ニッケル粉及び導電ペースト
【課題】ビヒクル中への分散性に優れ且つ凝集が少ないことからビヒクルとのなじみ特性が良いので導電ペースト用として優れており、また、粒度分布特性に優れており、特に、薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として適したニッケル粉、並びに該ニッケル粉を含有する導電ペーストを提供すること。
【解決手段】吸油量が5〜25ml/100gのニッケル粉、好ましくは更にレーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であるニッケル粉、並びに該ニッケル粉を含有する導電ペースト。
【解決手段】吸油量が5〜25ml/100gのニッケル粉、好ましくは更にレーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であるニッケル粉、並びに該ニッケル粉を含有する導電ペースト。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はニッケル粉及び導電ペーストに関し、より詳しくは、有機バインダ、溶剤等からなるビヒクル中への分散性に優れており且つ凝集が少ないことからビヒクルとのなじみ特性が良いので導電ペースト用として優れており、また、粒度分布特性に優れていることから、薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として特に適しているニッケル粉、並びに該ニッケル粉を含有する導電ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】積層セラミックコンデンサは交互に積層された複数のセラミック誘電体層と内部電極層とが一体化したものであり、このような積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する際には、内部電極材料である金属微粉末をペースト化して導電ペーストを調製し、該導電ペーストを用いてセラミック誘電体グリーンシート上に印刷し、セラミック誘電体グリーンシートと導電ペースト層とを交互に層状に複数層積層し、加熱圧着して一体化した後、還元性雰囲気中、高温で焼成してセラミック誘電体層と内部電極層とを一体化させることが一般的である。
【0003】導電ペーストを用いて製造される電子部品、例えば積層セラミックコンデンサ等は近年ますます小型化しており、それで、必然的に、セラミック誘電体層及び内部電極層の薄膜化、多層化が進み、現在積層部品、特に積層セラミックコンデンサでは誘電体層2μm以下、内部電極膜厚1.5μm以下、積層数100層以上の部品が作られている。
【0004】この内部電極材料として、従来は白金、パラジウム、銀−パラジウム等が使用されていたが、コスト低減のために、近時にはこれらの白金、パラジウム、銀−パラジウム等の貴金属の代わりにニッケル等の卑金属を用いる技術が開発され、進歩してきている。
【0005】また、上記の内部電極形成用導電ペーストは、特開平11−140511号公報にも記載されている通り、導電性を付与するニッケル粉の他に、必要に応じてガラス物質等の無機材料やその他の添加剤を有機バインダ、溶剤等からなるビヒクル中に添加し、均一に混合、分散させて製造される。
【0006】ニッケル粉のビヒクル中への分散性や、ビヒクルに対するなじみ特性は、形成される内部電極の善し悪しに多大な影響を及ぼす。即ち、分散性が悪いニッケル粉を用いた導電ペーストでは、当然導電ペースト中に凝集粉が残留してしまうので、そのような導電ペーストを用いて内部電極を形成すると内部電極層上に凹凸が生じたり、隣接する内部電極間で短絡が生じたりするという不具合が起きやすい。
【0007】また、ニッケル粉のビヒクルに対するなじみ特性に関しては、ニッケル粉の表面が比較的少量のビヒクルで完全に濡らされることが可能となる濡れ性能力の高いニッケル粉が好ましい。なお、凝集の強いニッケル粉や、粒度分布の広すぎるニッケル粉の場合には、ニッケル粉がビヒクルになじむ度合にバラツキが生じ、極端な場合には、同じ配合でも導電ペーストの仕上がりにバラツキが生じてしまう。
【0008】上記のような不具合を改善する手段として、前記の特開平11−140511号公報には、金属微粒子を含むスラリーを調製し、該スラリーを2以上の方向から交差するように噴射させて、該スラリーを相互に衝突させることにより、独立単分散状態の金属微粒子粉末を製造することが開示されている。
【0009】上記の方法で処理することにより、金属微粒子粉末の凝集が抑制されており且つ独立単分散状態となっている金属微粒子粉末を製造し得るとされているが、積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として特に適した特定のニッケル粉についての開示はなされていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、ニッケル粉のビヒクル中への分散性やビヒクルに対するなじみ特性の善し悪しは重要である。本発明は、ビヒクル中への分散性に優れ且つ凝集が少ないことからビヒクルとのなじみ特性が良いので導電ペースト用として優れており、また、粒度分布特性に優れており、特に、薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として適したニッケル粉を提供すること、並びにこのようなニッケル粉を含有する導電ペーストを提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、ニッケル粉において、ビヒクル中への分散性及びビヒクルとのなじみ特性を改善する指標としてニッケル粉の吸油量が利用できること、ニッケル粉の吸油量を特定の範囲内に限定することによりビヒクル中への分散性及びビヒクルとのなじみ特性の良好なニッケル粉が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】即ち、本発明のニッケル粉は、吸油量が5〜25ml/100gであることを特徴とする。また、本発明のニッケル粉は、上記の吸油量特性に加えて、レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であることが好ましい。
【0013】更に、本発明のニッケル粉は、下記の式(1)により求められる変動係数(CV)が40%未満であることが好ましい:
【数2】
【0014】
【発明の実施の形態】ビヒクル中へのニッケル粉の分散過程を観察すると、ニッケル粒子の表面特性の相違によりさまざまな分散過程を取ることが認められる。最終的に到達する分散の程度が同一であっても、その分散の履歴の相違は、そのようなペーストを用いて形成される塗膜の特性、特に塗膜の表面性に大きく影響する。
【0015】本発明者等が着目した吸油量は、JIS K 5101の「顔料試験方法」に粉体のアマニ油へのなじみやすさを示す指標として記載されている。本発明者等はこの吸油量が上記のような導電ペーストにおけるビヒクル中へのニッケル粉の分散性の尺度としても重要であることを見出した。即ち、吸油量が小さい程、最終的に到達する分散性が改善され、ビヒクルとのなじみが優れており、ビヒクル中での沈降容積が小さくなり、沈降密度が高くなり、ペースト化した場合にニッケル粉の充填密度が高くなるので、そのようなペーストを用いて形成される塗膜の特性、特に塗膜の表面性が改善される。
【0016】この吸油量は粉体の嵩密度が大きくなると小さくなる傾向があるので、粉体の嵩密度を大きくしようとしても、その粉体固有の特徴により多少の差はあるものの限界がある。のみならず、吸油量は粉体の粒度分布がブロードになると小さくなる傾向も現れるため、 薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成を考慮した場合、 吸油量が小さければ小さいほど良いという訳ではない。従って、上記の理由から、導電ペースト用途に利用できるニッケル粉の吸油量も限定されることになる。
