説明

ニンニク成分を含有する高血圧の予防及び/又は治療用組成物

【課題】 本発明は、高血圧の予防及び/又は治療に有用な組成物を提供する。
【解決手段】 γ−グルタミル−S−アリルシステインとガーリックオイルとを含有することを特徴とする、高血圧の予防及び/又は治療用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧の予防及び/又は治療用の組成物、並びにこの組成物の食品及び医薬としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧症は、心臓や血管の病変を促し、心臓病や脳卒中などにおいて最も重視すべき危険因子と考えられている。高血圧症の治療法としては、食事療法、適度な運動といった非薬物療法、あるいはβ遮断薬やカルシウム拮抗薬といった薬物療法などが行われてきた。しかし、食事制限、運動療法では高血圧を改善できない場合も多く、降圧剤の効果も症例によって一様ではない。さらに、降圧療法は原則として長期にわたって継続する必要があるので、副作用の恐れのない、安全な療法が望まれてきた。
そのような状況下で、血圧を低下させる天然由来の成分に注目が集まってきた。
【0003】
例えば、特許文献1には黒霊芝の抽出物を含有する高血圧抑制剤が、特許文献2には高血圧予防食及び高血圧症予防改善剤として有用なカフェ酸や食物繊維などを含有する飲食用組成物が、特許文献3にはコラーゲン及びコラーゲン分解物などを含有する高血圧症の予防又は治療用医薬及び食品組成物が、それぞれ記載されている。
【0004】
ニンニクは、香辛料として広く用いられているが、一方で民間薬としても知られており、動脈硬化症、肺結核、及び気管支炎の治療などに広く用いられている。特許文献4には、ニンニク抽出物を有効成分として含んでなるアルコール摂取後の不快症状を改善または予防する組成物が記載されている。
【特許文献1】特開2003−104904号公報
【特許文献2】特開2002−154977号公報
【特許文献3】特開2001−26753号公報
【特許文献4】特開平10−158183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高血圧の予防及び/又は治療に有用な組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ニンニクの薬理作用を研究する過程で知見を得たものであり、γ−グルタミル−S−アリルシステインとガーリックオイルとを併用した医薬及び食品を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、γ−グルタミル−S−アリルシステインとガーリックオイルとを併用することで優れた血圧低下作用が現れ、高血圧の予防又は治療に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、γ−グルタミル−S−アリルシステインとガーリックオイルとを含有することを特徴とする、高血圧の予防及び/又は治療用組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は高血圧に対して低下作用を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用されるγ−グルタミル−S−アリルシステインは、ニンニクから慣用の方法で抽出し精製して得ることができるが、有機化学的合成手法、酵素若しくは微生物を用いた生物学的手法、又はこれら手法を組み合わせた方法などにより合成して得てもよい。
【0010】
本発明で使用されるニンニクは、ネギ属ユリ科に属する植物(Allium sativum L.)である。
ニンニクには、γ−L−グルタミル−S−アリル−L−システイン以外に、アリイン、アリチアミン、スコルジニンA、シトラール、ゲラニオール、リナロール、α−及びβ−フェランドレン、プロピオンアルデヒド、イヌリン、アルギニン、並びにクエン酸などが含有されている。
アリインは、ニンニクに含まれる酵素のアリイナーゼの作用により刺激性成分のアリシンに変化する。その他に、生ニンニクの加工処理により、ジアリル−ジスルフィドなどのアリルスルフィド類、ビニルジチイン、アホエン、S−アリルシステイン、又はS−アリルメルカプトシステインなどが生じてくる。
【0011】
本発明ではニンニクとして、生のニンニクをそのままか、又は皮をむいたものを使用してもよく、あるいは生ニンニクを加工処理したものなどを使用してもよく、特に制限されない。ニンニクの加工処理方法として、例えば、乾燥後粉末化したり、又は加熱したり、蒸したり、マイクロ波に照射させたり、酒若しくはアルコールに漬けたり、熟成させたりする方法が挙げられるが、これら方法を組み合わせて使用してもよい。
