説明

ヌクレオシドの位置的修飾によるオリゴヌクレオチドCpG−媒体免疫刺激の変調

【課題】CpG含有オリゴヌクレオチドによって引き起こされる免疫応答を変調する方法を提供する。
【解決手段】Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではない、CpG含有オリゴヌクレオチドの免疫刺激作用を増大させる方法。免疫刺激作用の増大したCpG含有オリゴヌクレオチド。哺乳動物において免疫応答を誘発する医薬の製造のためのCpG含有オリゴヌクレオチドの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチセンス法における、および免疫刺激剤としてのオリゴヌクレオチドの治療学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドは現代の分子生物学において不可欠の手段となっており、診断プローブ法から、PCR、遺伝子発現のアンチセンス抑制に及ぶ極めて多岐にわたる技術に用いられている。このような広範なオリゴヌクレオチドの使用は、オリゴヌクレオチドを合成するための迅速、安価かつ有効な方法に対する需要の増大をもたらしている。
【0003】
アンチセンスおよび診断への応用のためのオリゴヌクレオチドの合成は、現在、ルーチンに行うことができる。たとえば、非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3;および非特許文献4を参照。
【0004】
初期の合成法には、ホスホジエステル化学およびホスホトリエステル化学が含まれていた。非特許文献5はオリゴヌクレオチドの合成のためのホスホジエステル化学を開示している。非特許文献6はオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの合成のためのホスホトリエステル化学を開示している。これら初期のアプローチは、さらに有効なホスホルアミダイトおよびH−ホスホネート合成法への道を大きく切り開いた。非特許文献7はポリヌクレオチド合成におけるデオキシヌクレオシドホスホルアミダイトの使用を開示している。特許文献1は、H−ホスホネート法によるオリゴヌクレオチドの最適化合成を開示している。
【0005】
これら現代の両アプローチは、様々な修飾ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドを合成するのに用いられている。非特許文献8は、ホスホルアミダイト化学を用いたオリゴヌクレオチドメチルホスホネートの合成を教示している。非特許文献9は、ホスホルアミダイト化学を用いたオリゴヌクレオチドホスホロチオエートの合成を開示している。非特許文献10は、ホスホルアミダイト化学を用いたオリゴヌクレオチドホスホルアミダイトの合成を開示している。非特許文献11は、H−ホスホネート化学を用いたオリゴヌクレオチドホスホルアミダイトおよびホスホロチオエートの合成を開示している。
【0006】
さらに最近では、何人かの研究者が疾患の治療に対するアンチセンス法の有効性を示している。非特許文献12は、サイトメガロウイルスによって誘発されたヒトの網膜炎の治療に対するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの市場売買の承認が得られたことを開示している。残念なことに、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの使用は当初予想されていたよりも複雑なものとなってきた。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドによって引き起こされるある種の作用は、予想されるアンチセンスのメカニズムでは説明できなかった。たとえば、非特許文献13は、「センス」のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドが特定の免疫刺激を引き起こすことを教示している。この副作用や他の副作用は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの概念を複雑なものにしている。非特許文献14は、2つのCpG含有オリゴヌクレオチド[一つはHIV−1からのgag遺伝子に相補的なものであり(
【化1】

(配列番号1))、他はHIV−1のrev遺伝子に相補的なものである(
【化2】

(配列番号2))]によって媒体される免疫刺激を開示している。
【0007】