【0017】本発明においては、ニッケル粉の吸油量はJIS K 5101に準拠して求めた値である。本発明のニッケル粉においては、吸油量は5〜25ml/100gであり、好ましくは5〜20ml/100gであり、より好ましくは7〜16ml/100gである。
【0018】ニッケル粉の吸油量が5ml/100g未満になると、ニッケル粉の粒度分布がブロードになる傾向があり、即ちニッケル粉中に粗粉が混在しているおそれがある。このようなニッケル粉を含む導電ペーストを用いて内部電極層を形成すると、内部電極層上に突起が形成され、内部電極間の短絡を惹起させる。また、ニッケル粉の吸油量が25ml/100gを超えると、ニッケル粉のビヒクル中への分散性やビヒクルに対するなじみ特性が不良となる。
【0019】本発明のニッケル粉は、レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下である。このような粒度分布を有するニッケル粉であれば、ニッケル粉粒子間の凝集が抑制されている(ニッケル粒子の凝集性が少ない)ので、導電ペーストの製造時のビヒクル中への分散性に優れている(ニッケル粉の分散度が大きい)。
【0020】本発明のニッケル粉は、前記の変動係数(CV)が好ましくは40%未満、より好ましくは35%未満、最も好ましくは30%未満である。このような変動係数を有するニッケル粉を含む導電ペーストを用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する場合には、上記のような粒度分布を有するニッケル粉を含む導電ペーストを用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する場合と同等、又はそれ以上の薄層化、高容量化が達成できる。
【0021】導電ペーストに用いるニッケル粉中のアルカリ金属の含有量が高い場合には、例えば、導電ペースト中のニッケル粉を加熱溶融させて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する際に、アルカリ金属が金属ニッケル表面に析出し、またそのアルカリ金属不純物が電解質成分であるので、近隣の電極間で導通が生じ、遂には絶縁破壊を生じせしめることがある。
【0022】従って、本発明のニッケル粉においては、ニッケル粉中のアルカリ金属の総量、特にリチウム、ナトリウム及びカリウムの1種又は2種以上の合計量はなるべく低い方が好ましく、総量が500ppm以下であることが好ましく、400ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが一層好ましい。
【0023】導電ペーストに用いるニッケル粉中の塩素の含有量が高い場合には、この塩素不純物が電解質成分であるので、上記のアルカリ金属の場合と同様に絶縁破壊が生じることがある。従って、本発明のニッケル粉においては、ニッケル粉中の塩素含有量はなるべく低い方が好ましく、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが一層好ましい。
【0024】導電ペーストに用いるニッケル粉中の硫黄の含有量が高い場合には、積層セラミックコンデンサ製造時の焼成の際に、この硫黄成分が酸素と反応して亜硫酸ガスを発生してボイド(膨れ)を惹き起こすのみならず、この硫黄成分が誘電体成分と反応し、その硫化物は半導体としての挙動を示すので、絶縁特性が著しく劣化する。
【0025】従って、本発明のニッケル粉においては、ニッケル粉中の硫黄含有量はなるべく低い方が好ましく、10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることが一層好ましい。
【0026】なお、本発明のニッケル粉は、SEM観察による平均粒子径の1.2倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることが一層好ましく、また、平均粒子径の0.8倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることが一層好ましい。
【0027】上記のような粒度分布を有するニッケル粉を含む導電ペーストを用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する場合には、ニッケル粉の粒子径を無用に小さくすることなしで、薄層化、高容量化が達成でき、内部電極間の短絡等の不良品の発生率を低下させることができる。
【0028】また、本発明のニッケル粉は平均粒子径が0.1〜1μmであることが好ましく、0.2〜0.6μmであることが一層好ましい。このようなニッケル粉を含む導電ペーストは積層セラミックコンデンサの内部電極形成用として特に適している。
【0029】また、本発明のニッケル粉は純ニッケル粉であっても、ニッケル粉の各微粒子の内部に金属酸化物を含有するニッケル粉であっても、ニッケル粉の各微粒子の表面が金属酸化物で被覆されているものであってもよい。しかし、脱バインダ時のニッケルの耐酸化性や耐拡散性を改善し、熱収縮性を改善する点を考慮すれば、ニッケル粉の各微粒子の表面が金属酸化物で均一に被覆されているニッケル粉が好ましい。この被覆量としては金属ニッケル微粒子の質量に対して0.05〜10質量%程度であることが好ましい。
【0030】被覆のための金属酸化物として、原子番号が12〜82の範囲内で周期表の2〜14族に属する金属元素の少なくとも1種、好ましくは原子番号12〜82の範囲内で周期表の2族、3族、4族、7族、13族及び14族に属する金属元素の少なくとも1種を含む酸化物及び複合酸化物、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al2 O3 、Ga2 O3 、Y2 O3 、SiO2 、TiO2、ZrO2 、Cr2 O3 、MnO2 、Mn3 O4 、PbO、Nb2 O5 、Nd2O3 、Sm2 O3 、Dy2 O3 、Er2 O3 、Ho2 O3 、BaTiO3 、CaTiO3 、SrTiO3 、MgTiO3 、BaZrO3 、CaZrO3 、SrZrO3 、(Mg,Ca)TiO3 、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3 、PbTiO3 、Pb(Zr,Ti)O3 、(Pb,Ca)TiO3 、MgAl2 O4 、及びBaTi4 O9 からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの酸化物及び複合酸化物はNb、W、La、Y、Mo等の金属の酸化物でドープされていてもよい。
【0031】次に、本発明のニッケル粉の好ましい製造方法について述べる。ニッケル粉は、一般的には、液相還元析出法、気相化学反応法、ガス中蒸発法等の湿式、乾式の何れの製造方法でも製造可能であるが、製造方法の違いによって形状、粒度分布、凝集性等の粉体特性が異なる。
【0032】本発明の課題であるニッケル粉のビヒクル中への分散性、ビヒクルとのなじみ特性、更には粒度分布特性を改善しようとしても、上記の製造方法だけではそれらの特性を安定に達成することは困難である。ニッケル粉の凝集性と表面平滑性は吸油量の大小に左右され易いので、吸油量を特定の範囲で制御するためには原料粉の凝集をなるべく抑制する必要がある。特に吸油量に着目した場合には、嵩密度を高め、且つ粉体のからみが少なくなるように凝集をほぐし、粉体表面の荒れを改善する処理をニッケル粉に施す必要がある。
【0033】従って、本発明のニッケル粉を得るためには、ニッケル粉粒子間の凝集をほぐし、あるいは断ち切る為に剪断作用、摩砕作用(粒子同士の摩擦作用をも含む)を有する装置を用いて処理することが重要である。この作用が顕著な装置を用いて処理すれば、ニッケル粉は凝集の少ない単分散状態に近づき、ひいてはビヒクル中への分散性、ビヒクルとのなじみが改善される。
