説明

ヌクレオチドアナログ化合物

【課題】大規模合成について、または治療的投薬中への処方に望ましい性質を有する新規形態のアデフォビルジピボキシル(AD)を含む組成物;ADを含む組成物の製造および処方を容易にする良好な融点、および/または流動特性もしくはかさ密度特性を有するAD;ADの貯蔵安定形態;直ちに濾過され、そして容易に乾燥され得るAD;少なくとも約97%(w/w)の純度、および好ましくは少なくとも約98%の純度を有する高純度ADであり、AD合成の間に造られる副生成物を除去あるいは最小限にすること;高価かつ時間を消費するカラムクロマトグラフィーを使用しない、ADの精製法を提供する。
【解決手段】粗製物のジn−ブチルエーテルによる結晶化により、上記課題を達成する結晶性アデフォビルジピボキシル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の詳細な説明)
(発明の属する技術分野)
本発明は、ヌクレオチドアナログ9−[2−[[ビス[(ピバロイルオキシ)−メトキシ]ホスフィニル]メトキシ]エチル]アデニン(「アデフォビルジピボキシル(adefovir dipivoxil)」すなわち「AD」)、およびその使用に関する。本発明はまた、ADの合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
ADは、親化合物9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニン(「PMEA」)のビス−ピバロイルオキシメチルエステルであり、これは動物において、およびヒトにおいて抗ウイルス活性を有する。ADおよびPMEAは、例えば以下において記載されてきている:米国特許第4,724,233号、および同第4,808,716号、欧州特許第481,214号、Benzariaら、Nucleosides and Nucleotides (1995)14(3〜5):563〜565、Holyら、Collect.Czech.Chem.Commun.(1989)54:2190〜2201、Holyら、Collect.Czech.Chem.Commun.(1987)52:2801〜2809、Rosenbergら、Collect.Czech.Chem.Commun.(1988)53:2753〜2777、Starrettら、Antiviral Res.(1992)19:267〜273;Starrettら、J.Med.Chem.(1994)37:1857〜1864。これまで、ADは非晶質または無定形形態としてのみ提供されてきた。結晶性材料として調製されたことは報告されてこなかった。
【0003】
有機化合物をそれ自体で結晶化させるための方法が、J.A.Landgrebe、Theory and Practice in the Organic Laboratory、第二版、1977、D.C.Heath and Co.、Lexington、MA、43〜51頁;A.S.Myerson、Handbook of Industrial Crystallization、1993、Butterworth−Heinemann、Stoneham、MA、1〜101頁)に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,724,233号
【特許文献2】米国特許第4,808,716号
【特許文献3】欧州特許第481,214号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Benzariaら、Nucleosides and Nucleotides (1995)14(3〜5):563〜565
【非特許文献2】Holyら、Collect.Czech.Chem.Commun.(1989)54:2190〜2201
【非特許文献3】Holyら、Collect.Czech.Chem.Commun.(1987)52:2801〜2809
【非特許文献4】Rosenbergら、Collect.Czech.Chem.Commun.(1988)53:2753〜2777
【非特許文献5】Starrettら、Antiviral Res.(1992)19:267〜273
【非特許文献6】Starrettら、J.Med.Chem.(1994)37:1857〜1864。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以下の目的の1つ以上に合致する1つ以上の組成物または方法を提供する。
【0007】
本発明の主要な目的は、大規模合成について、または治療的投薬中への処方に望ましい性質を有する新規形態のADを含む組成物を提供することである。
【0008】
別の目的は、ADを含む組成物の製造および処方を容易にする良好な融点、および/または流動特性もしくはかさ密度特性を有するADを提供することである。
【0009】
別の目的は、ADの貯蔵安定形態を提供することである。
【0010】
別の目的は、直ちに濾過され、そして容易に乾燥され得るADを提供することである。
【0011】
別の目的は、少なくとも約97%(w/w)の純度、および好ましくは少なくとも約98%の純度を有する高純度ADを提供することである。
【0012】
別の目的は、AD合成の間に造られる副生成物を除去あるいは最小限にすることである。
【0013】
別の目的は、高価かつ時間を消費するカラムクロマトグラフィーを使用しない、ADの精製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、以下に説明するようなアデフォビルジピボキシルを調製するための方法などが提供され、そのことにより上記課題が解決される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、大規模合成について、または治療的投薬中への処方に望ましい性質を有する新規形態のアデフォビルジピボキシルを含む組成物;アデフォビルジピボキシルを含む組成物の製造および処方を容易にする良好な融点、および/または流動特性もしくはかさ密度特性を有するアデフォビルジピボキシル;貯蔵安定形態を有するアデフォビルジピボキシル;直ちに濾過され、そして容易に乾燥され得るアデフォビルジピボキシルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】形態1の結晶のXRDパターンを示す。
【図2】形態1の結晶の示差走査熱量測定により得られる温度記録を示す。
【図3】形態1の結晶のフーリエ変換赤外吸収スペクトルを示す。
【図4】倍率100×での形態1の結晶の実施態様を示す写真であり、128%引き伸ばして造られた写真の複写である。
【図5】倍率100×での形態1の結晶の実施態様を示す写真であり、128%引き伸ばして造られた写真の複写である。
【図6】倍率100×での形態1の結晶の実施態様を示す写真であり、128%引き伸ばして造られた写真の複写である。
【図7】倍率100×での形態1の結晶の実施態様を示す写真であり、128%引き伸ばして造られた写真の複写である。
【図8】倍率100×での形態1の結晶の実施態様を示す写真であり、128%引き伸ばして造られた写真の複写である。
【図9】倍率100×での形態1の結晶の実施態様を示す写真であり、128%引き伸ばして造られた写真の複写である。
【図10】倍率100×での形態1の結晶の実施態様を示す写真であり、128%引き伸ばして造られた写真の複写である。
【図11】形態2の結晶のXRDパターンを示す。
【図12】形態2の結晶の示差走査熱量測定により得られる温度記録を示す。
【図13】形態2の結晶のフーリエ変換赤外吸収スペクトルを示す。
【図14】形態3の結晶のXRDパターンを示す。
【図15】形態3の結晶の示差走査熱量測定により得られる温度記録を示す。
【図16】形態4の結晶のXRDパターンを示す。
【図17】形態4の結晶の示差走査熱量測定により得られる温度記録を示す。
【図18】ADヘミ硫酸塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図19】AD臭化水素酸塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図20】AD硝酸塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図21】ADメシレート塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図22】ADエチルスルホン酸塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図23】ADβ−ナフチレンスルホン酸塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図24】ADα−ナフチレンスルホン酸塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図25】(S)−カンファースルホン酸塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図26】ADコハク酸塩の結晶のXRDパターンを示す。
【図27】ADの模式図である。
【図28】ADの模式図である。
【図29】ADのXRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、結晶性ADを提供することにより、特に以下の形態を提供することにより、その主要な目的をなし遂げる:無水結晶性形態(以後「形態1」)、水和型C2032・2HO(以後「形態2」)、メタノール溶媒和型C2032・CHOH(以後「形態3」)、フマル酸塩または複合体C2032・C(以後「形態4」)、ヘミ硫酸塩(hemisulfate)または複合体、臭化水素酸塩または複合体、塩酸塩または複合体、硝酸塩または複合体、メシレート(CHSOH)塩または複合体、エチルスルホン酸塩(CSOH)または複合体、β−ナフチレンスルホン酸塩または複合体、α−ナフチレンスルホン酸塩または複合体、(S)−カンファースルホン酸塩または複合体、コハク酸塩または複合体、マレイン酸塩または複合体、アスコルビン酸塩または複合体、およびニコチン酸塩または複合体。
【0019】
本発明の実施態様は、以下を含む:(1)Cu−Kα照射を使用し、角2θで、約6.9、約11.8、約12.7、約15.7、約17.2、約20.7、約21.5、約22.5、および約23.3の任意の1つ以上に(任意の組合せで)現れる粉末X−線回折(「XRD」)スペクトルを本質的に有する、結晶性形態1のAD;(2)Cu−Kα照射を使用し、角2θで、約8.7〜8.9、約9.6、約16.3、約18.3、約18.9、約19.7、約21.0、約21.4、約22.0、約24.3、約27.9、約30.8、および約32.8の任意の1つ以上に(任意の組合せで)現れるXRDスペクトルを本質的に有する、結晶性形態2のAD;(3)Cu−Kα照射を使用し、角2θで、約8.1、約8.7、約14.1、約16.5、約17.0、約19.4、約21.1、約22.6、約23.4、約24.2、約25.4、および約30.9の任意の1つ以上に(任意の組合せで)現れるXRDスペクトルを本質的に有する、結晶性形態3のAD;ならびに、Cu−Kα照射を使用し、角2θで、約9.8、約15.2、約15.7、約18.1、約18.3、約21.0、約26.3、および約31.7の任意の1つ以上に(任意の組合せで)現れるXRDスペクトルを本質的に有する、結晶性形態4のAD。
【0020】
本発明の実施態様は、図4〜10のいずれか1つ以上に示される結晶形態を有するAD結晶を含む。
【0021】
他の実施態様において、本発明は、約6〜45%のADおよび約55〜94%の結晶化溶媒を含む結晶化溶液から結晶が形成され得ることによるAD結晶の生成法を提供し、ここで結晶化溶媒は以下からなる群より選択される:(1)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、アセトン:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(2)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、酢酸エチル:ジ−n−プロピルエーテルの混合物、(3)約1:10v/vと約10:1v/vとの間の、t−ブタノール:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(4)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、塩化メチレン:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(5)約1:10v/vと約10:1v/vとの間の、ジエチルエーテル:ジ−n−プロピルエーテルの混合物、(6)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、テトラヒドロフラン:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(7)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、酢酸エチル:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(8)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、テトラヒドロピラン:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(9)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、酢酸エチル:ジエチルエーテルの混合物、(10)t−ブチル−メチルエーテル、(11)ジエチルエーテル、(12)ジ−n−ブチルエーテル、(13)t−ブタノール、(14)トルエン、(15)酢酸イソプロピル、(16)酢酸エチル、(17)本質的に以下からなる混合物:(A)式R−O−Rの第一のジアルキルエーテルからなる第一の結晶化溶媒、ここでRは1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキル基であるか、あるいはRとRとの両方が一緒になって連結されて五員、六員、七員、または八員環を形成するが、ただしジアルキルエーテルはメチル−エチルエーテルではない、および(B)以下からなる群より選択される第二の結晶化溶媒:(a)式R−O−Rの第二のジアルキルエーテル、ここで第二のジアルキルエーテルは第一のジアルキルエーテルと異なっているが、しかしメチルエチルエーテルではない、(b)トルエン、(c)テトラヒドロフラン、(d)t−ブタノール、(e)酢酸エチル、(f)塩化メチレン、(g)酢酸プロピル、および(h)イソプロパノール。
【0022】
本発明の実施態様は、精製結晶性AD(例えば、形態1および/または形態2)を含む。本発明の実施態様はまた、結晶性AD(例えば、形態1および/または形態2)および1つ以上の化合物(例えば、薬学的賦形剤、または結晶性ADを含む反応混合物中に存在する化合物など)を含む組成物を含む。
【0023】
本発明の実施態様は、ADをメタノールに溶解する工程、および結晶を形成させ得る工程を含む、AD結晶の生成法を含む。
【0024】
別の実施態様は、薬学的組成物、または以下を含む使用に適した結晶性ADである:例えば、ヒトまたは動物における、レトロウイルス感染(HIV、SIV、FIV)、またはB型肝炎ウイルス、または他のヘパドナウイルス(hepadnavirus)感染、あるいはDNAウイルス感染(ヒトサイトメガロウイルスまたはヘルペスウイルス、例えばHSV1またはHSV2)のような、PMEAが活性であることが知られているウイルス性状態を処置するための、1つ以上の形態1、形態2、形態3、および/または形態4のAD、ならびに薬学的に受容可能なキャリア。
【0025】
本発明は、水の存在下AD結晶を形成する工程を含む、結晶性形態2のADの生成法を提供する。
【0026】
別の実施態様において、ADを調製するための方法は、PMEAをN−メチルピロリジノン(NMP、1−メチル−2−ピロリジノン)中のクロロメチルピバレートおよびトリエチルアミン(TEA)のようなトリアルキルアミンと接触させる工程、およびADを回収する工程を含む。
【0027】
さらなる実施態様において、約2%未満の塩を含むPMEA組成物が提供され、これは約2%未満の塩を含むPMEAを接触させる工程を含む方法において使用され得る。
【0028】
さらなる実施態様において、液体、形態1のアデフォビルジピボキシル、および受容可能な賦形剤を含む混合物から湿潤顆粒を調製する工程、および必要に応じて湿潤顆粒を乾燥する工程を含むプロセスにより、AD生成物が得られる。
【0029】
(課題を解決するための手段)
本発明は、結晶性アデフォビルジピボキシルを含む組成物を包含する。
【0030】
1つの実施態様において、本発明は上記結晶性アデフォビルジピボキシルが無水結晶性形態のアデフォビルジピボキシルである組成物を提供する。
【0031】
1つの実施態様において、実質的に以下のように明記されるC−中心単斜格子を含む組成物を提供する:a=12.85Å、b=24.50Å、c=8.28Å、β=100.2°、Z=4、空間群Cc。
【0032】
1つの実施態様において、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて6.9に現れるX−線粉末回折スペクトルピークを有する組成物を提供する。
【0033】
1つの実施態様において、約102℃にDSC吸熱転移を有する組成物を提供する。
【0034】
1つの実施態様において、上記結晶性アデフォビルジピボキシルが水和型、C2032P・2HOのアデフォビルジピボキシルである組成物を提供する。
【0035】
1つの実施態様において、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて約9.6、約18.3、約22.0、および約32.8に現れるX−線粉末回折スペクトルピークを有する組成物を提供する。
【0036】
1つの実施態様において、約73℃にDSC吸熱転移を有する組成物を提供する。
【0037】
1つの実施態様において、上記結晶性アデフォビルジピボキシルがメタノール溶媒和型、C2032P・CHOHのアデフォビルジピボキシルである組成物を提供する。
【0038】
1つの実施態様において、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて約8.1、約19.4、約25.4、および約30.9に現れるX−線粉末回折スペクトルピークを有する組成物を提供する。
【0039】
1つの実施態様において、約85℃にDSC吸熱転移を有する組成物を提供する。
【0040】
1つの実施態様において、上記結晶性アデフォビルジピボキシルがフマル酸塩または複合体、C2032P・Cのアデフォビルジピボキシルである組成物を提供する。
