説明

ナノ複合材料を含む医療機器

医療機器は、複合材料を有する構成部品を含む。複合材料は、マトリクス材と、モリブデンおよび硫黄を有する粒子とを含む。粒子は、さらにヨウ素を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ以上のナノ複合材料からなる一つ以上の構成部品を含む医療機器に関する。医療機器の製造にナノ複合材料を利用することにより、ナノ複合材料の特定の性質を医療機器産業において特に有利な方法で活用することができる。
【背景技術】
【0002】
医療機器産業は、多種多様な特性を示す製品を求めて製品や機器を製造および使用する産業の単なる一例である。機器の一例として経腔的医療機器がある。このような機器は、特に治療現場から離れている患者の血管系の部位に導入され、これにともなう治療は患者にとって不快な場合がある。患者が受け入れやすく精神的ダメージを最小化するために、経腔的機器は一般的に多様で時には相違する性能特性を示す。例えば、このような機器の多くは、治療が必要な場所においての操作および挿入もしくは操作または挿入についての良好な操作性を示しつつも、操作された場合でも曲がりやねじれが生じないように長さ方向の強度が十分にあることが望ましい。実際多くの医療機器には、意図する目的に従い効果を発揮することができるように、上記の組合せの他に、強度、熱安定性、構造的安定性、柔軟性、不透過性、X線不透過性、保存性、潤滑性および殺菌処理に対する安定性等が要求される。
【0003】
使用される材料の特性が、全体的な機器の特性に影響を与えることがよくあることから、多くの医療機器の治療効果にとって材料の選択は非常に重要である。しかしながら、一つの材料、または材料を組み合せたものでさえ、利用可能な特性の範囲は、医療機器の用途に対して望まれているほど広くはないことが多い。その結果、多くの医療機器には、所望および所要の、もしくは所望または所要の特性を提供するために、材料の組合せによる製造、特別な方法による加工、表面処理、またはその他の加工が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、医療機器産業において医療機器に必要とされる特性範囲を提供することができるさらなる材料の開発や発見が引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複合材料(例えば、ナノ複合材料)を備える医療機器を提供する。医療機器に対するナノ複合材料の利用により、しばしば所望される様々な特性の多く、あるいは全てを備えた機器を提供することができる。すなわち、そのような機器は非常に多くの場合、相違する特性を示すことをしばしば望まれており、膨大な材料と加工技術との利用なしにそのような機器を製造することは困難である。本願で述べるように、より少ない材料および加工技術もしくは材料または加工技術により、多くの望ましい特性を備えた医療機器を作ることができ、あるいは、特性の一つ以上が強化された医療機器を作ることができる。
【0006】
一つの特徴として、本発明は、少なくとも一つのナノ複合材料を備える医療機器であることを特徴とする。ナノ複合材料は、機器の一つ以上の構成部品を作るために有効に用いられることができ、または機器全体を作る場合にも利用されることできる。ナノ複合材料は、マトリクス材と一以上の複数の充填剤粒子とから構成されることが望ましい。いくつかの実施形態では、ナノ複合材料は、第1の材料からなる第1の充填材粒子と、第2の材料からなる一以上の他の複数の充填材粒子を含むマトリクスを備える。
【0007】
また、ナノ粒子充填材を選択する工程と、マトリクス材を選択する工程と、充填材とマトリクス材とからなるナノ複合材料を作成する工程と、ナノ複合材料からなる少なくとも一つの医療機器の構成部品を作成する工程とを含む、独創的な医療機器の製造方法を提供する。代表的な医療機器は、米国特許第5,843,032号明細書、第5,156,594号明細書、第5,538,510号明細書、第4,762,129号明細書、第5,195,969号明細書、第5,797,877号明細書、第5,836,926号明細書、第5,534,007号明細書、第5,040,548号明細書、第5,350,395号明細書、第5,451,233号明細書、第5,749,888号明細書、第5,980,486号明細書、および第6,129,708号明細書に開示されているバルーン、カテーテル、フィルター、およびステント・デリバリー・システムを含む。各々の全ての開示は、全ての目的のため本願において参照することにより本願に組み込まれる。
【0008】
それらの医療機器では、ナノ複合材料を含まない当該医療機器と比較して特性が強化され、また当該機器にない特性が強化される。その結果、医療機器は、使用に際して特定の長所を提供することができる。この点について、本発明はまた、少なくとも一つのナノ複合材料を備える医療機器を治療または診断対象の体に接触させる工程を含む、治療または診断方法を特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に示す実施形態は、包括的または制限的なものにすることを意図するものではない。むしろ実施形態は、当業者が本発明の原理と実施を理解できるように説明している。
本発明は、少なくとも一つのナノ複合材料からなる少なくとも一つの構成部品を含む医療機器を特徴とする。材料が、心臓および循環器系もしくは心臓または循環器系の一時的または恒久的な治療用として意図された医療機器に適用された場合、特に長所を発揮することができる。例えば、治療機器(血管形成術用カテーテル、血管造影用カテーテル、ステント・デリバリー・システム等)用として、機器は、遠位端を所望の部位へ導こうとして近位端に加えられた力を遠位端へ伝える十分な「押し込み性」を備えることが望ましい。そのよう機器はまた、近位端で操作者が行う上下左右のような位置動作を遠位端で所望の動作に変換することができるように「追従性」を備えることが望ましい。そのような機器はまた、所望の部位に到達するまで狭くて時には屈曲した箇所を通過する場合、機器が周辺組織に対して実質的な傷害の原因とならないように十分な「柔軟性」を備えることが望ましい。最後に、所望の部位までガイド・ワイヤおよび体を簡単に通過して到達することができるように、これらの医療機器の外面あるいは内面が十分に滑らかであることが多くの場合望まれる。
【0010】
実質的に恒久的な治療に使用されることが意図された機器は、これに相応する多くの望ましいかつ多様な特性を備えている。例えば、特定部位の治療または交換ために心臓や血管系への移植が意図された人工心臓弁、人工静脈と動脈またはステントのような機器は、存在するだけでなく機能しなくてはならないという縛られた断続的継続的な環境に耐えるのに十分頑丈な機械的強度を備えており、しかも柔軟性を有することが望ましい。機器はまた、長期間体内に留まることが意図されていることから実質的に抗血栓性であることが望ましい。さらに特定の用途では、そのような機器は生物分解性であることが望ましい。
【0011】
所望の特性の組合せを実現するために、医療機器の製造において一種類以上の材料がよく採用される。例えば、所望の係数を有する複合材料を形成するために、強化充填材粒子をマトリクス材に加えることができる。すなわち、マトリクス材中で応力伝達要素として作用することにより、また歪みを集中させるか増加させることにより、もしくはそのいずれかにより、これが可能である。従来、そのような複合材料中で使われた充填材粒子は、ガラス繊維、アモルファス凝集体または黒鉛状炭素、金属粉等からなり、少なくとも最大外形での直径が約1マイクロメーターまたはそれ以上である。そのような複合材料が多くの医療機器の用途において有用だが、他の多くの医療機器用途における許容範囲としては、従来の大型サイズ充填粒子が許容されない場合がある。
【0012】
