説明

ニッケル鉄の生成

混合ニッケル鉄水酸化生成物からニッケル鉄生成物を生成する方法であって、前記方法は、a)混合ニッケル鉄水酸化生成物を提供するステップと、b)ニッケル鉄水酸化物ペレットを生成するために前記混合ニッケル鉄水酸化生成物をペレット化するステップと、c)混合ニッケル鉄酸化物ペレットを生成するために前記ニッケル鉄水酸化物ペレットを焼成するステップと、d)ニッケル鉄ペレットを生成するために高温で一つ以上の還元性ガスによってニッケル鉄酸化物ペレットを還元するステップと、を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本発明は、ペレット化、焼成及び還元の組合せによってニッケル鉄を水酸化混合ニッケル鉄から生成する新規な方法に関する。特に、本発明は、水酸化ニッケル鉄のペレット化、酸化ニッケル鉄の多孔性ペレットを生成するペレットの焼成、及び新規なニッケル鉄生成物を生成する還元、を含む新規な方法を提供する。ニッケル鉄生成物は、高品質ニッケル鉄生成物を生成するために、更に溶解されうる。この方法は、ニッケルを再生するためのイオン交換に続いて、ラテライト鉱石の圧力酸浸出作用、大気の振動浸出作用及び/又は堆積浸出、又は、ニッケル硫化物鉱石の酸性浸出作用といった処理によってニッケルを含む鉱体に由来する酸性の生成液から生じうるニッケル鉄水酸化物沈殿物に特に適している。
【背景技術】
【0002】
ラテライトニッケル及びコバルト鉱の堆積物は、概して、遷移領域によって離隔される同じ堆積物中における2つの層として、酸化物タイプの鉱石、褐鉄鉱及びケイ酸塩タイプの鉱石、腐食岩石(サプロライト)を含む。商業的処理によって腐食岩石又は褐鉄鉱を処理するための器材サイズを最小にするために、高級品褐鉄鉱及び腐食岩石が、好適である。これは、いくつかの堆積物において廃棄物として拒絶される低等級な鉱石及び変位鉱石の原因となる。
【0003】
ニッケルのより高含有量の腐食岩石は、ニッケル鉄を生成するために、ロースト及び電気溶解技術を含む高温冶金法によって処理される傾向がある。遷移領域中におけるニッケル低含有量の褐鉄鉱、腐食岩石及び褐鉄鉱/腐食岩石混合物にとって所要動力及び高いニッケル鉱石比率は、これらの鉱石に対するこの処理ルートを非常に高価にする。
【0004】
ニッケル及びコバルト高含有量の褐鉄鉱は、高圧の酸性の浸出処理によって湿式冶金で、又は、(例えばキャロン還元ロースト―炭酸アンモニウム浸出プロセスといった)高温冶金及び湿式冶金処理の組合せによって、通常商業的に処理される。
【0005】
鉱石を選鉱するための効果的方法がないため、上記の処理は、概して「全部の鉱石」の処理を必要とする。これには、低金属値を含みうる鉱石の鉱物学的割合によって、処理された鉱石品質全体が事実上希薄化して、再生コストを上昇させるという不利な点がある。
【0006】
ニッケル鉄を生成する腐食岩石の従来の処理は、乾燥ステップ、続いて、酸化ニッケルをニッケルに部分的に変換するために還元ローストステップ、そして、電気炉中で溶解するステップを必要とする。全鉱石におけるニッケルへの比率が概して40対1であり、そして、大部分の電力はスラグの溶融に費やされるため、これは非常にエネルギーを大量消費する方法である。経済的に処理するためには、より高級な腐食岩石の供給源が必要である。これにも、鉱石(ニッケル鉄が報告されている)における任意のコバルトの経済的価値がわからないという不利な点がある。
【0007】
この処理に対する改良案は、ニッケルの中間体からニッケル鉄を直接生成して、鉱石の95%以上を溶解させるためのエネルギー必要量を除去することであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の所望の特徴は、従来技術に関連した問題点の一つ以上を克服するか又は少なくとも軽減する、より単純で、よりエネルギー低減型の、設備投資の少ない処理を提供することである。
【0009】
水酸化ニッケルは、オーストラリアのカウズ工場で商業的に中間ニッケル合成物として生成される。カウズの処理において、ラテライトニッケル鉱石は、他の不純物に加えて、ニッケル及びコバルトを抽出するために、高圧の硫酸浸出を受ける。不用な鉱石及びいくつかの不純物は、部分的な中和の後に浸出物から分離されて、そして、混合ニッケル水酸化第一コバルトは、更なる中和によって酸化マグネシウムとともに沈殿する。
【0010】
類似の処理によるニッケル水酸化物中間体生成物は、従来技術にも記載されている。例えば、この生成物は、高圧又は大気圧での酸ラテライト浸出法又はこれらの組合せから、ラテライト又はニッケル硫化物鉱石又は濃縮物の堆積浸出から、又は、高圧又は大気圧での硫化物鉱石又は濃縮物の溶出からの、ラテライトから中間体として生成されうる。この文献は、溶出液として生成される酸性硫酸ニッケル溶液、揮散溶液、上述した処理の浸出液又は浸出スラリーの溶媒抽出法又はイオン交換処理からのラフィネート、から水酸化ニッケルが生成されうることも、教示する。
【0011】
BHP・ビリトン・SSM・テクノロジー・Pty社名における国際出願PCT/AU2005/001360号明細書には、組合された湿式冶金及び高温冶金処理によってニッケル鉄又はニッケルマットを生成するための方法が開示されている。この明細書中に開示される処理において、ニッケル及び鉄がイオン交換処理の樹脂に選択的に吸収されて、樹脂から硫酸で溶出されて、そして、その溶出液は、混合ニッケル鉄水酸化生成物を沈殿させるために中和される。混合ニッケル鉄水酸化生成物は、それから、ニッケル鉄又はニッケルマット生成物を生成するために、直接還元される。
【0012】
文献や記事等の上記説明は、本発明のための内容物を単に提供するためにのみ、明細書中に含まれる。これらの事項のいずれも又は全てが先行技術のベースの一部を形成したか、又は、本発明の優先日前において関連する分野の一般知識であったことが、示唆又は表わされるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
