説明

ヌクレオシド誘導体およびそれらの治療用途

【課題】ヌクレオシド化合物、関連した合成方法、組成物、およびヌクレオシド化合物を投与することにより過増殖性障害(癌を含めて)を処置する治療方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、式(I)および(II)で表わされるヌクレオシド誘導体(ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、Br、IもしくはCHである)、それらを合成する方法およびそれらの薬理学的に受容可能な塩、ならびにこのような化合物を含有する組成物に関する。本発明はまた、これらの化合物を投与することによって、過増殖性障害(乳癌、結腸癌、肺癌および胃癌のような腫瘍を含む)を処置する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本願は、ヌクレオシド化合物、関連した合成方法、組成物、およびヌクレオシド化合物を投与することにより過増殖性障害(癌を含めて)を処置する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
癌のような障害を処置するための治療用分子として、新規ヌクレオシド化合物が必要とされている。公知ヌクレオシド化合物および新規ヌクレオシド化合物の両方を使用して特定の障害を処置する方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
一連のヌクレオシド化合物が合成され、そして治療活性(抗癌活性を含めて)について分析された。本発明のヌクレオシド化合物は、過増殖性障害(乳癌、結腸癌、肺癌および胃癌のような腫瘍を含めて)を処置するのに有用であることが立証されている。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
過増殖性障害を処置するための方法であって、該方法は、このような処置を必要とする被験体に、次式の化合物:
【化1】


ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、Br、IもしくはCHである;
または
【化2】


ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、BrもしくはIである、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩を含有する組成物を投与する工程、およびそれにより、該過増殖性障害を処置する工程を包含する、
方法。
(項目2)
前記化合物が、以下である:
【化3】


ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、Br、IもしくはCHである;
または
【化4】


ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、BrもしくはIである、
項目1に記載の方法。
(項目3)
前記化合物が、次式を有する、項目1に記載の方法:
【化5】


(項目4)
前記化合物が、次式を有する、項目1に記載の方法:
【化6】


(項目5)
前記化合物が、以下である、項目1に記載の方法:
【化7】


(項目6)
前記過増殖性障害が、腫瘍である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記組成物が、さらに、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含有する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記腫瘍が、卵巣の腫瘍、乳房の腫瘍、子宮頚部の腫瘍、前立腺の腫瘍、肝臓の腫瘍、肺の腫瘍、腎臓の腫瘍、結腸の腫瘍、膵臓の腫瘍、脳腫瘍、胃の腫瘍および黒色腫から選択される、項目6に記載の方法。
(項目9)
次式の化合物:
【化8】


であって、ここで:
Aは、
【化9】


であり、Y=HまたはOHであり、そしてX=H、F、Cl、Br、IまたはCHであり;
但し、Aが
【化10】


である場合、Xは、CHではない、
化合物。
(項目10)
次式:
【化11】


ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、Br、IもしくはCHである、
を有する、項目9に記載の化合物。
(項目11)
次式:
【化12】


ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、BrもしくはIである、
を有する、項目9に記載の化合物。
(項目12)
以下である、項目9に記載の化合物:
【化13】


(項目13)
項目9に記載の化合物の治療有効量、またはそれらの薬学的に受容可能な塩と薬学的に受容可能なキャリアもしくは希釈剤とを含有する、薬学的組成物。
(項目14)
卵巣の腫瘍、乳房の腫瘍、子宮頚の腫瘍、前立腺の腫瘍、肝臓の腫瘍、肺の腫瘍、腎臓の腫瘍、結腸の腫瘍、膵臓の腫瘍、脳腫瘍、胃の腫瘍および黒色腫から選択される腫瘍についての少なくとも1つの細胞株に関して、10μM以下のIC50を有する、項目9に記載の化合物。
(項目15)
前記細胞株が、卵巣の腫瘍に対するHuman OVCAR−3、乳房の腫瘍に対するMCF−7またはMDA−MB−231、子宮頚部の腫瘍に対するHeLa、前立腺の腫瘍に対するPC3またはLNCap、肝臓の腫瘍に対するHepG2、肺の腫瘍に対するA549またはNCI−H226、腎臓の腫瘍に対するUMRC2、結腸の腫瘍に対するHT−29またはHCT116、膵臓の腫瘍に対するPANC−1、脳腫瘍に対するU251、胃の腫瘍に対するMKN−45および黒色腫に対するSK−MEL−28から選択される、項目14に記載の化合物。
(項目16)
1.0μM以下のIC50を有する、項目14に記載の化合物。
(項目17)
0.5μM以下のIC50を有する、項目14に記載の化合物。
(項目18)
次式の化合物:
【化14】


ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、Br、IもしくはCHである;
または次式の化合物:
【化15】


ここで:Y=HもしくはOHであり、そしてX=H、F、Cl、BrもしくはIである;を合成する方法であって、該方法は、以下の群から選択される少なくとも1つの工程を包含し:
【化16】