【0041】
1つの実施態様において、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて約9.8、約15.2、約26.3、および約31.7に現れるX−線粉末回折スペクトルピークを有する組成物を提供する。
【0042】
1つの実施態様において、約148℃にDSC吸熱転移を有する組成物を提供する。
【0043】
1つの実施態様において、アデフォビルジピボキシルの結晶性塩を含む組成物を提供する。
【0044】
1つの実施態様において、上記結晶性塩が有機酸の塩である組成物を提供する。
【0045】
1つの実施態様において、上記結晶性塩が無機酸の塩である組成物を提供する。
【0046】
1つの実施態様において、上記結晶性アデフォビルジピボキシルがヘミ硫酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硝酸塩、メシレート、エタンスルホン酸塩、β−ナフチレンスルホン酸塩、α−ナフチレンスルホン酸塩、(S)−カンファースルホン酸塩、コハク酸、マレイン酸、アスコルビン酸、またはニコチン酸からなる群より選択される、アデフォビルジピボキシルの結晶性塩である組成物を提供する。
【0047】
1つの実施態様において、薬学的に受容可能な賦形剤を含む組成物を提供する。
【0048】
本発明は、被験体に抗ウイルス有効量の上記組成物を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0049】
本発明は、結晶化溶媒とアデフォビルジピボキシルを接触させる工程を含む方法を包含する。
【0050】
1つの実施態様において、上記アデフォビルジピボキシルが溶液中にある、方法を提供する。
【0051】
1つの実施態様において、上記結晶化溶媒が前記溶液と混合されて第二の溶液を得、これが結晶を形成させる方法を提供する。
【0052】
本発明は、約6〜45%のアデフォビルジピボキシルおよび55〜94%の結晶化溶媒を含む溶液からアデフォビルジピボキシルを結晶化する工程を含む方法であって、ここで該結晶化溶媒は以下からなる群より選択される方法を包含する:(1)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、アセトン:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(2)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、酢酸エチル:ジ−n−プロピルエーテルの混合物、(3)約1:10v/vと約10:1v/vとの間の、t−ブタノール:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(4)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、塩化メチレン:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(5)約1:10v/vと約10:1v/vとの間の、ジエチルエーテル:ジ−n−プロピルエーテルの混合物、(6)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、テトラヒドロフラン:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(7)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、酢酸エチル:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(8)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、テトラヒドロピラン:ジ−n−ブチルエーテルの混合物、(9)約1:10v/vと約1:3v/vとの間の、酢酸エチル:ジエチルエーテルの混合物、(10)t−ブチル−メチルエーテル、(11)ジエチルエーテル、(12)ジ−n−ブチルエーテル、(13)t−ブタノール、(14)トルエン、(15)酢酸イソプロピル、(16)酢酸エチル、および(17)本質的に以下からなる混合物:(A)式R−O−Rの第一のジアルキルエーテルからなる第一の結晶化溶媒、ここでRは1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキル基でありRおよびRは同一または異なる、あるいはRとRとの両方が一緒になって連結されて五員、六員、七員、または八員環を形成するが、ただしジアルキルエーテルはメチル−エチルエーテルではない、および(B)以下からなる群より選択される第二の結晶化溶媒:(a)式R−O−Rの第二のジアルキルエーテル、ここで第二のジアルキルエーテルは第一のジアルキルエーテルと異なっている、(b)トルエン、(c)テトラヒドロフラン、(d)t−ブタノール、(e)酢酸エチル、(f)塩化メチレン、(g)酢酸プロピル、および(h)イソプロパノール。
【0053】
本発明は、アデフォビルジピボキシルの結晶を水の存在下で形成する工程を含む、水和型、C2032P・2HOのアデフォビルジピボキシルを調製するための方法を包含する。
1つの実施態様において、上記水和型、C2032P・2HOのアデフォビルジピボキシルが、(1)無水結晶性形態のアデフォビルジピボキシルの結晶を水和する工程、および/または(2)アデフォビルジピボキシルを水の存在下で結晶化する工程により生成される方法を提供する。
【0054】
本発明は、アデフォビルジピボキシルを含む結晶をフマル酸の存在下で形成する工程を含む、フマル酸塩または複合体、C2032・Cのアデフォビルジピボキシルを調製するための方法を包含する。
【0055】
1つの実施態様において、本発明は、9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンを、1−メチル−2−ピロリジノン中のクロロメチルピバレートおよびトリアルキルアミンと接触させる工程、ならびにアデフォビルピバロキシルを回収する工程を含む、アデフォビルジピボキシルを調製するための方法を提供する。
【0056】
1つの実施態様において、上記トリアルキルアミンがトリエチルアミンである方法を提供する。
【0057】
1つの実施態様において、1モル当量の9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンと、約5.6〜56.8モル当量の1−メチル−2−ピロリジノンを接触させる工程を含む方法を提供する。
【0058】
1つの実施態様において、1モル当量の9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンと、約2〜5モル当量のトリエチルアミンを接触させる工程を含む方法を提供する。
【0059】
本発明は、約2%未満の塩を含む9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンをクロロメチルピバレートと接触させる工程を含む方法を包含する。
【0060】
1つの実施態様において、上記塩がNaBrまたはKBrである方法を提供する。
【0061】
本発明は、無水結晶性形態のアデフォビルジピボキシルおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む混合物を圧縮するプロセスにより製造される生成物を包含する。
【0062】
1つの実施態様において、上記圧縮が錠剤をもたらす生成物を提供する。
【0063】
本発明の生成物は、液体、無水結晶性形態のアデフォビルジピボキシル、および薬学的に受容可能な賦形剤を含む混合物から湿潤顆粒を調製するプロセスにより製造される湿潤顆粒生成物を包含する。
【0064】
1つの実施態様において、上記液体が水である生成物を提供する。
【0065】
1つの実施態様において、上記プロセスがさらに湿潤顆粒を乾燥する工程を含生成物を提供する。
【0066】
本発明は、アデフォビルジピボキシル、20mgのゼラチン化前の澱粉、24mgのクロスカルメロースナトリウム、ラクトース一水和物、24mgのタルク、および4mgのステアリン酸マグネシウムを含む錠剤を構成する組成物であって、ここで該アデフォビルジピボキシルは少なくとも約70%の無水結晶性形態のアデフォビルジピボキシルを含む組成物を包含する。
【0067】
1つの実施態様において、上記錠剤が60mgのアデフォビルジピボキシルおよび268mgのラクトース一水和物を含む組成物を提供する。
【0068】
1つの実施態様において、上記錠剤が約400mgの重量である記載の組成物を提供する。
【0069】
1つの実施態様において、上記アデフォビルジピボキシルが少なくとも約80%の無水結晶性形態のアデフォビルジピボキシルを含む組成物を提供する。
【0070】
1つの実施態様において、上記錠剤が120mgのアデフォビルジピボキシルおよび208mgのラクトース一水和物を含む組成物を提供する。
【0071】
1つの実施態様において、上記錠剤が約400mgの重量である組成物を提供する。
【0072】
1つの実施態様において、上記アデフォビルジピボキシルが少なくとも80%の無水結晶性形態のアデフォビルジピボキシルを含む組成物を提供する。
【0073】
本発明は、ナトリウムアルコキシドおよび9−(2−ヒドロキシエチル)アデニンを接触させる工程を含む、9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)エチル]アデニンを調製するための方法を包含する。
(発明の実施の形態)
【0074】
他に示されない限り、温度は摂氏度(℃)である。室温は約18〜23℃を意味する。
【0075】
本明細書中で使用されるように、アルキルは直線状、分岐、および環状飽和炭化水素を意味する。「アルキル」または「アルキル部分」は、本明細書中で使用されるように、そうでないと記述されない限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個のノルマル、第二級、第三級、または環状構造を含む炭化水素である。用語C10アルキルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。例は、−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH、−CH(CH)CHCH、−C(CH、−CHCHCHCHCH、−CH(CH)CHCHCH、−CH(CHCH、−C(CHCHCH、−CH(CH)CH(CH、−CHCHCH(CH、−CHCH(CH)CHCH、−CHC(CH、−CHCHCHCHCHCH、−CH(CH)CHCHCHCH、−CH(CHCH)(CHCHCH)、−C(CHCHCHCH、−CH(CH)CH(CH)CHCH、−CH(CH)CHCH(CH、−C(CH)(CHCH、−CH(CHCH)CH(CH、−C(CHCH(CH、−CH(CH)C(CH、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロブチルメチル、1−シクロプロピル−1−エチル、2−シクロプロピル−1−エチル、シクロヘキシル、シクロペンチルメチル、1−シクロブチル−1−エチル、2−シクロブチル−1−エチル、1−シクロプロピル−1−プロピル、2−シクロプロピル−1−プロピル、3−シクロプロピル−1−プロピル、2−シクロプロピル−2−プロピル、および1−シクロプロピル−2−プロピルである。
【0076】
「アルコキシド」は、本明細書中で使用されるように、そうでないと記述されない限り、酸素原子に連結された、本明細書中でアルキルについて定義されるとおりの1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を含む炭化水素である。例は、−OCH、−OCHCH、−OCHCHCH、−OCH(CH、−OCHCHCHCH、−OCHCH(CH、−OCH(CH)CHCH、−OC(CH、−OCHCHCHCHCH、−OCH(CH)CHCHCH、−OCH(CHCH、−OC(CHCHCH、−OCH(CH)CH(CH、−OCHCHCH(CH、−OCHCH(CH)CHCH、−OCHC(CH、−OCH(CH)(CHCH、−OC(CH(CHCH、−OCH(C)(CHCH、−O(CHCH(CH、−O(CHC(CH、−OCHCH(CH)(CHCH、および−OCHCHCHCHCHCHである。
【0077】
「トリアルキルアミン」は、3個のCアルキル部分で置換された窒素原子を意味し、それらは独立して選択される。例は、1、2、または3個の、−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH、−CH(CH)CHCH、−C(CH、−CHCHCHCHCH、−CH(CH)CHCHCH、−CH(CHCH、−C(CHCHCH、−CH(CH)CH(CH、−CHCHCH(CH、−CHCH(CH)CHCH、−CHC(CH、−CHCHCHCHCHCH、−CH(CH)CHCHCHCH、−CH(CHCH)(CHCHCH)、−C(CHCHCHCH、−CH(CH)CH(CH)CHCH、−CH(CH)CHCH(CH、−C(CH)(CHCH、−CH(CHCH)CH(CH、−C(CHCH(CH、または−CH(CH)C(CH部分で置換された窒素である。
【0078】
本明細書中で使用されるように、「ヘテロアリール」は、例として、そして制限ではなく以下に記載されるこれらのヘテロ環を含む:Paquette, Leo A.;Principles of Modern Heterocyclic Chemistry (W.A.Benjamin、New York、1968)、特に第1、3、4、6、7、および9章;The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs (John Wiley & Sons、New York、1950〜現在まで)、特に第13、14、16、19、および28巻;およびJ.Am.Chem.Soc.、(1960)82:5566。
【0079】
ヘテロ環式環の例は、例として、そして制限ではなく以下を含む:ピリジル、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアンスレニル(thianthrenyl)、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル(indazoly)、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH−カルバゾリル、カルバゾリル、b−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニル、およびイサチノイル。
【0080】
例として、そして制限ではなく、炭素結合ヘテロ環は、以下の位置で結合している:ピリジンの2、3、4、5、または6位、ピリダジンの3、4、5、または6位、ピリミジンの2、4、5、または6位、ピラジンの2、3、5、または6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール、またはテトラヒドロピロールの2、3、4、または5位、オキサゾール、イミダゾール、またはチアゾールの2、4、または5位、イソキサゾール、ピラゾール、またはイソチアゾールの3、4、または5位、アジリジンの2または3位、アゼチジンの2、3、または4位、キノリンの2、3、4、5、6、7、または8位、あるいはイソキノリンの1、3、4、5、6、7、または8位。さらにより代表的には、炭素結合ヘテロ環は、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、または5−チアゾリルを含む。
【0081】
例として、そして制限ではなく、窒素結合ヘテロ環は以下の位置で結合している:アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、およびカルバゾールまたはβ−カルボリンの9位。さらにより代表的には、窒素結合ヘテロ環は、1−アジリジル、1−アゼチジル(azetedyl)、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、および1−ピペリジニルを含む。
【0082】
本明細書中で使用されるように、ADすなわち「結晶性材料」、「結晶性」、または「結晶」は、実質的に全ての構成分子(単数または複数)が一定の三次元空間パターンまたは格子にある整列された配列を有する固体のADを意味する。結晶性または結晶ADは、1種類の、または1種類より多い組成物、例えばAD・フマル酸、またはAD・2HOを含み得る。結晶性材料または結晶は、1種または1種より多い結晶晶癖で、例えば、タブレット状晶(tablet)、柱状晶、板状晶、または針状晶で生じ得る。
【0083】
他に明快にまたは文脈で記述されない限り、百分率の量を重量%(w/w)として表す。従って、少なくとも約40%のADを含む溶液は、少なくとも約40%w/wのADを含む溶液である。0.1%の水を含む固体のADは、固体に伴う0.1%w/wの水を意味する。
【0084】
非晶質ADを実質的に含まない結晶性ADは、約60%より多いADが組成物中に結晶性材料として存在する固体組成物を意味する。そのような組成物は、代表的に、少なくとも約80%、通常は少なくとも約90%の1種より多いAD結晶形態を、残りのADが非晶質ADとして存在するままで、含む。
【0085】
本発明の組成物は、必要に応じて、本明細書中の化合物の塩を含み、これは、例えば電荷を帯びていない部分または一価のアニオンを含む薬学的に受容可能な塩を含む。塩(単数または複数)は、無機または有機酸のような適切なアニオンの組合せにより誘導されるものを含む。適した酸は、安定な塩を形成するのに十分な酸性を有するもの、好ましくは低毒性の酸を含む。例えば、特定の有機および無機酸、例えばHF、HCl、HBr、HI、HSO、HPOの、または有機スルホン酸、有機カルボン酸の塩基性中心、代表的にはアミンへの酸付加から本発明の塩を形成し得る。例示的な有機スルホン酸は、以下のようなC16アリールスルホン酸、C16ヘテロアリールスルホン酸、およびC16アルキルスルホン酸(例えば、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、(S)−カンファー、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、およびヘキシルスルホン酸)を含む。例示的な有機カルボン酸は、以下のようなC16アルキル、C16アリールカルボン酸、およびC16ヘテロアリールカルボン酸(例えば、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、ケイヒ酸、サリチル酸、および2−フェノキシ安息香酸)を含む。塩はまた、1種以上のアミノ酸との本発明の化合物の塩を含む。多くのアミノ酸、特にタンパク質の成分として見いだされる天然に生じるアミノ酸が適しているが、アミノ酸は代表的には、塩基性または酸性基を持つ側鎖を有するもの(例えば、リジン、アルギニン、またはグルタミン酸)、または中性の基を持つ側鎖を有するもの(例えば、グリシン、セリン、トレオニン、アラニン、イソロイシン、またはロイシンなど)である。塩は、通常、特に哺乳動物細胞に対して、生物学的に適合可能であるか、薬学的に受容可能であるか、または非毒性である。生物学的に毒性である塩は、一般に、本発明の化合物の合成的中間体とともに使用される。ADの塩は、代表的に、本明細書中で記載される形態4のような結晶である。
