説明

ナノ多孔質材料の形成方法

【課題】細孔の規則性が極めて良好であり且つ比表面積が大きいナノ多孔質材料を大量合成する方法を提供すること。
【解決手段】加水分解性を有する液体シリコン源を主原料とするナノ多孔質材料の形成方法であって、加水分解性を有する液体シリコン源、アルコール類、界面活性剤及び触媒を混合して原料混合溶液を調製する工程と、前記原料混合溶液中の加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させ、有機テンプレートとしての界面活性剤のミセルの周囲が部分加水分解縮合物により取り囲まれたゾルを得る工程と、前記ゾルの構造が保持される除去速度で液体成分を除去してゲルを得る工程と、前記ゲルを熱処理する工程とを含むことを特徴とするナノ多孔質材料の形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材や分離膜、触媒、触媒担体として使用することができる、ナノサイズの細孔を有するナノ多孔質材料の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題が世界的に大きく取り上げられるようになり、さまざまなシステムで省エネルギーの意識が高まっている。このような背景の下、ナノサイズの細孔をもつ多孔質材料を利用すれば、エネルギーを多く消費することなく、物質の吸着や分離など重要な機能を持つ省エネルギー吸脱着システムを実現できる可能性がある。さらには、多孔質材料の細孔を利用した触媒反応と組み合わせることで、現状よりも高性能な省エネルギー触媒システムを構築することも可能であり、各方面から精力的に研究が続けられている。
【0003】
多孔質材料は細孔サイズやその規則性によって大きく2つに分類できる。ひとつは、広い細孔分布をもつ多孔質材料で、シリカゲルや活性炭が知られている。これらは、数十nm〜数十μm、あるいはそれ以上の広い細孔分布をもつ物質であり、それぞれの細孔のサイズに応じた吸着量や吸着エネルギー(吸着強度)をもつ。細孔サイズを厳密に制御する必要がないことから合成も容易で低コスト化が進んでおり、市場では既に極めて大量に使用されている多孔質材料である。
【0004】
もうひとつは、狭い細孔分布をもつ多孔質材料で、ゼオライトやメソポーラス材料が挙げられる。これらは、数Åあるいは数nm〜数十nm程度の規則正しい細孔サイズをもち、サイズに応じた特性を示す。この規則正しい細孔を利用して、吸着や触媒分野でさまざまな機能が報告されており、Å領域の規則正しい細孔をもつゼオライトは、洗剤のビルダーやガス吸着などの分野で実用に供されている。一方で、最近、ゼオライトよりも大きなメソ領域の細孔サイズをもつメソポーラス材料が注目されている。中でも、シリカを主組成としたメソポーラスシリカはメソ孔のサイズを合成方法により制御でき、メソ空間を活かした吸着・分離、さらには触媒の反応場として応用が期待される。しかし、容易に想像できるように、数nmという規則正しい微細構造を制御した材料を得ることは非常に難しく、規則正しい微細構造を制御するためにプロセスが複雑となり、さらに、原料も制御された純度の高いregent gradeが必要となる。そのため、アカデミックな研究例は数多く見られるものの、工業的な大量合成は非常に困難であり、工業的レベルの量を低コストで上市するには程遠いのが現状である。
【0005】
規則正しい細孔をもつ多孔質材料の合成方法は種々報告されているが、もっともポピュラーな合成方法は、ゼオライト等で使用されているテンプレート法である。これは、所望の孔サイズに相当する界面活性剤の集合体を鋳型(テンプレート)とし、シリコンアルコキシド、水ガラス、珪酸ガラスなどを原料にして水熱合成法により無機−有機複合体を形成し、乾燥後、有機成分を除去することで多孔質材料を得る方法である。具体的には、水酸化セチルトリメチルアンモニウム溶液と、コロイダルシリカとの混合物をオートクレーブ中で攪拌しながら150℃にて48時間加熱し、得られた固体生成物をろ過して回収し水洗した後、空気中540℃で6時間焼成するプロセスが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
他の合成法としては珪酸ソーダなどのシリカのプリカーサー溶液と界面活性剤と酸を混合して加水分解反応を進めてゲル化し、これを回収した後で熱処理する方法がある。具体的には、珪酸ソーダとカチオン系界面活性剤(テンプレート)とをアルカリ性領域で溶解させた後、酸でpH7〜12に調整してシリカを析出させ、さらに90℃以上の加温下で反応させて、該シリカとカチオン系界面活性剤との複合体を生成させ、次に、この複合体中に含まれるナトリウム成分を水で洗浄し、その後に熱処理するプロセスが開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