一方、ホスホジエステルオリゴヌクレオチドおよびホスホロチオエートオリゴヌクレオチドが免疫刺激を誘発しうるという観察は、この副作用を治療用の手段として開発することへの関心をもたらした。これら努力は、ジヌクレオチドCpGを含有するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドに着目している。非特許文献15は、CpGジヌクレオチドを包含するパリンドローム含有ホスホジエステルオリゴヌクレオチドが、インターフェロンαおよびγの合成を誘発し、ナチュラルキラーの活性を高めうることを教示している。非特許文献16は、ホスホロチオエートCpG含有オリゴヌクレオチドが免疫刺激性であることを開示している。非特許文献17は、そのようなオリゴヌクレオチドがヒトB細胞を活性化することを開示している。非特許文献18は、CpG含有ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドがインフルエンザウイルスに対する免疫応答を高めることを教示している。非特許文献19は、CpG含有オリゴヌクレオチドが強力な免疫刺激剤として作用し、B型肝炎表面抗原に対する免疫応答を高めることを教示している。特許文献2は、CまたはGの骨格の修飾がこの作用を抑制することを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,149,798号明細書(AgrawalおよびZamecnik;1992年)
【特許文献2】米国特許第5,968,909号明細書(Agrawal)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Methods in Molecular Biology, Vol. 20: Protocols for Oligonucleotides and Analogs, pp.165-189(S. Agrawal編、ヒューマナ・プレス、1993)
【非特許文献2】Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, pp.87-108(F. Eckstein編、1991)
【非特許文献3】UhlmannおよびPeyman、上掲、AgrawalおよびIyer, Curr. Op. in Biotech. 6: 12 (1995)
【非特許文献4】Antisense Research and Applications(CrookeおよびLebleu編、CRCプレス、ボカ・ラトン、1993)
【非特許文献5】Khoranaら、J. Molec. Biol. 72: 209 (1972)
【非特許文献6】Reese、Tetrahedron Lett. 34: 3143-3179 (1978)
【非特許文献7】BeaucageおよびCaruthers、Tetrahedron Lett. 22: 1859-1862 (1981)
【非特許文献8】AgrawalおよびGoodchild、Tetrahedron Lett. 28: 3539-3542 (1987)
【非特許文献9】Connollyら、Biochemistry 23: 3443 (1984)
【非特許文献10】Jagerら、Biochemistry 27: 7237 (1988)
【非特許文献11】Agrawalら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 7079-7083 (1988)
【非特許文献12】Crooke、Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 8: vii-viii
【非特許文献13】McIntyreら、Antisense Res. Dev. 3: 309-322 (1993)
【非特許文献14】Zhaoら、Biochemical Pharmacology 51: 173-182 (1996)
【非特許文献15】Kuramotoら、Jpn. J. Cancer Res. 83: 1128-1131 (1992)
【非特許文献16】Kriegら、Nature 371: 546-549 (1995)
【非特許文献17】Liangら、J. Clin. Invest. 98: 1119-1129 (1996)
【非特許文献18】Moldoveanuら、Vaccine 16: 1216-124 (1998)
【非特許文献19】McCluskieおよびDavis、The Journal of Immunology 161: 4463-4466 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これら報告は、CpG含有オリゴヌクレオチドによって引き起こされる免疫応答を変調しうる必要性があることを明らかにしている。理想的には、そのような変調は、アンチセンスの応用に対しては免疫刺激作用を低減させること、および免疫療法の応用に対しては免疫刺激作用を増大させることを含むものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CpG含有オリゴヌクレオチドによって引き起こされる免疫応答を変調する方法を提供する。本発明による方法は、アンチセンスの応用に対しては免疫刺激作用を低減させること、および免疫療法の応用に対しては免疫刺激作用を増大させることの両者を可能にする。それゆえ、本発明はさらに、いずれの応用に対しても免疫刺激作用の最適レベルを有するオリゴヌクレオチドおよびそのようなオリゴヌクレオチドの使用方法を提供する。
【0012】
本発明者らは驚くべきことに、CpG含有オリゴヌクレオチドの位置的修飾(positional modification)が該オリゴヌクレオチドの免疫刺激能に劇的な影響を及ぼすことを見出した。とりわけ、CpGジヌクレオチドの5'側または3'側の特定の位置でのオリゴヌクレオチドの2'アルキル化またはアルコキシ化が該オリゴヌクレオチドの免疫刺激作用を高めるかまたは低下させる。
