ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びその製造方法、リチウム複合酸化物粒子粉末及びその製造方法並びに非水電解質二次電池
【課題】 本発明は、粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子が大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末に関する。本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、非水電解質二次電池に用いられる正極活物質の前駆体として有用である。
【解決手段】 二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とがW≦0.4×D50を満足するニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、アルカリ溶液中に金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液を同時に滴下・中和し、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を得ることができる。
【解決手段】 二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とがW≦0.4×D50を満足するニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、アルカリ溶液中に金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液を同時に滴下・中和し、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子が大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末に関する。本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、非水電解質二次電池に用いられる正極活物質の前駆体として有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、AV機器やパソコン等の電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として小型、軽量で高エネルギー密度を有する二次電池への要求が高くなっている。このような状況下において、充放電電圧が高く、充放電容量も大きいという長所を有するリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
従来、4V級の電圧をもつ高エネルギー型のリチウムイオン二次電池に有用な正極活物質としては、スピネル型構造のLiMn2O4、ジグザグ層状構造のLiMnO2、層状岩塩型構造のLiCoO2、LiCo1−XNiXO2、LiNiO2等が一般的に知られている。なかでもLiCoO2を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電電圧と充放電容量を有する点で優れているが、Coが高価であることから、LiCoO2に代わる様々な正極活物質が研究されている。
【0004】
一方、LiNiO2を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電容量を有する電池として注目されている。しかし、この材料は、充電時の熱安定性及び充放電サイクル耐久性に劣るため、更なる特性改善が求められている。
【0005】
即ち、LiNiO2はリチウムを引き抜いた際に、Ni3+がNi4+となりヤーンテラー歪を生じ、リチウムを0.45引き抜いた領域で六方晶から単斜晶へ、さらに引き抜くと単斜晶から六方晶と結晶構造が変化する。そのため、充放電反応を繰り返すことによって、結晶構造が不安定となり、サイクル特性が悪くなる、又酸素放出による電解液との反応などが起こり、電池の熱安定性及び保存特性が悪くなるといった特徴があった。この課題を解決する為に、LiNiO2のNiの一部にCo、Al、Mn、Tiなどを添加した材料の研究が行われてきている。
【0006】
即ち、LiNiO2のNiの一部を異種元素で置換することによって、置換元素が有する特性を付与することが可能となる。例えば、LiNiO2にCoを置換した場合、少ないCo量でも、高い充放電電圧と充放電容量を有することが期待できる。一方、LiMn2O4はLiNiO2又はLiCoO2に対して安定な系ではあるが、結晶構造が異なるため置換できる量には制限がある。
【0007】
そこで、Co、Mnで置換したLiNiO2において、充填性が高く結晶構造が安定なCo、Mnで置換したLiNiO2を得るためには、組成、物性及び結晶性、粒度分布を制御したニッケル・コバルト・マンガン系前駆体を用いる必要がある。
【0008】
特に、LiNiO2などの非水電解質二次電池用の正極活物質の粒度分布は、正極材の充填性に大きく寄与するものであるから、より粒度分布が揃った正極活物質が要求されている。そのため、異種金属を置換したLiNiO2の前駆体となるニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末についても、粒度が均一で微粉が少ないことが要求されている。
【0009】
従来、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末について、タップ密度や粒子形状、粒度分布を制御することが知られている(特許文献1〜4)。
【0010】
特許文献1に記載の技術は、タッピング密度が1.5g/cc以上の球状高密度コバルトマンガン共沈水酸化ニッケルに関するものである。
【0011】
また、特許文献2には、遷移金属元素を原子レベルで均質に固溶したニッケル・マンガン共沈複合酸化物が開示されている。
【0012】
また、特許文献3には、ニッケル・コバルト・マンガン共沈複合酸化物凝集粒子に酸化剤を作用させて合成したニッケル・コバルト・マンガン複合オキシ水酸化物が開示されている。
【0013】
また、特許文献4には、粒度分布を制御したニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−201028号公報
【特許文献2】国際公開第02/078105号
【特許文献3】国際公開第04/092073号
【特許文献4】特開2008−147068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、前記技術によって得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、微粉の発生を抑制することが不十分であり、粒度分布のシャープなニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は未だ得られていない。
【0016】
そこで、本発明は、粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子が大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0018】
即ち、本発明は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とが下記関係式1を満足するニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末である(本発明1)。
(関係式1)
W≦0.4×D50
【0019】
また、本発明は、本発明1に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末において、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%である(ただし、x+y+z=100mol%である)ことを特徴とするニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末である(本発明2)。
【0020】
また、本発明は、攪拌機とドラフトチューブを具備し、濃縮器を連結した反応装置を用意し、あらかじめアルカリ溶液を反応器内に導入し、該アルカリ溶液中に、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液とを反応液面上部から連続的に滴下し、中和、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成する反応において、生成する反応スラリーの一部を反応器中段から抜き出し濃縮器に導入し、濃縮器で濃縮されたスラリーを反応器に再度導入する際、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入する工程を行って、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成させ、得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を含有する反応スラリーを濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥することを特徴とする本発明1又は2に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造方法である(本発明3)。
【0021】
また、本発明は、アルカリ溶液としては水酸化ナトリウムとアンモニアを用いることを特徴とする本発明3に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造方法である(本発明4)。
【0022】
また、本発明は、少なくとも、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有するリチウム複合酸化物粒子粉末であって、該リチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とが下記関係式2を満足するリチウム複合酸化物粒子粉末である(本発明5)。
(関係式2)
W≦0.4×D50
【0023】
また、本発明は、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%であり(ただし、x+y+z=100mol%である)、ニッケル、コバルト及びマンガンの総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))が0.90〜1.20である本発明5記載のリチウム複合酸化物粒子粉末である(本発明6)。
【0024】
また、本発明は、本発明1又は2に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、800〜1100℃の温度範囲で熱処理を行うリチウム複合酸化物粒子粉末の製造方法である(本発明7)。
【0025】
また、本発明は、本発明5又は6に記載のリチウム複合酸化物粒子粉末を使用した非水電解質二次電池である(本発明8)。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物は、粒度が均一で微粉が少ないので、該ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を用いて製造したリチウム複合酸化物粒子粉末では、正極活物質由来の熱安定性が良好で電池膨れ防止の向上が期待できる。
【0027】
また、本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物は高結晶性であり一次粒子が比較的大きいので、該ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を用いて製造したリチウム複合酸化物粒子粉末では、焼成条件を工夫することなく、一次粒子の比較的大きな粒子が得られ、容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性が向上することが期待できる。
【0028】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、粒度が均一で微粉が少ないので、正極活物質由来の熱安定性が良好で電池膨れ防止の向上が期待できる。また、本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性が向上することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末に製造に用いる装置の概略図である。(A)は上部からの概略図であり、(B)は装置断面の概略図である。