【特許文献1】特表平5−503499号公報(特許第3403402号明細書)
【特許文献2】特開平11−49511号公報(特許第3332817号明細書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前者の水熱合成反応を用いたプロセスで得られる多孔質材料は、他の合成方法に比べて細孔均一性に優れることが知られている。しかし、このプロセスは、強アルカリ中のオートクレーブ処理を数時間〜数日かけて進める必要があり、コスト面、生産効率面で本質的に大きな問題をもつ。また、使用される強アルカリ溶液からろ過・回収・洗浄を繰り返す必要があり、大量合成には向かないプロセスである。さらに、水熱合成反応で使用する溶液にはナトリウムなどのアルカリ金属イオンが混入するため正確な組成比を決定できないばかりか、複合体の焼成時にナトリウム成分が多孔質材料の構造を破壊して多孔質材料の表面積を低下させる欠点がある。また、この多孔質材料を触媒や触媒担体として使用した場合には、残留イオンが触媒毒になる悪影響が懸念される。
【0009】
一方、後者のゾルゲル法を用いたプロセスでは、強アルカリである原料シリカに加水分解の触媒として酸を加えていき、中性付近の領域までドラスティックにpHを変化させてゲル化させるため、酸を加える際に局所的に反応の不均一を生じることや、溶媒の除去速度などの溶液内部で進行する反応形態および溶液の濃度が局所的に異なることに起因して加水分解反応が必ずしも均質に進行しないことがある。そのため、加水分解が著しく進行する部分が生じてしまって、所望の高規則性構造をもつ多孔質材料が得られないという問題が生じる。つまり、該プロセスでは、多孔質材料の細孔規則性を積極的に制御することは行われていない。さらに、該プロセスをスケールアップして大きなロットで反応を進行させようとすると、反応の進みやすい部分と進みにくい部分との差がさらに顕著なものとなり、多孔質材料の細孔規則性が大きく低下してしまう。そのため、これまでは高規則性構造をもつ多孔質材料を大量合成することができなかった。
【0010】
この溶液反応の不均一性は、数百といった大きな分子量をもつ界面活性剤の周囲近傍で原料となる液体シリコン源を反応させるテンプレート法では特に深刻な問題である。加水分解反応が制御されずにいたるところで任意に進行すると、加水分解生成物が界面活性剤の巨大分子を一様に取り巻くことができなくなる。その結果、界面活性剤がテンプレートとして機能することができなくなって、単なるシリカ重合体となってしまい、多孔質材料の細孔の規則性が著しく低下するのみならず、メソポーラス細孔をもつ多孔質構造自体が形成されないという問題が生じる。
従って、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、細孔の規則性が極めて良好であり且つ比表面積が大きいナノ多孔質材料を大量合成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らは鋭意研究、開発を遂行した結果、原料となる加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させて部分加水分解縮合物(低分子量重合体)とし、この部分加水分解縮合物が界面活性剤のミセルの周囲を取り囲むようなゾルにした後、そのゾルの構造を保持したまま急速に液体成分を除去し、界面活性剤のミセルの周囲で部分加水分解縮合物同士の重合を急速に進行させることで、均質な加水分解反応が進行して高規則性の無機−有機複合体が形成され、この無機−有機複合体を熱処理することにより界面活性剤などの有機成分が除去され、細孔の規則性が極めて良好であり且つ比表面積が大きいナノ多孔質材料を得ることができる。
【0012】
即ち、本発明に係るナノ多孔質材料の形成方法は、加水分解性を有する液体シリコン源を主原料とするナノ多孔質材料の形成方法であって、加水分解性を有する液体シリコン源、アルコール類、界面活性剤及び触媒を混合して原料混合溶液を調製する工程と、前記原料混合溶液中の加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させ、有機テンプレートとしての界面活性剤のミセルの周囲が部分加水分解縮合物により取り囲まれたゾルを得る工程と、前記ゾルの構造が保持される除去速度で液体成分を除去してゲルを得る工程と、前記ゲルを熱処理する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゾルゲル法による従来のナノ多孔質材料の製造プロセスでは得られなかった、細孔の規則性が極めて良好であり且つ比表面積が大きいナノ多孔質材料を大量に合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
実施の形態1.