【0086】
実施態様は、方法の工程または操作が行われるときに過渡的に生じる組成物を含む。例えば、ナトリウムアルコキシドが9−(2−ヒドロキシエチル)アデニン溶液と接触させられるとき、混合の開始の組成物は、ごくわずかな量のナトリウムアルコキシドを含む。この組成物は、一般に、溶液を混合するのに十分な撹拌の前、不均一の混合物として存在する。そのような組成物は、通常、ごくわずかな反応生成物を含み、そして大部分は反応物質を含む。同様に、反応が進行するにつれて、反応物質、生成物、および副生成物の割合は、互いに相対的に変化する。これらの過渡的組成物は、プロセスの工程が行われる時に出現してくる中間体であり、そしてそれらは本発明の実施態様として明白に含まれる。
【0087】
本発明は、2種類以上の異なる結晶型または形態の混合物、例えば形態1および形態2の結晶、形態1、形態2、および形態4の結晶、または形態2および形態4の結晶を含む組成物を含む。形態1および形態2のAD結晶の混合物は、薬学的処方物またはそれらの製品中に存在し得、そして代表的には、そのような混合物は、少なくとも約70%で、通常は少なくとも約90%で形態1を含むが、しかしいくつかの場合において、そのような混合物の約70%までが、形態2および/または無定形ADを含み得る。
【0088】
(ADの結晶形態)
ADは記載されるように(Starrettら、J.Med.Chem.(1994)19:1857〜1864)調製されそして回収され、そしてメタノール(約4%)と塩化メチレン(約96%)の溶液中のシリカゲルカラムから、減圧下約35℃でのロータリーエバポレーションにより回収されることで、非晶質または無定形固体として沈澱する。ここで、本発明者らはADが結晶形態で調製され得ることを発見した。
【0089】
本発明者らは、いくつかの異なる結晶性AD形態を同定した。本発明者らは、いくつかの方法により、通常はXRDおよびDSC温度記録により、それらを特徴付けた。研究者らは、結晶組成物の特徴付けるために、または同定するために、通常XRDを使用する(例えば、U.S.Pharmacopoeia、第23巻、1995、方法941、1843〜1845頁、U.S.P.Pharmacopeial Convention,
Inc.、Rockville、MD;Stoutら、X−ray Structure Determination;A Practical Guide、MacMillan Co.、New York、N.Y.1968を参照のこと)。結晶性化合物から得られる回折パターンは、しばしば所定の結晶形態のための診断材料であるが、弱いまたはごく弱い回折のピークは、結晶の連続したバッチから得られる複製された回折パターンにおいて常に現れるとは限らない。このことは、特に他の結晶形態がサンプル中に認めうる量で存在する、例えば形態1の結晶が一部水和して形態2の結晶になってしまった時の事例である。特に低角X−線入射角(低2θ)におけるバンドの相対的強度は、例えば、結晶晶癖、粒子の大きさ、および測定の他の条件における違いから生じる好適な配向効果によって変化し得る。従って、回折ピークの相対的強度は、問題の結晶形態の決定的な診断材料ではない。代わりに、AD結晶が本明細書中で記載される形態の中の1つであるかどうかを決定するためにピークの強度よりもそれらの相対的な位置を調べるべきである。異なるサンプルにおける個別のXRDピークは一般に、幅広いピークについて約0.3〜1度の角2θの範囲内に位置する。幅広いXRDピークは、互いに密接に位置する2個以上の個別のピークからなり得る。鋭い孤立したピークについては、そのピークは通常連続したXRD分析において約0.1度の角2θの範囲内に見いだされる。連続したXRD分析で化合物のXRDスペクトルを測定するために同じ装置を使用すると仮定するならば、XRDピークの配置における差異は、主にサンプル調製またはサンプル自身の純度における差異によるものである。配置されるとおりの所定の位置で、例えば約6.9で、鋭い孤立したXRDピークを同定する場合、これはそのピークが6.9±0.1にあることを意味する。配置されるとおりの所定の位置で、所定の2θの値について幅広いXRDピークを同定する場合、これはそのピークがその2θ値±0.3にあることを意味する。
【0090】
本明細書中の高純度AD参照サンプルにおいて観測される全てのバンドを頼りにする必要はないことに注意されたい;単一のバンドでさえ、例えば形態1について6.9がADの所定の結晶形態の診断材料であり得る。同定は、バンドの位置および一般的なパターン、特に種々の結晶形態に対して独自のバンドの選択に焦点を絞るべきである。
【0091】
結晶性ADを同定するために必要に応じて使用され得るさらなる診断用技術は、示差走査熱量測定(DSC)、融点測定、および赤外吸収分光法(IR)を含む。DSCは、結晶構造が変化するかまたはそれが溶解するときに結晶が熱を吸収するかまたは放出する熱的転移温度を測定する。熱的転移温度および融点は、代表的には、連続分析で約2℃の範囲内、通常は約1℃の範囲内にある。本発明者らが、化合物が所定の値でDSCピークまたは融点を有すると記述する場合、それは、DSCピークまたは融点が±2℃の範囲内にあることを意味する。DSCは、異なるADの結晶形態を区別するための代替的手段を提供する。異なる結晶形態が、それらの異なる転移温度プロフィールに基づいて、少なくとも部分的に、同定され得る。IRは、分子中に、光に対する応答として振動する基に伴う特定の化学結合の存在により引き起こされる赤外光の吸収を測定する。従って、DSCおよび/またはIRは、AD結晶を説明するために使用し得る物理化学的情報を提供し得る。
【0092】
(形態1)
単結晶X−線結晶学が、形態1のADを特徴づけるために使用された。3.00<2θ<45.00°の範囲中I>10σで測定された3242個の反射点を使用して最小二乗最適化から得られた格子定数および配向マトリックス(orientation matrix)は、以下のように明記されるC−中心単斜格子に一致した:a=12.85Å、b=24.50Å、c=8.28Å、β=100.2°、Z=4、空間群Cc。
【0093】
形態1のXRDパターンは通常、約6.9に、代表的には約6.9および約20.7に、またはより代表的には、約6.9、約15.7、および約20.7に、そして普通は少なくとも約6.9、約11.8、約15.7、および約20.7にピーク(単数または複数)を示す。代表的には、約6.9のXRDピーク、または通常は(1)このピーク+1個または2個のピークの足されたピーク、もしくは(2)約6.9のピーク+異なる示差走査熱量測定データまたは融点データと相まった1個または2個の他のピークのいずれかは、形態1の結晶を他の形態から区別するために、または形態1自身を同定するために十分である。形態1のスペクトルは一般に、約6.9、約11.8、約12.7、約15.7、約17.2、約20.7、約21.5、約22.5、および約23.3にピークを有する。形態1のXRDパターンは通常、約6.9および/または11.8および/または15.7および/または17.2および/または20.7および/または23.3の任意の1つ(または組合せ)にピーク(単数または複数)を示す。図1は、代表的な形態1の結晶のX−線回折パターンを示す。しかしながら、図1〜26は例示に過ぎ無いこと、および他の結晶性AD調製物の診断的描写がこれらの図からはずれ得ることが理解されるべきである。
【0094】
形態1のADは無水物であり、水をほとんど含まないか、または検出されない。一般に、形態1の結晶は普通、約1%未満の、代表的には約0.5%未満の、そして通常約0.2%未満の水を含む。その上さらに、形態1の結晶は普通、約20%未満の、代表的には約10%未満の、しばしば約1%未満の、そして通常約0.1%未満の非晶質ADを含む。しばしば、形態1の結晶は、DSC、XRD、または倍率100×での偏光顕微鏡検査により検出可能である非晶質ADを含まない。形態1のADは代表的には、結晶化浴から適切に回収される場合に、結晶化溶媒を実質的に含まない、すなわち代表的には約1%未満、通常は約0.6%未満であり、そしてそれは格子同調(lattice−entrained)溶媒分子を含まない。
【0095】
形態1の結晶は一般に、約25〜150μm、通常は約30〜80μmの光散乱による中央値サイズ(median size)を有する。個別の形態1の調製物は通常、約1〜200μmの範囲の長さを有し、そして調製物中個別の結晶について約60〜200μmの代表的な最大寸法を有する結晶を含む。いくつかの形態1の調製物において、調製物中約1〜10%の結晶が250μmよりも大きい最大寸法を有する。図4〜10において示される形態1の結晶は代表的に、タブレット状晶、板状晶、針状晶、および/または不規則な晶癖を有する。形態1の結晶の凝集がまた、約25〜150μmの代表的な直径範囲で生じる。
【0096】
形態1の結晶は、約102℃でDSC吸熱転移を(図2を参照のこと)、および本質的に図3に描画されるようなIRスペクトルを表す。異なる形態1の結晶調製物は、約0.15〜0.60g/mL、通常は約0.25〜0.50g/mLのかさ密度を、約0.10〜2.20m/g、通常は約0.20〜0.60m/gの表面積とともに有する。従って、形態1のADは、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて約6.9および/または11.8および/または15.7および/または20.7の任意の1つ(または組合せ)に現れるXRDスペクトルピーク、および示差走査熱量測定により約102℃で測定されるような吸熱転移により特徴づけられる。あるいは、形態1のADは、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて6.9±0.1、11.8±0.1、15.7±0.1、17.2±0.1、20.7±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および示差走査熱量測定により約102.0±2℃で測定されるような吸熱転移ピークおよび/または99.8±2℃の吸熱開始により特徴づけられる。
【0097】
(形態2)
形態2のXRDパターン(その例は図11に描画される)は通常、約22.0に、代表的には約18.3および約22.0に、またはより代表的には約9.6、約18.3および約22.0に、そして普通は少なくとも約9.6、約18.3、約22.0、および約32.8にピーク(単数または複数)を示す。代表的にはこれらの4個の特徴的なXRDピークのうちの任意の3個もしくは4個、あるいは通常(1)4個のピーク、または(2)これらのピークのうちの異なる走査熱量測定データまたは融点データと相まった2個もしくは3個のいずれかは、形態2の結晶を他の形態から区別するために、または形態2自身を同定するために十分である。形態2のXRDパターンは通常、約8.7〜8.9、約9.6、約16.3、約18.3、約18.9、約19.7、約21.0〜21.3、約21.4、約22.0、約24.3、約27.9、約30.8、および約32.8の任意の1つ(または組合せ)にピーク(単数または複数)を示す。
【0098】
形態2の結晶はAD二水和物であり、そしてそれらは通常、水以外の検出可能な結晶化溶媒を基本的に含まない。形態2の結晶は普通、約30%未満、代表的には約10%未満、しばしば約1%未満、通常約0.1%未満の非晶質ADを含む。一般に、結晶は、DSC、XRD、または倍率100×での偏光顕微鏡検査により検出可能である非晶質ADを含まない。形態2の結晶は代表的に、光散乱により約15〜85μm、普通約25〜80μmの中央値サイズを有する。個別の形態2の調製物は通常、約1〜300μmの範囲の長さを有する結晶を含む。形態2の結晶は、約73℃でDSC吸熱転移を(図12を参照のこと)、および実質的に図13において示されるようなIRスペクトルを有する。従って、形態2のADは、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて約9.6および/または約18.3および/または約22.0および/または約32.8の任意の1つ(または組合せ)に現れるXRDスペクトルピーク、および示差走査熱量測定により約73℃で測定されるような吸熱転移により特徴づけられる。あるいは、形態2のADは、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて9.6±0.1、18.3±0.1、22.0±0.1、24.3±0.1および32.8±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および示差走査熱量測定により約72.7±2℃で測定されるような吸熱転移ピークおよび/または69.5±2℃の吸熱開始により特徴づけられる。
【0099】
(形態3)
図14において示されるもののような形態3のXRDパターンは通常、約8.1に、代表的には約8.1および約25.4に、またはより代表的には約8.1、約19.4、および約25.4にピークを示す。代表的には、これらの3個の特徴的なXRDピークのうち任意の1個または2個、あるいは通常は(1)これらのピークのうち3個もしくは4個、または(2)これらのピークのうち異なる走査熱量測定データまたは融点データと相まった2個もしくは3個のいずれかは、形態3の結晶を他の形態から区別するために、または形態3自身を同定するために十分である。形態3のADは、示差走査熱量測定により測定されるように約85℃で吸熱転移を有する(図15)。形態3のスペクトルは普通、約8.1、約8.7、約14.1、約16.5、約17.0、約19.4、約21.1、約22.6、約23.4、約24.2、約25.4、および約30.9の任意の1つ(または組合せ)にピークを有する。
【0100】
形態1および2とは異なり、形態3の結晶は約1当量のメタノールを結晶格子中に含む。メタノールは代表的には、結晶化溶媒により付与される。しかしながら、形態3は基本的に他の検出可能な溶媒または水を含まない。形態3の結晶は普通、約20%未満の、代表的には約10%未満の、しばしば約1%未満の、通常約0.1%未満の非晶質ADを含む。結晶は、DSC、XRD、または倍率100×での偏光顕微鏡検査により検出可能である非晶質ADを含まない。形態3の結晶は代表的に、光散乱により約20〜150μm、普通約30〜120μmの中央値サイズを有する。個別の形態3調製物は通常、約1〜300μmの範囲の長さを有する結晶を含む。
【0101】
(形態4)
図16において示されるもののような形態4のXRDパターンは通常、約26.3に、代表的には約26.3および約31.7に、または代表的には約26.3、約31.7、および約15.2に、または通常約26.3、約31.7、約15.2、および約21.0にピークを示す。代表的には、これらの4個の特徴的なXRDピーク、あるいは通常(1)これらのピークのうち3個、または(2)これらのピークのうち異なる示差走査熱量測定データまたは融点データと相まった2個もしくは3個のいずれかは、形態4の結晶を他の形態から区別するために、または形態4自身を同定するために十分である。形態4のADは、示差走査熱量測定により測定されるように約121℃および約148℃で吸熱転移を有する(図17)。形態4のスペクトルは普通、約9.8、約15.2、約15.7、約18.1、約18.3、約21.0、約26.3、約31.7の任意の1つ(または組合せ)にピークを有する。従って、形態4のADは、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて約15.2および/または約21.0および/または約26.3および/または約31.7の任意の1つ(または組合せ)に現れるXRDスペクトルピーク、および示差走査熱量測定により約121.3℃および約148.4℃で測定されるような吸熱転移により特徴づけられる。あるいは、形態4のADは、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて9.8±0.1、18.1±0.1、21.0±0.1、26.3±0.1および31.7±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および示差走査熱量測定により約121.3±2℃および148.4±2℃で測定されるような吸熱転移ピークにより特徴づけられる。
【0102】
(有機および無機酸の結晶性塩)
図18〜26は、ADと有機および無機酸との結晶性塩、またはあるいは複合体から得られたXRDスペクトルを示す。これらの塩は、ヘミ硫酸塩または複合体(図18)、臭化水素酸塩または複合体(図19)、硝酸塩または複合体(図20)、メシレート(CHSOH)塩または複合体(図21)、スルホン酸エチル塩(CSOH)または複合体(図22)、β−ナフチレンスルホン酸塩または複合体(図23)、α−ナフチレンスルホン酸塩または複合体(図24)、(S)−カンファースルホン酸塩または複合体(図25)、およびコハク酸塩または複合体(図26)である。これらのXRDスペクトルは、化合物を特徴付け、そして各化合物を他の結晶性形態から識別させる多数のピークを示す。
【0103】
図18は、ヘミ硫酸塩または複合体が、角2θにおいて、約8.0、約9.5、約12.0、約14.6、約16.4、約17.0、約17.5〜17.7、約18.3、約19.0、約20.2、約22.7、約24.1、および約28.2の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。塩または複合体は、約131〜134℃の融点を有する。従って、塩または複合体は、これらの特有のXRDピーク4個を約12.0、約14.6、約16.4、および約17.5〜17.7に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして約131〜134℃の融点を有するものとして特徴づけられ得る。あるいは、ADのヘミ硫酸塩は、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて8.0±0.1、12.0±0.1、14.6±0.1、16.4±0.1、および17.5〜17.7±0.3に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および131〜134±2℃の融点により特徴づけられる。
【0104】
