ヌクレオチド類縁体プロドラッグおよびその製剤
本発明は、(R)−9−[2−[ビス[ピバロイルオキシメトキシ]ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(英語で9-[2-(R)-[bis[pivaloyloxymethoxy]phosphinoylmethoxy]propyl]adenine,bis-POMPMPA,以下「TD」と略称する)およびその誘導体と用途に関する。また、本発明は、TDの合成方法と固体状態のTDの製造方法に関する。なお、本発明は、TDを含有する組成物および組成物の調製方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(英語で9-[2-(R)-[bis[pivaloyloxymethoxy]phosphinoylmethoxy]propyl]adenine,bis-POMPMPA,以下「TD」と略称する)およびその誘導体と用途に関する。また、本発明はTDの合成方法と固体状態のTDの製造方法に関する。また、本発明は、TDを含有する組成物および組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホノメトキシヌクレオチド類縁体が広範囲な抗菌スペクトルを有することは公知である。HIV、HBV、CMV、HSV−1、HSV−2およびヒトヘルペスウイルス(人類疱疹病毒)に抗ウイルス活性がある。これらの化合物のうち、例えば9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデノシン(PMEAと略称する)と9−[(R)−2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデノシン(PMPAと略称する)は、既に臨床の抗ウイルス治療に使用されている。ホスホノメトキシヌクレオチド類縁体に含有されるホスホン酸イオンは生体の吸収に影響するため、一般的にはホスホノメトキシヌクレオチド類縁体を親油性プロドラッグに変化させて、バイオアベイラビリティを増強する。例えば、最近FDAに承認されたB型肝炎の治療に使用するアデフォビル・ジピボキシル(adefovir dipivoxil)とエイズの治療に使用するテノフォビルDF(tenofovir disoproxil fumarate)は、それぞれホスホノメトキシヌクレオチド類縁体PMEAとPMPAの親油性プロドラッグである。アデフォビル・ジピボキシルとテノフォビルDFは、体内でいずれも抗ウイルス活性を有する母薬物PMEAとPMPAに代謝される。
【化1】
【化2】
【0003】
最近の臨床試験で、アデフォビル・ジピボキシルには腎障害の副作用が見られた。アデフォビル・ジピボキシルは、毎日300mg使用するとエイズウイルス(HIV)を抑制できるが、薬物動態学の研究によって、300mgの使用量でアデフォビル・ジピボキシルは生体に摂取された後、大部分は腎臓に分布するため、腎臓毒性が発生する。しかし、アデフォビル・ジピボキシルは、50mg/日、30mg/日および10mg/日で使用すると、人体のB型肝炎ウイルス(HBV)の複製は抑制されるが、50mg/日、30mg/日投与群では副作用と腎臓機能異常の発生率が高い。したがって、アデフォビル・ジピボキシルは、10mg/日のみがB型肝炎の治療に使用できる。現在、B型肝炎ウイルスの治療期間は長いので、48週を過ぎると、10mg/日の低用量でも、腎臓に対する蓄積毒性があるかどうかはまだ観察が必要であることを提案している。
【0004】
FDAに承認されたエイズ抗ウイルス併用治療に使用するテノフォビルDFは、300mg/日と高用量である。長時間使用する病人の肝臓と腎臓にとって、大きな負担になる。また、高用量は単位製剤の生産コストも増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存文献には、TD油状物に関する報告だけがある。TD油状物の安定性はよくなく、適当な製剤の調製に不利であるため、薬物製剤の調製と貯蔵などに使用するように固化を必要する。今まで、固体状態のTDに係る報告はまだなく、TDを固化する方法も報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今、式(I)に示される化合物(R)−9−[2−[ビス[ピバロイルオキシメトキシ]ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)はアデフォビル・ジピボキシルとテノフォビルDFよりよい抗ウイルス活性と安定性を有することがみられる。この化合物は、アデフォビル・ジピボキシルの同族体とPMPAのプロドラッグである。体内にPMPAに代謝される。英語で9-[2-(R)-[bis[pivaloyloxymethoxy]phosphinoylmethoxy]propyl]adenine,bis-POMPMPAと略称する。
【化3】
【0007】
本発明は
