある。
【0051】
得られる繊維は均一であり、良好な機械特性を有する。繊維は引張り試験による機械特性で特徴付けられ、下記特徴を有する:
(1)機械的破断閾値(または靱性)が100MPa以上、好ましくは300MPa以上、さらに好ましくは500MPa以上である、
(2)破断点伸びが0.1〜500%、好ましくは1〜400%、さらに好ましくは3〜400%である、
(3)ヤング率(または引引張り弾性率)が1〜100GPa、好ましくは2〜60GPaである。
【0052】
本発明方法で得られた伝導性複合繊維は電気抵抗率を室温で10-3〜105Ω−cmにすることができる。この電気的伝導性は熱処理によってさらに改善できる。
【0053】
本発明の別の対象は下記(1)〜(3)を含む伝導性複合繊維にある:
(1)周期表のIIIa、IVaおよびVa族の元素の中から選択される、熱伝導および/または電気伝導を確実に行うことができる少なくとも一種の化学元素から成る繊維の全重量に対して5〜70重量%のナノチューブ、
(2)ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマー、
(3)HLBが13〜16である実質的に非イオン性の界面活性剤の中から選択される、ナノチューブに非共有結合で結合された少なくとも一種の安定剤。
【0054】
本発明の他の対象は、本発明の伝導性複合繊維の下記用途での使用にある:
(1)ロケットまたは航空機の機首、翼またはコックピットの製造、
(2)オフショアホースの被覆材料の製造、
(3)自動車の車体、エンジンシャーシ部品または自動車用支持部品の製造、
(4)自動車シートカバーの製造、
(5)建設分野での骨組部品または橋および道路の製造、
(6)包装材料および静電防止織物、特に静電防止カーテン、静電防止衣類(例えば安全のためまたはクリーンルーム用)またはサイロ保護または粉末または顆粒材料の包装および/または運搬のための材料の製造、
(7)備品部材、特に、クリーンルーム備品の製造、
(8)フィルターの製造、
(9)電磁防御手段、特に電子部品保護用品の製造、
(10)暖房織物の製造、
(11)伝導ケーブルの製造、
(12)センサ、特に変形または機械的応力センサの製造、
(13)電極の製造、
(14)水素貯蔵装置または生物医学装置、例えば縫合糸、プロテーゼまたはカテーテルの製造。
【0055】
これらの複合材料部品は種々の方法で製造でき、一般には本発明の伝導性複合繊維を少なくとも一種の熱可塑性、エラストマーまたは熱硬化性材料を含むポリマー組成物で含浸する段階を含む。この含浸段階自体は種々の方法で行うことができ、特に用いるポリマー組成物の物理形状(微粉状または液状)に基づいて行うことができる。伝導性複合繊維の含浸はポリマー組成物が粉末である流動床含浸法で行うのが好ましい。こうして予備含浸繊維が得られる。
【0056】
得られた半製品を所望の複合材料部品の製造で用いる。同一または異なる組成物の互いに異なる繊維予備含浸ファブリックを積層してシートまたは積層材料に形成するか、他の変形例では熱形成プロセスで加工する。変形例では、予備含浸繊維を組み合わせてストリップを形成し、このストリップはフィラメントワインディング法で使用し、略無限の長さの中空部品にすることができる。この方法では製造される部品の形状を有するマンドレル上に繊維を巻き付ける。いずれの場合でも、予備含浸繊維を互いに固定するおよび/またはフィラメントワインディング法で予備含浸繊維のストリップを取付けるための領域を作るために、ポリマー組成物を局部的に溶融し、凝固して最終部品にする段階を含む。
【0057】
別の変形例では、含浸ポリマー組成物から押出加工またはカレンダー加工によって例えば厚さが約100μmのフィルムを調製し、このフィルムを伝導性複合繊維の2つのマットの間に入れ、得られた組立体をホットプレスし、繊維の含浸と複合材料部品を製造することができる。
【0058】
これらの方法では、本発明の伝導性複合繊維を単独またはその他の繊維と一緒に織成または編成するか、単独または他の繊維と組合わせて用いてフエルトまたは不織布材料を製造できる。上記の他の繊維の構成材料の例としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
(1)延伸ポリマー繊維、特に下記材料をベースにしたもの:ポリアミド、例えばポリアミド6(PA−6)、ポリアミド11(PA−11)、ポリアミド12(PA−12)、ポリアミド6,6(PA−6,6)、ポリアミド4,6(PA−4,6)、ポリアミド6,10(PA−6,10)またはポリアミド6,12(PA−6,12)、ポリアミド/ポリエーテルブロックコポリマー(ペバックス(Pebax、登録商標))、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエステル、例えばポリヒドロキシアルカノエートおよびデュポン(DU PONT)社から商品名ハイトレル(Hytrel、登録商標)で市販のポリエステル、
(2)炭素繊維、
(3)ガラス繊維、特にE、RまたはS2タイプ、
(4)アラミド繊維(Kevlar(登録商標))、
(5)硼素繊維、
(6)シリカ繊維、
(7)天然繊維、例えば亜麻、麻、サイザル、綿または毛、
(8)上記の混合物、例えばガラス繊維と炭素繊維とアラミド繊維との混合物。
【0059】
本発明の別の対象は、織成またはポリマー組成物を用いて互いに結合された本発明の伝導性複合繊維を含む複合材料にある。
