説明

ニッケル及びモリブデンをベースとする触媒を用いる、脱炭酸転化が限定された、再生可能な供給源由来の仕込原料の水素化脱酸素法

【課題】軽油の収率を最大にし、カルボキシル基のアルキル基への水素化脱酸素メカニズムを促進する。
【解決手段】本発明は、脱炭酸/脱カルボニルによる転化が多くとも10%に制限される、再生可能な供給源に由来する仕込原料の水素化脱酸素法であって、第VIB族からの少なくとも1種の元素および第VIII族からの少なくとも1種の元素によって構成される活性相を含むバルクまたは担持触媒を用い、該元素は硫化物の形態であり、第VIB族金属に対する第VIII族金属の原子比は、厳密に0超かつ0.095未満であり、120〜450℃の範囲の温度、1〜10MPaの範囲の圧力、0.1〜10h−1の範囲の毎時空間速度で、水素/仕込原料の比が仕込原料の容積(m)当たり水素50〜3000Nmとなるような仕込原料と混合される水素全量の存在下に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2005〜2010年の国際的状況は、第一に、欧州共同体における、燃料、特に軽油ベースの必要性の急増、第二に、地球温暖化及び温室効果ガスの排出と関連する重大な問題により特徴づけられる。これは化石由来の原料に関するエネルギー依存性を減少させる衝動及びCO排出の減少につながる。これに関連して、出資金は、燃料の精製及び生産のための従来の計画に容易に統合され得る再生可能な供給源に由来する新規な仕込原料を探索することに増大している。
【背景技術】
【0002】
この目的を達成するため、リグノセルロースバイオマスの転化に由来する植物起源の、または、植物油または動物脂肪の製造からの新生成物の精製方法への組み込みは、この数年の間、化石燃料の費用の増加の結果として興味の増大を享受してきた。同様に、伝統的なバイオ燃料(主として、エタノール又は植物油のメチルエステル)は、燃料プールにおける油田ベースに対する真の補足物としての地位を獲得した。
【0003】
環境への配慮の重要性と結びついた軽油燃料についての高い要求は、再生可能な供給源由来の仕込原料の使用に対する興味を高める。挙げられ得るこのような仕込原料の例は、植物油(食用又は非食用)若しくは藻類由来の油、動物脂肪又は使用済み料理用油などの、生のまたは前処理を経たもの、並びに、このような仕込原料の混合物である。これらの仕込原料は、基本的に、トリグリセリドタイプの化学的構造を含んでおり、当業者は、これを脂肪酸トリエステル及び脂肪酸としても知っているだろう。
【0004】
トリグリセリドの非常に高い分子量(600g/モル超)及び考慮中の仕込原料の高い粘度は、それらを直接的にまたは軽油と混合して用いれば、現代的なHDIタイプのエンジンについての困難性(非常に高い圧力の噴射ポンプとの適合性、インジェクターの目詰まりに関する問題、不完全燃焼、低収率、有毒な未燃焼排気)が引き起こされること意味する。しかし、トリグリセリドを構成する炭化水素鎖は基本的に直鎖であり、それらの長さ(炭素原子の数)は軽油中に存在する炭化水素と適合性がある。更に、それらの鎖は、一般に0〜3個の不飽和結合を含むが、特に藻類由来の油については更に多いかもしれない。
【0005】
従って、前記仕込原料は、良質の軽油を得るために変換されなければならない。
【0006】
1つの可能なアプローチは、エステル交換により、それらを転化することからなる。次いで、このような仕込原料を基本的に構成するトリグリセリドは、脂肪族モノアルコールの存在下、エステル交換反応により脂肪酸エステル及びグリセリンに転化される。この反応は、均一又は不均一相触媒により触媒され得る。挙げられ得る当該ルートの不利益は:a)エステル中の酸素の存在による、内燃機関の排気ガス中のNO排出の増加;b)軽油の終点規格を満たすことに関する問題を引き起こし得る360℃程度の極めて高い沸点;c)最大化されていないセタン指数(軽油に要求される最小限である約50)が得られること;及びd)炭化水素鎖上の二重結合の存在による酸化に対する安定性と関連する問題を含む。
【0007】
更なる可能なルートは、水素存在下における、植物油の脱酸素パラフィン系燃料への触媒的変換である(水素化処理)。多くの金属性又は硫化物形態の触媒が、当該タイプの反応に活性であることが知られている。
【0008】
このような植物油の水素化処理方法は既に公知であり、多くの特許文献に記載されている。挙げられ得る例は、特許文献1〜4である。
【0009】
例として、特許文献3には、中間留出液を生産するための脱酸素反応による、再生可能な供給源由来の仕込原料の変換方法が記載されている。触媒は、金属酸化物又は炭素タイプの担体上に分散したVIII族からの元素により構成される金属活性相により構成される。脱酸素反応に用いられる触媒は金属触媒であり、したがって、このルートは、脱炭酸/脱カルボニルによるパラフィン類の排他的な生成をもたらし、炭素酸化物の生成を引き起こす。これは、水素化脱酸素反応(水の生成のために水素を消費する)と比較して低下した水素消費量という利点を有するが、CO又はCOの形態での炭化水素のモルあたり1個の炭素原子の損失により品質向上可能な生成物(例えば、中間留分)の収率の減少を含む。
【0010】
更に、脱炭酸/脱カルボニル反応により生じる炭素の酸化物は、多くの不都合に悩まされるメタン化反応を引き起こす。一酸化炭素及び二酸化炭素は以下のようにメタン化される:
【0011】
【化1】

【0012】
以下のことを引き起こす:
1)水素消費量の増加;
2)水の形成:水/炭素の酸化物の混合物が、方法の材料に対して有害である炭素腐食を促進することは当業者に周知である。
【0013】
3)炭素の酸化物を除外するために、例えば、補助的かつ費用のかかる、アミンにより洗浄する工程および/またはメタン化を用いて、再循環させられる水素を精製する必要性。
【0014】
硫化物触媒は水素化処理反応:水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱酸素及び水素化脱金属において活性であることが知られている(非特許文献1)。
【0015】
文献中に見られる多くの研究は、バイオ液体(油又はリグノセルロース由来)の燃料中への触媒的変換のために実施される脱酸素反応についての可能性に対する証拠を有している。特に、Senolらは、CoMo又はMiMo/Al硫化物触媒の存在下、植物油に存在するトリグリセリドの親水性基(エステル基)及び親油性基(アルキル基)を代表するエステルタイプのモデル分子の変換を研究した(非特許文献2)。
【0016】
還元金属をベースとする触媒とは対照的に、遷移金属硫化物をベースとする固体の使用は、以下の2種の反応経路に従い、エステルタイプの分子からのパラフィン類の生産を可能にする。
【0017】
・ 水素化脱酸素:これは、水素の消費による水の形成と、最初の脂肪酸鎖の炭素原子数と同じ炭素原子数(Cn)を含む炭化水素の形成とをもたらす;
・ 脱炭酸/脱カルボニル:これは、炭素の酸化物(一酸化炭素CO及び二酸化炭素CO)の形成と、最初の脂肪酸鎖よりも1個少ない炭素原子(Cn−1)を含む炭化水素の形成とをもたらす。
【0018】
特許文献5には、再生可能な供給源からの仕込原料の水素化脱酸素方法であって、第VIB族からの少なくとも1種の金属と、第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含み、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比が0.48〜0.97の範囲である硫化物の形態の触媒を用いる、方法が記載されている。従って、この方法は、前記2つの反応経路を用いた、パラフィン類の生産を可能にする。
【0019】