【図2】実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図3】実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図4】実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図5】実施例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図6】実施例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図7】実施例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図8】実施例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図9】実施例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図10】実施例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図11】実施例5で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図12】実施例5で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図13】実施例5で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図14】実施例6で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図15】実施例6で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図16】実施例6で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図17】実施例7で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図18】実施例7で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図19】実施例7で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図20】比較例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図21】比較例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図22】比較例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図23】比較例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図24】比較例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図25】比較例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図26】比較例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図27】比較例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図28】比較例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図29】実施例1〜8で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の粒度分布図である。
【図30】比較例1〜3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の粒度分布図である。
【図31】実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のXRDプロファイルである。
【図32】実施例9〜13(a)と比較例4〜6(b)で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の粒度分布図である。
【図33】実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた電池のレート特性である。
【図34】実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた電池の室温25℃でのサイクル特性である。
【図35】実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた電池の高温60℃でのサイクル特性である。
【図36】実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のXRDプロファイルである。
【図37】実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図38】実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図39】実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図40】実施例13で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図41】実施例13で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図42】実施例13で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図43】比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図44】比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図45】比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図46】比較例6で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図47】比較例6で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図48】比較例6で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0031】
先ず、本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末について述べる。本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、後工程でリチウム化合物とを混合して800〜1100℃の温度範囲で熱処理を行って得られるリチウム複合酸化物粒子粉末の前駆体粒子であり、代表的には、ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物、複合オキシ水酸化物又は複合酸化物を意味するものである。
【0032】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)は3.0〜25.0μmである。二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0μm未満の場合には、凝集させるのが困難であるか、凝集したとしても密度の非常に低いものになる。二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が25.0μmを超える場合には、リチウム複合酸化物とした場合、電極厚みの関係から、電極の折れ、曲がりなどで、電極から粒子剥がれが生じ、粒子が露出する可能性があり好ましくない。より好ましい平均粒子径(D50)は4.0〜23.0μmである。
【0033】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布における半価幅(W)とが下記関係式1を満たすものである。
(関係式1)
W≦0.4×D50
【0034】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布における半価幅(W)とが前記関係式(1)を満たすことによって、粒度分布に均斉で微粉が少ないニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とすることができ、該ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を用いて作製したリチウム複合酸化物粒子粉末は粒度分布に優れるものとなる。
【0035】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末において、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%である(ただし、x+y+z=100mol%である)ことが好ましい。前記組成の範囲以外の場合は、原材料価格、リチウム複合酸化物化時の製造方法、物理特性、電池特性含め総合的にバランスの取れた範囲を逸脱し、何れかの観点でバランスを崩すものであり好ましくない。より好ましい組成比はNi:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜55mol%、zが5〜35mol%である。
【0036】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のBET比表面積値は0.1〜20.0m2/gであることが好ましい。BET比表面積値が0.1m2/g未満のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、工業的に合成して得ることは非常に困難である。BET比表面積値が20.0m2/gを越える場合には、リチウム複合酸化物とした場合、目標とする比表面積に満たない場合があり、また、電極とした場合、熱安定性が良好で膨れが少なく、室温、高温サイクル特性に優れた電池が得られるとは言い難い。
【0037】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のタップ密度は、1.0〜3.0g/cm3であることが好ましい。タップ密度が1.0g/cm3未満の場合には、リチウム複合酸化物とした場合、高い圧縮密度、電極密度(正極)が得られない。タップ密度が3.0g/cm3を超える場合でも良いが、現実的には製造するのが困難である。より好ましいタップ密度は1.5〜3.0g/cm3、更により好ましくは1.8〜2.8g/cm3である。
【0038】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の粉末X線回折(Cu−Kα)による2θ=19.3±0.5°の回折ピークの結晶子サイズが150〜350Åであることが好ましい。2θ=19.3±0.5°の回折ピークの結晶子サイズが150Å未満の場合、一次粒子の厚みが小さく、比表面積が大きく、リチウム複合酸化物とした際、一次粒子が結晶成長しにくく、電極とした際には、熱安定性が良好で膨れが少なく、且つ容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性に優れた電池が得られるとは言い難い。2θ=19.3±0.5°のピークの結晶子サイズが350Åを超えても良いが、現実的に製造するのが困難である。
【0039】
次に、本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造法について述べる。
【0040】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、アルカリ溶液中に、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液とを同時に滴下し、中和、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を含有する反応スラリーを得、該反応スラリーを濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥して得ることができる。
【0041】
アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の水溶液を用いることができるが、中和反応用に水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又はそれらの混合溶液を用いることが好ましい。加えて、錯体反応用にアンモニア水溶液やアンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0042】
中和反応に用いるアルカリ溶液の添加量は、含有する全金属塩の中和分に対して当量比1.0でよいが、pH調整のためにアルカリ過剰分を合わせて添加することが好ましい。
【0043】
錯体反応に用いるアンモニア水溶液やアンモニウム塩の添加量は、反応液中のアンモニア濃度が0.01〜2.00mol/lの範囲で添加することが好ましい。
【0044】
反応溶液のpHは10.0〜13.0の範囲に制御することが好適である。反応溶液のpHが10.0未満の場合は、一次粒子を凝集させることが難しく、二次粒子を形成させることが困難になるか、あるいは、微粉が発生し、粒子個数が増加するため好ましくない。反応溶液のpHが13.0を超える場合は、一次粒子が板状に成長し、二次粒子が疎となり、充填密度が低下するため好ましくない。より好ましい反応溶液のpHは11.0〜12.5が好ましい。
【0045】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する金属塩(以下、「金属塩」と略記することもある)としては、ニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩を用いることができる。特に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンが含まれていることが好ましく、これらを組合せて使用することが更に好ましい。
【0046】
金属塩を含有する溶液は、合成反応の際別々に添加しても良いが、予め混合溶液として調整して添加することが好ましい。
【0047】
また、金属塩を含有する溶液の滴下速度(m値)は、0.005〜0.300mol/(l・h)に制御することが好ましい。なお、本単位は、反応容積1L、反応時間1h当りに滴下するニッケル、コバルト及びマンガンの総モル濃度である。より好ましい金属塩を含有する溶液の滴下速度(m値)は、0.010〜0.280mol/(l・h)である。さらに、塩濃度を安定させるために、硫酸ナトリウムを予め反応母液に含有させておいても良い。
【0048】
中和、沈殿反応は、金属塩を含有する溶液を滴下する前に予め不活性ガスで置換しておいてもよい。
【0049】
反応温度は30℃以上が好ましく、より好ましくは30〜60℃である。
【0050】
必要に応じて、Mg、Al、Ti、Zr、Sn等の異種金属を微量添加してもよく、あらかじめニッケル、コバルト、マンガン酸塩と混合する方法、ニッケル、コバルト、マンガン酸塩と同時に添加する方法、反応途中で反応溶液に添加する方法、のいずれの手段を用いても構わない。
【0051】
本発明においては、反応スラリーを濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥する。乾燥温度が150℃未満では、暴露環境によっては粒子粉末が脱水反応を起こし水分を放出し、粉体の流動性が悪化し、ハンドリングが困難になる恐れがある。一方、乾燥温度が250℃を超えても良いが、工業的には250℃未満が好ましい。
【0052】
