説明

ナノ結晶の形成方法

ナノ結晶の形成方法が提供される。ナノ結晶は、一般式M1A若しくは一般式M1Oの二元ナノ結晶であってもよく、一般式M1M2A、一般式M1AB若しくは一般式M1M2Oの三元ナノ結晶であってもよく、又は一般式M1M2ABの四元ナノ結晶であってもよい。M1は、PSEのII〜IV族、VII族又はVIII族の金属である。Aは、PSEのVI族又はV族の元素である。Oは酸素である。沸点の低い非極性溶媒中で均質な反応混合物が形成されるが、それには、金属M1及び適用可能な場合M2を含有する金属前駆体が含まれる。酸素を含有するナノ結晶については、金属前駆体が酸素供与体を含有する。適用可能であれば、Aも均質な反応混合物に含まれる。均質な反応混合物は、高圧のもとでナノ結晶を形成するのに好適である高い温度に熱せられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ結晶の形成方法に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年10月5日に米国特許商標局に出願され、出願番号60/977,792が正式に割り当てられた「純度の高い二元及び三元のナノ結晶のソルボサーマル合成」に関する出願を参照し、その優先権の利益を主張する。PCTの規則4.18に従い、PCTの規則20.5(a)に規定される本明細書に含有されない明細書、請求の範囲、又は図面のいずれかの要素又は一部の組み入れを含め、2007年10月5日に出願された前記出願の内容をあらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ結晶は、光学、光電子、光発光、電界発光の装置、生物標識及び診断などを含む多数の技術領域で大きな影響を与えている。これらの半導体ナノ結晶は、そのサイズとその広い表面積双方の結果としてそれらが持つ独特の特性で知られている。
【0003】
中でも、最も研究された半導体ナノ結晶物質は、カルコゲニドII−VI物質及びIII−V物質である。これらの半導体ナノ結晶物質への関心の主な理由は、可視スペクトル全体にわたる、それらのサイズ調整可能な光発光の放射である。
【0004】
研究されているその他のナノ結晶物質は、磁気共鳴画像診断、悪性細胞の高温治療及び薬剤送達のための造影剤としての医療用途を有する磁性物質である。
ナノ結晶、特に明確な形状、サイズ及び高い結晶性を有するII−VIとIII−Vのナノ結晶を合成する方法を開発することへの関心が高まっている。粒度分布が狭い単分散のナノ結晶は、量子効果がそのサイズに依存するので、種々の応用におけるナノ結晶の重要な特性である。
【0005】
マレー(Murray)とバウェンディ(Bawendi)は、有機金属前駆体と元素前駆体を熱い溶媒に注入してナノ結晶を形成するナノ結晶の調製方法を開発した(非特許文献1)。湿式化学法とも呼ばれるこの方法は、ナノ結晶、特にII−VIとIII−Vのナノ結晶を調製するのに一般に使用されている。
【0006】
最近、ある半導体物質から構成されるコアが別の半導体物質で覆われたものから成るコア−シェル構造又はキャップ構造を持つナノ結晶を製造する方法が開発された。たとえば、特許文献1は、コアのナノ結晶の表面上に化合物半導体層を形成することによって調製されたコア−シェル構造のII−VI族とIII−V族の化合物半導体ナノ結晶を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,322,901号明細書
【特許文献2】国際出願第PCT/SG2008/000290号明細書
【特許文献3】米国特許第7,056,471号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0004183号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】マレー・シー、ノリス・ディー、バウェンディ・エム(Murray C,Norris D.,Bawendi M.)、J.Am.Chem.Soc.、第115巻、第19号、8706〜8715ページ(1993年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ナノ結晶の表面特性は、ナノ結晶の特徴を判定するのに重要である。既知の方法では、複数工程の沈殿を含むナノ結晶の精製は、ナノ結晶の表面特性に影響を及ぼし、表面の損傷を招く。さらに、ナノ結晶の複数工程の精製においてナノ結晶の量子収率も影響を受けうる。
【0010】
ナノ結晶の表面に影響を及ぼすことなくナノ結晶の精製を可能にするナノ結晶を製造するための代替方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様の1つによれば、本発明は、一般式M1Aの二元ナノ結晶を形成する方法を提供する。この一般式では、M1は元素の周期系(PSE)のII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。Aは、PSEのVI族又はV族の元素であることができる。方法には、均質な反応混合物を形成することが含まれる。この均質な反応混合物には金属M1を含有する金属前駆体が含まれる。均質な反応混合物には元素Aも含まれる。さらに、均質な反応混合物には、非極性で沸点の低い溶媒も含まれる。方法はさらに、高い圧力のもとでナノ結晶を形成するのに好適な高い温度に均質な反応混合物を熱することを含む。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、一般式M1Oの二元ナノ結晶を形成する方法を提供する。この一般式では、M1はPSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。Oは酸素である。方法には、均質な反応混合物を形成することが含まれる。この均質な反応混合物には金属前駆体が含まれる。金属前駆体は金属M1と酸素供与体とを含有する。均質な反応混合物には、非極性で沸点の低い溶媒も含まれる。方法はさらに、高い圧力のもとでナノ結晶を形成するのに好適な高い温度に均質な反応混合物を熱することを含む。
【0013】
さらなる態様によれば、本発明は、一般式M1M2Aの三元ナノ結晶を形成する方法を提供する。この一般式では、M1及びM2は互いに独立して、PSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。Aは、PSEのVI族又はV族の元素であることができる。方法には、均質な反応混合物を形成することが含まれる。この均質な反応混合物には金属前駆体が含まれる。金属前駆体は金属M1と金属M2とを含有する。均質な反応混合物には元素Aも含まれる。さらに、均質な反応混合物には、非極性で沸点の低い溶媒も含まれる。方法はさらに、高い圧力のもとでナノ結晶を形成するのに好適な高い温度に均質な反応混合物を熱することを含む。
【0014】
さらに別の態様によれば、本発明は、一般式M1ABの三元ナノ結晶を形成する方法に関する。この一般式では、M1はPSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。A及びBのそれぞれは、互いに独立して、PSEのV族又はVI族の元素であることができる。方法には、均質な反応混合物を形成することが含まれる。均質な反応混合物には金属前駆体が含まれる。金属前駆体は金属M1を含有する。均質な反応混合物には元素A及び元素Bも含まれる。さらに、均質な反応混合物には、非極性で沸点の低い溶媒も含まれる。方法はさらに、高い圧力のもとでナノ結晶を形成するのに好適な高い温度に均質な反応混合物を熱することを含む。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、一般式M1M2Oの三元ナノ結晶を製造する方法に関する。この一般式では、M1及びM2は、互いに独立して、PSEのII族、III族、I
V族、VII族又はVIII族の金属であることができる。Oは酸素である。方法には、均質な反応混合物を形成することが含まれる。均質な反応混合物には金属前駆体が含まれる。金属前駆体は金属M1と金属M2と酸素供与体とを含有する。さらに、均質な反応混合物には、非極性で沸点の低い溶媒も含まれる。方法はさらに、高い圧力のもとでナノ結晶を形成するのに好適な高い温度に均質な反応混合物を熱することを含む。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、一般式M1M2ABの四元ナノ結晶を形成する方法に関する。この一般式では、M1及びM2は互いに独立して、PSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。A及びBのそれぞれは互いに独立して、PSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。方法には、均質な反応混合物を形成することが含まれる。均質な反応混合物には金属前駆体が含まれる。金属前駆体は金属M1と金属M2を含有する。さらに均質な反応混合物には元素A及び元素Bも含まれる。均質な反応混合物には、非極性で沸点の低い溶媒も含まれる。方法はさらに、高い圧力のもとでナノ結晶を形成するのに好適な高い温度に均質な反応混合物を熱することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】ヘキサン中の高圧で調製された、二元金属カルコゲニドPbSeの透過型電子顕微鏡(TEM)像。
【図1b】ヘキサン中の高圧で調製された、二元金属カルコゲニドPbTeのTEM像。
【図2】ヘキサン中の高圧で形成された二元金属酸化物ZnOのTEM像。
【図3】ヘキサン中の高圧で調製された二元金属酸化物MnOナノ結晶の高解像透過型電子顕微鏡(HRTEM)像。
【図4】ヘキサン中の高圧で合成された二元金属酸化物CoOのTEM像。
【図5a】式ZnCdSeの三元ナノ結晶のTEM像(このナノ結晶は、約1:1の比のZn/Cdオレエート、トリオクチルホスフィン(TOP)溶液中の約4倍量のSe並びに溶媒としてのトリオクチルホスフィン(TOPO)、ヘキサデシルアミン(HAD)及びヘキサンの反応混合物から形成された組成Zn0.22Cd0.78Seのナノロッドである。混合物を高圧にて約320℃で約3.5時間反応させた)。
【図5b】1気圧の圧力でTOPOなしで、約320℃で約3.5時間反応させた、約1:1の比のZn/Cdオレエート、TOP中の約4倍量のSe並びに溶媒としてのTOPO、HAD及びヘキサンの反応混合物から調製されたZnCdSeの三元ナノ結晶のTEM像(図5a及び図5bのTEM像は、高圧で調製されたナノ結晶がナノロッドである一方で、1気圧でヘキサンなしで調製されたナノ結晶はナノドットであることを示す。これらの結果は、高圧が、ナノ結晶の異方性の成長に好都合であることを示している)。
【図6a】MgFeの三元金属酸化物ナノキューブのTEM像(三元金属酸化物はヘキサン中高圧で調製することができる)。