出発仕込原料は、トリグリセリド及び/又は脂肪酸を含む、植物又は動物起源の油脂のような再生可能な供給源に由来する仕込原料又はこのような仕込原料の混合物である。本発明において用いられる植物油は、未精製であっても、若しくは完全又は部分的に精製されていてもよく、以下の植物:アブラナ、ヒマワリ種子、大豆、アフリカパーム、パームナッツ、トウゴマ(castor)、オリーブ、コプラ及びジャトロファ油に由来するが、このリストは限定的でない。魚又は藻類の油も本発明において用いられ得る。例えば、ラード又は獣脂のような任意の動物性脂肪、又は例えば、使用済み料理用油のような食品産業又はレストランからの残り物を構成する脂肪を挙げることも可能である。本発明において考慮される仕込原料は、主に偶数個の炭化水素化合物を含む。動物脂肪のみが最大で2.5%の奇数個の炭化水素化合物を含む。
【0020】
上記に定義される仕込原料はトリグリセリド及び/又は脂肪酸構造を含み、その脂肪鎖は、8〜25個の範囲の多数の炭素原子を含む。
【0021】
本発明により出発仕込原料の転化の際に生じさせられる炭化水素は、
a)メカニズムが、カルボキシル基のアルキル基への水素化脱酸素のためのメカニズムであり、水素化脱酸素が、水素の消費により水の形成をもたらすならば、出発脂肪酸鎖の炭素原子数と同じ炭素原子数;
b)発生メカニズムが脱炭酸/脱カルボニルであり、このメカニズムが、炭素酸化物(一酸化炭素CO及び二酸化炭素CO)の形成をもたらすならば、出発脂肪酸鎖より1個少ない炭素原子を有する炭化水素鎖;
c)軽油の現行の規制と適合する低温時特性(cold property)及びセタン指数を得るように調整された炭化水素の分枝の程度
によって特徴づけられる。
【0022】
従来技術によれば、上記に説明したように、一般に、硫化物触媒の存在下、2つの変換経路a)水素化脱酸素及びb)脱炭酸/脱カルボニルが共存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第4992605号明細書
【特許文献2】米国特許第5705722号明細書
【特許文献3】欧州特許第1681337号明細書
【特許文献4】欧州特許第1741768号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/141293号パンフレット
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】ビー・エス・クラウゼン(B S Clausen)、エイチ・ティー・トプソエ(H T Topsoe)およびエフ・イー・メソス(F E Massoth)著、「キャタリシス・サイエンス・アンド・テクノロジー(Catalysis Science and Technology)、1996年,第11巻、Springer-Verlag
【非特許文献2】セノール(Senol)ら著、「アプライド・キャタリシスA:ジェネラル(Applied Catalysis A: General)」、2007年、第326巻、p.236−244
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って、本発明の目的は軽油の収率を最大にし、a)に記載された水素化脱酸素メカニズムを促進することである。従って、触媒及び操作条件の選択は、水素化脱酸素の利益となるように選択性を適応させることを目的とし、一方では、水素消費量を、必要である量、特に、メタン化のような望まない反応に起因するであろう量に厳密に制限することをも目的とする。
【0026】
本発明はまた、軽油留分のパラフィンの異性化により良質の軽油燃料を生産し、それにより、例えばナフサ留分のような所望でない、より軽量のフラクションへの分解を制限することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
従って、再生可能な供給源に由来する仕込原料の水素化脱酸素反応の選択性を、活性相の性質に応じて、より特定的には、前記活性相の第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比に応じて制御することが可能であることが示された。
【0028】
再生可能な供給源由来の仕込原料の水素化脱酸素法における硫化モリブデンをベースとする触媒へのニッケルの導入は、依然として水素化脱酸素による植物油の変換反応が多数を占めているとしても、脱炭酸/脱カルボニル化反応として知られている反応に有利に働く一般的傾向を有する。
【0029】
しかし、意外にも、本出願人は、前記活性相について、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比の使用、特に適切なNi/Mo原子比の使用が、水素化脱酸素反応の選択性を制御及び増進し、その結果、脱炭酸/脱カルボニル化反応を制限し、その結果、炭素の酸化物の形成により引き起こされる不都合を制限することを発見した。
【0030】
従って、本発明の方法において使用される触媒は、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とから構成される活性相を含み、前記元素は硫化物の形態であり、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、厳密に0超かつ0.095未満である。
【0031】
本発明は、脱炭酸/脱カルボニルによる転化が多くとも10%に制限された、再生可能な供給源に由来する仕込原料の水素化脱酸素法であって、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とを含む活性相を含むバルク又は担持触媒を用い、前記元素は硫化物の形態であり、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、厳密に0超かつ0.095未満であり、前記方法は、120〜450℃の範囲の温度、1〜10MPaの範囲の圧力、0.1〜10h−1の範囲の毎時空間速度で、水素/仕込原料の比が仕込原料の容積(m)当たり水素50〜3000Nmとなるように仕込原料と混合される水素の全量存在下に行われる、方法である。
【0032】
好ましくは、前記触媒の活性相は、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とにより構成され、前記第VIB族からの元素は、モリブデンであり、前記第VIII族からの元素は、ニッケルである。
【0033】
好ましくは、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、0.01〜0.08の範囲である。
【0034】
好ましくは、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、0.01〜0.05の範囲である。
【0035】
好ましくは、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、0.01〜0.03の範囲である。
【0036】
好ましくは、原子比Ni/Moは、0.01〜0.03の範囲である。
【0037】
好ましくは、第VIB族からの元素の酸化物の量は、全触媒質量に対して1〜30重量%であり、第VIII族からの元素の酸化物の量は、全触媒質量に対して厳密に0重量%超かつ1.5重量%未満である。
【0038】
好ましくは、前記触媒は、リンを、全触媒質量に対する酸化物Pの重量で厳密に1%超かつ8%未満の量で含む。
【0039】
好ましくは、再生可能な供給源に由来する仕込原料の脱炭酸/脱カルボニルによる転化は、多くとも4%に制限される。
【0040】
好ましくは、前記方法は、固定床において行われる。
【0041】
好ましくは、前記方法は、沸騰床において行われる。
【0042】
好ましくは、水素化脱酸素からの流出物は、少なくとも1回の分離工程、好ましくは気/液分離工程、並びに水及び少なくとも1種の液化炭化水素ベースの分離のための工程を受ける。
【0043】
好ましくは、水を分離するための前記任意の工程の後に、前記液化炭化水素ベースから窒素含有化合物を除去するための工程が行われる。
【0044】