本発明の製造方法においては、好ましくは図1に示す反応装置を用いる。図1(B)に示すとおり、攪拌機2とドラフトチューブ3を具備した反応器1に濃縮器5を連結した反応装置を用いる。本発明においては、あらかじめアルカリ溶液を反応器内に導入し、該アルカリ溶液中に金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液とを反応液面上部から連続的に滴下し、中和、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成する反応において、生成する反応スラリーの一部を反応器中段から抜き出し濃縮器に導入し、濃縮器で濃縮されたスラリーを反応器に再度導入する際、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入する。
原料の滴下、中和、沈殿反応と反応スラリーを濃縮する工程とを行って、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を所定の粒子径まで成長させた後に、該粒子を濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥することが好ましい。
【0053】
本発明においては、反応スラリーは反応器中段から抜き取ることが好ましい。反応器下段では未反応物を抜き取る可能性があるため好ましくない。また、反応器上段では原料や気泡を抜き取る可能性があるため好ましくない。なお、反応器中段とは、反応器内の反応液底面を0%、反応液面上部を100%とした際に、30〜70%の部分、好ましくは40〜60%の部分を意味する。
【0054】
濃縮器で濃縮されたスラリーを反応器に再度導入する際には、図1(A)に示すとおり、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入することが好ましい。濃縮スラリーを反応器中の反応スラリーの攪拌状態を乱さないように導入・添加することで、微粉の発生を抑制することができる。
【0055】
反応器と濃縮器との循環流量は、反応器内の反応スラリーの攪拌状態を変化させない程度が好ましい。濃縮は滴下する原料溶液を遅滞なく濾過する速度が好ましい。濾過方法は、連続的、間欠的何れでも構わない。また、反応器と濃縮器との上部は不活性ガスで常時置換しておくことが好ましい。
【0056】
反応時間は目的とする粒径に依存するので特に限定されるものではない。また、反応濃度の上限は、反応スラリーの粘度などの性状から、配管内への付着がなく、閉塞しない程度に設備が安定的に稼動する範囲であれば特に規定はない。工業的には上限は20mol/l程度が好ましい。
【0057】
次に、本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を用いて製造したリチウム複合酸化物粒子粉末について述べる。
【0058】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の平均粒子径は3.0〜25.0μmが好ましく、BET比表面積値は0.10〜1.50m2/gが好ましい。
【0059】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末のBET比表面積値は0.10〜1.50m2/gであることが好ましい。BET比表面積値が0.10m2/g未満のリチウム複合酸化物粒子粉末は、工業的に合成して得ることは非常に困難である。BET比表面積値が1.50m2/gを越える場合には、電極とした場合、熱安定性が良好で膨れが少なく、室温、高温サイクル特性に優れた電池が得られるとは言い難い。より好ましいBET比表面積値は0.10〜1.30m2/gである。
【0060】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)は3.0〜25.0μmである。二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0μm未満の場合には、密度が低いものになる。二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が25.0μmを超える場合には、電極厚みの関係から、電極の折れ、曲がりなどで、電極から粒子剥がれが生じ、粒子が露出する可能性があり好ましくない。より好ましい平均粒子径(D50)は4.0〜23.0μmである。
【0061】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布における半価幅(W)とが下記関係式2を満たすものである。
【0062】
(関係式2)
W≦0.4×D50
【0063】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布における半価幅(W)とが前記関係式(2)を満たすことによって、粒度分布に均斉で微粉が少ないリチウム複合酸化物粒子粉末となる。
【0064】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末の組成比は、前記ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の組成比をほぼ維持したものであり、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%である(ただし、x+y+z=100mol%である)ことが好ましい。前記組成の範囲以外の場合は、原材料価格、リチウム複合酸化物化時の製造方法、物理特性、電池特性含め総合的にバランスの取れた範囲を逸脱し、何れかの観点でバランスを崩すものであり好ましくない。より好ましい組成比はNi:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜55mol%、zが5〜35mol%である。
【0065】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末の金属総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))は、0.90〜1.20であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.15である。
【0066】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、常法に従って、前記本発明のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、800〜1100℃の温度範囲で熱処理を行って得ることができる。
【0067】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物酸化物粒子とリチウム化合物の混合処理は、均一に混合することができれば乾式、湿式のどちらでもよい。リチウム化合物は水酸化リチウム、炭酸リチウム何れでも良いが、炭酸リチウムが好ましい。
【0068】
リチウムの混合比は、本発明のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子中のニッケル・コバルト・マンガンの総モル数に対して0.90〜1.20であることが好ましい。
【0069】
次に、本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた正極について述べる。
【0070】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末を用いて正極を製造する場合には、常法に従って、導電剤と結着剤とを添加混合する。導電剤としてはアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等が好ましく、結着剤としてはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が好ましい。
【0071】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いて製造される二次電池は、前記正極、負極及び電解質から構成される。
【0072】
負極活物質としては、リチウム金属、リチウム/アルミニウム合金、リチウム/スズ合金、グラファイトや黒鉛等を用いることができる。
【0073】
また、電解液の溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの組み合わせ以外に、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル等のカーボネート類や、ジメトキシエタン等のエーテル類の少なくとも1種類を含む有機溶媒を用いることができる。
【0074】
さらに、電解質としては、六フッ化リン酸リチウム以外に、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等のリチウム塩の少なくとも1種類を上記溶媒に溶解して用いることができる。
【0075】
<作用>
本発明において最も重要な点は、前駆体として粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子の比較的大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物前駆体を用いることにより、リチウム複合酸化物粒子粉末とした際に、粒度が均一で、微粉が少なく、一次粒子が大きく、比表面積が小さいリチウム複合酸化物粒子粉末を得ることができ、電極とした際には、熱安定性が良好で膨れが少なく、しかも、容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性に優れた電池が得られることである。
【0076】
連続式(オーバーフロー)では、常時核発生と成長反応が同時に起こるので微粉が存在し、粒度分布が広い。また、常時微粉が発生するので15μmを超えるような大きな粒子を製造することが困難である。更に、反応濃度(固形分)は原料濃度と同時に滴下するアルカリ液量に依存し、それほど高くできないので粒子にシェアがかかりにくく、密度の高い粒子が得られ難い。
一方、本発明に係る製造方法はバッチ式であるために、微粉の発生が起こらないので、粒子サイズの制御が容易であり、粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子の比較的大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物前駆体を製造することが可能である。
【0077】
また、本発明においては、反応器と濃縮器とを連結し、反応スラリーは反応器と濃縮器との間を循環させ、濃縮器から反応器に導入するときに、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入するので、反応器の攪拌状態を妨げることなく導入・添加でき、粒度分布が均一なニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を得ることができる。
【実施例】
【0078】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0079】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の組成はプラズマ発光分析装置(セイコー電子工業製 SPS 4000)を用いて測定した。
【0080】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の粒子形状は、エネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡SEM−EDX[(株)日立ハイテクノロジーズ製]を用いて観察した。
【0081】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と粒度分布におけるピークの半価幅(W)は、粒度分布計マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)を用いて測定した。
【0082】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の比表面積はMacsorb HM model−1208(マウンテック社製)を用いて、BET法にて測定した。
【0083】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のタップ密度は、粉末試料40gを、100mlのメスシリンダーに充填し、タンプデンサー(KYT−3000、セイシン企業社製)を用いて、500回タップした後の粉末密度を測定した。
【0084】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の同定は、粉末X線回折(RIGAKU Cu−Kα 40kV 40mA)を用いて評価し、2θ=19.3±0.5°の回折ピークの結晶子サイズは、前記評価の回折ピークから計算した。
【0085】
<正極活物質>
正極活物質の電池特性は、下記製造法によって正極、負極及び電解液を調製しコイン型の電池セルを作製して評価した。
【0086】
<正極の作製>
正極活物質と導電剤であるアセチレンブラック、グラファイト及び結着剤のポリフッ化ビニリデンを重量比94:3:3となるよう精秤し、N−メチル−2−ピロリドンに分散させ、高速混練装置で十分に混合して正極合剤スラリーを調整した。次にこのスラリーを集電体のアルミニウム箔に150μmのドクターブレードで塗布し、120℃で乾燥してからφ16mmの円板状に打ち抜き正極板とした。
【0087】
<負極の作製>
金属リチウム箔をφ16mmの円板状に打ち抜いて負極を作製した。
【0088】
<電解液の調製>
炭酸エチレンと炭酸ジメチルとの体積比1:2の混合溶液に電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解して電解液とした。
【0089】
<コイン型電池セルの組み立て>
アルゴン雰囲気のグローブボックス中でSUS316L製のケースを用い、上記正極と負極の間にポリプロピレン製のセパレータを介し、さらに電解液を注入して2032型のコイン電池を作製した。
【0090】
<電池評価>
前記コイン型電池を用いて、二次電池の充放電試験を行った。
