説明

ナノレベル構造組成観察用試料の作製方法

【課題】 ナノレベル構造組成観察用試料の作製方法に関し、試料にダメージを与えることなく、より容易に保護層を除去する。
【解決手段】 試料母体の表面に保護層2を形成したのち、保護層2上から加工を施すことによって試料母体を針状試料1に加工する際に、針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を検出することによって加工の終点を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノレベル構造組成観察用試料の作製方法に関するものであり、特に、ナノレベル構造組成観察用試料の表面に設ける耐加工用保護層を完全にジャスト除去するための手法に特徴のあるナノレベル構造組成観察用試料の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、HDD(ハードディスクドライブ)の小型化、大容量化が急速に進んでおり、高密度磁気記録を実現するためのヘッド及び媒体の開発が求められている。
媒体に微細に配列された記録ビットから発生する磁気的信号を再生ヘッドで高効率に電気信号に変換するために、MRヘッドの微細化・薄層化が求められている。
【0003】
この様に微細化・薄層化されたMRヘッドにおいては、スピンバルブ膜を構成する各層の層厚を精度良く形成するとともに、各層間の界面状態を良好に保つ必要がある。
例えば、膜厚分布が不均一であったり、界面が湾曲していたり、或いは、界面で構成原子が相互拡散して界面が不明確になっていれば、所望の特性が得られなくなる。
なお、この様な事情は磁気記録媒体或いは半導体装置における多層薄膜構造や不純物分布構造においても同様である。
【0004】
そこで、従来においては、界面におけるX線の反射を利用した2θ法を用いて、スピンバルブ膜等の各層の膜厚及び界面状態を評価して、結果を製造工程へフィードバックすることによって、性能の向上と製造歩留りの向上を図っていた。
【0005】
しかし、2θ法は界面でのX線の反射強度を利用する手法であるため、界面で構成原子が相互拡散して界面が不明確になっている場合には精度の高い解析が困難であり、また、予期せぬ層が介在していた場合にも、精度の高い解析が困難であった。
【0006】
そこで、この様な問題を解決する手法として、原子レベルの3次元構造を直接観察する手法として3次元アトムプローブ法が知られており(例えば、特許文献1参照)、このアトムプローブ法は針状に鋭角に形成された先端径が1μm以下の針状試料にパルス状高電界やレーザを照射し、このエネルギーで、表面の原子或いはクラスターを電解蒸発させ2次元位置検出器により試料の3次元原子レベルの構造を観察するものであるので、ここで、図8を参照して従来のアトムプローブ法を説明する。
【0007】
図8参照
図8は、上述のアトムプローブ法の原理の説明図であり、先端半径が例えば、100nm(=0.1μm)の針状試料61にパルス高電圧を印加して針状試料61の先端から構成物質62,63を電界蒸発させ、飛来する構成物質62,63の到達時間(TOF:Time of Flight)を測定器64によって測定し、到達時間から構成物質62,63のイオン種を同定するものである。
【0008】
この様なアトムプローブ法に用いる試料はFIB(収束イオンビーム)法を用いて加工していたが、ガリウムイオンビームが試料内に打ち込まれることから発生する観察部位の損傷を防ぐために、最上部にWやC等の保護層を設けてから、加工を行なっていた。
【0009】
この様な保護層の一部は加工後の試料先端部にも残ることになるが、図8からも明らかなように3次元アトムプローブ分析では針の先端から原子がイオン化するため、分析を所望する箇所が針の先端から離れているほど分析時間がかかることになる。
【0010】
即ち、残る保護層の厚さが厚くなるほど、3次元アトムプローブ分析の際にかかる分析時間は長くなり、例えば、その厚さが100nm程度になると、分析時間が2〜3時間余計に必要となる。
【0011】
この保護層は、試料加工時には必要だが、観察時には不必要であり、最適な完成試料形状としては、ちょうど保護層が無くなったところで、加工終了するのが良いことになる。 よって、試料の表面に残存する保護層の厚さは、できる限り薄くする技術が望まれていた。
【0012】
また、シリコン単結晶の透過型電子顕微鏡用試料をFIB法により作製する際に、最表面にSiO2 膜を形成し、FIB加工時の損傷を防ぎ、分析前にフッ酸を用いてSiO2 膜を除去することによって、保護層の残存の問題を解決することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−042715号公報
【特許文献2】特開2001−319954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、保護層の残存膜厚を緻密に制御することは困難であり、最適な停止条件はなかなか決まらず、保護層が多く残った状態や、見たい部分まで過剰加工してしまう場合が多々あった。
【0014】
一方、SiO2 膜を保護層として用いた場合には、除去工程においてフッ酸を使用しているため、試料内の観察もしくは分析箇所にもダメージを与える可能性が強く、使用できる材料は限られてくる。
【0015】
したがって、本発明は、試料にダメージを与えることなく、より容易に保護層を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、針状試料1の表面より、外部エネルギー或いは内部エネルギーにより原子1つ1つ或いは複数の元素からなるクラスター1集団1集団が外部空間に離脱することにより針状試料1のナノレベルの構造組成を観察するためのナノレベル構造組成観察用試料の作製方法において、試料母体の表面に保護層2を形成する工程、保護層2上から加工を施すことによって試料母体を針状試料1に加工する際に、針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を検出することによって加工の終点を検出する工程を有することを特徴とする。