ここで、Bは、第三級ブチルジメチルシリル、第三級ブチルジフェニルシリル、ベンジルおよびトリチルから選択される、
方法。
(項目19)
Bが、トリチルである、項目18に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、HCT116ヒト結腸癌腫細胞を皮下注射したヌードマウスにおいて、RX−3117による腫瘍成長の阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
(定義)
用語「ヌクレオシド」、「ヌクレオシド化合物」、および「ヌクレオシド誘導体」は、本願において交換可能に使用されて、以下に定義されるような式Iまたは式IIの化合物を意味する。本願において使用される全ての科学用語および技術用語は、他に特定されない限り、当該分野において一般的に使用される意味を有する。本願において使用される場合、以下の語もしくは語句は、特定された意味を有する。
本明細書において、「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本発明の化合物と組み合わせた場合にその化合物が生物活性(例えば、肥満細胞およびマクロファージの抗細菌活性を増強する能力)を保持することを可能にする、任意の物質を意味する。例としては、任意の標準的な薬学的キャリア(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンのようなエマルジョン、および種々の型の湿潤剤)が挙げられるが、これらに限定されない。このようなキャリアを含む組成物は、周知の従来法によって処方される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第43章,第14版,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.を参照のこと)。
【0006】
用語「結合体」とは、2つ以上の分子の間での複合体として形成される化合物を意味する。より詳細には、本発明において、ヌクレオシド誘導体は、細胞特異的標的部分に結合(例えば、共有結合)され得、目的の細胞への薬物の効率的かつ特異的な送達のための結合体化合物を形成する。
【0007】
語句「標的部分」とは、所望の活性のための特定の部位に、本発明の化合物を送達するように働く分子を意味する。標的部分としては、例えば、特定の細胞表面の分子に特異的に結合する分子が挙げられる。本発明に有用なこのような標的部分としては、抗細胞表面抗原抗体が挙げられる。サイトカイン(インターロイキンおよび顆粒球/マクロファージ刺激因子(GMCSF)のような因子を含む)もまた、それらのレセプターを高レベルで発現する特定の細胞に結合することが知られている、特異的標的部分である。
【0008】
用語「プロドラッグ部分」は、例えば薬物の細胞への侵入または化合物の投与を容易にすることによって、本発明の化合物の使用を容易にする置換基である。プロドラッグ部分は、例えばインビボにおける酵素切断によって、化合物から切断され得る。プロドラッグ部分の例としては、リン酸基、ペプチドリンカー、および糖類が挙げられる。これらの部分は、インビボで加水分解され得る。
【0009】
「処置」とは、病原状態に脅かされているかまたは病原状態に苦しむ被験体において、その病原状態を特徴付ける少なくとも1つの症状を、阻害、低減、調節、改善、または遮断することを意味する。
【0010】
「過増殖性障害」は、細胞の異常な増殖によって特徴付けられる障害であり、そして一般的に、皮膚障害(例えば、乾癬)ならびに全ての組織系の良性および悪性の腫瘍が挙げられる。後者の分類の過増殖性障害としては、例えば、以下が挙げられる:乳癌(小葉癌および腺管癌を含む)、ならびに他の固形腫瘍、癌腫、肉腫、および癌(小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌および腺癌のような肺の癌腫、肺の中皮腫、結腸直腸の腺癌、胃癌、前立腺癌、卵巣癌(例えば、重篤な嚢胞腺癌および粘液性嚢胞腺癌)、卵巣生殖細胞腫、精巣癌、および生殖細胞腫、膵臓腺癌、胆管腺癌、肝細胞癌、膀胱癌(移行細胞癌、腺癌および扁平上皮癌を含む)、腎細胞腺癌、子宮内膜癌(腺癌および混合型ミュラー管腫瘍(癌肉腫)を含む)、子宮頚内膜、子宮膣部および子宮の癌(例えば、腺癌および扁平上皮癌)、扁平上皮癌、基底細胞癌、黒色腫および皮膚付属器腫瘍のような皮膚の腫瘍、食道癌、鼻咽頭および口腔咽頭の癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、唾液腺癌、脳および中枢神経系の腫瘍(神経膠腫、ニューロンの腫瘍および髄膜起源の腫瘍を含む)、末梢神経の腫瘍、軟組織肉腫、ならび骨および軟骨の肉腫が挙げられる)。
【0011】
本発明は、ヌクレオシド化合物、および被験体(例えば、ヒト患者もしくは他の動物被験体)における過増殖性障害、過増殖性疾患もしくは過増殖性状態の処置においてのその使用を包含する。本発明の方法は、有効量の本発明のヌクレオシド化合物を被験体に投与する工程を包含する。このような処置は、例えば、過増殖性状態の症状を防止、改善および/または阻害し得、そして/あるいは、例えば腫瘍(例えば、悪性新生物)における、細胞の増殖または成長を防止または阻害し得る。本発明の処置方法は、腫瘍負荷(burden)を、少なくとも測定可能な程度で減少させ、そして過増殖性状態に罹患する患者の生存を改善する。これらの疾患の中でも、本発明の薬剤による処置を受けやすい障害および状態は、新生物であり、そしてより具体的には、種々の起源(肺、結腸、胃、平滑筋、食道、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌など)の腫瘍である。
【0012】
(本発明に従う方法において有用な化合物)
本発明の方法で有用な化合物には、式Iを有するヌクレオシドが挙げられる:
【0013】
【化17】

