説明

ナノ粒子の製造方法、それを用いた発光粉体の製造方法および発光粉体の製造方法によって製造された発光粉体を用いた発光素子

【課題】発光強度を強くできるナノ粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】所望の直径を有するボール5と、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを略1:1の比で容器4内に入れる(ステップS1)。そして、25gのメタノール(液体)を容器4内に入れる(ステップS2)。そうすると、容器4を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転させる(ステップS3)。そして、所望の時間が経過すると、容器4の自転および公転を停止する(ステップS4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナノ粒子の製造方法、それを用いた発光粉体の製造方法および発光粉体の製造方法によって製造された発光粉体を用いた発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遊星型ボールミルを用いたナノ粒子の製造方法が知られている(非特許文献1)。従来のナノ粒子の製造方法は、ボールと出発材料とを容器に入れ、容器を数百rpmの回転速度で自転および公転させてナノ粒子を製造する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Maller Ray, Samata Sarkar, NilRatan Bandyopadhyay, Syed Minhaz Hossain, and Ashit Kumar Pramanick, “Siliconand silicon oxide core-shell nanoparticles: Structural and photoluminescencecharacteristics,” JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 105, 074301 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の製造方法で製造されたナノ粒子は、発光強度が低いという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、発光強度を強くできるナノ粒子の製造方法を提供することである。
【0006】
また、この発明の別の目的は、発光強度を強くできるナノ粒子の製造方法を用いた発光粉体の製造方法を提供することである。
【0007】
更に、この発明の別の目的は、発光粉体の製造方法によって製造された発光粉体を用いた発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の実施の形態によれば、ナノ粒子の製造方法は、球形状からなり、かつ、所望の直径を有するボールと、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを略1:1の比で容器内に入れる第1の工程と、メタノールを容器内に入れる第2の工程と、容器を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転させる第3の工程と、所望の時間が経過すると、自転および公転を停止する第4の工程とを備える。
【0009】
好ましくは、第1の工程において、第1のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、第1の値からなる直径を有するボールが容器内に設定され、第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、第1の値よりも小さい第2の値からなる直径を有するボールが容器内に設定される。
【0010】
好ましくは、第4の工程において、所望の時間は、第1のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、第1の時間に設定され、第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、第1の時間よりも長い第2の時間に設定される。
【0011】
また、この発明の実施の形態によれば、発光粉体の製造方法は、酸化ジルコニウムまたはシリコンからなるナノ粒子と導電性高分子とを含む発光粉体の製造方法であって、球形状からなり、かつ、所望の直径を有するボールと、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを略1:1の比で容器内に入れる第1の工程と、導電性高分子を容器内に入れる第2の工程と、メタノールを容器内に入れる第3の工程と、容器を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転させる第4の工程と、所望の時間が経過すると、自転および公転を停止する第5の工程と、容器内の発光粉体とボールとを分離する第6の工程と、分離された発光粉体を所望の形状に成形する第7の工程とを備える。
【0012】
好ましくは、第1の工程において、第1のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、第1の値からなる直径を有するボールが容器内に設定され、第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、第1の値よりも小さい第2の値からなる直径を有するボールが容器内に設定される。
【0013】
好ましくは、第5の工程において、所望の時間は、第1のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、第1の時間に設定され、第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、第1の時間よりも長い第2の時間に設定される。
【0014】