【0034】上記の剪断作用、摩砕作用を兼備した装置の代表例としてローラミル等を挙げることができるが、主作用が強すぎて、他の作用の調整が困難であったり、その他の作用、特に圧縮作用が強く働くので展延性に富む金属粉への適用が好ましくない装置もある。
【0035】このような弊害を考慮した結果、剪断摩擦式粉砕装置とメディア攪拌式粉砕装置とを用いて2段以上で解粒処理することにより本発明のニッケル粉が好都合に製造できることを見出した。即ち、原料粉の凝集をなるべく抑制するためには、剪断力の高い装置を使用し、それとは別に、原料粉の表面の平滑性を制御しながらも、摩擦力の調整が容易な装置を使用して解粒することが好ましいという結論に達したのである。
【0036】上記の剪断摩擦式粉砕装置の好ましい例として、ハレルホモジナイザ(国産精工製)、パルベライザ(ホソカワミクロン製)、スーパーミクロン(ホソカワミクロン製)等が挙げられ、またメディア攪拌式粉砕装置の好ましい例として、アトライタ(三井鉱山製)、ビーズミル(入江商会製)、ダイノーミル(Willy A.Bachofen AG Maschinenfabrik 製)等が挙げられる。
【0037】なお、上記の製造方法において、解粒処理に用いられるニッケル粉は前記の乾式法、湿式法の何れの製造方法で得られたニッケル粉でも良い。また、ニッケル粉中のアルカリ金属、塩素、硫黄の各々の含有量は、出発原料及びニッケル粉の製造方法により左右されるが、対象元素に応じて、それらの低い含有量を有すニッケル粉が得易い手段を公知技術から適宜選択すれば良い。
【0038】具体的には、ナトリウム等のアルカリ金属の含有量が低いニッケル粉を得たければ、気相化学反応法を選択し、塩素や硫黄の含有量の低いニッケル粉を得たければ、液相還元析出法を選択しそれらで得られたニッケル粉について上記の解粒処理を行えば良い。
【0039】次に、本発明の導電ペースト、特に積層セラミックコンデンサ用導電ペーストの好ましい製造方法について述べる。本発明の導電ペーストは、上記した本発明のニッケル粉、樹脂、溶剤等で構成され、更に必要により分散剤、焼結抑制剤等を含有することができる。具体的には、樹脂としてエチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル系の非硬化型樹脂、エポキシ、アクリル等の好ましくは過酸化物を併用した熱硬化性樹脂等を用いることができる。また、溶剤として、テルピネオール、テトラリン、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート等を単独で又は混合して用いることができる。また、この導電ペーストには必要に応じてガラスフリットを加えてもよい。本発明の導電ペーストは以上の原料をボールミル、三本ロール等の混合用機械を用いて混合攪拌することにより得られる。
【0040】
【実施例】以下に実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1硫酸ニッケル・六水和物(品位22.2質量%)44.8kgを純水80Lに溶解して得た水溶液を、水酸化ナトリウム濃度200g/Lの水溶液100Lにその液温を60℃に維持しながらゆっくりと滴下して、ニッケルの水酸化物を析出させた。
【0041】この懸濁液にその液温を60℃に維持しながらヒドラジン・一水和物30kgを30分間にわたって添加してニッケルの水酸化物をニッケルに還元した。この生成ニッケル粒子含有スラリーを洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄した後、ハレルホモジナイザKH−2型(国産精工製)を用いて回転速度5000rpm、スラリー処理速度27.5L/分で2時間処理した後、引き続きダイノーミルKDL型( Willy A. Bachofen AG Maschinenfabrik 製)(ガラスビーズの粒子径2mmφ)を用いてスラリー処理速度1L/分で15分間処理し、処理後のニッケル粒子含有スラリーを濾過し、乾燥してニッケル粉を得た。
【0042】このニッケル粉について、JIS K 5101の顔料試験方法に記載の方法に準拠して吸油量を測定した結果、11mL/100gであった。このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置 Micro TracHRA 9320-X100 型(Leeds + Northrup 製)を用いて粒子径を測定したところ、平均粒子径(D50値)は0.50μmであり、0.75μm(0.50×1.5=0.750)を越える粒子径を有する粒子比率は全体の8.7%に相当し、0.25μm(0.50×0.5=0.250)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の1.4%に相当していた。また、このニッケル粉の個数分布の標準偏差σは0.133であり、従って変動係数(CV)は26.6%であった。
【0043】このニッケル粉100質量部に、エチルセルロース10質量部及びテルピネオール90質量部からなるビヒクルを加え、これらを混合した後、ロールミルで混練して導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストについて、JIS K5400(塗料一般試験方法)の線条法に準拠し、0−5μmつぶゲージを用いて導電ペースト中のニッケル粉の分散度を測定した。その結果は2.2μmであった。
【0044】このニッケル粉を1.5g秤量し、αテルピネオール1.5ccと共に容積2ccの容器に入れ、更に少量のビーズを入れてペイントシェーカで2時間振動させた。その後静置して自然沈降させ、24時間後の容器底面からの高さ(ニッケル微粉末層の厚さ)(mm)を測定した。その高さと容器の底面積(0.79cm2 )から、αテルピネオール中での沈降密度(g/cm3 )を計算した。その計算値は1.47g/cm3 であった。また、ニッケル粉中のアルカリ金属の総量は280ppmであり、塩素量は10ppmであり、硫黄量は110ppmであった。
【0045】実施例2硫黄含有量が500ppmである十分に乾燥した塩化ニッケル無水塩22.0kgを石英容器中に静置し、容器内温度が900℃に維持されるように制御しながら、キャリヤ用アルゴンガスの10L/分の気流中で加熱蒸発させた。気化した塩化ニッケルガス中に還元用の水素ガスを3.5L/分で通気し、還元温度を1000℃に制御してニッケル粉を得た。このニッケル粉を洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄し、濾過し、乾燥した後、ナイフ型ハンマを装備したパルベライザAP−1SH型(ホソカワミクロン製)に投入して回転速度2500rpmで処理した後、純水80Lを加え、アトライタMA10SE−X型(三井鉱山製)(ガラスビーズの粒子径2mmφ)を用いてスラリー処理速度8L/分、アジテータ回転数120ppmで1時間処理し、濾過し、乾燥してニッケル粉を得た。
【0046】このニッケル粉について、JIS K 5101の顔料試験方法に記載の方法に準拠して吸油量を測定した結果、8mL/100gであった。このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、実施例1で用いたレーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて粒子径を測定したところ、平均粒子径(D50値)は0.47μmであり、0.70μm(0.47×1.5=0.705)を越える粒子径を有する粒子比率はで全体の5.1%に相当し、0.24μm(0.47×0.5=0.235)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の0.6%に相当していた。また、このニッケル粉の個数分布の標準偏差σは0.139であり、従って変動係数(CV)は29.6%であった。