本発明ではこれらのニンニクを2種以上併用してもよい。本発明では、熱を加えず自然に乾燥させたもの、例えば、収穫時よりも水分が30%程度減少したニンニクを使用してもよい。
【0012】
当業者は、本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインを、慣用の方法でニンニクから単離することにより得ることができる。
【0013】
当業者は、本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインを、従来の有機化学的合成手法に従い得ることもできる。あるいは、以下に示す方法により得ることもできる。
N−(tert−ブトキシカルボニル)−グルタミン酸 1−tert−ブチルエステルとS−アリルシステインとを、水溶性カルボジイミド試薬の存在下、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒中で常温にて反応させる。この反応混合物に水及びエーテルを加えて分配し、水−エーテル層を分取する。この水−エーテル層を蒸発させて残留物を得、これをトリフルオロ酢酸(TFA)で脱保護させることにより、本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインを得る。
原料のN−(tert−ブトキシカルボニル)−グルタミン酸 1−tert−ブチルエステル及びS−アリルシステインは、市販されているか又は当業者が従来技術を用いることで容易に製造することができる。
【0014】
本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインには、γ−グルタミル−S−アリルシステインの個々の立体異性体、例えば、光学異性体(鏡像異性体又はエナンチオマー)又はジアステレオ異性体(ジアステレオマー)、あるいはこれらの立体異性体の混合物も包含される。
光学異性体として、γ−DL−グルタミル−S−アリル−L−システイン、γ−DL−グルタミル−S−アリル−D−システイン、γ−D−グルタミル−S−アリル−DL−システイン、及びγ−L−グルタミル−S−アリル−DL−システインなどが例示され、またγ−L−グルタミル−S−アリル−L−システイン、γ−L−グルタミル−S−アリル−D−システイン、γ−D−グルタミル−S−アリル−D−システイン、及びγ−D−グルタミル−S−アリル−L−システインなども例示される。
立体異性体の混合物として、γ−DL−グルタミル−S−アリル−DL−システインなどのラセミ体が例示される。
これらの立体異性体は、慣用の手段、例えば、キラル合成又は光学分割により得ることができる。
γ−L−グルタミル−S−アリル−L−システインは、ニンニクに通常含有される成分であることから、ニンニクから抽出し精製して得ることができる。
【0015】
本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインには、γ−グルタミル−S−アリルシステインの塩も包含される。γ−グルタミル−S−アリルシステインの塩を以下に例示する。
(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、又はリン酸などの無機酸とで形成されるγ−グルタミル−S−アリルシステインの酸付加塩;
(2)ギ酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グリコヘプタン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、又はトリフルオロ酢酸などの有機酸とで形成されるγ−グルタミル−S−アリルシステインの酸付加塩;
(3)γ−グルタミル−S−アリルシステインのカルボキシル基の少なくとも一つにある解離し得る水素イオンが、金属イオン、例えば、リチウム、ナトリウム、若しくはカリウムなどのアルカリ金属イオン、又はマグネシウム若しくはカルシウムなどのアルカリ土類金属イオンに置き換わることによって形成されるγ−グルタミル−S−アリルシステインの塩基付加塩;
(4)有機塩基又は無機塩基と配位結合したときに形成されるγ−グルタミル−S−アリルシステインの塩基付加塩。
上記有機塩基として、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、及びトロメタミンなどが例示される。上記無機塩基として、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムなどが例示される。
【0016】
本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインには、γ−グルタミル−S−アリルシステインのエステルも包含される。