1)固体状態のTDおよびその誘導体。例えば、結晶化TD、TDの無定形固化物、固体状態のTD塩およびTDのシクロデキストリン包接化合物。これらの固体状態で存在するTDおよびその誘導体は、産業化における大規模な合成を有利し、薬物に調製できる性質がある。
2)TDの合成方法と精製方法。例えば、有機塩基が存在する条件下で極性溶媒にPMPAをピバロイルハロゲン化メチルと接触し、TDを合成する方法、ならびにコラム分離法、結晶化法および塩法等でTDを精製する方法。
3)TD油状物の固化方法。例えば、TD油状物を結晶化TD、TDの無定形固化物、固体状態のTD塩およびTDのシクロデキストリン包接化合物に変化させる。
4)TDおよびその誘導体を含む安定な組成物およびその製法。
5)固体状態のTDおよび誘導体の抗ウイルス、特に抗HIV、HBV、CMV、HSV−1、HSV−2とヒトヘルペスウイルス(人類疱疹病毒)の活性の用途。
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
TDの合成と精製:
PMPAの合成は既存文献によって合成できる。例えば、中国特許第98807435.4号明細書、米国特許第5733788号明細書と米国特許第6653296号明細書等を参照。また、以下のフローチャート1に示されている方法で合成してもよい。
(1)容器に炭酸ジエチル、(R)−1,2−プロパンジオール、触媒ナトリウム・アルコキシド、例えばナトリウム・メトキシドあるいはナトリウム・エトキシドを加え、エタノールを留去し、反応させ、R−炭酸−1,2−プロピレン(A)を得る;
(2)不活性ガス、例えば窒素を入れられる容器に炭酸エステル(A)、アデニン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)と触媒用量のアルカリ、例えば水酸化ナトリウムを加え、反応させて(R)−9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン(B)を得る;
(3)不活性ガス(例えば窒素)を入れられる容器に亜リン酸ジエチル、パラホルムアルデヒド、トリエチルアミンとトルエンを加え、TLCで亜リン酸ジエチルがなくなるまで4〜8時間加熱反応させ、反応溶液を0℃以下に冷却させ、P−トルエンスルホニルクロリドのトルエン溶液とトリエチルアミンを加え、反応させてP−トルエンスルホニルオキシメチルリン酸ジエチルを得る(C);
(4)容器に順番に(2)から得た(B)とDMFを加え、加熱溶解した後、温度を25〜75℃に下げ、水素化リチウムを加え、2時間反応させ、(R)−9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンのリチウム塩を生成し、P−トルエンスルホニルオキシメチルリン酸ジエチル(C)を加え、反応させて(R)−9−[2−(ジエトキシスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニン(D)を得る;
(5)容器に順番に(4)から得た(D)、アセトニトリル、トリメチル臭化シランを加え、反応完成まで攪拌還流し、真空で揮発性液体を除去し、残留物を適量の水に溶解し、pHを3.0〜3.5に調節して(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン(PMPA)を得る。また、反応溶剤はジクロロメタンあるいはクロロホルムを使ってもよい。脱保護剤はトリメチルヨウ素シランまたはトリメチルクロロシラン/ヨウ化カリウムを使ってもよい。
【化4】
【0009】
TDの合成と精製方法は、フローチャート2に示されている:
乾燥したPMPA固体を極性溶媒に懸濁し、有機アミン類を加え、またPMPAを溶解するように触媒使用量の相間移動触媒を加えてもよく、室温で反応混合物を0.5〜2時間攪拌し、ピバロイルハロゲン化メチルを加え、20〜70℃に2〜48時間反応させ、大量の極性有機溶媒で混合物を希釈、濾過し、弱アルカリ性水溶液と水で有機相を洗浄して、乾燥し、有機溶媒を真空除去して粗製油状のTDを得る。
【0010】
上述の極性溶媒は、DMFとN−メチルピロリドン(NMP)であるのが好ましい。PMPAと極性溶媒の質量比は1:1〜1:20の範囲、好ましくは1:2〜1:10である。有機アミン類は、トリアルキルアミンまたはN,N−ジシクロヘキシル−4−モルホリンカルボキサミジン(DCM)であるのが好ましく、より好ましくはトリエチルアミン、トリブチルアミンとエチルジイソプロピルアミンである。有機アミンとPMPAのモル比は2〜6:1、好ましくは3〜4:1である。相間移動触媒はトリブチルベンジル塩化アンモニウムであるのが好ましい。ピバロイルハロゲン化メチルは、ピバロイルハクロロメチルとピバロイルヨウ素メチルであるのが好ましい。ピバロイルハクロロメチルを使うときは、置換反応の触媒としてさらにヨウ素塩あるいは臭素塩を選択的に加えてもよい。ピバロイルハロゲン化メチルとPMPAのモル比は3〜8:1、好ましくは4〜6:1である。反応温度は45〜65℃であるのが好ましい。希釈用有機溶媒は酢酸エチルまたは酢酸イソプロピルであるのが好ましい。弱アルカリ性水溶液は重炭酸ナトリウム水溶液であるのが好ましい。
