説明

ニードルパンチ不織布

【課題】本発明は、環境負荷の低い材料を用いた、風合いが柔らかく、かつ、優れた吸音性、防風性および防塵性を発現するための通気度を有する短繊維ニードルパンチ不織布を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明では、繊度1.5〜7dtex、強度1.5〜3.5cN/dtex、伸度50〜150%、初期引張抵抗度20〜45cN/dtex、捲縮数5〜15個/25mm、捲縮度5〜25%、乾熱収縮率0.1〜7%であるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)短繊維を30〜100質量%を使用することで、不織布を構成する繊維同士の交絡度が向上し、剛軟度が1200mN・cm以下と風合いに優れ、通気度5〜130cm/cm・secと吸音性、防風性および防塵性に優れる不織布を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニードルパンチ不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ニードルパンチ不織布は製造コストや生産性、加工性に優れることからインテリア資材用途や衣料用途など各分野で広く使用されているが、その多くは石油系合成繊維を原料にして製造されている。
【0003】
近年、石油資源の大量消費によって生じる地球温暖化や、大量消費に伴う石油資源の枯渇が懸念されており、地球規模にて環境に対する意識が高まりつつある。このような背景において、環境負荷の低い材料が要望されている。
【0004】
以上のような要求特性を満足させるために、従来から使用されているポリアミドやポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレート以外にポリ乳酸やポリトリメチレンテレフタレート(PTT)を使用した布帛の検討がなされている。
【0005】
環境負荷の低い材料のなかでもポリトリメチレンテレフタレート(PTT)は、初期引張抵抗度が低いことから、不織布の風合いが柔らかく、布帛用材料としても注目すべきものである。
【0006】
特に、インテリア資材用途、衣料用途において不織布としての役割を果たすために、風合い、通気度に優れた不織布が必要となる。
【0007】
例えば、特許文献1では、ポリトリメチレンテレフタレートを用いたニードルパンチ不織布が開示されている。カーペット用途に好適に用いることができるよう立毛性を向上させているが、針打ち込み本数を増やし、繊維束を厚さ方向に優勢的に配列させているため布帛の剛軟度が高くなり、風合いが硬くなるという問題や、繊維が太いことから、通気度が高くなりやすい問題があった。
【0008】
通気度を小さくするために特許文献2、3では、熱融着性のフィルムを接着する方法、さらに不織布の表面を融着させて膜状にする方法が開示されている。しかしながら、前記の方法では、布帛の剛軟度が上昇することから、風合いが悪化するという問題があった。
【0009】
また、風合いを柔らかくするためには、不織布の繊度を小さくし、ニードル針の打ち込み本数を減らし、布帛の剛軟度を小さくすることが必要であるが、繊維同士の絡合度が小さくなるため、通気度が高くなりやすいという問題があった。
【0010】
以上のように従来の技術では、環境負荷の低い材料を用い、風合いが柔らかく、かつ、優れた吸音性、防風性および防塵性を発現するための通気度を有する不織布が得られていないのが実状である。
【特許文献1】特開2001−288660号公報
【特許文献2】特開2006−160197号公報
【特許文献3】特開2000−199161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、環境負荷の低い材料を用いた、風合いが柔らかく、かつ、優れた吸音性、防風性および防塵性を発現するための通気度を有する短繊維ニードルパンチ不織布を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上記従来の方法では達成できなかった課題を解決するために鋭意検討した結果、繊度1.5〜7dtex、強度1.5〜3.5cN/dtex、伸度50〜150%、初期引張抵抗度20〜45cN/dtex、捲縮数5〜15個/25mm、捲縮度5〜25%、乾熱収縮率0.1〜7%であるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)短繊維を30〜100質量%を使用することで、不織布を構成する繊維同士の交絡度が向上し、剛軟度が1200mN・cm以下と風合いに優れ、通気度5〜130cm/cm・secと吸音性、防風性および防塵性に優れる不織布となることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、風合いが柔らかく、かつ、優れた吸音性、防風性および防塵性を発現するための通気度を有する短繊維ニードルパンチ不織布を得ることができる。