更に、この発明の実施の形態によれば、発光素子は、発光粉体と、第1および第2の電極とを備える。発光粉体は、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造され、かつ、所望の形状に成形される。第1の電極は、発光粉体の一方側の表面に形成され、第2の電極は、発光粉体の他方側の表面に形成される。
【発明の効果】
【0015】
この発明の実施の形態によれば、ナノ粒子は、ボールと、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコン粉体と、メタノールとが入れられた容器を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転させて製造される。その結果、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコン粉体は、強い衝撃力によって粉砕され、欠陥が多いナノ粒子が製造される。
【0016】
従って、ナノ粒子の発光強度を強くできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態における遊星型ボールミルの斜視図である。
【図2】図1に示す回転盤および容器の平面図である。
【図3】この発明の実施の形態によるナノ粒子の製造方法を示す工程図である。
【図4】フォトルミネッセンスの発光強度と波長との関係を示す図である。
【図5】フォトルミネッセンスの発光強度と波長との他の関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態による発光粉体の断面図である。
【図7】この発明の実施の形態による発光素子の断面図である。
【図8】図6に示す発光粉体の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態における遊星型ボールミルの斜視図である。図1を参照して、遊星型ボールミル10は、本体部1と、制御部2と、回転盤3と、容器4とを備える。なお、遊星型ボールミル10は、フリッチュ社製のpremium line 7である。
【0020】
制御部2は、本体部1の一方端側において本体部1上に配置される。そして、制御部2は、タッチパネル方式の操作パネル21を有する。
【0021】
回転盤3は、本体部1の空間11内に配置される。そして、回転盤3は、例えば、時計回りに所望の回転速度で回転する。
【0022】
容器4は、回転盤3上に設置される。また、容器4は、回転盤3に着脱可能になっている。そして、容器4は、例えば、半時計回りに所望の回転速度で回転する。
【0023】
容器4は、ナノ粒子を製造するための原料と、原料を粉砕するためのボールと、溶媒とを入れるための容器である。
【0024】
図1においては、図示されていないが、回転盤3および容器4を回転させるためのモータが回転盤3の下側の本体部1内に内蔵されている。
【0025】
操作パネル21は、遊星型ボールミル10の操作者から回転盤3の回転速度(=公転の回転速度Vrev)と容器4の回転速度(=自転の回転速度Vrot)とを受け付ける。そして、操作パネル21は、その受け付けた回転速度Vrev,Vrotをモータへ出力する。
【0026】
そうすると、モータは、回転盤3および容器4をそれぞれ回転速度Vrev,Vrotで回転させる。
【0027】
そして、所望の時間が経過すると、操作パネル21は、回転盤3および容器4の回転を停止させるための停止指示を操作者から受け付けると、モータを停止させる。
【0028】
このように、回転盤3および容器4がそれぞれ回転速度Vrev,Vrotで回転すると、容器4は、回転速度Vrevで公転し、回転速度Vrotで自転する。そして、公転の方向は、自転の方向と逆方向である。
【0029】
図2は、図1に示す回転盤3および容器4の平面図である。図2を参照して、回転盤3は、時計回りに回転速度Vrevで回転し、容器4は、半時計回りに回転速度Vrotで回転する。
【0030】
そうすると、遠心力Fct1が回転盤3の回転(=公転)によって発生し、遠心力Fct2が容器4の回転(=自転)によって発生する。そして、遠心力Fct1と遠心力Fct2とが複合した重力Fが容器4内で発生する。
【0031】
その結果、容器4内に入れられた原料(図示せず)は、重力Fによってボール5および容器4の壁にぶつかり、連続的に強い衝撃を受け、粉砕される。
【0032】
この場合、重力Fの最大値は、97G(G:重力加速度)である。
【0033】
図3は、この発明の実施の形態によるナノ粒子の製造方法を示す工程図である。図3を参照して、ナノ粒子の製造が開始されると、所望の直径を有するボール5と、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを略1:1の比で容器4内に入れる(ステップS1)。
【0034】
この場合、例えば、25gのボール5と、25gの酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを容器4内に入れる。また、ボール5の所望の直径は、0.03mm、0.1mm、1mmおよび15mmのいずれかに設定される。
【0035】
そして、25gのメタノール(液体)を容器4内に入れる(ステップS2)。
【0036】
そうすると、容器4を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転させる(ステップS3)。この場合、容器4の公転速度Vrevは、例えば、1100rpmに設定され、容器4の自転速度Vrotは、例えば、2200rpmに設定される。
【0037】
そして、所望の時間が経過すると、容器4の自転および公転を停止する(ステップS4)。所望の時間は、例えば、1時間以上に設定される。これによって、ナノ粒子の製造が終了する。
【0038】
相対的に小さいサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS1において、相対的に小さい値に設定された直径を有するボール5が容器4内に入れられ、相対的に大きいサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS1において、相対的に大きい値に設定された直径を有するボール5が容器4内に入れられる。