【0047】また、このニッケル粉100質量部に、エチルセルロース10質量部及びテルピネオール90質量部からなるビヒクルを加え、これらを混合した後、ロールミルで混練して導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストについて、JISK 5400(塗料一般試験方法)の線条法に準拠し、0−5μmつぶゲージを用いて導電ペースト中のニッケル粉の分散度を測定した。その結果は1.5μmであった。
【0048】このニッケル粉を1.5g秤量し、αテルピネオール1.5ccと共に容積2ccの容器に入れ、更に少量のビーズを入れてペイントシェーカで2時間振動させた。その後静置して自然沈降させ、24時間後の容器底面からの高さ(ニッケル微粉末層の厚さ)(mm)を測定した。その高さと容器の底面積(0.79cm2 )から、αテルピネオール中での沈降密度(g/cm3 )を計算した。その計算値は1.57g/cm3 であった。また、ニッケル粉中のアルカリ金属の総量は20ppmであり、塩素量は10ppmであり、硫黄量は950ppmであった。
【0049】比較例1硫酸ニッケル・六水和物(品位22.2質量%)44.8kgを純水80Lに溶解して得た水溶液を、水酸化ナトリウム濃度200g/Lの水溶液100Lにその液温を60℃に維持しながらゆっくりと滴下して、ニッケルの水酸化物を析出させた。
【0050】この懸濁液にその液温を60℃に維持しながらヒドラジン・一水和物30kgを30分間にわたって添加してニッケルの水酸化物をニッケルに還元した。この生成ニッケル粒子含有スラリーを洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄した後、濾過し、乾燥してニッケル粉を得た。
【0051】このニッケル粉について、JIS K 5101の顔料試験方法に記載の方法に準拠して吸油量を測定した結果、31mL/100gであった。このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、実施例1で用いたレーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて粒子径を測定したところ、平均粒子径(D50値)は0.94μmであり、1.41μm(0.94×1.5=1.410)を越える粒子径を有する粒子比率は全体の21.6%に相当し、0.47μm(0.94×0.5=0.470)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の5.5%に相当していた。また、このニッケル粉の個数分布の標準偏差σは0.412であり、従って変動係数(CV)は43.8%であった。
【0052】このニッケル粉100質量部に、エチルセルロース10質量部及びテルピネオール90質量部からなるビヒクルを加え、これらを混合した後、ロールミルで混練して導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストについて、JIS K5400(塗料一般試験方法)の線条法に準拠し、0−5μmつぶゲージを用いて導電ペースト中のニッケル粉の分散度を測定した。その結果は5μmを超えるものであった。
【0053】このニッケル粉を1.5g秤量し、αテルピネオール1.5ccと共に容積2ccの容器に入れ、更に少量のビーズを入れてペイントシェーカで2時間振動させた。その後静置して自然沈降させ、24時間後の容器底面からの高さ(ニッケル微粉末層の厚さ)(mm)を測定した。その高さと容器の底面積(0.79cm2 )から、αテルピネオール中での沈降密度(g/cm3 )を計算した。その計算値は1.31g/cm3 であり、実施例1及び2のニッケル粉に比べ、沈降密度が低く、αテルピネオールとのなじみは劣っていた。また、ニッケル粉中のアルカリ金属の総量は310ppmであり、塩素量は13ppmであり、硫黄量は100ppmであった。
【0054】比較例2ダイノーミルでの処理を実施しなかった以外は実施例1と同様に方法でニッケル粉を得た。このニッケル粉について、JIS K 5101の顔料試験方法に記載の方法に準拠して吸油量を測定した結果、26mL/100gであった。
【0055】このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、実施例1で用いたレーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて粒子径を測定したところ、平均粒子径(D50値)は0.64μmであり、0.96μm(0.64×1.5=0.960)を越える粒子径を有する粒子比率は全体の8.4%に相当し、0.32μm(0.64×0.5=0.320)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の2.9%に相当していた。また、このニッケル粉の個数分布の標準偏差σは0.241であり、従って変動係数(CV)は37.7%であった。
【0056】このニッケル粉100質量部に、エチルセルロース10質量部及びテルピネオール90質量部からなるビヒクルを加え、これらを混合した後、ロールミルで混練して導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストについて、JIS K5400(塗料一般試験方法)の線条法に準拠し、0−5μmつぶゲージを用いて導電ペースト中のニッケル粉の分散度を測定した。その結果は3.3μmであった。
【0057】このニッケル粉を1.5g秤量し、αテルピネオール1.5ccと共に容積2ccの容器に入れ、更に少量のビーズを入れてペイントシェーカで2時間振動させた。その後静置して自然沈降させ、24時間後の容器底面からの高さ(ニッケル微粉末層の厚さ)(mm)を測定した。その高さと容器の底面積(0.79cm2 )から、αテルピネオール中での沈降密度(g/cm3 )を計算した。その計算値は1.39g/cm3 であり、実施例1及び2のニッケル粉に比べ、沈降密度が低く、αテルピネオールとのなじみは劣っていた。また、このニッケル粉中のアルカリ金属の総量は270ppmであり、塩素量は10ppmであり、硫黄量は90ppmであった。
【0058】
【発明の効果】本発明のニッケル粉は特定の吸油量を有するものであり、そのことによりビヒクル中への分散性に優れ且つ凝集が少ないことからビヒクルとのなじみ特性が良いので導電ペースト用として優れており、また、粒度分布特性に優れており、特に、薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として適している。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はニッケル粉及び導電ペーストに関し、より詳しくは、有機バインダ、溶剤等からなるビヒクル中への分散性に優れており且つ凝集が少ないことからビヒクルとのなじみ特性が良いので導電ペースト用として優れており、また、粒度分布特性に優れていることから、薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として特に適しているニッケル粉、並びに該ニッケル粉を含有する導電ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】積層セラミックコンデンサは交互に積層された複数のセラミック誘電体層と内部電極層とが一体化したものであり、このような積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する際には、内部電極材料である金属微粉末をペースト化して導電ペーストを調製し、該導電ペーストを用いてセラミック誘電体グリーンシート上に印刷し、セラミック誘電体グリーンシートと導電ペースト層とを交互に層状に複数層積層し、加熱圧着して一体化した後、還元性雰囲気中、高温で焼成してセラミック誘電体層と内部電極層とを一体化させることが一般的である。