特に柔らかい風合いを有するため、インテリア資材用途、衣料用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のニードルパンチ不織布は、上記従来の方法では、達成できなかった課題を解決するために、鋭意検討した結果、繊度1.5〜7dtex、強度1.5〜3.5cN/dtex、伸度50〜150%、初期引張抵抗度20〜45cN/dtex、捲縮数5〜15個/25mm、捲縮度5〜25%、乾熱収縮率0.1〜7%であるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)短繊維を30〜100質量%を使用することで、不織布を構成する繊維同士の交絡度が向上し、剛軟度が1200mN・cm以下と風合いに優れ、通気度5〜130cm/cm・secと吸音性、防風性および防塵性に優れる不織布となることを見いだした。
【0015】
PTTとは、1,3−トリメチレングリコール成分と、テレフタル酸成分から構成される繰り返し単位(トリメチレンテレフタレート単位)を含むポリエステルであり、グリコール成分に炭素数3個のメチレン鎖を有することにより、伸長変形に対して結晶構造自身が伸縮するという特徴を有する。そのため、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)と比べても、極めてモジュラスが低く、弾性回復性が高い特徴を持つ。またPETと対比して、湿熱処理や、アルカリ処理などによる耐久性(強度保持率)は2〜4倍であり、PTT短繊維の鞘成分として好適である。
【0016】
トリメチレンテレフタレート単位を構成する1,3−トリメチレングリコールとしては、バイオマス材料由来のものであることが、低環境負荷の点から好ましい。
【0017】
PTTは、トリメチレンテレフタレート単位以外に、他の成分を共重合していてもよいが、PTTの特徴を活かす上では、トリメチレンテレフタレート単位が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは92モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
【0018】
PTTに共重合される成分として、ジカルボン酸成分としては例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’ジフェニルジカルボン酸、4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸成分や、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分等を用いることができる。
【0019】
また、グリコール成分としては例えば、エチレングリコール、1,2−トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができる。
【0020】
これらの共重合成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
また、PTTには、目的に応じて、他のポリマー、艶消し剤、粒子、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤等の添加物を含有していてもよい。
【0022】
また、PTTには通常、2つのトリメチレンテレフタレートが環状に連結されたダイマー(以下、「環状ダイマー」と記載する。)が存在しうるが、PTT中の環状ダイマーの含有量としては3質量%以下が好ましく、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。PTT中の環状ダイマーの含有量を3質量%以下に抑えることにより、PTTの耐加水分解性を向上させることができる。環状ダイマーと加水分解性との関係としては、環状ダイマーが加水分解によりトリメチレンテレフタレートモノマーとなり、当該モノマーによる触媒作用により、加水分解が促進されるものであると推測している。
【0023】
PTTの固有粘度としては、0.8〜2dl/gが好ましく、より好ましくは1〜1.8dl/g、さらに好ましくは1.2〜1.6dl/gである。0.8dl/g以上とすることで、PTTの分子配向が向上し、捲縮糸の弾性回復性、および弾性回復の堅牢度が向上する。一方、2dl/g以下とすることで、溶融紡糸時の急激な分子量低下を抑え、ポリマーの溶融流動の不安定化による複合紡糸の不安定化等を抑えることができる。
【0024】
続いて、本発明に用いる、PTT短繊維について述べる。
【0025】
本発明のニードルパンチ不織布に用いるPTT短繊維の繊度は、1.5〜7dtexが好ましい。1.5dtex以上とすることで、カード通過性が向上し、表面品位に優れたニードルパンチ不織布をえることができる。また、7dtex以下とすることで、風合いが硬くなるのを抑えることができる。
【0026】
PTT短繊維の強度としては、1.5〜3.5cN/dtexであることが好ましい。1.5cN/dtex以上とすることで、カード通過時の糸切れを紡糸し、表面品位に優れたニードルパンチ不織布を提供することができる。また、3.5cN/dtex以上の短繊維は、通常の工程から得ることは難しい。