【0013】
第一の側面において、本発明はCpG含有オリゴヌクレオチドの免疫刺激作用を低下させる方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、オリゴヌクレオチド中のCpGジヌクレオチドの5'側に隣接した位置に2'置換ヌクレオシドを導入することを含み、その際、少なくとも一つのヌクレオシドは2'−O−メチルリボヌクレオシドではなく、該オリゴヌクレオチドはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的ではないことを特徴とする。
【0014】
第二の側面において、本発明は、免疫刺激作用の低減したCpG含有オリゴヌクレオチドを提供する。その際、該オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドの5'側に隣接した位置に2'置換ヌクレオシドを含み、少なくとも一つのヌクレオシドが2'−O−メチルリボヌクレオシドではなく、ヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的ではない。
【0015】
第三の側面において、本発明は、哺乳動物において遺伝子発現をアンチセンス特異的に低減させる方法を提供し、該方法は、免疫刺激作用の低減したCpG含有オリゴヌクレオチドを哺乳動物に投与することを含み、その際、該オリゴヌクレオチドはCpGジヌクレオチドの5'側に隣接した位置に2'置換ヌクレオシドを含み、少なくとも一つのヌクレオシドは2'−O−メチルリボヌクレオシドではなく、ヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的ではないことを特徴とする。
【0016】
第四の側面において、本発明は、Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではないCpG含有オリゴヌクレオチドの免疫刺激作用を増大させる方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、オリゴヌクレオチド中のCpGジヌクレオチドの5'側の1番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを導入することを含む。ある好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドではない。別の態様では該オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドであってよい。
【0017】
第五の側面において、本発明は、免疫刺激作用の増大したCpG含有オリゴヌクレオチドを提供する。該オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドの5'側の1番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを含み、Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではない。ある好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドではない。
【0018】
第六の側面において、本発明は、哺乳動物において免疫応答を誘発する方法を提供する。該方法は、哺乳動物にCpG含有オリゴヌクレオチドを投与することを含み、その際、該オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドの5'側の1番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを含み、Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではないことを特徴とする。ある好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドではない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、アンチセンス法において、および免疫刺激剤としてのオリゴヌクレオチドの治療学的使用に関する。本明細書に引用する特許および公報は当該技術分野における知見のレベルを反映するものであり、その全体を参照のため本明細書に引用する。本明細書に引用した参照文献の教示と本明細書とで矛盾がある場合は、本発明の目的のために後者が優先する。
【0020】
本発明は、CpG含有オリゴヌクレオチドによって引き起こされる免疫応答を変調する方法を提供する。本発明による方法は、アンチセンスの応用に対しては免疫刺激作用を低減させること、および免疫療法の応用に対しては免疫刺激作用を増大させることの両者を可能にする。それゆえ、本発明はさらに、いずれの応用に対しても免疫刺激作用の最適レベルを有するオリゴヌクレオチドおよびそのようなオリゴヌクレオチドの使用方法を提供する。
【0021】