ここで、Y=HまたはOHであり、そしてX=H、F、Cl、Br、IまたはCHである。
【0014】
また、式IIの化合物も含まれる:
【0015】
【化18】

ここで、Y=HまたはOHであり、そしてX=H、F、Cl、BrまたはIである。天然に存在する糖をベースにした立体化学的配置で説明されるものの、本発明は、関連した立体異性体および混合物を包含する。関連した立体異性体には、鏡像異性体、ジアステレオマーおよびそれらの混合物、およびラセミ混合物、および2種またはそれ以上のジアステレオマーの混合物が挙げられる。本発明はまた、これらの化合物の薬学的に受容可能な塩を包含する。
【0016】
本発明の化合物は、広範囲の過増殖性疾患(腫瘍を含めて)に対して、非常に活性であり得る。例えば、本発明に従った化合物は、卵巣癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、脳腫瘍、胃癌および黒色腫に対して、活性であり得る。非常に活性であるとは、ある化合物が、特定の腫瘍に対する少なくとも1つの細胞系に関して、5.0μM以下、2.0μM以下、1.0μM以下、または0.5μM以下のIC50を有し得ることを意味する。活性を決定するための代表的な細胞系には、卵巣癌に対するHuman OVCAR−3、乳癌に対するMCF−7またはMDA−MB−231、子宮頚癌に対するHeLa、前立腺癌に対するPC3またはLNCap、肝臓癌に対するHepG2、肺癌に対するA549またはNCI−H226、腎臓癌に対するUMRC2、結腸癌に対するHT−29またはHCT116、膵臓癌に対するPANC−1、脳腫瘍に対するU251、胃癌に対するMKN−45および黒色腫に対するSK−MEL−28が挙げられる。
【0017】
(薬学的組成物および投与)
本発明の化合物は、本明細書中で定義した本発明の化合物の治療有効量と薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とで調製された薬学的組成物として、有用である。
【0018】
本発明のヌクレオシド化合物は、薬学的組成物として処方でき、そして選択された投与経路(例えば、経口または非経口、静脈内、筋肉内、局所または皮下経路)に適合された種々の形状で、治療を必要とする被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒトの患者))に投与できる。
【0019】
それゆえ、本発明のヌクレオシド化合物は、薬学的に受容可能なビヒクル(例えば、不活性希釈剤または吸収できる食用キャリア)と併用して、例えば、経口的に、あるいは吸入またはガス注入により、全身投与され得る。それらは、軟殻または硬殻のゼラチンカプセルに封入され得るか、錠剤に圧縮され得るか、または常用食に直接組み込まれ得る。経口療法投与のためには、このヌクレオシド化合物は、1種またはそれ以上の賦形剤と配合され、そして摂取可能な錠剤、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、カシュ剤などの形状で使用され得る。このような組成物および製剤は、少なくとも0.1重量%のヌクレオシド化合物を含有すべきである。これらの組成物および製剤の割合は、もちろん、変えられ得、好都合には、この単位剤形の約2重量%と約60重量%の間であり得る。このような処置に有用な組成物中の重合体の量は、有効投薬レベルが得られるような量である。このような処置に有用な組成物中のヌクレオシド化合物の量は、有効な投薬レベルが得られるようにされる。
【0020】
これらの錠剤、トローチ、丸薬、カプセル剤などはまた、以下を含有し得る:結合剤(例えば、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチン);賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸など);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);および甘味料(例えば、スクロース、フルクトース、ラクトースまたはアスパルテーム);または香味料(例えば、ペパーミント、冬緑油またはサクランボ香味)が加えられ得る。その剤形がカプセルであるとき、それは、上記種類の物質に加えて、液状キャリア(例えば、植物油またはポリエチレングリコール)を含有し得る。種々の他の物質は、被覆として存在し得るか、そうでなければ、その投薬単位の物理的形状を変えるために存在し得る。例えば、錠剤、丸薬またはカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラックまたは糖などで被覆され得る。シロップまたはエリキシル剤は、この活性化合物、甘味料としてのスクロースまたはフルクトース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料および香味料(例えば、サクランボ香味またはオレンジ香味)を含有し得る。もちろん、任意の剤形を調製する際に使用される任意の物質は、使用される量で、薬学的に受容可能であって、実質的に非毒性であるべきである。それに加えて、これらのヌクレオシド化合物は、徐放製剤および装置に取り込まれ得る。
【0021】
このヌクレオシド化合物はまた、注入または注射により、静脈内または腹腔内で投与され得る。このヌクレオシド化合物の溶液は、水中で調製でき、必要に応じて、非毒性界面活性剤と混合できる。分散液もまた、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびそれらの混合物中にて、およびオイル中にて、調製できる。通常の保存および使用条件下では、これらの製剤は、微生物の成長を防止するために、防腐剤を含有できる。
【0022】
注射または注入に適当な医薬剤形には、これらのヌクレオシド化合物を含有する無菌水溶液または分散液、または無菌粉末を挙げることができ、それらは、無菌の注射可能または注入可能に溶液または分散液を即座に調製するように適合され、必要に応じて、リポソームにカプセル化される。全ての場合において、最終的な剤形は、無菌の流体であって、製造および保存条件下にて安定であるべきである。この液状キャリアはまた、溶媒または液状分散媒体(これは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの適当な混合物を含有する)であり得る。適当な流動性は、例えば、リポソームを形成することにより、分散液の場合に必要な粒径を維持することにより、また、界面活性剤を使用することにより、維持できる。微生物の作用の阻止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)により、誘発できる。多くの場合、等張剤(例えば、糖、緩衝液または塩化ナトリウム)を含めることが好ましい。これらの注射可能組成物の長期的な吸収は、薬剤遅延吸収組成物(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を使用することにより、誘発できる。
【0023】
無菌注射可能溶液は、適当な溶媒中の必要量のヌクレオシド化合物を上で列挙した種々の他の成分と混ぜ合わせることに続いて、必要に応じて、濾過滅菌を行うことにより、調製される。無菌注射可能溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、これにより、活性成分の粉末+先に滅菌濾過した溶液で存在している任意の追加所望成分が得られる。
【0024】
局所投与には、これらのヌクレオシド化合物は、純粋な形状で塗布できる。しかしながら、一般には、皮膚科学的に受容可能なキャリア(これは、固形または液状であり得る)と組み合わせて、組成物または処方として、それらを皮膚に投与するのが望ましい。
【0025】
有用な固形キャリアには、細かく分割した固体(例えば、タルク、粘土、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなど)が挙げられる。他の固形キャリアには、非毒性重合体ナノ粒子またはマイクロ粒子が挙げられる。有用な液状キャリアには、水、アルコールまたはグリコール、または水−アルコール/グリコールブレンドが挙げられ、この中に、これらのヌクレオシド化合物は、必要に応じて、非毒性界面活性剤の助けを借りて、有効レベルで、溶解または分散できる。所定用途には、それらの特性を最適にするために、補助剤(例えば、芳香剤および追加抗菌薬)が添加できる。得られた液状組成物は、吸収パッドから塗布でき、包帯および他のドレッシングに含浸するように使用できるか、またはポンプ型噴霧器またはエアロゾル噴霧器を使用して患部に噴霧できる。
【0026】
増粘剤(例えば、合成重合体、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性鉱物)もまた、使用者の皮膚に直接塗布するために、展開可能ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成するために、液状キャリアと共に使用できる。
【0027】