図19は、臭化水素酸塩または複合体が、角2θにおいて、約13.2、約14.3、約15.9、約17.8、約20.7、約21.8、約27.2、および約28.1の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。塩または複合体は、加熱すると約196〜199℃で分解する。従って、塩または複合体は、4個の特有のXRDピークを約13.2、約14.3、約17.8、および約28.1に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして加熱すると約196〜199℃で分解するものとして特徴づけられる。あるいは、ADの臭化水素酸塩は、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて13.2±0.1、14.3±0.1、17.8±0.1、20.7±0.1、および27.2±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および196〜199±2.0℃の分解点により特徴づけられる。
【0105】
図20は、硝酸塩または複合体が、角2θにおいて、約8.0、約9.7、約14.1、約15.2、約16.7、約17.1、約18.3、約18.9、約19.4、約20.0、約21.2、約22.3、約23.2、約24.9、約27.6、約28.2、約29.4、および約32.6の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。この塩または複合体は、加熱すると約135〜136℃で分解する。従って、この塩または複合体は、4個の特有のXRDピークを約14.1、約23.2、約29.4、および約32.6に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして約131〜134℃の融点を有するものとして特徴づけられ得る。あるいは、ADの硝酸塩は、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて8.0±0.1、14.1±0.1、23.2±0.1、29.4±0.1、および32.6±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および135〜136±2℃の分解点により特徴づけられる。
【0106】
図21は、メシレート塩または複合体が、角2θにおいて、約4.8、約15.5、約16.2、約17.5、約18.5、約20.2、約24.8、約25.4、および約29.5の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。この塩または複合体は、約138〜139℃の融点を有する。従って、この塩または複合体は、4個の特有のXRDピークを約4.8、約15.5、約20.2、および約24.8に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして約138〜139℃の融点を有するものとして特徴づけられ得る。あるいは、ADのメシレートは、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて4.8±0.1、15.5±0.1、16.2±0.1、20.2±0.1、および24.8±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および138〜139±2℃の融点により特徴づけられる。
【0107】
図22は、エチルスルホン酸塩または複合体が、角2θにおいて、約4.4、約8.8、約18.8、約23.0〜23.3、および約27.3の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。この塩または複合体は、約132〜133℃の融点を有する。従って、この塩または複合体は、4個の特有のXRDピークを約4.4、約8.8、約18.8、および約27.3に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして約132〜133℃の融点を有するものとして特徴づけられ得る。あるいは、ADのエチルスルホン酸塩は、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて4.4±0.1、8.8±0.1、18.8±0.1、23.0〜23.3±0.3、および27.3±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および132〜133±2℃の融点により特徴づけられる。
【0108】
図23は、β−ナフチレンスルホン酸塩または複合体が、角2θにおいて、約9.8、約13.1、約16.3、約17.4、約19.6、約21.6〜22.3、約23.4、約24.1〜24.5、および約26.6の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。この塩または複合体は、約156〜157℃の融点を有する。従って、この塩または複合体は、4個の特有のXRDピークを約13.1、約17.4、約23.4、および約26.2に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして約156〜157℃の融点を有するものとして特徴づけられ得る。あるいは、ADのβ−ナフチレンスルホン酸塩は、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて9.8±0.1、13.1±0.1、17.4±0.1、23.4±0.1、および26.2±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および156〜157±2℃の融点により特徴づけられる。
【0109】
図24は、α−ナフチレンスルホン酸塩または複合体が、角2θにおいて、約8.3、約9.8、約11.5、約15.6、約16.3、約16.7〜17.4、約19.6、約21.0、約22.9、約23.7、約25.0、および約26.1の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。この塩または複合体は、約122〜128℃の融点を有する。従って、この塩または複合体は、4個の特有のXRDピークを約9.8、約15.6、約19.6、および約26.1に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして約122〜128℃の融点を有するものとして特徴づけられ得る。あるいは、ADのα−ナフチレンスルホン酸塩は、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて9.8±0.1、15.6±0.1、19.6±0.1、21.0±0.1、および26.1±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および122〜128±2℃の融点により特徴づけられる。
【0110】
図25は、(S)−カンファースルホン酸塩または複合体が、角2θにおいて、約5.4、約6.5、約13.7、約15.5、約16.8〜17.2、約19.6、約20.4〜20.7、約21.2、約23.1、約26.1、約27.5、約28.4、約31.3、および約32.2の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。この塩または複合体は、約160〜161℃の融点を有する。従って、この塩または複合体は、4個の特有のXRDピークを約5.4、約6.5、約13.7、および約16.8〜17.2に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして約160〜161℃の融点を有するものとして特徴づけられ得る。あるいは、ADの(S)−カンファースルホン酸塩は、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて5.4±0.1、6.5±0.1、13.7±0.1、16.8〜17.2±0.3、および19.6±0.1に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および160〜161±2℃の融点により特徴づけられる。
【0111】
図26は、コハク酸塩または複合体が、角2θにおいて、約4.7、約9.5、約10.6、約14.9、約16.3、約17.4、約17.9、約19.9、約20.8、約22.1、約23.9〜24.2、約26.5、約27.6、および約28.2の任意の1つ(または組合せ)に、特有のXRDピークを有することを示す。この塩または複合体は、約122〜124℃の融点を有する。従って、この塩または複合体は、4個の特有のXRDピークを約4.7、約9.5、約14.9、および約17.4に有するものとして特徴づけられる。化合物はさらに、これらのXRDピークのうちの3個または4個を有し、そして約122〜124℃の融点を有するものとして特徴づけられ得る。あるいは、ADのコハク酸塩は、Cu−Kα照射を使用して、角2θにおいて9.5±0.1、14.9±0.1、16.3±0.1、17.4±0.1、および23.9〜24.2±0.3に現れる明らかなXRDスペクトルピーク、および122〜124±2℃の融点により特徴づけられる。
【0112】
本発明の実施態様は、アデフォビルジピボキシルの結晶性塩(例えば、上記で特徴づけられるような塩)および薬学的に受容可能な賦形剤(単数または複数)を含む組成物を含む。他の実施態様は、アデフォビルジピボキシルの結晶性塩(例えば、上記で特徴づけられるような塩)および薬学的に受容可能な賦形剤(単数または複数)を接触させることにより薬学的に受容可能な組成物を調製するプロセスを含む。他の実施態様は、アデフォビルジピボキシルの結晶性塩(例えば、上記で特徴づけられるような塩)および薬学的に受容可能な賦形剤(単数または複数)を接触させるプロセスにより生成された生成物を含む。
【0113】
(ADを合成するための方法)
下の図解Aは、ADおよび形態1のAD結晶を作るための代表的なプロセスの作業工程図を示す。
【0114】
【化1】

【0115】
図解Aおよび以下の記載に示されるプロセスの工程は、望まれれば、その規模を拡大または縮小し得る。
【0116】
(p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホン酸ジエチルの合成法)
実施態様において、図解A、工程1に示されるp−トルエンスルホニルオキシメチルホスホン酸ジエチルの合成が以下のように記載される。不活性雰囲気(例えば、窒素)を有する反応容器中、トルエン(2.69kg)中の、亜リン酸ジエチル(0.8kg)、パ
ラホルムアルデヒド(0.22kg)、およびトリエチルアミン(0.06kg)の混合物を、撹拌しながら87℃(84〜110℃)まで2時間加熱し、次いで還流するまで加熱し、そして反応が完了するまで1時間還流したままにする。反応の完了は、TLCによりモニターされ(検出し得る亜リン酸ジエチルがごく微量であるか全くない)、そしてH NMRがδ8.4〜8.6 ppmに1%にすぎない亜リン酸ジエチルのピークを示すことにより確認する。溶液を約1℃(−2〜4℃)まで冷却し、そしてp−トルエンスルホニルクロリド(1.0kg)を加え、次いで10℃にすぎない温度でトリエチルアミン(0.82kg)をゆっくりと加える(発熱反応で、約3〜6時間にわたる)。生成する混合物を22℃(19〜25℃)まで加温し、そして反応が完了するまで少なくとも5時間(代表的には、約16〜24時間)撹拌する。反応の完了は、TLCによりモニターされ(検出し得るp−トルエンスルホニルクロリドがごく微量であるか全くない)、そしてH NMRにより確認する(δ7.9 ppmのp−トルエンスルホニルクロリドの二重線がもはや検出されない)。固体を濾過により除去し、そしてトルエン(0.34kg)で洗う。合わせた洗液および濾液を、水で2回(各1.15kg)、または必要に応じて、水(1.15kg)、5%の炭酸ナトリウム水溶液(3.38kg)、および水で2回(各1.15kg)の順でのいずれかで洗う。乳濁液が生じる場合、ブラインを最初の有機/水混合物に加えてもよい。50℃にすぎない有機相を、減圧蒸留し(LODに対して10%にすぎず、および水含有量は、KF(Karl Fischer)滴定により0.5%にすぎない)、表題化合物を、トルエンを除いて約85〜95%の純度の油状物として得る。油状物は冷却すると粘性になり得る。
【0117】
(9−(2−ヒドロキシエチル)アデニンの合成法)
実施態様において、図解A、工程2に示される9−(2−ヒドロキシエチル)アデニンの合成が以下のように記載される。不活性雰囲気(例えば、窒素)を有する反応容器中、水酸化ナトリウム(6g)を、DMF(2.5kg)中のアデニン(1.0kg)および溶融した炭酸エチレン(0.72kg、融点37〜39℃)のスラリーに加え、そして混合物を、反応が完了するまで撹拌しながら125℃(95℃〜還流)まで加熱する(混合物の温度が110℃〜還流の場合約3〜9時間、または95〜110℃の場合約15〜48時間)。反応の完了は、HPLCによりモニターされる(0.5%にすぎないアデニンが残存する)。混合物を50℃以下まで冷却し、そしてトルエン(3.2kg)で希釈する。生成するスラリーを3℃(0〜6℃)まで冷却し、そして少なくとも2時間撹拌する。スラリーを濾過し、そしてフィルターケーキを冷(0〜5℃)トルエンで2回(各0.6kg)洗う。フィルターケーキを減圧下35〜70℃で乾燥し(H NMRまたはLODにより、2%にすぎないトルエン)、そして必要に応じて粉砕して、表題化合物を白色〜白っぽい色の粉末性固体として得る。
【0118】
(9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)エチル]アデニンの合成法)
この化合物を、ナトリウムアルコキシド(C1〜6アルキル)、および9−(2−ヒドロキシエチル)アデニンを含む組成物を使用して調製する。ナトリウムアルコキシド、代表的にはナトリウムt−ブトキシドまたはナトリウムi−プロポキシドを、DMFのような溶媒中、約20〜30℃の温度で、約1〜4時間にわたり、9−(2−ヒドロキシエチル)アデニンと接触させる。合成は、代表的には、1モル当量の9−(2−ヒドロキシエチル)アデニンと、約1.2〜2.2モル当量のナトリウムアルコキシドとで良好な結果を与える。
【0119】
実施態様において、図解A、工程3に示される9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)エチル]アデニンの合成が以下のように記載される。不活性雰囲気(例えば、窒素)を有する反応容器中、9−(2−ヒドロキシエチル)アデニン(1.0kg)およびDMF(4.79kg)のスラリーを30〜60分間約130℃(125〜135℃)まで加温する。反応容器の内容物を、激しく撹拌しながら約25℃(20〜30℃)まで急速に冷
却し、そして激しく撹拌しかつ内容物温度を25℃(20〜30℃)に維持しながら、ナトリウムtert−ブトキシド(0.939kg)を約1〜3時間かけて小分けして加える。すべてのナトリウムtert−ブトキシドを加えてしまった後、約15〜45分間撹拌と温度を維持する。次いで、反応容器の内容物を約−10℃(−13〜0℃)まで冷却し、そしてp−トルエンスルホニルオキシメチル−ホスホン酸ジエチル(純度を基準にして2.25kg)のDMF(1.22kg)溶液を約5〜10時間かけて加える。混合物を、反応が完了するまで(代表的には、p−トルエンスルホニルオキシメチル−ホスホン酸ジエチルの最後の部分を加えてしまった後約0.5〜2時間)約−5℃(−10〜0℃)に保つ。反応の完了は、HPLCによりモニターされる(3%にすぎない9−(2−ヒドロキシエチル)アデニンが残存する)。氷酢酸(0.67kg)を、容器温度を20℃にすぎない温度に制御しながら加える。約22℃(15〜25℃)の混合物を約15〜45分間撹拌する。クエンチされた混合物を、蒸留が止むまで減圧下濃縮し、次いで内容物を40℃以下まで冷却する。塩化メチレン(16.0kg)を加え、そして20℃(15〜25℃)で内容物を少なくとも1時間撹拌する。DMF含有量対固体総量(NaOTs(ナトリウムトシレート)、NaOAc、EtPMEA)が20%よりも大きい(
NMRにより)場合、混合物を、蒸留が止むまで減圧下濃縮し、内容物を40℃以下まで冷却し、塩化メチレン(16kg)を加え、そして約20℃(15〜25℃)で反応容器内容物を少なくとも1時間撹拌する。珪藻土(0.5kg)を加え、そして内容物(これは約20℃(15〜25℃)にある)を少なくとも1時間撹拌する。濾過により固体を除去し、そしてCHClで3回(それぞれ約1kg)洗う。80℃にすぎない濾液および洗液を、蒸留が止むまで減圧下濃縮し、反応容器の内容物を40℃以下まで冷却し、塩化メチレン(5.0kg)を残渣に加え、そして約25℃(20〜40℃)で内容物を撹拌して固体を溶解する。80℃にすぎない生成する溶液を、蒸留が止むまで減圧下濃縮する。塩化メチレン(7.0kg)を加え、そして約25℃(20〜40℃)で内容物を撹拌して固体を溶解する。ジエチルPMEAに対するDMF含有量が12%よりも大きい場合、80℃にすぎない混合物を減圧下濃縮し、内容物を40℃以下まで冷却し、塩化メチレン(7.0kg)を加え、そして約25℃(20〜40℃)で内容物を撹拌して固体を溶解する。混合物を、約25℃(22〜30℃)で、約15〜45分間撹拌することにより水(0.8kg)で洗う。4時間で相を分離させ、次いで相を分離する。水相を、溶液を約25℃(22〜30℃)に維持しながら、塩化メチレン(1回の洗浄あたり1.5kg)で約15〜45分間撹拌することにより2回逆抽出し、続いて少なくとも2時間で相を分離させる。次いで、80℃にすぎない合わせた有機相を蒸留が止むまで減圧下濃縮する。トルエン(3.0kg)を加え、約25℃(22〜30℃)で約15〜45分間撹拌し、そして80℃にすぎない生成する混合物を減圧下共沸させる。トルエン(3.0kg)を加え、そして混合物を約80℃(75〜85℃)まで加熱し、約15〜45分間撹拌し、約60〜90分かけて30℃以下まで冷却し、次いで約0℃(−3〜6℃)まで冷却する。約0℃でゆっくりと撹拌しながら少なくとも12時間後、生成するスラリーを濾過し、そしてフィルターケーキを冷(約0〜6℃)トルエンで3回(1回の洗浄あたり0.2kg)洗う。湿ったケーキを減圧下約50℃(35〜65℃)で乾燥し、そして乾燥した生成物を粉砕する。生成物の乾燥を、水の除去についてモニターする(KF滴定により0.3%にすぎない水が検出される)。不活性雰囲気を、工程3の間中維持する。
【0120】
(PMEAの合成法)
1つの実施態様において、図解A、工程4に示されるPMEAの合成が以下のように記載される。不活性雰囲気(例えば、窒素)を有する反応容器中、ジエチルPMEA(1.00kg)、アセトニトリル(2.00kg)、およびブロモトリメチルシラン(1.63kg)の混合物を、撹拌しながら還流するまで加熱し、そして反応が完了するまで約1〜3時間還流を維持する。反応の完了を、31P NMRまたはHPLCによりモニターする(ジエチルPMEAが検出されず、そして2%以下のモノエチルPMEAが検出される)。80℃以下の溶液を減圧下蒸留して半固体にし、これを水(2.00kg)中にと