【図6b】CaFeの三元金属酸化物ナノキューブのTEM像(三元金属酸化物はヘキサン中高圧で調製することができる)。
【図6c】SrFeの三元金属酸化物ナノキューブのTEM像(三元金属酸化物はヘキサン中高圧で調製することができる)。
【図7a】ヘキサン中高圧で調製されたZnFeナノ結晶のTEM像。
【図7b】ヘキサン中高圧で調製されたCoFeナノキューブのTEM像。
【図7c】ヘキサン中高圧で調製されたMnFeナノキューブのTEM像。
【図8a】周囲条件で調製されたNiFeのTEM像。
【図8b】本発明に係る圧力下で調製されたNiFeのTEM像(このTEM像は、圧力下で形成されたナノ結晶の典型的な星形構造を示し、それはナノ結晶の表面特性の改善を示す)。
【図9】様々な反応時間(1=5分間、2=10分間、3=30分間)で180℃にてソルボサーマル法を用いて調製されたCdSe量子ドットの光発光(PL)スペクトルを説明するグラフ(x軸はnmの波長を示し、y軸はPL強度を示す)。
【図10】180℃にて20分間ソルボサーマル法を用いて調製されたCdTe量子ドットのPLスペクトルを説明するグラフ(x軸はnmの波長を示し、y軸はPL強度を示す)。
【図11a】約1:1の亜鉛:カドミウムの比にて圧力下で約1時間反応させたTOPOを伴って調製された三元ZnCdSeナノ結晶のPLスペクトルを説明するグラフ(x軸はnmの波長を示し、y軸はPL強度を示す)。
【図11b】約1:1の亜鉛:カドミウムの比にて圧力下で約2時間反応させたTOPOなしで調製された三元ZnCdSeナノ結晶のPLスペクトルを説明するグラフ(x軸はnmの波長を示し、y軸はPL強度を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は1以上のナノ結晶を調製するための方法に関する。相当するナノ結晶は、三元以上の系、たとえば、金属フェライトを含む半導体物質又は磁性酸化物を含んでもよいし、又はそれから成ってもよい。ナノ結晶が量子ドットである場合、組成及びサイズ或いはその一方によってその発光が調整可能であってもよい。
【0019】
本発明は、非極性で沸点の低い溶媒をソルボサーマル工程における均質相に好都合に用いてナノ結晶を形成することができるという驚くべき知見に基づく。比較的高い温度、すなわち、ナノ結晶を形成する従来法に匹敵する温度範囲で得ることができるナノ結晶は、結晶性が高い。以下の実施例で説明するように、高い品質の二元、三元、四元の量子ドット及び磁性酸化物を得ることができる。ソルボサーマル法は通常閉鎖容器で実施されるので、特に不活性の条件は普通必要とされない。従って、大規模製造で相当する工程を使用することができる。
【0020】
通常、ナノ結晶は高温の反応を用いて調製される。高温の反応を達成するには、普通沸点の高い溶媒を用い、その中で反応物質が還流され、結晶性のナノ結晶を得る(非特許文献1、8706ページ)。これら高温の反応は高品質のナノ結晶を生じる一方で、それらは通常、複数工程の洗浄を必要とし、それは、時間がかかり、ナノ結晶の表面特性に影響を及ぼすとともに、ナノ結晶が量子ドットである場合、量子収率に影響を及ぼすリスクを持つ。表面損傷の数が増えることによって、得られたナノ結晶の純度は低下する。沸点の高い溶媒の使用は、毒性の可能性、費用がかさむこと、単純塩に溶解できないことを含む多数の問題に関連する。さらに、反応において少なくとも1つの反応物質を高温の溶媒に迅速に注入すべきであり、それは、工程を大規模で実施するのを困難にしている。他の領域では、ソルボサーマル法を採用することによってこれらの問題を回避する試みが行われている(マサラ オー及びセシャドリ アール(Masala,O.,&Seshadri,R.)、Annu.Rev.Mater.Res.、第34巻、41〜81ページ(2004年);ビラッパ・ケイら(Byrappa,K.,et al.)、Advanced Drug Delivery Reviews、第60巻、299〜327ページ(2008年);ティルムルガン・エー(Thirumurugan,A.)、Bull.Mater.Sci.、第30巻、第2号、179〜182ページ(2007年))。
【0021】
用語「ソルボサーマル」は、言語「ハイドロサーマル」に由来する。用語「ハイドロサーマル」は地質学で一般に使用される用語である。合成の場合、それは、高い圧力、通常高い温度、並びに触媒としての水の使用の条件を言う。用語「ソルボサーマル」は一般に、高い圧力で、温度も高いことが多く、溶媒を含める条件を言う。従って、通常、高い自生圧を支える封入容器にて、溶媒はその沸点を超えて使用される。本発明の場合、たとえば、従来の圧力反応器、フローセル、タトル型バッチ反応器又はオートクレーブのような
当該技術で周知の従来の装置を用いてどんな程度の高い圧力を達成してもよい。好適な加圧反応器は、たとえば、パー型の閉鎖水素化反応器である。好適な容器が利用できる場合、ダイアモンドアンビルセルによって4×10気圧までの、約400Gpa以上の静圧が生成されてもよいが、そのような圧力が本発明の方法を実行するのに決して必要とされることはない。典型的な実施態様では、本発明に係る方法は、約10〜約500気圧(1気圧、たとえば、約20気圧〜約200気圧、約10気圧〜約200気圧、約35気圧〜約150気圧、約50気圧〜約100気圧の範囲)の範囲での高い圧力にて実施される。特定の圧力及び温度を超えて、溶媒は、高い粘度を示す超臨界流体になり、周囲条件では低い溶解度しか示さない化合物を容易に溶解する。
【0022】
たとえば、加圧反応器にて高い圧力下で反応を行うことは、加熱から生じる自生圧の上昇によって、その沸点より高い温度に加熱することができる非極性の、たとえば、疎水性の、沸点が低い溶媒の使用を可能にする。驚くべきことに、本発明者らは、このことが、沸点の低い非極性溶媒によってさえ結晶性の高いナノ結晶を得ることができる高い温度で反応を行うことを可能にすることを見出した。説明的な例では、均質な反応混合物をパー反応器に移し、窒素ガスでパージすることができる。高い圧力にて、反応温度(約200℃〜450℃)と呼んでもよい高い温度に混合物を加熱することができる。混合物は静止を妨げられてもよいし、測定可能な程度の少なくともわずかな流れを維持するように影響を受けてもよい。一部の実施態様では、従って、混合物は混合、通常、連続的な混合に供される。この目的で、混合物は流れのもとに置かれてもよい。従って混合物は頻繁な又は連続的な動きの中に保持されてもよい。このことは、撹拌、たとえば、機械的撹拌、超音波処理、回転、振盪及びこれらの組み合わせを含むかき混ぜによって達成されてもよい。ナノ結晶の形成を可能にするように反応温度を十分な時間維持することができる。反応が完了した後、単に熱を取り除き、冷却することによって反応を止めることができる。単純な遠心/分散工程によって最終生成物を精製することができる。この点で、使用する圧力が高いために、有意に高い、たとえば、大気圧で使用される(以下も参照のこと)溶媒の沸点よりも50℃、100℃、200℃、又は300℃高い反応温度にて反応を実行してもよいことに留意する。反応混合物はたとえば、約50℃〜約500℃、たとえば、約50℃〜約400℃、約100℃〜約400℃、約100℃〜約350℃、約100℃〜約300℃、約150℃〜約350℃、約200℃〜約350℃又は約250℃〜約350℃の温度に熱してもよく、たとえば、温めてもよい。
【0023】
さらに、本発明者らは、沸点の低い非極性溶媒の使用が後処理工程又は精製工程を実質的に減少させることができることを見出した。驚くべきことに、高い圧力で量子ドットを含むナノ結晶を製造することが特定のナノ結晶の形態の調節を可能にし、その結果、ナノ結晶の高い結晶性と異方性の成長を生じることも本発明者らによって見出された。
【0024】
さらに、沸点の低い好適な溶媒(以下を参照)の中では、沸点の高い溶媒よりもはるかにコストの低い溶媒が利用できる。従って、本発明の方法を採用することによって、特に大規模製造では、ナノ結晶を形成するコストを有意に低減することができる。
【0025】
使用される反応条件によって、本発明の方法は、二元、三元及び四元のナノ結晶を形成する実施態様を示している。二元ナノ結晶を形成する場合、一部の実施態様では、このナノ結晶は一般式M1Aのものであってもよい。この式ではM1は、従来のIUPAC方式に従って元素の周期系(PSE)のII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であってもよい。新しいIUPAC方式によれば、相当する族(括弧内は従来方式)は、2族/12族(II族)、13族(III族)、14族(IV族)、7族(VII族)である。II族の好適な例は、(新しいIUPAC方式の12族の)Cd、Zn、並びに(新しいIUPAC方式の2族の)Mg、Sr、Ca及びBaである。III族の好適な例は、(新しいIUPAC方式の13族の)Al、Ga及びInである。IV族の好
適な元素の2つの説明的な例は、(新しいIUPAC方式の14族の)Pb及びSnである。VII族の好適な元素の説明的な例は、(新しいIUPAC方式の7族の)Mnである。VIII族の元素の好適な例は、(新しいIUPAC方式の8族の)Fe、Co、Ni及びIrである。
【0026】
一般に、本発明の方法に係るナノ結晶の形成では、M1、又は適用可能な場合、M1及びM2のそれぞれは、たとえば、II族のたとえば、Cd、Zn、Mg、Sr、Ca又はBaであってもよく、III族のたとえば、Al、Ga及びInであってもよく、IV族のたとえばPb、Snであってもよく、VII族のたとえばMn又はVIII族のたとえばFe、Co、Ni又はIrであってもよい。
【0027】
上記式におけるAは、カルコゲン又はニクトゲンであることができ、すなわち、由緒あるIUPAC命名法に従ってPSEのVI族若しくはV族の元素、又は新しいIUPAC命名法に従って16族若しくは15族の元素であることができる。そのような実施態様では、均質な反応混合物は、元素Aとともに、金属M1を含有する金属前駆体を含む。本発明に係るいずれかの方法で使用する金属前駆体はナノ結晶の形成において相当する金属を提供する塩を含む化合物である。それはたとえば、相当する金属の無機塩(たとえば、炭酸塩)又は有機塩(たとえば、酢酸塩、ステアリン酸塩又はオレイン酸塩)であってもよい。2つの金属又は金属前駆体、たとえば、カドミウムと亜鉛又はその酸化物を使用する場合、2つの金属/前駆体は所望の比で使用してもよい。
【0028】
一般に、本発明の方法に係るナノ結晶の形成では、元素A及び適用可能な場合、元素Bは、PSEのVI族、たとえば、S、Se、Te、O、又はPSEのV族、たとえば、P、Bi若しくはAsから独立して選択することができる。一部の実施態様では、元素A及び元素B或いはその一方は、反応混合物を形成するために提供される前に好適な溶媒に溶解することができる。
【0029】