これらのヌクレオシド化合物を皮膚に送達するのに使用できる皮膚科学組成物の例は、当該技術分野で公知である;例えば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)およびWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照。
【0028】
式IまたはIIの化合物の有用な投薬量は、動物モデルにおけるそれらのインビトロ活性およびインビボ活性を比較することにより、決定できる。マウスおよび他の動物での有効な投薬量をヒトに外挿する方法は、当該技術分野で公知である;例えば、米国特許第4,938,949号を参照。
【0029】
一般に、液状組成物(例えば、ローション)におけるヌクレオシド化合物の濃度は、約0.1〜25重量%、または約0.5〜10重量%である。半固形組成物または固形組成物(例えば、ゲルまたは粉末)での濃度は、約0.1〜5重量%、または約0.5〜2.5重量%である。
【0030】
処置で使用するのに必要なヌクレオシド化合物の量は、選択される特定の塩だけでなく投与経路、処置する病気の性質、患者の年齢および健康状態と共に変わり、最終的には、担当医の自由裁量である。
【0031】
本発明の薬剤の有効投薬量および投与経路は、通常のものである。このヌクレオシド化合物の正確な量(有効用量)は、例えば、被験体の種、年齢、体重および一般的な健康状態または臨床的な健康状態、処置する任意の障害の重症度または機構、使用する特定の薬剤またはビヒクル、および投与のスケジューリングなどに依存して、被験体ごとに変わる。治療有効用量は、当業者に公知の通常の手順により、経験的に決定できる。例えば、The Pharmacological Basis of Therapeutics,Goodman and Gilman,eds.,Macmillan Publishing Co.,New Yorkを参照のこと。例えば、有効用量は、最初は、細胞培養アッセイまたは適当な動物モデルのいずれかにて、概算できる。この動物モデルはまた、適当な濃度範囲および投与経路を決定するのに使用され得る。次いで、このような情報は、ヒトにおける有効用量および投与経路を決定するのに使用できる。治療用量はまた、同じような治療薬の投薬量から類推して、選択できる。
【0032】
特定の投与様式および投薬レジメンは、症例の詳細(例えば、被験体、疾患、関与している疾患状態、および治療が予防的であるかどうか)を考慮して、担当医により選択される。治療には、数日から数ヶ月、または何年の期間で、1日1回または複数回の用量の化合物を必要とし得る。
【0033】
しかしながら、一般に、適当な用量は、約0.5〜約100mg/kg、例えば、約10〜約75mg/体重1kg/日(例えば、3〜約50mg/受容者の体重1キログラム/日、6〜90mg/kg/日)の範囲、または15〜60mg/kg/日の範囲である。例えば、適当な用量は、0.5、5、10、25、50、100、250または500mg/体重1kg/日であり得る。
【0034】
これらのヌクレオシド化合物は、好都合には、単位剤形で投与される;これは、例えば、単位剤形あたり、5〜1000mg、10〜750mgたまは50〜500mgの活性成分を含有する。
【0035】
これらのヌクレオシド化合物は、約0.5〜約75μM、約1〜50μM、または約2〜約30μMのピーク血漿濃度に達するように、投与できる。代表的な望ましい血漿濃度には、少なくとも0.25、0.5、1、5、10、25、50、75、100または200μM、またはこれらの値以下が挙げられる。これは、例えば、必要に応じて、生理食塩水中にて、これらのヌクレオシド化合物の0.05〜5%溶液を静脈注射することにより達成され得るか、または約1〜100mgのヌクレオシド化合物を含有する巨丸剤として、経口投与され得る。望ましい血液濃度は、約0.01〜5.0mg/kg/hr、例えば、少なくとも0.005、0.01、0.1、2.5、5.0または10.0mg/kg/hrまたはこれらの値以下を得るように連続注入することにより、維持され得る。あるいは、このようなレベルは、約0.4〜15mg/kg、例えば、少なくとも0.25、0.5、1.0、5.0、10.0、15.0または25.0mg/kgまたはこれらの値以下のヌクレオシド化合物を断続的に注入することにより、得ることができる。
【0036】
これらのヌクレオシド化合物は、好都合には、単一用量または分割した用量(これは、適当な間隔、例えば、1日あたり、2個、3個、4個またはそれ以上の副用量で投与される)で、提供され得る。この副用量それ自体は、さらに、例えば、多数の別個の大まかに間隔を開けた投与(例えば、注入器からの複数回の吸入または目への複数回の点滴)に分割され得る。
【0037】
(細胞へのヌクレオシドの標的)
代表的な実施態様では、このヌクレオシド化合物は、治療が望まれる細胞(例えば、ヒトの癌細胞)に標的される。この化合物は、所望の細胞を特異的に結合する標的部分に結合体化することにより、それにより、結合体分子の投与を指示することにより、所望の細胞に標的される。有用な標的部分には、細胞の抗原または細胞表面の配位子(例えば、B細胞抗原、CD19(例えば、B43)など)に特異的に結合する配位子がある。
【0038】
本発明の結合体を形成するために、標的部分は、このヌクレオシド化合物上の部位に共有結合される。この標的部分(これは、しばしば、ポリペプチド分子である)は、反応部位(NH、SH、CHO、COOHなどを含めて)にて、本発明の化合物に結合される。これらの化合物を接合するために、特定の連結剤が使用される。連結剤は、この標的部位を結合する反応部位に従って、選択される。
【0039】
本発明の化合物に標的部位を結合するための適当な連結剤および反応部位を選択する方法は、公知であり、例えば、Hermansonら、Bioconjugate Techniques,Academic Press,1996;Hermansonら、Immobilized Affinity Ligand Techniques,Academic Press,1992;およびPierce Catalog and Handbook,1996,pp.T155−T201で記載されている。
【実施例】
【0040】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、さらに明らかにされ得るが、これらの実施例は、好ましい実施態様のいくつかを例示するために供されており、いずれの様式でも本発明を限定するものではない。
【0041】
(実施例1〜2.ヌクレオシド誘導体の合成)
全ての無水溶媒(例えば、アセトニトリル、メタノール、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、クロロホルムおよび塩化メチレン)は、使用前に、CaHまたはPまたはNa/ベンゾフェノンで蒸留した。全ての化学物質は、試薬等級であり、そしてAldrich Chemical Company(Milwaukee,Wis.)またはSigma Chemical Company(St.Louis,Mo.)から購入した。
【0042】
(物理的特性)
プロトンNMRスペクトルは、重水素化溶媒(例えば、DMSO−d、CDCl、アセトニトリル−dまたはアセトン−d)中にて、Varian−400 MHz分光器で記録した。化学シフトは、0ppmでの内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)を使って、百万分率(ppm)で報告する。カップリング定数(J)は、ヘルツで示し、また、略語s、d、t、qおよびmは、それぞれ、一重項、二重項、三重項、四重項および多重項を意味する。TLCは、Merckプレコート60F254プレートで実行した。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60(230〜400メッシュ、Merck)を使用して、実行した。
【0043】
(実施例1.置換フルオロシクロペンタノールの合成)
スキーム1で概説したように、イソプロピリド−D−リボース1から、適当に置換したフルオロシクロペンタノールを調製した。
【0044】
この合成における重要な中間体は、第三級アリルβ−アルコール6である。対応するエピマーは、酸化に耐え、それゆえ、中間体7の形成を妨害する。中間体である第三級アリルβ−アルコール6は、選択的に、その開環対応物である中間体5から調製される。この第一級アルコール上の嵩張った保護基が存在すると、化合物5の方がそのジアステレ異性エピマーよりも優先して形成され、それにより、中間体である第三級アリルβ−アルコール6(最終的に、酸化生成物7)の調製が促進されることが分かった。このことに関して、ベンジル保護基では、間違ったα−エピマーが得られ、第三級ブチルジメチルシリル保護基は、ある程度の選択性(約75:8のβ:α)を示し、第三級ブチルジフェニルシリル保護基は、良好な収率およびさらにより高い選択性を示し、そしてトリチル基は、高い収率および高い立体選択性を与えた。
【0045】
(スキーム1)
【0046】
【化19】