全体的に、本発明は、混合ニッケル鉄水酸化生成物からニッケル鉄生成物を生成する方法を提供する。この方法は、鉱石を含む広範囲のニッケルを処理に適用でき、特に従来の方法によって利用不可能であるとみなされるラテライト鉱石の処理に適用できる。一実施の形態において、本発明は、ラテライト鉱石が堆積浸出されて、続いてイオン交換される処理に適用できる。ここで、ニッケルは、最初に硫酸で浸出して、それから、ニッケル、コバルト及び鉄を含む生成溶液として回収される。本発明の好ましい形態において、混合ニッケル鉄水酸化生成物は、イオン交換処理の溶出液から回収される。
【0014】
本発明の第1実施の形態において、次のステップを含む方法が提供される。これらのステップは、
a)混合ニッケル鉄水酸化生成物を提供すること、
b)ニッケル鉄水酸化物ペレットを生成するために混合ニッケル鉄水酸化生成物をペレット化すること、
c)混合ニッケル鉄酸化物ペレットを生成するためにニッケル鉄水酸化物ペレットを焼成すること、
d)ニッケル鉄ペレットを生成するために高温において一つ以上の還元性ガスでニッケル鉄酸化物ペレットを還元すること、である。
【0015】
概して、混合ニッケル鉄水酸化生成物は、イオン交換処理においてニッケル及び鉄の選択的な回収に続いて生じうる中間生成物である。概して、この方法は、ラテライト鉱石からのニッケル鉄としてニッケルを回収するための全体の方法の一部を形成する。好ましい実施の形態において、水酸化混合ニッケル鉄は、次の全体的な処理によって生じる。充満した浸出物溶液は、堆積浸出処理によって、好ましくは鉱石を使用する硫酸を含むラテライトニッケルの対向流堆積浸出処理によって、生成される。少なくともニッケル、コバルト及び鉄を含む充満した浸出物は、それからイオン交換処理によって処理される。ここで、ニッケル及び鉄は樹脂上に抽出され、そして、コバルトはラフィネート中に残される。ニッケル及び鉄は、それから、酸を有する樹脂から溶出されて、中和剤(例えば酸化マグネシウム)を有する溶出液の処理によって混合ニッケル鉄水酸化物沈殿物として沈殿する。
【0016】
従って、本発明の好ましい実施の形態における方法は、更なる以下のステップを含む。すなわち、これらのステップは、
a)少なくともニッケル及び鉄を含む生成液を提供すること、
b)イオン交換樹脂が生成液から選択的にニッケル及び鉄を吸収するイオン交換処理を生成液に行うこと、
c)ニッケルを及び鉄を含む溶出液を生成するために酸性溶液で樹脂からのニッケル及び鉄を溶出すること、
d)中和剤での溶出液の処理によって水酸化混合ニッケル鉄としてニッケル及び鉄を沈殿させること、である。
【0017】
一実施の形態において、ニッケル及び鉄を取り込んだ(ロードした)溶出液の遊離酸の中和は、2つの段階で行われる。pHを約2に増やすために第1の中和ステップで石灰岩が用いられる。そして、いくつかの針鉄鉱とともに中和生成物として石膏を沈殿させる。そして、石膏は直ちにろ過されうる。酸化マグネシウム及び/又はソーダ灰は、それから、混合ニッケル鉄水酸化生成物としてニッケル及び鉄を沈殿させる目的で、7.5を超えるpHに更に溶出液を中和するために用いられうる。あるいは、酸化マグネシウム及び/又はソーダ灰が、混合ニッケル鉄水酸化生成物を沈殿させる目的で、7.5を超えるまで溶出液のpHを上げるために、単一のステップで用いられうる。
【0018】
最も好ましくは、ニッケル及び鉄を取り込んだ溶出液を生成するため、ニッケル及び鉄を樹脂から剥ぎ取るために用いられる酸は硫酸である。しかしながら、更なる実施の形態において、ニッケル及び鉄を樹脂から剥ぎ取るために、硫酸よりもむしろ塩酸が使用されうる。硫酸が用いられる場合に発生するよりも低い硫黄の濃度で溶出液が中和可能であり、生成される混合ニッケル鉄水酸化生成物中の硫黄の濃度が低くなるという点で、このことは、潜在的な利点を有する。従って、焼成は、存在する硫黄の濃度に応じて、還元ステップ前に、より低い温度で生じうる。
【0019】
イオン交換溶出液から回収される混合ニッケル鉄水酸化生成物は、本発明の処理によるニッケル鉄ペレットの処理に適している。混合ニッケル鉄水酸化生成物は、通常、湿式のケーキの形態であり、そして、混合ニッケル鉄水酸化生成物をペレット状にするために、湿式のケーキを乾燥させて、有機結合材及び水によってペレット状にされることが好ましい。これにより、ニッケル鉄水酸化物ペレットがより硬化されて扱いがより容易になる。ニッケル鉄水酸化物ペレットは、焼成の前において5mm及び20mmの間のサイズである。
【0020】
好適な有機結合材は、500℃を超えた温度で破壊されるセルロース溶液、澱粉又は他の粘稠性有機炭化水素ポリマーを含む。通常、有機結合材は、焼成中に、ニッケル鉄酸化物ペレットから焼き払われる。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態において、ペレット状にされたニッケル鉄水酸化生成物は、最初に約100℃−120℃の温度で乾燥して、それから、好ましくはニッケル鉄水酸化物ペレットを実質的に硫黄の無いニッケル鉄酸化物ペレットに変換するための酸化状態下において、約800℃−1300℃の温度で、焼成される。これにより、大きい比表面積を有する多孔性ニッケル鉄酸化物ペレットが生成される。
【0022】
通常、焼成ステップは、この種の生成物を焼成するための窯、移動火格子、高炉、多重炉床炉又は他の任意の適切な反応器中で起こる。酸化状況は、反応器内で、又は、丈夫な台を通して空気又は他の酸化ガスの添加によって提供される。
【0023】
通常、硫酸が樹脂を取り除くために用いられる場合、存在している任意の硫黄は、焼成ステップ中に、二酸化硫黄又は無水硫酸として除去される。樹脂を取り除くために塩酸塩を用いる場合、いくらかの塩化マグネシウムは存在していてもよく、そして、焼成ステップの温度条件は、存在している任意の塩化物を除去するために焼成ステップ間における変更を要求しうる。
【0024】
焼成多孔性ニッケル鉄酸化物ペレットは、それから、約800℃−1100℃の温度で、還元性ガスによって還元される。酸化ニッケル鉄の焼成多孔性ペレットを還元するために最も好適な還元性ガスは、水素である。しかしながら、水素にとともに、又は、水素の代わりに、還元大気を生成可能な他の還元性ガス(例えば一酸化炭素、メタン又は改質天然ガス及びそれらの混合物)が、共に使用されてもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態における処理は、ラテライト鉱石の高圧での酸浸出、強化圧力での酸浸出、大気での酸浸出(又はこれらの任意の組合せ)又は堆積浸出から、生成液からニッケル鉄生成物の回収に適用できる。この処理は、硫化物鉱石を含むニッケルの圧力酸浸出又は任意のラテライト及びニッケル硫化物鉱石浸出の組合せからの生成液を含む、酸性浸出処理からの生成液を含む任意のニッケルを処理することにも適用可能である。