本発明に係るナノ多孔質材料の形成方法は、加水分解性を有する液体シリコン源、アルコール類、界面活性剤及び触媒を混合して原料混合溶液を調製する工程(原料混合溶液調製工程)と、前記原料混合溶液中の加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させ、有機テンプレートとしての界面活性剤のミセルの周囲が部分加水分解縮合物により取り囲まれたゾルを得る工程(ゾル調製工程)と、前記ゾルの構造が保持される除去速度で液体成分を除去してゲルを得る工程(液体成分除去工程)と、前記ゲルを熱処理する工程(熱処理工程)と、を含むことを特徴とするものである。
本発明のナノ多孔質材料の形成方法は、ミクロスケールで加水分解を制御することで反応を均質に進行させており、高規則性をもつメソポーラス構造を得るための本質的な方法であると言える。そのため、合成装置や合成スケールには依存せずに高規則性の無機−有機複合体を得ることができ、この無機−有機複合体から界面活性剤などの有機成分を除去することで、細孔の規則性が極めて良好であり且つ比表面積が大きいナノ多孔質材料を得ることができる。即ち、低コストで簡便な合成装置や合成手順を使用できることになり、優れた特性をもつメソポーラスシリカを低コストで大量に合成することが可能となる。
【0015】
(原料混合溶液調製工程)
この工程では、加水分解性を有する液体シリコン源、アルコール類、界面活性剤及び触媒を混合して原料混合溶液を調製する。原料の混合を行う順序は特に限定されるものではないが、まず、アルコール類及び界面活性剤を混合しておき、そこに、加水分解性を有する液体シリコン源及びアルコール類が混合された溶液を添加し、さらに触媒を添加することが好ましい。また、加水分解性を有する液体シリコン源とともに、シリコンのネットワークに取り込まれる金属を含む化合物を原料混合溶液に添加してもよい。通常、この原料混合溶液には、加水分解性を有する液体シリコン源1モルに対して、2モル以上、好ましくは3モル以上、更に好ましくは4モル以上の大過剰の水が含まれる。また、ここで用いる成分の混合比は特に限定されるものではないが、界面活性剤とアルコール類とのモル比は、十分な均質溶液が得られる観点から、1:2〜1:10であることが好ましく、1:3〜1:7であることが更に好ましい。シリコンのネットワークに取り込まれる金属を含む化合物を使用する場合、加水分解性を有する液体シリコン源とシリコンのネットワークに取り込まれる金属を含む化合物とのモル比は、メソポーラス構造の規則性が維持される観点から、99.9:0.1〜80:20であることが好ましく、99.5:0.5〜90:10であることが更に好ましい。また、界面活性剤と加水分解性を有する液体シリコン源とのモル比は、界面活性剤が有機テンプレートとして十分に機能するという観点から、1:10〜1:1であることが好ましく、1:2〜1:6であることが更に好ましい。
【0016】
加水分解性を有する液体シリコン源としては、テトラエチルオルソシリケートやテトラメチルオルソシリケート、テトラメチルアンモニウムシリケート、クロロシラン、シラザンなどのアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物又はメタケイ酸ナトリウム水溶液を使用することが可能であるが、酸触媒を用いることや多孔質材料の耐性の観点から、アルカリを発生する成分を含む原料は避けた方が好ましい。
【0017】
シリコンのネットワークに取り込まれる金属を含む化合物としては、その金属のアルコキシド及びβジケトン誘導体、水溶性の無機金属塩などが適当であり、具体的には、例えば、金属がアルミニウムの場合には、トリメトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウムなどアルコキシド、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム四水和物が挙げられ、金属が遷移金属(例えば、鉄、ジルコニウム)の場合には、塩化鉄、硝酸鉄、アイアンビスアセチルアセトナート、アイアントリスジプバロイルメタナート、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、硝酸ジルコニル、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラキスジピバロイルメタマートなどが挙げられる。
【0018】
アルコール類は、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール又はこれらの混合物であることが好ましい。これら以外のアルコールは沸点が高いので、ゾルから液体成分を除去し難く、所望の液体成分除去速度が得られない場合があるためである。
【0019】
界面活性剤は、原料混合溶液中で棒状ミセル構造を形成してテンプレートとなるものであれば特に限定されないが、アルキルアンモニウムハロゲン化合物が好ましい。アルキルアンモニウムハロゲン化合物の具体例としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、セチルピリジニウムなどが挙げられる。
【0020】