【化5】
【0011】
粗製TDからTDを精製する方法:
1)カラム・クロマトグラフィー:
シリカゲルを固定相として、TD粗生成物を2%〜8%のメタノール−ジクロルメタンの溶液で洗浄して、TDを含有するものを収集し、溶媒を減圧除去して純化したTDを得る。この方法により得たTDは一般油状物である。室温において緩慢に分解されうる。
【0012】
2)結晶法:
TDの分子に一つの強い極性のアデニン基と二つの強い親油性のピバロイル基があるため、TDは多数の極性有機溶媒に溶解できる。しかし、非極性または弱極性有機溶媒および水には溶解しにくい。
【0013】
TDを溶解でき、そして溶解度が10mg/mlより高い溶媒を、TDの良溶媒と称する。TDを溶解できなく、あるいはTDに対する溶解度が1mg/mlより低い溶媒を、TDの不良溶媒と称する。TDの良溶媒は、有機アルコール系、有機ケトン系、エステル系、ハロゲン化アルキル系、有機アミド系、有機ニトリル系および一部のエーテル系溶媒から。TDの不良溶媒は、アルカン系、一部のエーテル系溶媒および水でよい。
【0014】
好ましいTDの良溶媒は、アセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、DMF、NMP、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、ギ酸エチル、テトラヒドロフランとテトラヒドロピランである。
【0015】
好ましいTDの不良溶媒は、メチルt−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘプタンと水である。
【0016】
粗製TDを適量の良溶媒に溶解し、得た溶液と適量の不良溶媒を混合し、TD溶液を飽和状態に近づける、あるいは飽和状態にする。そして温度変化、溶媒蒸発または溶媒組成変化などの方法によりTD溶液を過飽和にし、TDを結晶で析出させる。または、粗製TDを直接に良溶媒と不良溶媒を混合した溶媒に溶解させ、TDの溶液にし、結晶を析出させ、純化のTDを得る。
【0017】
TDを溶解でき、溶解したTDを結晶で析出させる単一溶媒あるいは混合溶媒はいずれもTDの結晶溶媒と称する。TDとその結晶溶媒が形成した溶液は、TDの結晶溶液と称する。通常、TDの結晶溶媒は、一つまたは一つ以上の良溶媒、あるいは一つまたは一つ以上の良溶媒と一つまたは一つ以上の不良溶媒との混合溶媒である。
【0018】
好ましいTDの結晶溶媒は、上述の全部の良溶媒およびアセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、DMF、NMP、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、ギ酸エチル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランから選ばれた一つとメチルt−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘプタン、水から選ばれた一つの混合溶媒を含む。この中、良溶媒と不良溶媒の容積比は20:1〜1:20の範囲である。
【0019】
結晶溶媒に使う良溶媒が有機アルコール系と有機ケトン系化合物であるときは、好ましくはエーテル系化合物と水を不良溶媒とする。例えば、メタノール/ジイソプロピルエーテル、アセトン/ジイソプロピルエーテル、エタノール/水の混合溶媒である。
【0020】
結晶溶媒に使う良溶媒がエステル系とハロゲン化アルキル系化合物であるときは、好ましくはアルカン系化合物を不良溶媒とする。例えば、酢酸エチル/n−ヘキサンまたはジクロロメタン/石油エーテルである。
【0021】
結晶溶媒に使う良溶媒が有機アミド系と有機ニトリル系化合物であるときは、好ましくは水を不良溶媒とする。
【0022】
粗製油状TD中のTDの含有量は、通常5%〜60%の間である。TDの含有量が高いとき(TDの含有量が25%より高い)、高い温度で適量の良溶媒により形成した結晶溶媒に粗製油状TDを溶解し、そして温度を下げ、TDの結晶を得る。TDの含有量が低いとき(TDの含有量が25%より低い)、一般的には良溶媒と不良溶媒とで形成した混合物を結晶溶媒とする。通常、結晶溶媒と粗製TDの割合は1:1と20:1の間である。
【0023】
結晶化温度は、一般的には−20℃〜室温の間、好ましくは−10℃〜10℃の間、特に好ましくは0℃である。低温(−10℃)では結晶の収率は高いが、結晶の純度はいつも低い。0℃に近い条件で結晶させると、一般的には収率と純度がよい生成物を得られるため、生産に有利であり、経済的である。
【0024】
3)塩法:
TDと酸が形成した塩は、多くのよい結晶化能があることがみられる。TDと酸が形成した塩は、必要な結晶化条件が低く、使用する結晶溶媒の量も少ない。したがって、TDを精製する一つの方法は、粗製TDと適当な酸を塩にし、結晶化させ、精製TD塩を得、精製TD塩を適当の溶媒に溶解し、弱アルカリ性の水溶液で中和し、水で洗浄して酸基を除去し、最後に水を乾燥除去し、溶媒を除去して遊離の精製TDを得る。