好ましくは、有機窒素含有化合物を除去するための工程から得られた液化炭化水素ベースの少なくとも一部は、水素化異性化触媒の存在下に水素化異性化される。
【0045】
好ましくは、前記水素化異性化触媒は、白金により構成される金属活性相と、ZBM−30をベースとする水素化異性化機能とを含む。
【発明の効果】
【0046】
本発明は、脱炭酸/脱カルボニルによる転化が多くとも10%に制限される、再生可能な供給源に由来する仕込原料の水素化脱酸素法であって、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とによって構成される活性相を含むバルク又は担持触媒を用い、前記元素が硫化物の形態であり、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比が厳密に0超かつ0.095未満であり、前記方法は、120〜450℃の範囲の温度、1〜10MPaの範囲の圧力、0.1〜10h−1の範囲の毎時空間速度で、水素/仕込原料比が仕込原料の体積(m)当たり水素50〜3000Nmになるように仕込原料と混合される水素全量の存在下に行われる方法に関する。
【0047】
従って、本発明の方法は:
1)燃料ベースの収率を最大にし;
2)炭素腐食を制限し;
3)再循環水素の精製を促進し;
4)さらなる値を伴うことなく、反応の水素消費の増加を引き起こすメタン化反応を制限する
ことができる。
【0048】
更に、本発明は、再生可能な供給源に由来する仕込原料から開始し、最新の環境規制を満たす軽油燃料ベースを調製するために特に用いられる。
【0049】
本発明により製造された軽油ベースは優れた品質を有する;
・低硫黄含有量(すなわち10重量ppm未満)を有し;
・及び低芳香族化合物含有量(すなわち5重量%未満の総芳香族化合物含有量及び2重量%未満の多環芳香族化合物含有量)を有し;
・生じた炭化水素が実質的にパラフィン構造であることに起因して、55超、好ましくは60超、より好ましくは70超の優れたセタン指数を有し;
・燃料規格を満たす留分のパラフィンの異性化度のために、良好な低温特性を有し、すなわち、施行中の標準と適合し;−15℃未満のろ過可能な温度限界及び−5℃未満の曇り点、;
・得られる密度は低く、一般に800kg/m未満である(これは、軽油プールが密度規格(最大845kg/m)を満たすのを補助する限り有利であり、その結果、より高い密度の留分が組み入れられることを意味する)。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、脱炭酸/脱カルボニルによる転化が多くとも10%に制限された、再生可能な供給源に由来する仕込原料の水素化脱酸素法であって、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とによって構成される活性相を含むバルク又は担持触媒を用い、前記元素は硫化物の形態であり、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比が厳密に0超かつ0.095未満であり、前記方法は、120〜450℃の範囲の温度、1〜10MPaの範囲の圧力、0.1〜10h−1の範囲の毎時空間速度で、水素/仕込原料の比が仕込原料の体積(m)当たり水素50〜3000Nmとなるように仕込原料と混合される水素の全量の存在下に行われる、方法に関する。
【0051】
本発明によれば、「活性相」なる用語は、硫化物の形態の金属の群からの元素(単数または複数)を含む相を意味し;この場合には、本発明の触媒の活性相は、第VIB族からの少なくとも1種の元素の硫化物と、第VIII族からの少なくとも1種の元素の硫化物とにより構成される。
【0052】
本発明によれば、本発明の方法において用いられる触媒は担持されてよく、すなわち、それは、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、クレイ及びこれらの鉱物の少なくとも2種の混合物により形成される群からの無定形鉱物担体を含む。この担体は、有利には、例えば、酸化ホウ素、ジルコニア、酸化チタン及び無水リン酸により形成される群から選択される酸化物のような他の化合物をも含み得る。
【0053】
好ましくは、無定形鉱物担体はアルミナ担体(η、δ又はγ)である。
【0054】
本発明によれば、本発明の方法において用いられる前記触媒は、あるいはバルク形態(すなわち、担体なし)であってもよい。
【0055】
本発明の方法によれば、担持されたまたはバルク形態における前記触媒の活性相は、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とにより構成され、前記第VIB族からの元素はモリブデン及びタングステンから選択され、好ましくは第VIB族からの前記元素はモリブデンであり;第VIII族からの前記元素はニッケル及びコバルトから選択され;好ましくは、第VIII族からの前記元素はニッケルである。
【0056】
本発明の方法によれば、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、厳密に0超かつ0.095未満、好ましくは0.01〜0.08の範囲、より好ましくは0.01〜0.05の範囲、非常に好ましくは0.01〜0.03の範囲である。
【0057】
好ましくは、第VIB族からの金属はモリブデンであり、第VIII族からの金属はニッケルであり、第VIB族からの金属に対する第VIII族からの金属の原子比、すなわち、原子比Ni/Moは、厳密に0超かつ0.095未満であり、好ましくは0.01〜0.08の範囲、より好ましくは0.01〜0.05の範囲、非常に好ましくは0.01〜0.03の範囲である。
【0058】
前記触媒が担持形態である場合、第VIB元素の酸化物の量は、全触媒質量に対する重量で有利には1〜30%の範囲、好ましくは10〜25重量%の範囲、より好ましくは15〜25重量%の範囲、一層より好ましくは17〜23重量%の範囲であり、第VIII族からの元素の酸化物の量は、全触媒質量に対する重量で有利には厳密に0%超かつ1.5%未満、好ましくは0.05〜1.1重量%の範囲、より好ましくは0.07〜0.65重量%の範囲、一層より好ましくは0.08〜0.36重量%の範囲である。
【0059】
本発明との関連で、酸化モリブデン含有量1重量%に対する原子比Ni/Moの最小値0.01は、ICP(inductively coupled plasma:誘導結合プラズマ)による通常の元素分析技術により検出可能なニッケル含有量50重量ppmに相当し、前記ニッケル検出限界は、ppmのオーダーである。
【0060】
前記触媒がバルク形態である場合、第VIB族及び第VIII族からの元素の酸化物の量は、本発明により定義されるように、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比により定義される。
【0061】
厳密に0超かつ0.095未満の第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比について、第VIB族からの元素の量は、第VIB族からの元素の酸化物等価物として有利には95.3重量%超かつ厳密に100重量%未満であり、第VIII族からの元素の量は、第VIII族からの元素の酸化物等価物として有利には厳密に0重量%超かつ4.7重量%未満である。
【0062】
0.01〜0.08の範囲の第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比について、第VIB族からの元素の量は、第VIB族からの元素の酸化物等価物として有利には96〜99.4重量%の範囲であり、第VIII族からの元素の量は、第VIII族からの元素の酸化物等価物として有利には0.6〜4重量%の範囲である。
【0063】
