説明

ニューエルの上で移動するハンドレールを支持するニューエルガイド

本発明は、閉じた曲線状をなす形状を有し、ハンドレールの内部表面に接触する外側表面を含むフリクションベルトと、フリクションベルトの内側表面を支持してフリクションベルトがその周りをエンドレスに移動することを可能にする支持部材とを備えるハンドレーを支持するためのニューエルガイドを提供する。支持部材は、その上部に1対のプレート部材を有するニューエルフレームを含み、プレート部材は、相互に分離されニューエルフレームの長手方向に延在する。フリクションベルトの内側表面と接触する凹表面を有する中間ガイドが、1対のプレート部材の上に取り付けられる。1対の接合ガイドがニューエルフレームに中間ガイドの両端部に隣接して取り付けられ、その接合ガイドの一端部が、フリクションベルトのエンドレスな連続移動を支持するための支持表面を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に乗客運搬装置(例えばエスカレータ又は動く歩道)に関し、より具体的には乗客運搬装置のニューエルの上で移動するハンドレールを支持するためのニューエルガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ又は動く歩道は、人又は物品を比較的短距離の間で輸送することができる乗客運搬装置の代表的な例として知られている。エスカレータは、階段状の踏み段及び乗客の手によって掴まれるハンドレールが自動的に動かされるシステムである。動く歩道では、「パレット」と一般的に呼ばれるプレートのような踏み段及びハンドレールが自動的に駆動される。
【0003】
その上に人又は品物を載せて運ぶ踏み段は、運転時に連続して動かされる。ハンドレールも踏み段の横に位置するバラストレードの端部の上で連続移動する。踏み段及びハンドレールのエンドレスな動きの移動速度は、乗客の安全のために同一であるべきである。
【0004】
これらシステムを設計する際に考慮するべき重要な要素は、運転時の騒音及び振動を減少させて乗客の乗り心地を良くすることである。これは、システムが、例えば転がり接触運動、回転運動又は摺動接触運動を特徴とする数多くの構成部品を含むからである。
【0005】
図1に従来技術によるエスカレータ12が示されている。そこに示されているようにハンドレール16は、人の手に対応するように構成される。ハンドレール16は、バラストレード18の端部に取り付けられるガイド28の最外部分上に保持され、ステップ14と同じ速度で移動される。ハンドレール16がガイド28の上を移動するときに、ハンドレール16には摩擦抵抗が及ぼされるのが普通である。抵抗は、ハンドレール16の実質上直線部分にあっては大きさの点で強くはない。しかし、抵抗は、ハンドレール16の曲線部分、例えばエスカレータ12のニューエル26ではハンドレール16の張力ゆえに際立って増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2に示されているように、このような摩擦抵抗を削減させる一つの試みは、ニューエル26に複数のローラ32を与えることである。しかし、ハンドレール16の逸脱を防止するために与えられるハンドレール16の張力により、ニューエル26のローラ32は連続して一方向に負荷を受ける。
【0007】
図3に示されているように、一方向に掛かる負荷は、ローラ32のシャフト58を支持するジャーナル54を容易に損傷し、したがって深刻な騒音をもたらす。さらに長時間稼動した後には、塵埃、(ハンドレールの内面の織物の磨耗によってもたらされる)破片、材料(例えばハンドレールの駆動装置から出たゴム又はウレタン小片)その他が、ローラ32間の空き領域に蓄積し、次いで固まる可能性がある。さらにこのような材料がシャフト58とジャーナル54の間に入り込み、ローラ32の回転上の問題、深刻な騒音又は振動を引き起こす。
【0008】
本発明の一目的は、ローラアセンブリを使用せずに、乗客運送装置のニューエルの周りでハンドレールを支持し案内するためのニューエルガイドを提供することである。そのニューエルガイドは、運転中に発生することもある摩擦抵抗、騒音又は振動を著しく削減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、ハンドレールの内部表面と接触する外側表面を有する、閉じた曲線状をなす形状のフリクションベルトと、フリクションベルトの内側表面を支持して、フリクションベルトがその周りをエンドレスに移動することを可能にするための支持手段とを備える、ハンドレールを支持するためのニューエルガイドを提供することによって達成することができる。
【0010】
本発明の一態様によればフリクションベルトは、内側層及び内側層より高い摩擦係数を有する外側層を含む。
【0011】