【0025】
TDは多くの無機酸および有機酸と塩を形成できる。塩を形成する方法は、酸と粗製TDを適当な溶媒に混合して塩を形成し、そして塩を結晶で析出させる。塩の結晶溶媒は、塩を形成する溶媒と同一であってもよいし、異なっていてもよい。異なっているときは、塩を形成した後、溶媒を除去し、そして粗製TDの塩を結晶溶媒に溶解し、再結晶させて精製TD塩を得る。
【0026】
塩を形成する酸の当量は、通常粗製TD中のTDの当量よりやや大きい。一般的には、酸とTDの割合は1.1:1〜1.3:1の間である。粗製TD中のTDの量は、HPLCまたは紫外吸収法で測定できる。
【0027】
TDを精製する塩は、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸、シュウ酸とTD形成した塩が好ましい。
【0028】
TDの塩は、一般的にC1〜C5の有機アルコール系溶媒に溶解しやすく、有機ケトン系とエステル系溶媒にも溶解できる。
【0029】
TD塩を中和して遊離のTDを得る方法:
TD塩を水と互いに溶解しない有機溶媒に溶解する。好ましい有機溶媒は有機エステル系化合物、特に好ましくは酢酸エチルである;そして、薄いアルカリ性水溶液で溶液を洗って酸を除去する。好ましいアルカリ性水溶液は重炭酸塩水溶液である;酸を完全に中和した後、有機相は水または飽和食塩水で洗浄する;最後に、有機溶媒を乾燥除去して精製遊離TDを得る。この精製遊離TDは一般油状物で存在し、長時間置いて固化できる。
【0030】
固体状態のTDおよび誘導体の製造と確認:
TDの油状物の安定性はよくなく、適当な製剤の調製に不利である。薬物の調製と貯蔵などに使用するためには固化を必要する。今、結晶と無定形固体状態のTD、結晶あるいは固体状態のTD塩とTDのシクロデキストリン包接化合物を製造する。
【0031】
(一)TDの結晶、無定形固化物の製造と確認
I.TDのA型結晶
本発明のTDのA型結晶は、水と他の溶媒をほとんど含まないTDの結晶である。TDのA型結晶のXRD(粉末X線回折)スペクトルは、面間距離dで示すと、通常9.774Å、6.32Å、5.726Å、4.967Å、4.849Åにピークがある。さらに典型的なピークは14.917Å、9.774Å、6.32Å、5.726Å、5.387Å、5.211Å、4.967Å、4.849Å、4.647Å、4.553Å、3.817Åにある。
【0032】
DSC(示差走査熱量測定)吸熱転移温度は約100℃である。
【0033】
IR(赤外線吸収スペクトル)の吸収ピークは以下のように示される:
【表1】
【0034】
他の説明でない限り、本発明のTDのA型結晶は次のような組成物である:
組成物に無水結晶態のTDは、組成物重量の50%以上を占める、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。無水結晶態のTD以外、またTDの無定形固化物と他の結晶も含む。
【0035】
TDのA型結晶はTDを無水状態で結晶化させて得られる。一般的に、使用する結晶溶媒の含水量は0.5%より少ない。製法は次のようである。
【0036】
1.混合溶媒法:無水の有機ケトン系またはアルコール系を良溶媒として、有機エーテル系を不良溶媒として、結晶溶媒を組成する。TDを溶解した後、温度を変化させ、TDのA型結晶を得る。好ましい結晶溶媒は、アセトン:ジイソプロピルエーテルの容積比が1:2〜5である混合溶媒、メタノール:ジブチルエーテルの容積比が1:2〜10である混合溶媒である。TDを溶解する温度は35〜60℃、結晶温度は−20〜35℃、好ましくは−5〜5℃、結晶化時間は5〜48時間である。
【0037】
2.単一溶媒法:無水の良溶媒、好ましくはアセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、エーテル、トルエンである。精製TDを加熱溶解し、加熱温度は一般的に50℃を超えなく、飽和または飽和に近いTD溶液を得る。そして得た溶液を低温で結晶化させ、あるいは室温で自然に溶媒を揮発させ、TDのA型結晶を得る。アルコール系あるいはケトン系を使って結晶するときは、アルコール系あるいはケトン系は空気の中の水分を吸収しやすいため、TDのA型結晶とTDのB型結晶との混合物を得る可能性がある。ひいては全部がTDのB型結晶である。
【0038】
3.自然凝固法:精製TDを無水の良溶媒に溶解し、溶媒を真空除去し、放置してTDのA型結晶を得る。この方法で得たTDのA型結晶は無定形TDを混ぜることがある。
【0039】
II.TDのB型結晶
本発明のTDのB型結晶は二つの結晶水を含むTDの結晶である。TDのB型結晶のXRDスペクトルは面間距離dで示すと、通常20.157Å、9.995Å、4.449Å、3.965Å、3.297Åにピークがある。さらに典型的なピークは20.157Å、9.995Å、5.555Å、4.696Å、4.449Å、3.965Å、3.677Å、3.297Å、3.125Å、2.822Åにある。DSC吸熱転移温度は約55℃である。
【0040】
