説明

ナノファイバーの製造方法

【課題】 ESD法に於いて、液滴(液球とも言われている)や玉状の物質(ビーズとも言われている)を発生することなく、均一の層厚のナノファイバーの大量生産を可能にし、且つ生産時に生ずる電荷雲の滞留をなくして爆発、感電の恐れをなくそうとしたものである。
【解決手段】 本発明の解決手段は、高電圧発生部から高電圧を印加され且つ後端にポリマー溶剤溶液をポンプにて送給できるようにチューブを接続し、ノズルとノズルの後方に設置した圧縮エアーを吐き出すエアーブローとエアーブローの後方に設置した電極球を一直線に並ぶ配置に設け、ノズル前方には穴を形成した絶縁遮蔽板を設置し、ノズル間に誘電体からなる電界干渉遮断板を設置すると共に絶縁遮蔽板と一定の間隔を設けて設置されたノズルと逆電位を持った捕集電極および筺体とから構成したナノファイバーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子物質からなるナノファイバーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリマー溶剤溶液からナノファイバーを作製する方法としてESD法(Electro Spray Deposition)が知られている。ESD法は高電圧を印加した針状のノズルに容器内のポリマー溶剤溶液をポンプにて送給するように構成されており、そこで針状のノズルから線状に流出するポリマー溶剤溶液に電荷を帯電させる。それによって、下記式に示すポリマー溶剤溶液表面の同極電荷による反発力(クーロン力)とポリマー溶剤溶液のサブストレート間で働く逆極電荷の引力(クーロン力)が合わさりポリマー溶剤溶液の表面張力を上回った時に1次誘電爆発が発生し、ポリマー溶液が爆発的に延伸される。
式:表面張力+電界干渉 < クーロン力(ポリマー内での反発力+サブストレートからの引力)+ 押し出し力

:荷電粒子の荷電量1 q:荷電粒子の荷電量2 γ:粒子間距離
ε:誘電率
【0003】
さらに、図4に示すようにポリマー溶液がクーロン力でサブストレートに引き付けられることでノズル先端から流出したポリマー溶剤溶液のアスペクト比が大きくなる。これによってファイバーとして長手方向にポリマー溶液が延ばされる。1次静電爆発で延伸を始めた繊維は、比表面積が大きいため溶剤が急速に蒸発する。これによって溶剤で膨潤していたポリマー溶液の分子間力が強くなり、除々に硬化をして行く。そして、クーロン力と分子間がつりあったところで延伸は止まる。その後電荷を保ったままさらに蒸発が進みナノメータの直径のポリマーからなるナノファイバーが生成される。
【0004】
こうして製造されたナノファイバーは、高電圧を印加した捕集部上に設置された基材に堆積させることで、立体的な網目を持つ3次元構造の薄膜を得ることができる。こうして製造されたナノファイバー層はエアフィルタや電池のセパレータや燃料電池の高分子電解質膜などに適用することができるとともに、それぞれの性能を飛躍的に向上させることが期待できるものである。
【0005】
従来のESD法では、図5に示すように電界干渉の影響でスピン状態となりながら延伸していく。しかし、自身による電界干渉によってナノファイバーの径がばらつく原因となりファイバーの繊維品質が悪くなる。図6に高速度カメラの写真を示す。
【0006】
さらに、ESD法の最も大きな問題であるが、1本のキャピラリの先からは、微量のナノファイバーしか製造されない。そのため、キャピラリを大量装備して、多数のキャピラリから静電噴霧するという単純な構成で大量生産を目出すといった方法がこれまで実施されているが、このような多数のキャピラリを使用する方法は電界干渉を避けるために広大なスプレー面積を必要としメンテナンスが非常に難しい。また、引火性有機溶剤と高電圧を使用する場合は爆発を引き起こしている。その結果、溶剤が水もしくは引火しないまたは引火しにくい溶剤を使うポリマーだけが製造されることで、ESD法の利点である常温常圧で生産ができるといった優位性が損なわれてきた。これらの問題があるため、ナノファイバーの製造コストが非常に高くなってしまった。また、電界干渉やイオン風によって基盤上に堆積したナノファイバー層の層厚がばらつき、特にノズルパターンが投影されることで品質的に不十分なレベルなものであった。