最近の充填材粒子の新しい分類では、少なくとも約1マイクロメーター未満のサイズを有していると説明されている。そのようなナノ構造粒子を含む充填重合体系がナノ複合材料と呼ばれている。これらの新しい材料は、医療機器の製造において多くの利点を提供することができる。医療機器の製造におけるナノ複合材料の使用は、その加工性に影響を与えることなくナノ複合材料の係数を制御する能力を提供することができる。さらにナノ複合材料の使用は、医療機器の製造に用いられる複合材料と他の材料との間の互換性に対して実質的悪影響を与えることなくこれらの利点を提供することができる。最後に、ナノ複合材料と他のナノ複合材料を組み合せることにより、物理的特性における変化の方向性を制御することができる。
【0013】
小規模な物理的特性の調整に加えて、ナノ複合材料は医療機器の用途において他の重要な利点を提供することができる。例えば、多くの場合ナノ充填材粒子のサイズは可視光の波長よりも小さいことから、前述の利点を得るためにナノ複合材料を使用することができる一方で、透明材料を提供することもできる。このような透明ナノ複合材料は、例えば光学的に透明な放射線不透過性の材料を提供するにあたり有用である。医療機器におけるナノ複合材料の使用に対する他の利点としては、摩擦係数の低減、生体適合性の提供と生物分解性の付与等の効果が挙げられる。
【0014】
そして、また特定の理論に限定されることなく、ナノ粒子のサイズが故に、従来の充填重合体と比べてナノ複合材料では充填材粒子とマトリクス材との間の接触面積が増加すると考えられている。この効果は、従来の充填材粒子よりも小さいだけでなく高アスペクト比(すなわち、厚さと比較して横寸法の比率が高い)を有する充填材粒子を利用することでさらに強化されることができる。ナノ複合材料において、より少ない充填材を利用すると同時に、該当する従来の充填重合体と比較して同程度かそれ以上の特性を得ることができる。大いに強化されたのは性能および品質管理だけでなく、多くの医療機器の用途における重要な利点としての経費節減も強化されていると見ることができる。
【0015】
本願で用いられる「ナノ複合材料」は一般的に、マトリクス材と複数の充填材粒子とを備える複合材料を指し、その充填材粒子は従来の充填複合材料で利用されるものよりも小さい。さらに具体的には、この「ナノ複合材料」は、少なくとも約1000mm未満の外形を有する一以上の複数の充填材粒子を備えるマトリクス材を含む。いくつかの実施形態では、充填材粒子のサイズは1nmから100nmの間である。ナノ複合材料は、強化された度合いに対してマトリクス材と同じ特性をナノ複合材料が有利に示すように設計されることができ、またナノ複合材料はマトリクス材単独で示されるものに加えた特性を示すことができる。医療機器の一つ以上の構成部品の製造におけるナノ複合材料の利用により、医療機器産業において特に有用な方法でナノ複合材料の特定の特性を活用することができる。
【0016】
体との治療的接触を意図した医療機器(すなわち、治療または診断目的で一時的または恒久的に体に導入することを意図した医療機器)に利用される場合、この複合材料は特に有用であると考えられている。そのような機器は、例えば、泌尿器、心臓血管、筋骨格、胃腸または肺における用途で用いられる。泌尿器における用途で有用な医療機器は、例えばカテーテル、シャント、ステント等である。心臓血管における用途で有用な典型的な医療機器は、ステント、血管造影用カテーテル、冠状動脈または末梢血管形成術カテーテル(オーバー・ザ・ワイヤ、シングル・オペレータ・エクスチェンジまたは固定ワイヤ・カテーテルを含む)、バルーン、ガイド・ワイヤ、ガイド・カテーテル、人工血管、人工弁、フィルター、血管閉鎖系とシャント等を含む。筋骨格用医療機器には、例えば人工靭帯と人工装具とが挙げられる。胃腸における用途で有用な医療機器の一例にはシャントがある。肺用医療機器は一例として人工装具を含む。
【0017】
具体的な用途の一例としては、経腔的医療機器がある。そのような機器は、例えばカテーテル(例えば、ガイド・カテーテル、血管形成術用カテーテル、バルーン・カテーテル、血管造影用カテーテル等)、シャント、ステント、ステント・デリバリー・システム(例えば、自己拡張型およびバルーン拡張型)、フィルター等を含む。これらの機器は多くの場合、1つないし3つまたはそれ以上の材料の層からなる押出し構成部品を含む。いくつかの実施形態では、そのような機器は、少なくとも1つのナノ複合材料を含む。これは、機器の特定の構成部品が、ナノ複合材料と非ナノ複合材料とを含むことができるということである。もし多層が使われる場合、少なくとも一層はナノ複合材料であることができる。層の数と構成とは、機器が所望の特性を獲得および提供もしくは獲得または提供するように選択されることできる。さらに、いくつかの実施形態では、ナノ複合材料の充填材粒子の数量は、ナノ複合材料の異なる範囲で変化することができる。充填材密度における前述のような変更は、例えば縦軸方向の柔軟性等、様々な特性を持つ機器を提供することができる。
【0018】
典型的な実施形態として、そのような医療機器には、血管造影システム、血管形成術用バルーン、ガイド・カテーテル、またはステント・デリバリー・システム用のカテーテル・シャフトがある。そのような機器は多くの場合、並列または同軸配置のマルチルーメンを含む。同軸配置は一般的に、一つ以上のルーメンを有しており、ルーメンは通常相互関係を有して取り付けられ、共押出し単独構成部品として設けられ、または個別に押出してマルチルーメン構造を作る従来のいずれかの製造方法により組み立てられる。そのようなマルチルーメン構造を備えるチューブ状構成部品の一部または全部は、ナノ複合材料から形成されることができる。いくつかの実施形態では、チューブ状構成部品は、複数の層から構成されることができ、少なくともチューブ状壁の一つの層がナノ複合材料である。そのような機器において、層の数および構成は、多層チューブ状構成部品において所望の特性を獲得および提供もしくは獲得または提供するように選択されることができる。さらに、機器の外形を多様にすることができる。例えば、多層チューブ状壁の層を、壁の近位端から遠位端まで発散型または収束型テーパー状にすることができる。
【0019】
一つの具体的な実施形態の例として、医療機器がカテーテル・シャフトの場合、通常スチール編込みにより強化されるが、代わりに(または追加的に)、例えば充填材粒子としてセラミック・ナノ繊維からなるナノ複合材料を利用して有利にカテーテル・シャフト材を作成することができる。そのようなナノ複合材料は通常の押出しで加工可能であることから、シャフトの箇所を選択的に強固にするために、間欠押出しおよび多層押出しもしくは間欠押出しまたは多層押出しを使用して、セラミック・ナノ繊維を選択的に含むことができる。さらに有利に、所望であれば、回転または逆回転押出しの採用により、そのセラミック・ナノ繊維を配向させることができ、その配向によりシャフトのトルク性能を強化することができる。もしそのような配向を望まないなら、より無作為化されたセラミック・ナノ繊維の配向を得るために、超音波振動を押出し加工に導入することができる。これらの加工上の利点に加えて、そのようなシャフト材は、所望の程度の補強をカテーテル・シャフト材に提供する一方で、MRI用途にも有用である。
【0020】
医療機器に使用されるナノ複合材料は、特に制限されることはない。むしろ、所望の医療機器の中で所望の特性の少なくとも一つを示すように設計されたいずれのナノ複合材料も使うことができる。全般的にナノ複合材料は、マトリクス材または充填材粒子として使われる材料を制限することはない。むしろここで開示されているように利用されるナノ複合材料を、マトリクス材のいずれか、またはその組合せ、また一以上の複数の充填材粒子から構成することができる。
【0021】