一部の実施態様では、金属前駆体は金属オレイン酸塩であることができ、たとえば、オレイン酸カドミウム、オレイン酸カドミウム亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カドミウム鉛、オレイン酸マグネシウム鉄、オレイン酸マンガン鉄、オレイン酸カルシウム鉄、オレイン酸亜鉛鉄、オレイン酸ストロンチウム鉄、オレイン酸コバルト鉄、又はオレイン酸ニッケル鉄であることができる。説明的な例として、四元ナノ結晶を形成する場合、たとえば、約80℃〜約500℃、たとえば、約100℃〜約400℃の温度にて金属M1及びM2を有機酸に独立して溶解することによって金属前駆体を形成することができる。次いで、均質な反応混合物を形成するために、元素Aと元素Bと沸点の低い非極性溶媒に金属前駆体を混合することができる。説明的な例として、均質な反応混合物は約20℃〜約70℃の温度で形成される。金属前駆体が高い温度で形成される実施態様では、反応混合物に加える前にそれを冷却してもよい。たとえば、M1M2A、M1AB又はM1M2Oのような三元ナノ結晶を形成する場合、金属M1及びM2の塩を独立して約100℃〜約400℃にて有機酸に溶解することによって同様に金属前駆体を形成することができる。次いで金属前駆体を、元素A及び元素B或いはその一方、並びに沸点の低い非極性溶媒と混合して反応混合物を形成する。たとえば、反応混合物を約20℃〜約70℃の温度で形成してもよい。高温で形成された金属前駆体は、元素A及び元素B或いはその一方を加える前に冷却してもよい。
【0030】
たとえば、100℃〜450℃にて金属M1の塩を有機酸に溶解することによって金属M1を含有する金属前駆体を形成することができる。こうして形成された金属前駆体を次いで元素Aと沸点の低い非極性溶媒に接触させ、化合させて均質な反応混合物を形成する。説明的な例では、反応混合物は約20℃〜約70℃の温度で形成される。金属前駆体は、そのような実施態様では、選択された温度に冷却してから加えて反応混合物を形成する

【0031】
二元ナノ結晶が形成される他の実施態様では、ナノ結晶は、一般式M1Oのものであってもよい。この式のM1はPSE(上記参照)のII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。そのような実施態様では、形成される均質な反応混合物は、金属M1を含有する金属前駆体を含む。金属前駆体は酸素供与体も含む(上記参照)。
【0032】
本発明の方法によって調製される一般式M1Aの二元ナノ結晶は、たとえば、式CdSe、CdTe、CdS、PbSe、PbTe、PbS、SnSe、ZnS、ZnSe又はZnTeのものであってもよい。本発明の方法に従って調製される一般式M1Oの二元ナノ結晶は、たとえば、式CdO、PbO、MnO、CoO、ZnO又はFeOのものであることができる。この場合、表記M1A及びM1Oは、このナノ結晶が二元であり、2つの元素を含むことを意味することを示しているにすぎないことに留意する。表記M1A及びM1Aは、ナノ結晶の化学量論性を必ずしも表すわけではない(CdSe又はCdOの場合、2つの例しか挙げないにもかかわらず)が、化学量論的ナノ結晶MO(たとえば、MnO)、M(たとえば、Al)又はM(たとえば、Fe)も含む。
【0033】
一部の実施態様では、本発明の方法に従って形成される三元ナノ結晶は、一般式M1M2Aのものであってもよい。この式のM1及びM2は独立して、PSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であるであることができる。Aは、PSEのVI族又はV族の元素であることができる。他の実施態様では、本発明の方法に従って形成される三元ナノ結晶は、一般式M1ABのものであってもよい。この式のM1はPSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。A及びBは独立してPSEのV族又はVI族の元素であることができる。さらに別の実施態様では、本発明の方法に従って形成される三元ナノ結晶は、一般式M1M2Oのものであってもよい。M1及びM2は独立して、PSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。Oは酸素である。本発明の方法に従って形成される三元ナノ結晶はどんな構造のものでもよい。たとえば、層になった構造、たとえば、コア/シェル構造であってもよいし、又は均質の、たとえば、均一の組成若しくは徐々に変化する若しくは無段で変化する組成であってもよい。
【0034】
一部の実施態様では、本発明の方法に従って形成される四元ナノ結晶は、一般式M1M2ABのものであってもよい。上記で定義されたように、M1及びM2は、PSEのII族、III族、IV族、VII族又はVIII族の金属であることができる。A及びBは独立してPSEのV族又はVI族の元素であることができる。当業者は、本発明の方法の間に形成される三元及び四元のナノ結晶も、通常均一性が高いことを十分に理解するであろう。
【0035】
一般式M1M2Aの三元ナノ結晶の説明的な例には、式ZnCdSe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、SnPbS、SnPbSe及びSnPbTeの三元ナノ結晶が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法を用いて形成されてもよい一般式M1ABの三元ナノ結晶の説明的な例には、式CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe及びPbSTeのナノ結晶が挙げられる。本発明の方法を用いて形成されてもよい一般式M1M2Oの三元ナノ結晶の説明的な例には、一般式M1M2のナノ結晶、たとえば、フェライトMgFe、CaFe、SrFe、ZnFe、NiFe、CoFe及びMnFeも挙げられる。この場合、表記M1M2A、M1AB及びM1M2Oはこれらのナノ結晶が三元であり、
それらが3つの異なった元素を含むことを意味することを示しているにすぎないことに留意する。従って、偶然に一部の実施態様で、たとえば、CdZnSe、CdSeTe又はMgFeの実施態様で、ナノ結晶の化学量論性が一般式に読み込まれたとしても、ナノ結晶の化学量論性という点では、表記M1M2A、M1AB及びM1M2Oからは結論を引き出すことはできない。従って、上記一般式M1M2A、M1AB及びM1M2Oには、たとえば、化学量論的ナノ結晶M11−xM2A(たとえば、Cd1−xZnSe)、M1M21−xA(たとえば、ZnCd1−xSe)、又はMl1−y(たとえば、CdSe1−y)、Ml1−y(たとえば、CdSe1−y)又はM11−xM2O(たとえば、若しくはMg1−xFeO)又はM1M21−xO(たとえば、FeMn1−xO)が含まれる。
【0036】
本発明の方法を用いて形成されてもよい一般式M1M2ABの四元ナノ結晶の説明的な例には、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe及びHgZnSTeが挙げられる。この場合、表記M1M2ABは、このナノ結晶が四元であり、それらが4つの元素を含むことを意味することを示しているにすぎないことに留意する。表記M1M2ABは、ナノ結晶の化学量論性を必ずしも表すわけではない(CdZnSeSの場合、1つの例しか挙げないにもかかわらず)が、化学量論的ナノ結晶Ml1−xM21−y(たとえば、Cdl−xZnSe1−y)、又はMl1−xM21−y(たとえば、Cd1−xZnSe1−ySy)も包含する。
【0037】
二元、三元又は四元のナノ結晶が形成されるかどうかに関係なく、本発明の方法は、各ナノ結晶が所望の構造のものであってもよいように反応条件の幅広い自由度を可能にすることにさらに留意する。たとえば、それは、層になった構造、たとえば、コア/シェル構造若しくはコア−マントル−シェル構造であってもよく(ハインズ・エム・エーとギュヨット−シオネスト・ピー(Hines,M.A.,&Guyot−Sionnest,P.)、J Phys.Chem.、第100巻、468ページ(1996年);ダブッシ・ビー・オーら(Dabbousi,B.O.,et al.)、J.Phys.Chem.B、第101巻、9463ページ(1997年);ペン・エックスら(Peng,X.,et al.)、J.Am.Chem.Soc.、第119巻、7019ページ、16〜18(1997年))、又は合金−勾配構造(フォーリー・ジェイら(Foley,J.,et al.)、Materials Science Forum、第225〜227巻、323〜328ページ(1996年))若しくは開示全体を参照によって本明細書に組み入れる同時係属PCT出願(特許文献2)に記載された相対的に薄い合金層で取り囲まれたコアとシェルとを有する「マントル構造」を含む、任意の合金構造(たとえば、特許文献3を参照)であってもよい。
【0038】
上記ですでに示したように、本発明に係るいずれの方法においても均質な反応混合物が形成される。従って、反応混合物は、たとえば、不溶性の懸濁液又はエマルションではなく、1つの相しか有さない。反応混合物は、ナノ結晶を形成する選択された時間の間、相分離が生じない限り、一時的に安定な相又は準安定な相であってもよい。均質な反応混合物はたとえば、均質な溶液である。反応混合物は、たとえば、沸点の低い疎水性溶媒のような非極性溶媒を含む。一般式M1M2Aのナノ結晶が形成される場合、均質な反応混合物は、金属M1及びM2を含有する金属前駆体を含む。均質な反応混合物はAも含む。一般式M1ABのナノ結晶が形成される場合、均質な反応混合物は、金属M1を含有する金属前駆体を含む。均質な反応混合物はさらにA及びBを含む。一般式M1M2Oのナノ結晶が形成される場合、均質な反応混合物は、金属M1及びM2を含有する金属前駆体を含む。さらにそのような実施態様では、金属前駆体は酸素供与体を含む。一般式M1M2ABの四元ナノ結晶が形成される場合、方法は、金属M1及びM2を含有する金属前駆体と元素Aと元素Bとを含む均質な反応混合物を形成することを含んでもよい。いずれの場合
も、均質な反応混合物は、たとえば加熱されて、高圧下でナノ結晶を形成するのに好適な反応温度に熱せられる。
【0039】
用語「酸素供与体」は、本明細書で使用されるとき、ナノ結晶の形成においてたとえば、酸化のために酸素を提供することが可能である部分、基、イオン又は化合物を言うと理解される。酸素供与体は有機又は無機の性質であってもよい。酸素供与体の説明的な例は、NO、HCO、CO2−、ClO、ClO、SO2−又はSO2−である。さらなる説明的な例は、カルボン酸又は一般に相当する金属の塩における相当するアニオンである。酢酸、蟻酸、プロピオン酸又はアセチルアセトン酸は好適なカルボン酸の例である。完全性のために、さらに官能基を有さないカルボン酸の場合、カルボン酸全体ではなく、部分−COO又はCOOHが酸素供与体を表すと理解されることが多くてもよいことに留意する。説明目的のために、一般式M1M2Aのナノ結晶が形成される場合、Aは、たとえば、S、Se又はTeであってもよいことを補足する。そのような実施態様では、反応混合物の形成の間に各カルコゲンが加えられてもよい。それとは対照的に、一般式M1M2Oのナノ結晶の形成の場合、金属前駆体は、酸素供与体を含む反応混合物に一般に加えられ、それによってすでに元素Oが提供される。