本発明者らは驚くべきことに、CpG含有オリゴヌクレオチドの位置的修飾が該オリゴヌクレオチドの免疫刺激能に劇的な影響を及ぼすことを見出した。とりわけ、CpGジヌクレオチドの5'側または3'側の特定の位置でのオリゴヌクレオチドの2'アルキル化またはアルコキシ化が該オリゴヌクレオチドの免疫刺激作用を高めるかまたは低下させる。
【0022】
第一の側面において、本発明はCpG含有オリゴヌクレオチドの免疫刺激作用を低下させる方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、オリゴヌクレオチド中のCpGジヌクレオチドの5'側に隣接した位置に2'置換ヌクレオシドを導入することを含み、その際、少なくとも一つのヌクレオシドは2'−O−メチルリボヌクレオシドではなく、該オリゴヌクレオチドはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的ではないことを特徴とする。好ましい態様において、この方法は遺伝子または遺伝子転写物に相補的なオリゴヌクレオチドを製造するのに用いる。ある好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドはアンチセンス活性を有する。幾つかの好ましい態様において、オリゴヌクレオチド中に存在する各CpGジヌクレオチドについて2'置換ヌクレオシドを1つだけ導入する。幾つかの好ましい態様において、オリゴヌクレオチド中に2'置換ヌクレオシドを1つだけ導入する。
【0023】
本発明の最初の3つの側面で使用する「相補的」なる語は、生理条件下でゲノム領域、遺伝子、またはそのRNA転写物にハイブリダイズする能力を意味する。そのようなハイブリダイゼーションは、通常、相補的な鎖の間で好ましくはワトソン−クリックまたはフーグスティーン型の塩基対を形成する塩基特異的な水素結合の結果であるが、他の水素結合様式および塩基スタッキングもまたハイブリダイゼーションに導くことができる。実際問題として、そのようなハイブリダイゼーションは特定の遺伝子発現の抑制を観察することにより推論できる。
【0024】
本発明の最初の3つの側面において使用する「アンチセンス活性」なる語は、オリゴヌクレオチドを細胞または動物に導入したときに該オリゴヌクレオチドが相補的なRNAの発現の低減を引き起こすことを意味する。
【0025】
本発明のこの側面による方法は、合成プロセスでCpGジヌクレオチドの導入直後のサイクルに適当な2'置換モノマーシンソン(synthon)を用いさえすれば、よく知られた合成法のいずれにおいても都合よく行うことができる。好ましいモノマーとしては、ホスホルアミダイト、ホスホトリエステルおよびH−ホスホネートが挙げられる。それゆえ、本発明の目的のためには、「オリゴヌクレオチド中のCpGジヌクレオチドの5'側に隣接した位置に2'置換ヌクレオシドを導入する」とは、単にそのような位置に2'置換ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを合成することを意味する。
【0026】
第二の側面において、本発明は、CpGジヌクレオチドの5'側に隣接した位置に2'置換ヌクレオシドを含み、少なくとも一つのヌクレオシドが2'−O−メチルリボヌクレオシドではなく、ヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的ではない、免疫刺激作用の低減したCpG含有オリゴヌクレオチドを提供する。好ましくは、そのようなオリゴヌクレオチドは約12〜約50のヌクレオチド、最も好ましくは約12〜約35のヌクレオチドを有するであろう。本発明のこの側面による好ましいオリゴヌクレオチドは、遺伝子または遺伝子転写物に相補的である。さらに好ましくは、そのようなオリゴヌクレオチドはアンチセンス活性を有する。幾つかの好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドは該オリゴヌクレオチド中に存在する各CpGジヌクレオチドについて2'置換ヌクレオシドを1つだけ有する。幾つかの好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドは2'置換ヌクレオシドを1つだけ有する。
【0027】
第三の側面において、本発明は、哺乳動物において遺伝子発現をアンチセンス特異的に低減させる方法を提供し、該方法は、免疫刺激作用の低減したCpG含有オリゴヌクレオチドを哺乳動物に投与することを含み、その際、該オリゴヌクレオチドはCpGジヌクレオチドの5'側に隣接した位置に2'置換ヌクレオシドを含み、少なくとも一つのヌクレオシドは2'−O−メチルリボヌクレオシドではなく、ヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的ではないことを特徴とする。幾つかの好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドは該オリゴヌクレオチド中に存在する各CpGジヌクレオチドについて2'置換ヌクレオシドを1つだけ有する。幾つかの好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドは2'置換ヌクレオシドを1つだけ有する。
【0028】