【0007】
ナノファイバーの品質の問題では、狭空間でESD法を使用してナノファイバーを大量生成する場合、ポリマー溶液が繊維化せずに、液滴や玉状の物質が基盤上に付着する。そして、液滴や玉状の物質は材料利用効率を著しく下げ、出来上がったナノファイバー層の目詰まりを起こしたりする原因となるため、ナノファイバー層の機械的特性を大きく損ないかねなかった。例えば、フィルタのろ材として使用した場合などはフィルタの性能を低下するといった問題が生じた。
【0008】
従来のESD法で生成量が少ない理由として、スプレー電圧とポリマー溶液の圧力を増すことである程度は生成量を増やすことができるが、スプレー電圧とポリマー溶液の圧力を除々に増していくと液滴になり、最後にはナノファイバーが生成できなくなるといった問題があった。
【0009】
その原因は、ノズルから出力される荷電ナノファイバー雲がノズルに荷電ナノファイバーと逆極性の電荷を静電誘導することでノズル先端が中和し、ポリマー溶剤溶液に電荷を与えることができなくなるからである。そのため、ナノファイバーを大量生成する方法として荷電ナノファイバーを高圧エアーにて吹き飛ばしナノファイバーを大量に生成する方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、単純に荷電ナノファイバーを高圧エアーで吹き飛ばすだけではナノファイバーの品質に多くの問題が発生する。ここでは仮に単純に高圧エアーで吹き飛ばす方式を高圧エアー方式と呼ぶことにする。高圧エアー方式においては、ナノファイバーの生産量を増やすと共通して液滴(液球とも言われている)や玉状の物質(ビーズとも言われている)の問題が発生する。すなわち、下記の原因について図7を参照しながら説明すると、
(1)液球の原因は、ノズルとサブプレート間の逆極電荷による引力によって液滴が引き出されることで発生する。
(2)液球のもう一つの原因は、液圧量を増やした時、管内の管路抵抗などによる脈動によってノズル先端に液滴が発生する。
(3)ビーズの原因は電荷を集中させることで同極の電荷が強すぎる場合に反発し、ビーズをノズル外へ押し出す結果、ビーズを発生する。
(4)高圧エアーがノズルに接触する場合、乱気流となりノズルから流出する溶液を巻き込み液球状態で吹き飛ばす液球が発生する。
【0011】
さらに、高圧エアー方式の場合、図8に示すように単純に帯電した電荷雲を吹き飛ばすだけでは、下記のような問題がある。すなわち、
(1)高圧エアーで吹き飛ばした荷電ナノファイバーは連続に吐出されるため電荷雲が発生し、電荷雲によってノズル先端には静電誘導にて逆極性の電荷が引きつけられノズル先端を中和しようとするため、電荷が消え延伸力がなくなって液滴や溶液が伸びきれずビーズが発生し、ナノファイバー化ができなくなること。
(2)水を溶媒とするPVAやイオン交換樹脂であるナフィオンなどは高電圧電源の漏電をゼロにすることができなかった。これによってサブストレートに電流が流れサブストレート表面の電荷を消してしまう。更に荷電ナノファイバーがクーロン力によってサブストレートに引きつけられ付着するとサブストレート表面での電荷が中和し、ノズル先端に静電誘導するための電荷量が減少し、ポリマー溶剤溶液に電荷を与えることができなくなりナノファイバー化ができない。また、サブストレートにナノファイバーが付着して汚れることで長時間のスプレーが阻害される。
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0012】