ナノ複合材料で使用される特定のマトリクス材と充填材粒子との選択は、ナノ複合材料が組み込まれる医療機器の使用目的、およびそのように使用する機器の所望の特性により決定される。このように、マトリクス材と充填材粒子材料とは、マトリクス材単独では示されないであろう選択された特性をナノ複合材料により示すことができるように、例えばマトリクス材の特性を強化するか、マトリクス材にはない特性を追加するために選択されることができる。そのような強化および追加は、そのような機器の製造において、機器全体として強化された特性を提供することができ、より優れた品質管理または強化された耐性を提供することができる。
【0022】
それゆえ一般的には、マトリクス材は、そのような医療機器における使用に適当な、または後に適当と判断されるいずれの材料でもよい。マトリクス材は、ナノ複合材料の構成部品を含まない該当医療機器において過去または現在利用され、または将来の使用が考えられるいずれの材料でもよい。マトリクス材は、有機的、無機的または両材料の混合により構成されることができる。さらに、マトリクス材は、単独の材料または材料の組合せでもよく、例えば、マトリクス材は、金属合金、共重合体または重合体の混合物でもよい。
【0023】
典型的なマトリクス材は、例えば、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とのような重合体を含む。マトリクス材としての使用に適当な熱可塑性樹脂の例は、ポリオレフィン、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6/12、ナイロン6およびナイロン66等のポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリビニル、ポリアクリル、フッ素重合体、それらの共重合体およびブロック共重合体(例えば、ペバックス(登録商標)等のポリエーテルとポリアミドのブロック共重合体など)、およびそれらの混合物を含む。マトリクス材として利用されることができる熱硬化性樹脂の代表的な例は、EPDM、エピクロロヒドリン、ニトリルブタジエンエラストマー、シリコン等のエラストマーを含む。エポキシ、イソシアネート等の従来の熱硬化性樹脂もまた使用されることができる。生体適合性の熱硬化性樹脂もまた使用されることができ、これらは、例えば、生物分解性ポリカプロラクトン、ポリウレタンと尿素とを含むポリ(ジメチルシロキサン)、およびポリシロキサンを含む。
【0024】
同様に、充填材粒子は、充填材として医療機器における使用に適当な、または後に適当と判断されるいずれかの材料から構成されることができる。充填材粒子は、中に組み込まれたときに少なくともマトリクス材の物理的、機械的、化学的、または他の特性の変更を最小とすることができる材料から構成されることが望ましい。充填材粒子は、医療機器において従来サイズの充填材として過去または現在使われ、将来使用が意図されるいずれかの材料から構成されることができる。さらに、充填材粒子は、有機的、無機的または両材料の合成物から構成されることができる。
【0025】
典型的な充填材粒子は特に、モンモリロナイト(mmt)、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、バーミキュライトとラポナイト等の(任意に挿入および剥離もしくは挿入または剥離された)クレイと雲母を含む人工または天然のフィロケイ酸塩;多様な官能性POSSと重合POSSを含むかご型シルセスキオキサン(POSS)等の単量体ケイ酸;炭素ナノチューブ、セラミックナノチューブ、単層および多層フラーレン・ナノチューブ、シリカ・ナノゲルとアルミナ・ナノ繊維を含むナノワイヤおよびナノ繊維;酸化アルミニウム(AL)、酸化チタン(TiO)、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)およびネオジム鉄ホウ素、超常磁性フェライト酸化物(Fe)または超常磁性磁赤鉄鉱(Fe)等の磁性粉または常磁性粉を含む金属と金属酸化物粉末;ポリビニルピロリドンおよびN−イソプロピルアクリルアミド共重合体または混合物、およびポロキサマー等の温度感受性重合体を含む有機材料を含む。生物分解性重合体を使用することもでき、所望であれば磁化してもよく、例えば、多塩基酸(ポリ乳酸)、多糖類、およびポリアルキシアノアクリレート等が挙げられる。
【0026】
他の充填材粒子の例は、モリブデン(Mo)、硫黄(S)と任意でヨウ素(I)を含むものを含む。これらの材料の具体的な例は、単層または多層硫化モリブデン(例えば、MoS)ナノチューブ、ドープMoSナノチューブ(リチウム・ドープMoSナノチューブなど)、MoS2−xナノチューブ、Moソリッド(すなわち、中空でない)ナノワイヤ、MoS1/3ナノチューブおよびMoを含む。これらの材料の合成と特性解析は、例えば、ヴルバニッチ(Vrbanic)他著、Nanotechnology、第15巻(2004年刊)、635〜638ページ;レムスカー(Remskar)他著、Science、第292巻、2001年4月20日刊、479−481ページ;ミハイロビッチ(Mihailovic)著、Phys.Rev.Lett.、第90巻、第14号、2003年4月11日刊、146401−1から146401−4まで;テンネ(Tenne)他著、Nature、1992年刊、第360巻、444ページ;マーギュリス(Margulis)他著、Nature、1993年刊、第365巻、113ページ;マス(Math)他著、Adv.Mater.、2001年刊、第13巻、283ページ;ドローボット(Drobot)他著、Russ.J.Inorg.Chem.、1985年刊、第30巻、949ページ;およびドミンコ(Dominko)他著、Adv.Mater.2002年刊、第14巻、第21号、1531ページ等の中で述べられている。これら全て参照することにより本願に含まれるものとする。理論に縛られることを望まなければ、硫化モリブデンとモリブデンヨウ化硫黄は、医療機器用途に相応しい一つ以上の特性を有すると考えられている。例えば、モリブデンと場合によりヨウ素を含む材料は、充填材粒子と結果的に粒子が含まれている医療機器の放射線不透過性を強化することができる。強化された粒子の放射線不透過性は、目指す放射線不透過性で医療機器を提供するために少量の粒子の使用を許容することができる。結果として、もしそのような結果を望むなら、マトリクス材の物理的特性は、充填材により大幅には変更されなくてもよい。また、相当量の粒子が、複合材料強化と放射線不透過性強化との両方のために使用されることができる。Mo−SおよびMo−S−I粒子は、医療機器のMRI可視性を強化する大きな常磁性体感受性を有する。Mo−SおよびMo−S−I粒子は、マトリクス材において空気中の安定性および高い分散性を示すことができる(例えば、粒子は実質的に凝集しない)。結果として、複合材料を都合よく加工することができる(例えば、厳しい条件の使用なしでの押出し)。所望であれば、相当量の粒子を使うことなく、または粒子の分散や粒子の凝集を取り除くために広範囲の研削または複合材料の混練なしに、Mo−SおよびMo−S−I粒子の高分散性は、粒子を通してマトリクス材の物理的特性を変化させることができる。広範囲の複合材料の研削または混練は、マトリクス材の分子量を減少させマトリクス材の強度を減少させる。
【0027】
各異なる複数粒子が異なる材料から構成されるように、一以上の複数の充填材粒子の組合せが望ましい用途がある。このように、所望の単一特性のさらなる強化や多くの特性を拡張する新しい特性を、そのようなナノ複合材料から作成される医療機器において見ることができる。例えば、重合体のマトリクス材、放射線不透過性を示す第1の充填材粒子材料、および磁場から影響を受ける第2の充填材粒子材料からナノ複合材料を作成することは有利である。結果として、医療機器に、各の複数粒子が異なる材料からなる、一以上の複数のナノ粒子充填材粒子を組み入れることができる。
【0028】