【0017】
この様に、試料母体の加工工程において、針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を検出することによって加工の終点を精度良く検出することができ、針状試料1の頂部を充分尖頭状にすることができ、また、試料にダメージを与えることなしに保護層2をジャスト除去することができ、それによって、無駄な分析時間を取り除くことができる。
なお、この場合の内部エネルギーとしては、パルス状高電界よる電界蒸発が典型的なものであり、また、外部エネルギーとしては、パルスレーザ光等のパルス状電磁波が典型的なものである。
【0018】
この場合、加工の終点を検出するために各種の検出器5が使用可能であるが、例えば、測定用のレーザ光を針状試料1の先端部近傍に照射して針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を原子吸光分析法により検出しても良いし、或いは、針状試料1の先端部の近傍に設置した質量分析器により針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を検出しても良いし、さらには、針状試料1の先端部の近傍に設置した発光分析器により針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を検出しても良いものである。
【0019】
或いは、試料母体の表面に試料に対して選択的ウェット・エッチングが可能な介在層を介して保護層2を形成し、保護層2上から加工を施すことによって前記試料母体を針状試料1に加工したのち、介在層を選択的ウェット・エッチングで除去しても良く、この場合には、特別の検出器5が不要になる。
【0020】
この場合の介在層としては、有機溶剤で除去可能な高分子材料、特に、レジストが望ましく、それによって、介在層を除去する際に、針状試料1にダメージを与えることがない。
【0021】
さらに、介在層と試料母材との間に、汚染防止層、特に、100nm以下、より好適には50nm以下の汚染防止層を設けても良く、それによって、介在層を除去する際のエッチングにおける汚染等を回避することができる。
【0022】
また、試料母体の加工方法としては、レジストマスクを利用したドライエッチングを用いても良いが、より微細な加工が可能なGaイオン等の収束イオンビーム3を用いた収束イオンビーム法を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、終点検知等を利用しているので保護層のジャスト除去が可能になり、それによって、試料に加工ダメージを与えることなく、高歩留まりでアトムプローブ用試料を作製することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、試料母体の表面にWやC等の保護層を形成し、FIB法等を用いて保護層上から加工を施すことによって試料母体を針状試料に加工する際に、針状試料の頂部から遊離した保護層成分を、原子吸光分析法、質量分析器、或いは、発光分析器により検出することによって終点検知を行い、針状試料の頂部から遊離した保護層成分が検出されなくなった時点で加工を終了するものである。
【0025】
或いは、試料母体の表面に試料に対して選択的ウェット・エッチングが可能なレジスト等の介在層を介して保護層を形成し、FIB法等を用いて保護層上から加工を施すことによって試料母体を針状試料に加工したのち、介在層を有機溶剤等を用いて選択的ウェット・エッチングで除去する際に、保護層も併せて除去するものである。
【実施例1】
【0026】
ここで、図2及び図3を参照して、本発明の実施例1のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法を説明する。
図2参照
まず、シリコン基板11上にスパッタリング法を用いて厚さが、例えば、1nmのTa下地層13を介して、厚さが、例えば、1nmのCu層14と厚さが、例えば、1nmのCo層15とを交互に設けてCoCu多層膜12を形成したのち、厚さが、例えば、10μmのW保護層16を形成して試料母材10とする。
【0027】
次いで、この試料母材10をダイシング加工により矩形状に切り出りだして矩形状試料17とする。
【0028】
図3参照
次いで、この矩形状試料17に対してFIB加工を施すことによって、針状試料18を形成する。
この時、矩形状試料17の先端部の近傍に高分解能の四重極型質量分析計19を配置し、加工中に飛び出すW原子20を四重極型質量分析計19によって検出し続け、W原子20が飛び出さなくなった時点を加工の終点として加工を終了する。
なお、四重極型質量分析計19と矩形状試料17の先端部の距離は、例えば、3mmとする。
【0029】
このように、本発明の実施例1においては、質量分析計を用いて終点検知を行っているので、過剰加工することなく、保護層を確実に除去することが可能になる。
【実施例2】
【0030】
次に、図4を参照して、本発明の実施例2のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法を説明するが、終点検知手段が異なるだけ他の構成は上記の実施例1と全く同様であるので終点検知構成のみを説明する。
図4参照