【0003】導電ペーストを用いて製造される電子部品、例えば積層セラミックコンデンサ等は近年ますます小型化しており、それで、必然的に、セラミック誘電体層及び内部電極層の薄膜化、多層化が進み、現在積層部品、特に積層セラミックコンデンサでは誘電体層2μm以下、内部電極膜厚1.5μm以下、積層数100層以上の部品が作られている。
【0004】この内部電極材料として、従来は白金、パラジウム、銀−パラジウム等が使用されていたが、コスト低減のために、近時にはこれらの白金、パラジウム、銀−パラジウム等の貴金属の代わりにニッケル等の卑金属を用いる技術が開発され、進歩してきている。
【0005】また、上記の内部電極形成用導電ペーストは、特開平11−140511号公報にも記載されている通り、導電性を付与するニッケル粉の他に、必要に応じてガラス物質等の無機材料やその他の添加剤を有機バインダ、溶剤等からなるビヒクル中に添加し、均一に混合、分散させて製造される。
【0006】ニッケル粉のビヒクル中への分散性や、ビヒクルに対するなじみ特性は、形成される内部電極の善し悪しに多大な影響を及ぼす。即ち、分散性が悪いニッケル粉を用いた導電ペーストでは、当然導電ペースト中に凝集粉が残留してしまうので、そのような導電ペーストを用いて内部電極を形成すると内部電極層上に凹凸が生じたり、隣接する内部電極間で短絡が生じたりするという不具合が起きやすい。
【0007】また、ニッケル粉のビヒクルに対するなじみ特性に関しては、ニッケル粉の表面が比較的少量のビヒクルで完全に濡らされることが可能となる濡れ性能力の高いニッケル粉が好ましい。なお、凝集の強いニッケル粉や、粒度分布の広すぎるニッケル粉の場合には、ニッケル粉がビヒクルになじむ度合にバラツキが生じ、極端な場合には、同じ配合でも導電ペーストの仕上がりにバラツキが生じてしまう。
【0008】上記のような不具合を改善する手段として、前記の特開平11−140511号公報には、金属微粒子を含むスラリーを調製し、該スラリーを2以上の方向から交差するように噴射させて、該スラリーを相互に衝突させることにより、独立単分散状態の金属微粒子粉末を製造することが開示されている。
【0009】上記の方法で処理することにより、金属微粒子粉末の凝集が抑制されており且つ独立単分散状態となっている金属微粒子粉末を製造し得るとされているが、積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として特に適した特定のニッケル粉についての開示はなされていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、ニッケル粉のビヒクル中への分散性やビヒクルに対するなじみ特性の善し悪しは重要である。本発明は、ビヒクル中への分散性に優れ且つ凝集が少ないことからビヒクルとのなじみ特性が良いので導電ペースト用として優れており、また、粒度分布特性に優れており、特に、薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として適したニッケル粉を提供すること、並びにこのようなニッケル粉を含有する導電ペーストを提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、ニッケル粉において、ビヒクル中への分散性及びビヒクルとのなじみ特性を改善する指標としてニッケル粉の吸油量が利用できること、ニッケル粉の吸油量を特定の範囲内に限定することによりビヒクル中への分散性及びビヒクルとのなじみ特性の良好なニッケル粉が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】即ち、本発明のニッケル粉は、吸油量が5〜25ml/100gであることを特徴とする。また、本発明のニッケル粉は、上記の吸油量特性に加えて、レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であることが好ましい。
【0013】更に、本発明のニッケル粉は、下記の式(1)により求められる変動係数(CV)が40%未満であることが好ましい:
【数2】
【0014】
【発明の実施の形態】ビヒクル中へのニッケル粉の分散過程を観察すると、ニッケル粒子の表面特性の相違によりさまざまな分散過程を取ることが認められる。最終的に到達する分散の程度が同一であっても、その分散の履歴の相違は、そのようなペーストを用いて形成される塗膜の特性、特に塗膜の表面性に大きく影響する。
【0015】本発明者等が着目した吸油量は、JIS K 5101の「顔料試験方法」に粉体のアマニ油へのなじみやすさを示す指標として記載されている。本発明者等はこの吸油量が上記のような導電ペーストにおけるビヒクル中へのニッケル粉の分散性の尺度としても重要であることを見出した。即ち、吸油量が小さい程、最終的に到達する分散性が改善され、ビヒクルとのなじみが優れており、ビヒクル中での沈降容積が小さくなり、沈降密度が高くなり、ペースト化した場合にニッケル粉の充填密度が高くなるので、そのようなペーストを用いて形成される塗膜の特性、特に塗膜の表面性が改善される。
【0016】この吸油量は粉体の嵩密度が大きくなると小さくなる傾向があるので、粉体の嵩密度を大きくしようとしても、その粉体固有の特徴により多少の差はあるものの限界がある。のみならず、吸油量は粉体の粒度分布がブロードになると小さくなる傾向も現れるため、 薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成を考慮した場合、 吸油量が小さければ小さいほど良いという訳ではない。従って、上記の理由から、導電ペースト用途に利用できるニッケル粉の吸油量も限定されることになる。
【0017】本発明においては、ニッケル粉の吸油量はJIS K 5101に準拠して求めた値である。本発明のニッケル粉においては、吸油量は5〜25ml/100gであり、好ましくは5〜20ml/100gであり、より好ましくは7〜16ml/100gである。
【0018】ニッケル粉の吸油量が5ml/100g未満になると、ニッケル粉の粒度分布がブロードになる傾向があり、即ちニッケル粉中に粗粉が混在しているおそれがある。このようなニッケル粉を含む導電ペーストを用いて内部電極層を形成すると、内部電極層上に突起が形成され、内部電極間の短絡を惹起させる。また、ニッケル粉の吸油量が25ml/100gを超えると、ニッケル粉のビヒクル中への分散性やビヒクルに対するなじみ特性が不良となる。
【0019】本発明のニッケル粉は、レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下である。このような粒度分布を有するニッケル粉であれば、ニッケル粉粒子間の凝集が抑制されている(ニッケル粒子の凝集性が少ない)ので、導電ペーストの製造時のビヒクル中への分散性に優れている(ニッケル粉の分散度が大きい)。
【0020】本発明のニッケル粉は、前記の変動係数(CV)が好ましくは40%未満、より好ましくは35%未満、最も好ましくは30%未満である。このような変動係数を有するニッケル粉を含む導電ペーストを用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する場合には、上記のような粒度分布を有するニッケル粉を含む導電ペーストを用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する場合と同等、又はそれ以上の薄層化、高容量化が達成できる。