【0039】
即ち、第1のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS1において、第1の値に設定された直径を有するボール5が容器4内に入れられ、第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS1において、第1の値よりも小さい第2の値に設定された直径を有するボール5が容器4内に入れられる。
【0040】
また、相対的に小さいサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS4において、所望の時間は、相対的に長い時間に設定され、相対的に大きいサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS4において、所望の時間は、相対的に短い時間に設定される。
【0041】
即ち、第1のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS4において、所望の時間は、第1の時間に設定され、第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS4において、所望の時間は、第1の時間よりも長い第2の時間に設定される。
【0042】
図4は、フォトルミネッセンスの発光強度と波長との関係を示す図である。なお、図4は、酸化ジルコニウムからなるナノ粒子の発光強度と波長との関係を示す。
【0043】
図4において、縦軸は、発光強度を表し、横軸は、波長を表す。そして、曲線k1は、ミリングをしていない酸化ジルコニウム粉体、即ち、遊星型ボールミル10を用いて粉砕していない酸化ジルコニウムの発光強度と波長との関係を示す。この場合、酸化ジルコニウム粉体の大きさは、10μmである。
【0044】
また、曲線k2は、ミリングの時間を1時間に設定して製造した酸化ジルコニウムからなるナノ粒子の発光強度と波長との関係を示す。
【0045】
更に、曲線k3は、ミリングの時間を2時間に設定して製造した酸化ジルコニウムからなるナノ粒子の発光強度と波長との関係を示す。
【0046】
更に、フォトルミネッセンスの励起波長は、458nmであり、酸化ジルコニウムからなるナノ粒子の直径は、5〜500nmである。
【0047】
図4を参照して、ミリングをしていない場合、酸化ジルコニウムは、殆ど発光していない(曲線k1参照)。
【0048】
一方、ミリング時間が1時間である場合およびミリング時間が2時間である場合、酸化ジルコニウムからなるナノ粒子は、緑の波長からオレンジの波長の波長領域に発光のピーク波長を有し、ブロードな発光スペクトルを有する(曲線k2,k3参照)。
【0049】
そして、ミリング時間が2時間である場合、酸化ジルコニウムからなるナノ粒子の発光強度は、ピーク波長において、ミリングしていない酸化ジルコニウム粉体の発光強度の約10000倍である(曲線k1,k3参照)。
【0050】
このように、ミリング時間を長くすると、酸化ジルコニウムからなるナノ粒子の発光強度は、飛躍的に大きくなる。これは、ミリング時間を長くすると、酸化ジルコニウムからなるナノ粒子のサイズが小さくなり、ナノ粒子中の欠陥が増加するためである。即ち、ZrOのZrとOとの結合が一部切断され、そこが発光中心になると考えられる。
【0051】
図5は、フォトルミネッセンスの発光強度と波長との他の関係を示す図である。図5において、縦軸は、発光強度を表し、横軸は、波長を表す。そして、曲線k4は、シリコンからなるナノ粒子の発光強度と波長との関係を示す。
【0052】
また、フォトルミネッセンスの励起波長は、458nmであり、シリコンからなるナノ粒子の直径は、5〜500nmである。
【0053】
更に、ミリング時間は、2時間である。
【0054】
図5を参照して、シリコンからなるナノ粒子は、緑の波長領域に発光のピーク波長を有し、ブロードな発光スペクトルを有する(曲線k4参照)。
【0055】
このように、シリコンからなるナノ粒子が発光するのは、ミリングによってナノ粒子中の欠陥が増加したためであると考えられる。また、サイズが小さくなることにより、表面積が増え、その結果、表面酸化が進行し、Si/SiOのナノ界面が増加し、発光強度が増加したからである。
【0056】
上述したように、図3に示す製造方法によって製造された酸化ジルコニウムからなるナノ粒子およびシリコンからなるナノ粒子は、強い発光強度で発光する。
【0057】
従来、遊星型ボールミルを用いてナノ粒子を製造する場合、自転速度および公転速度は、数百rpmに設定されていた。
【0058】
しかし、遊星型ボールミル10は、自転速度を2200rpmに設定し、公転速度を1100rpmに設定してナノ粒子を製造する。即ち、遊星型ボールミル10は、1000rpmよりも速い自転速度および公転速度を用いてナノ粒子を製造する。
【0059】
そうすると、容器4内に作用する重力Fが大きくなり、より強い衝撃力で原料(酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体)を粉砕する。その結果、ナノ粒子の直径が小さくなるとともに、ナノ粒子中の欠陥が増加する。
【0060】
従って、発光強度を飛躍的に強くできる。
【0061】
上述したナノ粒子の製造方法は、非常に簡単な方法であり、容器4内に入れるボール5および原料(酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体)の量を増加することによって、多量のナノ粒子を容易に製造できる。例えば、100gのナノ粒子を1時間で製造できる。特に、容器のサイズを3倍にすれば、粉砕のエネルギーが9倍になり、より多くのナノ粒子を短時間で得られる。
【0062】
従って、この発明の実施の形態によるナノ粒子の製造方法は、量産に適した製造方法である。
【0063】