本発明のこの側面による方法において、オリゴヌクレオチドの投与は好ましくは非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻内、膣内、吸入、硝子体内または直腸内でなければならない。治療組成物の投与は、知られた手順を用い、疾患の兆候が現れるのを防ぎまたは疾患のマーカーを代用する(surrogate)のに有効な投与量および期間行う。全身投与する場合には、約0.01マイクロモル〜約10マイクロモルのオリゴヌクレオチドの血中レベルが達成されるのに充分な投与量で治療組成物を投与するのが好ましい。局所投与の場合には、これよりもはるかに低い濃度で有効であり、はるかに高い濃度でも許容し得る。好ましくは、オリゴヌクレオチドの全投与量は、患者1日当たり約0.01mgのオリゴヌクレオチドから体重1kg当たり1日あたりで約200mgのオリゴヌクレオチドの範囲であろう。
【0029】
オリゴヌクレオチドは製剤化してもよいし、そのままであってもよい。1またはそれ以上の本発明の治療組成物の治療学的有効量を患者に単一の治療エピソードとして同時にまたは連続的に投与するのが望ましい。好ましい態様において、組成物を投与後、補体の活性化、有糸分裂生起およびトロンビンクロットの生成よりなる群から選ばれた生物学的作用を1またはそれ以上測定する。
本発明のこの側面による方法は、疾患または遺伝子発現の動物モデルにおいて有用であり、さらにヒト疾患の治療に有用である。
【0030】
第四の側面において、本発明は、Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではない、免疫刺激モチーフ(たとえば、CpG)含有オリゴヌクレオチドの免疫刺激作用を増大させる方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、オリゴヌクレオチド中のCpGジヌクレオチドの5'側の1番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを導入することを含む。ある好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドではない。
【0031】
本発明のこの側面による方法は、合成プロセスでCpGジヌクレオチドの導入直後のサイクルに適当な2'置換モノマーシンソンを用いさえすれば、よく知られた合成法のいずれにおいても都合よく行うことができる。好ましいモノマーとしては、ホスホルアミダイト、ホスホトリエステルおよびH−ホスホネートが挙げられる。それゆえ、本発明の目的のためには、「オリゴヌクレオチド中のCpGジヌクレオチドの5'側の1番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを導入する」とは、単にそのような位置に2'置換ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを合成することを意味する。
【0032】
本発明の第四、第五および第六の側面の目的のためには、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は遺伝子または遺伝子の転写物に正確に相補的なオリゴヌクレオチドであり、該オリゴヌクレオチドが正確に相補的な該遺伝子または遺伝子の転写物の発現を低減しうるものである。
【0033】
第五の側面において、本発明は、免疫刺激作用の増大した免疫刺激モチーフ(たとえば、CpG)含有オリゴヌクレオチドを提供する。該オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドの5'側の1番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを含み、Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではない。ある好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドではない。本発明の第四、第五および第六の側面による好ましいオリゴヌクレオチドは、長さが約6〜約50ヌクレオチドであり、安定性を向上させるため修飾したヌクレオチド間結合、修飾した塩基または修飾した糖をさらに含んでいてよい。
【0034】
第六の側面において、本発明は、哺乳動物において免疫応答を誘発する方法を提供する。該方法は、哺乳動物に免疫刺激モチーフ(たとえば、CpG)含有オリゴヌクレオチドを投与することを含み、その際、該オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドの5'側の1番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを含み、Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではないことを特徴とする。本発明のこの側面のある好ましい態様において、該オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドではない。
【0035】