本発明の上記以外の特徴および利点は以下の実施例からより良く理解できよう。下記実施例は単に説明のためのもので、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0060】
実施例1
0.5重量%の単一壁カーボンナノチューブと、1重量%のBrij(登録商標)78とを水中に分散させた。この分散液を超音波プローブを用いて20Wの電力で均一化した。次に、分子量が195,000g/モルで、加水分解度が98%のポリ(ビニルアルコール)(PVA)水溶液8重量%を添加した。得られた分散液は0.25重量%の単一壁ナノチューブと、0.5重量%のBrij(登録商標)78と、4重量%のPVAとの水分散液から成る。これを磁気撹拌で均一化した。
次いで、この分散液を飽和硫酸ナトリウム凝固溶液の40℃の固定浴(320g/L)中に注入した。
プレファイバーを10秒以下の滞在時間の後、凝固浴から抜き取った。次いで、プレファイバーを赤外線輻射で乾燥し、水を入れた洗浄浴に移した。1分後、赤外線輻射によって再乾燥し、巻き取った。
得られた最終繊維は8重量%のナノチューブを含む。この値は熱重量分析(TGA)によって得た。[図1]は直径が40μmの円形繊維の走査顕微鏡図を示す。
この繊維は円形かつ均一で、機械的引張り力によって特徴づけられた。この繊維は破壊エネルギーが475J/gで、破断点伸びが425%伸びで、ヤング弾性率は3GPaである。200℃で400%の熱延伸後、そのヤング弾性率は最大29GPaに増加し、その破断伸び値は12%になる。
【0061】
実施例2
多重壁ナノチューブの水分散液から複合繊維を製造した。0.9重量%のナノチューブと、1.2%のBrij(登録商標)78とを水中に分散させた。実施例1と同じ方法を用いて、17%の多重壁ナノチューブを充填した繊維を得た。
この繊維は10Ω−cmの電気抵抗率で電気を通し、良好な機械特性と完全に有益な電気特性とを併せ持つという利点を有する。この繊維の靱性は340MPa、ヤング弾性率は5.5GPa、破断点伸びは240%である。
【0062】
実施例3
0.9重量%の多重壁カーボンナノチューブと、1.2%のBrij(登録商標)78とを水中に分散させた。この混合液を20Wの電力で超音波プローブを用いて均一化した。この分散液に、分子量が61,000g/モルで、加水分解度が98%のポリ(ビニルアルコール)(PVA)水溶液16重量%を添加した。得られた分散液を磁気撹拌で均一化した。この分散液にPVAに対して0.5重量%の量の硼酸を添加し、希硝酸を添加してpH値を5以下にした。こうして、0.45重量%の単一壁ナノチューブと、0.6%のBrij(登録商標)78と、8%PVAとから成る分散液を得た。
次いで、この溶液を飽和硫酸ナトリウム凝固溶液の40℃の固定浴(320g/L)中に注入し、繊維を形成した。
得られた最終繊維は12重量%のナノチューブを含む。この繊維は靱性が360MPa、ヤング弾性率が4GPa、破断点伸びが325%、電気抵抗率が30Ω−cmである。
【0063】
実施例4
実施例3の分散液を水酸化ナトリウム(50g/L)と硫酸ナトリウム(300g/L)とを含む40℃の凝固浴に注入した。
得られた最終繊維は12重量%のナノチューブを含む。この繊維は靱性が32MPa、ヤング弾性率が7GPa、破断点伸びが200%、電気抵抗率が100Ω−cmである。
【0064】
実施例5
0.5重量%の多重壁カーボンナノチューブと、1%のBrij(登録商標)78とを、各溶剤ごとに同じ質量濃度を含む水/DMSO混合物中に分散させた。
この分散液に、分子量が61,000g/モルで、加水分解度が98%の、PVA溶液を水/DMSO混合物中に溶かしたもの16重量%を添加した。こうして得られた、0.25重量%の多重壁ナノチューブと、0.5重量%のBrij(登録商標)78と、8重量%PVAとから成る分散液を磁気撹拌で均一化した。
この分散液を、10%DMSOを含む−20℃のメタノール凝固溶液中に注入し、8%のナノチューブが充填された繊維を形成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)の一連の段階を含む、伝導性複合繊維の製造方法:
(a)周期表のIIIa、IVaおよびVa族の元素の中から選択される少なくとも一種の化学元素から成る熱伝導および/または電気伝導を付与するナノチューブを、ナノチューブに共有結合または非共有結合で結合された少なくとも一種の安定剤の存在下で、ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーの溶液中に分散して分散液を形成し、
(b)上記の分散液を凝固溶液中に注入してプレファイバーを形成し、
(c)上記プレファイバーを取り出し、
(d)必要な場合には、上記プレファイバーを洗浄し、
(e)上記プレファイバーを乾燥して、繊維の全重量に対して5〜70重量%のナノチューブを含む繊維を得る。
【請求項2】
ナノチューブがカーボンナノチューブである請求項1に記載の伝導性複合繊維の製造方法。
【請求項3】
安定剤がナノチューブに非共有結合で結合され且つ下記(i)〜(v)のような実質的に非イオン性の界面活性剤の中から選択される請求項1または2に記載の伝導性複合繊維の製造方法:
(i)ポリオールエステル、特に、必要に応じてポリエトキシ化されていてもよい脂肪酸とソルビタンのエステル、脂肪酸とグリセロールのエステル、脂肪酸とショ糖のエステル、脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、