上述したナノ粒子の製造方法によって製造されたナノ粒子は、例えば、EL(Electro Luminesence)用の材料として用いられる。ナノ粒子をEL用の材料として想定した場合、導電性高分子を追加してミリングすることが効果的である。
【0064】
EL素子においては、ナノ粒子に電流を注入する必要があり、固められた複数のナノ粒子に電流を注入するには、ナノ粒子の周囲に導電性の物質が存在した方が電流を効率的に注入できるからである。
【0065】
図6は、この発明の実施の形態による発光粉体の断面図である。図6を参照して、この発明の実施の形態による発光粉体30は、板形状からなり、ナノ粒子31と、導電性高分子32とを備える。
【0066】
ナノ粒子31は、酸化ジルコニウムまたはシリコンからなり、上述したサイズを有する。導電性高分子32は、例えば、可溶性導電性高分子であるポリチオフェン系、ポリフェニレンビニレン系およびポリビニルカルバゾール系等の誘導体からなり、具体的には、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリ・(1,3−フェニレンビニレン−alt−トリフェニルアミン、およびポリNエチル2ビニルカルバゾール等の誘導体からなる。
【0067】
図7は、この発明の実施の形態による発光素子の断面図である。図7を参照して、この発明の実施の形態による発光素子40は、発光粉体30と、電極41,42とを備える。
【0068】
電極41,42の各々は、例えば、アルミニウムからなる。そして、電極41は、発光粉体30の一方側の表面に形成され、電極42は、発光粉体30の他方側の表面に形成される。
【0069】
発光素子40は、電流が電極41,42を介して発光粉体30に注入されることによって図4または図5に示すスペクトル帯で発光する。
【0070】
図8は、図6に示す発光粉体の製造方法を示す工程図である。図8を参照して、発光粉体の製造が開始されると、所望の直径を有するボール5と、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを略1:1の比で容器4内に入れる(ステップS11)。
【0071】
この場合、例えば、25gのボール5と、25gの酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを容器4内に入れる。また、所望の直径は、0.03mm、0.1mm、1mmおよび15mmのいずれかに設定される。
【0072】
そして、25gの導電性高分子を容器4内に入れ(ステップS12)、25gのメタノール(液体)を容器4内に入れる(ステップS13)。
【0073】
そうすると、容器4を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転させる(ステップS14)。この場合、容器4の公転速度Vrevは、例えば、1100rpmに設定され、容器4の自転速度Vrotは、例えば、2200rpmに設定される。
【0074】
その後、所望の時間が経過すると、容器4の自転および公転を停止する(ステップS15)。所望の時間は、例えば、1時間以上に設定される。
【0075】
ステップS5が終了した時点においては、ナノ粒子と導電性高分子とボール5とメタノール(=溶媒)との液体状の混合物が製造されている。そして、ミリング後のボール5および発光粉体(=ナノ粒子と導電性高分子とメタノールとの混合物)をメッシュを用いて分離する(ステップS16)。
【0076】
引き続いて、液体状の発光粉体をスピンコートによって基板上に塗布し、溶媒(メタノール)を飛ばすことによって、発光粉体を板状に成形する(ステップS17)。この場合、板状の平面形状は、三角形、四角形、および五角形等の多角形または円形からなる。これによって、発光粉体の製造が終了する。
【0077】
相対的に小さいサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS11において、相対的に小さい値に設定された直径を有するボール5が容器4内に入れられ、相対的に大きいサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS11において、相対的に大きい値に設定された直径を有するボール5が容器4内に入れられる。
【0078】
即ち、第1のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS11において、第1の値に設定された直径を有するボール5が容器4内に入れられ、第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS11において、第1の値よりも小さい第2の値に設定された直径を有するボール5が容器4内に入れられる。
【0079】
また、相対的に小さいサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS15において、所望の時間は、相対的に長い時間に設定され、相対的に大きいサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS15において、所望の時間は、相対的に短い時間に設定される。
【0080】
即ち、第1のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS15において、所望の時間は、第1の時間に設定され、第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有するナノ粒子を製造するとき、ステップS15において、所望の時間は、第1の時間よりも長い第2の時間に設定される。
【0081】
このように、発光粉体30は、ボール5と、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体と、導電性高分子と、メタノールとを容器4内に入れ、容器4を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転することによって製造される。
【0082】
その結果、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体は、強い衝撃力によって粉砕され、欠陥が多いナノ粒子と導電性高分子との混合物が製造される。