図4は、本発明の実施例2のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法における終点検知構成の説明図であり、矩形状試料17の先端部の近傍に例えば、波長が401nmの紫色レーザ21からのレーザ光をハーフミラー22で分岐して一部を測定光23とするともに、他を参照光24する。
【0031】
この測定光23と参照光24を光検出器26,27で検出し、その検出出力を比較増幅器28で増幅して、その出力をレコーダーメーター29に入力することによって、加工中に飛び出すW原子20を検出する。
【0032】
この場合、W保護層16が完全に除去された時点で、測定光23がW原子20によって吸収されなくなるので、比較増幅器28の出力が最低値で一定になり、この点を加工終点と判断して加工を終了する。
【0033】
このように、本発明の実施例2においては、2光吸光分析によって終点検知を行っているので、過剰加工することなく、保護層を確実に除去することが可能になる。
また、光学的手段を用いているので、質量分析計を用いる場合に比べて測定系の配置の自由度が高まる。
【実施例3】
【0034】
次に、図5を参照して、本発明の実施例3のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法を説明するが、終点検知手段が異なるだけ他の構成は上記の実施例1と全く同様であるので終点検知構成のみを説明する。
図5参照
図5は、本発明の実施例3のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法における終点検知構成の説明図であり、矩形状試料17の先端部の近傍に高周波コイル30を配置し、高周波出力で加工中に飛び出すW原子20を励起して発光させる。
【0035】
励起発光に伴う発光線31のうち、回折格子32によってW原子20の励起発光に伴う波長が210nmのW発光光33のみ取り出して、光電子増倍管34で検出し、光電子増倍管34における出力が得られなくなって時点を加工終点と判断して加工を終了する。
【0036】
このように、本発明の実施例3においては、原子発光分析によって終点検知を行っているので、過剰加工することなく、保護層を確実に除去することが可能になる。
また、質量分析計を用いる場合に比べて装置構成を小型化することができるとともに、2光吸光分析に比べて検出感度を高めることができる。
【実施例4】
【0037】
次に、本発明の実施例4のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法を説明するが、加工方法が異なるだけで、終点検知方法は上記の実施例1と同様であるので図示は省略する。
まず、上記の実施例1と同様に形成した6インチ径の試料母材の表面にレジストを一括塗布して、円形のパターンを露光・現像してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてドライエッチングを施すことによって針状試料を作製する。
【0038】
この時、エッチングチャンバー内に高分解能の質量分析装置、例えば、扇形磁場型アナライザー質量分析計を組込み込んでおくことにより、加工中に飛び出すW原子を検出し、W原子が飛び出さなくなった時点を加工終点と判断して、加工を終了する。
【0039】
この本発明の実施例4のように、加工方法がFIB法でない場合にも、アトムプローブ用試料の加工の際に、終点検知機構を用いることによって、過剰加工することなく、保護層を確実に除去することが可能になる。
【実施例5】
【0040】
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施例5のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法を説明する。
図6参照
まず、シリコン基板41上にスパッタリング法を用いて分析層となる厚さが、例えば、10nmのRu膜42を成膜し、引き続いて、厚さが100nm以下、例えば、10nmのCo汚染防止層43を形成する。
なお、Co汚染防止層43は、後述するFIB加工後に行なうエッチング処理の際に、観察部となるRuの汚染を防ぐためのものである。
【0041】
次いで、前面にレジストを塗布し、例えば、110℃でベークすることによって厚さが、例えば、100nmのレジスト層44を形成したのち、再び、スパッタリング法を用いて厚さが、例えば、100nmのAu保護層45を形成する。
【0042】
次いで、ダイシング加工を用いて、例えば、ダイシングソーを走査させる速度を1.0mm/秒としてFIB加工用試料46を切り出した。
この場合の切り出したFIB加工用試料46は、0.3mm×3mm×3mmの基台部47の中央に0.2mm×0.02mm×0.02mmの突起部48からなる形状とした。
【0043】
図7参照
次いで、FIB加工用試料46を洗浄した後、FIB装置内に搬入し、全面に厚さが、例えば、500nmのC保護層49を形成したのち、突起部48に対してFIB加工を行って針状部50を形成する。
なお、この場合の加工した針状部50の先端の曲率半径は50nm程度である。
【0044】
次いで、FIB加工したFIB加工用試料46をアセトン中に30分浸漬してレジスト層44の除去を行うことによって観察用試料51が完成する。
【0045】
この観察用試料51を洗浄した後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、観察用試料51の針状部50はCo/Ru/Si構造となっており、Au保護層45及びC保護層49が除去されていることを確認した。
【0046】
この様に作製した観察用試料51に試料側を正電位として、DC電圧に1.5kVで周波数が1kHzのパルス状電圧を重畳した電圧を印加することで観察用試料51の表面の原子の電界蒸発化してアトムプローブ分析を行なった。