本発明は上記のような問題点を解決しようとしたもので、まず本発明の目的は、液滴やビーズを発生することなく最適なナノファイバーの大量生産を可能にしたものである。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、電界干渉やイオン風の現象を防止し、均一の層厚のナノファイバー層を形成したものである。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、電荷雲によってノズル先端の電荷が消え延伸力がなくなり、液滴や溶液が伸びきれずビーズが発生しナノファイバー化ができなくなることを防止したものである。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、クーロン力を押さえノズルや電極球にナノファイバーの付着を防止しすることで長時間のスプレーを可能にしたものである。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、有機溶剤を大量に噴霧し、高電圧を使用するESD法において、爆発、感電、被爆の恐れをなくしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の解決手段を、図9を参照して説明する。ここで、高圧電源の極性は逆でも可能であるが、極性については図に沿って説明をする。
まず、スプレー開始時点でノズルとサブストレート間に静電結合(コンデンサ結合)があるため、ノズル先端に+が誘導され、それに伴って静電誘導によってサブストレートに−が誘導される。そして、電荷を有するナノファイバーがノズルとサブストレート間に浮遊するとノズルとサブストレートに−が静電誘導される。その結果、ノズル先端は+電荷の量が中和されて行き、その結果、電荷が十分与えられなかったポリマーは液滴となる。そのため、ノズルとサブストレート間に浮遊する電荷を有するナノファイバーを除去することで、コンデンサ結合を保つことができることを利用し大量生産を可能にしたものである。
【0018】
本発明の第2の解決手段を、図10を参照して説明する。まず、電荷雲の影響を緩和するため中心に穴のあいた誘導体板を取り付ける。これによって、ノズルに対して電荷雲からの電気力線を遮蔽することで、静電誘導によるマイナス電荷生成を減少させることができる。そしてノズル先端に静電誘導で電荷を誘導するサブストレートはノズルに正対しない位置に設置することで液滴を引き出す力を弱めることができる。このサブストレートの位置は、電荷雲に対してはノズルの先端がプラスになるためクーロン力によって電荷雲を反発する配置である。その結果サブストレートに電荷を有するナノファイバーが反発され、サブストレートに付着することを防ぐことができる。また、これまでのノズルとサブストレートの位置関係では、電荷をテイラーコーンがサブストレートとノズル先端に存在することでノズルの先端にプラス電荷が集中することを妨げたが、図10の位置では常にサブストレートとノズルがコンデンサ結合の状態を保つことでノズル先端に電荷を集中させることが可能となった。このように図10は液滴の原因を解消した最適なノズルとサブストレートの位置関係を表している。
【0019】
本発明の第3の解決手段を、図11を参照して説明する。サブストレートとノズルの距離が重要なことであり、電極、ブロァー、ノズル、位置関係で下記のようなことから考慮しなければならない。すなわち(1)電極とノズルの絶縁強度を考慮し、かつイオン風の発生を防ぐことを考えなければならない。(2)クーロン力によって、ポリマーがノズル先端に溜まることでノズル先端の電荷が中和して液滴の原因となること。(3)ノズルから吐出したポリマーはプラス電荷を有しているため距離rが短いとクーロン力でサブストレートに引き付けられ付着し、これによって、漏電することで電極上の電荷が中和され、ノズル先端への静電誘導が阻害されること。そこで発明者は下記式から、すなわちクーロン力が距離の二乗に反比例する点

:荷電粒子の荷電量1 Q:荷電粒子の荷電量2 ε:誘電率
γ:粒子間距離
および、ノズル先端に集まる電荷が

C:静電容量 V:電圧 ε:誘電率 γ:粒子間距離 S:面積
である点から距離を十分に離し、電圧をあげることでクーロン力を弱め、電荷量を増やすことが可能であることがわかった。
【0020】
本発明の第4の解決手段を、図12を参照して説明する。ノズルとサブストレート間の同極電荷の反発力によって、圧力が低いノズル開放部すなわち大気圧に溶液が押し出されることでビーズが発生する。このことから本発明はノズル内径を狭くしてノズルから飛び出る溶液に対して内径を狭くすることで管路抵抗を大きくし、飛び出す溶液のアスペクト比を大きくし繊維化を推進しようとしたものである。さらに、溶液の粘度が低い場合はノズル径を小さくするだけでなく高電圧を下げることでビーズの発生を抑制したものである。