【0027】
PTT短繊維の初期引張抵抗度は、20〜45cN/dtexであることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート短繊維の初期引張抵抗度は、一般的に70〜90cN/dtexであるが、ポリエチレンテレフタレート短繊維と比較して初期引張抵抗度が低いことから、風合いに優れたニードルパンチ不織布を得ることができる。
【0028】
伸度は、50〜150%の範囲のものが好ましい。50%未満の場合、ニードルパンチ不織布の風合いが硬くなる。一方、150%を超えるものは、カード通過時にネップが発生しやすくなるため、表面品位に劣るものとなる。
【0029】
捲縮数は、5〜15個/25mmの範囲であれば、繊維同士の絡合に問題なく、風合いのよいニードルパンチ不織布を得ることができる。5個/25mm未満であると繊維の絡合が不十分であり、カード通過後の積層工程でウエッブの素抜けが発生する。また、15個/25mmを超えると、ネップが発生しやすく、表面品位に劣るものとなる。
【0030】
捲縮度は、5〜25%のものが好ましい。5%未満であると繊維の絡合が不十分であり、カード通過後の積層工程でウエッブの素抜けが発生する。また、25%を超えると、ネップが発生しやすく、表面品位に劣るものとなる。
【0031】
乾熱収縮率は、0.1〜7%のものが好ましい。より好ましくは、0.1〜5%、さらに好ましくは、0.1〜3%の範囲である。ニードルパンチ不織布は、繊維同士の隙間が大きいため、不織布の収縮率を下げるためには、使用する短繊維の収縮率を低下させることが好ましく、ニードルパンチ不織布に用いるPTT短繊維の乾熱収縮率は、小さいほど好ましい。
【0032】
続いて、本発明に用いるPTT短繊維の繊維長は、10〜100mmであることが優れた混紡性を備えるために好ましい。より好ましくは、30〜80mmである。10mm未満の場合、繊維同士の絡合力が小さくなり、カード通過が難しくなる。また、100mmを超えるとカード通過時にネップが発生しやすく、表面品位に劣るものとなる。
【0033】
かかるPTT短繊維は、短繊維を熱セットにより収縮させることで得ることができる。、熱セットの温度としては、120〜220℃の範囲内の温度が好ましく、この温度範囲内で短繊維に弛緩熱処理を施すのである。この弛緩熱処理温度が120℃未満であると熱収縮が大きくなり、短繊維の寸法安定性、けん縮保持性が悪くなり、200℃を超えると短繊維の融着が多くなり、生産性に劣る結果となる。この温度はより好ましくは、140〜160℃であり、この範囲では融着が少なく、乾熱収縮率も小さい短繊維が得られるため生産性が向上する。
【0034】
PTT短繊維の断面形状としては、丸断面、中空断面、多孔中空断面、三葉断面(三角断面、Y断面、T断面など)や四葉断面(X断面)等の多葉断面、扁平断面、W断面等を採用することが可能である。
【0035】
ただし、PTT短繊維の横断面の異形度は3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以下である。異形度を3.0以下とすることで、表面の平滑性に優れ、ソフトタッチのニードルパンチ不織布を得ることができる。一方、ニードルパンチ不織布としたときの布帛光沢感を得る上では、1.1以上とすることが好ましい。ここで、異形度は、断面における内接円の径に対する外接円の径の比で表される。
【0036】
本発明のPTT短繊維は、平滑剤を含有する紡糸油剤が付与されていることが好ましい。平滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテル、シリコーンおよび鉱物油等が挙げられる。また、これらの平滑剤は単一成分で用いても良いし、複数の成分を混合して用いても良い。PTT短繊維に上記のような平滑剤を含有させた油剤を付与することによって、PTT短繊維の滑り性はさらに向上し、紡糸や延伸をはじめ、カードや紡績での工程通過性、および得られる短繊維自体の捲縮斑や毛羽等の品位を向上させるとともに、短繊維の開繊性や繊維構造体中での短繊維の分散性をさらに向上させることができる。また、その付着量は、0.1〜2質量%であることが、カード通過性および不織布制作時の生産性がよく好ましい。より好ましくは、0.2〜0.7質量%であることが好ましい。
【0037】
本発明では、油剤を構成する成分は平滑剤に加えて、油剤を水に乳化させ、低粘度化して糸条への付着や浸透性を向上させる乳化剤、また必要に応じて帯電防止剤、イオン性界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤あるいは酸化防止剤を適宜配合したものを使用することができる。
【0038】
次に本発明のニードルパンチ不織布について述べる。
【0039】
本発明発明において、ニードルパンチ不織布は、上記PTT短繊維を30〜100質量%含むことが必要である。
【0040】