IRの吸収ピークは以下のように示される:
【表2】
【0041】
他の説明でない限り、本発明のTDのB型結晶は次のような組成物である:
組成物に二水和物結晶態TDは組成物重量の50%以上を占める、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。二水和物結晶態TD以外、組成物にまたTDの無定形固化物と他の結晶も含む。
【0042】
TDのB型結晶は、水が存在する条件下でTDを結晶溶液から析出して得る。一般的に、使用する結晶溶媒は少なくとも0.5%の水を含む。TDのB型結晶を製造する一般的な方法は精製TDを水と互いに溶解できる一つの良溶媒に溶解し、そして得た溶液に水を加え、TDを結晶で析出させる。あるいは、水を含有する良溶媒に精製TDを溶解し、結晶化させる。
【0043】
湿度が高いときは、TDのA型結晶は吸湿でTDのB型結晶に変化しうる。
【0044】
特に説明するのはXRDの中、結晶化合物から得た回折スペクトルは、特定の結晶に対して非常に特徴的である。この中で、スペクトル帯(特に低角度)の相対強度は結晶条件、粒径および他の測定条件による優勢配向効果で変化する可能性がある。したがって、回折ピークの相対強度は相応の結晶に対して特徴的ではない。既知の結晶と同じかどうかを判断するとき、相対強度よりピークの相対位置をより注意すべきである。XRDスペクトルに通常2θ角または面間距離dでピークの位置を示す。2θ角はX線の波長に関係するため、面間距離dで示すのはより代表的である。
両方の間には簡単な変換関係がある:
d=λ/2sinθ。
このうち、dは面間距離、λはX線の波長(Cu−Kαに対して、λ=1.54187Å)、θは回折角である。同種化合物の同種結晶にとって、XRDスペクトルは全体としては相似性がある。ピークの位置を示すd値の誤差は一般に±2%以内で、ほとんど±1%を超えない。相対強度の誤差は大きくてもよいが、変化傾向は一致する。また、結晶が同じかどうかを判断するとき、全体から見ればよい。一つの回折線は一つの物相を代表するのではなく、特定的な”d−I/I1”データはある物相を代表するからである。また、混合物の確認の際に、含量低下等の原因で、一部分の回折線は欠失になる。このとき、高純度サンプルに全部みられたスペクトル帯に頼らなくても、一つのスペクトル帯も特定的な結晶にとって特徴的である可能性がある。例えば、本発明のA型結晶の面間距離は4.849Åのピークを有し、またはB型結晶の面間距離は4.449Åのピークを有する。
【0045】
DSCで結晶構造変化あるいは結晶融解による吸熱または発熱の時の転移温度を測定する。同種化合物の同種結晶にとって、連続分析の中、熱転移温度と融点の誤差は典型的に約5℃以内、通常約3℃以内である。一つの化合物は一つの特定的なDSCピークあるいは融点を具有することを言うとき、これはDSCピークあるいは融点±5℃であることを示す。DSCは各種結晶を確認する一種類の補助方法を提供する。結晶形態はその相違の転移温度によって確認できる。混合物にとって、DSCピークあるいは融点はもっと大きい範囲に変動する可能性がある。また、物が融解する過程に分解を伴うから、融解温度は加温速度と密接に関係する。
【0046】
光に対する振動の官能基に関する特定的な化学結合による赤外線吸収は、IRで測定する。異なる結晶分子内共有結合の電環境は違うから、共有結合強度も変わる。共有結合強度の変化は異なる結晶のIRスペクトルの違いを起こす。
【0047】
III.TD無定形固化物
また、本発明はTDの無定形固化物を提供する。TDの無定形固化物のXRDスペクトルには明らかに、鋭利なピークがなく、一つの広い無定形固体ピークだけがある。通常、TDの無定形固化物に少量のTD結晶が混ざっている可能性がある。一般的には、TD無定形固化物の含有量は70%以上である。
【0048】
TD無定形固化物の製法は次のようである:
1.純化のTDを良溶媒に溶解させ、激しく攪拌する条件で大量の低温の不良溶媒に加え、TDを析出させ、固化してTD無定形固体を形成する。一般には、不良溶媒の温度は−20℃以下である。
2.純化のTDを溶解した後、真空凍結乾燥で溶媒を除去してTD無定形固化物も得る。通常、この方法で得た固体粉末はXRDで示すTD無定形固体の含有量は70%以上である。
【0049】
真空凍結乾燥法で得たTD無定形固体は通常粗鬆状固体である。水に対する溶解性は結晶状態のTDよりよく、溶解速度は高く、注射用粉末製剤の調製に適する。
【0050】
図7はTD無定形固化の粉末X線回折スペクトルである。この中には、明らかに、鋭利なピークがなく、一つの広い無定形固体ピークだけがある。
【0051】
(二)TDの塩
TDは、酸と反応して次のような構造の塩または塩型複合物を生じる:
【化6】
【0052】
この中、aは酸とTDのモル比である。aは1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1である。HAは酸である。
【0053】