触媒は、加水分解反応を促進するものであれば特に限定されないが、酸触媒であることが好ましい。酸触媒の具体例としては、塩酸、硝酸などの鉱酸、有機酸が挙げられる。シリコンアルコキシドを液体シリコン源として用いる場合、一般に酸性溶液中の加水分解反応は親電子的に進行すると言われており、部分加水分解された部分加水分解物間で縮合は生じ、弱く架橋した低分子量重合体を生じるため、本目的に適当なゾルを得ることができる。これに対し、アルカリ性溶液中の場合には親核置換反応となり、シリコン原子は水酸基の攻撃を受けやすくなって、密な粒子を生成する傾向があるため、有機テンプレートの周囲にゾルを形成するのにあまり適当ではないと考えられる。以上のことから、触媒としては酸触媒を用いることが好ましく、原料混合溶液のpHは5以下であることが好ましい。
【0021】
(ゾル調製工程)
この工程では、上記原料混合溶液調製工程で得られた原料混合溶液中の加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させ、有機テンプレートとしての界面活性剤のミセルの周囲が部分加水分解縮合物により取り囲まれたゾルを調製する。
このような界面活性剤のミセルの周囲が部分加水分解縮合物により取り囲まれたゾルを得るには、原料混合溶液中の加水分解・縮合反応を制御して、部分加水分解縮合物(低分子量重合体)を調製することが重要である。全く加水分解が進まない状態では液体シリコン源は互いに縮合せず、界面活性剤のミセルの周囲でゾルを形成しない。一方、大きな重合体まで加水分解・縮合が進行すると、加水分解縮合物が界面活性剤のミセルをうまく取り囲むことができなくなって均質なメソポーラス構造が得られなくなる。加水分解・縮合反応は、原料成分と触媒と水との量比、pH、攪拌時間でコントロールすることができる。また、この加水分解・縮合反応は、通常、25℃、大気圧の条件下で進行させるが、反応系内を減圧することによってコントロールすることも可能である。
【0022】
上記のようなゾルの状態を判定する最も簡便な手法は、原料混合溶液の目視による観察である。加水分解性を有する液体シリコン源の加水分解・縮合反応が進んで大きな重合体が形成されると、原料混合溶液が白濁するので、これを一つの指標とすることができる。
また、ゾルの状態は、ゾルの比重や粘度でも判定することができる。ゾルの比重により判定する場合、ゾルの比重が0.90〜1.10になるまで、原料混合溶液中の加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させればよい。ゾルの比重が0.90未満であると加水分解・縮合が十分に進行しておらず、界面活性剤のミセルの周囲にメソポーラス構造を形成できるゾルが形成されず、一方、1.10を超えると液体シリコン源が界面活性剤のミセルを取り囲むのには大き過ぎるサイズまで重合してしまい、均質なメソポーラス構造が得られない。なお、ここでのゾルの比重は、フローティング式比重計(19本組標準比重計<JIS B 7525>、横田計器製作所製)により25℃で測定された値である。
また、ゾルの粘度により判定する場合、ゾルの粘度が10〜80mPa・sになるまで、原料混合溶液中の加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させればよい。ゾルの粘度が、10mPa・s未満であると加水分解が十分に進行しておらず、界面活性剤のミセルの周囲にメソポーラス構造を形成できるゾルが形成されず、一方、80mPa・sを超えると液体シリコン源が界面活性剤のミセルを取り囲むのには大き過ぎるサイズまで重合してしまい、均質なメソポーラス構造が得られない。なお、ここでのゾルの粘度は、B型粘度計(東京計器株式会社製、ローターNo.2)により25℃、30rpmで測定された値である。
【0023】
(液体成分除去工程)
この工程では、上記ゾル調製工程で得られたゾルから液体成分を除去してゲルを調製する。この液体成分の除去は、界面活性剤のミセルの周囲が部分加水分解縮合物(低分子量重合体)により取り囲まれたゾル構造が保持された状態で行い、界面活性剤のミセルの周囲で部分加水分解縮合物同士の重合を急速に進行させることが重要である。このようにすることで、均質な加水分解反応が進行して高規則性のゲル(無機−有機複合体)が形成される。
有機テンプレートとしての界面活性剤のミセルの周囲が部分加水分解縮合物により取り囲まれたゾルの構造を保持するためには、液体成分の除去速度をエタノール換算で0.001〜0.5ml/secとすることが好ましく、0.01〜0.1ml/secとすることが更に好ましい。液体成分の除去速度が0.001ml/sec未満であると、残存する液体成分によりゾルの構造が崩れて界面活性剤の位置とは無関係にいたるところで加水分解・縮合反応が進行して、良好なメソポーラス構造が得られないことがある。一方、液体成分の除去速度が0.5ml/secを超えると除去速度自体が十分にコントロールできなくなり実質的な液体の除去が場所によって不均一になることがある。さらには、液体成分の気化熱に相当する熱量が一気にゾルから奪われてしまい、局所的にゾルの温度が低下して、ゾルの状態を保持することができなくなってしまうことがある。
【0024】
上記のような液体成分の除去速度を達成する場合、通常のバルク液体からの乾燥方法では難しい。したがって、現実的な方法としては、大きな液体除去速度が得られる、薄膜乾燥法、噴霧乾燥法、気流乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法、噴出流乾燥法、回転乾燥法、円盤乾燥法、オイルドロップ乾燥法又はこれらの組合せを採用することが望ましい。