前述のように、ナノ複合材料において使われる充填材粒子を、従来サイズの充填材として医療機器で利用されるいずれかの材料から構成することができる。そのような従来サイズの充填材粒子は、大きさが数ミクロンから数ミリメートルまである一方、ナノ複合材料で利用される充填材粒子は最大外形として1000nm以下、例えば750nm以下、500nm以下、例えば約1nmから約100nmであることが望ましい。粒子が小さければ小さいほどマトリクス材においてさらに簡単に分散すると考えられており、結果として、均一な分散を望む実施形態においては、粒子は最大外形で100nm以下である。
【0029】
さらに、どんな材料から構成されても、充填材粒子はどのような形態も取ることができる。すなわち、充填材粒子は、一般的に球形、八角形や六角形であり、それらはナノチューブ、ナノベルト、ナノ繊維、ナノワイヤ等の形を取ることができる。しかしながら、前述したようにマトリクス材において充填材粒子の分散を、マトリクス材と充填材粒子との相互作用と同様にマトリクス材と充填材粒子との間の接触面積の増加により強化することができることから、高アスペクト比(すなわち、厚さに対する横寸法の比率が高い)を持つ充填材粒子が特に有用である。例えば、充填材粒子の形状が何であれ、20:1以上のアスペクト比を持つ充填材粒子は、この分散および充填材粒子とマトリクス材との間の相互作用もしくはそのいずれかの増加を促進させることができる。いくつかの実施形態においては、充填材粒子は、50:1から2500:1の間のアスペクト比、例えば、200:1から2000:1の間、300:1から1500:1等のアスペクト比を持っている。
【0030】
マトリクスに組み入れられる充填材粒子の数量または異なる材料からなる充填材粒子の組合せを、特定の医療機器または医療機器の構成部品が示す所望の特性により変更することができる。例えば、所望の特性をナノ複合材料により少なくとも最小限示せるように十分な粒子を含むことができるが、ナノ複合材料の特性において有害な効果を持つ充填材粒子はわずかしか含まれない。特定の範囲が、利用される充填材粒子とマトリクス材とにより変更可能である一方、有利な特性を示すナノ複合材料は、ナノ複合材料の最終総配合重量の相対として約0.005%から約99%ナノ粒子を組み込むことで得ることができる。多くの実施形態では、ナノ粒子を、ナノ複合材料の重量で約0.01%から40%ないしは50%までの量で組み入れることができる。ナノ粒子を、ナノ複合材料の重量で約0.1%から約20%、例えば、約1%から約10%の量で組み入れることができる。
【0031】
ナノ複合材料の特性は、ナノ複合材料の充填材粒子とマトリクス材との間で起きる相互作用の互換性およびレベルおよび種類、もしくはそのいずれかの組合せにより影響されることがある。充填材粒子とマトリクス材との互換性は、極小である。例えば、それらの間の相互作用は、充填材粒子がマトリクス中に拡散するときに起きる物理的接触に対して制限されるためである。また、互換性が、充填材粒子とマトリクス材との鎖のエンタングルメント(もつれ合い)等のように充填材粒子とマトリクスとが物理的に相互作用する様相の場合がある。充填材粒子とマトリクス材とは化学的にもまた、例えばファンデルワールス力の発生による充填材粒子とマトリクス材との間の共有結合やイオン結合等のような相互作用をする場合がある。
【0032】
このようないずれかの互換性と結果として生じた相互作用は、マトリクス材中の充填材粒子の分散を強化する役割を果たし、また、該当する従来の充填重合体と比べて、さらにナノ複合材料の特性を強化することができる。もしこのような場合、いくつかの実施形態では、より大きい互換性、およびより大きいまたはより強い相互作用、より多い増加分散または強化がある。したがって、そのようなより大きい分散またはさらなる特性強化が望ましい用途においては、充填材粒子とマトリクス材との間の互換性および結果として生じた相互作用が助長または促進されることができる。
【0033】
充填材粒子とマトリクス材の互換性は、例えば、マトリクスとしての使用または充填材粒子の中で使用する材料の選択により強化されることができる。つまり、充填材粒子とマトリクスとの間の相互作用を、互換性のある官能基を有する充填材粒子とマトリクス材との選択により促進することができる。もしそのような互換性のある官能基がなければ、それらは、充填材粒子またはマトリクス材を「官能化すること」により、お互いに相互作用することができ互換性のある官能基を供給することができる。フィロケイ酸塩、単量体ケイ酸塩およびセラミックは、充填材粒子とマトリクス材との間の相互作用を増加させるのに有利に官能化可能な充填材粒子での使用に適した材料のごく一部の例である。
【0034】
例えば、POSS単量体を、ポリスチレン等との互換性を強化する有機側鎖等で官能化することができる。セラミック・ベーマイト(AlOOH)は、すでに多くの表面利用可能な水酸基を持っているので、カルボン酸等でさらに官能化されることができ、順次マトリクス材中で官能基を相互作用するように官能化されることができる。さらに、共重合体の一つの構成要素はクレイと互換性があり、共重合体の別の構成要素は重合体マトリクスと互換性がある場合、アルミノケイ酸塩やマグネシアケイ酸塩のようなクレイを、ブロック共重合体またはグラフト共重合体により官能化することができる。また、クレイを、例えば、ポリウレタンと相互作用する能力を持つように、モンモリロナイトのようなクレイをアルキルアンモニウムで官能化してもよい。
【0035】
これらの実施形態においては、ナノ複合材料が例えば多層チューブ等の多層医療機器に利用され、少なくとも多層構造機器の2層がナノ複合材料を含むことが望ましい場合、層間の互換性問題を潜在的に低減する一方、層の所望の特性をさらに最適化することができるファンクショナライザーを各々の層のために選択することができる。つまり、そのような実施形態において、少なくとも2つの層は、同じマトリクス材、または互換性のあるマトリクス材、および同じ充填材粒子をさらに含むナノ複合材料を含むことができ、かつ異なるファンクショナライザーを組み入れる。このように、層は化学的互換性があり、簡単に混合加工でき、なおかつ異なる望ましい特性を示すことができる。
【0036】
充填材粒子およびマトリクス材の一方または両方を官能化することに加えて、充填材粒子とマトリクス材との互換性および相互作用は、使われるナノ複合材料の中に1つまたはそれ以上の結合又は互換物質を組み入れることで強化されることできる。前述したファンクショナライザーは一般的に、それら個々の構造の中で互換性のある化学基を含むマトリクス材および充填材粒子の一方または両方を変更することにより互換性を増加する一方、そのような相互作用をもたらすために結合/互換物質はそうする必要はない。つまり、使用される結合/互換物質が、充填材粒子およびマトリクス材の一方または両方を必ずしも構造的に変更することなく、充填材粒子とマトリクス材の間の互換性を強化または相互作用を促進する、あるいはその両方を行うことができるいずれかの物質を含むということである。そのような物質は、有機物または無機物である。
【0037】
これらの物質の選択は、選ばれたマトリクスと充填材粒子材料に基づくものである。これを念頭においた上で、有機結合物質は、低分子量分子と低分子量重合体の両方であることができる。低分子量有機結合/互換物質の例は、限定されるものではないが、アミノ酸とチオールを含む。例えば、12−アミノドデカン酸は所望の熱可塑性マトリクス中でクレイを互換するのに使われる。重合体のコンパチビライザー(compatibilizer)の例は、ポリオレフィンやマレイミド官能化ポリアミドを含む無水マレイン酸等の官能化された重合体を含む。重合体のコンパチビライザーを包含することで互換性が強化されるナノ複合材料の一例は、ポリオレフィンまたはナイロン12またはモンモリロナイト等のナノ複合材料である。これらは、さらにマトリクス材と充填材粒子とを互換する無水マレイン酸官能性ポリプロピレンを含んでもよい。無機結合物質を数例挙げるとすれば、例えば、シリコンのアルコキシド、アルミニウム、チタニウムおよびジルコニウム等を含むことができる。