室温、高温サイクル試験は、測定条件としてはカットオフ電圧が3.0Vから4.3Vの間で、0.1Cで1サイクル、1Cで99サイクルの充放電を、合計201サイクルに到達するまで繰り返し、各放電容量を確認した。尚、これらの測定は25℃(室温)および60℃(高温)の恒温槽内にて実施した。
レート試験は、測定条件としては、カットオフ電圧が3.0Vから4.3Vの間で、充電を0.1C一定とし、0.1C、1C、2C、5Cの放電レートにて測定した。尚、これらの測定は25℃の恒温槽内にて実施した。
【0091】
実施例1
<ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造>
ドラフトチューブ、バッフル、羽根型攪拌機を具備した有効容積10Lの反応器内に、イオン交換水を8L張り、十分な攪拌をしながら、温度を40℃に調整し、pH=12.0となるように4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。またアンモニア濃度が0.80mol/lとなるように4mol/lのアンモニア水溶液を滴下した。1.5mol/lの硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸マンガン混合水溶液を、平均で0.08mol/(l・hr)の供給速度とし、連続的に反応器に供給した。同時にpH=12、アンモニア濃度が0.8mol/lとなるように4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液、4mol/lのアンモニア水溶液を連続的に供給した。速やかに生成したニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子スラリーの一部を連続的に反応器中段(反応液底部から50%の部分)から抜き出し、0.4Lの濃縮器で濃縮された濃縮スラリーを反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向に戻し、目標平均粒子径まで成長させた。その時の反応器内のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子濃度は4mol/lであった。
【0092】
反応後、取り出した懸濁液を、フィルタープレスを用いて水洗を行った後、150℃で12時間乾燥を行い、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子(ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粒子)を得た。得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子は、D50が11.8μm、体積基準のピークの半価幅が4.4μm、比表面積BETが6.9m2/g、タップ密度が2.25g/cm3、結晶子サイズが285Åであった。得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のXRDプロファイルを図31に、SEM写真を図2(倍率1000倍)、図3(倍率5000倍)、図4(倍率25000倍)に示す。
【0093】
実施例2〜8
組成、反応温度、pH、反応濃度を種々変化させた以外は前記実施例1と同様にしてニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を得た。
【0094】
このときの製造条件を表1に、得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0095】
比較例1〜3
特表2009−515799記載の実施例に従い、種々の組成のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を作製した。このときのニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0096】
特表2009−515799号公報に記載された製造方法は、連続式の反応であるため微粉が発生し、粒度分布が広いものであった。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
実施例2〜8のSEM写真を図5〜図19に示す。
【0100】
比較例1〜3のSEM写真を図20〜図28に示す。
【0101】
実施例1〜8の粒度分布を図29に、比較例1〜3の粒度分布を図30に示す。
【0102】
実施例1のXRDプロファイルを図31に示す。
【0103】
実施例9
<正極活物質の製造>
実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを、リチウム/(コバルト+ニッケル+マンガン)のモル比が1.05となるように所定量を十分混合し、混合粉を大気中で、950℃で10時間焼成してリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0104】
得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の組成比は、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)で48.85:20.29:30.86であり、ニッケル、コバルト及びマンガンの総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))は1.05であった。また、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のX線回折の結果、層状リチウム化合物単相であり不純物相は存在しなかった。また、平均粒子径11.6μm、体積基準のピークの半価幅が4.4μm、BET比表面積値は0.31m2/gであり、粒度が均一な粒子であった。
【0105】
前記正極活物質を用いて作製したコイン型電池は、初期放電容量が165.7mAh/gであり、初期効率が86.0%であり、レート特性(1C/0.1C)が89.7%、200サイクルでの容量維持率が室温で87.3%、60℃で66.2%であった。
【0106】
比較例4
<正極活物質の製造>
比較例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン複合粒子粉末とリチウム化合物とを、リチウム/総メタルのモル比が1.05となるように所定量を十分混合し、混合粉を大気中で、950℃で10時間焼成してリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0107】
得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の組成比は、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)で50.38:20.77:28.85であり、ニッケル、コバルト及びマンガンの総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))は1.05であった。また、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のX線回折の結果、層状リチウム化合物単相であり不純物相は存在しなかった。また、平均粒子径10.8μm、体積基準のピークの半価幅が6.9μm、BET比表面積値は0.38m2/gであった。
【0108】
前記正極活物質を用いて作製したコイン型電池は、初期放電容量が158.2mAh/gであり、初期効率が82.6%であり、レート特性(1C/0.1C)が84.9%、200サイクルでの容量維持率が室温で80.0%、60℃で60.1%であった。
【0109】
このときの製造条件、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の複合諸特性、及び電池特性を表3及び表4に示す。
【0110】
実施例10〜16、比較例5、6
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の種類、リチウム/(コバルト+ニッケル+マンガン)のモル比及び焼成温度を種々変化させた以外は実施例9と同様にして、リチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0111】
このときの製造条件、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の複合諸特性、及び電池特性を表3に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
実施例で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末は、比較例で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末に対し、初期容量、初期効率及びレート特性の点で優れることが確認された。殊に、ほぼ同じ組成割合を有するリチウム複合酸化物粒子粉末(例えば、実施例9〜12と比較例4)を比較すれば、実施例のリチウム複合酸化物粒子粉末が優れた特性を有することが明らかである。
【0115】
実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の粒度分布図を図32に、実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた電池のレート特性を図33、室温サイクル特性を図34、高温60℃でのサイクル特性を図35に示す。
【0116】
実施例で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末は、比較例で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末に対し、室温及び高温での容量維持率に優れることが確認された。
【0117】
実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のXRDプロファイルを図36に示す。
【0118】
また、実施例9及び13、比較例4及び6で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のSEM写真を図37〜図48に示す。
【0119】
得られるリチウム複合酸化物粒子粉末は、前駆体であるニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の粒子形状をほぼ継承していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を前駆体とした正極活物質を用いることで、焼成条件を工夫することなく、一次粒子が比較的大きく、比表面積が比較的小さい粒子が得られ、二次電池として熱安定性が良好で電池膨れ防止の向上し、容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性が良好な非水電解質二次電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0121】
1 反応槽
2 攪拌機
3 ドラフトチューブ
4 ポンプ
5 濃縮器
6 バッフル
10 原料供給
11 戻りライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子が大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末に関する。本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、非水電解質二次電池に用いられる正極活物質の前駆体として有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、AV機器やパソコン等の電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として小型、軽量で高エネルギー密度を有する二次電池への要求が高くなっている。このような状況下において、充放電電圧が高く、充放電容量も大きいという長所を有するリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
従来、4V級の電圧をもつ高エネルギー型のリチウムイオン二次電池に有用な正極活物質としては、スピネル型構造のLiMn2O4、ジグザグ層状構造のLiMnO2、層状岩塩型構造のLiCoO2、LiCo1−XNiXO2、LiNiO2等が一般的に知られている。なかでもLiCoO2を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電電圧と充放電容量を有する点で優れているが、Coが高価であることから、LiCoO2に代わる様々な正極活物質が研究されている。
【0004】
一方、LiNiO2を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電容量を有する電池として注目されている。しかし、この材料は、充電時の熱安定性及び充放電サイクル耐久性に劣るため、更なる特性改善が求められている。
【0005】
即ち、LiNiO2はリチウムを引き抜いた際に、Ni3+がNi4+となりヤーンテラー歪を生じ、リチウムを0.45引き抜いた領域で六方晶から単斜晶へ、さらに引き抜くと単斜晶から六方晶と結晶構造が変化する。そのため、充放電反応を繰り返すことによって、結晶構造が不安定となり、サイクル特性が悪くなる、又酸素放出による電解液との反応などが起こり、電池の熱安定性及び保存特性が悪くなるといった特徴があった。この課題を解決する為に、LiNiO2のNiの一部にCo、Al、Mn、Tiなどを添加した材料の研究が行われてきている。
【0006】
即ち、LiNiO2のNiの一部を異種元素で置換することによって、置換元素が有する特性を付与することが可能となる。例えば、LiNiO2にCoを置換した場合、少ないCo量でも、高い充放電電圧と充放電容量を有することが期待できる。一方、LiMn2O4はLiNiO2又はLiCoO2に対して安定な系ではあるが、結晶構造が異なるため置換できる量には制限がある。
【0007】
そこで、Co、Mnで置換したLiNiO2において、充填性が高く結晶構造が安定なCo、Mnで置換したLiNiO2を得るためには、組成、物性及び結晶性、粒度分布を制御したニッケル・コバルト・マンガン系前駆体を用いる必要がある。