薄膜乾燥法は、ゾルを薄い膜状にしてゾル単位重量あたりの乾燥面積を大きくすることで、所望の液体成分の除去速度を達成することができる。この薄膜乾燥法に用いられる薄膜乾燥装置の一例を図1に示す。図1において、薄膜乾燥装置は、調製されたゾル12をドクターブレード11のような薄膜状に広げる機構と、シート反物13を一定の速度で動かすことができる剥離シート14を有するシート送り機構15と、シート下部にあるヒーター16とを備えており、ドクターブレード11で所定の膜厚に広げられたゾル12は、ヒーター16によって急激に液体成分が除去され、所望のゲル17を得ることができるように構成されている。
噴霧乾燥法は、二流体ノズルなど霧化することができるノズルでゾルを微小な液滴とし、これを加熱した空気が流れている空間に導入することで、所望の液体成分の除去速度を達成することができる。この噴霧乾燥法に用いられる噴霧乾燥装置の一例を図2に示す。図2において、噴霧乾燥装置は、ゾル貯留タンク22、送液ポンプ23及びアトマイザー24から成るゾル導入機構と、熱風フィルタ25、加熱ヒーター26及び送風機27から成る熱風導入機構と、微粒液滴化されたゾルを乾燥するためのチャンバー21と、サイクロン29、ゲル回収容器30、バグフィルター31及び排風機32から成る排気機構とを備えている。この噴霧乾燥装置では、ゾル貯留タンク22に貯留されるゾル12が、送液ポンプ23により一定の量でアトマイザー24に送液され、ここで微粒液滴化されてチャンバー21に導かれる。一方、送風機27から導入された吸気28は加熱ヒーター26で所定の温度に温められ、熱風フィルタ25を介してチャンバー21に熱風として導入され、ゾルの微粒液滴はチャンバー21内を浮遊する間に乾燥されてサイクロン29により捕集され、ゲル17としてゲル回収容器30で回収されるように構成されている。また、蒸発した液体成分を含む排ガスはバグフィルター31を通過した後、排風機32から排気33される。
回転乾燥法は、加熱された回転式ドラム上にゲルが薄く広がって乾燥することで、所望の液体成分の除去速度を達成することができる。この回転乾燥法に用いられる回転乾燥装置の一例を図3に示す。図3において、回転乾燥装置は、ヒーター付き回転ドラム41と、ドラム表面にゾルを供給するためのゾルディップ槽46と、ゲルを掻きとるためのエクレバーブレード45と、これらヒーター付き回転ドラム41、ゾルディップ槽46及びエクレバーブレード45を覆う排気フード43とを備えている。この回転乾燥装置では、ゾルディップ槽46に貯留されるゾル12とヒーター付き回転ドラム41とが接触すると、ドラム表面に広がったゾル12がドラム回転中に乾燥して膜状ゲル44となり、エクレバーブレード45により掻きとられることで、ゲル17を回収することができるように構成されている。また、蒸発した液体成分は排気フード43の上部から排気42される。
【0025】
(熱処理工程)
この工程では、上記液体成分除去工程で得られたゲル(無機−有機複合体)を熱処理することにより界面活性剤などの有機成分を除去してナノ多孔質材料を得る。ゲルの熱処理は、好ましくは500〜700℃、更に好ましくは550〜650℃の温度で行われる。熱処理温度が500℃未満であると界面活性剤などの有機成分が十分に除去されず、細孔が不均質なものとなることがあり、一方、700℃を超えるとテンプレートにより形成された規則正しい配列が高温のために乱れ、細孔サイズが不均一になってしまうことがある。また、熱処理時間は、通常、2〜10時間である。
【0026】
上記工程を経て得られるナノ多孔質材料は、孔径1〜20nmの細孔が規則正しく配列されており、BET法による比表面積が500〜1500m/gであるという特徴を有している。このような特徴を有するナノ多孔質材料は、吸着材、分離膜、触媒及び触媒担体として極めて有用である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例により本発明の詳細を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
棒状ミセル構造を形成する界面活性剤であるトリメチルアンモニウムクロリドと、エタノールとがモル比で1:5となるように混合して溶液Aを調製した。テトラエチルオルソシリケートとテトラエトキシジルコニウムとがモル比で99:1となるようにエタノールに添加、混合して溶液Bを調製した。次に、テトラエチルオルソシリケートと界面活性剤とのモル比が1.0:0.20となるように溶液Aと溶液Bとを混合し、激しく攪拌した。続いて、この溶液に、テトラエチルオルソシリケート及びテトラエトキシジルコニウムの合計量に対して4倍モルの水が含まれる塩酸水溶液を加えて、原料混合溶液を調製した。混合直後の原料混合溶液のpHは1.5であった。次いで、この原料混合溶液を60分間、25℃のウォーターバス中で攪拌して加水分解・縮合反応を進行させ無色透明のゾルを得た。得られたゾルの粘度は41mPa・sであり、ゾルの比重は1.04であった。
【0028】