【0047】
その結果、分析開始直後から表面層のCoに由来するマススペクトルを得ることができたが、これは上述のようにレジスト層44の除去工程においてAu保護層45及びC保護層49も同時に除去しているためである。
【0048】
この様に、本発明の実施例5においては、保護層と分析層との間に有機溶剤で除去可能なレジスト層を設けているの、フッ酸を用いた場合のように、試料にエッチングダメージを与えることはない。
【0049】
また、Co汚染防止層43を設けているが、10nm程度であるので、分析時間を過剰に増大させることなく、汚染やエッチングダメージの伴わない精度の高い分析が可能になる。
【0050】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載した条件・構成に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、各実施例に記載した保護層はW、Au、或いは、Cであるが、W、Au、或いは、Cに限られるものではなく、分析対象となる試料と反応性が低い材料であれば良く、試料の材質に応じて適宜変更されるものである。
【0051】
また、上記実施例においては、電界蒸発及びイオン化に際して電圧しか印加していないものの、パルス電圧に同期させてレーザ光等のパルス電磁波を印加しても良いものであり、電磁波によるパルス電磁界により試料先端部における電界蒸発を容易に引き起こすことができ、特に、先端部のサイズが大きい場合に効果的である。
【0052】
さらには、蒸発及びイオン化に際して、電界を印加することなく、レーザ光等のパルス電磁波のみで行っても良いものである。
【0053】
また、上記の実施例1においては質量分析計として四重極型質量分析計を用いてるが、装置構成が大型化するものの、より高精度の検出を可能にするために上記実施例4と同様に扇形磁場型アナライザー質量分析計を用いても良いものである。
また、逆に、実施例4においても扇形磁場型アナライザー質量分析計の代わりに四重極型質量分析計を用いても良いものである。
【0054】
また、上記の実施例2においては、原子吸光分析法を用いているが、示した原子吸光分析法の構成は単なる一例であり、使用するレーザ光の波長や、測定系の構成は各種の変更が可能である。
【0055】
また、上記の実施例3においては、原子発光分析法を用いているが、示した原子発光分析法の構成は単なる一例であり、使用する測定系や励起機構の構成は各種の変更が可能である。
【0056】
また、上記の実施例5においては、分析層となるRu層の上にCo汚染防止膜を設けているが、このCo汚染防止膜は必ずしも必要ではなく、分析層となるRu層の上に直接レジスト層を設けても良いものである。
【0057】
また、上記の実施例5においては、Au保護層を設けた上に、C保護層を設けているが、このC保護層は必ずしも必要はなく、Au保護層のみを保護層としてFIB加工を行っても良いものである。
【0058】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) 針状試料1の表面より、外部エネルギー或いは内部エネルギーにより原子1つ1つ或いは複数の元素からなるクラスター1集団1集団が外部空間に離脱することにより前記針状試料1のナノレベルの構造組成を観察するためのナノレベル構造組成観察用試料の作製方法において、試料母体の表面に保護層2を形成する工程、前記保護層2上から加工を施すことによって前記試料母体を針状試料1に加工する際に、針状試料1の頂部から遊離した前記保護層成分4を検出することによって加工の終点を検出する工程を有することを特徴とするナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
(付記2) 上記加工の終点を検出するために、測定用のレーザ光を上記針状試料1の先端部近傍に照射して前記針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を原子吸光分析法により検出することを特徴とする付記1記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
(付記3) 上記加工の終点を検出するために、上記針状試料1の先端部の近傍に設置した質量分析器により前記針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を検出することを特徴とする付記1記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
(付記4) 上記加工の終点を検出するために、上記針状試料1の先端部の近傍に設置した発光分析器により前記針状試料1の頂部から遊離した保護層成分4を検出することを特徴とする付記1記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
(付記5) 針状試料1の表面より、外部エネルギー或いは内部エネルギーにより原子1つ1つ或いは複数の元素からなるクラスター1集団1集団が外部空間に離脱することにより前記針状試料1のナノレベルの構造組成を観察するためのナノレベル構造組成観察用試料の作製方法において、試料母体の表面に試料に対して選択的ウェット・エッチングが可能な介在層を介して保護層2を形成する工程、前記保護層2上から加工を施すことによって前記試料母体を針状試料1に加工したのち、前記介在層を選択的ウェット・エッチングで除去する際に、前記保護層2も併せて除去する工程を有することを特徴とするナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
(付記6) 上記介在層が、有機溶剤で除去可能な高分子材料からなることを特徴とする付記5記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