【0026】
従って、好ましい実施の形態において、本発明は、ニッケル回収処理で、ニッケル、コバルト及び鉄を含む生成液からニッケル鉄生成物を生成する方法を提供する。そして、前記処理は、以下のステップを含む。すなわち、これらのステップは、
a)少なくともニッケル、コバルト及び鉄を含む生成液を提供すること、
b)イオン交換樹脂が溶液から選択的にニッケル及び鉄を吸収するイオン交換処理を生成溶液に行うこと、
c)取り込み溶出液を生成するニッケル及び鉄を酸性溶液で樹脂から剥ぎ取ること、
d)混合ニッケル鉄水酸化生成物を沈殿させるために取り込み(ロードした)溶出液を中和すること、
e)ニッケル鉄水酸化物ペレットを生成するために混合ニッケル鉄水酸化生成物をペレット化すること、
f)ニッケル鉄酸化物ペレットを生成するためにニッケル鉄水酸化物ペレットを焼成すること、
g)ニッケル鉄ペレットを生成するために高温で一以上の還元性ガスでニッケル鉄酸化物ペレットを還元すること、
を含む。
【0027】
ニッケル及び鉄は、イオン交換処理によってコバルトから分離される。前記樹脂は、好ましくはビス・ピコリルアミン官能基を有することが好ましく、約2のpHで操作されるときに、樹脂は選択的にニッケル及び鉄を保持して、ニッケル及び鉄をコバルトから分離して、他の不純物を除去することが可能である。ニッケル及び鉄は樹脂に取り込まれ、その一方で、大部分のコバルトはラフィネートのまま保持される。コバルトは、従来の技術(例えば硫化物、炭酸塩又は水酸化物として溶媒を抽出、イオン交換又は析出の技術)によって、ラフィネートから回収されうる。
【0028】
いくつかの樹脂がニッケル及び鉄よりも高い銅への親和性を有するため、生成液中に存在しうる任意の銅は、イオン交換処理の前に除去されなければならない。銅は、イオン交換、溶媒抽出法又は他の周知の技術によって生成液から直ちに除去される。
【0029】
本発明の方法によって生成されるニッケル鉄生成物は、ニッケル鉄生成物中で通常見出されるよりも高いマグネシウム含有量を有し、低い濃度の硫黄を有する。マグネシウムがスラグ生成において必要であるため、ニッケル鉄がステンレス鋼生成のために用いられる場合には、マグネシウムのより高い濃度は望ましい特徴である。
【0030】
従って、更に更なる実施の形態において、本発明は、独自の(ユニークな)多孔性ニッケル鉄ペレット生成物にある。大部分の不純物が選択的なニッケル/鉄イオン交換処理に続いて除去され、そして、焼成後の生成物が低濃度の硫黄を含むため、生成物が充分な純度を有するという点で、この生成物のユニークな物理学的性質は、ステンレス鋼融解物を直接添加することに特に好適にしている。生成物のマグネシウムの濃度がニッケル鉄生成物で通常見つかるよりも高いにもかかわらず、ステンレス鋼生成中のスラグ生成にマグネシウムが役立つため、このことは欠点ではない。好ましくは、多孔性ニッケル鉄生成物は、1%及び10%の間のマグネシウム含有量を、そして、0.4%以下の硫黄含有量を、そして、0.01%から2.5%の間の炭素含有量を有する。
【0031】
この処理から生成されるニッケル鉄ペレットは、ステンレス鋼炉への添加に好適であり、又は、他の用途に対して用いられうる。高純度ニッケル鉄が必要な場合、ニッケル鉄ペレットは更に精製され又は溶解されて、インゴットに鋳造されうる。
【0032】
従って、更なる実施の形態において、多孔性ニッケル鉄ペレットは、高純度ニッケル鉄生成物を生成するために更に溶解されそして精製されうる。この溶解処理は、次のステップを含む。すなわち、これらのステップは、
a)本発明の処理に従って生成される多孔性ニッケル鉄ペレットを提供すること、
b)任意の包含物を溶解するための流れを付加すること、
c)高純度ニッケル鉄生成物を生じるために少なくとも1500℃の温度で炉中の生成物を溶解すること、
を含む。
【0033】
概して、包含物は、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化ケイ素、カルシウムオキサイド及び/又は酸化クロムでありうる。この流れは、各々のこれらの包含物に対する高い溶解性を有し、そして、1400℃−1450℃間の液相線温度を有しなければならない。好適な流れは、CaO−Al−CaF系を有する。
【0034】
図1は、本発明の処理に従う好適なフローシートを例示する。
【0035】
図2は、還元体である水素及び一酸化炭素を使用してニッケル鉄酸化物ペレットの還元中の重量変化を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
生成溶液が酸堆積浸出処理から生成される好ましい実施の形態において、ラテライト鉱石が好ましくは25mm未満のサイズに圧砕され、そして、堆積物の浸透性を向上するために、水、硫酸又は他の結合材を使用して集塊される。
【0037】
集塊された鉱石は、少なくとも一つの堆積物中に配置されうるが、対向流浸出システムとして作動される、少なくとも2つの堆積物(第1及び第2の堆積物)中に配置されることが好ましい。対向流堆積浸出処理は、一つの堆積システムよりも酸消費量を低減して生成溶液を清浄化するという効果がある。
【0038】
図1に示される好適な方法において、浸出溶液は、ニッケルイオン交換ステップ(2)からニッケルを消耗して再利用されるラフィネート(1)から供給されて、硫酸(3)を補充されて、第2の堆積物(4)を添加して中間生成溶液を生成する。そして、この生成溶液は、それから対向流処理における主要な堆積浸出(5)に添加される。これは、酸性度の低いニッケル及びコバルトリッチな生成溶液(PLS)(6)を生成する。そして、この溶液は、鉄及び多くの他の不純物を含む。第2の堆積物がニッケルを消耗したときに、それは廃棄され、第1の堆積物は第2の堆積物になり、そして、新規な鉱石堆積物が第1の堆積物になる。
【0039】