【0008】
特に、LiNiO2などの非水電解質二次電池用の正極活物質の粒度分布は、正極材の充填性に大きく寄与するものであるから、より粒度分布が揃った正極活物質が要求されている。そのため、異種金属を置換したLiNiO2の前駆体となるニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末についても、粒度が均一で微粉が少ないことが要求されている。
【0009】
従来、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末について、タップ密度や粒子形状、粒度分布を制御することが知られている(特許文献1〜4)。
【0010】
特許文献1に記載の技術は、タッピング密度が1.5g/cc以上の球状高密度コバルトマンガン共沈水酸化ニッケルに関するものである。
【0011】
また、特許文献2には、遷移金属元素を原子レベルで均質に固溶したニッケル・マンガン共沈複合酸化物が開示されている。
【0012】
また、特許文献3には、ニッケル・コバルト・マンガン共沈複合酸化物凝集粒子に酸化剤を作用させて合成したニッケル・コバルト・マンガン複合オキシ水酸化物が開示されている。
【0013】
また、特許文献4には、粒度分布を制御したニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−201028号公報
【特許文献2】国際公開第02/078105号
【特許文献3】国際公開第04/092073号
【特許文献4】特開2008−147068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、前記技術によって得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、微粉の発生を抑制することが不十分であり、粒度分布のシャープなニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は未だ得られていない。
【0016】
そこで、本発明は、粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子が大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0018】
即ち、本発明は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とが下記関係式1を満足するニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末である(本発明1)。
(関係式1)
W≦0.4×D50
【0019】
また、本発明は、本発明1に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末において、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%である(ただし、x+y+z=100mol%である)ことを特徴とするニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末である(本発明2)。
【0020】
また、本発明は、攪拌機とドラフトチューブを具備し、濃縮器を連結した反応装置を用意し、あらかじめアルカリ溶液を反応器内に導入し、該アルカリ溶液中に、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液とを反応液面上部から連続的に滴下し、中和、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成する反応において、生成する反応スラリーの一部を反応器中段から抜き出し濃縮器に導入し、濃縮器で濃縮されたスラリーを反応器に再度導入する際、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入する工程を行って、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成させ、得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を含有する反応スラリーを濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥することを特徴とする本発明1又は2に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造方法である(本発明3)。
【0021】
また、本発明は、アルカリ溶液としては水酸化ナトリウムとアンモニアを用いることを特徴とする本発明3に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造方法である(本発明4)。
【0022】
また、本発明は、少なくとも、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有するリチウム複合酸化物粒子粉末であって、該リチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とが下記関係式2を満足するリチウム複合酸化物粒子粉末である(本発明5)。
(関係式2)
W≦0.4×D50
【0023】
また、本発明は、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%であり(ただし、x+y+z=100mol%である)、ニッケル、コバルト及びマンガンの総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))が0.90〜1.20である本発明5記載のリチウム複合酸化物粒子粉末である(本発明6)。
【0024】
また、本発明は、本発明1又は2に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、800〜1100℃の温度範囲で熱処理を行うリチウム複合酸化物粒子粉末の製造方法である(本発明7)。
【0025】
また、本発明は、本発明5又は6に記載のリチウム複合酸化物粒子粉末を使用した非水電解質二次電池である(本発明8)。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物は、粒度が均一で微粉が少ないので、該ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を用いて製造したリチウム複合酸化物粒子粉末では、正極活物質由来の熱安定性が良好で電池膨れ防止の向上が期待できる。
【0027】
また、本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物は高結晶性であり一次粒子が比較的大きいので、該ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を用いて製造したリチウム複合酸化物粒子粉末では、焼成条件を工夫することなく、一次粒子の比較的大きな粒子が得られ、容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性が向上することが期待できる。
【0028】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、粒度が均一で微粉が少ないので、正極活物質由来の熱安定性が良好で電池膨れ防止の向上が期待できる。また、本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性が向上することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末に製造に用いる装置の概略図である。(A)は上部からの概略図であり、(B)は装置断面の概略図である。
【図2】実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図3】実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図4】実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図5】実施例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図6】実施例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図7】実施例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図8】実施例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図9】実施例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図10】実施例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図11】実施例5で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図12】実施例5で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図13】実施例5で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図14】実施例6で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図15】実施例6で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図16】実施例6で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図17】実施例7で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図18】実施例7で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図19】実施例7で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率25000倍)。
【図20】比較例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図21】比較例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図22】比較例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図23】比較例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図24】比較例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図25】比較例2で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図26】比較例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図27】比較例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図28】比較例3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図29】実施例1〜8で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の粒度分布図である。
【図30】比較例1〜3で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の粒度分布図である。
【図31】実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のXRDプロファイルである。
【図32】実施例9〜13(a)と比較例4〜6(b)で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の粒度分布図である。
【図33】実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた電池のレート特性である。
【図34】実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた電池の室温25℃でのサイクル特性である。
【図35】実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた電池の高温60℃でのサイクル特性である。
【図36】実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のXRDプロファイルである。
【図37】実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図38】実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図39】実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図40】実施例13で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図41】実施例13で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図42】実施例13で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図43】比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図44】比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図45】比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【図46】比較例6で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率1000倍)。