【0021】導電ペーストに用いるニッケル粉中のアルカリ金属の含有量が高い場合には、例えば、導電ペースト中のニッケル粉を加熱溶融させて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する際に、アルカリ金属が金属ニッケル表面に析出し、またそのアルカリ金属不純物が電解質成分であるので、近隣の電極間で導通が生じ、遂には絶縁破壊を生じせしめることがある。
【0022】従って、本発明のニッケル粉においては、ニッケル粉中のアルカリ金属の総量、特にリチウム、ナトリウム及びカリウムの1種又は2種以上の合計量はなるべく低い方が好ましく、総量が500ppm以下であることが好ましく、400ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが一層好ましい。
【0023】導電ペーストに用いるニッケル粉中の塩素の含有量が高い場合には、この塩素不純物が電解質成分であるので、上記のアルカリ金属の場合と同様に絶縁破壊が生じることがある。従って、本発明のニッケル粉においては、ニッケル粉中の塩素含有量はなるべく低い方が好ましく、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが一層好ましい。
【0024】導電ペーストに用いるニッケル粉中の硫黄の含有量が高い場合には、積層セラミックコンデンサ製造時の焼成の際に、この硫黄成分が酸素と反応して亜硫酸ガスを発生してボイド(膨れ)を惹き起こすのみならず、この硫黄成分が誘電体成分と反応し、その硫化物は半導体としての挙動を示すので、絶縁特性が著しく劣化する。
【0025】従って、本発明のニッケル粉においては、ニッケル粉中の硫黄含有量はなるべく低い方が好ましく、10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることが一層好ましい。
【0026】なお、本発明のニッケル粉は、SEM観察による平均粒子径の1.2倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることが一層好ましく、また、平均粒子径の0.8倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることが一層好ましい。
【0027】上記のような粒度分布を有するニッケル粉を含む導電ペーストを用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する場合には、ニッケル粉の粒子径を無用に小さくすることなしで、薄層化、高容量化が達成でき、内部電極間の短絡等の不良品の発生率を低下させることができる。
【0028】また、本発明のニッケル粉は平均粒子径が0.1〜1μmであることが好ましく、0.2〜0.6μmであることが一層好ましい。このようなニッケル粉を含む導電ペーストは積層セラミックコンデンサの内部電極形成用として特に適している。
【0029】また、本発明のニッケル粉は純ニッケル粉であっても、ニッケル粉の各微粒子の内部に金属酸化物を含有するニッケル粉であっても、ニッケル粉の各微粒子の表面が金属酸化物で被覆されているものであってもよい。しかし、脱バインダ時のニッケルの耐酸化性や耐拡散性を改善し、熱収縮性を改善する点を考慮すれば、ニッケル粉の各微粒子の表面が金属酸化物で均一に被覆されているニッケル粉が好ましい。この被覆量としては金属ニッケル微粒子の質量に対して0.05〜10質量%程度であることが好ましい。
【0030】被覆のための金属酸化物として、原子番号が12〜82の範囲内で周期表の2〜14族に属する金属元素の少なくとも1種、好ましくは原子番号12〜82の範囲内で周期表の2族、3族、4族、7族、13族及び14族に属する金属元素の少なくとも1種を含む酸化物及び複合酸化物、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al2 O3 、Ga2 O3 、Y2 O3 、SiO2 、TiO2、ZrO2 、Cr2 O3 、MnO2 、Mn3 O4 、PbO、Nb2 O5 、Nd2O3 、Sm2 O3 、Dy2 O3 、Er2 O3 、Ho2 O3 、BaTiO3 、CaTiO3 、SrTiO3 、MgTiO3 、BaZrO3 、CaZrO3 、SrZrO3 、(Mg,Ca)TiO3 、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3 、PbTiO3 、Pb(Zr,Ti)O3 、(Pb,Ca)TiO3 、MgAl2 O4 、及びBaTi4 O9 からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの酸化物及び複合酸化物はNb、W、La、Y、Mo等の金属の酸化物でドープされていてもよい。
【0031】次に、本発明のニッケル粉の好ましい製造方法について述べる。ニッケル粉は、一般的には、液相還元析出法、気相化学反応法、ガス中蒸発法等の湿式、乾式の何れの製造方法でも製造可能であるが、製造方法の違いによって形状、粒度分布、凝集性等の粉体特性が異なる。
【0032】本発明の課題であるニッケル粉のビヒクル中への分散性、ビヒクルとのなじみ特性、更には粒度分布特性を改善しようとしても、上記の製造方法だけではそれらの特性を安定に達成することは困難である。ニッケル粉の凝集性と表面平滑性は吸油量の大小に左右され易いので、吸油量を特定の範囲で制御するためには原料粉の凝集をなるべく抑制する必要がある。特に吸油量に着目した場合には、嵩密度を高め、且つ粉体のからみが少なくなるように凝集をほぐし、粉体表面の荒れを改善する処理をニッケル粉に施す必要がある。
【0033】従って、本発明のニッケル粉を得るためには、ニッケル粉粒子間の凝集をほぐし、あるいは断ち切る為に剪断作用、摩砕作用(粒子同士の摩擦作用をも含む)を有する装置を用いて処理することが重要である。この作用が顕著な装置を用いて処理すれば、ニッケル粉は凝集の少ない単分散状態に近づき、ひいてはビヒクル中への分散性、ビヒクルとのなじみが改善される。
【0034】上記の剪断作用、摩砕作用を兼備した装置の代表例としてローラミル等を挙げることができるが、主作用が強すぎて、他の作用の調整が困難であったり、その他の作用、特に圧縮作用が強く働くので展延性に富む金属粉への適用が好ましくない装置もある。
【0035】このような弊害を考慮した結果、剪断摩擦式粉砕装置とメディア攪拌式粉砕装置とを用いて2段以上で解粒処理することにより本発明のニッケル粉が好都合に製造できることを見出した。即ち、原料粉の凝集をなるべく抑制するためには、剪断力の高い装置を使用し、それとは別に、原料粉の表面の平滑性を制御しながらも、摩擦力の調整が容易な装置を使用して解粒することが好ましいという結論に達したのである。
【0036】上記の剪断摩擦式粉砕装置の好ましい例として、ハレルホモジナイザ(国産精工製)、パルベライザ(ホソカワミクロン製)、スーパーミクロン(ホソカワミクロン製)等が挙げられ、またメディア攪拌式粉砕装置の好ましい例として、アトライタ(三井鉱山製)、ビーズミル(入江商会製)、ダイノーミル(Willy A.Bachofen AG Maschinenfabrik 製)等が挙げられる。
【0037】なお、上記の製造方法において、解粒処理に用いられるニッケル粉は前記の乾式法、湿式法の何れの製造方法で得られたニッケル粉でも良い。また、ニッケル粉中のアルカリ金属、塩素、硫黄の各々の含有量は、出発原料及びニッケル粉の製造方法により左右されるが、対象元素に応じて、それらの低い含有量を有すニッケル粉が得易い手段を公知技術から適宜選択すれば良い。
【0038】具体的には、ナトリウム等のアルカリ金属の含有量が低いニッケル粉を得たければ、気相化学反応法を選択し、塩素や硫黄の含有量の低いニッケル粉を得たければ、液相還元析出法を選択しそれらで得られたニッケル粉について上記の解粒処理を行えば良い。