0.01〜0.05の範囲の第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比について、第VIB族からの元素の量は、第VIB族からの元素の酸化物等価物として有利には97.4〜99.4重量%の範囲であり、第VIII族からの元素の量は、第VIII族からの元素の酸化物等価物として有利には0.6〜2.6重量%の範囲である。
【0064】
0.01〜0.03の範囲の第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比について、第VIB族からの元素の量は、第VIB族からの元素の酸化物等価物として有利には98.4〜99.4重量%の範囲であり、第VIII族からの元素の量は、第VIII族からの元素の酸化物等価物として有利には0.6〜1.6重量%の範囲である。
【0065】
本発明の触媒は、有利には、水素化脱酸素経路に対する反応選択性を維持しながら、高レベルの転化を引き出すために、少なくとも1種のドーピング元素も含み得る。従って、前記触媒がバルク形態である場合の活性相及び/又は前記触媒が担持形態である場合の担体は、有利には、リン、フッ素及びホウ素から選択される少なくとも1種のドーピング元素を含み得;好ましくは、ドーピング元素はリンである。当業者は、これらの元素が触媒活性について間接的効果;硫化活性相のより良好な分散及び水素処理反応に有利に働く触媒の酸性度の上昇を有していることを知っているだろう(Sun et al,Catalysis Today 86(2003),173)。
【0066】
前記ドーピング元素は、マトリクス内に導入されてもよく、又は担体上に蒸着させられてもよい。有利には、単独で、又はリン及び/又はホウ素及び/又はフッ素と共に、ケイ素を担体上に蒸着させることも可能である。
【0067】
ドーピング元素、好ましくはリンの量は、有利には、全触媒質量に対する酸化物Pの重量で厳密に1%超かつ8%未満であり、好ましくは1.5重量%超かつ8重量%未満、より好ましくは3重量%超かつ8重量%未満である。
【0068】
本発明の方法における上記の触媒の使用は、前述した理由により脱炭酸/脱カルボニル反応を制限することによって、炭素酸化物の形成を制限することができることを意味する。
【0069】
従って、本発明との関連で、再生可能な供給源に由来する仕込原料の全転化を、有利には90%以上、好ましくは95%超、より好ましくは98%超に維持しながら、水素化脱酸素生成物の収率を最大にすること、すなわち、脱酸素生成物の収率を、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上にとどめることが可能である。
【0070】
本発明によれば、脱炭酸/脱カルボニルによる仕込原料の転化は、多くとも10%に制限され、好ましくは多くとも5%に制限され、より好ましくは多くとも4%に制限される。
【0071】
水素化脱酸素反応は、水素の消費による水の形成、及び最初の脂肪酸鎖の炭素原子数と同じ炭素原子数を有する炭化水素の形成をもたらす。本発明において考慮される仕込原料は、主として偶数個の炭化水素化合物を含む。これは、含まれる炭化水素鎖が偶数個の炭素原子、通常は8〜24個を含むトリグリセリドから主としてなる、植物油、藻類及び魚油に由来する油において周知である特徴である。動物起源の特定の脂肪は、数パーセント(通常、2〜3重量%)の量で17個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有し得る(参考文献:Martin Mittelbach及びClaudia RemschmidtによるBiodiesel, the comprehensive handbook)。従って、本発明の水素化脱酸素法に由来する流出物は、最初の脂肪酸鎖の炭素原子数と等しい炭素原子数(Cn)(nは偶数である)を有する炭化水素化合物を含み、これは大半において、脱炭酸/脱カルボニル反応により得られる、最初の脂肪酸鎖と比べて1個少ない炭素原子(Cn−1)(定義により、n−1は奇数である)を含む炭化水素化合物と比較される。水素化脱酸素経路についての選択性は、品質向上可能な燃料フラクションにおいて、最初の脂肪酸鎖の炭素原子数と等しい炭素原子数(Cn)を有する炭化水素化合物の総収率と、最初の脂肪酸鎖と比較して1個少ない炭素原子数(Cn−1)を含む炭化水素化合物の総収率とを測定することにより証明される。水素化脱酸素反応についての反応の選択性へのアクセスを提供する、偶数個の炭素原子を含む炭化水素(Cn)及び奇数個の炭素原子を含む炭化水素(Cn−1)の収率は、燃料に対して品質向上され得る反応からの液体流出物のガスクロマトグラフィー分析により得られる。ガスクロマトグラフィー分析による測定のための技術は、当業者に公知の方法である。
【0072】
従って、活性相の性質に応じて、より特定的には、前記活性相の第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比に応じて、再生可能な供給源に由来する仕込原料の水素化脱酸素反応の選択性を制御し、脱炭酸/脱カルボニル反応を最小にすることが可能であることが分かった。
【0073】
意外にも、前記活性相の第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比を有する触媒の使用、特に、厳密に0超かつ0.095未満のNi/Mo原子比の使用は、水素化脱酸素反応の選択性を制御し、向上し;その結果、脱炭酸/脱カルボニル反応を制限することができ、その結果、炭素酸化物の形成により引き起こされる問題が制限されることを意味する。
【0074】
更に、第VIII族からの元素、特にニッケルの量の増加は、たとえ、水素化脱酸素が依然として多数の反応を占めているとしても、脱炭酸/脱カルボニル反応に有利に働く傾向がある。従って、水素化脱酸素の選択性は、特に0.01〜0.03のNi/Mo原子比の値に最適化されることが証明された。
【0075】
本発明による担持触媒が用いられる場合、当業者に公知の任意の方法を用いて、例えば、共混合又は乾式含浸によって、前記触媒上に水素化機能を導入してもよく;次いで当業者に公知の方法を用いて、現場(in situ)又は現場外(ex situ)で硫化が行われる。
【0076】
本発明によるバルク触媒が用いられる場合、前記触媒は、例えば、金属チオ塩の分解のような、当業者に公知の方法を用いて調製される。
【0077】
本発明の水素化脱酸素法によれば、予め処理されてもよい仕込原料を、120〜450℃の範囲、好ましくは120〜350℃の範囲、好ましくは150〜320℃の範囲、より好ましくは180〜310℃の範囲の温度で本発明の触媒と接触させる。圧力は、1〜10MPaの範囲、好ましくは1〜6MPaの範囲である。毎時空間速度は0.1〜10h−1の範囲である。仕込原料を、水素の存在下に前記触媒と接触させる。仕込原料と混合される水素の総量は、水素/仕込原料比が仕込原料の体積(m)当たり水素50〜3000Nmの範囲、好ましくは70〜2000Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲であり、より好ましくは150〜1500Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲となるようにされる。
【0078】
本発明の水素化脱酸素法は、有利には、固定床又は沸騰床(ebullated bed)の態様で、好ましくは固定床の態様で実施される。
【0079】
水素化脱酸素法が固定床の態様で実施される場合、前記方法は、120〜450℃の範囲、好ましくは120〜350℃の範囲、より好ましくは150〜320℃の範囲、一層より好ましくは180〜310℃の範囲の温度で実施される。圧力は、1〜10MPaの範囲、好ましくは1〜6MPaの範囲である。毎時空間速度は、0.1〜10h−1の範囲である。仕込原料を、水素の存在下に前記触媒と接触させる。仕込原料と混合される水素の総量は、水素/仕込原料比が仕込原料の体積(m)当たり水素50〜3000Nmの範囲、好ましくは70〜2000Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲、より好ましくは150〜1500Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲となるようにされる。
【0080】
水素化脱酸素法が沸騰床の態様で実施される場合、前記方法は、2〜35MPaの範囲、好ましくは2〜15MPaの範囲、より好ましくは3〜10MPaの絶対圧力、200〜450℃の範囲、好ましくは250〜380℃の範囲の温度、0.1〜10h−1の範囲、好ましくは0.5〜5h−1の範囲のHSVで、および仕込原料と混合される水素の量が、液体仕込原料の立方メートル(m)当たり50〜5000標準立方メートル(Nm)の範囲、好ましくは100〜1000Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲、より好ましくは200〜500Nm(水素)/m(仕込原料)になるようにして操作される。
【0081】
本発明の構成は、本発明の水素化脱酸素法において本発明による単一の触媒を、又はいくつかの異なる触媒を同時又は連続的に用いることも包含する。前記方法は、有利には、1個以上の触媒床を有する1個以上の反応器内で、好ましくは混合ガス及び液体下降流の態様で工業的に行われてもよい。当業者は、通常、このタイプの反応器をトリクルベッド(trickle bed)反応器として記述する。
【0082】
発生する反応が非常に発熱性であることは当業者に周知である。これは、反応が大量の熱の放出を伴うことを意味する。これは、望ましくない効果を引き起こし得る、反応媒体の温度の相当な上昇をもたらす。更に、温度は反応速度を増大する効果を有し、その結果、更なる熱を放出するであろう。このタイプの自立的な現象は、暴走することがないように、かつ、反応器の材料の融点よりも高いであろう、非常に高い温度を生じないように制御されなければならない。この危機に到達する前に、高温は軽質炭化水素(メタン、エタン)を形成する分解反応を促進し、これは品質向上させることが困難であり;生産されるパラフィン量も低下させる。一般に、安全上の理由及び方法の全体的な収率のための両方のために、本発明の発熱反応の実施に関連する温度の上昇を制御することは明らかに重要である。
【0083】
この目的のために、当業者に周知である種々の技術、特にWO-2008/058664に記載された方法が想定される。
【0084】
有利には、適切な処理により、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属並びに窒素のような、再生可能な起源のバイオ液体中に天然に存在する混入物を除去するために、仕込原料を前もって予備処理又は予備精製してもよい。適切な処理の例は、精製の分野において当業者に周知の熱的及び/又は化学的処理である。
【0085】
好ましくは、場合による予備処理は、反応性不飽和結合を水素化するための前記仕込原料の穏和な予備水素化からなる。有利には、穏和な予備水素化は、50〜400℃の範囲の温度、0.1〜10MPaの範囲の水素圧;好ましくは150〜200℃の範囲の温度で操作される。予備水素化触媒は、有利には、第VIII族及び/又は第VIB族からの金属を含み、好ましくは、予備水素化触媒は、パラジウム、白金、ニッケル及びモリブデンをベースとする、若しくはコバルト及びモリブデンをベースとする、アルミナ、シリカ、チタン及びゼオライトのような金属酸化物又は酸化物の混合物上に分散した、触媒である。
【0086】
本発明の方法の場合による予備処理工程において用いられる触媒の金属は、硫化金属又は金属相であり、好ましくは金属相である。
【0087】
改善された特性を有する軽油燃料を産生するために、炭化水素流出物は、その後、以下の場合による工程で処理される:
次いで、本発明の水素化脱酸素法からの流出物は、少なくとも1回の分離工程、好ましくは気/液分離の行程、並びに水及び少なくとも1種の液化炭化水素塩基の分離のための工程を受け、前記工程は任意であり、互いに対して任意の順番で行われ得る。
【0088】
好ましくは、本発明の水素化脱酸素法からの流出物は、最初に気/液分離工程を受ける。この工程の目的は、液体から気体を分離し、特に、水素が豊富であるがCO、CO、HS及びプロパンのような気体を含んでいてもよい気体および少なくとも1種の液体流出物を回収することであり、前記気体は、有利には、当業者に公知の方法、例えばCOからCHへの変換のためのメタン化及びCOを除去するためのアミン洗浄を用いてさらに精製される。
【0089】
好ましくは、前述の任意の気/液分離からの液体流出物は、次いで、形成された水の少なくとも一部、好ましくは全て、少なくとも1種の液化炭化水素ベースの分離を受け、水は水素化脱酸素反応の間に生じたものである。
【0090】
この工程の目的は、液化炭化水素流出物から水を分離することである。「水の除去」なる用語は、水素化脱酸素(hydrodeoxygenation:HDO)反応により生じた水の除去を意味する。水の大体完全な除去は、有利には、本発明の方法の次の任意の工程において用いられる水素化異性化触媒の耐水性の機能である。水は、当業者に公知の任意の方法及び技術、例えば、乾燥、乾燥剤上に通過させること、フラッシュ(flash)、溶媒抽出、蒸留及びデカンテーション、又はこれらの方法の少なくとも2種の組み合わせを用いて除去され得る。
【0091】
場合により、スチームストリッピング又は窒素ストリッピングのような当業者に公知の方法を用いて、若しくはコアレッセンス及び/又は捕捉塊(capture mass)により種々の汚染物質の精製のための最終工程を実施してもよい。得られる前記炭化水素ベースから窒素含有化合物を除去するための工程は、有利には、本発明の水素化脱酸素工程と、任意の水素化異性化工程との間に実施され得る。
【0092】
好ましくは、窒素含有化合物を除去するための工程は、前記任意の水分離工程の後、好ましくは前記最終精製工程の後に実施される。
【0093】
水を分離するための任意の前記工程、又は好ましくは最終精製工程に由来する炭化水素ベースは、一般に、本発明の方法の水素化脱酸素反応の間に除去されなかった残留窒素含有有機化合物を含む。前記残留窒素含有有機化合物は、水素化異性化触媒の阻害剤物質である。従って、それらは、任意の水素化異性化工程に移る前に、前記炭化水素ベースから除去されなければならない。残留窒素含有有機化合物は、捕捉塊の使用のような、当業者に公知の技術のいずれかを用いて除去され得る。「捕捉塊」なる用語は、活性化又は非活性化アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、活性炭及びイオン交換樹脂を意味する。好ましくは、窒素含有有機化合物を除去するための工程はイオン交換樹脂上で実施される。
【0094】
好ましい実施態様によれば、窒素含有有機化合物を除去するための前記工程から得られた液化炭化水素ベースの少なくとも一部は、選択性水素化異性化触媒の存在下に水素化異性化される。用いられる水素化異性化触媒は、有利には二機能性タイプのものであり、すなわち、それらは水素化脱水素化機能(hydrodehydrogenating function)及び水素化異性化機能を有する。
【0095】
前記水素化異性化触媒は、有利には、水素化脱水素化機能としての第VIII族からの少なくとも1種の金属及び/又は第VIB族からの少なくとも1種の金属、並びに水素化異性化機能としての少なくとも1種のモレキュラーシーブ又は無定形鉱物担体を含む。
【0096】
前記水素化異性化触媒は、有利には、第VIII族からの少なくとも1種の貴金属または第VIB族からの少なくとも1種の金属のいずれかを、第VIII族からの少なくとも1種の非貴金属と組み合わせて含む。第VIII族からの少なくとも1種の貴金属は、好ましくは、白金およびパラジウムから選択され、還元型において活性であり、第VIB族からの少なくとも1種の金属は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選択され、第VIII族からの少なくとも1種の非貴金属は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択され、好ましくは、硫化型において用いられる。