【図47】比較例6で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率5000倍)。
【図48】比較例6で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の電子顕微鏡写真(SEM)である(倍率20000倍)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0031】
先ず、本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末について述べる。本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、後工程でリチウム化合物とを混合して800〜1100℃の温度範囲で熱処理を行って得られるリチウム複合酸化物粒子粉末の前駆体粒子であり、代表的には、ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物、複合オキシ水酸化物又は複合酸化物を意味するものである。
【0032】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)は3.0〜25.0μmである。二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0μm未満の場合には、凝集させるのが困難であるか、凝集したとしても密度の非常に低いものになる。二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が25.0μmを超える場合には、リチウム複合酸化物とした場合、電極厚みの関係から、電極の折れ、曲がりなどで、電極から粒子剥がれが生じ、粒子が露出する可能性があり好ましくない。より好ましい平均粒子径(D50)は4.0〜23.0μmである。
【0033】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布における半価幅(W)とが下記関係式1を満たすものである。
(関係式1)
W≦0.4×D50
【0034】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布における半価幅(W)とが前記関係式(1)を満たすことによって、粒度分布に均斉で微粉が少ないニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とすることができ、該ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を用いて作製したリチウム複合酸化物粒子粉末は粒度分布に優れるものとなる。
【0035】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末において、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%である(ただし、x+y+z=100mol%である)ことが好ましい。前記組成の範囲以外の場合は、原材料価格、リチウム複合酸化物化時の製造方法、物理特性、電池特性含め総合的にバランスの取れた範囲を逸脱し、何れかの観点でバランスを崩すものであり好ましくない。より好ましい組成比はNi:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜55mol%、zが5〜35mol%である。
【0036】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のBET比表面積値は0.1〜20.0m2/gであることが好ましい。BET比表面積値が0.1m2/g未満のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、工業的に合成して得ることは非常に困難である。BET比表面積値が20.0m2/gを越える場合には、リチウム複合酸化物とした場合、目標とする比表面積に満たない場合があり、また、電極とした場合、熱安定性が良好で膨れが少なく、室温、高温サイクル特性に優れた電池が得られるとは言い難い。
【0037】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のタップ密度は、1.0〜3.0g/cm3であることが好ましい。タップ密度が1.0g/cm3未満の場合には、リチウム複合酸化物とした場合、高い圧縮密度、電極密度(正極)が得られない。タップ密度が3.0g/cm3を超える場合でも良いが、現実的には製造するのが困難である。より好ましいタップ密度は1.5〜3.0g/cm3、更により好ましくは1.8〜2.8g/cm3である。
【0038】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の粉末X線回折(Cu−Kα)による2θ=19.3±0.5°の回折ピークの結晶子サイズが150〜350Åであることが好ましい。2θ=19.3±0.5°の回折ピークの結晶子サイズが150Å未満の場合、一次粒子の厚みが小さく、比表面積が大きく、リチウム複合酸化物とした際、一次粒子が結晶成長しにくく、電極とした際には、熱安定性が良好で膨れが少なく、且つ容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性に優れた電池が得られるとは言い難い。2θ=19.3±0.5°のピークの結晶子サイズが350Åを超えても良いが、現実的に製造するのが困難である。
【0039】
次に、本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造法について述べる。
【0040】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末は、アルカリ溶液中に、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液とを同時に滴下し、中和、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を含有する反応スラリーを得、該反応スラリーを濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥して得ることができる。
【0041】
アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の水溶液を用いることができるが、中和反応用に水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又はそれらの混合溶液を用いることが好ましい。加えて、錯体反応用にアンモニア水溶液やアンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0042】
中和反応に用いるアルカリ溶液の添加量は、含有する全金属塩の中和分に対して当量比1.0でよいが、pH調整のためにアルカリ過剰分を合わせて添加することが好ましい。
【0043】
錯体反応に用いるアンモニア水溶液やアンモニウム塩の添加量は、反応液中のアンモニア濃度が0.01〜2.00mol/lの範囲で添加することが好ましい。
【0044】
反応溶液のpHは10.0〜13.0の範囲に制御することが好適である。反応溶液のpHが10.0未満の場合は、一次粒子を凝集させることが難しく、二次粒子を形成させることが困難になるか、あるいは、微粉が発生し、粒子個数が増加するため好ましくない。反応溶液のpHが13.0を超える場合は、一次粒子が板状に成長し、二次粒子が疎となり、充填密度が低下するため好ましくない。より好ましい反応溶液のpHは11.0〜12.5が好ましい。
【0045】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する金属塩(以下、「金属塩」と略記することもある)としては、ニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩を用いることができる。特に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンが含まれていることが好ましく、これらを組合せて使用することが更に好ましい。
【0046】
金属塩を含有する溶液は、合成反応の際別々に添加しても良いが、予め混合溶液として調整して添加することが好ましい。
【0047】
また、金属塩を含有する溶液の滴下速度(m値)は、0.005〜0.300mol/(l・h)に制御することが好ましい。なお、本単位は、反応容積1L、反応時間1h当りに滴下するニッケル、コバルト及びマンガンの総モル濃度である。より好ましい金属塩を含有する溶液の滴下速度(m値)は、0.010〜0.280mol/(l・h)である。さらに、塩濃度を安定させるために、硫酸ナトリウムを予め反応母液に含有させておいても良い。
【0048】
中和、沈殿反応は、金属塩を含有する溶液を滴下する前に予め不活性ガスで置換しておいてもよい。
【0049】
反応温度は30℃以上が好ましく、より好ましくは30〜60℃である。
【0050】
必要に応じて、Mg、Al、Ti、Zr、Sn等の異種金属を微量添加してもよく、あらかじめニッケル、コバルト、マンガン酸塩と混合する方法、ニッケル、コバルト、マンガン酸塩と同時に添加する方法、反応途中で反応溶液に添加する方法、のいずれの手段を用いても構わない。
【0051】
本発明においては、反応スラリーを濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥する。乾燥温度が150℃未満では、暴露環境によっては粒子粉末が脱水反応を起こし水分を放出し、粉体の流動性が悪化し、ハンドリングが困難になる恐れがある。一方、乾燥温度が250℃を超えても良いが、工業的には250℃未満が好ましい。
【0052】
本発明の製造方法においては、好ましくは図1に示す反応装置を用いる。図1(B)に示すとおり、攪拌機2とドラフトチューブ3を具備した反応器1に濃縮器5を連結した反応装置を用いる。本発明においては、あらかじめアルカリ溶液を反応器内に導入し、該アルカリ溶液中に金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液とを反応液面上部から連続的に滴下し、中和、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成する反応において、生成する反応スラリーの一部を反応器中段から抜き出し濃縮器に導入し、濃縮器で濃縮されたスラリーを反応器に再度導入する際、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入する。
原料の滴下、中和、沈殿反応と反応スラリーを濃縮する工程とを行って、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を所定の粒子径まで成長させた後に、該粒子を濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥することが好ましい。
【0053】
本発明においては、反応スラリーは反応器中段から抜き取ることが好ましい。反応器下段では未反応物を抜き取る可能性があるため好ましくない。また、反応器上段では原料や気泡を抜き取る可能性があるため好ましくない。なお、反応器中段とは、反応器内の反応液底面を0%、反応液面上部を100%とした際に、30〜70%の部分、好ましくは40〜60%の部分を意味する。
【0054】
濃縮器で濃縮されたスラリーを反応器に再度導入する際には、図1(A)に示すとおり、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入することが好ましい。濃縮スラリーを反応器中の反応スラリーの攪拌状態を乱さないように導入・添加することで、微粉の発生を抑制することができる。
【0055】
反応器と濃縮器との循環流量は、反応器内の反応スラリーの攪拌状態を変化させない程度が好ましい。濃縮は滴下する原料溶液を遅滞なく濾過する速度が好ましい。濾過方法は、連続的、間欠的何れでも構わない。また、反応器と濃縮器との上部は不活性ガスで常時置換しておくことが好ましい。
【0056】
反応時間は目的とする粒径に依存するので特に限定されるものではない。また、反応濃度の上限は、反応スラリーの粘度などの性状から、配管内への付着がなく、閉塞しない程度に設備が安定的に稼動する範囲であれば特に規定はない。工業的には上限は20mol/l程度が好ましい。
【0057】
次に、本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を用いて製造したリチウム複合酸化物粒子粉末について述べる。
【0058】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の平均粒子径は3.0〜25.0μmが好ましく、BET比表面積値は0.10〜1.50m2/gが好ましい。
【0059】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末のBET比表面積値は0.10〜1.50m2/gであることが好ましい。BET比表面積値が0.10m2/g未満のリチウム複合酸化物粒子粉末は、工業的に合成して得ることは非常に困難である。BET比表面積値が1.50m2/gを越える場合には、電極とした場合、熱安定性が良好で膨れが少なく、室温、高温サイクル特性に優れた電池が得られるとは言い難い。より好ましいBET比表面積値は0.10〜1.30m2/gである。
【0060】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)は3.0〜25.0μmである。二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0μm未満の場合には、密度が低いものになる。二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が25.0μmを超える場合には、電極厚みの関係から、電極の折れ、曲がりなどで、電極から粒子剥がれが生じ、粒子が露出する可能性があり好ましくない。より好ましい平均粒子径(D50)は4.0〜23.0μmである。
【0061】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布における半価幅(W)とが下記関係式2を満たすものである。