本発明の他の態様によれば、支持手段は、上部に1対のプレート部材を有するニューエルフレームであって、上記1対のプレート部材が、互いに分離されるとともに、該ニューエルフレームの長手方向に延在するニューエルフレームと、1対のプレート部材上に取り付けられ、フリクションベルトの内側表面に接触する凹表面を有する中間ガイドと、中間ガイドの両端部に隣接してニューエルフレームに取り付けられた1対の接合ガイドであって、接合ガイドの各端部がフリクションベルトのエンドレスな移動を支持するための支持面を提供する接合ガイドと、を備える。
【0012】
本発明の他の態様では、その中を通ってフリクションベルトが移動する通路が、1対のプレート部材の下側に形成される。
【0013】
本発明の他の態様では、1対のプレート部材は、その間に形成された隙間を有し、ニューエルガイドの組立て工程中にフリクションベルトがこの隙間を通して上記通路に導入される。
【0014】
本発明の他の態様では、ニューエルフレームは、ニューエルフレームから横方向に外側に延びる1対のウィングを有し、ハンドレールは、ウィングを覆って嵌合することができる1対のフック部分を有する。
【0015】
本発明のさらに他の態様では、接合ガイドの端部は、断面において曲線状の形状を有する。
【0016】
本発明のさらに他の態様では、接合ガイドは、ねじを用いてニューエルフレームに固定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、乗客運搬装置においてハンドレールを支持しガイドするための本ニューエルガイドの好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明の説明で「ニューエル」という用語は、ハンドレールが連続移動しているとき、ハンドレールが湾曲した形状で移動する乗客運搬装置の様々な部分(図1に示されているエスカレータの、例えば乗り口及び降り口近傍に形成されたニューエル26)を意味するものとする。ニューエルは、その中をハンドレールが湾曲した形状で通過する、ハンドレールを移動させるための駆動プーリ(図示せず)に隣接する乗客運搬装置の部分を含むこともある。
【0019】
図4及び図5に、本発明による、ハンドレールを支持しガイドするためのニューエルガイド100が示されている。
【0020】
ニューエルガイド100は、フリクションベルト104、ニューエルフレーム101、中間ガイド102及び1対の接合ガイド103を含む。
【0021】
図6を参照すると、フリクションベルト104は、それがハンドレール106の内部表面に接触しているときハンドレール106と共に移動する部材である。フリクションベルト104は、エンドレスに連続移動する。本発明の好ましい実施形態では、フリクションベルト104は、内側層104b及び内側層104bと一体的に形成された外側層104aを有する。外側層104aは、外側層104aがハンドレール106の内部表面上でスリップすることを困難にするのに十分な大きさの摩擦係数を有する。その結果、ハンドレール106が移動するとき、フリクションベルト104はハンドレール106によって回転され、転がり接触となる。内側層104bは、フリクションベルト104のエンドレスな連続移動を支持するために、支持部材と接触する状態になる。フリクションベルト104の支持部材に対する相対的な軽い動きを達成するために、内側層104bは低い摩擦係数を有する。
【0022】
変形形態として、外側層104aが低い摩擦係数を有することもある。この場合ハンドレール106の内部表面と外側層104aの間にすべり接触が生ずる。
【0023】
他の変形形態として、内側層104bと、内側層104bを支持するための部材102、103dの間にフリクションベルトベルト104の相対的な動きのために潤滑剤が使われることもあり、これについては下記で詳細に述べる。
【0024】
さらに他の変形形態として、フリクションベルト104が2つの部材、つまり互いに分離した、好ましい実施形態の外側層及び内側層にそれぞれ対応する外側部材及び内側部材を有することもある。内側部材及び外側部材は、半径方向で互いに接触して配置される。この場合、ハンドレール106の内部表面にも接触して配置される外側部材はより高い摩擦係数を有する。一方、フリクションベルトの連続移動を支持するための支持部材と接触して配置される内側部材は、低い摩擦係数を有する。
【0025】
フリクションベルト104のエンドレスな連続移動を支持するための支持部材の機能は、ニューエルフレーム101、中間ガイド102及び接合ガイド103を通して実行される。
【0026】
図7に示されているように、ニューエルフレーム101は、その中にニューエルのバラストレード(図示せず)が嵌合する凹部101bを有する。その凹部101bがバラストレードの縁部を覆って嵌合するニューエルフレーム101は、フリクションベルト104及びハンドレール106を支持するためのベース構造を提供する。
【0027】
ニューエルフレーム101は、ニューエルフレーム101の上部から垂直に延びる1対の側壁101f、側壁101fの端部から横方向外側に延びる1対のウィング101c、及び側壁101fの端部から横方向内側に延びる1対のプレート部材101dも有する。この構成で、凹部101bの上部、1対の側壁101f、及び1対のプレート部材101dが、通路101aを画定し、これを通してフリクションベルト104がエンドレスに連続動作する。