【0040】
本発明の方法はさらに界面活性剤を添加することを含んでもよい。界面活性剤は、反応混合物を形成している間、たとえば、1以上の金属若しくは金属前駆体を添加する前後、適応可能な場合、カルコゲン若しくはニクトゲンを添加する前後、又はこれら反応物質の1つを添加するのと同時に添加してもよい。いずれの界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤は、たとえば、有機カルボン酸、有機リン酸塩、有機ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機アミン又はこれらの混合物であってもよい。好適な有機カルボン酸は、たとえば、約8〜約18の主鎖原子、たとえば、約8〜約18の主鎖炭素原子を有する。好適な有機カルボン酸の説明的な例には、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸、([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リネライジン酸(linelaidic acid)、((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)及びγ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。他の界面活性剤(たとえば、有機ホスホン酸)の例には、ヘキシルホスホン酸及びテトラデシルホスホン酸が挙げられる。オレイン酸は、ナノ結晶を安定化することが可能であり、溶媒としてのオクタデセンの使用を可能にすることが以前認められた(ユー・ダブリュ・ダブリュとペン・エックス(Yu,W.W.,&Peng,X.)、Angew.Chem.Int Ed.、第41巻、第13号、2368〜2371ページ(2002年))。他のナノ結晶の合成では、界面活性剤は、形成されるナノ結晶の結晶形態に影響を及ぼすことが示されている(チョウ・ジーら(Zhou,G.,et al.)、Materials Lett.、第59巻、2706〜2709ページ(2005年))。たとえば、油溶性ホスフィン系材料又はホスフィンオキシド系材料のような、特に沸点が40℃以上の有機ホスフィン又はホスフィンオキシドを使用してもよい。ホスフィン類の例には、トリフェニルホスフィン(CAS番号603−35−0)、トリブチル−ホスフィン(CAS番号998−40−3)、トリオクチルホスフィン(CAS番号4731−53−7)、トリラウリルホスフィン(CAS番号6411−24−1)、トリペンタデシルホスフィン(CAS番号72931−32−9)、トリオクタデシルホスフィン(CAS番号39240−11−4)、2,2’−(シクロヘキシルホスフィニデン)ビス−ピリジン(CAS番号380358−80−5)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(CAS番号98327−87−8)、及び1−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]−2,5−ジメチルホスホラン(CAS番号491610−06−1
)が挙げられるが、これらに限定されない。有機ホスフィンオキシドの3つの説明的な例は、トリオクチルホスフィンオキシド(CAS番号78−50−2)、トリス(2−ピリジル)ホスフィンオキシド(CAS番号26437−49−0)、トリフェニルホスフィンオキシド(CAS番号791−28−6)、トリ−2,4−キシリルホスフィンオキシド(CAS番号52944−84−0)、トリス(3,5−ジメチルフェニル)−ホスフィンオキシド(CAS番号381212−20−0)、トリス(2−メチル−2−プロペニル)ホスフィンオキシド(CAS番号94037−62−4)、2,2’,2”−ホスフィニリジントリス(4−メトキシ−ピリジン)(CAS番号498578−67−9)並びに、たとえば、アルキルジメチルホスフィンオキシド又はアルキルジエチルホスフィンオキシドである。
【0041】
好適な有機アミンはたとえば、約3〜約30の主鎖原子、たとえば、主鎖炭素原子を有してもよいアルキルアミン又は約2〜約18の主鎖原子、たとえば、主鎖炭素原子を有してもよいアルケニルアミンであってもよい。さらなる例として、界面活性剤は約3〜約30の主鎖原子、たとえば、主鎖炭素原子を有するアルキルアミンであってもよい。好適なアミンの例には、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン/ラウリルアミン、ジドデシルアミン、トリドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン及びトリオクタデシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
用語アルキルは本明細書で使用されるとき、飽和した脂肪族又は脂環式の部分を言う。用語アルケニルは本明細書で使用されるとき、一般に−C=C−単位の、たとえば、−CH=CH−基の形態での1以上の二重結合を含む不飽和の脂肪族又は脂環式の部分を言う。脂肪族部分の場合、アルキル又はアルケニルの部分は、特に言明されない限り、飽和、又は一不飽和若しくは多不飽和であってもよい、且つ1以上のヘテロ原子を含んでもよい、直鎖又は分枝鎖の炭化水素鎖である。ヘテロ原子は炭素と異なる任意の原子である。典型的な実施態様では、ヘテロ原子は、炭素原子に対して共有結合を形成する。例には、N、O、P、S、Si及びSeが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル部分又はアルケニル部分の一部の実施態様では、同一部分内に数個のヘテロ原子が存在する。炭化水素鎖は、特に言明されない限り、いずれの長さであってもよく、いずれの数の分枝を含有してもよい。炭化水素鎖の分枝は直鎖並びに非芳香族の環状元素を含んでもよい。通常、炭化水素(主)鎖は、1〜約4、1〜約5、1〜約6、1〜約7、1〜約8、2〜約4、2〜約5、2〜約6、3〜約4、3〜約5、3〜約6、1〜約10、1〜約14、1〜約18、2〜約18、1〜約20、1〜約22又は1〜約26の炭素原子を含む。
【0043】
アルケニルラジカルの例は、1以上の二重結合を含有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素ラジカルである。アルケニルラジカルは通常、約2〜約25の炭素原子と1以上のたとえば、2つの二重結合、たとえば、約2〜約10の炭素原子と1つの二重結合を含有する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、これらのラジカルのn−異性体、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル及び3,3−ジメチルブチルである。主鎖及び分枝鎖の双方はさらに、ヘテロ原子、たとえば、N、O、S、Se若しくはSiを含有してもよく、又は炭素原子がこれらのヘテロ原子によって置き換えられてもよい。
【0044】
「環状脂肪族」と呼ばれてもよい脂環式部分の場合、アルキル又はアルケニルの部分は、特に言明されない限り、飽和、又は一不飽和若しくは多不飽和であってもよい非芳香族の環状部分(たとえば、炭化水素部分)である。環状炭化水素部分は、デカリンのような縮合環状の環系も含んでもよく、非芳香族の環状要素並びに鎖要素によって置換されても
よい。環状炭化水素部分の主鎖は、特に言明されない限り、いずれの長さであってもよく、いずれの数の非芳香族の環状要素及び鎖要素を含有してもよい。通常、炭化水素(主)鎖は、1つの環に3、4、5、6、7又は8の主鎖原子を含む。そのような部分の例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。環状炭化水素部分と、存在すれば、環状及び鎖の置換基の双方はさらに、ヘテロ原子、たとえば、N、O、S、Se若しくはSiを含有してもよく、又は炭素原子がこれらのヘテロ原子によって置き換えられてもよい。不飽和の環状炭化水素である脂環式のシクロアルケニルは、約3〜約8の環炭素原子、たとえば、5又は6の環炭素原子を一般に含有する。シクロアルケニルラジカルは通常、各環系に二重結合を有する。シクロアルケニルラジカルは同様に、置換されてもよい。
【0045】
界面活性剤が添加される一部の実施態様では、界面活性剤はキャッピング剤として作用する又はそのように作用することが意図される。各キャッピング剤は、たとえば、トリオクチルホスフィンオキシド又はC〜C18の有機カルボン酸(上記)であってもよい。C〜C18の有機カルボン酸は、たとえば、オレイン酸、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデシルヘキサデカン酸、オクトデカン酸又はn−オクタン酸であることができる。
【0046】
一部の実施態様では、本発明の方法(上記)で使用される金属塩は、有機酸に溶解することができる。たとえば、金属M1及びM2或いはその一方の塩を溶解するための有機酸は、長鎖の有機炭酸、たとえば、約8〜約24の主鎖原子、たとえば、約8〜約18の主鎖原子のような8以上の主鎖原子を含む、通常5以上の主鎖原子、たとえば、主鎖炭素原子のカルボン酸であることができる。長鎖の炭酸は、たとえば、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデシルヘキサデカン酸、オクトデカン酸、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リネライジン酸((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)及びγ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)並びにこれらの混合物であることができる。その他の界面活性剤(たとえば、有機ホスホン酸)の例には、ヘキシルホスホン酸及びテトラデシルホスホン酸が挙げられる。一部の実施態様では、長鎖の炭酸はオレイン酸である。
【0047】
M1及びM2或いはその一方の金属塩はたとえば、PSEのIV族、VII族、VIII族又はII族又はIII族の金属M1の有機塩又は無機塩であることができる。
金属M1及びM2或いはその一方の無機塩は、たとえば、酸化物、炭酸塩、硫酸塩又は硝酸塩であってもよい。金属M1又はM2の有機塩は酢酸塩であってもよく、又は金属M1若しくは金属M2とカルボン酸の塩、たとえば、約5〜約24の主鎖炭素原子(上記)を持つ長鎖の有機炭酸であってもよい。
【0048】
反応は、ミリ秒〜複数時間の範囲で所望の時間行ってもよい。所望であれば、不活性の雰囲気で、すなわち、使用される試薬及び溶媒に関して反応性がない、又は少なくとも検知できる程度には反応性がない気体の存在下で反応を行う。反応性の不活性雰囲気の例は、窒素又は希ガス、たとえば、アルゴン若しくはヘリウムである。しかしながら、不活性気体の雰囲気は一般に不要であることが見出されたことは注目すべきである。