【0062】
(関係式2)
W≦0.4×D50
【0063】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布における半価幅(W)とが前記関係式(2)を満たすことによって、粒度分布に均斉で微粉が少ないリチウム複合酸化物粒子粉末となる。
【0064】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末の組成比は、前記ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の組成比をほぼ維持したものであり、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%である(ただし、x+y+z=100mol%である)ことが好ましい。前記組成の範囲以外の場合は、原材料価格、リチウム複合酸化物化時の製造方法、物理特性、電池特性含め総合的にバランスの取れた範囲を逸脱し、何れかの観点でバランスを崩すものであり好ましくない。より好ましい組成比はNi:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜55mol%、zが5〜35mol%である。
【0065】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末の金属総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))は、0.90〜1.20であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.15である。
【0066】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末は、常法に従って、前記本発明のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、800〜1100℃の温度範囲で熱処理を行って得ることができる。
【0067】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物酸化物粒子とリチウム化合物の混合処理は、均一に混合することができれば乾式、湿式のどちらでもよい。リチウム化合物は水酸化リチウム、炭酸リチウム何れでも良いが、炭酸リチウムが好ましい。
【0068】
リチウムの混合比は、本発明のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子中のニッケル・コバルト・マンガンの総モル数に対して0.90〜1.20であることが好ましい。
【0069】
次に、本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた正極について述べる。
【0070】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末を用いて正極を製造する場合には、常法に従って、導電剤と結着剤とを添加混合する。導電剤としてはアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等が好ましく、結着剤としてはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が好ましい。
【0071】
本発明に係るリチウム複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いて製造される二次電池は、前記正極、負極及び電解質から構成される。
【0072】
負極活物質としては、リチウム金属、リチウム/アルミニウム合金、リチウム/スズ合金、グラファイトや黒鉛等を用いることができる。
【0073】
また、電解液の溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの組み合わせ以外に、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル等のカーボネート類や、ジメトキシエタン等のエーテル類の少なくとも1種類を含む有機溶媒を用いることができる。
【0074】
さらに、電解質としては、六フッ化リン酸リチウム以外に、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等のリチウム塩の少なくとも1種類を上記溶媒に溶解して用いることができる。
【0075】
<作用>
本発明において最も重要な点は、前駆体として粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子の比較的大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物前駆体を用いることにより、リチウム複合酸化物粒子粉末とした際に、粒度が均一で、微粉が少なく、一次粒子が大きく、比表面積が小さいリチウム複合酸化物粒子粉末を得ることができ、電極とした際には、熱安定性が良好で膨れが少なく、しかも、容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性に優れた電池が得られることである。
【0076】
連続式(オーバーフロー)では、常時核発生と成長反応が同時に起こるので微粉が存在し、粒度分布が広い。また、常時微粉が発生するので15μmを超えるような大きな粒子を製造することが困難である。更に、反応濃度(固形分)は原料濃度と同時に滴下するアルカリ液量に依存し、それほど高くできないので粒子にシェアがかかりにくく、密度の高い粒子が得られ難い。
一方、本発明に係る製造方法はバッチ式であるために、微粉の発生が起こらないので、粒子サイズの制御が容易であり、粒度が均一で微粉が少なく、高結晶性で一次粒子の比較的大きいニッケル・コバルト・マンガン系化合物前駆体を製造することが可能である。
【0077】
また、本発明においては、反応器と濃縮器とを連結し、反応スラリーは反応器と濃縮器との間を循環させ、濃縮器から反応器に導入するときに、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入するので、反応器の攪拌状態を妨げることなく導入・添加でき、粒度分布が均一なニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を得ることができる。
【実施例】
【0078】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0079】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の組成はプラズマ発光分析装置(セイコー電子工業製 SPS 4000)を用いて測定した。
【0080】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の粒子形状は、エネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡SEM−EDX[(株)日立ハイテクノロジーズ製]を用いて観察した。
【0081】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)と粒度分布におけるピークの半価幅(W)は、粒度分布計マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)を用いて測定した。
【0082】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の比表面積はMacsorb HM model−1208(マウンテック社製)を用いて、BET法にて測定した。
【0083】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のタップ密度は、粉末試料40gを、100mlのメスシリンダーに充填し、タンプデンサー(KYT−3000、セイシン企業社製)を用いて、500回タップした後の粉末密度を測定した。
【0084】
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末及びリチウム複合酸化物粒子粉末の同定は、粉末X線回折(RIGAKU Cu−Kα 40kV 40mA)を用いて評価し、2θ=19.3±0.5°の回折ピークの結晶子サイズは、前記評価の回折ピークから計算した。
【0085】
<正極活物質>
正極活物質の電池特性は、下記製造法によって正極、負極及び電解液を調製しコイン型の電池セルを作製して評価した。
【0086】
<正極の作製>
正極活物質と導電剤であるアセチレンブラック、グラファイト及び結着剤のポリフッ化ビニリデンを重量比94:3:3となるよう精秤し、N−メチル−2−ピロリドンに分散させ、高速混練装置で十分に混合して正極合剤スラリーを調整した。次にこのスラリーを集電体のアルミニウム箔に150μmのドクターブレードで塗布し、120℃で乾燥してからφ16mmの円板状に打ち抜き正極板とした。
【0087】
<負極の作製>
金属リチウム箔をφ16mmの円板状に打ち抜いて負極を作製した。
【0088】
<電解液の調製>
炭酸エチレンと炭酸ジメチルとの体積比1:2の混合溶液に電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解して電解液とした。
【0089】
<コイン型電池セルの組み立て>
アルゴン雰囲気のグローブボックス中でSUS316L製のケースを用い、上記正極と負極の間にポリプロピレン製のセパレータを介し、さらに電解液を注入して2032型のコイン電池を作製した。
【0090】
<電池評価>
前記コイン型電池を用いて、二次電池の充放電試験を行った。
室温、高温サイクル試験は、測定条件としてはカットオフ電圧が3.0Vから4.3Vの間で、0.1Cで1サイクル、1Cで99サイクルの充放電を、合計201サイクルに到達するまで繰り返し、各放電容量を確認した。尚、これらの測定は25℃(室温)および60℃(高温)の恒温槽内にて実施した。
レート試験は、測定条件としては、カットオフ電圧が3.0Vから4.3Vの間で、充電を0.1C一定とし、0.1C、1C、2C、5Cの放電レートにて測定した。尚、これらの測定は25℃の恒温槽内にて実施した。
【0091】
実施例1
<ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造>
ドラフトチューブ、バッフル、羽根型攪拌機を具備した有効容積10Lの反応器内に、イオン交換水を8L張り、十分な攪拌をしながら、温度を40℃に調整し、pH=12.0となるように4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。またアンモニア濃度が0.80mol/lとなるように4mol/lのアンモニア水溶液を滴下した。1.5mol/lの硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸マンガン混合水溶液を、平均で0.08mol/(l・hr)の供給速度とし、連続的に反応器に供給した。同時にpH=12、アンモニア濃度が0.8mol/lとなるように4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液、4mol/lのアンモニア水溶液を連続的に供給した。速やかに生成したニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子スラリーの一部を連続的に反応器中段(反応液底部から50%の部分)から抜き出し、0.4Lの濃縮器で濃縮された濃縮スラリーを反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向に戻し、目標平均粒子径まで成長させた。その時の反応器内のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子濃度は4mol/lであった。
【0092】
反応後、取り出した懸濁液を、フィルタープレスを用いて水洗を行った後、150℃で12時間乾燥を行い、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子(ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粒子)を得た。得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子は、D50が11.8μm、体積基準のピークの半価幅が4.4μm、比表面積BETが6.9m2/g、タップ密度が2.25g/cm3、結晶子サイズが285Åであった。得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末のXRDプロファイルを図31に、SEM写真を図2(倍率1000倍)、図3(倍率5000倍)、図4(倍率25000倍)に示す。
【0093】
実施例2〜8
組成、反応温度、pH、反応濃度を種々変化させた以外は前記実施例1と同様にしてニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を得た。
【0094】
このときの製造条件を表1に、得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0095】
比較例1〜3
特表2009−515799記載の実施例に従い、種々の組成のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を作製した。このときのニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0096】
特表2009−515799号公報に記載された製造方法は、連続式の反応であるため微粉が発生し、粒度分布が広いものであった。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
実施例2〜8のSEM写真を図5〜図19に示す。
【0100】
比較例1〜3のSEM写真を図20〜図28に示す。
【0101】
実施例1〜8の粒度分布を図29に、比較例1〜3の粒度分布を図30に示す。
【0102】
実施例1のXRDプロファイルを図31に示す。
【0103】
実施例9
<正極活物質の製造>