生成溶液は、イオン交換(IX)プロセス(2)によって処理される。ここで、ニッケルの大多数及びいくつかの鉄は樹脂ベッドに保持され、そして、鉄の大部分、他の不純物及びコバルトは、ラフィネート溶液中に保持されて通過する。この樹脂は、例えばビス・ピコリルアミンの官能基を有するDowex M4195である。pH2で、樹脂の選択性を示している吸収定数は、以下の順序である;Ni+2>Fe+3>Co+2>Fe+2>Mn+2>Mg+2>Al+3。従って、この樹脂は、pH2でニッケルを回収することができ、鉄を除いて他の不純物を除去することができる。
【0040】
Dowex M4195がニッケル及び鉄よりも銅に対する非常に高い親和性を有しているため、この処理が硫化物鉱石の酸浸出からの生成液を扱うために用いられる場合、銅はイオン交換ステップで生成液を扱う前に生成液から除去される。
【0041】
コバルトを含むラフィネート(7)は、硫化コバルト又は水酸化第一コバルトとしてコバルトを抽出して回収させるために、既知の溶媒抽出法、イオン交換又は析出技術(19)によって更に扱われうる。
【0042】
保持されるニッケル及び鉄は、硫黄の酸性溶液(8)を使用して樹脂から溶出される。塩酸塩が代換物として使用されうるが、硫酸が好適である。塩酸が使用される場合、溶出液中に存在する硫黄より少なくなり、そして、存在している任意の塩化物を除去するために焼成状況は変更されうる。ニッケル処理に実施される以前の作業には、純粋なニッケル溶出液又はニッケル及びコバルト値を含む溶出液を提供するIX系を使用した。しかしながら、この処理におけるIXステップの使用は、ニッケル鉄又はニッケルマットへの更なる処理に適している溶出液中にニッケル及び鉄の混合物を生成するために用いる。これにより、中和されて拒絶される鉄の量が低減され、そして、下流の器材の寸法が低減される。
【0043】
水酸化混合ニッケル鉄を沈殿させるために、IX溶出液は、好ましくは酸化マグネシウム及び/又はソーダ灰(10)によって、中和され(9)、そして、湿式のケーキを生成するためにフィルタ処理される(11)。
【0044】
以下の処理ステップによる湿式のニッケル鉄水酸化生成物フィルターケーキの処理によって、ニッケル及び鉄の供給源としてステンレス鋼炉において直接使用されうる、受け入れられる純度のニッケル鉄ペレット生成物が生成されるということが、驚くべきことに見出された。
【0045】
湿式のニッケル鉄水酸化生成物は、ペレタイザ又は押出機(13)中でペレットを作るために、水溶液中で有機結合材(12)と混合される。この結合材は、概して0.05%のセルロース溶液であってもよいが、澱粉、又は、500℃より高い温度で破壊される、他の粘稠性有機炭化水素ポリマーといった、他の種類の適切な材料も使用されうる。ペレット・サイズは、5mm及び20mm直径の間の範囲である。この時点におけるニッケル鉄水酸化生成物の分析は、表11において低硫黄ニッケル鉄水酸化生成物として示される。この生成物は、溶解前に還元されなければならないこの時点で、実質的な含有水分及び1%及び4%の間の硫黄を含んでいる。
【0046】
ペレットは、110℃で乾燥して、酸化状況下において1000℃及び1300℃の間で焼成(14)するために、例えばロータリーキルンといった水平炉、又は例えば高炉といった垂直炉又は他の適切な工業的設備中に入れられる。水分は400℃で排除され、そして、二酸化硫黄又は無水硫酸として除去される硫黄は、1100℃で2時間後にほぼ完全に除去される。炉からの生成物中の金属は、主にトレボライトの形で、複合ニッケル鉄酸化物NiFeの形態であり、そして、この生成物は多孔性ペレットの形態である。
【0047】
代替実施形態において、硫酸よりむしろ塩酸がニッケル及び鉄をIX樹脂から剥ぎ取るために用いられる場合、ニッケル鉄水酸化物ペレットに存在する硫黄の濃度は、還元ステップの前にペレットを焼成する必要を不要にするために又はこれらのペレットが焼成される温度を少なくとも低下させるために、十分に低くてもよい。従って、図1にて図示したように、別々の焼成ステップは、本実施の形態において必ずしも必要ではない。
【0048】
多孔性金属酸化物ペレットは、それから、好ましくは800℃及び1100℃の間の還元性ガス(15)及び、より好ましくは約1000℃で、炉内の充填ベッド中で処理される。ここで、これらのペレットは、ニッケル鉄ペレット(16)に還元される。この還元ガスは、好ましくは水素であるが、一酸化炭素又は適切な還元大気を生じるガスの他の混合物であってもよい。生成されたニッケル鉄ペレットの典型的な分析を、下記の表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
酸化マグネシウムを有する混合水酸化物の析出物から残存していてフィルターケーキから洗うのが困難でありうる生成物のマグネシウム含有量は、ニッケル鉄において通常抽出されるよりも高い。しかしながら、マグネシウムは、スラグ生成において必要であるので、ステンレス鋼製造のために望ましい成分である。多孔性ニッケル鉄ペレットは、それ故、ステンレス鋼炉への直接添加に対して好適であり、新規なニッケル鉄生成物を表す。
【0051】
必要であれば、更なる実施の形態として、多孔性ニッケル鉄ペレットは、硫黄及び炭素(18)の少ない高品質ニッケル鉄生成物を生成するために、更に溶解されて精製(17)されてもよい。
【0052】
溶解段階での主な目的は、還元されたニッケル鉄中の非金属含有物を取り除くことであるので、この含有物を溶かす能力を有するフラックスが溶融物中に添加される(20)。主要な含有物は、MgO、及び、より小さい程度の、アルミナ、二酸化ケイ素、酸化カルシウム及び酸化クロム、である。
【0053】
ニッケル鉄ペレットが実質的に硫黄を含まないように、フラックスに対する好適な設定基準は、MgO及び/又は見出されうる任意の他の含有物に対する高い溶解性、1400℃及び1450℃の間の液相線温度、耐火材の制限された溶解性、毒性又は危険性無く、容易に処分可能で、低コストなことである。
【0054】
MgOは、その耐火性の性質、すなわち高い溶融点(2822℃)及び熱力学安定性のため、一般的に用いられるフラックス中に限定的に溶解する。目標とされた溶解温度は、1550℃及び1580℃の間にある。
【0055】