【0049】
本発明者らは、高圧にて沸点の低い非極性溶媒を用いてナノ結晶を形成(「製造」を含む)する場合、本発明の方法が二元、三元及び四元のナノ結晶を製造するのに好適であり
うることを見出した。さらに、方法は、たとえば、金属カルコゲニド及び金属酸化物を製造するのにも好適であることができる。
【0050】
本発明の方法では、溶媒は通常、非水性溶媒である。用語、溶媒によって、反応物質の調製に用いる溶媒及び沸点の低い非極性溶媒の双方を意味する。均質な反応混合物を形成するような方法で溶媒を選択することができる。均質な反応混合物とは、反応物質が1つの相にあることを意味する。説明的な例では、均質な反応混合物を形成することが望ましい。水性溶媒を用いると、特許文献4に記載されたように、2つの相の形成が生じうる。本発明に係るナノ結晶を形成する工程を実行する溶媒は、非極性溶媒であり、一般に非プロトン性の非極性溶媒である。溶媒は沸点(b.p.)が低く、たとえば、標準的な大気圧(1013ミリバール、101325Pa又は1気圧)で、約120℃未満、約100℃未満、約90℃未満、約80℃未満、約70℃未満、約60℃未満、約50℃未満、又は約45℃未満の沸点を含む約150℃未満の沸点である。好適な非極性溶媒の説明的な例には、相当して沸点の低い鉱油、石油エーテル(通常、約40〜60℃の沸点で利用可能)、ヘキサン(沸点69℃)、クロロホルム(沸点61℃)、ジクロロメタン(b.p.40℃)、トルエン(b.p.110.6℃)、ベンゼン(b.p.80.1℃)、ヘプタン(b.p.98.4℃)、シクロヘキサン(b.p.81℃)、ピリジン(b.p.115.2℃)、四塩化炭素(b.p.76.7℃)、二硫化炭素(b.p.46℃)、ジオキサン(b.p.101℃)、ジエチルエーテル(b.p.34.6℃)、エチルビニルエーテル(b.p.35℃)、ジイソプロピルエーテル(b.p.68℃)及びテトラヒドロフラン(b.p.81℃)が挙げられる。
【0051】
いったん反応が完了する又は所望の状態に達すると、単に熱を取り除き、形成された混合物を冷却することによって、反応のさらなる進行を止めることができる。単純な遠心/分散工程によって最終生成物を精製することができる。遠心の後、沈殿した生成物を回収し、乾燥させて粉末を得る。或いは、保存目的で、沈殿した生成物を再びヘキサンのような有機溶媒に再溶解する。後者の工程は分散と呼んでもよい。従って、本発明に係る方法は、形成された1以上のナノ結晶を単離することを含んでもよい。
【0052】
本発明の方法は、ナノ結晶の後処理をさらに含んでもよい。本発明の方法によって得られるナノ結晶は一般に少なくとも本質的に、又は少なくともほとんど単分散ではあるが、所望であれば、サイズ分布を狭くする工程を実施してもよい(たとえば、予防措置又は安全対策)。そのような技法、たとえば、サイズ選択的沈殿は当業者に周知である。ナノ結晶の表面を変えてもよく、たとえば、被覆してもよい。
【0053】
本発明は、本発明の方法に従って得ることができる(「得られた」を含む)ナノ結晶の使用にも関する。説明的な例として、ナノ結晶は、半導体又は診断装置或いはその両方の製造業者において使用されてもよい。
【0054】
「含む」によって、「含む」の語の前に何が記載されようと、包含するがそれに限定されないことを意味する。従って、用語「含む」の使用は、列記された要素は必要とされる又は必須であるが、他の要素は任意であり、存在してもよいし、存在しなくてもよいことを指す。
【0055】
本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書で具体的に開示されない一又は複数の要素、一又は複数の限定の非存在下で好適に実施されてもよい。従って、たとえば、用語「含む」、「包含する」「含有する」などは、拡張的に限定無しで読み取られるべきである。さらに、本明細書で採用される用語及び表現は、限定ではなく説明の言葉として用いられており、示され、記載された特徴又はその一部の同等物を排除する、当該用語及び表現の使用における意図はないが、請求された本発明の範囲内で種々の改変が可能である
ことが認識される。従って、好ましい実施態様及び任意の特徴によって本発明を具体的に開示しているが、本明細書に開示され、その中で具現化された本発明の改変及び変更が当業者によって行われてもよく、そのような改変及び変更は本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0056】
本発明を広く且つ一般的に説明してきた。一般的な開示の範囲内に入るさらに狭い種及び亜属の群のそれぞれも本発明の一部を形成する。このことは、削除された物質が本明細書で具体的に挙げられているどうかにかかわらず、属から対象物を除く条件又は消極的限定を伴う本発明の一般的記載を含む。
【0057】
その他の実施態様は、以下の特許請求の範囲及び非限定的な実施例の範囲内である。さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群で記載される場合、当業者は、それによって本発明がマーカッシュ群の各構成要素又は下位群の構成要素でも記載されることを認識するであろう。
【実施例】
【0058】
実施例1:CdSe量子ドットの合成
典型的な反応では、260℃にて3ミリモル(384mg)のCdOを12ミリモル(3.84mL)のオレイン酸に溶解して均質な溶液を形成した。室温まで冷却した後、30mLのヘキサンと1MのTOP−Se溶液3mLを溶液に加えた。15分間溶液にNを通すことによって溶液を脱気した。その後、それをパー4590反応器に移し、激しい撹拌のもとで迅速に180℃に加熱した。10分〜1時間の範囲であることができる持続時間について溶液をこの温度で維持し、光発光(PL)のモニタリングのために様々な時間に部分標本を取り出した。図9は、CdSe量子ドットのPLスペクトルを説明するグラフを示す。高品質のCdSe量子ドットが得られた。その発光スペクトル(約30nm)の半値全幅(FWHM)と得られた量子収率は1気圧のもとでのODEで調製された量子ドットと同じだった。このことは、ソルボサーマル法を用いて形成されたCdSe量子ドットがそのサイズ分布に関して単分散であることを実証している。また、その量子収率を犠牲にすることなく、メタノールと反応しなかった種を抽出することによって得られた量子ドットを簡単に精製できることも明らかにされる。これは、ODEで調製された量子ドットに匹敵するが、ODEでは、沸点の高いODCを除くために沈殿を行うことが必要であり、それは、調製された量子ドットの量子収率の大きな低下をもたらす。
実施例2:CdTe量子ドットの合成
典型的な反応では、260℃にて3ミリモル(384mg)のCdOを12ミリモル(3.84mL)のオレイン酸に溶解して均質な溶液を形成した。室温まで冷却した後、30mLのヘキサンと1MのTOP−Te溶液3mLを溶液に加えた。15分間溶液にNを通すことによって溶液を脱気した。その後、それをパー4590反応器に移し、激しい撹拌のもとで迅速に180℃に加熱した。20分〜60分の範囲であることができる持続時間について溶液をこの温度で維持し、光発光(PL)のモニタリングのために部分標本を取り出した。図10は、CdTe量子ドットのPLスペクトルを説明するグラフを示す。
実施例3:二元金属酸化物ZnOの合成
典型的な実験では、260℃にて3ミリモルのZnOを7.5ミリモルのオレイン酸に溶解して透明な溶液を形成した。室温まで冷却した後、18mLのヘキサンと6ミリモルのオレイルアミンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分間同じ温度で維持した。次いで単に熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。単純な遠心分散法によって最終生成物を精製した。すなわち、沈殿させたナノ結晶を回収し、乾燥させることができ、又は保存のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解することができる。図2は、本発明のソルボサーマル法によって調製された二元金属酸化物のTEM像を示す。
実施例4:二元金属酸化物MnOの合成
典型的な実験では、200℃にて3ミリモルの酢酸マンガン(MnAc)を7.5ミリモルのオレイン酸に溶解して透明な溶液を形成した。室温まで冷却した後、20mLのヘキサンと6mLのトリオクチルアミン(TOA)を加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分間同じ温度で維持した。次いで単に熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。単純な遠心/分散法によって最終生成物を精製した。すなわち、沈殿させたナノ結晶を回収し、乾燥させることができ、又は保存のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解することができる。図3は、二元金属酸化物MnOのTEM像を示す。
実施例5:二元金属酸化物CoOの合成
典型的な実験では、200℃にて3ミリモルの炭酸コバルト(CoCO)を7.5ミリモルのオレイン酸に溶解して透明な溶液を形成した。室温まで冷却した後、20mLのヘキサンと2mLのオレイルアミンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に300℃に加熱し、1時間同じ温度で維持した。次いで単に熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。単純な遠心/分散法によって最終生成物を精製した。すなわち、沈殿させたナノ結晶を回収し、乾燥させ、それによって粉末を得ることができ、又は保存のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解することができる。図4は、二元金属酸化物CoOのTEM像を示す。
実施例6:三元量子ドットZnCdSeの合成
典型的な実験では、320℃にて0.3ミリモルのZnOと0.3ミリモルのCdOを2.4ミリモルのオレイン酸に溶解して透明で均質な溶液を形成した。60℃まで冷却した後、2gのトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)と20mLのヘキサンと一緒に2.4mLのSe溶液(1MのTOP−Se溶液)と5gのヘキサデシルアミン(HDA)を加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分〜3時間同じ温度で維持した。熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。単純な遠心/分散法によって得られたナノ結晶を精製した。すなわち、沈殿させたナノ結晶を回収し、乾燥させることができ、又は沈殿させた生成物を保存のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解することができる。図5aは、ヘキサンによるソルボサーマル法によって調製されたZnCdSeのTEM像を示す。上述の手順を保持し、(i)Zn/Cdの比を1:2、2:1、1:5及び5:1に変えて、(ii)TOPOを用いずに別の実験を行った。図5bは、TOPOを使用しないでソルボサーマル法によって調製されたZnCdSeのTEM像を示す。実施例7:三元量子ドットMgFeの合成