本発明のこの側面による方法において、オリゴヌクレオチドの投与は好ましくは非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻内、膣内、吸入、硝子体内または直腸内でなければならない。治療組成物の投与は、知られた手順を用い、疾患の兆候が現れるのを防ぎまたは疾患のマーカーを代用するのに有効な投与量および期間行う。全身投与する場合には、約0.01マイクロモル〜約10マイクロモルのオリゴヌクレオチドの血中レベルが達成されるのに充分な投与量で治療組成物を投与するのが好ましい。局所投与の場合には、これよりもはるかに低い濃度で有効であり、はるかに高い濃度でも許容し得る。好ましくは、オリゴヌクレオチドの全投与量は、患者1日当たり約0.01mgのオリゴヌクレオチドから体重1kg当たり1日あたりで約200mgのオリゴヌクレオチドの範囲であろう。
【0036】
1またはそれ以上の本発明の治療組成物の治療学的有効量を患者に単一の治療エピソードとして同時にまたは連続的に投与するのが望ましい。好ましい態様において、組成物を投与後、IL−12の誘発および免疫細胞の有糸分裂生起よりなる群から選ばれた生物学的作用を1またはそれ以上測定する。オリゴヌクレオチドは単独または特定の抗原とともに投与してよく、該特定の抗原は該オリゴヌクレオチドに物理的に結合していても結合していなくてもよい。
本発明のこの側面による方法は、免疫系のモデル研究において有用であり、さらにヒト疾患の治療に有用である。
【0037】
本発明のすべての側面の目的のために、「オリゴヌクレオチド」なる語は、デオキシリボヌクレオチド、または2'−ハロ−ヌクレオシド、2'−O−置換ヌクレオシド、リボヌクレオシド、デアザヌクレオシドまたはそれらの組み合わせを含む修飾ヌクレオシドを2またはそれ以上からなるポリマーを包含する。そのようなモノマーは、多数の知られたヌクレオシド間結合によって互いに結合されていてよい。ある好ましい態様において、これらヌクレオシド間結合は、非イオン結合、ホウ素結合、ホスホジエステル結合、ホスホトリエステル結合、ホスホロチオエート結合、またはホスホルアミデート結合、これらの2'−5'結合、3'−5'結合、3'−3'結合、またはこれらの組み合わせであってよい。オリゴヌクレオチドなる語はまた、化学的に修飾した塩基または糖を有するおよび/または脂肪親和性基、挿入剤、ジアミンおよびアダマンタンを含む(これらに限られるものではない)置換基をさらに有するそのようなポリマーをも包含する。
【0038】
本発明の目的のためには、「2'−O−置換」なる語は、ペントース残基2'位のハロゲン(好ましくは、Cl、BrまたはF)による、または1〜6の飽和または不飽和炭素原子を含む−O−低級アルキル基による、または2〜6の炭素原子を有する−O−アリールまたはアリル基(その際、そのようなアルキル、アリールまたはアリル基は置換されていないか、またはたとえば、ハロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、カルボキシル、カルブアルコキシル、またはアミノ基で置換されていてよい)による置換を意味し、あるいはそのような2'置換は、ヒドロキシ(リボヌクレオシドを生成する)、アミノもしくはハロ基によものであってよいが、2'−H基によるものであってはならない。
【0039】
そのようなオリゴヌクレオチドは、たとえばペプチド核酸や固定化(locked)核酸におけるように、修飾した糖(たとえば、アラビノース、ヘキソース)および他の骨格修飾を有するオリゴヌクレオチドを包含する。そのようなオリゴヌクレオチドはまた、図3に示すものを含む(これらに限られるものではない)天然に存在する塩基または修飾したへテロ環を有していてもよい。本発明のすべての側面の目的のため、「CpG」または「CpGジヌクレオチド」なる語はジヌクレオチドの5'−シチジン−グアニジン−3'を意味し、式中のpはヌクレオチド間結合を示し、該ジヌクレオチド中の糖骨格はデオキシリボースまたは修飾した糖またはその組み合わせである。本発明の最初の3つの側面の好ましい態様において、pは上記いずれかのホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、立体特異的な(RpまたはSp)ホスホロチオエート共有結合から選ばれる。非ホスホジエステルで非ホスホロチオエートの態様は免疫刺激作用をさらに低減させるであろう。本発明の最後の3つの側面の好ましい態様では、pはホスホジエステル、ホスホロチオエートおよびホスホロジチオエートから選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】オリゴヌクレオチドの不在下(C)、リポ多糖の存在下(LPS)、または種々のオリゴヌクレオチドの存在下でのマウス脾臓細胞の増殖アッセイの結果を示す。
【図2】オリゴヌクレオチドを投与しないまたは種々のオリゴヌクレオチドを投与したマウスでの脾臓肥大を示す。
【図3】修飾塩基の好ましい態様を示す。
【0041】
下記実施例は本発明のある種の好ましい態様をさらに説明することを意図するものであって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
実施例1
インビトロでの免疫刺激作用の変調