【0038】
少しでも使用される場合、結合/互換物質の使用量は、マトリクス中の充填材粒子の分散およびナノ複合材料の特性もしくはそのいずれかにおいて少なくとも最小限の強化が見られるように、充填材粒子とマトリクス材との互換性を少なくとも最小限向上できる量が望ましい。そのような物質の量は、ナノ複合材料の重量で約0.01%から約10%の範囲、例えば、ナノ複合材料の重量で約0.05%から約5.0%、約0.1%から約1%等である。
【0039】
マトリクス材を通して充填材粒子の相互作用を促進する手段として、材料の選択、官能化、および互換物質の使用もしくはそのいずれかに加えて、所望であれば、超音波支援の押出しまたは混練を利用することで充填材粒子の分散を強化することができる。つまり、押出し機ダイ(die)に超音波振動を適用することにより摩擦せん断力を減少することができ溶融をより均質にすることができる。さらに特別にそのような押出し機は、例えば、ポリマー溶解を押出す能力があり加えて動作可能に配置した超音波振動子を持つ押出し機ヘッド等を含む。超音波振動子は、押出機ヘッドへ超音波を伝達する能力がある。超音波は、少なくとも一つの振幅と変調を含むようにさらに有利に調節される。こうして、押出し機ヘッドへ供給された波動を、必要に応じて、押出機ヘッドの全体へ実質的に均一の波動として供給することができる。
【0040】
マトリクス材による充填材粒子分散強化のための追加的な方法は、例えば、ジメチルホルムアミド、ジクロロエチレン、N−メチル−2ピロリドン等の溶媒による充填材粒子分散を含む。こうして一度分散された充填材粒子は、同じように溶解したマトリクス剤と混合され、充填材粒子の分散が強化されたナノ複合材料を製造するためにマンドレルの上に噴霧される。選ばれた用途において、もしそのような分散強化が望ましいのであれば、マトリクス中の充填材粒子の分散を強化する他のいずれかの従来技術も利用することができる。
【0041】
もし溶媒中のマトリクス材および充填材粒子もしくはマトリクス材または充填材粒子の分散が望ましいのであれば、溶媒中の分散をもたらすために、マトリクス材または充填材粒子の一方または両方を官能化することができる。つまり、マトリクス材または充填材粒子が、一度ナノ複合材料に形成された他のものとさらに互換性を持つようにマトリクス材および充填材粒子の一方または両方を官能化することに加えて、マトリクス材中の充填材粒子の分散能力をさらに強化するために、マトリクス材および充填材粒子の一方または両方を、溶媒中の分散能力を発揮することができるように官能化する。一例として、単層炭素ナノチューブは、例えば、有機溶液でナノチューブ分散を生成するためにアミドへ変換後引き続き塩化アシルへ変換されるカルボン酸基等で官能化されることができる。さらなる例としてモノアミノ末端ポリ(エチレン・オキシド)またはグルコサミンとの官能化は、水溶液で溶解する単層炭素水溶性ナノチューブを生成することができる。水性溶媒または有機溶媒における分散を強化するそのようなナノチューブの官能化は、例えば、米国特許第6,331,262号明細書および第6,368,569号明細書、さらにポンピオ(Pompeo)およびレサスコ(Resasco)著「Water Solubilization of Single Walled Carbon Nanotubes by Functionalization with Glucosamine」、Nano Letters、第2巻、第4号、369〜373ページ(2002年刊)、およびバンディオパダイ(Bandyopadhyaya)他著「Stabilization of Individual Carbon Nanotubes in Aqueous Solutions」、Nano Letters、第2巻、第1号、25〜28ページ(2002年刊)に説明されており、これらの開示は全体として参照することにより本願に含まれるものとする。
【0042】
特定の用途において、ナノ粒子とマトリクス材との間、あるいはナノ粒子と機器自体との間の相互作用を増加することが望ましい一方、ナノ粒子同士間の広範囲な相互作用は、特定の用途において望ましくない場合がある。特に、ナノ粒子が実質的に均一な厚さで層を形成することが望ましい用途において、またはマトリクス材全体または医療機器に対して他の実質的に均一な分散を望む用途において、ナノ粒子の相当量の凝集は次善の方法である。そしてそのような用途において、マトリクス材および機器もしくはマトリクス材または機器での分散、あるいはこれらへの適用に先立ち、溶液の中にナノ粒子と共に分散剤を含むことは有利または望ましい場合がある。
【0043】
ナノ粒子が炭素ナノチューブ等の炭素粒子を含むことが望ましい実施形態の一例として、天然糖質を利用して、ナノチューブが可溶化することが望ましい場合に発生しうる炭素ナノチューブ間の相互作用を最小限に抑制または除去することができる。例えば、ダガーニ(Dagani)著「Sugary ways to Make Nanotubes Dissolve」、Chemical and Engineering News、第80巻、第28号、38〜39ページ、およびスター(Star)他著「Starched Carbon Nanotubes」、Angewandte Chemie−International Edition、第41巻、第14号、2508ページ(2002年刊)を参照。これらの開示は全体として参照することにより本願に含まれるものとする。
【0044】
特に、同様に分散したマトリクス材と混合し、または噴霧や浸すことでマトリクス材に塗布する実質的な非凝集体炭素ナノチューブ溶液を提供するために、そのような天然糖質を含む水溶液中に炭素ナノチューブ分散させることができる。そのような天然糖質の説明に役立つ実例は、次の例に限定されるものではないが、でんぷん、およびアラビア・ゴム、シュガー・ゴム等のゴムを含む。その溶液は、マトリクス材と混練される炭素ナノチューブとアラビア・ゴムの実質的な非凝集体粉末を形成するために乾燥され、従来技術により所望の医療機器に加工されることができる。また溶液は、医療機器を提供するため、マトリクス材の表面上、医療機器構成部品の表面上、または医療機器の実質的表面全体に、実質的な非凝集体炭素ナノチューブの均一層を作るのに使用されることができる。もし均一な層が望ましいのであれば、一旦炭素ナノチューブ/アラビア・ゴム溶液が作成され、溶液に材料を浸して水分を蒸発させることにより所望の材料の表面が溶液で覆われ、実質的な非凝集体炭素ナノチューブの実質的な均一層が残る。前述したように、必要に応じて、炭素ナノチューブは、そのような分散に先立ち有利に官能化されることができる。
【0045】
そのような炭素ナノチューブの層は、例えば、前述のように熱接着される少なくとも一つの表面上に炭素ナノチューブが堆積されることにより、医療機器の重合体層間の連携層として使用されることできる。2層の熱接着により、炭素ナノチューブの散在された結合層が接着箇所に対して追加的強度を提供することできる。この有用な技術は、溶接、噴霧または多層押出しにより材料の第2層が第1層に付着され、および電気伝導率が望まれる、もしくはそのいずれかである材料の2層間で結合層が望まれる実施形態に適用されることができる。そのような実施形態において、炭素ナノチューブ/アラビア・ゴム溶液は、第1材料に付着されて乾燥された後、所望の技術により、実質的に均一な炭素ナノチューブ層に対して第2材料が付着される。さらに炭素ナノチューブとマトリクス材の間の物理的相互作用を、前述したようにアラビア・ゴムをファンクショナライザーで官能化することにより補足することができ、接着箇所を強化する機会をさらに提供する。
【0046】