γ−グルタミル−S−アリルシステインのエステルとして、γ−グルタミル−S−アリルシステインのカルボキシル基の少なくとも一つにある水素原子が炭化水素基に置き換えられたもの、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、モルホリノエタノールエステルなどが挙げられる。
【0017】
本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインには、γ−グルタミル−S−アリルシステインの溶媒和物も包含される。例えば、前述のγ−グルタミル−S−アリルシステインの塩の溶媒和物などである。
γ−グルタミル−S−アリルシステインの溶媒和物として、γ−グルタミル−S−アリルシステインの水和物などが例示される。
【0018】
本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインには、γ−グルタミル−S−アリルシステインのプロドラッグも包含される。γ−グルタミル−S−アリルシステインのプロドラッグとして、カルボキシル基のエステル(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステルなど);アミノ基のN−アシル誘導体(例えば、N−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基及びエナミノン;ケトン基のオキシム、アセタール、ケタール、及びエノールエステルなどが例示される。
【0019】
本発明のγ−グルタミル−S−アリルシステインには、γ−グルタミル−S−アリルシステインの配糖体も包含される。γ−グルタミル−S−アリルシステインと配糖体を形成する糖として、果糖、ブドウ糖、及びキシロースなどの単糖;ショ糖及びゲンチオビオースなどの二糖;並びに数種の単糖が結合したオリゴ糖などが例示される。
【0020】
本発明で使用されるガーリックオイル(ニンニク油ともいう)は、ニンニクから慣用の方法で得ることができる。例えば、ニンニクの鱗茎から、水蒸気蒸留法;圧搾法;石油エーテル又はアルコール等の有機溶剤による溶剤抽出法;油脂等の吸着による油脂吸着法;プロパン又はブタン等の液化ガスによる液化ガス抽出法;超臨界抽出法等によって得ることができる。以下に一例を示す。
ニンニクの鱗茎を水と一緒にミキサーで磨砕してホモジネートを得、例えば室温で1時間放置してから、このホモジネートを水蒸気蒸留にかけて油性成分を含む蒸留液を得る。この蒸留液にヘキサンなどの抽出溶媒を加え、水層と溶媒層とに分配し、溶媒層を分取する。この溶媒層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水させ、次いで溶媒を蒸発させることにより、残留油状物質をガーリックオイルとして得る。
【0021】
本発明の組成物中のγ−グルタミル−S−アリルシステインとガーリックオイルとの配合比は特に制限されないが、優れた血圧低下効果を得る上で、γ−グルタミル−S−アリルシステイン1重量部に対して、ガーリックオイルを好ましくは1〜10重量部、特に0.5〜5重量部、とりわけ0.1〜1重量部含有するのが好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、γ−グルタミル−S−アリルシステイン以外に、他の成分、例えば高血圧の予防及び/又は治療に有用な物質などを含んでいてもよい。例えば、紅麹、ウコン、キトサン、霊芝、黒豆、及びコエンザイムQ10であり、好ましくは紅麹、ウコン、キトサン、及びコエンザイムQ10である。
【0023】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、添加剤、例えば、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素、又は乳化剤などを含有してもよい。
【0024】
本発明に係る組成物は、食品として、特に健康食品、機能性食品、健康補助食品、特定保健用食品として使用することができる。これら食品は、例えばお茶、ジュースといった飲料水;ゼリー、あめ、チョコレート、チューインガムなどの形態であってもよい。また、本発明に係る食品は、栄養補助食品(サプリメント)として、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、錠剤の形で製造されてもよい。
【0025】
また、本発明に係る組成物は、医薬としても使用することができる。これら医薬は、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、又は懸濁剤の形態で経口投与することができるが、例えば坐剤の形態で直腸内に;例えば軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤又は液剤の形態で局部又は経皮的に;例えば注射剤又は輸液の形態で非経口的に;点鼻薬の形態で鼻腔内に投与することもできる。