【0028】
中間ガイド102、接合ガイド103及びハンドレール106のフック部分102a、103b、106aは、1対のウィング101cの周りで保持され、これらの構成部品102、103、106、特にハンドレール106がニューエルフレーム101から外れないようにする。ハンドレール106のニューエルフレームからの逸脱は、(上述のように)ハンドレール106の両端部に形成されたフック部分106aをニューエルフレーム101のウィング101cを覆って嵌合することによって防止されるので、ハンドレール106の脱落防止を目的にハンドレール106の張力を著しく高くする必要はない。
【0029】
図7に示されているように、1対のプレート部材101dの間に形成されているのは、隙間101eであり、ニューエルガイド100の組立て工程においては、その隙間を通ってフリクションベルト104が通路101aに導入される。プレート部材101dの下側表面は、フリクションベルト104の内側層104bに接触することもあるので、低い摩擦係数を有する。本発明の好ましい実施形態では、プレート部材101dの上側表面はウィング101cの上側表面と面一に配置される。しかし、それらは互いに異なるレベルを有することもある。
【0030】
中間ガイド102は、ウィング101c及びプレート部材101dの上側表面上に取り付けられている。中間ガイド102は、その両端部に形成された1対のフック部分102aを有し、このフック部分はウィング101cを包み込む形状をしている。中間ガイド102は、上側表面の中央部に形成された凹表面102bを有し、その窪んだ表面は、フリクションベルト104の内側層104bに接触する。凹表面102bの深さは、この凹表面102bに配置されたフリクションベルト104の外側層104a上にハンドレール106が完全に戴置されたときに、フリクションベルト104の外側層104aとハンドレール106の内部表面の接触だけが可能になるように決められる。一方、中間ガイド102の残りの部分の表面は、凹表面102bを除きハンドレール106の内部表面に直接に対向しており、また接触することもあり得る。したがってハンドレール106の内部表面との接触又はフリクションベルト104の内側層104bとの接触を考慮して、中間ガイド102の上側表面は、凹表面102bを含め低い摩擦係数を有することが望ましい。
【0031】
接合ガイド103は、ニューエルフレーム101上に中間ガイド102の一端部に隣接して取り付けられる。フリクションベルト104の張力は、接合ガイド103の位置に依存して違ってくるので、接合ガイド103は、フリクションベルト104の張力がエンドレスな連続動作にとって適切になるように、ニューエルガイド101上に位置決めするべきである。
【0032】
図6に示されているように接合ガイド103は、接合ガイド103の両端部に形成された1対のフック部分103bを備え、一方、接合ガイド103の中央からは突起103cが下方向に突き出しており、上側表面103dはフリクションベルト104の内側層104bに接触する。突起103cの下側表面もフリクションベルト104の内側層104bに接触する。
【0033】
図9に示されているように、突起103cの上側表面103d及び下側表面と同様に、接合ガイド103の一端部103aも、フリクションベルト104の一端部でフリクションベルト104に接触し、ここでフリクションベルト104の移動方向が反転する。接合ガイド103の端部103aは、断面において湾曲形状を有することが好ましい。接合ガイド103の端部103aはフリクションベルト104との摩擦を減少するために低い摩擦係数を有する。
【0034】
図5に示されているように接合ガイド103は、ねじ105を使用してニューエルフレーム101に直接固定されている。変形形態として、中間ガイド102の一端をその間に配設して、つまり挟んで、接合ガイド103をニューエルフレーム101に固定してもよい。
【0035】
ハンドレール106を支持し、ガイドするための、上記の方式で組み立てられた本発明のニューエルガイド100の動作について下記で述べる。
【0036】
完全に組み立てられた状態では、フリクションベルト104は、通路101a及び凹表面102bによってもたらされる通路を通して移動することができるように、両端で1対の接合ガイド103によって支持されおり、したがってエンドレスに連続移動する。
【0037】