CpGモチーフを含有するPS−オリゴの化学修飾の位置の影響を調べるため、本発明者らは2つのオリゴヌクレオチドを選んだ。オリゴ1は一つのCpGモチーフを含み、オリゴ15は2つのCpGモチーフを含む。これら2つのオリゴはいずれも以前に調べられており、免疫刺激性であることが示されている。本試験においてオリゴヌクレオチドの免疫刺激活性を評価するため、本発明者らはマウスの脾臓細胞増殖アッセイを用いた。
【0042】
表1:オリゴデオキシヌクレオチドホスホロチオエートおよび修飾部位
【表1】

【0043】
マウス脾臓リンパ球を、0.1、1および10μg/mLの濃度のオリゴヌクレオチドとともに培養した。オリゴ1は細胞増殖に対して用量依存的な作用を誘発した。0.1μg/mLでは増殖指標は2.87であった(図1)。オリゴ1のCpGモチーフの5'フランキングGAデオキシヌクレオシドを2'−OMeで置換すると(オリゴ2)、使用したすべての濃度で細胞増殖の完全な抑制という結果となった(図1)。0.1μg/mLでは細胞増殖指標は培地単独の場合と同様であった。オリゴ1のCpGモチーフの3'フランキングTTデオキシヌクレオシドを2'−OMeで置換すると(オリゴ6)、細胞増殖に対するそのような影響はなかった。オリゴ6の増殖指標は2.07であった(図1)。
【0044】
CpGモチーフからさらに離れた位置で5'フランキング領域中の2つのデオキシヌクレオシドを2'−OMeで置換することが誘発細胞増殖に影響を及ぼすか否かをさらに理解するため、本発明者らはオリゴ3、4および5を合成した(表1)。置換部位とCpGモチーフとの間でそれぞれ1つ、2つおよび3つのデオキシヌクレオシドだけ離れた位置にある2つのデオキシヌクレオシドを2'−OMeで置換した。オリゴ3、4および5の増殖指標はそれぞれ3.42、8.44および10.38であり、これはオリゴ1と比較するとそれぞれ29%、297%および400%の増大である(図1)。オリゴ5におけるよりもさらに5'末端側の残りのデオキシヌクレオシドを置換しても増殖指標の増大は示されなかった(データは示していない)。
【0045】
同様の置換をオリゴ1のCpGモチーフの3'フランキング領域で行った。オリゴ7、8、9、10および11を合成したが、これらはCpGモチーフと2'−OMe置換部位との間でそれぞれ1つ、2つ、3つ、4つおよび5つのデオキシヌクレオシドだけ離れた位置にある2つのデオキシヌクレオシドを2'−OMeで置換したものである。オリゴ7、8、9、10および11の増殖指標はそれぞれ3.63、7.22、7.01、8.85および9.24であった。オリゴ1と比較するとオリゴ7、8、9、10および11の増殖指標の増大は、それぞれ39%、231%、221%、317%および338%の増大であった。
【0046】
これらの結果から、CpGモチーフの5'末端または3'末端のいずれかでの2つのデオキシヌクレオチドの置換(たとえば、オリゴ5または9)は免疫刺激活性を増大させることが明らかである。オリゴ5またはオリゴ9に施した置換が免疫刺激活性をさらに増大させるうえで付加的な効果を有することが可能であろうか?本発明者らは、3'末端および5'末端の両者で2つのデオキシヌクレオシドが2'−OMeで置換されたオリゴ12を合成した。オリゴ12はオリゴ5と比較すると増殖指標をさらに増大させることはなかったが、オリゴ9と比較すると増殖指標を増大させた。
【0047】
オリゴ3〜5およびオリゴ7〜11を用いた上記観察が配列特異的なものであるか一般的なものであるかを調べるため、本発明者らはオリゴ15(2つのCpGモチーフを含む)に同様の修飾を施した。オリゴ15は0.1μg/mLの濃度で5.83の増殖指標を有していた。CpGモチーフと置換部位との間で2つのデオキシヌクレオシドだけ離れた位置にある、個々のCpGモチーフの5'末端の2つのデオキシヌクレオシドを2'−OMeで置換すると(オリゴ16および17)、それぞれ7.34および7.13の増殖指標が示されたが、これはオリゴ15と比較すると20%の増大にすぎない。両CpGモチーフの5'フランキング領域での2つのデオキシヌクレオシドの置換(オリゴ18)は10.62の一層高い増殖指標を示したが、これはオリゴ15と比較すると約50%の増大である。
【0048】
実施例2
免疫刺激活性に及ぼすヌクレアーゼ安定性の効果
部位特異的な置換に加えて、本発明者らはまた、CpGモチーフを含有するPS−オリゴの代謝安定性の増大が細胞増殖の増大という結果となるか否か、およびそのような代謝安定性の増大を5'置換と組み合わせて細胞増殖活性をさらに増大させることができるか否かを調べた。オリゴ1の3'末端の4つの連続したデオキシヌクレオシドを2'−OMeで置換した(これはヌクレアーゼに対する安定性の有意の増大という結果となる)オリゴ13を合成した。オリゴ13は11.92という増殖指標を有していたが、これはオリゴ1と比較すると約480%の増大である(図1)。5'末端の2つのデオキシヌクレオシドの置換によるオリゴ13のさらなる修飾(オリゴ14)は、増殖指標のさらなる増大という結果とはならなかった。
【0049】