【0026】
本発明に係る組成物の摂取量は、特に制限されないが、投与経路、疾病の種類、剤型、並びに摂取者の年齢、体重、及び症状に応じて、適宜選択することができる。例えば、本発明の組成物を摂取する場合には、体重60kgの成人1日当たり有効成分量として、γ−グルタミル−S−アリルシステインを25〜250g、特に0.25〜2.5g、とりわけ25〜250mg、ガーリックオイルを0.1〜1g、特に50〜500mg、とりわけ25〜250mg、それぞれ摂取できるようにすることが、良好な血圧改善効果を得る上で好ましい。また、摂取期間は、摂取者の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【0027】
以下、本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。本発明は、実施例によって限定されるものではない。また、実施例では%は特に規定されていない限り重量%を意味する。
【実施例】
【0028】
1.製造例
(1)ガーリックオイルの製造
ニンニクの鱗茎100gに純水300mlを加えてからミキサーで磨砕してホモジネートを得た。これを室温で1時間放置してから、水蒸気蒸留に3〜5時間かけた。得られた油性成分を含む蒸留液にヘキサンを加えて水層とヘキサン層とに分配した。ヘキサン層を分取し、これに無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。次いで、約10℃の水浴中でロータリーエバボレーターを用いて溶媒を蒸発させ、油状物質としてガーリックオイルを得た。
【0029】
(2)γ−L−グルタミル−S−アリル−L−システインの製造
N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−グルタミン酸 1−tert−ブチルエステル(Boc-Glu−OtBu、国産化学株式会社製)6g、S−アリル−L−システイン(デオキシアリイン、和光純薬工業株式会社製)3g、及び水溶性カルボジイミド試薬(HOSu、株式会社同仁化学研究所製)4.6gをDMF50ml中に混合させ、常温にて一昼夜攪拌した。この混合物に水25ml及びエーテル25mlを加え、DMF層と水−エーテル層とに分配した。水−エーテル層を分取し、乾燥させ、残留物を得た。この残留物に80%TFA水溶液10mlを加え、室温にて3時間攪拌した。ロータリーエバボレーターで溶媒を蒸発させ、さらに適量のトルエンを加えロータリーエバボレーターによる溶媒の蒸発を続けた。残留物を高速液体クロマトグラフィー〔カラム:YMC Pack ODS-A、溶離液:10mMリン酸カリウム緩衝液(pH2.6)+50mM硫酸ナトリウム、勾配:アセトニトリル0から45%(25分)、流速:1.0ml/分、検出:210nm〕にかけ、γ−L−グルタミル−S−アリル−L−システイン(以下、「GSAC」という)を得た。
分析
純度 98.4%
元素分析
実験値:C、43.03;H、6.35;N、8.56%(N回収率=88.7%)
計算値:C、43.03;H、6.59;N、8.52%
質量分析値 291.0(ESI−MS、計算値〔M+H〕mono=291.101)
構造式 H−NMR(in D2O)試験で確認
【0030】
2.試験例
(1)試験液の調製
以下に試験液の調製例を示した。なお、注射用水は市販品(株式会社大塚製薬工場製)を使用した。また、各試験液は、用時調製し、調製後は使用時まで遮光して室温保存した。
(i)ニンニク卵黄粉末試験液
市販ニンニク卵黄粉末(商品名:伝統にんにく卵黄、株式会社健康家族製)6.768gを高精度分析用上皿天秤(METTLER、AE200)を用いて精秤した。これにTween80を1滴加え、次いで注射用水に溶解させて全量を20mLとすることにより、338.4mg/mLのニンニク卵黄粉末試験液を調製した。
(ii)GSAC試験液
上記で製造したGSAC 42mgを高精度分析用上皿天秤(METTLER、AE200)を用いて精秤した。これにTween80を1滴加え、次いで注射用水に溶解させて全量を10mLとすることにより4.2mg/mLのGSAC試験液を調製した。この4.2mg/mLの試験液を注射用水で10倍希釈して0.42mg/mLのGSAC試験液を調製した。
(iii)ガーリックオイル試験液
上記で製造したガーリックオイル65mgを高精度分析用上皿天秤(METTLER、AE200)を用いて精秤した。これにTween80を1滴加え、次いで注射用水に溶解させて全量を10mLとすることにより6.5mg/mLのガーリックオイル試験液を調製した。この6.5mg/mLの試験液を注射用水で10倍希釈して0.65mg/mLガーリックオイル試験液を調製した。