(2,3−O−イソプロピリデン−5−トリチル−D−リボース(2))
イソプロピリデン−D−リボース1(10g、52.58mmol)および塩化トリチル(21.95g、78.88mmol)のピリジン(250mL)溶液を、室温で、20時間撹拌した。水を加えた後、その反応混合物を酢酸エチルで抽出し、乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させた。得られた残渣得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(これは、溶離液として、ヘキサンおよび酢酸エチル(4:1)を使用する)で精製して、無色油状物として、トリチルエーテル2(21.53g、95%)を得た;
【0047】
【化20】

((1R)−1−((4R,5S)−2,2−ジメチル−5−ビニル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2−トリチルオキシ−エタノール(3))
臭化メチルトリフェニルホスホニウム(32.28g、90.36mmol)のテトラヒドロフラン(300mL)撹拌懸濁液に、0℃で、カリウム第三級ブトキシド(10.79g、88.26mmol、試薬の純度:95%)を加え、その混合物を、室温で、1時間撹拌した。この混合物を再度0℃まで冷却した後、ラクトール2(18.18g、42.03mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を加えた。その反応混合物を、0℃で、3時間、そして室温で、4時間撹拌した。この反応混合物を水と酢酸エチルとの間で分配し、ブラインで洗浄し、乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(これは、溶離液として、ヘキサンおよび酢酸エチル(8:1)を使用する)で精製して、白色固形物として、オレフィン3(15.20g、82%)を得た;
【0048】
【化21】

(1−((4S,5S)−2,2−ジメチル−5−ビニル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2−トリチルオキシ−エタノン(4))
(COCl)(28.69mL、57.38mmol、2M CHCl溶液)のCHCl(200mL)撹拌溶液に、−78℃で、DMSO(8.9mL、125.51mmol)のCHCl(30mL)溶液を加え、その反応混合物を、同じ温度で、30分間撹拌した。アルコール3(15.44g、35.86mmol)のCHCl(30mL)を加え、この反応混合物を、−78℃で、1時間撹拌した。次いで、−78℃で、トリエチルアミン(32.99mL、236.68mmol)を加え、この反応混合物を室温まで温め、そして1時間撹拌した。0℃で、飽和塩化アンモニウム溶液を慎重に加え、この反応混合物をCHClと水との間で分配した。有機層を乾燥し、濾過し、そして減圧下にて蒸発させた。その残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(これは、ヘキサンおよび酢酸エチル(6:1)を使用する)で精製して、白色固形物として、ケトン4(13.83g、90%)を得た;
【0049】
【化22】

((2R)−2−((4S,5S)−2,2−ジメチル−5−ビニル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−1−トリチルオキシ−ブタ−3−エン−2−オール(5))
4(14.66g、34.22mmol)のテトラヒドロフラン(150mL)撹拌溶液に、−78℃で、臭化ビニルマグネシウム(68.44mL、68.44mmol、1.0Mテトラヒドロフラン溶液)を滴下し、その反応混合物を、同じ温度で、1時間撹拌した。この反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液およびブラインでクエンチし、そして酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして蒸発させた。得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製して、白色半固形物として、5(15.62g、100%)を得た;
【0050】
【化23】

((3aS,4R,6aS)−2,2−ジメチル−4−トリチルオキシメチル−4、6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−オール(6))
5(14.55g、31.86mmol)の塩化メチレン(100mL)撹拌溶液に、トリシクロヘキシルホスフィン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン]−[ベンジリジン]二塩化ルテニウム(VI)(270mg、0.32mmol)を加え、その反応混合物を、室温で、2日間撹拌した。減圧下にて揮発性物質を除去し、その残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製して、白色半固形物として、6(12.83g、94%)を得た;
【0051】
【化24】

((3R,6aR)−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−3a,6a−ジヒドロ−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−オン(7))
6(12.17g、28.40mmol)、4Åモレキュラーシーブ(14.2g)および二クロム酸ピリジニウム(32.05g、85.20mmol)のDMF(100mL)溶液を、室温で、2日間撹拌した。その混合物をジエチルエーテルおよび酢酸エチルで希釈した後、シリカとセライトの混合物のショートパッドで濾過した。その濾液を蒸発させ、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して、白色固形物として、ケトン7(11.14g、92%)を得た;
【0052】
【化25】

((3R,6aR)−5−ヨード−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−3a,6a−ジヒドロ−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−オン(8))
7(17.19g、40.30mmol)およびヨウ素(12.27g、48.36mmol)の塩化メチレン(80mL)撹拌溶液に、窒素雰囲気下にて、0℃で、ピリジン(3.0mL、36.27mmol)を加え、その反応混合物を、室温で、6時間撹拌した。この混合物を塩化メチレンで希釈し、そして有機層を、水、飽和チオ硫酸ナトリウム溶液、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を蒸発させた後、その残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1)で精製して、白色固形物として、8(16.03g、72%)を得た;
【0053】
【化26】

((3R,4R,6aR)−5−ヨード−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−オール(9))
8(8.97g、16.25mmol)および塩化セシウム(III)七水和物(6.66g、17.88mmol)のメタノール(80mL)撹拌溶液に、0℃で、水素化ホウ素ナトリウム(676mg、17.88mmol)を加え、その混合物を、同じ温度で、1時間撹拌した。この混合物をブラインで希釈し、そして酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、そして蒸発させた。その残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製して、白色固形物として、9(8.56g、95%)を得た;
【0054】
【化27】

((3R,4R,6aR)−第三級ブチル−(5−ヨード−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−イルオキシ)−ジフェニル−シラン(10))
9(8.53g、15.39mmol)およびイミダゾール(3.14g、46.17mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(70mL)撹拌溶液に、室温で、窒素雰囲気下にて、TBDPSCl(4.80mL、18.47mmol)を加え、その反応混合物を、同じ温度で、一晩撹拌した。この混合物を水でクエンチし、ジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、そして蒸発させた。その残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製して、無色油状物として、10(11.66g、96%)を得た;
【0055】
【化28】