初期引張抵抗度が低いPTT短繊維を用いることで、柔らかく、風合いに優れたニードルパンチ不織布を得ることができる。上記PTT短繊維が30質量%未満となった場合、柔らかく風合いに優れたニードルパンチ不織布を得ることが難しくなる。PTT短繊維の重量比率が高くなるほど、柔らかく風合いに優れたニードルパンチ不織布を得ることができ、好ましくは、50質量%、さらに好ましくは70質量%以上であると特に柔らかな風合いのニードルパンチ不織布を得ることができる。
ニードルパンチ不織布の通気度は、5〜130cm/cm・secが好ましい。インテリア資材には吸音性が求められることが多く、不織布の通気度が上記範囲内となることで、吸音性に優れたニードルパンチ不織布を得ることができる。5cm/cm・sec未満であると音波を反射してしまい、十分な吸音性が得られなくなる。一方、130cm/cm・secを超える場合は音波がニードルパンチ不織布を通過してしまい十分な吸音性が得られない。衣料用途に好適に用いるためには、通気度は、ゼロにならない程度に小さい方がよい。通気度が低くなることで、着用時の使用感が向上し、樹脂などを塗布するための工程通過性が向上するからである。5cm/cm・sec未満であると通気度が低すぎて、蒸れやすく、着用時の使用感が損なわれた布帛となり、130cm/cm・secを超える場合、防風性に劣り、通気度が高く、着用時の使用感が損なわれるとともに、樹脂などを塗布する際の工程通過性が悪くなる。
【0041】
また、ニードルパンチ不織布の剛軟度は、1200mN・cm以下であることが好ましい。
1200mN・cmを超えると、不織布の風合いが硬くなるため好ましくない。
【0042】
ニードルパンチ不織布の目付は、120〜400g/mであることが好ましい。120g/m未満となると、不織布の耐摩耗性が悪くなり、400g/mを超えると不織布の風合いが堅くなる。
【0043】
本発明に用いるニードルパンチ不織布は、収縮率が大きいと加工時の熱収縮により、製品の目標の寸法に加工しにくくなることから、3%以下の収縮率であることが好ましい。ニードルパンチ不織布は、収縮率を小さくするためには、乾熱収縮率が0.1〜7%のPTT短繊維を用いる。より好ましくは、0.1〜5%、さらに好ましくは、乾熱収縮率が0.1〜2%のPTT短繊維を用いると、不織布の寸法変化を極めて小さくすることができる。また、ニードルパンチ後にポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を付与し、乾燥することで収縮率を小さくすることができる。その他の方法として、ニードルパンチ後に、130℃〜190℃の範囲で熱セットを行い、布帛をあらかじめ収縮させることで、収縮率を小さくできる。より好ましくは、150〜190℃の範囲であるとPTT短繊維の乾熱収縮率をより小さくすることができる。
【0044】
本発明のニードルパンチ不織布は、例えば次のようにして得られる。まず上記のPTT短繊維を所定の割合に混綿し、カード機にてカーディングを行った後、クロスラッパーを用いてウエッブを積層し、所定の目付に合わせる。その後、ニードルパンチ機にて、ウエッブをパンチングし、短繊維同士を絡合させ不織布を得る。
この際、積層するウエッブの量は、8枚〜30枚が好ましい。8枚未満であると不織布の目付ムラが大きくなり、不織布の表面品位が悪化する。30枚を超えると、生産性が悪くなる。また、パンチングを作成する際、針の番手は#36〜#42番、針本数は、300〜700本/cmが表面品位や風合いに優れたニードルパンチ不織布を得ることができるため好ましい。
【0045】
本発明のニードルパンチ不織布の耐摩耗性は、JIS L 1913(1999) 6.6.2でのテーバー摩耗試験機(摩耗輪CS−10、荷重1.98N、100回)の摩耗等級が3級以上であることが好ましい。3級未満であると、衣料用途、インテリア資材用途として用いる為の十分な耐久性が得られない。上記耐摩耗性は、繊度1.7〜7dtexの繊維を用い、パンチングする針番手を#36〜#42、針本数を300〜700本/cmとすることで得ることができる。
【0046】
本発明のニードルパンチ不織布は、風合いが柔らかく、かつ、優れた吸音性、防風性および防塵性を発現するための通気度を有することから、壁紙、パーティション、椅子張り、カーテン、カーペット等のインテリア資材。芯地、裏材等の衣料用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
[測定方法]
(1)繊度
JIS L 1015(1999) 8.5.1 A法に基づき試料を金ぐしで平行に引きそろえ、これを切断台上においたラシャ紙の上に載せ、適度の力でまっすぐにはったままゲージ板を圧着し、安全かみそりなどの刃で30mmの長さに切断し、繊維を数えて300本を一組とし、その質量を量り、見掛繊度を求める。この見掛繊度と別に測定した平衡水分率とから、次の式によって正量繊度(dtex)を算出し、5回の平均値を求めた。
=D’×{(100+R)/(100+R)}
:正量繊度(dtex)
D’:見掛繊度(dtex)
:公定水分率(0.4)