ハンドレール106が駆動プーリ(図示せず)によって動かされると、ハンドレール106の内部表面と接触して配置されているフリクションベルト104は、高い摩擦係数ゆえにハンドレール106と共に移動する。同時にフリクションベルト104の内側層104bは、中間ガイド102の凹表面102b及び接合ガイド103の上側表面103d上を滑らかに滑動する。フリクションベルト104とハンドレール106は、その動作中に接合ガイド103の上側表面103d上で分離し始める。その後フリクションベルト104は、接合ガイド103の端部103aを通過した後に他方の接合ガイド103に向かって、そして突起103cの下側表面に向かって進み、それによってエンドレスに連続移動する。このときフリクションベルト104の内側層104b及びこの内側層104bに接触する部分、例えば接合ガイド103の端部103a、接合ガイド103の上側表面103d、突起103cの下側表面、中間ガイド102の凹表面102b及びプレート部材101dが低い摩擦抵抗を有しているので、それらの間のすべり接触はフリクションベルト104の前進に対して高いレベルの抵抗を引き起こさず、したがってフリクションベルト104の静かな前進をもたらす。
【産業上の利用可能性】
【0038】
ニューエルの上で移動するハンドレールを支持しガイドするための本発明のニューエルガイドによれば、ハンドレールの脱落を防止する目的のためにハンドレールに高いレベルの張力を与える必要がないので、ハンドレールの前進に対抗する抵抗を減少させることができる。したがって、ハンドレールを移動させるためにより小さな容量を有する駆動ユニットを使用することができる。
【0039】
本ニューエルガイドは、動作中の騒音及び振動が削減されるので、ローラを使用する従来技術によるニューエルガイドに比べより良い乗り心地を提供できる。
【0040】
さらに本ニューエルガイドは、ローラ及び付属物に関連する従来技術によるニューエルガイドの問題を有さないため、より長い耐用年数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来技術によるエスカレータの斜視図である。
【図2】図1に示されているエスカレータのニューエルの立面図である。
【図3】図1に示されているエスカレータのニューエルの断面図である。
【図4】本発明による、ハンドレールを支持し、ガイドするためのニューエルガイドの斜視図である。
【図5】図4に示されているニューエルガイドの分解斜視図である。
【図6】図4で線6−6’に沿って取ったニューエルガイドの断面図である。
【図7】図4で線7−7’に沿って取ったニューエルガイドの断面図である。
【図8】組み立てた状態にある、本発明によるハンドレールのためのニューエルガイドの斜視図である。
【図9】フリクションベルトに係合している接合ガイドの側断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドレールを支持するためのニューエルガイドであって、
閉じた曲線状をなす形状を有し、ハンドレールの内部表面と接触する外側表面を含むフリクションベルトと、
上記フリクションベルトの内側表面を支持して、上記フリクションベルトがその周りを連続移動することを可能にするための支持手段と、を備えるニューエルガイド。
【請求項2】
上記フリクションベルトが、内側層と、上記内側層の摩擦係数より高い摩擦係数を有する外側層を備える、請求項1に記載のニューエルガイド。
【請求項3】
上記支持手段が、
上部に1対のプレート部材を有するニューエルフレームであって、上記1対のプレート部材が、互いに分離されるとともに、該ニューエルフレームの長手方向に延在するニューエルフレームと、
上記1対のプレート部材上に取り付けられ、上記フリクションベルトの内側表面と接触する凹表面を有する中間ガイドと、
上記中間ガイドの端部に隣接して上記ニューエルフレームに取り付けられた1対の接合ガイドであって、該接合ガイドの一端部が上記フリクションベルトの連続移動を支持するための支持面を提供する接合ガイドと、を備える、請求項1に記載のニューエルガイド。
【請求項4】
上記フリクションベルトが中を通って移動する通路が、上記1対のプレート部材の下に形成される、請求項3に記載のニューエルガイド。
【請求項5】
上記1対のプレート部材が、それらの間に形成された隙間を有し、上記ニューエルガイドの組立て工程中に上記フリクションベルトが上記隙間を通って上記通路に導入される請求項4に記載のニューエルガイド。
【請求項6】
上記ニューエルフレームが、上記ニューエルフレームから横方向外側に向かって延びる1対のウィングを有し、ハンドレールが、上記1対のウィングを覆って嵌合可能なフック部分を有する請求項3に記載のニューエルガイド。
【請求項7】
上記接合ガイドの上記端部が、断面で湾曲形状を有する請求項3に記載のニューエルガイド。
【請求項8】
上記接合ガイドがねじを使用して上記ニューエルフレームに固定される請求項3に記載のニューエルガイド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2007−517748(P2007−517748A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549128(P2006−549128)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000111
【国際公開番号】WO2005/068341
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】