次に、図1に示したものと同じ構成の薄膜乾燥装置を使用し、150℃に加熱されたヒーターシート上にゾルを約50μmの厚さに広げ、そのまま大気中で0.5時間乾燥させた。薄膜化されたゾルはゾルの均質状態を保ったまま直ちに乾燥し、ゲル化した薄膜小片となって回収された。この薄膜乾燥法による乾燥において、ゾルからの液体成分の除去速度は、エタノール換算で0.1ml/secであった。次に、このゲル小片をアルミナ製の耐熱容器に移し替え、大気中、600℃で5時間熱処理して実施例1のナノ多孔質材料を得た。
【0029】
図4は、実施例1のナノ多孔質材料の窒素吸着等温線(白い丸印51)である。図4において、縦軸は窒素吸着量[ml(STP)/g]を、横軸は相対湿度[P/P0]を表している。図4より、吸着材1gあたり410ml(STP)の飽和窒素吸着が可能であることがわかる。また、BET法による比表面積は1230m/gであった。図5は、実施例1のナノ多孔質材料のX線回折パターン52である。メソポーラス構造の規則性を示す低角側に鋭い回折ピークが確認され、d100が3.12nmに相当する良好な細孔均一性をもつナノ多孔質材料が得られていることが確認できた。
【0030】
<実施例2>
界面活性剤としてのn−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドと、メタノールとがモル比で1:3となるように混合して溶液Aを調製した。テトラメチルオルソシリケートを所定量のエタノールに添加、混合して溶液Bを調製した。次に、テトラメチルオルソシリケートと界面活性剤とのモル比が1.0:0.25となるように溶液Aと溶液Bとを混合し、激しく攪拌した。続いて、この溶液に、テトラメチルオルソシリケートに対して8倍モルの水が含まれる塩酸水溶液を加えて、原料混合溶液を調製した。混合直後の原料混合溶液のpHは3.2であった。次いで、この原料混合溶液を60hPaの減圧下で、90分間、25℃のウォーターバス中で攪拌して加水分解・縮合反応を進行させ無色透明のゾルを得た。得られたゾルの粘度は25mPa・sであり、ゾルの比重は1.01であった。
【0031】
次に、図2に示したものと同じ構成の噴霧乾燥装置を使用し、ゾルの噴霧圧力を0.4MPa、噴霧乾燥器の入口温度140℃、出口温度85℃の条件でゾルを乾燥させた。乾燥されたゲルはサイクロンで捕集され、白色粒子状ゲルを得た。得られた粒子の二次電子像を図6に示す。図6から分かるように、粒子径に分布はあるものの、平均粒子サイズは7μm程度であり、もともと含まれていた溶媒量比率から逆算すると、噴霧時の液滴は10.5μm程度である。また、この噴霧乾燥装置における乾燥条件においては、二流体ノズルから噴霧される液滴サイズ(得られた粒子サイズ)と液滴に含まれる液体成分の量との関係から、ゾルからの液体成分の除去速度は、エタノール換算で0.005ml/sec相当であった。次に、この粒子状ゲルをアルミナ製の耐熱容器に移し替え、大気中、550℃で3時間熱処理して実施例2のナノ多孔質材料を得た。
【0032】
図7は、実施例2のナノ多孔質材料の窒素吸着等温線(白い丸印53)である。図7において、縦軸は窒素吸着量[ml(STP)/g]を、横軸は相対湿度[P/P0]を表している。図7より、吸着材1gあたり520ml(STP)の飽和窒素吸着が可能であることがわかる。また、BET法による比表面積は1368m/gであった。図8は、実施例2のナノ多孔質材料のX線回折パターン54である。メソポーラス構造の規則性を示す低角側に鋭い回折ピークが確認され、d100が2.94nmに相当する良好な細孔均一性をもつナノ多孔質材料が得られていることが確認できた。
【0033】
<実施例3>
実施例2と同様の操作を繰り返して無色透明のゾルを得た。図3に示したものと同じ構成の回転乾燥装置(ドラムドライヤー)を使用し、120℃に加熱されたドラムを120rphの速度で回転させることによりゾルディップ槽に貯留されたゾルを順次乾燥させ、膜状の乾燥ゲルを得た。この回転乾燥装置による乾燥においては、ドラムに広げられた膜厚と乾燥されドラムから回収されるゲル重量の関係から、ゾルからの液体成分の除去速度は、エタノール換算で0.05ml/sec相当であった。次に、この粒子状ゲルをアルミナ製の耐熱容器に移し替え、大気中、600℃で4時間加熱処理して実施例3のナノ多孔質材料を得た。
【0034】
得られたナノ多孔質材料は吸着材1gあたり、480ml(STP)の飽和窒素吸着が可能であることがわかった。また、BET法による比表面積は1340m/gであり、十分な窒素吸着量と比表面積をもつ多孔質メソポーラス構造が得られていることが確認できた。
【0035】
<実施例4>
実施例2と同様の操作を繰り返して無色透明のゾルを得た。遠心式真空乾燥装置を使用し、回転ローター上で40hPaの減圧下でゾルを乾燥させた。遠心式のため、ゾルは円錐形のローター上で0.1mm程度の厚みの液膜となり、膜状の乾燥ゲルが得られた。この遠心式真空乾燥装置による乾燥においては、ドラムに広げられた膜厚と乾燥されドラムから回収されるゲル重量の関係から、ゾルからの液体成分の除去速度は、エタノール換算で0.3ml/sec相当であった。次に、この粒子状ゲルをアルミナ製の耐熱容器に移し替え、大気中、650℃で2時間加熱処理して実施例4のナノ多孔質材料を得た。
【0036】