【0097】
水素化異性化触媒が、第VIII族からの少なくとも1種の貴金属を含む場合、水素化異性化触媒中の貴金属の総量は、完成した触媒に対して有利には0.01〜5重量%の範囲、好ましくは0.1〜4重量%の範囲、より好ましくは0.2〜2重量%の範囲である。
【0098】
好ましくは、水素化異性化触媒は、白金又はパラジウムを含み、好ましくは、水素化異性化触媒は白金を含む。
【0099】
水素化異性化触媒が、第VIB族からの少なくとも1種の金属を、第VIII族からの少なくとも1種の非貴金属と組み合わせて含む場合、水素化異性化触媒中の第VIB族からの金属の量は、有利には、完成した触媒に対して酸化物等価物として5〜40重量%の範囲、好ましくは10〜35重量%の範囲、非常に好ましくは15〜30重量%の範囲であり、前記触媒の第VIII族からの金属の量は、有利には、完成した触媒に対して酸化物等価物として0.5〜10重量%の範囲、好ましくは1〜8重量%の範囲、より好ましくは1.5〜6重量%の範囲である。
【0100】
水素化脱水素化金属機能は、有利には、共混合、乾式含浸又は交換による含浸のような、当業者に公知の任意の方法を用いて、前記触媒上に導入され得る。
【0101】
好ましい実施によれば、前記水素化異性化触媒は、水素化異性化機能としての少なくとも1種の無定形鉱物担体を含み、前記無定形鉱物担体は、シリカ−アルミナ及びシリカ質アルミナから選択され、好ましくはシリカ−アルミナである。
【0102】
他の好ましい実施によれば、前記水素化異性化触媒は、少なくとも1種のモレキュラーシーブ、好ましくは少なくとも1種のゼオライトモレキュラーシーブ、より好ましくは少なくとも1種の一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブを水素化異性化機能として含む。
【0103】
ゼオライトモレキュラーシーブは、M Meier、D H Olson及びCh Baerlocherによる「Atlas of Zeolite Structure Types」、第5版、2001、Elsevierに定義されており;本出願もそれを援用する。ゼオライトは、そこで、細孔又はチャネル開孔のサイズにより分類される。
【0104】
一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、10個の酸素原子の環(10MR開口)により規定される開口を有する細孔又はチャネルを有する。10MR開口を有するゼオライトモレキュラーシーブのチャネルは、有利には、前記ゼオライトの外部に直接開口する一次元非相互接続チャネル(unidimentional non-interconnected channel)である。前記水素化異性化触媒中に存在する一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、有利には、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウム、リン及びホウ素により形成される群から選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムとを含む。前記ゼオライトのSi/Al比は、有利には、合成により得られるもの、又は当業者に周知である、合成後脱アルミニウム処理後に得られるものであり;限定的な例は、酸攻撃(acid attack)、もしくは鉱酸又は有機酸溶液による直接的な酸攻撃が続いても続かなくてもよい水熱処理である。それらは、好ましくは事実上完全に酸型であり、すなわち、固体の結晶ネットワーク内に挿入される一価の補償触媒(compensation catalyst)(例えばナトリウム)と元素Tとの間の原子比は、有利には0.1未満、好ましくは0.05未満、より好ましくは0.01未満である。従って、前記選択的水素化異性化触媒の組成のゼオライト形成部分は、有利には、焼成されかつ少なくとも1種のアンモニウム塩の溶液による少なくとも1回の処理により交換されて、アンモニウム型のゼオライトが得られ、このものは、焼成された後に、酸型の前記ゼオライトをもたらす。
【0105】
前記水素化異性化触媒の前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、有利には、単独でまたは混合物として取得される、構造型TON(例えばNU−10)、FER(例えばフェリエライト)、EUO(EU−1およびZSM−50から選択される)を有するゼオライトモレキュラーシーブまたは単独でまたは混合物として取得される、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48、ZBM−30、IZM−1、COK−7、EU−2およびEU−11から選択される。好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、単独で又は混合物として取得される、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48、ZBM−30、IZM−1及びCOK−7から選択される。より好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、単独で又は混合物として取得される、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48及びZBM−30から選択される。
【0106】
非常に好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブはZBM−30であり、一層より好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、有機テンプレートトリエチレンテトラミンを用いて合成されるZBM−30である。
【0107】
好ましくは、水素化異性化触媒は、白金により構成される活性金属相と、ZBM−30をベースとする水素化異性化機能とを含み;好ましくは、水素化異性化触媒は、白金により構成される活性金属相と、有機テンプレートトリエチレンテトラミンを用いて合成されたZBM−30をベースとする水素化異性化機能とを含む。
【0108】
ZBM−30は特許EP-0 046 504に記載されており、ゼオライトCOK−7は特許出願EP-1 702 888 A1又はFR-2 882 744 A1に記載されている。
【0109】
IZM−1ゼオライトは、特許出願FR-A-2 911 866に記載されている。
【0110】
構造型TONを有するゼオライトは、W Meier、D H Olson及びCh Baerlocherによる、「Atlas of Zeolite Structure Types」、第5改訂版、2001、Elsevierと標題のついた著書に記載されている。
【0111】
構造型TONを有するゼオライトは、前記で引用された「Atlas of Zeolite Structure Types」に記載されており;NU−10ゼオライトは、特許EP-A-0 065 400及びEP-A-0 077 624に記載されている。
【0112】
構造型FERを有するゼオライトは、前記で引用された著書「Atlas of Zeolite Structure Types」に記載されている。
【0113】
一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブの量は、完成した触媒に対して、有利には5〜95重量%の範囲、好ましくは10〜90重量%の範囲、より好ましくは15〜85重量%の範囲、非常に好ましくは20〜80重量%の範囲である。
【0114】
好ましくは、前記水素化異性化触媒は、多孔性鉱物マトリクスにより構成されるバインダをも含む。前記バインダは、有利には、前記水素化異性化触媒の成形のための工程の際に用いられ得る。