【0021】
本発明の第5の解決手段を説明する。ESD法の考え方で重要なことは、ノズルとサブストレート間に電圧を印加することでコンデンサ結合を作りノズル先端に電荷を発生させることである。この時注意を要するのがGNDレベルの考え方である。一般的に高電圧を使用する場合は、床、天井、壁などのGNDの電圧レベルになっている。そのために、「サブストレートをGNDにした場合」は、ノズルとサブストレート間に電気力線を発生することができるが、高電圧電源からノズル先端までGNDに対して高電位を持っているため、図13のようにいろいろなところから電気力線が複雑に発生する。その結果、漏電や突起部からコロナ放電が発生する問題が生じた。これに対し図14に示すように「ノズルをGNDにした場合」はノズルと床、天井、壁などGNDの同電位であるため電気力線が発生せず、ノズルの先端にのみ電荷を集中させることが可能となる。またサブストレートと床、天井、壁やGNDレベルになっている筺体などと十分絶縁を取ることで高電圧電源の電流をゼロとすることができる。つまり、ESD動作の際、高電圧電源の電流がゼロになるのが最適である。
【0022】
本発明の第6の解決手段を説明する。本発明者はノズル先端の溶液は、同極による反発力+サブストレートの引力によってサブストレートに引き寄せられ、特にノズルとサブストレート間の逆極による引力によって液球が引き出される場合はノズルとサブストレート間の距離を長くすることで解決することを見つけた。図15の右の写真は、電圧を高くした状態からサブストレートを遠ざけた状態でスプレーしたものである。サブストレートを遠ざけることでクーロン力が小さくなり、液球の発生を止めることができる。また、この現象は、更に溶液の引き出される方向とノズルとサブストレートが一致していることが原因と考えることができる。そのためノズルに対してサブストレートの位置を正対する場所から変えた場所に配置することで液球の原因であるクーロン力を緩和することができる。
【0023】
本発明の第7の解決手段を説明する。高電圧を使用しナノファイバー生成時に同極の電荷を与えることでクーロン力の反発を利用してナノファイバーを生成するESD方式の筺体に木材を使用したことを特徴としたものである。一般的に筺体を誘電体で作成することが考えられるが、図16に示す如く高圧エアーからスプレーされた電荷(+と仮定する)を有するナノファイバーは筺体内壁の誘電体に誘電分極によって荷電ナノファイバーを引き付け付着する。また、荷電ナノファイバーは同極(+)の電荷を有しているために、お互いに反発して筺体内壁に向かって拡がって行き、誘電体で囲まれた空間内は下方から上方に向かってエアーが移動しているためイオン風として壁面に摩擦することで静電気を発生する。その結果、誘電体の表面に電荷(+)がチャージアップされ、筺体の内壁に電荷(+)がチャージアップされるとエアーブローノズルには、静電誘導にてマイナス電荷が誘導され、ナノファイバーを生成するための電荷が中和されることでナノファイバーが生成されなく、特に冬場はエアコンや人の移動によるエアーの流れによって筺体の外壁と摩擦による静電気が発生する。この場合、外壁がマイナスに帯電するため、プラス電荷を有するナノファイバーが内面に引き付けられ付着するようになり、その結果、電荷を有するナノファイバーは舞ったり筺体内壁に付着したり、捕集効率を著しく悪化させる。一般的に誘電体には、樹脂(塩ビ、アクリル、テフロン)が使用されるため有機溶剤に弱く表面が溶けてしまう。また、テフロンであってもDMFによって柔らかくなってしまう傾向があった。これに対しても木の主成分であるセルロースは有機溶剤に対して強い耐薬品性を持っている。さらに高電圧対策で一般的には筺体を導体で作成してGNDに落とす方法が考えられている。その場合、図17に示すようにエアーブローノズルからスプレーされた電荷(+と仮定する)を有するナノファイバーは外装の導体に静電誘導によって荷電ナノファイバーが引き付けられるため、筺体内壁に荷電ナノファイバーが付着する。荷電ナノファイバーが導体に付着した時、電荷が導体に移動する。そして電荷がGNDに接続されているとGNDに電荷が逃げて行き、この動作を繰り返すことで荷電ナノファイバーは捕集部に移動する前に外装(導体)に付着する。これによって捕集効率が著しく低下する。また導体の場合冬場の静電気は発生してもGNDに逃げるため筺体内壁には影響ないが、ステンレス、鉄などの場合はギ酸などの溶媒に侵され錆びてしまう欠点をもっている。