CaO−Al−CaF系中のスラグは、1550℃で20重量%程度でありうる、MgOの適度な溶解度を有する。ニッケル鉄ペレットを溶解するために用いられる典型的フラックスは、41%のCaO−41%のAl−18%のCaFであるが、同じ機能を満たす他の融剤も用いられうる。還元されたニッケル鉄中でのMgOの全体の含有量がほぼ4.3%であるため、処理に必要なフラックスの質量は、還元されたニッケル鉄の質量のほぼ25%である。
【0056】
適切なフラックスを選択後、多孔性ニッケル鉄ペレットは、適切な産業炉中において1500℃の温度で好ましくは約1600℃の温度でスラグと共に溶解され、そして、高品質ニッケル鉄生成物を生成しうる。
【0057】
得られたニッケル鉄は、30ppm以下の硫黄を含み、これは、ニッケル鉄等級FeNi40LC及びFeNi40LCLPに対してISO 6501によって定められる最大の制限よりも10分の1の低さである。標準規格による最大レベルが300ppmである一方、炭素含有量は100ppm以下である。
【0058】
溶解そして精製後におけるニッケル鉄の化学組成は、下記の表2において表される。
【0059】
【表2】

【0060】
記述される処理における更なる利点は、ニッケル及び鉄に対するニッケルイオン交換処理ステップにおける高い選択性の結果として、ニッケル鉄水酸化生成物中の不純物レベル、そして、従って生成されるニッケル鉄中の不純物レベルが、多数の商業的製造者によって現在達成されているものよりも、そして、ニッケル鉄等級における「超純粋な」ものよりさえ、著しく低いということである。
【0061】
この新たな処理は、完成品のニッケル鉄生成物に鉱石を変換するための処理ステップがより少なくなり、そして、堆積浸出は他の浸出プロセスよりも概して少ない資本で行えるという点で、従来の湿式冶金のルートに勝る更なる効果がある。
【0062】
また、元の鉱石の鉄含有量の一部は最終的なニッケル鉄生成物の成分になる。そして、浸出作用に続く鉄除去のために必要なプラントの容量は、従来の湿式冶金のルートにおける鉄除去の区画よりも小さい。そして、湿式冶金の方法で通常失われている、回収された鉄は、最終的なニッケル鉄生成物への値にも加えられる。
【0063】
<実施例>
[実施例1:硫酸のみでの単一のカラム浸出]
硫酸のみでの堆積浸出をシミュレーションするために、20.1%の水分を有する65.6kgの腐食岩石鉱石は、98%の硫酸で凝集して、この材料を3.35mmから25.4mmの粒子サイズにペレット状にした。この凝集のための酸のドーズ量は、乾燥鉱石1トン当たりで20kgであった。カラムのサイズは、15cmの直径×262cmの高さであった。50g/Lの酸性度を有する硫酸溶液は、カラムに40リットル/(hr・m)のフラックスで供給された。ニッケル抽出は、52日後に94%であった。表3は、この結果を要約している。
【0064】
【表3】

【0065】
[実施例2:リモナイト酸浸出で供給される単一のカラム浸出]
例えば圧力酸浸出(PAL)又は大気での酸浸出(AAL)溶液を含むニッケル及びコバルトの、酸での堆積浸出をシミュレーションするために、20.4%の水分を有する80.4kgの腐食岩石鉱石は、98%の硫酸で凝集して、この材料を3.35mm〜25.4mmの粒子サイズにペレット状にした。この凝集のための酸のドーズ量は、乾燥鉱石1トン当たりで25kgであった。カラムのサイズは、15cmの直径×386cmの高さであった。溶液中にニッケル、コバルト、及び鉄を含むリモナイト圧力浸出からの酸浸出は、カラムに10リットル/(hr・m)のフラックスで供給された。この供給溶液の組成は、表4に示されている。ニッケル抽出は、197日後に76%であった。表5は、この結果を要約している。
【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
[実施例3:対向流浸出]
対向流浸出処理をシミュレーションするために、一群の対向流カラム浸出は、670kgのHSO/トン(t)の鉱石の一定の酸消費量で実行された。この群には、A、B、C、D及びEと名づけられた5つのカラムが含まれる。カラムAは、(第2の浸出廃水液をシミュレーションする)以前のカラム浸出から得られた酸性の中間生成溶液(IPLS)を最初に供給されて第1の浸出をシミュレーションし、そして、100g/リットルのHSOのブランクな硫酸溶液を供給して第2の浸出をシミュレーションして、そして、最終的pH2の希釈HSO溶液でリンスされる。第1の浸出からの生成溶液は、IXでのニッケル回収のために格納された。第2の浸出及びリンス(すすぎ)からのIPLSが、第1の浸出等としてのカラムBに対する供給溶液として使われた。カラムB、C、D及びEが同じ初期条件を有していたので、これらのカラムB、C、D及びEの結果のみが提示される。各カラムの作業時間は、約30日であった。
【0069】
23.1%の水分を有する26kgの腐食岩石の鉱石は、98%の硫酸で凝集して、3.35mmから25.4mmの粒子サイズのペレットにした。凝集のための酸のドーズ量は、乾燥鉱石1トン当たりで25kgであった。カラムのサイズは、10cmの直径×305cmの高さであった。供給フラックスは、40リットル/(hr・m)であった。ニッケル抽出は、80%以上あった。供給鉱石の組成は、表6に示される。Ni、Fe及びMgの抽出量は、3つの異なる方法によって算出されて、表7に示される。第1の浸出作用PLS(表8)の組成によって、このPLSが低いレベルの酸を含み、固体を同調させて、ニッケル回収のためのIXステップに直接供給しうることが示される。
【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
[実施例4:IXでのニッケル回収]
多岩の腐食岩石における対向流カラム堆積浸出から得られるPLSは、Dowex M4195樹脂の250mLの樹脂カラムを介して25mL/分の流速で処理した。ニッケル及びいくらかの鉄は樹脂上に積まれて、これらを他の不純物及びラフィネート中を通って残留する鉄から離隔する。ニッケル及び鉄含有溶出液は、150g/LのHSOでIXカラムを取り除いて得られた。表9は、供給原料、ラフィネート及びNi−溶出液の組成を例示する。溶出液において得られる鉄に対するニッケルの比率は、ニッケル鉄生成に対して良好な供給材料を得るために好適なものである。