【0115】
好ましくは、成形は、当業者に公知の任意の形態のアルミナ;非常に好ましくはガンマアルミナを含むマトリクスにより構成されるバインダを用いて実施される。
【0116】
得られる水素化異性化触媒は、有利には、種々の形状及び寸法を有する粒子の形態に成形される。それらは、一般に、直線状又は捻れた形状を有する、円柱状又は多葉状(二葉、三葉、多葉等)の押出物の形状で用いられるが、場合により粉体、錠剤、リング、ビーズ又は車輪状の形態で製造され、用いられてもよい。押出以外の技術、例えば、ペレット化またはボウル造粒が有利に使用されてもよい。
【0117】
水素化異性化触媒が少なくとも1種の貴金属を含む場合、前記水素化異性化触媒に含まれる貴金属は、有利には還元されるべきである。金属を還元するための好ましい方法は、水素中、150〜650℃の範囲の温度、1〜250バールの全圧での処理である。例として、還元は、2時間にわたる150℃の一定温度段階、次いで1℃/分の速さでの450℃への昇温、次いで、2時間にわたる450℃の一定温度段階からなり;この還元工程の全ての間、水素流量は1000標準m(水素)/m(触媒)であり、全圧は一定の1バールに維持される。任意の現場外(ex situ)還元法が、有利には考えられてもよい。
【0118】
水素化異性化工程において、仕込原料は、有利には、水素の存在下に、非転化仕込原料の水素化異性化が有利に行われ得ることを意味する温度および操作圧力で水素化異性化触媒と接触させられる。これは、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の150℃フラクションの150℃フラクションへの転化を伴って水素化異性化が実施されることを意味する。
【0119】
従って、本発明の方法の任意の水素化異性化工程は、有利には、150〜500℃の範囲、好ましくは150〜450℃の範囲、非常に好ましくは200〜450℃の範囲の温度、1〜10MPaの範囲、好ましくは1〜10MPaの範囲、非常に好ましくは2〜9MPaの範囲の圧力、有利には0.1〜10h−1の範囲、好ましくは0.2〜7h−1の範囲、非常に好ましくは0.5〜5h−1の範囲の毎時空間速度で、水素/炭化水素の容積比が有利には70〜1000Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲、水素100〜1000標準m(水素)/m(仕込原料)の範囲、好ましくは、150〜1000標準m(水素)/m(仕込原料)の範囲になるような水素流量で操作される。
【0120】
好ましくは、任意の水素化異性化工程は並流の態様で操作する。
【0121】
次いで、少なくとも一部、好ましくは全ての水素化異性化流出物は、有利には1回以上の分離工程を受ける。この工程の目的は液体から気体を分離し、特に、水素が豊富でありかつC−C留分のような軽質ガス、並びに少なくとも1種の軽油及びナフサ留分も含んでよいガスを回収することである。ナフサ留分を品質向上させることは本発明の目的でないが、この留分は、有利には水蒸気分解装置又は接触改質装置に送られ得る。
【0122】
(ガス処理及び再循環)
必要であれば、任意の分離工程の間に分離された水素を含む、本発明の水素脱酸素法及び/又は任意の水素化異性化反応に由来するガスの少なくとも一部は、有利には、その軽質化合物(C〜C)の含有量を減少させるように処理される。
【0123】
熱分解により硫化水素HSを生じさせるDMDS(ジメチルジスルフィド)のような硫黄含有化合物の特定量を、前記任意の分離工程に由来する再循環ガスに加える可能性が存在する。必要により、この装置は、水素化異性化触媒及び/又は硫化された状態の水素化異性化触媒を保持し得る。有利には、導入される硫黄含有化合物の量は、再循環ガス中のHSの量が少なくとも15容積ppm、好ましくは少なくとも0.1容積%、さらには少なくとも0.2容積%になるようにされる。
【0124】
有利には、再循環水素は、本発明の水素化脱酸素法及び/又は任意の水素化異性化工程のいずれかに入る仕込原料と共に、若しくは本発明の水素化脱酸素触媒及び/又は水素化異性化触媒の間のクエンチ水素(quenching hydrogen)の形態で導入され得る。
【0125】
(得られた生成物)
本発明の方法を用いて提供される生成物は、優れた品質の軽油ベースを形成する、優れた特徴を与える:
・その硫黄含有量は10重量ppm未満であり;
・その総芳香族化合物含有量は5重量%未満であり、多環芳香族化合物含有量は2重量%未満であり;
・そのセタン指数は優れており、55を超え;
・その密度は840kg/m未満であり、通常は820kg/m未満であり;
・その低温時特性は施行中の規制と適合し:−15℃未満の低温ろ過目詰まり点及び−5℃未満の曇点を有する。
【0126】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を詳細に説明する。
【0127】
(実施例)
(水素化脱酸素:種々のNi/Mo比を有するNiMoP/Al触媒の性能の比較)
50mL/hの予備精製されたアブラナ油を等温固定床反応器に導入した。このアブラナ油は、920kg/mの密度、10重量ppm未満の硫黄含有量、並びに35のセタン指数を有していた。また、等温固定床反応器は、100mLの水素化処理触媒を充填されていた。水素700Nm/m(仕込原料)を、温度300℃および圧力5MPaに維持された反応器に導入した。
【0128】
本発明の方法に用いられたアブラナ油仕込原料の主要な特徴を表1に示す。
【0129】
アブラナ油により構成される仕込原料は、トリグリセリドを含んでおり、そのグリセリドの炭化水素鎖は、偶数個の炭素原子を主として含んでいた。2つの反応経路(水素化脱酸素および脱炭酸/脱カルボニル)による、最初の仕込原料中の奇数個の炭素原子を含む鎖(この油についてもっぱらC17)および奇数個の炭素原子を含む炭化水素の変換生成物(C17:0およびC17:1)の寄与は非常に少なく、偶数個及び奇数個の炭化水素の収率の計算に対して無視された。
【0130】
【表1】

【0131】
本発明に合致し、かつ本発明の方法において用いられる触媒NiMoP1は、0.22重量%のNiO、21重量%のMoO及び5重量%のPをガンマアルミナ上に担持されて含んでいた。触媒NiMoP1は、0.02に等しい原子比Ni/Moを有していた。本発明の方法において用いられる本発明のNiMoP2触媒は、0.54重量%のNiO、21重量%のMoO及び5重量%のPをガンマアルミナ上に担持されて含んでいた。触媒NiMoP2は、0.05に等しい原子比Ni/Moを有していた。本発明に合致しない、本発明の方法において比較のために用いられた、触媒NiMoP3は、21重量%のMoO、5重量%のP及び4.35重量%のNiOを同じタイプのアルミナ担体上に分散させられて含んでいた。触媒NiMoP3は、0.4に等しい原子比Ni/Moを有していた。
【0132】
3つの場合において、Mo/Pの重量比は一定に維持されていた。
【0133】
担持触媒は、溶液中の酸化物前駆体の乾式含浸、次いで、2重量%のジメチルジスルフィド(DMDS)を補充した直留軽油仕込原料を用いる試験前の350℃での現場硫化によって調製された。加圧下の装置内での現場硫化の後、表1に記載されたアブラナ油により構成される再生可能な供給源に由来する仕込原料が反応器に送られた。
【0134】
触媒を硫化状態に維持するために、50重量ppmの硫黄をDMDSの形態で仕込原料に加えた。この反応条件下、DMDSは完全に分解し、メタン及びHSを形成した。
【0135】
触媒を調製するための方法は本発明の範囲を限定しない。
【0136】
本発明に合致する触媒NiMoP1、NiMoP2および本発明に合致しない触媒NiMoP3について得られた結果を表2に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