【0024】
ここで、ポリマー溶剤溶液を構成する高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンアクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカブロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニルなどが使用でき、特にこれらに限定されるものではない。
【0025】
使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、などが使用でき、特にこれらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明のナノファイバーの製造方法は次のような効果が得られる。
(1)ノズル側をGNDに接続することで高電圧電源の電源をゼロにし、GNDからプラス電荷を供給することができるようにしたので、漏電による液滴やビーズを発生することなく大量生産を可能にしたこと。
(2)高電圧電源は静電誘導を起こすだけであるため、電流がまったく必要なく、ノズル数を無限に接続可能にしたこと。
(3)引火性有機溶剤をエアーにて希釈し、2000ppm以下にすることで爆発を防ぎ、筺体内を負圧にすることでナノファイバー、有機溶剤から作業者の被爆を防ぎ、さらには感電といった危険がないこと。
(4)電界干渉やイオン風の現象を防止し、均一の層圧のナノファイバー層を形成したこと。
(5)ノズル先端での電荷量の減少を防止し、長時間のスプレーを可能にしたこと。
(6)ポリマー溶液側がGNDであるため漏電を無くすようにしたこと。さらにこの漏電により、作業者の安全を可能にしたこと。
(7)ポリマー溶液供給関連装置などを絶縁しなくて良いため装置が非常に安全で簡単な構成であること。
(8)ノズル先端に電気力線を集中できるようにしたので、一本のノズルから大量のナノファイバーを作り出すことができ、多数のノズルを装備する必要がないこと。
(9)単純な構成で大量生産を可能にしたので、生産コストも低減できる上、消費電力やメンテナンスコストもかからずコストの面で多大な効果があること。
(10)単純な装置であるので、扱い易く、保守に手間がかからないといった効果があること。
(11)ナノファイバーの生成と捕集を分離できるため、ナノファイバーの生成量が自由に増やすことが可能であり捕集部も製品に応じて対応できるようになったこと。
(12)筺体内をナノファイバーが直線的に進むことが可能になったことでナノファイバーを乾燥させることができ、その結果、ナノファイバーの溶着、溶剤の凝集を防ぐことを可能としたこと。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のエアーブロー方式のESD法の基本的な構成を示す概念図である。
【図2】もう一つのエアーブロー方式のESD法の基本的な構成を示す概念図である。
【図3】もう一つのエアーブロー方式のESD法の基本的な構成を示すブロックである。
【図4】従来のESD法の生成シーケンスのうち1次静電爆発(飛び出し動作)を示す概念図である。
【図5】従来のESD法の生成シーケンスのうち2次静電爆発(延伸動作)を示す概念図である。
【図6】従来のESD法での電界干渉によりスピン状態を表す高速度カメラ映像写真である。
【図7】従来のエアーブロー方式のESD法に於ける液滴・ビーズ発生メカニズムを示す概略図である。
【図8】従来のエアーブロー方式のESD法に於ける漏電発生メカニズムを示す概略図である。
【図9】本発明のエアーブロー方式のESD法を示す基本的な概念図である。