典型的な実験では、320℃にて0.4ミリモルの炭酸マグネシウムと0.4ミリモルの酢酸第一鉄を3.0ミリモルのオレイン酸に溶解して透明で均質な溶液を形成した。60℃まで冷却した後、5gのオレイルアミンと20mLのヘキサンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分〜3時間同じ温度で維持した。熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。遠心後、沈殿させた生成物を回収し、乾燥させたか、又は保存のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解した。図6aは、三元MgFeナノキューブのTEM像を示す。
実施例8:三元量子ドットCaFeの合成
典型的な実験では、300℃にて0.3ミリモルの亜硝酸カルシウムと0.6ミリモルの酢酸第一鉄を2.6ミリモルのオレイン酸に溶解して透明で均質な溶液を形成した。60℃まで冷却した後、6gのオレイルアミンと20mLのヘキサンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分〜3時間同じ温度で維持した。熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。遠心後、沈殿させたナノ結晶を回収し、乾燥させたか、又は保存目的のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解した。図6bは、三元CaFe
ナノキューブのTEM像を示す。
実施例9:CaFe(フェライト型)の合成
350℃にて2ミリモルの酢酸第三鉄と2ミリモルの炭酸ストロンチウムを6ミリモルのオレイン酸に溶解して透明で均質な溶液を形成した。冷却した後、2ミリモルのオレイルアミンと15mLのヘキサンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分〜2時間同じ温度で維持した。熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。得られた混合物を遠心分離に供し、得られたナノ結晶を回収して乾燥させたか、又は保存目的のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解した。図6cは、三元SrFeナノキューブのTEM像を示す。
実施例10:ZnFeナノ結晶
典型的な実験では、320℃にて0.3ミリモルの硫酸亜鉛と0.3ミリモルの酢酸第一鉄を2.6ミリモルのオレイン酸に溶解して透明で均質な溶液を形成した。60℃まで冷却した後、6gのオレイルアミンと20mLのヘキサンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分〜3時間同じ温度で維持した。熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。単純な遠心/分散法によって最終生成物を精製した。すなわち、沈殿させた生成物を回収し、乾燥させ、それによって粉末を得たか、又は保存のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解した。図7aは、三元ZnFeナノ結晶のTEM像を示す。
実施例11:CoFeナノキューブの合成
典型的な実験では、200℃にて3.0ミリモルの炭酸コバルト(CoCO)と3.0ミリモルの酢酸第一鉄を7.5ミリモルのオレイン酸に溶解して透明な溶液を形成した。室温まで冷却した後、20mLのヘキサンと2mLのオレイルアミンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に300℃に加熱し、1時間同じ温度で維持した。次いで、単に熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。単純な遠心/分散法によって最終生成物を精製した。すなわち、沈殿させたナノ結晶を回収し、乾燥させたか、又はそれらを保存のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解した。図7bは、三元金属酸化物CoFeナノキューブのTEM像を示す。
実施例12:MnFeナノキューブの合成
典型的な実験では、200℃にて3.0ミリモルの硫酸マンガンと6.0ミリモルの酢酸第一鉄を15ミリモルのオレイン酸に溶解して透明な溶液を形成した。室温まで冷却した後、35mLのヘキサンと12mLのオレイルアミンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分間同じ温度で維持した。次いで、単に熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。単純な遠心/分散法によって最終生成物を精製した(上記)。図7cは、三元金属酸化物MnFeのTEM像を示す。
実施例13:NiFeの合成
典型的な実験では、200℃にて3.0ミリモルの硫酸ニッケルと2.0ミリモルの酢酸第一鉄を7.5ミリモルのオレイン酸に溶解して透明な溶液を形成した。室温まで冷却した後、20mLのヘキサンと2mLのオレイルアミンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に300℃に加熱し、1時間同じ温度で維持した。次いで、単に熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。単純な遠心/分散法によって最終生成物を精製した。すなわち、沈殿させたナノ結晶を回収し、乾燥させことができ、又はそれらを保存のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解することができる。
実施例14:NiFeナノ結晶の合成
典型的な実験では、150℃にて1.0ミリモルの酢酸ニッケルと2.0ミリモルのアセチルアセトン酸第三鉄を9.0ミリモルのオレイン酸に溶解して均質な溶液を形成した
。60℃まで冷却した後、5mLのオレイルアミンと20mLのヘキサンを加え、次いで100mLのパー反応器4950にそれを移し、Nガスでパージした。撹拌のもとで混合物を迅速に320℃に加熱し、30分〜1時間同じ温度で維持した。熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。図8bは、このソルボサーマル調製で得られた星形状の三元NiFeナノ結晶のTEM像を示す。図8aは、周囲条件下で調製した球状のNiFeナノ結晶のTEM像を示す。その際、150℃にて5mLのトリオクチルアミンと5mLのODEと一緒に1.0ミリモルの酢酸ニッケルと2.0ミリモルのアセチルアセトン酸第三鉄を9.0ミリモルのオレイン酸に溶解して均質な溶液を形成した。次いで1気圧で撹拌しながら混合物を迅速に320℃に加熱し、30分〜1時間同じ温度で維持した。熱を取り除き、冷却することによって反応を止めた。得られた混合物を遠心分離に供し、得られたナノ結晶を回収して乾燥させたか、又は保存目的のためにヘキサンのような有機溶媒に再溶解した。
【0059】
図8bは、本発明のソルボサーマル法を用いて得られる三元金属酸化物の例としての「星」形状のNiFeナノ結晶のTEM像を示す。図8aは、周囲条件下で調製された相当する三元金属酸化物のTEM像を示す。これらのTEM像は、特定のナノ結晶の形態の調節には高い圧力が好都合であることを説明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式M1Aの二元ナノ結晶を形成するための方法において、M1が元素の周期系(PSE)のII族、III族、IV族、VII族及びVIII族のうちの1つから選択される金属であり、Aが元素の周期系(PSE)のVI族又はV族から選択される元素であり、該方法が
(i)金属M1を含有する金属前駆体と元素Aと沸点の低い非極性溶媒とを含む均質な反応混合物を形成する工程と、
(ii)高圧下で、ナノ結晶を形成するために好適な高温に前記均質な反応混合物を加熱する工程とを備える方法。
【請求項2】
一般式M1Oの二元ナノ結晶を製造するための方法において、M1が元素の周期系(PSE)のII族、III族、IV族、VII族及びVIII族のうちの1つから選択される金属であり、Oが酸素であり、該方法が
(i)金属M1と酸素供与体を含有する金属前駆体と沸点の低い非極性溶媒とを含む均質な反応混合物を形成する工程と、
(ii)高圧下で、ナノ結晶を形成するために好適な高い温度に前記均質な反応混合物を加熱する工程とを備える、方法。
【請求項3】
前記高圧とは50〜100気圧(50000〜101000ヘクトパスカル)である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記沸点の低い非極性溶媒が、大気圧(1013ヘクトパスカル)で100℃未満の沸点を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記沸点の低い非極性溶媒が、大気圧(1013ヘクトパスカル)で80℃未満の沸点を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記沸点の低い非極性溶媒が、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ピリジン、四塩化炭素、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びテトラヒドロフランから成る群から選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記均質な反応混合物が溶液である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記均質な反応混合物が20〜70℃の温度で形成される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物がかき混ぜのもとで加熱される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記かき混ぜが撹拌することによって達成される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ナノ結晶の形成を可能にするために十分な時間、反応温度を維持する請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