本発明者らは、同じ反応条件下、アブラナ油の全転化について、本発明に合致する触媒NiMoP1及びNiMoP2を用いると、偶数個の炭素原子を含む(C14−C24)炭化水素90重量%超および奇数個の炭素原子を含む(C15−C23)炭化水素10重量%未満という非常に選択的な形成がもたらされることを確認した。
【0139】
従って、本発明のNiMoP1及びNiMoP2触媒、すなわち、厳密に0超かつ0.095未満のNi/Mo原子比を有する触媒は、全ての脱酸素(脱酸素生成物収率=100%)を可能にするのみならず、水素化脱酸素反応についての反応選択性を高く維持することを可能にし(選択性、すなわち、NiMoP1およびNiMoP2それぞれについての水素化脱酸素による仕込原料の転化96.8%および92.8%)、その結果、脱炭酸/脱カルボニルによる仕込原料の転化を制限する(すなわち、NiMoP1およびNiMoP2それぞれについての脱炭酸/脱カルボニル反応についての反応選択性:3.2%および7.2%)。
【0140】
従って、これは、一方では、大きい数の炭素原子を含むパラフィンの大量の生産を、他方では、炭素酸化物(CO及びCO)の形成の実質的な制限を含む。
【0141】
重量による収率は、液体反応流出物のガスクロマトグラフィー分析により得られ、この液体反応流出物は、当業者に公知の方法により燃料として品質向上され得る。
【0142】
(水素化脱酸素工程からの流出物の分離)
本発明の水素化脱酸素法からの全ての水素処理流出物を分離して水素を豊富に含むガス及び液状軽油ベースを回収した。
【0143】
(水素化異性化触媒による分離工程由来水素化脱酸素流出物の水素化異性化)
水素化異性化触媒は、貴金属と一次元10MR ZBM−30ゼオライトとを含む触媒であった。この触媒は、後述する操作手順を用いて得られた。ZBM−30ゼオライトは、有機テンプレートトリエチレンテトラミンを用いて、BASFの特許EP-A-0 046 504に従って合成された。合成された際のZBM−30ゼオライトは、乾燥空気の流れ中、12時間にわたり550℃での焼成を経た。得られたH−ZBM−30ゼオライト(酸型)は、45のSi/Alを有していた。ゼオライトを、Condea-Sasolにより供給されるSB3型のアルミナゲルと混合した。次いで、混合ペースト状物を1.4mm径のダイを通して押し出した。得られた押出物を空気中、500℃で2時間にわたり焼成した。H−ZBM−30重量含有量は20重量%であった。次いで、担体押出物を、白金塩Pt(NH2+・2OHの水溶液を用いた乾式含浸工程に供し;次いで、水熟成器(water maturator)中、24時間にわたり室温で熟成工程に供し、次いで、500℃で(昇温:5℃/分)横断床(traversed bed)中において、乾燥空気中、2時間にわたり焼成した。焼成後の完成触媒中の白金の重量含有量は0.48%であった。
【0144】
NiMoP1触媒(本発明に合致する)の存在下にアブラナ油を水素化脱酸素した後に得られた流出物を、以下の操作条件下に、水素化異性化反応器内で、触媒C1により水素なしで(すなわち、再循環なし)水素化異性化した:
・HSV(仕込原料の容積/触媒の容積/時間)=1h−1
・全操作圧力:50バール;
・水素/仕込原料比:700標準リットル/リットル。
【0145】
温度は、水素化異性化の間の150℃フラクションの150℃フラクションへの転化が5重量%未満となるように調整された。試験前に、下記条件下、触媒を還元工程に供する:
・水素流量:1600標準リットル/時/リットル(触媒);
・室温から120℃への昇温:10℃/分;
・1時間にわたる120℃の一定温度段階;
・5℃/分の120℃から450℃への昇温;
・2時間にわたる450℃の一定温度段階;
・圧力:1バール。
【0146】
次いで、水素化異性化流出物が特徴付けられた。収率及び燃料特性を表3に記録する。
【0147】
【表3】

【0148】
従って、本発明の方法は、施行中の規格を満たす、優れた品質の軽油ベースを生産することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱炭酸/脱カルボニルによる転化が多くとも10%に制限された、再生可能な供給源に由来する仕込原料の水素化脱酸素法であって、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とを含む活性相を含むバルク又は担持触媒を用い、前記元素は硫化物の形態であり、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、厳密に0超かつ0.095未満であり、前記方法は、120〜450℃の範囲の温度、1〜10MPaの範囲の圧力、0.1〜10h−1の範囲の毎時空間速度で、水素/仕込原料の比が仕込原料の容積(m)当たり水素50〜3000Nmとなるように仕込原料と混合される水素の全量存在下に行われる、方法。
【請求項2】
前記触媒の活性相は、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とにより構成され、前記第VIB族からの元素は、モリブデンであり、前記第VIII族からの元素は、ニッケルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、0.01〜0.08の範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、0.01〜0.05の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、0.01〜0.03の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
原子比Ni/Moは、0.01〜0.03の範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
第VIB族からの元素の酸化物の量は、全触媒質量に対して1〜30重量%であり、第VIII族からの元素の酸化物の量は、全触媒質量に対して厳密に0重量%超かつ1.5重量%未満である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記触媒は、リンを、全触媒質量に対する酸化物Pの重量で厳密に1%超かつ8%未満の量で含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
再生可能な供給源に由来する仕込原料の脱炭酸/脱カルボニルによる転化は、多くとも4%に制限される、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、固定床において行われる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、沸騰床において行われる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
水素化脱酸素からの流出物は、少なくとも1回の分離工程、好ましくは気/液分離工程、並びに水及び少なくとも1種の液化炭化水素ベースの分離のための工程を受ける、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
水を分離するための前記任意の工程の後に、前記液化炭化水素ベースから窒素含有化合物を除去するための工程が行われる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
有機窒素含有化合物を除去するための工程から得られた液化炭化水素ベースの少なくとも一部は、水素化異性化触媒の存在下に水素化異性化される、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記水素化異性化触媒は、白金により構成される金属活性相と、ZBM−30をベースとする水素化異性化機能とを含む、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。