((3R,4R,6aR)−第三級ブチル−(5−フルオロ−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−イルオキシ)−ジフェニル−シラン(11))
10(11.66g、14.71mmol)およびN−フルオロベンゼンスルホンアミド(5.566g、17.65mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(100mL)撹拌溶液に、−78℃で、窒素雰囲気下にて、n−ブチルリチウム(27.6mL、44.13mmol、1.6Mヘキサン溶液)をゆっくりと加え、その反応混合物を、同じ温度で、1時間撹拌した。この混合物を飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、そして酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、そして蒸発させた。その残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製して、白色固形物として、11(7.35g、73%)を得た;
【0056】
【化29】

((3R,4R,6aR)−5−フルオロ−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−オール(12))
11(7.35g、10.73mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)撹拌溶液に、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(12.88mL、12.88mmol、テトラヒドロフラン中で1.0M)を滴下し、その混合物を、室温で、1時間撹拌した。溶媒を除去した後、その残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して、無色油状物として、12(4.31g、90%)を得た;
【0057】
【化30】

(実施例2.2−フルオロシクロペンテニルヌクレオシドの合成)
スキーム2で概説したように、フルオロ−シクロペンタノール12を保護N−ベンゾイル塩基とカップリングした。
【0058】
(塩基縮合の一般的な手順)
フルオロ−シクロペンタノール12(800mg、1.79mmol)、トリフェニルホスフィン(1174.8mg、4.48mmol)および選択したN−ベンゾイル塩基(ウラシル誘導体、3.58mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に、0℃で、窒素雰囲気下にて、アゾジカルボン酸ジエチル(780mg、4.48mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(30mL)溶液を滴下した。その反応混合物を、室温で、15時間撹拌し、次いで、減圧下にて揮発性物質を蒸発させた。その残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して、この塩基縮合生成物を得た。
【0059】
(スキーム2)
【0060】
【化31】

縮合生成物13〜18の収率および分光学的データは、次のとおりである:
(3R,4S,6aR)−3−ベンゾイル−1−(5−フルオロ−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−イル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(13)。865.5mg、75%;
【0061】
【化32】

(3R,4S,6aR)−3−ベンゾイル−1−(5−フルオロ−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−イル)−5−フルオロ−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(14)。924.6mg、78%;
【0062】
【化33】

(3R,4S,6aR)−3−ベンゾイル−5−クロロ−1−(5−フルオロ−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−イル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(15)。875.3mg、72%;
【0063】
【化34】

(3R,4S,6aR)−3−ベンゾイル−5−ブロモ−1−(5−フルオロ−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−イル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(16)。893.7mg、69%;
【0064】
【化35】

(3R,4S,6aR)−3−ベンゾイル−1−(5−フルオロ−2,2−ジメチル−−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−イル)−5−ヨード−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(17)。855.2mg、62%;
【0065】
【化36】

(3R,4S,6aR)−3−ベンゾイル−1−(5−フルオロ−2,2−ジメチル−6−トリチルオキシメチル−4,6a−ジヒドロ−3aH−シクロペンタ[1,3]ジオキソール−4−イル)−5−メチル−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(18)。990.4mg、84%;
【0066】
【化37】

(脱保護の一般的な手順)
保護化合物13〜18(1.00mmol)を1N HCl/メタノール(2:1、v/v)10mLに溶解し、その反応混合物を、室温で、20時間撹拌した。減圧下にて溶媒を除去し、得られた残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール=10:1)で精製して、N−ベンゾイルウラシル誘導体を得た。
【0067】
上で得られたN−ベンゾイルウラシル誘導体を含メタノールアンモニア10mLで処理し、その混合物を、封管中にて、室温で、一晩撹拌した。この反応混合物を蒸発させ、その残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール=5:1)で精製して、表1のウラシル誘導体を得、これを、ジエチルエーテル/メタノールから結晶化した。
【0068】
(表1.ウラシル誘導体)
【0069】
【表1】

ウラシル誘導体19〜24の収率および分光学的データは、次のとおりである:
(1S,4R,5S)−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(19、RX−3116)。170.4mg、66%;
【0070】
【化38】

(1S,4R,5S)−5−フルオロ−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(20、RX−3116A)。168.5mg、61%;
【0071】
【化39】

(1S,4R,5S)−5−クロロ−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(21、RX−3116B)。190.2mg、65%;
【0072】
【化40】

(1S,4R,5S)−5−ブロモ−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(22、RX−3116C)。192.1mg、57%;
【0073】
【化41】

(1S,4R,5S)−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−5−ヨード−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(23、RX−3116D)。195.9mg、51%;
【0074】
【化42】

(1S,4R,5S)−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−5−メチル−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(24、RX−3116E)。204.2mg、75%;
【0075】
【化43】

(シトシン誘導体に変換する一般的な手順)
表1のウラシル化合物19〜24(1.00mmol)の無水ピリジン(10mL)を無水酢酸(940μl、10.0mmol)で処理し、その混合物を、外界温度で、5時間撹拌した。全ての揮発性物質を蒸発した後に得られた残渣を塩化メチレンで希釈し、希HCl、飽和NaHCO溶液およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして蒸発させた。そのトリアセテート含有残渣を、さらに精製することなく、次の工程で使用した。
【0076】
1,2,4−トリアゾール(760mg、11.0mmol)およびオキシ塩化リン(915μl、10.0mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液を、トリエチルアミン(1.25mL、9.0mmol)およびトリアセート(1.00mmol)(アセトニトリル4mL中)で処理した。その反応混合物を、室温で、15時間撹拌した。トリエチルアミン(1.5mL)および水(4.5mL)を追加し、この混合物を10分間撹拌した。塩化メチレンで希釈した後、この混合物を飽和NaHCO溶液およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして蒸発させた。その残渣を、さらに精製することなく、次の工程で使用した。
【0077】
上記残渣の1,4−ジオキサン(8mL)溶液に、0℃で、水酸化アンモニウム(28%、2mL)を加え、その反応混合物を、外界温度で、10時間撹拌した。全ての揮発性物質を除去した後、その残渣を含メタノールアンモニア(5mL)に溶解し、そして外界温度で、12時間撹拌した。この反応混合物を蒸発させ、その残渣をODSカラムクロマトグラフィー(水:アセトン=20:1)で精製して、表2のシトシン誘導体を得、これを、ジエチルエーテル/メタノールから結晶化した。
【0078】
(表2.シトシン誘導体)
【0079】
【表2】