:平衡水分率。
【0048】
(2)繊維長
JIS L 1015(1999) 8.4.1 A法に基づき試料を金ぐしに平行に引きそろえ、ペア形ソーターでステープルダイヤグラムを約25cm幅に作成する。作成の際、繊維を全部ビロード板上に配列するためにグリップでつかんで引き出す回数は、約70回とする。この上に目盛りを刻んだセルロイド板を置き、方眼紙上に図記する。この方法で図記したステープルダイヤグラムを50の繊維長群に等分し、各区分の境界及び両端の繊維長を測定し、両端繊維長の平均に49の境界繊維長を加えて50で除し、平均繊維長(mm)を算出した。
【0049】
(3)強度、伸度
JIS L 1015(1999) 8.7.1に基づき、空間距離20mm、繊維を一本ずつ区分線に緩く張った状態で両端を接着剤ではり付けて固着し、区分ごとを1試料とする。試料を引張試験器のつかみに取り付け、上部つかみの近くで紙片を切断し、つかみ間隔20mm、引張速度20mm/分の速度で引っ張り、試料が切断したときの荷重(N)及び伸び(mm)を測定、次の式により引張強さ(cN/dtex)及び伸び率(%)を算出した。
=SD/F
:引張強さ(cN/dtex)
SD:破断時の荷重(cN)
:試料の正量繊度(dtex)
S={(E−E)/(L+E)}×100
S:伸び率(%)
:緩み(mm)
:切断時の伸び(mm)又は最大荷重時の伸び(mm)
L:つかみ間隔(mm)。
【0050】
(4)初期引張抵抗度
JIS L 1015(1999) 8.11に基づき(3)強度、伸度と同じ方法で試験を行い、荷重−伸張曲線を描き、この図から原点の近くで伸長変化に対する荷重変化の最大点A(接線角の最大点)を求め、次の式によって初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出した。
ri=P/{(l’/l)×F
ri:初期引張抵抗度(cN/dtex)
P:接線角の最大点Aにおける荷重(cN)
:正量繊度(dtex)
l:試験長(mm)
l’:THの長さ(mm)(Hは垂線の足、Tは接線と横軸との交点)。
【0051】
(5)捲縮数
JIS L 1015(1999) 8.12.1に基づき(3)強度、伸度と同じ方法にて、区分線を作り(ただし、空間距離は25mmとした)、これに捲縮が損なわれていない数個の部分から採取した試料を1本ずつ、空間距離に対して25±5%の緩みをもたせて、両端を接着剤ではり付け固着させる。この試料を1本ずつ、捲縮試験機のつかみに取り付け、紙片を切断した後、試料に初荷重(0.18mN×表示テックス数)をかけたときのつかみ間の距離(空間距離)(mm)を良い、そのときの捲縮数を数え、25mm間当の捲縮数を求め、20回の平均値を求めた。
【0052】
(6)捲縮度
JIS L 1015(1999) 8.12.2に基づき試料に初荷重(0.18mN×表示テックス数)かけたときの長さと、これに荷重(4.41mN×表示テックス数)をかけたときの長さを測り、次式によって算出した。
={(b−a)/b}×100
:捲縮度(%)
a:初荷重をかけたときの長さ(mm)
b:4.41mN×テックス数をかけたときの長さ(mm)。
【0053】
(7)乾熱収縮率
JIS L 1015(1999) 8.15に基づき、(3)強度、伸度と同じ方法にて区分線を作り(ただし、空間距離は25mmとした)、初荷重をかけたときの距離(mm)を読む。
【0054】
試料を装置から取り外し、150度の乾燥機中につり下げ、30分間放置後取り出し、室温まで冷却後、再び装置に取り付け初荷重をかけたときのつかみ間の距離を読み次式によって乾熱収縮率を測定した。
={(L−L’)/L}×100
:乾熱収縮率(%)
L:処理前の初荷重をかけたときのつかみ間の距離(mm)
L’:処理後の初荷重をかけたときのつかみ間の距離(mm)。
(8)目付
JIS L 1913(1999) 6.2に基づき、25cm×25cmの試験片3枚を採取し、それぞれの標準状態における質量(g)を量り、次の式によって、1m当たりの質量(g/m)を求め、その平均値を算出した。
=W/A
:目付(g/m
W:標準状態における試験片の質量(g)
A:試験片の面積(m)。
【0055】
(9)剛軟度
JIS L 1913(1999) 6.7.2に基づき測定した。
【0056】
カンチレバー形試験器を用い、25×250mmの試験片を横方向に3枚採取した。試験片の重量を測定し、単位面積当たりの質量を計算した。カンチレバー型試験器を水平におき、試験片の1端を一定速度にて押し出した。試験片が面に接触するまで移動し、8秒放置した後、試験片の突き出た長さを読み取った。突き出た長さの半分を曲げ長さとし、次式にて算出し、その平均値を算出した。
G=m×C×10−3
G:曲げ硬さ(mN・cm)
m:試験片の単位面積当たりの質量
C:全平均の曲げ長さ(cm)。
【0057】
(10)通気度