【0039】次に、本発明の導電ペースト、特に積層セラミックコンデンサ用導電ペーストの好ましい製造方法について述べる。本発明の導電ペーストは、上記した本発明のニッケル粉、樹脂、溶剤等で構成され、更に必要により分散剤、焼結抑制剤等を含有することができる。具体的には、樹脂としてエチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル系の非硬化型樹脂、エポキシ、アクリル等の好ましくは過酸化物を併用した熱硬化性樹脂等を用いることができる。また、溶剤として、テルピネオール、テトラリン、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート等を単独で又は混合して用いることができる。また、この導電ペーストには必要に応じてガラスフリットを加えてもよい。本発明の導電ペーストは以上の原料をボールミル、三本ロール等の混合用機械を用いて混合攪拌することにより得られる。
【0040】
【実施例】以下に実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1硫酸ニッケル・六水和物(品位22.2質量%)44.8kgを純水80Lに溶解して得た水溶液を、水酸化ナトリウム濃度200g/Lの水溶液100Lにその液温を60℃に維持しながらゆっくりと滴下して、ニッケルの水酸化物を析出させた。
【0041】この懸濁液にその液温を60℃に維持しながらヒドラジン・一水和物30kgを30分間にわたって添加してニッケルの水酸化物をニッケルに還元した。この生成ニッケル粒子含有スラリーを洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄した後、ハレルホモジナイザKH−2型(国産精工製)を用いて回転速度5000rpm、スラリー処理速度27.5L/分で2時間処理した後、引き続きダイノーミルKDL型( Willy A. Bachofen AG Maschinenfabrik 製)(ガラスビーズの粒子径2mmφ)を用いてスラリー処理速度1L/分で15分間処理し、処理後のニッケル粒子含有スラリーを濾過し、乾燥してニッケル粉を得た。
【0042】このニッケル粉について、JIS K 5101の顔料試験方法に記載の方法に準拠して吸油量を測定した結果、11mL/100gであった。このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置 Micro TracHRA 9320-X100 型(Leeds + Northrup 製)を用いて粒子径を測定したところ、平均粒子径(D50値)は0.50μmであり、0.75μm(0.50×1.5=0.750)を越える粒子径を有する粒子比率は全体の8.7%に相当し、0.25μm(0.50×0.5=0.250)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の1.4%に相当していた。また、このニッケル粉の個数分布の標準偏差σは0.133であり、従って変動係数(CV)は26.6%であった。
【0043】このニッケル粉100質量部に、エチルセルロース10質量部及びテルピネオール90質量部からなるビヒクルを加え、これらを混合した後、ロールミルで混練して導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストについて、JIS K5400(塗料一般試験方法)の線条法に準拠し、0−5μmつぶゲージを用いて導電ペースト中のニッケル粉の分散度を測定した。その結果は2.2μmであった。
【0044】このニッケル粉を1.5g秤量し、αテルピネオール1.5ccと共に容積2ccの容器に入れ、更に少量のビーズを入れてペイントシェーカで2時間振動させた。その後静置して自然沈降させ、24時間後の容器底面からの高さ(ニッケル微粉末層の厚さ)(mm)を測定した。その高さと容器の底面積(0.79cm2 )から、αテルピネオール中での沈降密度(g/cm3 )を計算した。その計算値は1.47g/cm3 であった。また、ニッケル粉中のアルカリ金属の総量は280ppmであり、塩素量は10ppmであり、硫黄量は110ppmであった。
【0045】実施例2硫黄含有量が500ppmである十分に乾燥した塩化ニッケル無水塩22.0kgを石英容器中に静置し、容器内温度が900℃に維持されるように制御しながら、キャリヤ用アルゴンガスの10L/分の気流中で加熱蒸発させた。気化した塩化ニッケルガス中に還元用の水素ガスを3.5L/分で通気し、還元温度を1000℃に制御してニッケル粉を得た。このニッケル粉を洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄し、濾過し、乾燥した後、ナイフ型ハンマを装備したパルベライザAP−1SH型(ホソカワミクロン製)に投入して回転速度2500rpmで処理した後、純水80Lを加え、アトライタMA10SE−X型(三井鉱山製)(ガラスビーズの粒子径2mmφ)を用いてスラリー処理速度8L/分、アジテータ回転数120ppmで1時間処理し、濾過し、乾燥してニッケル粉を得た。
【0046】このニッケル粉について、JIS K 5101の顔料試験方法に記載の方法に準拠して吸油量を測定した結果、8mL/100gであった。このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、実施例1で用いたレーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて粒子径を測定したところ、平均粒子径(D50値)は0.47μmであり、0.70μm(0.47×1.5=0.705)を越える粒子径を有する粒子比率はで全体の5.1%に相当し、0.24μm(0.47×0.5=0.235)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の0.6%に相当していた。また、このニッケル粉の個数分布の標準偏差σは0.139であり、従って変動係数(CV)は29.6%であった。
【0047】また、このニッケル粉100質量部に、エチルセルロース10質量部及びテルピネオール90質量部からなるビヒクルを加え、これらを混合した後、ロールミルで混練して導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストについて、JISK 5400(塗料一般試験方法)の線条法に準拠し、0−5μmつぶゲージを用いて導電ペースト中のニッケル粉の分散度を測定した。その結果は1.5μmであった。
【0048】このニッケル粉を1.5g秤量し、αテルピネオール1.5ccと共に容積2ccの容器に入れ、更に少量のビーズを入れてペイントシェーカで2時間振動させた。その後静置して自然沈降させ、24時間後の容器底面からの高さ(ニッケル微粉末層の厚さ)(mm)を測定した。その高さと容器の底面積(0.79cm2 )から、αテルピネオール中での沈降密度(g/cm3 )を計算した。その計算値は1.57g/cm3 であった。また、ニッケル粉中のアルカリ金属の総量は20ppmであり、塩素量は10ppmであり、硫黄量は950ppmであった。
【0049】比較例1硫酸ニッケル・六水和物(品位22.2質量%)44.8kgを純水80Lに溶解して得た水溶液を、水酸化ナトリウム濃度200g/Lの水溶液100Lにその液温を60℃に維持しながらゆっくりと滴下して、ニッケルの水酸化物を析出させた。
【0050】この懸濁液にその液温を60℃に維持しながらヒドラジン・一水和物30kgを30分間にわたって添加してニッケルの水酸化物をニッケルに還元した。この生成ニッケル粒子含有スラリーを洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄した後、濾過し、乾燥してニッケル粉を得た。