得られたナノ多孔質材料は吸着材1gあたり、670ml(STP)の飽和窒素吸着が可能であることがわかった。また、BET法による比表面積は1290m/gであり、十分な窒素吸着量と比表面積をもつ多孔質メソポーラス構造が得られていることが確認できた。
【0037】
<比較例1>
加水分解・縮合反応をほとんど進行させず、粘度が5mPa・s、比重が0.88である無色透明のゾルを使用すること以外は、実施例1と同様の方法にて乾燥ゲルを得た。得られた乾燥ゲルは加水分解・縮合反応が不十分であったため、粘度の高い透明なゲル片となって回収された。さらにこれを熱処理して界面活性剤を除去し、比較例1のナノ多孔質材料を得た。
【0038】
比較例1のナノ多孔質材料の窒素等温線55を図4に示した。比較例1のナノ多孔質材料は、吸着材1gあたり350ml(STP)程度の飽和吸着量しか得られず、実施例1のナノ多孔質材料の8割程度の吸着性能であった。また、BET法による比表面積は690m/gであった。また、比較例1のナノ多孔質材料のX線回折パターン56を図5に示した。図5より、比較例1のナノ多孔質材料では、メソポーラス構造の規則性を示す低角側にはブロードとなったピークしか得られず、さまざまなサイズの細孔をもつシリカゲル状になっていると考えられた。
【0039】
<比較例2>
加水分解・縮合反応を十分に進ませ、粘度が120mPa・s、比重が1.23であるやや白濁したゾルを使用すること以外は、実施例1と同様の方法にて乾燥ゲルを得た。得られた乾燥ゲルは加水分解・縮合反応が進み過ぎたため、透明なゲル塊となって回収された。さらにこれを熱処理して界面活性剤を除去し、比較例2のナノ多孔質材料を得た。
比較例2のナノ多孔質材料の窒素等温線57を図7に示した。比較例2のナノ多孔質材料では、吸着材1gあたり310ml(STP)程度の飽和吸着量しか得られず、実施例1のナノ多孔質材料の半分程度の吸着性能であった。また、BET法による比表面積は460m/gであった。また、比較例2のナノ多孔質材料のX線回折パターン58を図8に示した。図8より、比較例2のナノ多孔質材料のX線回折パターンはブロードな形状であり、メソポーラス構造が均質に形成されていないことがわかった。
【0040】
<比較例3>
薄膜乾燥に使用したヒーター温度を300℃にすること以外は、実施例1と同様の方法にて乾燥ゲルを得た。高温で一気に乾燥させたため、液体成分は内部より沸騰するような形で乾燥し、液体成分が沸騰した跡痕である無数の細かい穴をもつ(ゾルの構造が保持されていない)粒子状ゲルとなって回収された。このときのゾルからの液体成分の除去速度は、エタノール換算で3ml/sec相当であった。さらにこれを熱処理して界面活性剤を除去し、比較例3のナノ多孔質材料を得た。
【0041】
比較例3で得られたナノ多孔質材料についても同様の窒素吸着等温線測定を行ったところ、吸着材1gあたり290ml(STP)程度の飽和窒素吸着量しか得られておらず、BET法による比表面積は600m/gであった。また、X線回折パターンもブロードな形状であり、均質なメソポーラス構造が形成されていないことがわかった。
【0042】
<比較例4>
薄膜乾燥装置を使用せずに、ゾルをそのまま室温で24時間放置してゲルを得たこと以外は、実施例1と同様の方法にて乾燥ゲルを得た。加熱なしで放置して得られたゲルは放置した容器の形状のままゲル化し、透明なゲル塊として回収された。放置した前後での重量変化から、ゾルからの液体成分の除去速度は、エタノール換算で0.000001ml/sec相当であった。このゲルを粉砕し、さらに熱処理して界面活性剤を除去し、比較例4のナノ多孔質材料を得た。
【0043】
比較例で得られたナノ多孔質材料は、吸着材1gあたり、190ml(STP)程度の飽和窒素吸着量しか得られておらず、BET法による比表面積は510m/gであった。また、X線回折パターンもブロードな形状であり、均質なメソポーラス構造が形成されていないことがわかった。
【0044】
<比較例5>
噴霧乾燥装置における温度設定を入口温度100℃、出口温度50℃にしたこと以外は、実施例2と同様の方法にて乾燥ゲルを得た。乾燥温度が低いために噴霧された液滴から十分な速度で液体成分が除去されず、半乾燥の粘り気のある粒子状ゲルが回収された。このとき乾燥条件から、ゾルからの液体成分の除去速度は、エタノール換算で0.0002ml/sec相当であった。この粒子状ゲルを熱処理して界面活性剤を除去し、ナノ多孔質材料を得た。
【0045】
比較例5で得られたナノ多孔質材料についても同様の窒素吸着等温線測定を行ったところ、吸着材1gあたり380ml(STP)程度の飽和窒素吸着量しか得られなかった。また、X線回折パターンもブロードな形状であり、均質なメソポーラス構造が形成されていないことがわかった。
【0046】
<比較例6>
回転乾燥装置におけるドラム温度を250℃にしたこと以外は、実施例3と同様の方法にて乾燥ゲルを得た。温度が高いためにドラムに付着した瞬間に乾燥し、半乾燥の粘り気のある(ゾルの構造が保持されていない)粒子状ゲルが回収された。この粒子状ゲルを熱処理して界面活性剤を除去し、比較例6のナノ多孔質材料を得た。
【0047】
比較例6で得られたナノ多孔質材料についても同様の窒素吸着等温線測定を行ったところ、吸着材1gあたり300ml(STP)程度の飽和窒素吸着量しか得られなかった。また、X線回折パターンもブロードな形状であり、均質なメソポーラス構造が形成されていないことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】薄膜乾燥法に用いられる薄膜乾燥装置の一例である。