充填材粒子、マトリクス材、および任意で結合/互換物質に加えて、ナノ複合材料は、ナノ複合材料を含んでいない該当する医療機器において利用されるいずれかの他の材料を含むことができる。必要に応じて、例えば、色素、漂白剤、伝導性物質、磁性物質および放射線不透過性物質もしくはそのいずれかの組合せをナノ複合材料の中に設けることができる。また、可塑剤、界面活性剤および安定剤等の処理支援剤をナノ複合材料の中に含むことができる。そのような物質について、有効量と物質が提供する利点とは当業者によく知られている。
【0047】
使われる安定剤の種類の一例は、放射線酸化分解反応安定剤または「ROD」安定剤と呼ばれるものである。名前が意味するように殺菌放射線に対する重合体の曝露により、起こりうる分解に対抗するためにこれらの物質は組み込まれて重合体を支援する。しかしながら、さらに、適切にマトリクス材全体にナノ粒子を分散するために必要とされる混合および過熱もしくは混合または過熱等の処理中に起こりうる分解に対抗するために、そのような安定剤は重合体の支援においても有用である。
【0048】
そのようなROD安定剤は、抗酸化物質、特にラジカルスカベンジャーまたは脱酸素剤でありうる。メルカプト化合物、ヒンダードフェノール、亜リン酸塩、亜リン酸およびヒンダードアミン抗酸化物質は、最も効果的な安定剤の一つである。安定剤の具体例としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、トリラウリル亜リン酸塩、IONOX 330、2−メルカプトベンゾチアゾール、N,N−di(ベータ−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DPPD))、SANTONOX R、SANTOWHITE粉末、フェノチアジン、IONOL、2,6−di−t−ブチルクレゾール、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、IRGANOX 1010、ベータ−(3,5−di−t−ブチル−6−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ステアロイルピペリジンおよび2,2,6,6テトラメチル−4−ニトロピペリジンが挙げられる。さらなる例としては、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応製品、置換アミンオリゴマー、N,N’−bis(2,2,6,6−テトラメチル4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリニル)−1,3,5−トリアジンおよびN,N’−ヘキサメチレン−bis[3−(3,5−di−t−ブチル4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]が挙げられる。さらに、遷移金属またはその化合物はROD安定剤として機能することができ、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、マンガン、金属亜鉛および化合物があり、これらは国際公開第99/38914号パンフレット、米国特許第5,034,252号明細書および第5,021,515号明細書で説明されている。
【0049】
ROD安定剤は、また、国際公開第96/18686号パンフレット中で化学式1に説明されるポリケトン重合体のような脱酸素重合体である。
【0050】
【化1】

ここで、RはH、有機側鎖またはシリコン側鎖であり、nは2より大きい正数である。そのようなポリケトン重合体ROD安定剤は、重量で0.1%から約10%の量で熱可塑性合成に採用されることができる。
【0051】
もしこれらの存在が望ましいのであれば、ROD安定剤は、分解に対するマトリクス剤の抵抗の支援にあたり、少なくとも最小限有効な量でナノ複合材料に採用されることができる。量の例としては、約0.01%から約5%、または約0.1%から約1%、例えば0.2%から0.5%である。安定剤は、事前に押出し融液中または個々の混練段階で、ナノ複合材料中に混練されることができる。
【0052】
多くのナノ複合材料およびナノ粒子は市販されている。さらに、ナノ複合材料およびナノ粒子もしくはナノ複合材料またはナノ粒子の多くの製造方法が知られており、これらのいずれも、医療機器に組み込むためのナノ複合材料およびナノ粒子の製造に利用されることができる。多くのこのような方法が、例えば「Nanocomposites 2001, Delivering New Value to Plastics」、Executive Conference Management Jun.、25〜27ページ(2001年、イリノイ州シカゴ)に開示され説明されており、これらの開示は全体として参照することにより本願に含まれるものとする。
【0053】
利点として、充填材粒子は、マトリクス中の充填材粒子分散のおかげでナノ複合材料により示される特性上で効果を示すことができることから、ナノ複合材料を作成するのに利用される具体的な方法は、数々の所望の特性を有する医療機器の供給を支援するために選択されることができる。つまり、特定の医療機器の用途において、医療機器全体または医療機器構成部品が、医療機器の全体、あるいは医療機器の長さにわたって、ナノ複合材料の特性を実質的に均一に示すようにさせることは望ましいことである。そのような用途において、ナノ複合材料のマトリクス全体に実質的に均一に充填材粒子を分配することは望ましいことである。他の用途においては、医療機器全体または医療機器構成部品がナノ複合材料の特性を示すようにさせることは望ましいが、機器または構成部品全体で程度が異なることが望ましい場合がある。そのため、これらの用途においては、所望の様々な特性が医療機器または構成部品の中に見られるような様式で、ナノ複合材料のマトリクス全体で、充填材粒子の分配を変えることは望ましいことである。
【0054】
そこで、例示目的だけのために数例挙げるとすれば、そのようなナノ複合材料の製造工程は、充填材粒子存在下のマトリクス材の重合、充填材粒子とマトリクス材との溶融混練、および、例えばブロック共重合体に対しシラン単量体を添加し、その後共重合体のマトリクス材中に相対的に均一に分散されたナノ構造シリカ充填材粒子を作るためにシランを取り除くことにより供給されるような、充填材粒子のin−situ形成を含む。もし結合/互換物質が使われる場合、それは、充填材粒子とマトリクスとを混練する前に充填材粒子の表面を覆うようにすることができ、また別の方法としては物質をナノ複合材料形成過程中に添加するというものである。
【0055】
ナノ複合材料を利用する利点の一つは、少なくとも従来の充填重合体と比較して、ナノ複合材料を多くの場合より簡単に加工できることである。結果として、一度ナノ複合材料が作成されれば、それは当業者に既知のいずれかの方法により所望の医療機器に加工されることができ、選ばれた特定の方法が、決定的に重要な意味を持つわけではない。適切な医療機器の製造方法は多様であり、その例としては、限定されるものではないが、泡加工、ブロー成形またはフィルム成形、シート成形加工、異形押出し、回転成形、圧縮成形、熱硬化性プリプレグ加工およびRIM成形加工等がある。もちろん独創的な医療機器は、ナノ複合材料を含んでいない該当医療機器を作るために利用されるいずれかの方法により製造されることができる。
【0056】
以下の実施例は、限定を意図するものではない。
【実施例1】
【0057】
HDPE/POSSナノ複合材料によるインナー・シャフト・カテーテル・チューブ材の作成
1)2軸混練押出し機によるHDPE/POSSナノ複合材料の作成