【0074】
【表9】

【0075】
[実施例5:対向流IXでのニッケル回収]
240リットルの堆積浸出PLSは、石灰岩によってpH2に中和された。固体/液体分離後に、このPLSは、対向流型作業でのニッケル回収及び不純物分離のためにDowex M4195樹脂で充填されたIXカラムで処理された。樹脂のベッド体積(BV)は、20リットルであった。pH2でのPLSの5つのBV(100リットル)及び2つのBV(40リットル)の洗浄水は、中間のラフィネートを作成するために、カラムに連続的に供給された。中間のラフィネートは、石灰岩によってpH2に中和されて、それから、コバルト色の回収のための最終的なラフィネートを生成するために、第2のカラムに供給された。中和された中間のラフィネートを供給直後に、さらに5つのBV(100リットル)PLSが、中間のラフィネート等を生成するために、同じIXカラムに供給された。完全に積込まれたIXカラムは、それから連続的に2つのBV(40リットル)水で洗浄されて、150g/L HSOの1つのBVで取り除かれて、2つのBV水で洗浄された。高濃度ニッケル及び低濃度酸を含んだ略2分の1のBV(10リットル)溶出液は、ニッケル鉄を生成するための生成物として収集された。低濃度ニッケル及び高濃度酸を含んだ略1つのBV(20リットル)溶出液は、酸性化とともに次のIXサイクルの除去溶液を生成するために収集された。表10は、供給原料、中間のラフィネート、最終ラフィネート及びニッケル溶出液(生成物)の平均濃度を例示する。
【0076】
【表10】

【0077】
[実施例6:ニッケル鉄水酸化沈殿物(NIHP)生成]
実施例5の表10に示される15リットルのNi溶出液(生成物)は、ニッケル鉄水酸化生成物を沈殿させるために、MgCO及びMgOスラリーによって中和された。中和は、2つの段階を含む。すなわち、MgCOを用いたpH2及び80℃で大(パラ)針鉄鉱としての鉄沈殿段階と、MgOを用いたpH7.5でのニッケル沈殿段階である。848グラムのニッケル鉄水酸化生成物は、0.75のNi/Fe比率で、表11に示される組成に生成された。硫黄含有量(2.6%)は、大部分はMgSOとしてマグネシウム成分(1.5%)とバランスした。このことは、フィルターケーキの水分中に同伴するMgSOが存在していたことを示す。
【0078】
【表11】

【0079】
[実施例7:ニッケル鉄水酸化物ペレットの焼成]
ガス状態の脱硫度を確立するために、実施例6において生成されるニッケル鉄水酸化生成物のサンプルは、500℃、1100℃及び1350℃にそれぞれ加熱され、そして、これらの生成物は、化学分析を受けた。この加熱は、特に1000℃より上の範囲で還元によって硫化物を生成しうる、サンプルに含まれる硫酸塩と同様に、鉄及びニッケルの還元を防止するために空気中で行われた。
【0080】
【表12】

【0081】
サンプルを1100℃で2時間加熱保持することによって、実質的に全ての硫黄が除去されたことを見出した。より高い温度で加熱することによる利点は得られなかった。この発見は、任意の後続の処理ステップにおいて、硫黄含有量が有意な要因ではなく、それ故、可能な溶解段階において必要とされるスラグにおける要求が低減されるという点で、重要である。
【0082】
[実施例8:焼成ニッケル鉄水酸化生成物の小規模の還元]
水素及び一酸化炭素還元に関連する還元率を決定するために、小規模の実験が、上述の実施例7に記述されるステップを介して生成された1.1gの焼結材料を使用して行われた。ペレットの還元は、サーモ重量計の装置(TGA)で行われた。
【0083】
還元において使用したガスの組成は、50容量パーセントのH−Ar又は50容量パーセントのCO−Arであった。ガスの全体の流量は、4L/minであった。ガスの組成は任意に選択された、しかし、確実に水素が用いられる場合に、ラージスケールの処理における水素の濃度はより高くなる傾向があり、後述するものよりも高い還元率に移行する。
【0084】
還元における選択温度は、1000℃であった。ニッケル及び酸化鉄の還元の間、酸素は、金属ニッケル及び鉄を最終的に形成するために、段階的に除去される。それ故、(酸素の)質量損失は、TGAによってモニタされ、そして、還元の程度はサンプルの本来の質量のパーセンテージとして算出されうる。
【0085】
及びCOによる還元中における重量変化は、図2において表される。
【0086】
2つの実験は、還元の再現性をテストするために水素を使用して行われた。実験は、水素による還元が一酸化炭素によるものの略2.5倍速いことを示した。達成された重量損失は、水素還元後で25.05%であり、そして、CO還元後で24.5%であった。
【0087】
[実施例9:焼成されたニッケル鉄酸化物ペレットの還元]
乾燥され、ペレット状にされ、焼成された、実施例8における生成材料を焼結させた後に得られたニッケル鉄酸化物の質量は、480.4グラムであった。このニッケル鉄酸化物は、960℃のサーモ重量計の装置中において、15L/minのガス流量で、60容量パーセントの一酸化炭素と40%窒素との混合ガスを使用して、還元した。
【0088】
サンプルのニッケル及び鉄を還元するために、略60分かかった。還元中における重量損失は、25.1%であった。ニッケル鉄酸化物ペレットの本来の寸法から略60%の収縮が、観察された。
【0089】
実質的な焼成は、還元の間、起こらなかった。還元されたペレットの組成は、表13に示される。
【0090】
【表13】

【0091】
生成物のマグネシウム含有量は、ニッケル鉄において見出されるものよりも高くなりうるが、マグネシウムはスラグ工程において必要であるため、ステンレス鋼製造に対して好適な材料である。
【0092】
この材料は、市場向きの生成物として見なされうる。
【0093】
[実施例10:ニッケル鉄ペレットの溶解及び精製]
高品質のニッケル鉄を生成するために、還元ペレットは、溶解及び精製されなければならない。溶解段階の主目的は、還元ニッケル鉄の非金属含有物を取り除くことであり、そして、これらの含有物を溶かす能力を有するスラグを添加しなければならない。主要な含有物は、MgOであり、そして、より小さい程度で、CaO及びSiOである。
【0094】