(ii)ポリエーテル変性ポリシロキサン、
(iii)脂肪アルコールとポリエチレングリコールとのエーテル、
(iV)アルキルポリグリコサイド、
(v)ポリエチレン−ポリエチレングリコールブロックコポリマー。
【請求項4】
安定剤が親水基、好ましくはナノチューブにグラフトしたポリエチレングリコール基である請求項1または2に記載の伝導性複合繊維の製造方法。
【請求項5】
ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーがポリ(ビニルアルコール)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維の製造方法。
【請求項6】
分散液が水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、フェノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびこれらの混合物、好ましくは水、DMSOおよびこれらの任意比率の混合物の中から選択される溶剤を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維の製造方法。
【請求項7】
分散液が硼酸、硼酸塩またはこれらの混合物をさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維の製造方法。
【請求項8】
分散液を超音波またはロータ−ステータ装置またはボールミルを用いて製造する請求項1〜7のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維の製造方法。
【請求項9】
凝固溶液が水、アルコール、ポリオール、ケトンおよびこれらの混合物の中から選択される溶剤、好ましくは水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエンおよびこれらの混合物の中から選択される溶剤、さらに好ましくは水、メタノール、エタノール、グリコール、アセトンおよびこれらの混合物の中から選択される溶剤を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維の製造方法。
【請求項10】
凝固溶液が硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硼酸、硼酸塩およびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一種の化合物を含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法で得られる伝導性複合繊維。
【請求項12】
繊維の全重量に対して5〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%のナノチューブを含む請求項11に記載の伝導性複合繊維。
【請求項13】
繊維の機械的破断閾値が100MPa以上、好ましくは300MPa以上、さらに好ましくは500MPa以上である請求項11または12に記載の伝導性複合繊維。
【請求項14】
繊維の電気抵抗率が10-3〜1010Ω−cmである請求項11〜13のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維。
【請求項15】
下記(1)〜(3)を含む伝導性複合繊維:
(1)周期表のIIIa、IVaおよびVa族の元素の中から選択される少なくとも一種の化学元素から成る、熱伝導および/または電気伝導を付与する、繊維の全重量に対して5〜70重量%のナノチューブ、
(2)ビニルアルコールのポリマーホモまたはコポリマー、
(3)HLBが13〜16である実質的に非イオン性の界面活性剤の中から選択される、ナノチューブに非共有結合で結合された少なくとも一種の安定剤。
【請求項16】
ロケットまたは航空機の機首、翼またはコックピット、オフショアホースの被覆材料、自動車の車体、エンジンシャーシまたは自動車用支持部品、自動車シートカバー、建設分野での骨組部品または橋および道路、包装材料および静電防止織物、特に静電防止カーテン、静電防止衣類(例えば安全のためまたはクリーンルーム用)またはサイロ保護または粉末または顆粒材料の包装および/または運搬のための材料、備品部材、特に、クリーンルーム備品、フィルター、電磁防御装置、特に電子部品保護用、暖房織物、伝導ケーブル、センサ、特に変形または機械的応力センサ、電極、水素貯蔵装置、または、生物医学装置、例えば縫合糸、プロテーゼまたはカテーテルの製造での請求項11〜15のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維の使用。
【請求項17】
織成またはポリマー組成物にすることによって互いに結合された請求項11〜15のいずれか一項に記載の伝導性複合繊維を含む複合材料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−281024(P2010−281024A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−119151(P2010−119151)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】