シトシン誘導体25〜29の収率および分光学的データは、次のとおりである:
(1S,4R,5S)−4−アミノ−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2−オン(25、RX−3117)。133.8mg、52%;
【0080】
【化44】

(1S,4R,5S)−4−アミノ−5−フルオロ−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2−オン(26、RX−3117A)。156.9mg、57%;
【0081】
【化45】

(1S,4R,5S)−4−アミノ−5−クロロ−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2−オン(27、RX−3117B)。134.2mg、46%;
【0082】
【化46】

(1S,4R,5S)−4−アミノ−5−ブロモ−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2−オン(28、RX−3117C)。164.7mg、49%;
【0083】
【化47】

(1S,4R,5S)−4−アミノ−1−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−5−ヨード−1H−ピリミジン−2−オン(29、RX−3117D)。160.9mg、42%;
【0084】
【化48】

(脱酸素化の一般的な手順)
表1のウラシル誘導体(0.50mmol)のピリジン(5mL)撹拌溶液に、外界温度で、DMAP(1.00mmol)および1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン(0.75mmol)を加えた。10時間後、溶媒を除去し、その残渣を、塩化メチレンと水との間で分配した。有機層をブラインで洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下にて溶媒を除去し、その粗残渣を、さらに精製することなく、次の工程で使用した。
【0085】
この粗残渣の無水アセトニトリル(5mL)撹拌溶液に、4−ジメチルアミノ)ピリジン(1.00mmol)およびクロロチオギ酸フェニル(0.60mmol)を加え、次いで、その反応混合物を、室温で温めて、5時間撹拌した。この混合物を、塩化メチレンとブラインとの間で分配し、有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濾過した。揮発性物質を除去し、このフェニルチオエステル含有残渣を、さらに精製することなく、次のラジカル反応にて、使用した。
【0086】
このフェニルチオエステル含有残渣の乾燥ベンゼン撹拌溶液に、トリエチルボラン(1.00mmol、1.0Mヘキサン溶液)および水素化トリブチルスズ(1.00mmol)を加え、その反応混合物を、外界温度で、一晩撹拌した。この混合物を蒸発させ、その残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール=20:1)で精製して、脱酸素化生成物を得た。
【0087】
この脱酸素化生成物のテトラヒドロフラン(5mL)撹拌溶液に、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(1.20mmol、テトラヒドロフラン中で1.0M)を滴下し、その混合物を、室温で、5時間撹拌した。溶媒を除去した後、その残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール=5:1)で精製して、表3の2’−脱酸素化ウラシル誘導体を得、これを、ジエチルエーテル/メタノールから結晶化した。
【0088】
(表3.2’−脱酸素化ウラシル誘導体)
【0089】
【表3】

脱酸素化ウラシル誘導体30〜35の収率および分光学的データは、次のとおりである:
(1S,4R)−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(30、RX−3216)。63.0mg、52%;
【0090】
【化49】

(1S,4R)−5−フルオロ−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(31、RX−3216A)。63.7mg、49%;
【0091】
【化50】

(1S,4R)−5−クロロ−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(32、RX−3216B)。65.0mg、47%;
【0092】
【化51】

(1S,4R)−5−ブロモ−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(33、RX−3216C)。72.2mg、45%;
【0093】
【化52】

(1S,4R)−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−5−ヨード−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(34、RX−3216D)。75.5mg、41%;
【0094】
【化53】

(1S,4R)−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−5−メチル−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(35、RX−3216E)。67.9mg、53%;
【0095】
【化54】

(シトシン誘導体への変換の一般的な手順)
表3のウラシル化合物(0.5mmol)の無水ピリジン(5mL)溶液を無水酢酸(470μl、5.0mmol)で処理し、その混合物を、外界温度で、5時間撹拌した。全ての揮発性物質を蒸発した後に得られた残渣を塩化メチレンで希釈し、希HCl、飽和NaHCO溶液およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして蒸発させた。そのトリアセテート含有残渣を、さらに精製することなく、次の工程で使用した。
【0096】
1,2,4−トリアゾール(760mg、11.0mmol)およびオキシ塩化リン(915μl、10.0mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液を、トリエチルアミン(1.25mL、9.0mmol)およびトリアセート(1.00mmol)(アセトニトリル4mL中)で処理した。その反応混合物を、室温で、15時間撹拌した。トリエチルアミン(1.5mL)および水(4.5mL)を追加し、この混合物を10分間撹拌した。塩化メチレンで希釈した後、この混合物を飽和NaHCO溶液およびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして蒸発させた。その残渣を、さらに精製することなく、次の工程で使用した。
【0097】
上記残渣の1,4−ジオキサン(8mL)溶液に、0℃で、水酸化アンモニウム(28%、2mL)を加え、その反応混合物を、外界温度で、10時間撹拌した。全ての揮発性物質を除去した後、その残渣を含メタノールアンモニア(5mL)に溶解し、そして外界温度で、12時間撹拌した。この反応混合物を蒸発させ、その残渣をODSカラムクロマトグラフィー(水:アセトン=20:1)で精製して、表4の2’−脱酸素化シトシン誘導体を得、これを、ジエチルエーテル/メタノールから結晶化した。
【0098】
(表4.2’−脱酸素化シトシン誘導体)
【0099】
【表4】

脱酸素化シトシン誘導体36〜40の収率および分光学的データは、次のとおりである:
(1S,4R)−4−アミノ−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2−オン(36、RX−3217)。63.9mg、53%;
【0100】
【化55】

(1S,4R)−4−アミノ−5−フルオロ−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2−オン(37、RX−3217A)。53.1mg、41%;
【0101】
【化56】

(1S,4R)−4−アミノ−5−クロロ−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2−オン(38、RX−3217B)。62.0mg、45%;
【0102】
【化57】

(1S,4R)−4−アミノ−5−ブロモ−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−1H−ピリミジン−2−オン(39、RX−3217C)。76.8mg、48%;
【0103】
【化58】

(1S,4R)−4−アミノ−1−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−シクロペンタ−2−エニル)−5−ヨード−1H−ピリミジン−2−オン(40、RX−3217D)。64.2mg、35%;
【0104】
【化59】