【図2】噴霧乾燥法に用いられる噴霧乾燥装置の一例である。
【図3】回転乾燥法に用いられる回転乾燥装置の一例である。
【図4】実施例1及び比較例1のナノ多孔質材料の窒素吸着等温線である。
【図5】実施例1及び比較例1のナノ多孔質材料のX線回折パターンである。
【図6】実施例2のナノ多孔質材料の二次電子像である。
【図7】実施例2及び比較例2のナノ多孔質材料の窒素吸着等温線である。
【図8】実施例2及び比較例2のナノ多孔質材料のX線回折パターンである。
【符号の説明】
【0049】
11 ドクターブレード、12 ゾル、13 シート反物、14 剥離シート、15 シート送り機構、16 ヒーター、17 ゲル、21 チャンバー、22 ゾル貯留タンク、23 送液ポンプ、24 アトマイザー、25 熱風フィルタ、26 加熱ヒーター、27 送風機、28 吸気、29 サイクロン、30 ゲル回収容器、31 バグフィルター、32 排風機、33 排気、41 ヒーター付き回転ドラム、42 排気、43 排気フード、44 膜状ゲル、45 エクレバーブレード、46 ゾルディップ槽、51 実施例1のナノ多孔質材料の窒素吸着等温線、52 実施例1のナノ多孔質材料のX線回折パターン、53 実施例2のナノ多孔質材料の窒素吸着等温線、54 実施例2のナノ多孔質材料のX線回折パターン、55 比較例1のナノ多孔質材料の窒素吸着等温線、56 比較例1のナノ多孔質材料のX線回折パターン、57 比較例2のナノ多孔質材料の窒素吸着等温線、58 比較例2のナノ多孔質材料のX線回折パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性を有する液体シリコン源を主原料とするナノ多孔質材料の形成方法であって、
加水分解性を有する液体シリコン源、アルコール類、界面活性剤及び触媒を混合して原料混合溶液を調製する工程と、
前記原料混合溶液中の加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させ、有機テンプレートとしての界面活性剤のミセルの周囲が部分加水分解縮合物により取り囲まれたゾルを得る工程と、
前記ゾルの構造が保持される除去速度で液体成分を除去してゲルを得る工程と、
前記ゲルを熱処理する工程と
を含むことを特徴とするナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項2】
前記ゾルの比重が0.90〜1.05になるまで、前記加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させることを特徴とする請求項1に記載のナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項3】
前記ゾルの粘度が10〜80mPa・sになるまで、前記加水分解性を有する液体シリコン源を部分的に加水分解・縮合させることを特徴とする請求項1に記載のナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項4】
前記除去速度は、エタノール換算で0.001〜0.5ml/secであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項5】
前記液体成分の除去は、薄膜乾燥法、噴霧乾燥法、気流乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法、噴出流乾燥法、回転乾燥法、円盤乾燥法、オイルドロップ乾燥法又はこれらの組み合わせにより行われることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項6】
前記加水分解性を有する液体シリコン源は、有機ケイ素化合物又はメタケイ酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項7】
前記界面活性剤は、アルキルアンモニウムハロゲン化合物であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項8】
前記アルコール類は、メタノール、エタノール、プロパノール又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項9】
前記触媒は酸触媒であり且つ前記原料混合溶液のpHは5以下であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のナノ多孔質材料の形成方法。
【請求項10】
前記熱処理は500〜700℃の温度で行われることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載のナノ多孔質材料の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−44825(P2008−44825A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223251(P2006−223251)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】