界面活性剤を添加する工程をさらに備える請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
界面活性剤が、有機カルボン酸、有機リン酸塩、有機ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機アミン及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有機カルボン酸が8〜18の主鎖原子を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有機カルボン酸が、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデシルヘキサデカン酸、オクトデカン酸、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リネライジン酸(linelaidic acid)((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、γ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
有機ホスフィンオキシドがトリオクチルホスフィンオキシドである請求項13に記載の方法。
【請求項17】
有機アミンが、3〜30の炭素原子を有するアルキルアミン及び2〜18の炭素原子を有するアルケニルアミンの1つである請求項13に記載の方法。
【請求項18】
アルキルアミンが、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン/ラウリルアミン、ジドデシルアミン、トリドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン及びトリオクタデシルアミンから成る群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
100℃〜450℃の温度にて金属M1の塩を有機酸に溶解することによって金属前駆体が形成される請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
金属M1の塩を溶解するための有機酸が8以上の主鎖原子のカルボン酸である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
カルボン酸が、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸、([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リネライジン酸((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)及びγ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)から成る群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
金属M1の塩が有機塩又は無機塩である請求項19に記載の方法。
【請求項23】
金属M1の無機塩が、酸化物、炭酸塩、硫酸塩及び硝酸塩から成る群から選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
金属M1の有機塩が、有機カルボン酸の塩である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
有機カルボン酸が、酢酸および5〜20の主鎖炭素原子を有するカルボン酸の1つである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
M1が、Cd、Zn、Mg、Ca、Ba、Al、Ga、In、Pb、Sn、Sr、Mn、Fe、Co、Ni及びIrから選択される請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
元素Aが好適な溶媒に溶解される請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
元素Aが、S、Se、Te、O、P、Bi及びAsから選択される請求項1又は請求項3〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
一般式M1Aの二元ナノ結晶が形成され、前記二元ナノ結晶は、式CdSe、CdTe、CdS、PbSe、PbTe、PbS、SnSe、ZnS、ZnSe及びZnTeの1つである請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
一般式M1Oの二元ナノ結晶が形成され、前記二元ナノ結晶は、式CdO、PbO、MnO、CoO、ZnO及びFeOの1つである請求項2〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
一般式M1M2Aの三元ナノ結晶を形成するための方法において、M1及びM2が互いに独立して、PSEのII族、III族、IV族、VII族及びVIII族のうちの1つから選択される金属であり、AがPSEのVI族又はV族から選択される元素であり、該方法が
(i)金属M1及びM2を含有する金属前駆体と元素Aと沸点の低い非極性溶媒とを含む均質な反応混合物を形成する工程と、
(ii)高圧下で、ナノ結晶を形成するために好適な高温に前記均質な反応混合物を加熱する工程とを備える、方法。
【請求項32】
一般式M1ABの三元ナノ結晶を形成するための方法において、M1が、PSEのII族、III族、IV族、VII族及びVIII族の1つから選択される金属であり、A及びBが互いに独立して、PSEのV族又はVI族から選択される元素であり、該方法が
(i)金属M1を含有する金属前駆体と元素A及び元素Bと沸点の低い非極性溶媒とを含む均質な反応混合物を形成する工程と、
(ii)高圧下で、ナノ結晶を形成するために好適な高温に前記均質な反応混合物を加熱する工程とを備える、方法。
【請求項33】
一般式M1M2Oのナノ結晶を形成するための方法において、M1及びM2が互いに独立して、PSEのII族、III族、IV族、VII族及びVIII族の1つから選択される金属であり、Oが酸素であり、該方法が
(i)金属M1及びM2と酸素供与体とを含有する金属前駆体と、沸点の低い非極性溶媒とを含む均質な反応混合物を形成する工程と、
(ii)高圧下で、ナノ結晶を形成するために好適な高温に前記均質な反応混合物を加熱する工程とを備える、方法。
【請求項34】
前記高圧とは50〜100気圧(50000〜101000ヘクトパスカル)である請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記沸点の低い非極性溶媒が、大気圧(1013ヘクトパスカル)で100℃未満の沸点を有する請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記沸点の低い非極性溶媒が、80℃未満の沸点を有する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記沸点の低い非極性溶媒が、ヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、シクロヘキサン、ピリジン、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びテトラヒドロフラン及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項30〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記均質な反応混合物が溶液である請求項31〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記均質な反応混合物が20〜70℃の温度で形成される請求項31〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記反応混合物がかき混ぜのもとで加熱される請求項31〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記かき混ぜが撹拌することによって達成される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ナノ結晶の形成を可能にするために十分な時間、反応温度を維持する請求項31〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
界面活性剤を添加する工程をさらに備える請求項31〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記界面活性剤が、有機カルボン酸、有機リン酸塩、有機ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機アミン及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
有機カルボン酸が8〜18の主鎖原子を有する請求項44に記載の方法。
【請求項46】
有機カルボン酸が、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデシルヘキサデカン酸、オクトデカン酸、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リネライジン酸((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、γ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
有機ホスフィンオキシドがトリオクチルホスフィンオキシドである請求項44に記載の方法。
【請求項48】
有機アミンが、3〜30の炭素原子を有するアルキルアミン及び約2〜約18の炭素原子を有するアルケニルアミンの1つである請求項44に記載の方法。
【請求項49】
100℃〜450℃の温度にて金属M1の塩及び金属M2の塩を有機酸に溶解することによって金属前駆体が形成される請求項31〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
金属M1の塩及び金属M2の塩を溶解する有機酸は、8以上の主鎖原子のカルボン酸である請求項49に記載の方法。
【請求項51】
主鎖カルボン酸が、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸、([Z