(iv)GSACとガーリックオイルとの混合試験液
上記で調製した4.2mg/mLのGSAC試験液及び6.5mg/mLのガーリックオイル試験液を、それぞれ注射用水で5倍希釈してから、両者を等量混合し、GSACを0.42mg/mLそしてガーリックオイルを0.65mg/mLそれぞれ含有するGSACとガーリックオイルとの混合試験液を調製した。
【0031】
(2)試験動物
7週齢の雄性SHRラット(SPF、日本エスエルシー株式会社、静岡県浜松市)を使用した。
ラットには、放射線滅菌された市販固形飼料F−2(株式会社船橋農場、千葉県船橋市)及び上水道水を自由に摂取させた。
【0032】
(3)測定項目及び測定手順
(i)一般状態及び生死の観察
投与期間中は、全例について一般状態及び生死を1日1回以上観察した。
(ii)収縮期血圧の測定
ラットの収縮期血圧は、非観血式自動血圧計(UR−5000、ウエダ製作所)により、テイルカッフ(tail cuff)法で測定した。収縮期血圧は、個体毎にそれぞれ3回以上測定し、その平均値を収縮期血圧とした。
【0033】
(4)試験手順
ラットの血圧を測定し、収縮期血圧の平均値をもとに完全無作為抽出法により、ラットを5群に5匹ずつ群分けした。
次いで、表1に従い上記各群のラットに上記調製した各試験液を体重1kgあたり10mLの投与液量でディスポーザブル注射筒及び経口ゾンデを用いて単回強制経口投与した。
そして、投与90分後、投与180分後、及び投与240分後に、それぞれラットの血圧を測定した。
測定値は各群ごとに平均値±標準誤差で表した。各群の投与前の測定値との有意差検定には投与前の測定値を対照値として各測定時間の測定値についてpaired t-testを行った。1〜5群の5群間について、1群を対象としたバートレット(Bartlett)検定により分散に一様性が認められる場合にはダネット(Dunnett)多重比較検定を、分散に一様性が認められない場合にはノンパラメトリックダネット多重比較検定を、それぞれ行った。有意水準は5%及び1%で表示した。
【0034】
(5)試験成績
全投与群において死亡及び一般状態異常は認められなかった。
血圧については、ニンニク卵黄粉末を投与した群で、投与前及び注射用水投与群(以下、「対照群」という)と比較して低下が認められた。特に、投与前と比較して有意な低下が投与90分後及び投与180分後に、対照群と比較して有意な低下が投与90分後にそれぞれ認められた(表1)。
GSAC投与群及びガーリックオイル投与群でも、投与前及び対照群と比較して血圧の低下が、それぞれ認められた(表1)。
GSACとガーリックオイルとの混合試験液投与群でも、投与前及び対照群と比較して血圧の低下が認められ、特に投与90分後で投与前及び対照群と比較して有意な低下が認められた(表1)。
【0035】
【表1】

【0036】
(6)考察
以上の結果から、ニンニク卵黄粉末、GSAC、ガーリックオイル、及びGSACとガーリックオイルとの混合がいずれもSHRラットの高血圧に対して血圧低下作用を有することが認められた。特に、GSACとガーリックオイルとの併用による相乗効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、高血圧の予防及び/又は治療用組成物を得ることができる。
これら組成物は、医薬品、あるいは健康食品、健康補助食品、特定保健用食品又は栄養補助食品などの食品として、ヒトのみならず、イヌやネコなどの動物の高血圧を予防及び/又は治療するために利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−グルタミル−S−アリルシステインとガーリックオイルとを含有することを特徴とする、高血圧の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項2】
γ−L−グルタミル−S−アリル−L−システインとガーリックオイルとを含有することを特徴とする、高血圧の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項3】
食品である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
医薬である、請求項1又は2記載の組成物。

【公開番号】特開2007−45753(P2007−45753A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232388(P2005−232388)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(398013554)株式会社健康家族 (9)
【Fターム(参考)】