有機的に官能化されたPOSS(MS0830、オクタメチル−POSS、ハイブリッド・プラスチック社(Hybrid Plastics)製、カリフォルニア州ファウンテンバレー(Fountain Valley))を、高密度ポリエチレン(HDPE Marlex、シェブロン・フィリップス化学会社(Chevron−Phillips Chemical Company)製、テキサス州ヒューストン(Houston))と混練した。特に、HDPEとPOSSとの材料供給率は4:1であり、逆回転分散2軸混練機ZSE27(ライストリッツ社(Leistritz Company)製、ニュージャージー州アレンデール(Allendale))中へ供給した。このときの作業条件は、温度190℃にて回転速度200RPMであった。混練生産量は毎時2.3kg(5ポンド)であった。
【0058】
2)HDPE/POSSナノ複合材料を含むインナー・シャフト・カテーテル・チューブ材の押出し
HDPE/POSSナノ混合材料とプレクサー390無水変性ポリエチレン(エクイスター・ケミカル社(Equistar Chemical Company)製、テキサス州ヒューストン(Houston))とを混合比率4:1で事前に混合し、その後、マトリクス4903ポリエチレンと3:1の比率でさらに希釈し、220℃にて0.04572センチメートル(0.018インチ)×0.06096センチメートル(0.024インチ)でチューブ材として押出した。結果として生じたインナー・シャフト・チューブ材は、従来の製造技術を利用してワイヤ、シングル・オペレータ・エクスチェンジ・カテーテル、またはステント・デリバリー・システムに使用することができた。
【実施例2】
【0059】
ペバックス(登録商標)/POSSナノ複合材料によるアウター・シャフト・カテーテル・チューブ材の作成
1)2軸混練押出し機によるペバックス(登録商標)/POSSナノ複合材料の作成
有機的に官能化されたPOSS(AM0265、アミノプロピルイソブチル−POSS、ハイブリッド・プラスチック社(Hybrid Plastics)製)を、ペバックス(登録商標)7233(ペバックス(登録商標)は、ポリエーテル・ブロック・アミド、アトフィナ社(Atofina)(ベルギー、ブリュッセル)から市販されているポリエステルブロックアミド)と混練した。特に、ペバックス(登録商標)とPOSSとの材料供給率は4:1であり、逆回転分散ライストリッツZSE27の2軸混練機中へ供給した。このときの作業条件は、温度200℃にて回転速度100RPMであった。混練生産量は、毎時2.3kg(5ポンド)であった。
【0060】
2)ペバックス(登録商標)/POSSナノ複合材料を含むアウター・シャフト・カテーテル・チューブ材の押出し
ペバックス(登録商標)/POSSナノ複合材料とペバックス(登録商標)7233との3:1の希釈物を調製し、226℃にて0.077724センチメートル(0.0306インチ)×0.091948センチメートル(0.0362インチ)でアウター・シャフト・チューブ材として押出した。
【0061】
チューブ材押出し工程の間、ナノ複合材料は、従来の充填ペバックス(登録商標)よりも安定している。もしこの方法により製造されたチューブ材がEtO殺菌されると、その殺菌処理の条件の下で無充填ペバックス医療機器または機器構成部品において発生が予想される緩和と比較して、POSSナノ充填材は、配向ペバックス(登録商標)鎖を減少させる、または、有害度合いまで緩和することを実質的に抑制することができる。
【実施例3】
【0062】
ペバックス(登録商標)/クレイ・ナノ複合材料によるアウター・シャフト・カテーテル・チューブ材の作成
ペバックス(登録商標)7233を95%と2099 X 83109 Cの商品番号を有するクレイ充填材を5%含むとされているペバックス(登録商標)/クレイ・ナノ複合材料をRTP社(RTP Company)(ミネソタ州ウィノーナ(Winona))から購入した。材料を、226℃にて0.077724センチメートル(0.0306インチ)×0.091948センチメートル(0.0362インチ)の許容可能なアウター・シャフト・チューブ材として押出した。
【実施例4】
【0063】
ペバックス(登録商標)/モンモリロナイト・ナノ複合材料による多層チューブ材の作成
72デュロメーター・ペバックス(登録商標)材料(アトケム社(Atochem)製ペバックス(登録商標)7233等)を95%とモンモリロナイト充填材を5%含むペバックス(登録商標)/モンモリロナイト・ナノ複合材料を、前述の2軸押出し機で混練する。ナノ複合材料は、押出しに適切な粘性を提供する十分な温度、すなわち、約190℃から215℃にて、無充填ペバックス(登録商標)と共押出し、ペバックス(登録商標)/モンモリロナイト・ナノ複合材料を中間層、および無充填ペバックス(登録商標)を内側層と外側層に有する許容可能な3層チューブ材を得る。3層チューブ材は、チューブ材の使用目的に適切なサイズを有する。もしそのチューブ材がバルーンの形成等に使われるのであれば、内径は約0.044704センチメートル(0.0176インチ)で外形は約0.86868センチメートル(0.342インチ)である。
【実施例5】
【0064】
ペバックス(登録商標)/変性モンモリロナイト・ナノ複合材料による単層チューブ材の作成
70デュロメーター・ペバックス(登録商標)材料(アトケム社(Atochem)製のペバックス(登録商標)7033等)を90%と変性モンモリロナイト充填材を10%含むペバックス(登録商標)/モンモリロナイト・ナノ複合材料を、前述の2軸押出し機で混練する。混練に先立ち、モンモリロナイトを、前述したようにポリエーテルおよびポリアミドもしくはポリエーテルまたはポリアミドと相互作用可能なブロック共重合体からなるファンクショナライザーにより変性する。ナノ複合材料を、押出しに適切な粘性を提供する十分な温度、例えば約190℃から215℃にて、チューブ材の使用目的にかなうサイズを有する許容可能な単層チューブ材として押出す。その後、このチューブ材は、バルーン、カテーテルのインナー・ルーメン、カテーテルのアウター・ルーメン等を形成するのに使用されることができる。もしチューブ材が例えばバルーンの形成で使われるのであれば、内径は約0.044704センチメートル(0.0176インチ)で外形は約0.86868センチメートル(0.342インチ)である。
【実施例6】
【0065】
ナイロン12/変性モンモリロナイト・ナノ複合材料による単層チューブ材の作成
ナイロン12(商品名:リルサン(登録商標)、アトフィナ社(Atofina)製)を99%と変性モンモリロナイト充填材を1%含むナイロン12/モンモリロナイト・ナノ複合材料を次のように作成する。すべての材料を粉末で購入し、または既知の方法により粉末に粉砕する。モンモリロナイトを、前述したようにブロック・ポリアミドまたはポリアミド基を有するいずれかの材料からなるファンクショナラナイザーで変性する。粉末のナイロン12と粉末の官能化されたモンモリロナイトとを混合し、重量供給装置(またはいずれかの他の許容可能な粉体供給機構)を通して押出し工程中に供給する。その後、そのナノ複合材料を、押出しに適切な粘性を提供する十分な温度、例えば約210℃から約240℃、220℃から230℃等にて、チューブ材の使用目的にかなうサイズを有する許容可能な単層チューブ材として押出す。そのような使用には、例えば、バルーンの形成、カテーテルのインナー・ルーメン、カテーテルのアウター・ルーメン等を含む。そのようなナノ複合材料からなるチューブ材は、バルーンの形成において特に有用だと考えられ、そのような使用に適切なチューブ材のサイズは内径約0.044704センチメートル(0.0176インチ)で外形は約0.86868センチメートル(0.342インチ)である。さらに詳細には、バルーンは既知のいずれかの方法により形成され、その後、既知のいずれかの製造方法によりシャフト材に取り付けられる。
【実施例7】
【0066】
単層炭素ナノチューブ結合層からなる熱接着多層カテーテル・シャフト材の作成