MgOは、その耐火性の性質、すなわち高い溶融点(2822℃)及び熱力学安定性のため、一般的に用いられるスラグに限定的な程度のみで溶解する。スラグ候補は、その質量を最小にするために、MgOの可能な溶解度と同程度でなければならなかった。同時に、目標とされた溶解温度が1550及び1580℃の間にあったので、その液相線温度は1400から1450℃の範囲でなければならなかった。
【0095】
この試験において使用されたフラックスは、41%CaO−41%Al−18%CaFであった。スラグは、プラチナるつぼにおいて1600℃の空気中でプレ溶解して、銅板上で急冷された。
【0096】
実施例9において生成される還元ニッケル鉄は、高温MoSi抵抗炉において溶解された。194.4グラムの還元ニッケル鉄及び41.6gのスラグは、Alるつぼにおいて導入されて、5%H−Nガスのストリーム中で1580℃に加熱された。この溶融系は、2時間その温度に維持されて、それから還元状況下において冷却された。
【0097】
溶解し精製した後のニッケル鉄の化学組成は、表14に表される。
【0098】
【表14】

【0099】
得られたニッケル鉄は、30ppm以下の硫黄を含有しており、これは、FeNi40 LC及びFeNi40LCLPのニッケル鉄の等級に対してISO 6501によって定められる最大の制限よりも10分の1の低さである。標準規格による最大基準が300ppmである一方で、炭素含有量は100ppm以下である。
【0100】
上述の説明は、本発明における好適な実施の形態の例示を意図したものである。多くの変形又は変更が、本発明の趣旨から逸脱することなくなされうることは、当業者によく理解されているべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明の処理に従う好適なフローシートを例示する。
【図2】図2は、還元体である水素及び一酸化炭素を使用してニッケル鉄酸化物ペレットの還元中の重量変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ニッケル鉄水酸化生成物からニッケル鉄生成物を生成する方法であって、
前記方法は、
a)混合ニッケル鉄水酸化生成物を提供するステップと、
b)ニッケル鉄水酸化物ペレットを生成するために前記混合ニッケル鉄水酸化生成物をペレット化するステップと、
c)混合ニッケル鉄酸化物ペレットを生成するために前記ニッケル鉄水酸化物ペレットを焼成するステップと、
d)ニッケル鉄ペレットを生成するために高温で一つ以上の還元性ガスによってニッケル鉄酸化物ペレットを還元するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記混合ニッケル鉄水酸化生成物は、イオン交換処理においてニッケル及び鉄の選択的回収に続いて生成される中間生成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニッケル及び鉄が、イオン交換処理において回収され、
前記イオン交換処理は、
a)少なくともニッケル及び鉄を含む生成液を提供するステップと、
b)イオン交換ステップにおいてイオン交換樹脂上に選択的に前記ニッケル及び鉄を生成液から抽出するステップと、
c)ニッケル及び鉄を含む溶出液を生成するために前記樹脂から酸で前記ニッケル及び鉄を溶出するステップと、
d)前記溶出液を中和剤で処理することによって、混合ニッケル鉄水酸化物として前記ニッケル及び鉄を沈殿させるステップと、を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記中和剤は、酸化マグネシウム及び/又はソーダ灰である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
a)前記溶出液中の遊離酸は、最初に中和剤で部分的に中和され、
b)前記部分的に中和された溶出液から使用されていない中和生成物を分離して、
c)前記ニッケル及び鉄を混合ニッケル鉄水酸化物として沈殿させるために、前記溶出液を7.5を超えるpHに更に中和する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶出液中の遊離酸を部分的に中和するために使用される中和剤は、石灰岩である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記溶出液のpHを7.5を超えるまで上げるために用いる中和剤は、酸化マグネシウム及び/又はソーダ灰である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ニッケル及び鉄を前記樹脂から剥ぎ取るために使用される前記酸は、硫酸又は塩酸塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
硫酸が、前記ニッケル及び鉄を前記樹脂から剥ぎ取るために使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記混合ニッケル鉄水酸化生成物は、
湿式のケーキの形で前記イオン交換溶出液から回収されそして乾燥されて、ペレタイザ又は押出機中で、有機結合材及び水によってペレット状にされる、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記結合材は、セルロース溶液、澱粉、又は、温度が500℃を上回るときに破壊される、他の適切な粘稠性有機炭化水素ポリマーから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ニッケル鉄水酸化物ペレットは、5mm及び20mm直径の間にある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ニッケル鉄水酸化物ペレットは、略800℃から1300℃の温度での酸化状態下で焼成されて、実質的に硫黄を含まない混合ニッケル鉄酸化物ペレットに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ニッケル鉄水酸化物ペレットは、窯、移動火格子、高炉又はマルチ炉床炉中において焼成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化状態は、反応器内