り、そして撹拌しながら約30〜60分間約55℃(52〜58℃)に加温して全ての固体を溶解する。得られる混合物を約22℃(19〜25℃)に冷却し、水性水酸化ナトリウムでpH3.2に調整し、内容物を、粘稠度が薄くなるまで(約15〜120分間)約75℃(72〜78℃)に加熱し、約3℃(0〜6℃)に冷却し、そして少なくとも3時間(3〜6時間)撹拌する。スラリーを濾過し、そしてフィルターケーキを水(1.00kg)で洗う。湿ったケーキを水(3.75kg)中に懸濁させ、そして懸濁液を激しく撹拌しながら約75℃(72〜78℃)に加熱する。約2時間撹拌後、スラリーを約3℃(0〜6℃)に冷却し、そして少なくともさらに2時間撹拌する。スラリーを濾過し、そしてフィルターケーキを、2部の水(1回の洗浄あたり0.50kg)および2部のアセトン(1回の洗浄あたり1.00kg)で連続して洗う。単離した固体を約90℃以下で真空中で乾燥して低水分含有量(KF滴定により0.5%以下の水が検出される)にし、白色結晶としてPMEAを提供する。生成物を粉砕して微粒子の大きさにする。
【0121】
(ADの合成法)
例示的なADの調製法は、1モル当量のPMEAを約5.68〜56.8当量のNMPの量/当量PMEA中に懸濁する工程、およびPMEAを懸濁した後、約2〜5モル当量、しばしば約2.5〜3.5、通常は約3モル当量のトリエチルアミン(「TEA」)を、穏やかにまたは中程度に撹拌しながら溶液に加える工程を含む。次いで、約3〜6モル当量、しばしば約4.5〜5.5モル当量、通常は約5当量のクロロメチルピバレートを加え、反応混合物を得る。本発明者は、通常反応混合物を室温で調製する。反応混合物を加熱し、66℃未満の、代表的には約28〜65℃、通常は約55〜65℃の間の温度に約2〜4時間維持して反応を進行させる。反応混合物を約28〜65℃に加熱するために必要とする時間は重要ではなく、そして反応混合物の体積および混合物を加熱するために使用される装置の能力に依存して変化し得る。穏やかなまたは中程度の撹拌が反応の間にわたって固体を懸濁状態に維持し、そしてこの事が反応容器中の反応物質の大量の飛びはねを最小限にする。この方法は、代表的には所定の条件下、列挙された反応物質の反応プロセスにより生成されるADを含む生成物をもたらす。
【0122】
1つの実施態様において、図解A、工程5に示されるPMEAのADへの転換が以下のように記載される。不活性雰囲気(例えば、窒素)を有する反応容器中、1−メチル−2−ピロリジノン(3.15kg)、PMEA(1.00kg)、トリエチルアミン(1.11kg)、およびクロロメチルピバレート(2.76kg)の混合物を約60±3℃(66℃以下)に加熱し、そして中程度の撹拌を使用して、31PNMRまたはHPLCにより示されるように(15%以下のモノ(POM)PMEA)、反応が完了するまで4時間以下(1〜4時間)撹拌する。混合物を酢酸イソプロピル(12.00kg)で希釈し、25±3℃に冷却し、そして約30分間撹拌する。固体を濾過により除去し、そして酢酸イソプロピル(5.0kg)で洗う。合わせた有機物を、水(1回の洗浄あたり3.70kg)で2回、25±3℃の混合物温度で15〜45分間混合物を中程度に撹拌することにより洗う。合わせた水性洗液を、酢酸イソプロピル(1回の抽出あたり4.00kg)で2回、25±3℃の混合物温度で、約15〜45分間撹拌することにより逆抽出する。25±3℃の合わせた有機物を、水(1.80kg)で15〜45分間撹拌することにより洗い、次いで約35±5℃(40℃以下)の有機物を減圧下濃縮して最初の体積のほぼ40%にする。ポリッシング濾過(polishing filtration)(1μmフィルター)、および1.5kgの酢酸イソプロピルでの先の洗浄後、色の薄い油状物が約35±5℃(50℃以下)で有機物として残るまで、有機物の減圧濃縮を再開する。油状物は代表的に、約6〜45%の、通常は約30〜42%のADを含む。
【0123】
(AD結晶化のための方法)
有機油状物からのADの結晶化は、通常以下によりなし遂げられる:(1)AD合成反応中、反応物質として存在するPMEAの量と比較して相対的に少ない体積のNMP、す
なわちPMEA1グラムあたり約10mL未満のNMPを使用すること、および/または(2)減圧蒸留のために十分な時間、すなわち通常は少なくとも約4〜6時間を許可することにより減圧蒸留後の有機油状物中に混入した(entrained)ままである酢酸イソプロピルの量を最小限にすることにより。反応開始材料、例えばNMPまたはPMEAの、油中の凝集体は、結晶化溶媒の約2〜20%と説明され得るが、しかし一般に約1〜2%である。有機油状物から結晶が調製される場合、約20〜45%、しばしば約30〜42%、そして通常は約35〜42%のADが結晶化溶媒を加える前に油状物中に存在している。
【0124】
必要に応じて、ADが過飽和溶液から結晶化される。結晶核形成はこのような過飽和溶液中で生じ、そして容易に結晶形成を導く。結晶核形成の速度は代表的に、過飽和の程度および温度が上昇すると増加する。過飽和溶液は代表的に、温度の変化(通常はそれを下げる)、溶媒のエバポレーション、または溶媒の組成の変更(例えば、混和性の非溶媒または貧溶媒を加えることによる)により調製される。これらの方法の組合せ(例えば、溶質濃度を増加しながら溶液の冷却も行うために減圧下でのエバポレーションを使用する)もまた、過飽和AD溶液を生成する。
【0125】
結晶性ADは、通常は、少なくとも約6%の、代表的には少なくとも約30%の、通常は少なくとも約35%のADを含む結晶化混合物中のAD溶液から、AD組成物中に結晶を形成させることにより調製される。普通、結晶化は、約6〜45%のADおよび約55〜94%の結晶化溶媒を含むAD溶液を調製することにより行われる。ADの溶解性の上限は、大抵の結晶化溶媒について、室温で約10〜41%である。ADはいくつかの結晶化溶媒おいて無条件に溶解性ではなく(例えばジ−n−ブチルエーテル中のADの溶解性は、約0.3mg/mL未満である)、そしてこれらの溶媒をAD溶液へ加えることは、溶液の飽和または過飽和の程度を増加させる。通常、結晶化溶媒中、溶解性の上限に近い量のADを含む有機溶液を使用する。より少ない量(約6%)は、確実に結晶を得るために溶液に必要とされるADの最小量である。特定の溶媒(例えば、メタノールまたはCHCl)は、約50%より多いADを含有し得る。
【0126】
結晶化が行われる温度は重要ではなく、そして結晶化プロセスが通常ある範囲の温度にわたり自発的に進行するので、変更し得る。約35℃、特に約45〜50℃より高い温度での結晶化は、収率の低下および/または結晶に伴う不純物の増加をもたらし得る。結晶化は一般に、約−5℃〜約50℃、しばしば約0〜35℃、通常は約4〜23℃の温度範囲で行われる。必要に応じて、結晶の収率を上げるために、または結晶形成速度を促進するために約−5℃より低い結晶化温度が使用され得るが、しかし低温プロセスは副生成物の増加をもたらし得る。従って、ほぼ周囲温度(約15〜23℃)で、または大抵の冷却装置または方法が容易に到達し得る代表的な冷却温度(約0〜4℃)でのいずれかで溶媒を使用することが、一般により簡便でありそして経済的である。溶液が相対的に低い濃度、すなわち約10〜20%のADを含む場合、相対的に低い温度、すなわち約0〜15℃での結晶化がしばしば結晶の収率を向上させる。
【0127】
ADおよび結晶化溶媒(単数または複数)を含む溶液を室温より高い温度、好ましくは約35℃に加熱することは、恐らく結晶核形成速度を増加させることにより、結晶化を促進するようである。結晶化混合物を約35℃に加熱するための時間は重要ではなく、そして使用される装置の能力に依存して変化し得、通常は約20〜45分の間にわたる。次いで加熱が中止され、そして冷却することにより、または温度を下げることにより、約10〜120分間温度が下げられる。この時間の間、結晶が形成し、そして少なくとも約4〜36時間の間にわたり形成し続ける。結晶化は通常、結晶化混合物が35℃に達した直後にまたは少し後に始まる。本発明者は、溶液が35℃に達した後温度を約0〜23℃に下げることにより、結晶化を行う。穏やか〜中程度の撹拌を伴うかまたは伴わない、代表的
には穏やかな撹拌を伴う結晶化は、慣用的に良好な結果を与える。
【0128】
目に見えるほどの結晶化は通常、約5分〜約72時間の間にわたり生じ、そして約10〜16時間が、使用された溶媒に関わらず慣用的に良好な結果を与える。結晶化の時間は重要ではなく、そして変化し得るが、比較的短い結晶化時間(約30〜90分)はADの回収の減少をもたらし得る。結晶化溶媒を、他の有機溶媒(例えばNMP)を含む反応混合物へ加える場合、結晶化は、通常、いったん温度が約35℃またはそれ以下に達してしまうと直ちに始まり、そして溶液は濁った状態になる。
【0129】
結晶化は、一般的な研究所または製造プラント装置(例えば、丸底フラスコ、三角フラスコ、ステンレス鋼反応容器、またはガラス裏打ち反応容器)中で行われる。通常、機械的撹拌および温度制御のための標準的な研究室規模、または商業的規模の製造装置を使用して結晶化が行われる。
【0130】
2種の異なる溶媒を含む結晶化系を使用する場合、一般に、最も極性の高い溶媒が最初にADに加えられ、続いてより極性の低い溶媒が加えられる。必要に応じて、最初の結晶化溶媒を加えた後に、未溶解成分がもしあれば、例えば濾過または遠心分離により溶液から除去される。例えば、ADとAD合成反応由来の成分とを含む有機溶液から形態1の結晶を調製するために、アセトンおよびジ−n−ブチルエーテルを使用する場合、通常アセトンを最初に加える。同様に、ジ−n−ブチルエーテルを加える前にn−ブタノールが加えられ、またはジ−n−プロピルエーテルの前に酢酸エチルが加えられる。第一の極性溶媒を含む溶液は、存在し得るモノ(POM)PMEAの析出のために濁った状態になり得る。次いで、モノ(POM)PMEAは、標準的な物理的方法(例えば、濾過または遠心分離)により溶液から除去され得、続いて第二の溶媒(例えば、ジ−n−ブチルエーテル)が加えられる。
【0131】
形態1の結晶を調製するために本発明者が使用する結晶化溶媒は、一般に約0.2%未満の水を含む。結晶化溶媒中に、かなりの量(すなわち約1〜2%)の水が存在する場合、結晶化プロセスは様々な量の形態2の結晶(これもまた、形態1の結晶と一緒に回収される)を生成する。結晶化反応中に存在する水の量は、必要に応じて、従来の手段により減少され、これは無水試薬を使用すること、またはモレキュラーシーブもしくは他の公知の乾燥剤を使用して溶媒を乾燥することによるものを含む。必要に応じて、ADを含む有機溶媒中 (例えば、上記で記載される有機油状物のような副生成物および溶媒を含むAD合成反応より)
に存在し得る水の量が、結晶化溶媒を加える前に、水を減らすために酢酸イソプロピルのような共溶媒との共沸を使用することにより減少される。
【0132】
実施態様において、図解A、工程6に示される形態1のADの結晶化が、以下のように記載される。上記で記載されるADを含む色の薄い油状物を、35±3℃に加熱して、アセトン(1.0kg)に溶解し、そして温度を約32〜38℃に保持しおよび中程度に撹拌しながら、ジ−n−ブチルエーテル(5.00kg)で約4倍に希釈する。透明な溶液を約30〜60分にわたり(90分以下)約25〜30℃に冷却し、少量の形態1のAD結晶(約5g)をシード添加し、次いで内容物を、中程度に撹拌したまま約30〜60分にわたり(90分以下)、22±3℃に冷却する。混合物の中程度の撹拌を、最小で約15時間、22±3℃で続ける。生成するスラリーを濾過し、そしてフィルターケーキを、予め混合したアセトン(0.27kg)のジ−n−ブチルエーテル(2.4kg)溶液(1:9v/v)で洗う。必要に応じて、湿った固体を、予め混合したアセトン(0.57kg)およびジ−n−ブチルエーテル(4.92kg)を加え、撹拌しながら内容物の温度を約15〜24時間22±3℃に保持することにより、さらに精製する。次いで、固体を濾過し、そしてフィルターケーキを予め混合したアセトン(0.27kg)およびジ−
n−ブチルエーテル(2.4kg)で洗う。35℃以下(約25〜35℃)に保持されたフィルターケーキを、約1〜3日間減圧で乾燥し(0.5%以下のLOD)、形態1のADを白色〜オフホワイトの粉末状固体として得る。乾燥した生成物を粉砕する。
【0133】
本発明は形態2の結晶を調製する方法を含む。水和物は結晶化を妨げない量の水を含むが水和に必須の水を提供する結晶化溶媒からのADの結晶化により得られ得るが、形態2の結晶は、形態1の結晶を水和することにより簡便に調製される。水は氷、液体の水、または水蒸気として存在し得る。代表的には、形態2の結晶の形成のための条件下、形態1の結晶と物理的に接触した状態に置かれる。形態1の結晶は必要に応じて、形態1から形態2の結晶への完全な転換を得るための少なくとも約75%の相対湿度で、ガス中(例えば、空気、二酸化炭素、または窒素)水蒸気と接触させられる。形態1の結晶は通常、形態2への完全な転換を得るために、約1〜10日間、約18〜30℃で、または代表的には室温で、少なくとも約75%の相対湿度で空気と接触させられる。しかしながら、形態1の結晶は本質的に、空気中室温で54%の相対湿度では非吸湿性であり、13日間曝露した後も、水の含有量は増加しない。
【0134】
形態1から形態2の結晶への水和のプロセスは、形態1および形態2のAD結晶の混合物を含む組成物を生成し、ここで形態1のAD結晶の割合は、形態2であるADとつり合いをとって、約100%から0%まで変化する。従って、形態2の結晶の割合は、転換プロセスの間0%から100%に増加する。これらの組成物は、タブレットのような処方物を含み得る。
【0135】
上記で注記されるように、形態2の結晶はまた、水の存在下、例えば約2〜5%の水が結晶化溶媒(単数または複数)中に存在するAD結晶化(それ以外は、形態1の結晶を作るために使用される)を行うことにより調製される。結晶化は、基本的に形態1の結晶について上記で記載されたように、例えば約4〜36時間にわたり約0〜23℃で生じる。このような調製物は、いくらかの形態1の結晶を含み得るが、しかし残存するどのような形態1の結晶も、必要に応じて、上記で記載されるように水蒸気に曝露することにより、または結晶化溶媒へさらに十分な水を加えることにより、形態2の結晶へ転換される。
【0136】
通常、形態3の結晶は、ADの無水メタノール溶液中で結晶を成長させることにより調製される。十分な非晶質のまたは結晶性ADを、約10〜15分間室温で混合することによりメタノール中のADを得るか、または固体のADを溶解して溶液を得るために必要であるので少なくとも約100〜150mgのAD/mLメタノールを用いる。室温でのADのメタノールへの溶解性は、600mg/mLよりも大きい。次いで、結晶化は約4〜約48時間、約−5℃〜約25℃の温度で、通常は約0〜23℃の温度で進行する。
【0137】
単独の結晶化溶媒として酢酸イソプロピルを使用して得られる結晶は、代表的に主として柱状晶であり、これはかなり長いものであり得る、すなわち約500μmの長さまで測定され、わずかに針状晶もまた存在する。図8は、酢酸イソプロピル中、約15℃より高い温度での結晶化により得られた、約20〜500μmの長さの柱状結晶を示す。
【0138】
過飽和AD溶液からの、および飽和または幾分未飽和のAD溶液からの結晶化は、必要に応じてADのシード結晶を溶液へ加えることにより促進または向上されるが、しかしシード結晶は必須ではない。例えば、少量の結晶性形態1のADを上記で記載されるような有機溶液、例えば結晶化溶媒が加えられているが、しかし35℃まで加熱されていない有機油状物へ加えることにより、形態1のAD結晶が得られる。シード結晶は形態1の結晶の形成を促進する。形態2および形態3の結晶が同様に、適切な溶液(例えば、形態2の結晶について酢酸エチルおよび約2%の水を含む有機溶液、または形態3の結晶について、無水メタノールのADの飽和溶液)にそれぞれの結晶形態をシード添加することにより
、得られ得る。シード結晶として使用される結晶の量は、必要に応じて、最適な結果を得るために変更される。一般に、1LのAD再結晶化溶液あたり約0.1〜01.0gの結晶が十分である。
【0139】
必要に応じて、結晶性ADは希望通りに、例えば結晶の純度を上げるために再結晶され得る。
【0140】
例えば、形態1のADは、上記で記載された形態1の結晶を調製するために使用されたのと基本的に同じ方法により再結晶される。例えば、アセトンおよびジ−n−ブチルエーテルを使用する再結晶化は、結晶性ADをアセトン中に約0.2〜0.4g/mL、約20〜35℃で溶解し、続いて必要に応じて未溶解の成分を、例えば溶液(これは通常濁りを帯びている)を濾過または遠心分離することにより除去することにより、なし遂げられる。未溶解の成分は、代表的にはモノ(POM)PMEAである。次いで、溶液を約35〜40℃に加温し、そして再結晶に最初に使用された結晶0.2〜0.4gあたり約5.2〜6.2mL(通常は約5.7mL)の温(約35〜40℃)ジ−n−ブチルエーテルを加える。次いで、再結晶化混合物は約4〜4.5時間かけて室温まで冷却される。再結晶化混合物は、相対的に少ない容量、例えば約1〜3Lが使用される場合に、より早く室温まで冷える。混合物を冷却する時間は重要ではなく、そして変化し得る。
【0141】
一般に、再結晶化はジ−n−ブチルエーテルの添加および混合が完了したすぐ後に始まり、次いで再結晶化は約4〜36時間、通常は約6〜24時間進行させられる。室温で約4〜36時間の再結晶化からさらに得られる結晶は、通常再結晶化混合物を約4〜10℃に冷却し、そして混合物を低温に約1〜6時間放置することにより得られる。通常、再結晶化に使用されるADの量は、飽和またはほぼ飽和した溶液を形成するのに十分である、すなわち、アセトンを使用して約0.4g/mLである。ADのアセトンへの溶解は、中程度に撹拌して約2〜8分で完了する。この最初の混合期間後に未溶解のままである材料は除去および廃棄され、続いて溶媒対のより極性の低い第二の溶媒が、第一の結晶化溶媒を含む混合物へ加えられる。
【0142】
必要に応じて、アセトンのような単一の溶媒を使用して形態1の結晶が再結晶される。この実施態様において、十分な結晶を室温で溶媒に溶解して飽和またはほぼ飽和した溶液を得、続いて未溶解の生物を除去する。次いで、混合物を35℃に加温し、そしてそれを、アセトンおよびジ−n−ブチルエーテル溶媒対を使用する再結晶化について記載されたように冷却させる。
【0143】
形態2の結晶の再結晶化は、形態1の結晶の再結晶化について記載されたように進行するが、しかし再結晶化溶媒に溶解した形態2の結晶を使用する。再結晶化から得られる形態1の結晶は、必要に応じて、形態1から形態2の結晶への転換について本明細書中で記載されたように、形態2の結晶へ転換される。形態2から形態1の結晶への再結晶化もまた、なし遂げられ得る。この場合、モレキュラーシーブまたは他の溶媒乾燥手段が必要に応じて、形態2の結晶が第一の溶媒に溶解された後および再結晶化プロセスの間、存在する水の量を抑えるために使用され得る。形態2の結晶はまた、約1〜2%の水を含む溶媒を使用して再結晶されて、直接形態2の結晶を得る。