【0051】このニッケル粉について、JIS K 5101の顔料試験方法に記載の方法に準拠して吸油量を測定した結果、31mL/100gであった。このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、実施例1で用いたレーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて粒子径を測定したところ、平均粒子径(D50値)は0.94μmであり、1.41μm(0.94×1.5=1.410)を越える粒子径を有する粒子比率は全体の21.6%に相当し、0.47μm(0.94×0.5=0.470)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の5.5%に相当していた。また、このニッケル粉の個数分布の標準偏差σは0.412であり、従って変動係数(CV)は43.8%であった。
【0052】このニッケル粉100質量部に、エチルセルロース10質量部及びテルピネオール90質量部からなるビヒクルを加え、これらを混合した後、ロールミルで混練して導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストについて、JIS K5400(塗料一般試験方法)の線条法に準拠し、0−5μmつぶゲージを用いて導電ペースト中のニッケル粉の分散度を測定した。その結果は5μmを超えるものであった。
【0053】このニッケル粉を1.5g秤量し、αテルピネオール1.5ccと共に容積2ccの容器に入れ、更に少量のビーズを入れてペイントシェーカで2時間振動させた。その後静置して自然沈降させ、24時間後の容器底面からの高さ(ニッケル微粉末層の厚さ)(mm)を測定した。その高さと容器の底面積(0.79cm2 )から、αテルピネオール中での沈降密度(g/cm3 )を計算した。その計算値は1.31g/cm3 であり、実施例1及び2のニッケル粉に比べ、沈降密度が低く、αテルピネオールとのなじみは劣っていた。また、ニッケル粉中のアルカリ金属の総量は310ppmであり、塩素量は13ppmであり、硫黄量は100ppmであった。
【0054】比較例2ダイノーミルでの処理を実施しなかった以外は実施例1と同様に方法でニッケル粉を得た。このニッケル粉について、JIS K 5101の顔料試験方法に記載の方法に準拠して吸油量を測定した結果、26mL/100gであった。
【0055】このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、実施例1で用いたレーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて粒子径を測定したところ、平均粒子径(D50値)は0.64μmであり、0.96μm(0.64×1.5=0.960)を越える粒子径を有する粒子比率は全体の8.4%に相当し、0.32μm(0.64×0.5=0.320)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の2.9%に相当していた。また、このニッケル粉の個数分布の標準偏差σは0.241であり、従って変動係数(CV)は37.7%であった。
【0056】このニッケル粉100質量部に、エチルセルロース10質量部及びテルピネオール90質量部からなるビヒクルを加え、これらを混合した後、ロールミルで混練して導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストについて、JIS K5400(塗料一般試験方法)の線条法に準拠し、0−5μmつぶゲージを用いて導電ペースト中のニッケル粉の分散度を測定した。その結果は3.3μmであった。
【0057】このニッケル粉を1.5g秤量し、αテルピネオール1.5ccと共に容積2ccの容器に入れ、更に少量のビーズを入れてペイントシェーカで2時間振動させた。その後静置して自然沈降させ、24時間後の容器底面からの高さ(ニッケル微粉末層の厚さ)(mm)を測定した。その高さと容器の底面積(0.79cm2 )から、αテルピネオール中での沈降密度(g/cm3 )を計算した。その計算値は1.39g/cm3 であり、実施例1及び2のニッケル粉に比べ、沈降密度が低く、αテルピネオールとのなじみは劣っていた。また、このニッケル粉中のアルカリ金属の総量は270ppmであり、塩素量は10ppmであり、硫黄量は90ppmであった。
【0058】
【発明の効果】本発明のニッケル粉は特定の吸油量を有するものであり、そのことによりビヒクル中への分散性に優れ且つ凝集が少ないことからビヒクルとのなじみ特性が良いので導電ペースト用として優れており、また、粒度分布特性に優れており、特に、薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いる導電ペースト用として適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】吸油量が5〜25ml/100gであることを特徴とするニッケル粉。
【請求項2】レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であることを特徴とする請求項1記載のニッケル粉。
【請求項3】下記の式(1)により求められる変動係数(CV)が40%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載のニッケル粉:
【数1】
【請求項4】ニッケル粉中のアルカリ金属の総量が500ppm以下であり、塩素量が100ppm以下であり、硫黄量が10000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のニッケル粉。
【請求項5】請求項1〜4の何れかに記載のニッケル粉を含有することを特徴とする導電ペースト。
【請求項6】請求項1〜4の何れかに記載のニッケル粉を含有することを特徴とする積層セラミックコンデンサの電極形成に用いる導電ペースト。
【請求項1】吸油量が5〜25ml/100gであることを特徴とするニッケル粉。
【請求項2】レーザ回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であることを特徴とする請求項1記載のニッケル粉。
【請求項3】下記の式(1)により求められる変動係数(CV)が40%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載のニッケル粉:
【数1】
【請求項4】ニッケル粉中のアルカリ金属の総量が500ppm以下であり、塩素量が100ppm以下であり、硫黄量が10000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のニッケル粉。
【請求項5】請求項1〜4の何れかに記載のニッケル粉を含有することを特徴とする導電ペースト。
【請求項6】請求項1〜4の何れかに記載のニッケル粉を含有することを特徴とする積層セラミックコンデンサの電極形成に用いる導電ペースト。
【公開番号】特開2001−266645(P2001−266645A)
【公開日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−5388(P2001−5388)
【出願日】平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【公開日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
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