上記のようなPS−オリゴ中の修飾が免疫刺激活性を変調することを細胞培養アッセイに基づいて観察した後、本発明者らは表1に列挙したオリゴヌクレオチドをマウスに腹腔内投与して脾臓重量を測定し、置換がインビボでも同様の作用を有するか否かを確認した。オリゴ1の投与は脾臓重量の約50%の増大を引き起こした(図2)。オリゴ2は細胞培養アッセイでは免疫刺激活性を示さなかったものであるが、脾臓重量の増大を示さなかった(図2)。CpGモチーフから5'末端側へ2つのデオキシヌクレオチドを置換したオリゴ3、4および5は脾臓重量の漸進的な増大を示し、これはオリゴ1で処置したマウスと比較してそれぞれ67%、95%および157%の増大であり(図2)、免疫刺激活性の増大が確認された。CpGモチーフの3'末端側での2つのデオキシヌクレオシドの2'−OMeによる置換は、一般に一層有意でない脾臓重量の増大をもたらした。オリゴ6および11だけが、オリゴ1と比較して97%および95%の脾臓重量の増大を引き起こした。3'末端および5'末端の両者で置換を施したオリゴ12は、オリゴ1と比較して95%の脾臓重量の増大を示した(図2)。
【0050】
オリゴ15、16、17および18はすべて2つのCpGモチーフを含むが、5mg/kgの投与量で投与した後に脾臓重量の増大を示した。オリゴ15は未処置のマウスと比較して175%の脾臓重量の増大を引き起こした。オリゴ16はCpGモチーフの5'末端が2つとも2'−OMeで置換したものであるが、オリゴ15と比較して93%の脾臓重量の増大を引き起こした(図2)。オリゴ17は一つのCpGの5'末端に置換を有するものであるが(しかし、他のCpGモチーフの3'末端に置換を有する)、脾臓重量のさらなる増大を示さなかった。両CpGモチーフの5'末端での置換はオリゴ16と比較して脾臓重量のさらなる増大という結果とならなかったが、オリゴ15と比較すると約60%だけの増大であった(図2)。
【0051】
オリゴ13はオリゴ1と比較して代謝的に安定しているものであるが、オリゴ1と比較して脾臓重量の114%の増大を示し、細胞増殖データと一致していた。同様の結果は、代謝安定性が増大し、CpGモチーフの5'末端で置換されているオリゴ14でも観察された(図2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではない、CpG含有オリゴヌクレオチドの免疫刺激作用を増大させる方法であって、該オリゴヌクレオチド中のCpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを導入することを含む方法。
【請求項2】
免疫刺激作用の増大したCpG含有オリゴヌクレオチドであって、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを含むことを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
長さが6〜50ヌクレオチドである、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
修飾したヌクレオチド間結合、修飾した塩基または修飾した糖をさらに含む、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
哺乳動物において免疫応答を誘発する医薬の製造のためのCpG含有オリゴヌクレオチドの使用であって、該オリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドの5'側の2番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの5'側の6番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の2つのヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の3番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の4番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の5番目のヌクレオシド、CpGジヌクレオチドの3'側の6番目のヌクレオシド、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた位置にて2'置換ヌクレオシドを含み、Ha−rasまたはヒト免疫不全ウイルス1型のgagまたはrev遺伝子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドではないことを特徴とする、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−19527(P2011−19527A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−212544(P2010−212544)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【分割の表示】特願2001−517689(P2001−517689)の分割
【原出願日】平成12年8月14日(2000.8.14)
【出願人】(398032717)イデラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】Idera Pharmaceuticals, Inc.
【Fターム(参考)】