【図10】本発明のエアーブロー方式のESD法による液滴対策の概念図である。
【図11】本発明のエアーブロー方式のESD法による液滴対策のもう一つの概念図である。
【図12】本発明のエアーブロー方式のESD法によるビーズ対策の概念図である。
【図13】本発明のエアーブロー方式のESD法によるGNDレベルの設定方法を示す図である。
【図14】本発明のエアーブロー方式のESD法によるGNDレベルの設定方法を示すもう一つの図である。
【図15】本発明のエアーブロー方式のESD法による液玉対策のメカニズムを示す写真である。
【図16】従来の筺体を使用した場合に生じる電荷雲の発生原理を示す図である。
【図17】本発明を構成するエアーブローノズルの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明のナノファイバーの製造方法について図面を参照し詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1を参照して説明する。まず、▲1▼は高電圧を印加されたノズルである。このノズル▲1▼の後端には容器内のポリマー溶剤溶液をポンプにて送給できるようにチューブ(図示せず。)でつながれている。ノズル▲1▼の先端は針状の形状となっており、針状のノズル▲1▼から線状にポリマー溶剤溶液が流出するようになっている。そして、ノズル▲1▼の先端後方には高圧エアーを吐き出すエアーブロー▲2▼が設置されている。エアーブロー▲2▼の後方には電極球▲3▼が設置されている。一方ノズル▲1▼の前方には穴▲4▼を形成した絶縁遮蔽板▲5▼が設置されている。▲6▼は絶縁遮蔽板▲5▼と一定の間隔を設けて設置されたノズル▲3▼先端と逆電位を持った捕集電極が設置されている。そして本発明は特にノズル▲1▼とエアーブロー▲2▼および電極球▲3▼を一直線に並ぶ配置に設け、穴▲4▼がノズル▲1▼の先端の合致するように絶縁遮蔽板▲5▼を配置した点である。本発明はこのような構成であるので、電荷を有するナノファイバーとノズル▲1▼が同極で反発することで直線的にナノファイバーが押し出される。その際、電荷を有するナノファイバーの電荷はノズル▲1▼先端の同極電荷と絶縁遮蔽板▲5▼によって静電的に遮断され電極球▲3▼に対して電界干渉を起こさなくなる。この結果以下の作用効果を得ることができるものである。
(1)ナノファイバーを直線的に長い距離を飛ばすことができ、捕集効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
(2)エアーブローのエアー量を極端に減らすことができ、これによってコンプレッサーの負担を減らすことができる。
(3)ノズル間隙を狭くできるため、ノズルを高密度に配置することができる。ノズル先端に常に電荷を安定的に生成することができる。
(4)漏れ電流をゼロにすることで容量の小さい高圧電源で多数のノズルに高電圧を供給できる。
(5)ノズルからの出力の方向が安定し、これによって連続的に長期間の運転が可能である。
【実施例2】
【0030】
図2、図3を参照して説明する。まず、▲10▼は高電圧を印加されたスプレーノズルである。このスプレーノズル▲10▼の後端には容器内のポリマー溶剤溶液をポンプにて送給できるようにチューブ(図示せず。)でつながれている。スプレーノズル▲10▼の先端は針状の形状となっており、針状のスプレーノズル▲10▼から線状にポリマー溶剤溶液が流出するようになっている。そして、スプレーノズル▲10▼の先端後方には圧縮エアーを吐き出すエアーブロー▲11▼が設置されている。エアーブロー▲11▼の後方にはスプレー電極▲12▼が設置されている。一方スプレーノズル▲10▼の前方には穴▲13▼を形成した誘電体からなる絶縁遮蔽板▲14▼が設置されている。▲15▼は絶縁遮蔽板▲14▼と一定の間隔を設けて設置されたスプレーノズル▲1▼と逆電位を持った捕集電極が設置されている。▲16▼は木材からなる筺体の内壁である。本発明はこのような構成であるので、スプレー電極▲12▼にプラスを印加するとスプレーノズル▲10▼先端にはマイナスが静電誘導される。次に捕集電極▲15▼にプラスを印加すると、筺体の内壁▲16▼とコンデンサ結合されることで、捕集電極の表面にはプラスの電荷が発生し捕集電極▲15▼に全ての電気力線が集中する。