TDと塩または塩型複合物を形成できる適当な酸は、TDと安定な塩を形成できる酸度がある。適当な酸は、一塩基酸または多塩基酸、例えば有機酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸および酸性基を含む肝臓保護機能がある有機化合物または天然産物である。
【0054】
適当な無機酸は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸等である。適当な有機スルホン酸は、C6〜16アリールスルホン酸、C6〜16ヘテロアリールスルホン酸とC1〜16アルキルスルホン酸、好ましくはタウリン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、α−ナフタリンスルホン酸、β−ナフタリンスルホン酸、(S)−ショウノウスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、n−プロピルスルホン酸、イソプロピルスルホン酸、n−ブチルスルホン酸、s−ブチルスルホン酸、イソブチルスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、ペンチルスルホン酸とヘキシルスルホン酸である。有機カルボン酸は、一塩基または多塩基カルボン酸、例えばC1〜16アルキルカルボン酸、C6〜16アリールカルボン酸とC4〜16ヘテロアリールスルホン酸である。好ましくは酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、アーモンド酸、マンデル酸、サリチル酸、1−フェノキシ安息香酸、ニコチン酸、パントテン酸である。有機カルボン酸はまたアミノ酸も含む。適当なアミノ酸はたくさんある。特にタンパク質成分として発見された天然アミノ酸である。好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、バリンである。
【0055】
好ましい酸性基を含む肝臓保護機能がある有機化合物または天然産物は、アスコルビン酸、オレアノール酸、ウルソル酸、グリシルリジン酸、グリシルレチン酸、サルビアニン酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルコン酸、果糖酸である。好ましいTDの塩はTDフマル酸塩、TDシュウ酸塩、TDサリチル酸塩、TDオレアノール酸とTDアスパラギン酸である。
【0056】
本発明はまたTDフマル酸塩の結晶を得る。そのXRDスペクトルは、面間距離dで示すと、通常18.706Å、6.112Å、4.562Å、3.645Å、3.561Å、3.033Å、2.596Åにピークがある。さらに典型的なピークは、18.706Å、6.112Å、5.075Å、4.562Å、4.414Å、4.141Å、4.044Å、3.776Å、3.645Å、3.561Å、3.257Å、3.033Å、2.985Å、2.596Åにある。
【0057】
TDフマル酸塩結晶のIRスペクトルの吸収は、約3311cm−1、2979cm−1、2941cm−1、2879cm−1、1752cm−1、1683cm−1、1304cm−1、1142cm−1、980cm−1にピークがある。
【0058】
TD塩の製造は、通常塩を形成する割合でTDと酸を溶液に混合する。使用する酸が少々過量でもよい。溶媒は一般有機アルコール系から選ばれる。酸が無機酸、有機スルホン酸およびある水溶性の酸例えばアミノ酸であるときは、溶媒はC1〜4のアルコール、水または水と有機溶媒が形成した混合溶媒から選ばれてもよい。ある脂溶性が強い酸、例えばオレアノール酸、ウルソル酸等によって塩を製造するときは、ハロゲン化アルキルおよびエステル系を溶媒として使用してよい。TDと酸は液体に混合した後、攪拌または冷却で塩の結晶を析出できる。TD塩の溶液の溶媒を蒸発してTD塩の固体も得る。この固体は結晶でもよく、TD塩の無定形固体あるいは両方の混合物でもよい。
【0059】
TDの塩は、多数の固体として存在する。多数のTDの塩はTDより融点が高く、安定性が良く、結晶体を形成しやすい特徴がある。産業的生産と貯蔵に有利である。また、製剤の調製と貯蔵にも有利である。TDの塩または塩型複合物は、まだTDと同じ抗ウイルス活性がある。TDは、酸性基を含む肝臓保護機能がある有機化合物または天然産物と塩または塩型複合物を形成させると、この塩は、本来の抗ウイルス活性を保持すると同時に肝臓も保護する機能がある。したがって、TDの塩または塩型複合物は抗ウイルス薬物の調製にも使用できる。
【0060】
(三)TDのシクロデキストリン包接化合物
シクロデキストリンは6,7または8のグルコース分子が1,4−グリコシド結合で連接した環状オリゴ糖系化合物、水溶性の非還元的な白色の結晶性粉末である。構造は中空で丸い。空洞の口は親水性で、空洞の内部は強い疎水性である。たくさんの分子はシクロデキストリン分子に包まれて超分子構造を形成する。
【0061】
シクロデキストリンを使って薬物を包接化合物にした後、液体薬物を固化させうる。そして薬物の安定性を高め、溶解度を増加し、バイオアベイラビリティを増加する。
【0062】