で又は堅牢なベッドを通して、空気又は他の酸化ガスを添加することによって提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ペレット状にされたニッケル鉄水酸化生成物は、焼成の前に、略100℃から120℃の温度で乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ニッケル鉄酸化物ペレットは、略800℃から1100℃の温度で、還元性ガスによって還元される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ニッケル鉄酸化物の焼成されたペレットを還元するための還元性ガスは、水素、一酸化炭素、メタン、改質天然ガス又はこれらの混合物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン交換樹脂は、ビス・ピコリルアミン官能基を有する樹脂であり、及び、前記イオン交換処理は、ニッケル及び鉄を選択的に保持して他の不純物を除去するために、略2のpHで操作される、請求項3に記載の方法。
【請求項20】
前記焼成されたニッケル鉄酸化物ペレットは、多孔質ペレットである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
ニッケル回収処理においてニッケル、コバルト及び鉄を含む生成液からニッケル鉄生成物を生成するための方法であって、
a)ニッケル、コバルト及び鉄を少なくとも含む生成液を提供するステップと、
b)イオン交換樹脂がニッケル及び鉄を選択的に吸収するイオン交換処理を前記生成液に行うステップと、
c)前記ニッケル及び鉄を取り込んだ溶出液を生成するために、酸性溶液で前記樹脂から前記ニッケル及び鉄を剥ぎ取るステップと、
d)混合ニッケル鉄水酸化生成物を沈殿させるために、前記取り込んだ溶出液を中和するステップと、
e)ニッケル鉄水酸化物ペレットを生成するために前記混合ニッケル鉄水酸化生成物をペレット化するステップと、
f)混合ニッケル鉄酸化物ペレットを生成するために前記ニッケル鉄水酸化物ペレットを焼成するステップと、
g)鉄ニッケルペレットを生成するために高温で一つ以上の還元ガスによって前記ニッケル鉄酸化物ペレットを還元するステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
ニッケル、コバルト及び鉄を少なくとも含む前記生成液は、
ラテライト鉱石の高圧での酸浸出、強化圧力での酸浸出、大気での酸浸出、又は堆積浸出からの生成液、又は、硫化物鉱石を含むニッケルの圧力酸浸出からの生成液、又は、これらの任意の組合せ、である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
任意に存在する銅の大部分は、前記イオン交換処理の前に前記生成液から除去される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ニッケル及び鉄は、前記イオン交換処理によってコバルトから分離され、前記コバルトの大部分は、ラフィネート中に残存している、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記コバルトは、溶媒抽出技術、イオン交換技術、硫化物、炭酸塩又は水酸化物としての沈殿技術、又は他の従来の技術によって、前記ラフィネートから回収される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
高純度なニッケル鉄生成物を生成する方法であって、
a)請求項1または21に記載の方法によって生成される多孔性ニッケル鉄ペレットを提供するステップと、
b)任意の含有物を溶解するためにフラックスを添加するステップと、
c)高純度ニッケル鉄生成物を生成するために少なくとも1500℃の温度で炉において前記生成物を溶解するステップと、
を含む、方法。
【請求項27】
前記含有物は、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化ケイ素、カルシウムオキサイド及び酸化クロムを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記フラックスは、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化ケイ素、カルシウムオキサイド又は酸化クロムに対する高い溶解度、及び、1400℃及び1450℃の間の液相線温度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記フラックスは、CaO−Al−CaF系を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1または21に記載の方法によって生成される多孔性ニッケル鉄生成物であって、
前記ニッケル鉄ペレットは、1%−10%の間のマグネシウムを含む、多孔性ニッケル鉄生成物。
【請求項31】
請求項1または21に記載の方法によって生成される多孔性ニッケル鉄生成物であって、0.4以下の硫黄含有量を有し、0.01%から2.5%の間の炭素含有量を有する、多孔性ニッケル鉄生成物。
【請求項32】
0.4以下の硫黄含有量、0.01%及び2.5%の間の炭素含有量、1%及び10%の間のマグネシウム含有量、を有する多孔性のニッケル鉄生成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−531842(P2008−531842A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556464(P2007−556464)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000225
【国際公開番号】WO2006/089358
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507220073)ビーエイチピー・ビリトン・エスエスエム・テクノロジー・ピーティーワイ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】