【0144】
メタノール中の形態3の再結晶化が、形態3の結晶の調製について本明細書中で記載されたのと同じ方法で行われる。飽和またはほぼ飽和したメタノール溶液、すなわち少なくとも約0.6g/mLのADが、結晶を調製するために使用される。
【0145】
必要に応じて、特定の有機および無機酸をADのアデノシンにある塩基性中心へ酸付加することで塩が調製される。一般に、酸の塩は標準的な方法により調製され、この方法は
、AD遊離塩基を、選択された酸または酸の対イオンを含む水性、水性−アルコール、または水性−有機溶液に溶解する工程、必要に応じて結晶化させる工程、および必要に応じて溶液をエバポレート、撹拌、または冷却する工程を伴うことを含む。通常、遊離塩基は酸または対イオンを含む有機溶液中で反応させられ、その場合、塩は通常直接分離するか、または溶液に結晶をシード添加する、もしくは溶液を濃縮することで塩の析出を容易にし得る。実施態様は、AD、溶媒(通常は結晶化溶媒)、およびスルホン酸(例えば、C16アリールスルホン酸、C16ヘテロアリールスルホン酸、またはC16アルキルスルホン酸など)を含む溶液を含む。実施態様はまた、AD、溶媒(通常は結晶化溶媒)、およびカルボン酸(例えば、トリカルボン酸、ジカルボン酸、またはモノカルボン酸など、任意のそれらのカルボン酸は約1〜12個の炭素原子を含む)を含む溶液を含む。
【0146】
(薬学的処方物および投与経路)
代表的には形態1の結晶性AD(本明細書中以下で活性成分として示す)を含む、本発明の組成物は、処置されるべき状況に適した任意の経路により投与され、適した経路は、経口、直腸、経鼻、局所(眼球、頬、および舌下を含む)、膣、および非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内、髄膜下、および硬膜外を含む)を含む。一般に、本発明の組成物は経口で投与されるが、しかし結晶性ADを含む組成物は、上記で注記される任意の他の経路により投与され得る。
【0147】
ADについては純粋な化合物として投与されることが可能ではあるが、それが薬学的処方物として存在することが好ましい。本発明の処方物は、1種またはそれ以上の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリア(「受容可能な賦形剤」)と一緒にADを、および必要に応じて他の治療的成分を含む。賦形剤(単数または複数)は、処方物の他の成分と適合性であり、そして患者に有害ではないという意味で「受容可能」でなければならない。
【0148】
処方物は、局所投与または全身投与に適したものを含み、投与は、経口、経直腸、経鼻、経頬、経舌下、経膣、または非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内、髄膜下、および硬膜外を含む)投与を含む。処方物は、単位投薬形態にあり、そして薬学の分野で周知の任意の方法により調製される。このような方法は、活性成分を、1種またはそれ以上の付随成分を構成するキャリアまたは賦形剤と会合した状態にする工程を包含する。一般に、処方物は、活性成分を、液体キャリアまたは微細に分割された固体キャリアあるいは両方と、均一におよび密接に会合した状態にし、次いで必要であれば生成物を乾燥または成形することにより調製される。
【0149】
経口投与に適した本発明の処方物は、小袋(sachets)、カシェ剤、または錠剤のような別個の単位として調製され得、それぞれ予め決められた量の活性成分を;粉末または顆粒として;水性液体または非水性液体の溶液または懸濁液として;あるいは水中油液体乳濁液または油中水液体乳濁液として含む。活性成分はまた、丸薬、舐剤、または軟膏として存在し得る。
【0150】
本発明の処方物は、ADおよび受容可能な賦形剤を含む組成物を含む。このような賦形剤は、結合剤、希釈剤、崩壊剤、保存料、分散剤、平滑剤(glidants)(抗接着剤)、および潤滑剤を含む。このような組成物は必要に応じて、錠剤およびカプセルを含む単位投薬を含む。このような組成物は必要に応じて、約5〜250mg、通常は約5〜150mgのADを含む錠剤を含み、錠剤1個あたり約60mgまたは120mgを含む錠剤を含む。このような錠剤は必要に応じて、約1〜10%の結合剤、約0.5〜10%の崩壊剤、約50〜60%の希釈剤、または約0.25〜5%の潤滑剤を含む。このような組成物はまた、液体(例えば水)、AD、ならびに結合剤、希釈剤、分散剤、および崩壊剤からなる群より選択される1種またはそれ以上の受容可能な賦形剤を含む、湿潤顆粒
を含む。
【0151】
錠剤は、必要に応じて1種またはそれ以上の付随成分または賦形剤とともに、圧縮または鋳造により作成され得る。錠剤は代表的に、錠剤1個あたり約5〜250mg、通常は約30〜120mgの、および通常は主に形態1のADの結晶性ADを含み(例えば、錠剤1個あたり約60mg、または錠剤1個あたり約120mgの形態1のAD)、ここでごく限られた量(通常は約20%未満)のみの形態2の結晶、他の結晶の型、または非晶質ADが存在する。圧縮された錠剤は、適切な機械で、粉末または顆粒のような自由に流動する形態にあるADを、必要に応じて結合剤、崩壊剤、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存料、界面活性剤、または分散剤と混合して、圧縮することにより調製され得る。鋳造錠剤は、適切な機械で、粉末化化合物の混合物(通常は液体希釈剤で湿らされている)を鋳造することにより作製され得る。錠剤は必要に応じて、コーティングおよびプリントされるか、エンボス加工されるか、または折り加工(scored)され得、そしてその中の活性成分のゆっくりとしたまたは調節された放出を提供するように処方され得る。実施態様は、結晶性AD、代表的には形態1または形態2、および受容可能な賦形剤(例えばラクトース、ゼラチン化前の澱粉、クロスカルメロースナトリウム(croscarmelose sodium)、タルク、およびステアリン酸マグネシウムを含む、乾燥した湿潤顆粒)を含む混合物を圧縮するプロセスにより作成された生成物を含む。
【0152】
結晶性ADおよび賦形剤(単数または複数)を含む処方物はまた、L−カルニチンまたはL−カルニチンの塩、例えばL−カルニチン−L−酒石酸塩(2:1)を含み得る。インビボでの、ADのピバロイルオキシメチル部分からのピバレートの放出は、患者のL−カルニチンの濃度を下げるようである。L−カルニチン−L−酒石酸塩およびADを含む錠剤は、ADを摂取している患者において、L−カルニチンの消耗に対するピバレートの効果を減少し得る。含まれるべきL−カルニチンの量は、患者における消耗の程度を考慮して臨床医に明らかである。
【0153】
錠剤または関連した投薬形態のための代表的な処方物成分は、1種またはそれ以上の結合剤、希釈剤、崩壊剤、または潤滑剤を含む。これらの賦形剤は、処方物の安定性を増加し、製造の間の錠剤圧縮、または摂取後の処方物の崩壊を促進する。錠剤は代表的に、混合物中ADとともに1種またはそれ以上の賦形剤を湿潤顆粒化し、続いて顆粒を湿潤粉砕し、そして乾燥による減少が約3%またはそれより少なくなるまで乾燥することにより作成される。ゼラチン化前の澱粉またはポビドンのような加工処理を向上させる結合剤が、必要に応じて約1〜10%のレベルで存在する。微結晶のセルロースまたはコスカルメロースナトリウム(coscarmellose sodium)のような架橋セルロースのような崩壊剤が、必要に応じて、錠剤の崩壊を容易にするために約0.5〜5%のレベルで存在する。単糖類または二糖類のような希釈剤が、必要に応じて、ADの物理的性質を遮蔽するために、または錠剤の崩壊を容易にするために、約40〜60%のレベルで存在する。ステアリン酸マグネシウム、タルク、または二酸化ケイ素のような潤滑剤が、必要に応じて、製造中の錠剤の取り出しを容易にするために、約0.25〜10%のレベルで存在する。錠剤は、必要に応じて、ADの貯蔵で放出され得るホルムアルデヒドを捕獲するために、リジンまたはゼラチンのようなスカベンジャーを含み得る。賦形剤は、以下で記載された;例えば、「ゼラチン化前の澱粉」についての研究論文、Handbook
of Pharmaceutical Excipients、第2版、American Pharmaceutical Association、1994、491〜493頁;「クロスカルメロースナトリウム」についての研究論文、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、American
Pharmaceutical Association、1994、141〜142頁;「ラクトース一水和物」についての研究論文、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、American Pharma
ceutical Association、1994、252〜261頁;「タルク」についての研究論文、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、American Pharmaceutical Association、1994、519〜521頁;「ステアリン酸マグネシウム」についての研究論文、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、American Pharmaceutical Association、1994、280〜282頁。
【0154】
形態1のADの処方物の貯蔵のための代表的な容器は、容器中に存在する水の量を制限する。代表的な単位処方物または投薬は、シリカゲルまたは活性炭、あるいは両方のような乾燥剤とともにパッケージングされる。容器は代表的に誘導密閉(induction
sealed)される。シリカゲル単独のパッケージングは、ADを含む錠剤の周囲温度での貯蔵に十分な乾燥剤である。ADは、1分子あたり2個のピバロイルオキシメチル部分を含む。従って、シリカゲルは、単一の乾燥剤として、1個以上のピバロイルオキシメチル部分を含む治療薬剤のような化合物に適している。容器の水透過特性は以下で記載されてきた;例えば、Containers−−Permeation、章、USP 23、United States Pharmacopeial Convention,Inc.、12601 Twinbrook Parkway、Rockville、MD 20852、1787頁(1995)。
【0155】
目または他の表面組織、たとえば口および皮膚の感染について、処方物は、好ましくは、例えば0.01〜10%w/w(0.1%と5%との間の範囲で、0.6%w/w、0.7%w/wなどの0.1%w/wの増加幅で活性成分(単数または複数)を含む)の量で、好ましくは0.2〜3%w/wで、および最も好ましくは0.5〜2%w/wで活性成分(単数または複数)を含む局所用軟膏またはクリームとして、塗布される。軟膏に処方される場合、活性成分は、パラフィンまたは水−混和性軟膏ベースのいずれかとともに用いられ得る。あるいは、活性成分は、水中油クリームベースとともにクリームに処方され得る。
【0156】
望まれる場合、クリームベースの水相は、例えば、少なくとも30%w/wの多価アルコール、すなわち2個以上のヒドロキシル基を有するアルコール(例えば、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、およびポリエチレングリコール(PEG400を含む)、ならびにそれらの混合物など)を含み得る。局所用処方物は、望ましくは、活性成分の皮膚または他の罹患領域を通して吸収または浸透を向上する化合物を含み得る。このような上皮浸透のエンハンサーの例は、ジメチルスルホキシドおよび関連するアナログを含む。
【0157】
本発明の乳濁液の油相は、公知の様式で公知の成分から構成され得る。その相は乳化剤(その他排出促進薬として知られるもの)のみを含み得るが、それは望ましくは少なくとも1種の乳化剤の、脂肪または油との、あるいは脂肪および油両方との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤が、安定剤として作用する脂肪親和性乳化剤と一緒に含まれる。油および脂肪の両方を含むこともまた好ましい。ともに、安定剤(単数または複数)を伴う、または伴わない乳化剤(単数または複数)は乳化ワックスを作り上げ、そしてワックスは油および脂肪と一緒に乳化軟膏ベースを作り上げる。これはクリーム処方物の油性分散相を形成する。
【0158】
本発明の処方物における使用に適した排出促進薬および乳濁液安定剤は、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール(cetostearyl alcohol)、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、およびラウリル硫酸ナトリウムを含む。
【0159】
処方物に適した油または脂肪の選択は、所望の化粧品的性質を達成することに基づく。従って、クリームは、好ましくは、チューブまたは他の容器からの漏れを避けるのに適した粘稠度を持つ、べたつかず、シミを付けず、そして洗い落とせる製品であるべきである。直鎖または分岐鎖のモノ−またはジ−塩基性アルキルエステル(例えば、ジイソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、またはCrodamol CAPとして知られる分岐鎖エステルのブレンドなど)が使用され得、最後の3種が好ましいエステルである。これらは、要求される性質に依存して、単独または組合せで使用され得る。あるいは、白色軟パラフィンおよび/または液体パラフィンのような高融点脂質あるいは他の鉱物油が使用され得る。
【0160】
目への局所的投与に適した処方物はまた、点眼薬を含み、ここで活性成分は適したキャリア、特に活性成分のための水性溶媒中に溶解または懸濁されている。活性成分は、このような処方物中、0.01〜20%の濃度で、いくつかの実施態様において0.1〜10%で、およびその他で約1.0%w/wで適切に存在する。
【0161】
口中の局所的投与に適した処方物は、以下を含む:味付けされたベース(通常はショ糖およびアカシア)またはトラガカントゴム中に活性成分を含むトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアのような不活性なベース中に活性成分を含む香錠;ならびに適切な液体キャリア中に活性成分を含む口内洗浄剤。
【0162】
直腸投与のための処方物は、例えばココア油脂またはサリチル酸を含む適したベースを持つ坐剤として提示され得る。
【0163】
鼻または吸入投与に適した処方物(ここでキャリアは固体である)は、例えば1〜500ミクロンの範囲の粒子サイズを持つ粉末を含む(30ミクロン、35ミクロン、などのような5ミクロンの増加幅で、20と500との間の範囲の粒子径を含む)。キャリアが液体である場合の、例えば鼻スプレーとしてまたは点鼻薬として投与に適した処方物は、活性成分の水性または油性溶液を含む。エーロゾル投与に適した処方物は、従来の方法に従って調製され得、そして他の治療的薬剤とともに送達され得る。吸入治療は、計量用量の吸入器により容易に投与される。
【0164】
膣投与に適した処方物は、活性成分に加えて当該分野で適切であることが知られているようなキャリアを含む、膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、またはスプレー処方物として提示され得る。
【0165】
非経口投与に適した処方物は、滅菌されており、そして水性または非水性注入溶液を含む。これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および処方物を目的のレシピエントの血液と等浸透圧にする溶質を含み得;そして水性および非水性滅菌懸濁液は、懸濁剤および濃化剤を含み得る。処方物は、単位用量または複数回の用量を含む容器中(例えば、密閉されたアンプル管、およびエラストマー留め具付きのバイアル)に存在し得、そして使用の直前に滅菌液体キャリア(例えば注入のための水)を加えることだけを必要とする、凍結乾燥された(lyophilized)状態で貯蔵され得る。即席の注入溶液および懸濁液が、先に記載される種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。好ましい単位投薬処方物は、上記で列挙されたような1日あたりの用量または一日あたりの単位副用量、あるいはそれらの適切な分割分の活性成分を含むものである。
【0166】
上記で特に記載された成分に加えて、本発明の処方物は、問題の処方物の型に関連した
当該分野で普通の他の薬剤を含み得、例えば経口投与に適したものは香味剤を含み得る。
【0167】
本発明はさらに、上記で定義されるような少なくとも1種の活性成分を、それらの獣医学的キャリアと一緒に含む、獣医学的組成物を提供する。
【0168】
獣医学的キャリアは、組成物をネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、および他の動物に投与するという目的に有用である材料であり、そして固体、液体、または気体の材料であり得る。これらはいいかえると獣医学の分野において不活性または受容可能であり、そして活性成分と適合性である。これらの獣医学的組成物は、経口、非経口、または任意の他の所望の経路により投与され得る。
【0169】
本発明の化合物は、マトリックスまたは吸収性材料および活性成分として1種またはそれ以上の本発明の化合物を含む徐放性の薬学的処方物を提供するために使用され得、ここで活性成分の放出は、投薬する頻度をより少なくさせるように、または化合物の薬物動態もしくは毒性プロファイルを改善するように、制御および調節され得る。個々の単位で1種またはそれ以上の本発明の化合物を含む、経口投与に適合された、徐放性処方物は、従来の方法に従って調製され得る。
【0170】
本明細書中に列挙される全ての参考文献は、限定付きで参考として特別に援用される。
【実施例】
【0171】
以下の実施例は本発明をさらに例示をし、そして本発明を制限するものではない。
【0172】