TDはシクロデキストリンと包接化合物を形成できる。そして親脂性のピバロイルはシクロデキストリンの疎水性空洞に包まれた後、ピバロイルの加水分解は難しくなって、TDの安定性は高められ、TDは水に対する溶解度と溶解速度も高められる。そして製剤の溶出度とバイオアベイラビリティを高くし、注射製剤に調製するには便利である。
【0063】
前述のTDシクロデキストリン包接化合物はTDとシクロデキストリンがモル比1:1〜1:10で形成した包接化合物である。好ましくは1:1〜1:3である。前述のシクロデキストリンはαシクロデキストリンまたは誘導体、βシクロデキストリンまたは誘導体、γシクロデキストリンまたは誘導体である。好ましくはβシクロデキストリンまたは誘導体、特に好ましくはβシクロデキストリンである。
【0064】
TDのシクロデキストリン包接化合物は、TDをシクロデキストリンと液体に混合させて得る。製法は、飽和水溶液法、研磨法、凍結乾燥法、超音波法等である。
【0065】
1)飽和水溶液法
TDを適量なアルコール系またはケトン系で溶解する。TDとのモル比で1〜10倍のシクロデキストリンをとって、50〜80℃の飽和水溶液にする。両方の溶液を混合して30分間以上攪拌し、冷却し、包接化合物を沈殿析出させ、濾過し、適量なアルコール系またはケトン系等の有機溶媒で洗浄し、乾燥して得る。アルコール系またはケトン系有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましい。
【0066】
2)研磨法
一定量のTDを適量なアルコール系またはケトン系等の有機溶媒で溶解した後、1〜10倍量のシクロデキストリンを加え、また、適量な水を添加して混合する。十分にすり潰して糊状物にし、低温で乾燥した後、またアルコール系またはケトン系等の有機溶媒で洗浄し、乾燥して得る。
【0067】
3)凍結乾燥法
モル比1:1〜10でTDとシクロデキストリンを量って、0〜20%(v/v)のアルコール系またはケトン系等の有機溶媒を含む水に攪拌溶解し、微多孔膜で滅菌する。液体窒素タンク内に置いて凍結させ、また約24時間凍結乾燥させて得る。
【0068】
TDのβシクロデキストリン包接化合物を水に溶解した後、TLCに6%のメタノール−ジクロロメタンで展開させ、紫外線の下、蛍光色でTDのβシクロデキストリン包接化合物は原点にある。Rf値は0である。遊離なTDのRf値は0.4である。以上の確認結果は、TDとβシクロデキストリンが包接化合物を形成したことを説明できる。
【0069】
固化したTDおよび誘導体の溶解性と安定性の対比は次のようである:
溶解性分析
中国薬局方2005年版二部凡例を参照して試験を行った。正確にサンプル1gをとって、一定量の溶媒をゆっくり加え、5分ごとに激しく30秒振動し、30分以内の溶解現象を観察した。結果は次に示されている:
【表3】
【0070】
安定性分析
(一)照明試験
サンプルを開口の培養皿に均一に展開し、厚さを≦5mmとした。光強度は4500±500Lxになるように距離を調節した。5,10日目にサンプルをとって、0日目の結果と比較した。結果は次に示されている:
【表4】
【0071】
(二)高温試験
サンプルをきれいな密封しているガラス瓶に置いて、60℃の恒温オーブンに置いた。5,10日目にサンプルをとって測定し、0日目の結果と比較した。結果は次に示されている:
【表5】
【0072】
(三)高湿度試験
サンプルを開口の培養皿に均一に展開し、厚さを≦5mmとした。室温(25℃)で相対湿度75±5%の恒温恒湿培養オーブンに置いた。5,10日目にサンプルをとって測定し、0日目の結果と比較した。結果は次に示されている:
【表6】
【0073】
(四)加速試験
ポリエチレン薄膜ビニール袋でサンプルを密封に包装して、40±2℃、相対湿度75±5%の恒温恒湿培養オーブンに3ヶ月間置いた。1,2,3ヶ月目末にサンプルをとって測定し、0月目の結果と比較した。結果は次に示されている:
【表7】
【0074】
以上の結果により、本発明から得たTDおよび誘導体は、いずれも良い安定性がある、任意の組成物または薬物製剤に調製できることが分かる。特にTDのA型結晶とTDの塩である。TDの結晶と固体に比して、多くのTDの塩とTDのシクロデキストリン包接化合物は、良い水溶性を有し、溶液製剤に調製できる。例えば、小輸液、溶液注射剤、経口用液体または粉末注射剤などである。
【0075】
投与経路と薬用組成物
本発明によるTDまたはその生理的に許容される誘導体は、TDのA型結晶、TDのB型結晶、TDの無定形固化物、TDの塩型複合物とシクロデキストリン包接化合物であり、治療に必要する任意の経路で投与できる。一般的には、TDまたはその生理的に許容される誘導体は、経直腸、膣、鼻、局所(目、口腔、舌下)、非胃腸(皮下、筋肉、静脈内、皮内、鞘内、脳硬膜外)等経路により投与されてよい。好ましくは経口投与である。
【0076】
TDまたはその生理的に許容される誘導体は、純粋な形式で投与できるが、通常、TDの薬物製剤で投与される。TDの薬物製剤は、TDまたはその生理的に許容される誘導体および一種類または多種類の薬用担体を含む。必要によって、また他の治療成分または補助成分を含んでもよい。例えば、他の抗ウイルス剤、免疫促進剤、肝臓保護薬物とL−カルニチンおよび塩等である。薬用担体は、結合剤、希釈剤、崩壊剤、防腐剤、分散剤、流動化剤(抗接着剤)、潤滑剤である。