(実施例3.ヌクレオシド化合物の細胞増殖阻害)
(癌細胞株の増殖)
ヌクレオシド化合物の効果を判定するための癌細胞株を、以下の供給源から得た:American Type Culture Collection(ATCC)(Manassas,VA)から、Human OVCAR−3(卵巣癌)、MCF−7(乳癌、ホルモン依存性)、MDA−MB−231乳癌)、HeLa(子宮頸癌)、PC3(前立腺癌)、LNCap(前立腺癌)、HepG2(肝臓癌)、A549(肺癌)、NCI−H226(肺癌)、HT−29(結腸癌)、HCT116(結腸癌)、SK−MEL−28(黒色腫)およびPANC−1(膵臓癌);理研(日本)から、U251(脳腫瘍);DSMZ(独国)から、MKN−45(胃癌);United States National Cancer Institute(Bethesda,MD)から、UMRC2(腎臓癌)。MDA−MB−231、HCT116、UMRC2およびPANC−1を除く全ての細胞株を、10%ウシ胎仔血清(「FBS」)、1mMピルビン酸ナトリウム、10mM HEPESならびに100U/mlペニシリンおよび100g/mlストレプトマイシン(「P/S」)を補充したRPMI1640培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)で増殖させた。MDA−MB−231、HCT116、UMRC2およびPANC−1細胞を、10% FBS、P/S、10mM HEPESおよび2mM L−グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(「DMEM」,Invitrogen)中で維持した。全ての細胞を、加湿した5%CO下で、37℃でインキュベートした。
【0105】
(細胞増殖阻害アッセイ)
種々のヒト腫瘍細胞に対するヌクレオシド誘導体の増殖阻害を評価し得る。化合物における特定の置換基の相対的重要性を研究し得る。上記のように調製されたヌクレオシド誘導体を、DMSOをコントロールとして試験する。
【0106】
16種のヒト腫瘍細胞株に対するRX−3117の増殖阻害アッセイを、スルホローダミンB(「SRB」)法(Skehanら,J.National Cancer Institute,82:1107−1112(1990))を使用して行った。簡単にいうと、指数関数的に増殖する腫瘍細胞を、96ウェルプレートに、2〜3×10細胞/ウェルの密度で播種し、そして翌日ヌクレオシド化合物で処理した。各処理について、3つのウェルを使用した。細胞を、種々の化合物とともに、96時間、37℃で、加湿した5%CO雰囲気中でインキュベートした。96時間のインキュベーションの後、細胞を10%トリクロロ酢酸(「TCA」)で固定し、4℃で1時間インキュベートし、そして水道水で3回洗浄した。その後、細胞を、1%酢酸中で30分間、0.4%スルホローダミンBで染色し、1%酢酸で4回洗浄し、そして再度風乾した。10mM Tris溶液中での5分間の攪拌の後、Benchmark Plus Microplate reader(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用して、各ウェルの吸光度を530nmで測定した。
【0107】
OD530値を各ウェルにおける生細胞数に変換するため、OD530値を、各細胞株について作製された標準OD530−対−細胞数曲線と比較した。パーセント生存を、以下の式を使用して計算した:
%生存=生細胞数[試験]/生細胞数[コントロール]×100
非線形回帰分析によって、IC50値を計算した。
【0108】
表5は、RX−3117について決定された細胞増殖の阻害(IC50、μM)をまとめる。
【0109】
(表5)
(ヒト癌細胞株に対するRX−3117による細胞増殖阻害(IC50、μM))
【0110】
【表5】

表5に示すように、本発明のヌクレオシド誘導体は、広い範囲の腫瘍細胞株に対して活性である。
【0111】
(実施例4.エキソビボ異種移植片研究)
動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害を観察するために、RX−3117を使用したヌードマウスのエキソビボ異種移植片研究を行った。適切なヒト癌細胞株は、肝細胞増殖の阻害について既に試験されている癌細胞株であり、そして特に好ましいものは、結腸癌HCT116である。RX−3117の抗腫瘍効力を、ヌードマウスにおいて皮下注射された腫瘍異種移植片に対して評価し、そしてRX−3117の処置後に、腫瘍体積を測定した。
【0112】
HCT116細胞懸濁液(0.1ml RPMI中2×10細胞)を、0日において、6種齢の雄胸腺欠損マウス(BALB/c nu/nu)の右側腹部に皮下注射した。十分な数のマウスにHCT116細胞懸濁液を注射し、そしてできるだけ狭い体積範囲の腫瘍を、処置開始日において、この治験に選択した。適切なサイズ範囲の腫瘍を有する動物を、種々の処置群に割当てた。RX−3117をPBS中の10% DMSOに溶解し、そして溶媒のみをコントロールとして用いた。全ての研究医薬(コントロール、RX−3117:2 mg/kg/日、RX−3117:10 mg/kg/日)を、5日目から腹腔内注射によって週に3回与え、そして37日目に終了した。腫瘍増殖を定量化するため、腫瘍の3つの直交する直径をカリパスで3〜5日毎に測定し、そして毒性に関して、マウスの体重をモニタリングした。以下の式を使用して腫瘍体積を計算した:腫瘍体積(mm)=(幅)x(長さ)x(高さ)×π/6。
【0113】
各動物群の腫瘍体積(平均±SEM)を、図1に示す。この図は、HCT116ヒト結腸癌異種移植片に対するRX−3117の効力の指標としての、腫瘍体積の測定値を示す。RX−3117処置は、良好に耐容された(死亡するがことなく、そして1gより大きい体重変動が観察されなかった)。37日後、腫瘍体積は、2mg/kg処置および10mg/kg処置でRX−3117で処置されたマウスにおいて、コントロールと比較して、有意に減少した。したがって、図1に示すように、RX−3117は、HCT116ヒト結腸癌細胞を皮下注射されたヌードマウスにおいて、腫瘍増殖の阻害をもたらす。
【0114】
本明細書中で説明し論述した実施態様は、本発明を製造し使用する本発明者が知っている最良の様式を当業者に教示するためにのみ、意図されている。本明細書中のいずれも、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。提示された全ての実施例は、代表的かつ非限定的である。本発明の上記実施態様は、上記教示に照らして、当業者が理解するように、本発明を逸脱することなく、改良または変更され得る。従って、請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内において、本発明は、具体的に記載されたもの以外で実施され得ることが理解できるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2012−107072(P2012−107072A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−54597(P2012−54597)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2007−506347(P2007−506347)の分割
【原出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(507160850)レクサン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】