(付記7) 上記介在層と試料母材との間に、耐ウェット・エッチング保護層を設けたことを特徴とする付記5または6に記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
(付記8) 耐ウェット・エッチング保護層の膜厚が、100nm以下であることを特徴とする付記7記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
(付記9) 上記試料母体の加工方法が、収束イオンビーム法であることを特徴とする付記1乃至8のいずれか1に記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の活用例としては、再生ヘッドを構成するGMR素子や磁気記録媒体が典型的なものであるが、再生ヘッド等に限られるものではなく、MISFETにおけるゲート絶縁膜の界面近傍の組成構造や界面状態等が問題となる半導体素子のナノレベル構造組成の解析方法等にも適用されるものであり、さらには、一般のFIB加工によりナノレベル構造を作製する際にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1のナノレベル構造組成観察用試料の途中までの作製方法の説明図である。
【図3】本発明の実施例1のナノレベル構造組成観察用試料の図2以降の作製方法の説明図である。
【図4】本発明の実施例2のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法における終点検知構成の説明図である。
【図5】本発明の実施例3のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法における終点検知構成の説明図である。
【図6】本発明の実施例5のナノレベル構造組成観察用試料の途中までの作製方法の説明図である。
【図7】本発明の実施例5のナノレベル構造組成観察用試料の図6以降の作製方法の説明図である。
【図8】アトムプローブ法の原理の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 針状試料
2 保護層
3 収束イオンビーム
4 遊離した保護層成分
5 検出器
10 試料母材
11 シリコン基板
12 CoCu多層膜
13 Ta下地層
14 Cu層
15 Co層
16 W保護層
17 矩形状試料
18 針状試料
19 四重極型質量分析計
20 W原子
21 紫色レーザ
22 ハーフミラー
23 測定光
24 参照光
25 ミラー
26 光検出器
27 光検出器
28 比較増幅器
29 レコーダーメーター
30 高周波コイル
31 発光線
32 回折格子
33 W発光光
34 光電子増倍管
41 シリコン基板
42 Ru膜
43 Co汚染防止層
44 レジスト層
45 Au保護層
46 FIB加工用試料
47 基台部
48 突起部
49 C保護層
50 針状部
51 観察用試料
61 針状試料
62 構成物質
63 構成物質
64 測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状試料の表面より、外部エネルギー或いは内部エネルギーにより原子1つ1つ或いは複数の元素からなるクラスター1集団1集団が外部空間に離脱することにより前記針状試料のナノレベルの構造組成を観察するためのナノレベル構造組成観察用試料の作製方法において、試料母体の表面に保護層を形成する工程、前記保護層上から加工を施すことによって前記試料母体を針状試料に加工する際に、針状試料の頂部から遊離した前記保護層成分を検出することによって加工の終点を検出する工程を有することを特徴とするナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
【請求項2】
上記加工の終点を検出するために、測定用のレーザ光を上記針状試料の先端部近傍に照射して前記針状試料の頂部から遊離した保護層成分を原子吸光分析法により検出することを特徴とする請求項1記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
【請求項3】
上記加工の終点を検出するために、上記針状試料の先端部の近傍に設置した質量分析器により前記針状試料の頂部から遊離した保護層成分を検出することを特徴とする請求項1記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
【請求項4】
上記加工の終点を検出するために、上記針状試料の先端部の近傍に設置した発光分析器により前記針状試料の頂部から遊離した保護層成分を検出することを特徴とする請求項1記載のナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。
【請求項5】
針状試料の表面より、外部エネルギー或いは内部エネルギーにより原子1つ1つ或いは複数の元素からなるクラスター1集団1集団が外部空間に離脱することにより前記針状試料のナノレベルの構造組成を観察するためのナノレベル構造組成観察用試料の作製方法において、試料母体の表面に試料に対して選択的ウェット・エッチングが可能な介在層を介して保護層を形成する工程、前記保護層上から加工を施すことによって前記試料母体を針状試料に加工したのち、前記介在層を選択的ウェット・エッチングで除去する際に前記保護層も併せて除去する工程を有することを特徴とするナノレベル構造組成観察用試料の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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