実施例1.形態1の結晶の調製。磁気撹拌子を備えた500mlの一つ口丸底フラスコに、PMEA(27.3g、100mmol)を加えた。窒素下、これに、N−メチルピロリジノン(109.3mL)およびトリエチルアミン(50.6g、69.8mL、500mmol)を加え、そして生成する懸濁液を激しく撹拌した。ピバル酸クロロメチル(75.2g、72.0mL、500mmol)を加え、そして撹拌している懸濁液を45℃の油浴中に18.5時間置いた。生成する、濃厚な淡黄色懸濁液を酢酸イソプロピル(1.0L)で希釈し、そして1時間撹拌した。固体を濾過(「C」ガラスフリットを有するKimaxガラス漏斗)により除去し、そしてさらに酢酸イソプロピル(250mL)で洗った。洗液を濾液と合わせ、そしてこの有機相を水で抽出した(200mL×2)。水性抽出物を合わせ、そして酢酸イソプロピルで逆抽出した(250mL×2)。全ての有機相を合わせると、1975mLになった。酢酸イソプロピルを加えて有機相の全体積を2.0Lにした。この実験の内部コントロールの目的のため、有機相を1.0Lの2つに等分した。一方を、ブラインでの洗浄および硫酸ナトリウム処理を使用して後処理し、他方をこれらの工程なしに進めた(以下を参照のこと)。
【0173】
この新規手順のための1.0Lの有機相サンプルを、標準(Buchi)ロータリーエバポレーターを使用して、手順の間中45℃の浴温および50〜70mmの減圧を用いて直接油状物に濃縮した。油状物の重量は32.4gであり、そしてこれは視認される塩が存在せず完全に透明であるようであった。油状物をアセトン(25mL)で希釈すると、再び視認される析出した塩が存在せず完全に透明な溶液が得られた。室温で約3時間放置した後、溶液は依然として完全に透明なままであった。この溶液を45℃に設定した油浴中に置き、そして内部温度を40℃近くに保ちながらジ−n−ブチルエーテル(140mL)をゆっくりと加えた。次いでフラスコを油浴から出し、そして室温まで冷却させて、室温で約16時間撹拌して、形態1のADの析出を得た。固体生成物を濾過(「M」ガラスフリットを有するKimaxガラス漏斗)により収集した。固体を90%のジ−n−ブチルエーテル中10%のアセトン溶液(v/v)(40mL)で洗い、そして減圧オーブン中で12時間乾燥した(周囲温度、窒素流出、28”の減圧)。これは、12.2gの
白色固体(50mmolの反応規模を基準にして、理論収率48.8%)を与え、外部標準に対して99.8%純度のADとして同定された(HPLC)。
【0174】
残る1.0Lの有機相を、上記の結果に対するコントロールとして使用し、そして以下のように後処理した。この有機相をブライン(25mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し(25g、乾燥時間12時間)、そして上記で記載されるように濃縮した。これは27.4gの油状物を与え、それを上記で記載されるようにアセトン(25mL)およびブチルエーテル(135mL)から結晶化した。固体を、上記で記載されるように濾過により集めて乾燥し、12.3gの白色固体(理論収率48.9%)を与え、外部標準に対して98.7%純度のADとして同定された(HPLC)。
【0175】
実施例2.形態1の結晶の調製。ガラスで内張された30ガロンの鋼の反応容器(Pfaudler、Rochester、NY、モデル番号P20−30−150−115)中、室温で、9.7kgのNMPを3kgのPMEAに加え、そしてNMPを加えた後、混合物を中程度に撹拌した。使用した中程度の撹拌は、固体のPMEAを懸濁液に保つのに、そして反応容器の内容物が壁にしぶきを上げるのを防ぐのに十分であった。次いで5.6kgのTEAを加え、続いて8.3kgのピバル酸クロロメチルを加えた。次いで、反応容器へ供給するために使用した輸送路から残留材料を洗うために、さらに2.7kgのNMPを加えた。温度を約48℃に調節し、そして中程度に撹拌しながら温度を18時間38〜48℃の間に維持した。反応が完了した後、室温で48kgの酢酸イソプロピルを反応容器へ加え、そして得られる混合物を、中程度に撹拌しながら、43〜48℃で1時間維持し、それから濾過して固体を除去した(Tyvek(登録商標)
フィルター、直径15.5”、Kavon Filter Products、Wall、NJ、モデル番号1058−D)。30ガロンの容器をさらに12kgの酢酸イソプロピルでフィルターを通して先に洗った。濾液をガラスで内張された50ガロンの鋼の反応容器(Pfaudler、モデル番号P24−50−150−105)に移し、その間温度を43〜48℃に維持した。続く工程の間に温度を室温まで下げた。
【0176】
次いで、混合物を22kgの水で約1.5〜2分間激しく撹拌することにより洗った。撹拌を止め、そして相を完全に分離させた(約10分)。下の水相(約26L)をガラスで内張された30ガロンの鋼の反応容器へ移した。別の22kgの水を、50ガロンの反応容器中に残った有機相へ加え、そして相を約1.5〜2分間激しく撹拌した。撹拌を止め、そして相を完全に分離させた(約1時間40分)。下の水相をガラスで内張された30ガロンの鋼の反応容器へ移した(ここでこれは水性洗液の両方を含んだ)。24kgの酢酸イソプロピルを30ガロンの反応容器中の水性洗液へ加え、そして相を約1.5〜2分間激しく撹拌し、続いて十分な時間の間撹拌を止め完全に相を分離させた(約10分)。上の有機相を残しておき、そして50ガロンの反応容器中に先に残しておいた有機相と混合した。24kgの酢酸イソプロピルを、30ガロンの反応容器中の水性洗液に加え、そして相を約1.5〜2分間激しく撹拌し、続いて十分な時間の間撹拌を止め完全に相を分離させた(約20分)。上の有機相を残しておき、そして50ガロンの反応容器中に先に残しておいた有機相と混合した。次いで、合わせた有機相をブライン溶液(7kgの水、3.9kgのNaCl)で約1.5〜2分間激しく撹拌することにより洗い、続いて撹拌を止めて相を完全に分離させた(約5分)。ブライン相を廃棄した。18kgの硫酸ナトリウムを反応容器へ加え、そして混合物を約1.5〜2分間激しく撹拌し、次いで1時間静置した。有機相は、この時点で98.5kgの重量であった。
【0177】
次いで、反応容器の内容物を穏やかに撹拌し、そしてバッグフィルター(American Felt and Filter Co.、モデル番号RM C S/S 122)で濾過した。ADを含む有機溶液を、汚れのない50ガロンの反応容器へ移し、そして揮発性の有機物を、50〜55Lの凝縮物が収集されるまで、26〜30”Hgの減圧で
33〜41℃で、減圧蒸留により除去した。有機相を、50ガロンの反応容器から汚れのない30ガロンの反応容器へ、紡績綿布カートリッジを含むカートリッジフィルター(Memtec America、Corp.、モデル番号910044)で減圧濾過を介して移し、そして8.6kgの酢酸イソプロピルで先に洗った。溶液を一晩5℃に保ち、次いで減圧下26℃〜41℃で3時間濃縮して、約7〜9Lの油状物を得た。5.4kgのアセトンを油状物に加え、透明な溶液を得た。次いで、溶液を撹拌し、そして43℃に加温して、27kgの室温のジ−n−ブチルエーテルを約4分かけて加え、続いて加温して温度を43℃に戻した。さらに15kgのジ−n−ブチルエーテルを約4分かけて加え、そして温度を43℃〜44℃に戻した。この時点から、温度を約7時間15分かけて20℃まで下げた。この間に、ADの結晶が反応容器中に形成した。結晶を濾過(ブフナー漏斗)により回収し、そして乾燥した。2.40kgのADを得た(45.1%)。
【0178】
実施例3.形態1の結晶の調製。12Lの三口丸底フラスコに546.3gのPMEA(2モル)を投入し、続いて2.18LのNMPを室温で投入した。機械によるゆっくりとした撹拌(固体のPMEAが懸濁しているのを保つのに十分であるが、フラスコの内容物を跳ね上げない)を開始してPMEAを懸濁させ、次いで 1.39LのTEAをフラスコに投入し、続いて1.44Lのピバロイルオキシメチルクロリドを加えた。次いで、フラスコを窒素でパージし、そして反応系を30〜45分かけて60℃に加熱した。反応系は60℃で、穏やかな撹拌を2〜2.5時間維持した。反応の完了をHPLCにより確認した。フラスコに7.48Lの冷(0〜3℃)酢酸イソプロピルを投入することにより反応を停止させた。このときADの収率は範囲規格化(area normalization)により65〜68%に達した。撹拌を中程度の撹拌に上げ(中程度の渦流、しかし内容物の跳ね上げはない)、そして混合物を中程度に撹拌しながら室温で30分維持した。この間に固体(例えば、TEA・HCl、モノ(POM)PMEA)が溶液から析出した。
【0179】
次いで、反応混合物を焼結ガラス漏斗(40〜60μm)を使用して濾過し、そしてフィルターケーキを室温で2.51Lの酢酸イソプロピルで洗った。
【0180】
次いで、濾液を室温で2.0Lの飲用水で2回抽出した。合わせた水相を、2.51Lの酢酸イソプロピルで2回逆抽出した(室温)。全ての有機相を合わせ、そして985mLの飲用水で1回抽出した。有機相を単離し、そして約30mmHgの減圧で35〜39℃の温度で、約1〜2時間減圧濃縮し、1.24kgの黄色油状物を得た。
【0181】
油状物を、12Lの三口フラスコに移し、そして約30分かけて室温まで冷却した。フラスコに628mLの室温のアセトンを投入し、次いで3.14Lのジ−n−ブチルエーテルを投入した。ゆっくりとした撹拌を開始し、そして溶液を約5〜20分かけて35℃に加熱した。温度が35℃に達した時点で、加熱をやめてそれ以上温度を上げなかった。溶液を約30分かけて30℃(20〜29℃)より下まで冷却した。冷却期間の間に、ゆっくりとした撹拌を続けながら、形態1の結晶が結晶化混合物中に形成され、続いて室温で14〜20時間ゆっくりとした撹拌を続けた。次いで、結晶を濾過し(Tyvek(登録商標)フィルター)、そしてフィルターケーキを2Lの10%アセトン90%ジ−n−ブチルエーテル(v/v)溶液で洗った。ケーキを、乾燥オーブン中、窒素を吹き出しながら室温で、一定重量が得られるまで(約2日)乾燥した。
【0182】
得られた形態1のADの収率は、PMEAより理論収率50〜54%であり、そして純度は、範囲規格化より、HPLCにより97〜98.5%であった。
【0183】
実施例4.形態1の結晶の調製。3Lの三口丸底フラスコに、273.14gのPMEA(1モル)を投入し、続いて室温で1.09LのNMPを投入した。機械によるゆっく
りとした撹拌(固体のPMEAが懸濁しているのを保つのに十分であるが、フラスコの内容物を跳ね上げない)を開始してPMEAを懸濁させ、次いで 0.418LのTEA(3当量)をフラスコに投入し、続いて0.72Lのピバロイルオキシメチルクロリド(5当量)を加えた。次いで、フラスコを窒素でパージし、そして反応系を30〜45分かけて60℃に加熱した。反応系は60℃で、穏やかな撹拌を2〜2.5時間維持した。反応の完了をHPLCにより確認した。フラスコに3.74Lの冷(0〜3℃)酢酸イソプロピルを投入することにより反応を停止させた。このときADの収率は範囲規格化(area normalization)により68〜70%に達した。撹拌を中程度の撹拌に上げ(中程度の渦流、しかし内容物の跳ね上げはない)、そして混合物を中程度に撹拌しながら室温で30分放置した。この間に固体(例えば、TEA・HCl、モノ(POM)PMEA)が溶液から析出した。反応混合物を焼結ガラス漏斗(40〜60μm)を使用して濾過し、そしてフィルターケーキを1.26Lの酢酸イソプロピルで洗った(室温)。次いで、濾液を室温で各抽出に対して1.01Lの飲用水で2回抽出した。合わせた水相を、1.26Lの酢酸イソプロピルで2回逆抽出した(室温)。全ての有機相を合わせ、そして492mLの飲用水で1回抽出した。有機相を単離し、そして約30mmHgの減圧で35〜39℃の温度で、約1〜2時間減圧濃縮し、0.6kgの黄色油状物を得た。油状物を、3Lの三口フラスコに移し、そして約30分かけて温度を下げることにより室温まで冷却した。次いで、フラスコに314mLのアセトン(室温)を投入し、次いで1.57Lのジ−n−ブチルエーテルを投入した。ゆっくりとした撹拌を開始し、そして溶液を約5〜20分かけて35℃に加熱した。温度が35℃に達した時点で、加熱をやめてそれ以上温度を上げなかった。溶液を約30分かけて30℃より下(20〜29℃)まで冷却した。冷却期間の間に、ゆっくりとした撹拌を続ける間に、形態1の結晶が結晶化混合物中に形成した。さらに1.15Lの量の室温のジ−n−ブチルエーテルを結晶化混合物へ加えた。中程度の撹拌を室温で約16時間続けた。次いで、結晶を濾過し(Tyvek(登録商標)フィルター)、そしてケーキを1Lの10%アセトン90%ジ−n−ブチルエーテル(v/v)溶液で洗い、次いでこの溶液を濾過により除去した。ケーキを、乾燥オーブン中、窒素を吹き出しながら室温で、一定重量が得られるまで(約2日)乾燥した。
【0184】
得られた形態1のADの収率は、PMEAからの理論収率の55〜58%であり、そして純度は、範囲規格化より、HPLCにより99〜100%であった。
【0185】
実施例5.結晶化溶媒として酢酸イソプロピルを使用する、ADの結晶の調製。撹拌装置を備えた500mLの三口フラスコ中、窒素下、室温で43.7mLのNMPをPMEA(10.93g)へ加えた。混合物を撹拌してPMEAを懸濁させた。次いで、室温でTEA(27.9mL)を加え、続いて室温でピバロイルオキシメチルクロリド(28.9mL)を加えた。温度を45℃へ上げ、そして懸濁液を45℃で12時間撹拌した。得られる濃厚な黄色懸濁液を、室温で酢酸イソプロピル(150mL)で希釈し、そして室温で75分間激しく撹拌した。固体を「C」焼結ガラスフリットで濾過することにより除去し、そして固体を室温で50mLの酢酸イソプロピルで洗った。濾液を合わせ、そして1回の洗浄あたり40mL使って、脱イオン水で2回洗った。合わせた洗液を、1回の抽出あたり40mLの酢酸イソプロピルで2回逆抽出した。全ての有機相を合わせ、20mLの脱イオン水で1回洗い、そして水相および有機相を分離させ、そして17℃で2時間接触させたままにした。この時間の間に、長い柱状様の結晶が水相−有機相界面に形成されるのが観測された。結晶を「M」焼結ガラスフリットを使用して濾過することにより収集して乾燥し、512mgの長い柱状結晶を得た。
【0186】
実施例6.HPLCによるADの分析。結晶性の形態1のADを、純度を評価するために、単離するためにまたは副生成物を同定するために、およびADのための参照標準としての副生成物の使用を例示するために、HPLCにより分析した。存在する化合物のレベ
ルを、範囲規格化方法により分析した。HPLC分析を、標準またはサンプル調製の12時間以内に行った。
【0187】
固定量サンプルインジェクター、可変波長吸光度検出器および電子積分器を備えた液体クロマトグラフを、カラム(Alltech Mixed Mode Anion Exchange(登録商標) C8、7μm、細孔径100Å、250mm×4.6mm(内径)、Alltech、Deerfield、IL)、およびガードカラム(20mm×4.6mm(内径)、Pellicular C8粒子で乾燥充填、Alltech、Deerfield、IL)とともに使用した。クロマトグラフィー品質の水を使用した。使用した化学薬品は、クロマトグラフィーグレードのアセトニトリル(Burdick
& Jackson、Muskegon、MI)、無水の分析グレードのリン酸二水素カリウム(potassium phosphate monobasic)(KHPO、Mallinckrodt、Paris、KY)、無水の分析グレードのリン酸水素二カリウム(potassium phosphate dibasic)(KHPO、Mallinckrodt、Paris、KY)、およびA.C.S.試薬グレードのリン酸(Mallinckrodt、Paris、KY)であった。リン酸カリウム水溶液は、使用前に濾過(0.45μmのナイロン66膜フィルター、Rainin、Woburn、MA)および脱気した。これらの成分および化合物の等価物もまた使用され得る。等価な装置および/または試薬もまた、同様な結果を得るために使用され得る。
【0188】
リン酸カリウム緩衝液(pH 6.0:アセトニトリル70:30v/v)からなる移動相Aを、1400mLの200mMリン酸カリウム緩衝液(pH 6.0)を600mLのアセトニトリルと混合することにより調製した。リン酸カリウム緩衝液(pH 6.0:アセトニトリル50:50v/v)からなる移動相Bを、1000mLの200mMリン酸カリウム緩衝液(pH 6.0)を1000mLのアセトニトリルと混合することにより調製した。
【0189】
サンプルの分析の前に、HPLCのカラムを、1分あたり1.2mLで1時間、室温で、移動相Aで平衡化した。副生成物を含むADのサンプル5μL(約1mg/mL溶液)を、室温でおよび1分間100%の移動相Aを使用して1分あたり1.2mLの流速で25分の作業で分析し、続いて100%の移動相Bまで19分で直線状の勾配をつけた。次いで、カラムを100%の移動相Bで5分間保った。
【0190】
ADを含むサンプルを、約25mgのADサンプルまたは調製物を正確に重量測定し、そしてADを最終体積25.0mLのサンプル溶媒に溶解することにより調製した。サンプル溶媒を、200mLのリン酸カリウム緩衝液(1Lの水あたり3.40gのリン酸二水素カリウム、リン酸でpH 3.0に調整)を800mLのアセトニトリルと混合し、そして室温に平衡化することにより調製した。化合物を、それらの溶出時間および/またはそれらの保持時間を基に同定する。ADは通常、そのような勾配から約9.8分で溶出し、モノ(POM)PMEAは約6.7分で溶出し、そしてPMEAは約3.5分で溶出する。
【0191】
実施例7.形態1の結晶の物理的特徴付け。形態1の結晶を、回折計(Nicolet自動化パッケージで自動化されたGEモデルXRD−5)中にマウントされたアルミニウムホルダー中に、約100〜150mgの結晶を載せることにより、XRDにより分析した。形態1の結晶を、標準焦点銅極X線管(Varican CA−8)をグラファイトモノクロメーター(ES Industries)およびシンチレーション検出器とともに使用して、40KVでおよび−20mAで操作されたX線発生器にさらすことにより、1.5秒あたり0.05°のスキャン速度で4°と35°との間の角2θでスキャンした。計算のために使用されたX線の波長の加重平均値は、CuKαの1.541838Åで
あった。形態1のAD結晶は、角2θ中に、約6.9、11.8、12.7、15.7、17.2、20.7、21.5、22.5、および23.3に現れる特徴的なXRDピークを示す。形態1について例示的なXRDパターンを図1に示す。
【0192】
形態1の結晶をまた、示差走査熱量測定により分析し、図2に示されるような、ほぼ99.8℃に始まりを有するほぼ102.0℃での特徴的な吸熱転移をもつ温度記録を示した。温度記録を、窒素雰囲気下、1分あたり10℃のスキャン速度を使用して得た。サンプルは、DSC装置の容器中に密閉されておらず、そしてその代わりに、DSC装置中大気圧で分析された。熱量測定のスキャンを、示差走査熱量計(TA Instruments、モデル2200のコントローラー付きのモデルDSC2910)を使用して得た。温度記録を得るために、ほぼ5mgのADを使用した。示差走査熱量測定は、記載されてきている(例えば、U.S.Pharmacopoeia、第23巻、1995、方法891、U.S.P.Pharmacopeial Convention, Inc.、Rockville、MDを参照のこと)。
【0193】
形態1の結晶の融点は、従来の融点分析により測定した。分析を、モデルFP