JIS L 1096(1999) 8.27.1 A法に基づき、フラジール形試験器を用い、円筒の一端に試験片を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧機が125Paの圧力を示すように吸込みファンを調整し、そのときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類とから、試験機に附属の表によって試験片を通過する空気量を求めた。
【0058】
(11)収縮率
JIS L 1906(1999) 5.9.1に基づき、試料から25cm×25cmの試験片を3枚採取し、試験片にタテヨコそれぞれ20cmの長さを表す印を付けた。恒温乾燥機を用い、150度×3分間試験器内に放置し、取り出して室温まで冷却した。その後、タテヨコの長さを0.1mmまで測定し、次式によって算出した。
ΔL={(L−L’)/L}×100
ΔL:収縮率(%)
L:加熱前の試験片の3線の長さ合計(mm)
L’:加熱後の試験片の3線の長さ合計(mm)。
【0059】
(12)摩耗性
JIS L 1914(1999)6.6.2 a)テーバー形法に基づき、摩耗輪CS−10、摩耗回数100回にてJIS L 1913(1999)付図1の各級の写真と比較し、限度以内にある最高等級で判定した。
【0060】
(13)風合い
試料の風合いは、10人のパネラーにより評価した結果、7人以上が柔軟であると感じた場合を◎、5〜6人が柔軟であると感じた場合を○、柔軟であると感じた人が3〜4人の場合を△、柔軟であると感じた人が2人以下の場合を×とし、◎および○は実用範囲、△および×は実用範囲外とした。
【0061】
[実施例1〜5、比較例1]
(紡糸)
固有粘度1.5g/dlのポリトリメチレンテレフタレートポリマーを紡糸温度270℃で繊維状に吐出させた。吐出された繊維状のポリマーをチムニー風により冷却固化し、油剤液を付与し、ロール回転速度1000m/分にて未延伸糸サブトウを得た。得られたサブトウを所定本数束ねて、延伸倍率3.0倍にて延伸し、140℃×20分弛緩熱処理を加えた後、51mmの長さにカットし、繊度3.3dtex、繊維長51mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、強度2.1cN/dtex、伸度95.2%、初期引張抵抗度35.2cN/dtex、捲縮数10.9個/25mm、捲縮度5.6%、乾熱収縮率1.6%であった。
【0062】
(不織布)
得られた繊度3.3dtex、繊維長51mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維と公知の方法により得られた繊度3.3dtex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート繊維を表1に記載の混綿比率にて混綿し、開繊機にて開繊後、ローラーカードに供給して、目付200g/mのウエッブを得た。続いて、ニードルパンチ機により、得られたウエッブを36番針にて、針深度15mm、400本/cmの密度で打ち込みをして、ニードルパンチ不織布を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート不織布は、摩耗性が4級で、風合いが柔らかく、通気度の低いものであった。一方、ポリエチレンテレフタレート不織布は、摩耗性が4.5級であるが、風合いが堅く、通気度も実施例と比較して高いものであった。得られたニードルパンチ不織布の物性を表1に示す。
【0063】
[実施例6〜10、比較例2]
(紡糸)
固有粘度1.5g/dlのポリトリメチレンテレフタレートポリマーを紡糸温度270℃で繊維状に吐出させた。
吐出された繊維状のポリマーをチムニー風により冷却固化し、油剤液を付与し、ロール回転速度1000m/分にて未延伸糸サブトウを得た。
得られたサブトウを所定本数束ねて、延伸倍率3.0倍にて延伸し、140℃×20分弛緩熱処理を加えた後、51mmの長さにカットし、繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維を得た。
【0064】
得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、強度2.0cN/dtex、伸度93.5%、初期引張抵抗度33.4cN/dtex、捲縮数8.6個/25mm、捲縮度5.7%、乾熱収縮率0.7%であった。
【0065】
(不織布)
得られた繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維と公知の方法により得られた繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート繊維を表2に記載の混綿比率にて混綿し、開繊機にて開繊後、ローラーカードに供給して、目付370g/mのウエッブを得た。続いて、ニードルパンチ機により、得られたウエッブを36番針にて、針深度15mm、400本/cmの密度で打ち込みをして、ニードルパンチ不織布を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート不織布は、摩耗性が4級で、風合いが柔らかく、通気度の低いものであった。一方、ポリエチレンテレフタレート不織布は、摩耗性が4.5級であるが、風合いが堅く、通気度も実施例と比較して高いものであった。得られたニードルパンチ不織布の物性を表2に示す。