]−オクタデカ−9−エン酸)、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リネライジン酸((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)及びγ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)から成る群から選択される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
金属M1の塩及び金属M2の塩が独立して有機塩又は無機塩である請求項49に記載の方法。
【請求項53】
金属M1及び金属M2の少なくとも一方の無機塩が酸化物、炭酸塩、硫酸塩及び硝酸塩から成る群から独立して選択される請求項52に記載の方法。
【請求項54】
金属M1及び金属M2の少なくとも1つの有機塩が有機カルボン酸の塩である請求項52に記載の方法。
【請求項55】
有機カルボン酸が、酢酸及び5〜20の主鎖炭素原子を有するカルボン酸の1つである請求項54に記載の方法。
【請求項56】
M1及びM2が互いに独立してCd、Zn、Mg、Sr、Ca、Ba、Al、Ga、In、Pb、Sn、Mn、Fe、Co、Ni及びIrから選択される請求項31〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
元素A及びBが互いに独立して好適な溶媒に溶解される請求項31〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
元素A及びBが互いに独立してS、Se、Te、P、Bi及びAsから選択される請求項30,31,33〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
一般式M1M2Aの三元ナノ結晶が形成され、該三元ナノ結晶は、式ZnCdSe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、SnPbS、SnPbSe及びSnPbTeの1つである請求項31〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
一般式M1ABの三元ナノ結晶が形成され、該三元ナノ結晶は、式CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe及びPbSTeの1つである請求項32〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
一般式M1M2Oの三元ナノ結晶が形成され、該三元ナノ結晶は、式MgFe、CaFe、SrFe、ZnFe、NiFe、CoFe及びMnFeの1つである請求項33〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
一般式M1M2ABの四元ナノ結晶を形成するための方法において、M1及びM2が互いに独立して、PSEのII族、III族、IV族、VII族及びVIII族の1つから選択される金属であり、A及びBが互いに独立してPSEのVI族又はV族から選択される元素であり、該方法が
(i)金属M1及びM2を含有する金属前駆体と元素Aと元素Bと沸点の低い非極性溶媒とを含む均質な反応混合物を形成する工程と、
(ii)高圧下で、ナノ結晶を形成するために好適な高温に前記均質な反応混合物を加
熱する工程とを備える方法。
【請求項63】
前記高圧とは50〜100気圧(50000〜101000ヘクトパスカル)である請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記沸点の低い非極性溶媒が、大気圧(1013ヘクトパスカル)で100℃未満の沸点を有する請求項62又は63に記載の方法。
【請求項65】
前記沸点の低い非極性溶媒が、大気圧(1013ヘクトパスカル)で80℃未満の沸点を有する請求項62〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記沸点の低い非極性溶媒が、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、シクロヘキサン、ピリジン、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びテトラヒドロフラン及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項62〜65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記均質な反応混合物が溶液である請求項62〜66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記均質な反応混合物が20〜70℃の温度で形成される請求項62〜67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記反応混合物がかき混ぜのもとで加熱される請求項62〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記かき混ぜが撹拌することによって達成される請求項69に記載の方法。
【請求項71】
ナノ結晶の形成を可能にするために十分な時間、反応温度を維持する請求項62〜70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
界面活性剤を添加する工程をさらに備える請求項62〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記界面活性剤が、有機カルボン酸、有機リン酸塩、有機ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機アミン及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項72に記載の方法。
【請求項74】
有機カルボン酸が8〜18の主鎖原子を有する請求項73に記載の方法。
【請求項75】
有機カルボン酸が、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデシルヘキサデカン酸、オクトデカン酸、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リネライジン酸((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、γ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
有機ホスフィンオキシドがトリオクチルホスフィンオキシドである請求項73に記載の方法。
【請求項77】
有機アミンが、3〜30の炭素原子を有するアルキルアミン及び約2〜約18の炭素原子を有するアルケニルアミンの1つである請求項73に記載の方法。
【請求項78】
アルキルアミンが、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン/ラウリルアミン、ジドデシルアミン、トリドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン及びトリオクタデシルアミンから成る群から選択される請求項77に記載の方法。
【請求項79】
100℃〜450℃の温度にて金属M1の塩及び金属M2の塩を有機酸に溶解することによって金属前駆体が形成される請求項63〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
金属M1の塩及び金属M2の塩を溶解するための有機酸が8以上の主鎖原子のカルボン酸である請求項79に記載の方法。
【請求項81】
カルボン酸が、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸、([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、n−ウンデカン酸、リノール酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リネライジン酸((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)及びγ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)から成る群から選択される請求項80に記載の方法。
【請求項82】
金属M1の塩及び金属M2の塩が独立して有機塩又は無機塩である請求項76に記載の方法。
【請求項83】
金属M1及び金属M2の少なくとも1つの無機塩が、酸化物、炭酸塩、硫酸塩及び硝酸塩から成る群から選択される請求項82に記載の方法。
【請求項84】
金属M1及び金属M2の少なくとも1つの有機塩が、有機カルボン酸の塩である請求項82に記載の方法。
【請求項85】
有機カルボン酸が、酢酸及び5〜20の主鎖炭素原子を有するカルボン酸の1つである請求項84に記載の方法。
【請求項86】
金属M1及びM2が互いに独立してCd、Zn、Mg、Ca、Ba、Al、Ga、In、Pb、Sn、Sr、Mn、Fe、Co、Ni及びIrから選択される請求項63〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
元素A及びBが互いに独立して好適な溶媒に溶解される請求項63〜86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
元素A及びBが互いに独立してS、Se、Te、O、P、Bi及びAsから選択される請求項62〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
一般式M1M2ABの四元ナノ結晶が形成され、該四元ナノ結晶は、式CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe及びHgZnSTeの1つである請求項62〜8
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
(iii)形成された1以上のナノ結晶を単離する工程をさらに備える請求項1〜89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
1以上のナノ結晶を単離する工程が遠心分離による精製を含む請求項90に記載の方法。
【請求項92】
1以上のナノ結晶を単離する工程が分散による精製を含む請求項90に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【公表番号】特表2010−540398(P2010−540398A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527916(P2010−527916)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000381
【国際公開番号】WO2009/045177
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】