ペバックス(登録商標)の層とプレクサー(登録商標)の層(エクイスター・ケミカル社(Equistar Chemical Company)(テキサス州ヒューストン(Houston))製の無水変性ポリエチレン)からなり、単層炭素ナノチューブの結合層をそれらの間に有する多層カテーテル・シャフト材が、オーバー・ザ・ワイヤ・タンデム押出工程を用いて以下のように作成される。
【0067】
プレクサー(登録商標)を、220℃にてテフロン加工されたマンドレル上に押出す。その後、アラビア・ゴムと単層炭素ナノチューブの水溶液(純水1ml、アラビア・ゴム200mg、炭素ナノチューブ30mg)を、プレクサー(登録商標)シャフト材の上に噴霧する。全ての余分な水分を、120℃の炉にシャフト材を通すことにより取り除く。タンデムの第2押出し機が、226℃にてプレクサー単層ナノチューブ上にペバックス(登録商標)の層を押出す。結果として生じた多層チューブ材は、界面層における炭素ナノチューブの包埋により、層間の強化された接着強度を示す。
【実施例8】
【0068】
ペバックス(登録商標)/クレイ・ナノ複合材料の性能と特性における異なるファンクショナライザーの効果
ペバックス(登録商標)7233 95%とクレイ5%からなる3つのナノ複合材料を作成した。さらに詳細には、未変性クレイからなる第1のナノ複合材料、ヒドロキシル末端基を有するブロック共重合体で変性されたクレイからなる第2のナノ複合材料、およびカルボキシル末端基を有するブロック共重合体で変性されたクレイからなる第3のナノ複合材料を、前述の2軸押出し機により個々に混練した。材料をチューブ材として押出し、インストロンで試験した。破断における伸び(エプシロン)、弾性率(E)、さらに極限強度(シグマ)を測定した。結果は以下の表1に示す。
【0069】
【表1】

前述のように、変性クレイ・ナノ複合材料の特性は顕著に変化する。この変化を上手く利用するために、例えば、ROH変性クレイ/ペバックス・ナノ複合材料は、バルーンの外層として使われることができ、それによりエプシロンの増加による穿刺抵抗において、約50%以上、通常は40%以上、例えば25%以上の増加を得る。その後、もしRCOOH変性クレイ/ペバックス・ナノ複合材料がそこで同じバルーンの内層として利用されたら、このナノ複合材料において見られた全体的な強度について測定された増加の結果として、未変性クレイからなるナノ複合材料に対して破裂抵抗を増加することができる。
【0070】
ここで、図1と2を参照すると、医療機器の一実施形態が図示されている。特に、図1は、バルーン血管形成カテーテル10の遠位端の縦断面図である。この実施形態において、カテーテル10は、内層2と外層3からなる内側チューブ状構成部品1を含む。遠位胴5を有するバルーン4が、内側チューブ状構成部品1に取り付けられる。バルーン4は、また外側チューブ状構成部品7に取り付けられた近位胴6を有する。内側チューブ状部材1のルーメン12内には、ガイド・ワイヤ11が図示されている。図2は図1の2−2線における横断面図である。
【0071】
内側チューブ状構成部品11、内層2、外層3、バルーン4、または外側チューブ状構成部品7、またはガイド・ワイヤ11は、ここで開示されたようにナノ複合材料から全体的または部分的に作成されることができる。さらに、これらの構成部品のいずれも、ナノ複合材料からなる1つ以上の層を備えた単層または多層とすることができる。このように、例えば、図1と2において内側チューブ状構成部品11は多層で示されており、内側チューブ状構成部品11の層2または層3の一方または両方は、ナノ複合材料から作成されることができる。このように、例えば、層2および層3のいずれも、前述の実施例1ないし3で説明したように作成されたナノ複合材料で構成されることができる。
【0072】
また、先に開示したように、バルーン4に取り付けられたステントを含むステント・デリバリー・システムを作成することができる。さらに、例えば、米国特許第4,950,227号明細書で開示されているスリーブ等、バルーン拡張ステント・デリバリー・システムにおいて使用される当技術分野で既知の構成部品を使うことができる。この開示内容に基づき、自己拡張型ステント・デリバリー・システム、ガイド・カテーテル、血管造影用カテーテル等を作成することができることは、十分に理解されるであろう。
【0073】
他の実施形態が特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】医療機器の遠位端部の縦断面図である。
【図2】図1に示される機器の2−2線における横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス材と、モリブデンおよび硫黄を備える粒子とを有する複合材料を含む構成部品を備える医療機器。
【請求項2】
前記粒子がナノチューブである請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記粒子がMoSを備える請求項1に記載の医療機器。
【請求項4】
前記粒子がヨウ素をさらに備える請求項1に記載の医療機器。
【請求項5】
前記粒子がソリッド・ナノワイヤである請求項4に記載の医療機器。
【請求項6】
前記粒子が、Mo、MoS1/3、およびMoからなる群から選択される材料を備える請求項4に記載の医療機器。
【請求項7】
前記粒子が、Moを有するソリッド・ナノワイヤを備える請求項4に記載の医療機器。
【請求項8】
前記複合材料が、ファンクショナライザー(functionalizer)、コンパチビライザー(compatibilizer)、分散剤、またはその組合せをさらに有する請求項1に記載の医療機器。
【請求項9】
前記機器が経腔的医療機器である請求項1に記載の医療機器。
【請求項10】
前記構成部品が多層を有しており、該層の少なくとも一つが前記複合材料を備える請求項1に記載の医療機器。
【請求項11】
前記層の少なくとも一つに粒子がない請求項10に記載の医療機器。
【請求項12】
前記構成部品が、異なる粒子を有する層を備える請求項10に記載の医療機器。
【請求項13】
前記複合材料が、前記粒子と異なるナノ粒子をさらに有する請求項1に記載の医療機器。
【請求項14】
前記マトリクス材が熱硬化性材料を備える請求項1に記載の医療機器。
【請求項15】
前記熱硬化性材料が、ニトリルブタジエンエラストマー、シリコン、エポキシ、イソシアネート、EPDM、エピクロロヒドリン、またはそれらの共重合体、ブロック共重合体、もしくはポリマーブレンドを備える請求項14に記載の医療機器。
【請求項16】
前記マトリクス材が熱可塑性材料を備える請求項1に記載の医療機器。
【請求項17】
前記熱可塑性材料が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルアミドブロック共重合体、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリビニル、ポリアクリル酸、フッ素重合体、またはそれらの共重合体、ブロック共重合体もしくは混合物を備える請求項16に記載の医療機器。
【請求項18】
前記構成部品がカテーテル・シャフトを備える請求項1に記載の医療機器。
【請求項19】
前記構成部品がバルーンを備える請求項1に記載の医療機器。
【請求項20】
前記機器がガイド・カテーテルである請求項1に記載の医療機器。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−528246(P2008−528246A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556154(P2007−556154)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/002925
【国際公開番号】WO2007/086855
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】