【0066】
[比較例3]
(紡糸)
固有粘度1.5g/dlのポリトリメチレンテレフタレートポリマーを紡糸温度270℃で繊維状に吐出させた。
吐出された繊維状のポリマーをチムニー風により冷却固化し、油剤液を付与し、ロール回転速度1000m/分にて未延伸糸サブトウを得た。
得られたサブトウを所定本数束ねて、延伸倍率3.0倍にて延伸し、140℃×20分弛緩熱処理を加えた後、51mmの長さにカットし、繊度8dtex、繊維長51mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維を得た。
【0067】
得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、強度2.2cN/dtex、伸度80.5%、初期引張抵抗度37.8cN/dtex、捲縮数12.3個/25mm、捲縮度10.5%、乾熱収縮率5.6%であった。
【0068】
(不織布)
得られた繊度8dtex、繊維長51mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維を開繊機にて開繊後、ローラーカードに供給して、目付370g/mのウエッブを得た。続いて、ニードルパンチ機により、得られたウエッブを36番針にて、針深度15mm、400本/cmの密度で打ち込みをして、ニードルパンチ不織布を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート不織布は、使用している繊維が太いことから、摩耗性が4級で、やや風合いが堅く、通気度も実施例と比較して高いものであった。得られたニードルパンチ不織布の物性を表3に示す。
【0069】
[比較例4]
比較例3で得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維80質量%と、公知により得られた繊度8dtex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維を20質量%用い、開繊機にて開繊後、ローラーカードに供給して、目付370g/mのウエッブを得た。続いて、ニードルパンチ機により、得られたウエッブを36番針にて、針深度15mm、400本/cmの密度で打ち込みをして、ニードルパンチ不織布を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート不織布は、使用している繊維が太いことから、摩耗性が4級で、やや風合いが堅く、通気度も実施例と比較して高いものであった。得られたニードルパンチ不織布の物性を表3に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のニードルパンチ不織布は、インテリア資材用途、衣料用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度1.5〜7dtex、強度1.5〜3.5cN/dtex、伸度50〜150%、初期引張抵抗度20〜45cN/dtex、捲縮数5〜15個/25mm、捲縮度5〜25%、乾熱収縮率0.1〜7%のポリトリメチレンテレフタレート短繊維を30〜100質量%含み、通気度5〜130cm/cm・sec、剛軟度が1200mN・cm以下であることを特徴とするニードルパンチ不織布。
【請求項2】
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の繊維長が10〜100mmであることを特徴とする請求項1記載のニードルパンチ不織布。
【請求項3】
収縮率が3%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のニードルパンチ不織布。
【請求項4】
目付が、120〜400g/mであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のニードルパンチ不織布。
【請求項5】
テーバー摩耗性が3級以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のニードルパンチ不織布。
【請求項6】
インテリア資材に用いることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のニードルパンチ不織布。
【請求項7】
衣料用途に用いることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のニードルパンチ不織布。

【公開番号】特開2009−209496(P2009−209496A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55914(P2008−55914)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】