81測定セルを備えたMettlerモデル FP 90 Central Processorを使用して、製造者の使用説明書に従って行った。サンプルを63℃の開始温度で30秒間平衡化し、続いて温度を1.0℃/分で上昇させた。形態1の結晶は99.1℃〜100.7℃の範囲にわたり融けた。
【0194】
形態1の結晶の赤外吸収(IR)スペクトルを、Perkin−Elmerモデル1650 FT−IR 分光光度計を使用して、製造者の使用説明書に従って得た。約10重量%(5mg)の形態1の結晶と約90重量%(50mg)の乾燥(減圧下60℃で一晩)臭化カリウム(Aldrich、IRグレード)とを含む半透明のペレットを、2つの粉末を一緒に挽いて微細な粉末を得ることにより調製した。IR分光法は記載されてきている(例えば、例えば、U.S.Pharmacopoeia、第23巻、1995、方法197、U.S.P.Pharmacopeial Convention, Inc.、Rockville、MD;Morrison, R.T.ら、Organic Chemistry、第3版、Allyn and Bacon, Inc.、Boston、405〜412頁、1973を参照のこと)。サンプルを用いてスキャンする前に、分光光度計サンプルチャンバーを、約6p.s.iの高純度窒素ガスで少なくとも5分間パージして、バックグラウンドスキャンにおける二酸化炭素の吸収の干渉を≦3%にまで減少させる。形態1の結晶は、臭化カリウム中で、センチメートルの逆数でほぼ3325〜3275、3050、2800〜1750、1700、1625、1575〜1525、1200〜1150、1075、および875に現れる特徴的なバンドを持つ赤外吸収スペクトルを示した。形態1について例示的な赤外吸収スペクトルを図3に示す。
【0195】
形態1の結晶は通常、乾燥した場合、不透明な白色またはオフホワイトの粉末のように見える。所定の調製から得られた結晶は、通常多分散系であり、そしてタブレット状晶、針状晶、板状晶、ならびにタブレット状晶、針状晶、および板状晶の凝集物を含む晶癖の範囲を有する。形態1の結晶は代表的に、大きさにおいて、約1μm〜約300μmの範囲の長さであり、そして例外的に割れたまたは角張った縁を持つタブレットの形状である。結晶化溶媒としてアセトンおよびジ−n−ブチルエーテルを使用する調製から、低温(通常、約2〜4℃)で得られる形態1の結晶は、代表的に凝集物であり、それらは主に針状晶を、そしていくつかの板状晶を含む。図4〜7は、15℃より上の温度で、アセトンおよびジ−n−ブチルエーテル中の結晶化から得られた形態1の結晶を示す。これらの写真は、大きさにおいて、約10μm〜約250μmの範囲の長さであるタブレットまたは板状の、および針状の結晶を示す。図9は、約2〜4の間の温度で、アセトンおよびジ−n−ブチルエーテル中の結晶化から得られた形態1の結晶を示す写真である。写真は、直
径において約30μm〜約120μmの範囲である板状および針状結晶凝集物を示す。凝集物中の個々の結晶は角張った縁を有する。
【0196】
形態1の結晶は、Karl Fischer滴定により1%未満の水含有量を有することが見いだされた。本発明者らは、水含有量分析を基本的に記載されるように行った(例えば、U.S.Pharmacopoeia、1990、1619〜1621頁、U.S.Pharmacopoeial Conventionを参照のこと)。
【0197】
実施例8.形態2の結晶の調製。形態1の結晶を、室温で3日間、相対湿度94%の空気中でインキュベートすることにより、形態2の二水和物へ転換した。形態1から形態2への転換の間、形態1および形態2の結晶の混合物が得られ、これは、最初の形態1の調製物において検出されない形態2から、経時的に増加した。3日間のインキュベーションの終わりに、最終的な形態2の調製物は検出可能な形態1の結晶を含まなかった。
【0198】
実施例9.形態2の結晶の物理的特徴付け。形態2の結晶を、形態1の結晶について使用したのと同じ方法により、XRDにより分析した。形態2のAD結晶は、角2θ中に、ほぼ8.7〜8.9、9.6、16.3、18.3、18.9、19.7、21.0、21.4、22.0、24.3、27.9、30.8、および32.8に現れる特徴的なXRDピークを有した。形態2について例示的なXRDパターンを図11に示す。
【0199】
形態2の結晶をまた、形態1の結晶を分析するために使用したのと同じ方法により、示差走査熱量測定により分析し、図12に示されるような、約69.5℃に始まりを有する約72.7℃での特徴的な吸熱転移をもつ温度記録を示した。
【0200】
形態2の結晶の融点は、従来の融点分析により測定した。分析を、形態1について記載されるのと同じ方法を使用して行った。形態2の結晶は70.9℃〜71.8℃の範囲にわたり融けた。
【0201】
形態2の結晶のIRスペクトルを、形態1の結晶について記載されるものと同じ方法を使用して得た。IRスペクトルは図13に示され、そして以下の特徴的な吸収バンドを示す。これらは、センチメートルの逆数でほぼ3300〜3350、3050、2800〜1750、1700、1625、1575〜1525、1200〜1150、1075、および875に現れる。これらのバンドは、形態1の結晶に伴うものと類似しているが、しかし形態2はさらに、ほぼ3500に、水に伴うO−H結合伸縮バンドを示す。
【0202】
形態2の結晶は、Karl Fischer滴定により6.7%の水含有量を有することが見いだされた。本発明者らは、水含有量分析を基本的に記載されるように行った(例えば、U.S.Pharmacopoeia、1990、1619〜1621頁、U.S.Pharmacopeial Conventionを参照のこと)。
【0203】
実施例10.形態3の結晶の調製。溶液を得るために、十分な形態1の結晶(約250mg)を、室温で無水メタノール(約2mL)に溶解した。結晶が溶解するまで約10〜15分間混合することにより、溶液を得た。溶液を撹拌しないで10〜48時間放置し、次いで形態3の結晶を溶液から回収した。
【0204】
実施例11.形態3の結晶の物理的特徴付け。形態3の結晶を、形態1について使用したのと同じ方法により、XRDにより分析した。結晶性形態3のAD結晶は、角2θ中に、基本的にほぼ8.1、8.7、14.1、16.5、17.0、19.4、21.1、22.6、23.4、24.2、25.4、および30.9に現れるXRDピークを有するように特徴づけられた。形態3について例示的なXRDパターンを図14に示す。
【0205】
実施例12.PMEAの合成および精製。ADの合成および結晶化のために使用するPMEAは、生成物の収量および純度を上げるために精製した。548.8gのジエチルPMEAを含む12Lの三口丸底フラスコに、室温で637.5mLのアセトニトリルを投入した。中程度の撹拌(中程度の渦流、フラスコ内容物の跳ね上げがほとんどまたは全く無い)により、ジエチルPMEAを溶解した。フラスコを窒素でパージし、そして803.8gのブロモトリメチルシランをゆっくりと加えた(約2〜5分)。フラスコ内容物を、HPLCの範囲規格化分析により残存するモノエチルPMEAが≦1%になるまで、2時間加熱還流(65℃)した。揮発性成分を、≦80℃および約20mmHgで蒸留除去した。次いで、フラスコに1500mLの室温の水を投入した。次いで、フラスコ中の溶液のpHを、25%w/vのNaOHで3.2に調整した。次いで、フラスコ内容物を75℃に2時間加熱し、次いで内容物を15〜20分かけて3〜4℃に冷却して3〜3.5時間3〜4℃に保った。次いで、フラスコ内容物をガラスフリットフィルターで濾過し、そしてケーキを150mLの冷水(3〜4℃)で洗った。洗ったケーキを、汚れのない12Lの三口フラスコに移し、そしてフラスコに2025mLの水を投入し、そしてフラスコを75℃に加熱してその温度に2時間保った。加熱を止め、そしてフラスコを冷却して3〜3.5時間3〜4℃に保った。次いで、フラスコ内容物をガラスフリットフィルターで濾過し、そしてケーキを150mLの冷水(3〜4℃)で洗い、次いで1050mLの室温のアセトンで洗った。ケーキを、65〜70℃で約20mmHgで加熱することにより一定重量まで乾燥した。PMEA収率は、範囲規格化または外部標準HPLC分析のいずれかにより、99%の純度を有する85.4%であった。
【0206】
実施例13.形態1の単結晶X線結晶学。
【0207】
約200mgのロット840−D−1のAD薬物物質を、200mgのアセトンに溶解した。溶液を約60℃に加熱した。周囲温度のジ−n−ブチルエーテルを、析出の最初の痕跡が現れるまで、60℃の溶液へゆっくりと加えた。次いで、混合物を振盪しそして約60℃に再加熱して、透明なおよび均一な溶液を形成した。溶液を一晩で周囲温度まで冷却させ、そして周囲温度で約2日間保った。得られる結晶は、非常に多分散系であり、あるものは1mmまでの長さを有した。上清をデカントし、そして残った結晶を、4サイクルかけて合計で約1mLのジ−n−ブチルエーテルで洗い、残留する上清を除去した。ほぼ150×200×320μmの寸法を有する結晶を、単結晶X線回折を使用して分析にかけた。
【0208】
全ての測定を、グラファイトモノクロメーターを通したMo−Kα照射(λ=0.71069Å)を用いて、Siemens SMART 回折計(Siemens Industrial Automation, Inc.、Madison、WI)で行った。結晶をParatone N(登録商標)炭化水素油を使用してガラスファイバーに取り付けた。データの取得を−135±1℃で行った。逆格子空間(reciprocal space)の任意の半球についてのフレームを、1フレームあたり10秒数えて、1フレームあたり0.3°のwスキャンを使用して、収集した。
【0209】
51.6°の最大2θまで測定しきった5967点の積分した反射を平均して、3205点のフリーデル固有反射(Rint=0.044)を得た。水素原子無しの正確な異方性で構造を解析した。水素原子を理想化された位置に導入した。完全マトリックスの最小二乗最適化の最終サイクルは、I>3σを有する2438点の観測された反射、および306個の可変パラメーターに基づき、R=0.048(R=0.054)で収束した。
【0210】
3.00<2θ<45.00°の範囲で、I>10σを有する3242点の反射の測定された位置を使用して、最小二乗最適化から得られた格子定数および配向マトリックスは
、以下のように明記されるC−中心単斜格子に一致した:a=12.85Å、b=24.50Å、c=8.28Å、β=100.2°、Z=4、空間群Cc。
【0211】
以下の表は、研究から得られたデータを示す。ADの図は、図27および28に示される。
【0212】
【表1】

【0213】
【表2】

【0214】
【表3】

【0215】
実施例14.形態4の結晶の調製。形態1のAD(10.05g)を、加温(約35℃)しながらイソプロパノール(50mL)に溶解し、次いでガラスフリット(Mフリット、ASTM 10〜15μm)で濾過した。濾液を、溶解したフマル酸(2.33g)を含む約35℃のイソプロパノール(49mL)の撹拌した溶液に加え、そして混合物を室温まで自然に冷却させた。形態4の結晶、AD・フマル酸(1:1)が、AD溶液をイソプロパノール溶液へ加えたすぐ後から、混合物中に自然発生的に形成した。結晶を室温で2日間形成させて、濾過により回収し、そして窒素下室温で減圧乾燥した。
【0216】
実施例15.形態4の結晶の調製。形態1のAD(1005.1g)を温(約45℃)
イソプロパノール(3.0L)に溶解した。温AD溶液を、中程度に撹拌しながら約20分かけて、12Lのフラスコ中約45℃の溶解したフマル酸(233.0g)を含むイソプロパノール(6.0L)の撹拌した溶液へ加えた。混合物の温度を40〜45℃で10分間維持し、そしてたくさんの析出物が形成された時点で加温を止めた。全てのAD溶液を加えた数分後、混合物は濁った状態になり、次いで数分後析出物がたくさんになり、この時点で撹拌を止めた(混合物温度42℃)。数時間析出物を形成させた。ゆっくりとした撹拌を開始し、そして約2時間続け、続いて12Lのフラスコをゆっくりとした撹拌を続けながら一晩室温の水に浸けて、混合物の冷却を促進した。析出物を第一の濾過(Tyvek(登録商標)フィルター)および第二の濾過(Mガラスフリット)により回収し、そして窒素下室温で減圧乾燥した。
【0217】
実施例16.有機および無機酸からの結晶性AD塩の調製。形態1のAD(500mg、1.0mmol)を、加温(<40℃)しながらイソプロピルアルコール(5mL)に溶解した。2mLの、または酸を溶解するために必要であるようなより多い量のイソプロピルアルコールに溶解した酸(1.0mmol)を、AD溶液へ加えた。溶液を、室温で、しっかりとキャップしたシンチレーションバイアルに貯蔵した。いくつかの場合、溶液がキャップされたすぐ後(約1分)に、析出した塩が観察された。他の塩については、析出は、溶液がキャップされた数ヶ月後までの時点で形成し始めた。全ての13種の塩についての融点を以下に示す。9種の塩についてのXRDデータ(角2θ)もまた以下に示す。XRDデータは、これらの塩について最も高い強度のピークのほとんどを示す。
【0218】
【表4】

【0219】
実施例17.AD処方物。形態1のADをいくつかの賦形剤とともに、以下のようにタブレット1個あたり30、60または120mgのADを含むタブレット中に処方した。
【0220】
【表5】

【0221】
形態1のADを含むタブレットを、クロスカルメロースナトリウム、ゼラチン化前の澱粉、およびラクトース一水和物を造粒機中で調合することにより作った。水を加え、そして適した湿潤顆粒化が形成されるまで内容物を造粒機中で混合した。湿潤顆粒を粉砕し、乾燥機中で3%以下の乾燥減少の水分含有量まで乾燥し、そして乾燥した顆粒を、粉砕機を通過させた。粉砕された顆粒を顆粒外賦形剤(ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、およびタルク)と合わせ、そして調合機中で調合して粉末調合物を得た。ステアリン酸マグネシウムを加え、調合機中で調合し、そしてタブレットに圧縮した。タブレットを高密度ポリエチレンまたはガラスのボトルに、ポリエステル繊維の梱包物質および必要に応じてシリカゲル乾燥剤とともに充填した。
【0222】
実施例18.AD処方物。形態1のADをいくつかの賦形剤とともに処方して、以下のように、それぞれ100mgの重量を持ち、そしてタブレット1個あたり25または50mgのADのいずれかを含むタブレットにした。タブレットを、上記で記載されるものと類似の様式で湿潤顆粒化により調製した。
【0223】
【表6】

【0224】
本発明は、結晶性形態のアデフォビルジピボキシルおよび結晶を調製するための方法を提供する。本発明の組成物および方法は、結晶性アデフォビルジピボキシルの大規模合成に、またはそれらの治療的投薬中への処方に望ましい性質を有する。本発明の組成物は、アデフォビルジピボキシルの無水結晶形態を含む。
【0225】
(発明の効果)
本発明により、大規模合成について、または治療的投薬中への処方に望ましい性質を有する新規形態のアデフォビルジピボキシルを含む組成物;アデフォビルジピボキシルを含む組成物の製造および処方を容易にする良好な融点、および/または流動特性もしくはかさ密度特性を有するアデフォビルジピボキシル;貯蔵安定形態を有するアデフォビルジピボキシル;直ちに濾過され、そして容易に乾燥され得るアデフォビルジピボキシルが提供される。
【0226】
また、少なくとも約97%(w/w)の純度、および好ましくは少なくとも約98%の純度を有する高純度アデフォビルジピボキシルが提供される。
【0227】
さらに、アデフォビルジピボキシル合成の間に造られる副生成物を除去する、あるいは最小限にする、アデフォビルジピボキシル合成法が提供される。
【0228】
高価かつ時間を消費するカラムクロマトグラフィーを使用しない、アデフォビルジピボキシルの精製法もまた、提供される。
【0229】
本発明の特に好ましい実施形態では、以下の方法などが提供される。
【0230】
(1) 9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンを、1−メチル−2−ピロリジノン中のクロロメチルピバレートおよびトリアルキルアミンと接触させる工程、ならびにアデフォビルジピボキシルを回収する工程を含む、アデフォビルジピボキシルを調製するための方法。
【0231】
(2) 前記トリアルキルアミンがトリエチルアミンである、上記項1に記載の方法。
【0232】
(3) 1モル当量の9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンと、5.6〜56.8モル当量の1−メチル−2−ピロリジノンを接触させる工程を含む、上記項2に記載の方法。
【0233】
(4) 1モル当量の9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンと、2〜5モル当量のトリエチルアミンを接触させる工程を含む、上記項1に記載の方法。
【0234】
(5) 0%〜2%の塩を含む9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンをク
ロロメチルピバレートと接触させる工程を含む方法。
【0235】
(6) 前記塩がNaBrまたはKBrである、上記項6に記載の方法。
【0236】
(7) ナトリウムアルコキシドおよび9−(2−ヒドロキシエチル)アデニンを接触させる工程を含む、9−[2−(ジエチルホスホノメトキシ)エチル]アデニンを調製するための方法。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明により、大規模合成について、または治療的投薬中への処方に望ましい性質を有する新規形態のアデフォビルジピボキシルを含む組成物;アデフォビルジピボキシルを含む組成物の製造および処方を容易にする良好な融点、および/または流動特性もしくはかさ密度特性を有するアデフォビルジピボキシル;貯蔵安定形態を有するアデフォビルジピボキシル;直ちに濾過され、そして容易に乾燥され得るアデフォビルジピボキシルが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載された発明

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2009−263389(P2009−263389A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157357(P2009−157357)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【分割の表示】特願2005−145754(P2005−145754)の分割
【原出願日】平成10年7月23日(1998.7.23)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】