実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを、リチウム/(コバルト+ニッケル+マンガン)のモル比が1.05となるように所定量を十分混合し、混合粉を大気中で、950℃で10時間焼成してリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0104】
得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の組成比は、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)で48.85:20.29:30.86であり、ニッケル、コバルト及びマンガンの総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))は1.05であった。また、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のX線回折の結果、層状リチウム化合物単相であり不純物相は存在しなかった。また、平均粒子径11.6μm、体積基準のピークの半価幅が4.4μm、BET比表面積値は0.31m2/gであり、粒度が均一な粒子であった。
【0105】
前記正極活物質を用いて作製したコイン型電池は、初期放電容量が165.7mAh/gであり、初期効率が86.0%であり、レート特性(1C/0.1C)が89.7%、200サイクルでの容量維持率が室温で87.3%、60℃で66.2%であった。
【0106】
比較例4
<正極活物質の製造>
比較例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン複合粒子粉末とリチウム化合物とを、リチウム/総メタルのモル比が1.05となるように所定量を十分混合し、混合粉を大気中で、950℃で10時間焼成してリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0107】
得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の組成比は、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)で50.38:20.77:28.85であり、ニッケル、コバルト及びマンガンの総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))は1.05であった。また、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のX線回折の結果、層状リチウム化合物単相であり不純物相は存在しなかった。また、平均粒子径10.8μm、体積基準のピークの半価幅が6.9μm、BET比表面積値は0.38m2/gであった。
【0108】
前記正極活物質を用いて作製したコイン型電池は、初期放電容量が158.2mAh/gであり、初期効率が82.6%であり、レート特性(1C/0.1C)が84.9%、200サイクルでの容量維持率が室温で80.0%、60℃で60.1%であった。
【0109】
このときの製造条件、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の複合諸特性、及び電池特性を表3及び表4に示す。
【0110】
実施例10〜16、比較例5、6
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の種類、リチウム/(コバルト+ニッケル+マンガン)のモル比及び焼成温度を種々変化させた以外は実施例9と同様にして、リチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0111】
このときの製造条件、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の複合諸特性、及び電池特性を表3に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
実施例で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末は、比較例で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末に対し、初期容量、初期効率及びレート特性の点で優れることが確認された。殊に、ほぼ同じ組成割合を有するリチウム複合酸化物粒子粉末(例えば、実施例9〜12と比較例4)を比較すれば、実施例のリチウム複合酸化物粒子粉末が優れた特性を有することが明らかである。
【0115】
実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の粒度分布図を図32に、実施例9と比較例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を用いた電池のレート特性を図33、室温サイクル特性を図34、高温60℃でのサイクル特性を図35に示す。
【0116】
実施例で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末は、比較例で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末に対し、室温及び高温での容量維持率に優れることが確認された。
【0117】
実施例9で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のXRDプロファイルを図36に示す。
【0118】
また、実施例9及び13、比較例4及び6で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末のSEM写真を図37〜図48に示す。
【0119】
得られるリチウム複合酸化物粒子粉末は、前駆体であるニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の粒子形状をほぼ継承していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係るニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を前駆体とした正極活物質を用いることで、焼成条件を工夫することなく、一次粒子が比較的大きく、比表面積が比較的小さい粒子が得られ、二次電池として熱安定性が良好で電池膨れ防止の向上し、容量が高くレート特性が優れ、室温、高温サイクル特性が良好な非水電解質二次電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0121】
1 反応槽
2 攪拌機
3 ドラフトチューブ
4 ポンプ
5 濃縮器
6 バッフル
10 原料供給
11 戻りライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とが下記関係式1を満足するニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末。
(関係式1)
W≦0.4×D50
【請求項2】
請求項1記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末において、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%である(ただし、x+y+z=100mol%である)ことを特徴とするニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末。
【請求項3】
攪拌機とドラフトチューブを具備し、濃縮器を連結した反応装置を用意し、あらかじめアルカリ溶液を反応器内に導入し、該アルカリ溶液中に金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液とを反応液面上部から連続的に滴下し、中和、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成する反応において、生成する反応スラリーの一部を反応器中段から抜き出し濃縮器に導入し、濃縮器で濃縮されたスラリーを反応器に再度導入する際、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入する工程を行って、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成させ、得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を含有する反応スラリーを濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥することを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
アルカリ溶液としては水酸化ナトリウムとアンモニアを用いることを特徴とする請求項3に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造方法。
【請求項5】
少なくとも、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有するリチウム複合酸化物粒子粉末であって、該リチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とが下記関係式2を満足するリチウム複合酸化物粒子粉末。
(関係式2)
W≦0.4×D50
【請求項6】
Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%であり(ただし、x+y+z=100mol%である)、ニッケル、コバルト及びマンガンの総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))が0.90〜1.20である請求項5記載のリチウム複合酸化物粒子粉末。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、800〜1100℃の温度範囲で熱処理を行うリチウム複合酸化物粒子粉末の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のリチウム複合酸化物粒子粉末を正極活物質として使用した非水電解質二次電池。
【請求項1】
二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とが下記関係式1を満足するニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末。
(関係式1)
W≦0.4×D50
【請求項2】
請求項1記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末において、Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%である(ただし、x+y+z=100mol%である)ことを特徴とするニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末。
【請求項3】
攪拌機とドラフトチューブを具備し、濃縮器を連結した反応装置を用意し、あらかじめアルカリ溶液を反応器内に導入し、該アルカリ溶液中に金属塩を含有する溶液とアルカリ溶液とを反応液面上部から連続的に滴下し、中和、沈殿反応を行ってニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成する反応において、生成する反応スラリーの一部を反応器中段から抜き出し濃縮器に導入し、濃縮器で濃縮されたスラリーを反応器に再度導入する際、反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向となるように導入する工程を行って、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を生成させ、得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子を含有する反応スラリーを濾過、水洗し、150〜250℃で乾燥することを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
アルカリ溶液としては水酸化ナトリウムとアンモニアを用いることを特徴とする請求項3に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造方法。
【請求項5】
少なくとも、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有するリチウム複合酸化物粒子粉末であって、該リチウム複合酸化物粒子粉末の二次粒子の体積基準の平均粒子径(D50)が3.0〜25.0μmであり、前記平均粒子径(D50)と二次粒子の体積基準の粒度分布におけるピークの半価幅(W)とが下記関係式2を満足するリチウム複合酸化物粒子粉末。
(関係式2)
W≦0.4×D50
【請求項6】
Ni:Co:Mnのモル比(mol%)をx:y:zとした場合、xが5〜65mol%、yが5〜65mol%、zが5〜55mol%であり(ただし、x+y+z=100mol%である)、ニッケル、コバルト及びマンガンの総量に対するLiのモル比(リチウム/(ニッケル+コバルト+マンガン))が0.90〜1.20である請求項5記載のリチウム複合酸化物粒子粉末。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、800〜1100℃の温度範囲で熱処理を行うリチウム複合酸化物粒子粉末の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のリチウム複合酸化物粒子粉末を正極活物質として使用した非水電解質二次電池。
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公開番号】特開2011−105588(P2011−105588A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237959(P2010−237959)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】
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