【0083】
従って、発光粉体の発光強度を強くできる。また、発光粉体に含まれるナノ粒子に電流を容易に注入できる。更に、平面型の照明器具を容易に作製できる。
【0084】
なお、ナノ粒子がこの発明の実施の形態よるナノ粒子の製造方法によって製造されたか否かを判定するためには、対象となったナノ粒子の発光強度が、ミリングしていない酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体の発光強度よりも約10000倍になったか否かを判定すればよい。
【0085】
即ち、対象となったナノ粒子の発光強度が、ミリングしていない酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体の発光強度よりも約10000倍になったとき、対象となるナノ粒子は、この発明の実施の形態によるナノ粒子の製造方法によって製造されたことになる。
【0086】
一方、対象となったナノ粒子の発光強度が、ミリングしていない酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体の発光強度と同程度であれば、対象となるナノ粒子は、この発明の実施の形態によるナノ粒子の製造方法によって製造されなかったことになる。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
この発明は、ナノ粒子の製造方法、発光粉体の製造方法および発光素子に適用される。
【符号の説明】
【0089】
1 本体部、2 制御部、3 回転盤、4 容器、5 ボール、10 遊星型ボールミル、21 操作パネル、30 発光粉体、31 ナノ粒子、32 導電性高分子、40 発光素子、41,42 電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形状からなり、かつ、所望の直径を有するボールと、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを略1:1の比で容器内に入れる第1の工程と、
メタノールを前記容器内に入れる第2の工程と、
前記容器を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転させる第3の工程と、
所望の時間が経過すると、前記自転および前記公転を停止する第4の工程とを備えるナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、第1のサイズを有する前記ナノ粒子を製造するとき、第1の値からなる直径を有するボールが前記容器内に設定され、前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有する前記ナノ粒子を製造するとき、前記第1の値よりも小さい第2の値からなる直径を有するボールが前記容器内に設定される、請求項1に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第4の工程において、前記所望の時間は、第1のサイズを有する前記ナノ粒子を製造するとき、第1の時間に設定され、前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有する前記ナノ粒子を製造するとき、前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定される、請求項1に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
酸化ジルコニウムまたはシリコンからなるナノ粒子と導電性高分子とを含む発光粉体の製造方法であって、
球形状からなり、かつ、所望の直径を有するボールと、酸化ジルコニウムの粉体またはシリコンの粉体とを略1:1の比で容器内に入れる第1の工程と、
導電性高分子を前記容器内に入れる第2の工程と、
メタノールを前記容器内に入れる第3の工程と、
前記容器を1000rpmよりも速い回転速度で自転および公転させる第4の工程と、
所望の時間が経過すると、前記自転および前記公転を停止する第5の工程と、
前記容器内の発光粉体と前記ボールとを分離する第6の工程と、
前記分離された発光粉体を所望の形状に成形する第7の工程とを備える発光粉体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程において、第1のサイズを有する前記ナノ粒子を製造するとき、第1の値からなる直径を有するボールが前記容器内に設定され、前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有する前記ナノ粒子を製造するとき、前記第1の値よりも小さい第2の値からなる直径を有するボールが前記容器内に設定される、請求項4に記載の発光粉体の製造方法。
【請求項6】
前記第5の工程において、前記所望の時間は、第1のサイズを有する前記ナノ粒子を製造するとき、第1の時間に設定され、前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有する前記ナノ粒子を製造するとき、前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定される、請求項1に記載の発光粉体の製造方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造され、かつ、所望の形状に成形された発光粉体と、
前記発光粉体の一方側の表面に形成された第1の電極と、
前記発光粉体の他方側の表面に形成された第2の電極とを備える発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−213848(P2011−213848A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82905(P2010−82905)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】