これによってナノファイバーの電荷を吸引する。特に捕集電極のプラス電荷によって内壁の木材の表面にマイナス電荷が静電誘導される。これによって、マイナスの電荷雲は同極により反発することで内壁のナノファイバーの付着を防ぐことができる。この際、捕集電極に高電圧を印加することでスプレーノズル▲10▼に対してもコンデンサ結合が発生する。そのため、スプレー電極▲12▼と重畳するため注意が必要である。また、▲17▼は、誘電体で作られた電界干渉遮断板でありマルチノズルにした場合、ノズル同士による電界干渉を防ぐために設置される。
【実施例3】
【0031】
図3はエアーブローノズルの構造を示すもので、ワンタッチで組み立て可能を示すものである。▲18▼にノズルがセットされていて取り外しができるようになっている。
【0032】
なお、上記実施例では1実施例を述べただけで、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明はナノファイバーを多量に効率的に製造することができるので、フィルタや電池のセパレータや燃料電池の高分子電解質膜や電極などに好適に適用される高品質のナノファイバーを高い生産性をもって製造するのに好適に利用することができるものである。
【符号の説明】
【0034】
1・・・ノズル 2・・・エアーブロー 3・・・電極球
4・・・穴 5・・・絶縁遮蔽板 6・・・捕集電極
10・・・スプレーノズル 11・・・エアーブロー
12・・・スプレー電極 13・・・穴
14・・・絶縁遮蔽板 15・・・捕集電極
16・・・筺体の内壁 17・・・電界干渉遮断板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧発生部から高電圧を印加され且つ後端にポリマー溶剤溶液をポンプにて送給できるようにチューブを接続したノズルとノズルの後方に設置した圧縮エアーを吐き出すエアーブローとエアーブローの後方に設置した電極球を一直線に並ぶ配置に設けナノファイバーの大量生成と液滴を除きナノファイバーの品質を向上したことを特徴としたナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
ノズルの先端を針状の形状となし、サブストレートの引力をなくし、ポリマー溶液を電荷の反発力だけで針状のノズルから線状にポリマー溶剤溶液を流出するようにしたことを特徴とした請求項1のナノファイバーの製造方法。
【請求項3】
ノズル前方に穴を形成した絶縁遮蔽板を設置しナノファイバーの逆流を防止し、安定した紡糸ができるようにしたことを特徴とした請求項1のナノファイバーの製造方法。
【請求項4】
絶縁遮蔽板と一定の間隔を設けて設置されたノズルと逆電位を持った捕集電極を絶縁遮蔽板の後段に設け、紡糸されたナノファイバーを効率よくフィルタ化できるようにしたことを特徴とした請求項1のナノファイバーの製造方法。
【請求項5】
絶縁遮蔽板と絶縁遮蔽板の後段に設けた捕集電極を木材などの非金属や非樹脂板からなる筺体で覆い、筺体内面に荷電ナノファイバーが付着するのを防止しスムーズなナノファイバーの紡糸を可能にしたことを特徴とした請求項1のナノファイバーの製造方法。
【請求項6】
ノズルに熱によって溶解(膨潤)したポリマーを送ることで、溶媒にて膨潤したものと同様にナノファイバーを生成できることを可能とした静電溶融ナノファイバー製造方法。
【請求項7】
マルチノズルにおいてノズルとノズル間に誘電体からなる電界干渉遮断板を設置することでノズル間での電界干渉をなくし高密度にノズルを配置することを可能にしたナノファイバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−122176(P2012−122176A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285105(P2010−285105)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510336819)
【Fターム(参考)】