【0077】
経口投与に適するTDまたはその生理的に許容される誘導体の固体製剤は、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、丸剤、散剤、大丸剤、チンキ剤、糊剤等が挙げられる。このうち、錠剤は、普通錠剤、分散錠、発泡錠、徐放錠、放出制御錠または腸溶錠である。カプセル剤は普通カプセル、徐放カプセル、放出制御カプセルまたは腸溶カプセルである。
【0078】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の錠剤とカプセル剤の単位製剤は、5〜300mgのTDを含有する。好ましくは5〜150mgである。活性成分以外に、通常、適量の充填剤、例えばでん粉、サッカロースと乳糖;結合剤、例えば水、エタノール、ポリビニルピロリドンとα−でん粉;崩壊剤、例えば微結晶性セルロース、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ等薬用担体を含有してもよい。また、貯蔵中放出したホルムアルデヒドを捕獲するように、ホルムアルデヒド除去剤(例えばリジンまたはゼラチン)も含有できる。
【0079】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の錠剤とカプセル剤は、アルカリ性薬物担体も含んでも良い。例えば、炭酸アルカリとアルカリ性水酸化物である。好ましい炭酸アルカリは、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸第一鉄と炭酸アルミニウムである。好ましいアルカリ性水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムと水酸化第二鉄である。これらのアルカリ性薬物担体は、製剤中のTDの安定性を高め、TDの分解を抑制することができる。
【0080】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の製剤は、またL−カルニチンおよびその塩(例えばL−カルニチンL−酒石酸塩(2:1))を含んでもよい。TDは、生体内に代謝により産生したピバル酸が患者体内のL−カルニチンの濃度を降下させるようである。L−カルニチンまたはその塩とTDを含有する製剤は、ピバル酸がTDを使用する患者体内のL−カルニチンに対する降下作用を抑制することができる。添加するL−カルニチンの量は、患者体内のL−カルニチンの削減程度によって確定できる。
【0081】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の分散錠は、速く崩壊するように約0.5〜60%の崩壊剤を含有する。TDの腸溶錠は腸溶材料を含有する、または腸溶性コーティング材でコーティングする。腸溶カプセル剤は、腸溶材料で調製したカプセルに装入して得られるカプセル剤でもよく、また腸溶材料でコーティングした顆粒または小球を普通カプセルに装入して得てもよい。
【0082】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の錠剤とカプセル剤は、薬学に通用の方法で製造できる。錠剤の製造は水またはアルコールで湿式造粒した後、錠剤に調製してもよく、粉末で直接に錠剤に調製してもよい。カプセル剤は湿式造粒の後、カプセルに装入して得てもよく、粉末で直接にカプセルに装入して得てもよい。
【0083】
TDまたはその生理的に許容される誘導体は、また注射により投与されうる。製剤は例えば注射用無菌粉末と注射液体である。
【0084】
TDの生物活性
一、急性毒性試験、半数致死量(LD50)試験
TDのフマル酸塩とTDのA型結晶をそれぞれ0.1Mのクエン酸水溶液に溶解した。動物は体重18〜22gの健康な昆明マウス140を使った。乱塊法で14群に分け、各群に10匹、雌雄はそれぞれ半数であった。
【0085】
予備試験の結果によって、強制経口投与で七つの投与群に対して、それぞれ異なる投与量のTDのフマル酸塩とTDのA型結晶を投与した。マウスの毒性反応および死亡状況を14日間連続観察して、LD50を計算した。
【0086】
TDのフマル酸塩のLD50は6.05g/kgであった。95%の信頼限界は4.50〜7.87g/kgであった。
【0087】
TDのA型結晶のLD50は4.31g/kgであった。95%の信頼限界は2.83〜5.44g/kgであった。
【0088】
二、長期毒性試験
ビーグル犬はモデル動物として、アデフォビル・ジピボキシルは対照品として、TDのA型結晶の長期毒性を研究した。特にTDのA型結晶の腎臓機能に対する影響を研究した。
【0089】
30匹のビーグル犬は無作為に5群に分けて、各群は6匹であった。このうち、一つの群は空白対照群で、三つの群はそれぞれTDのA型結晶の低,中,高投与量群であった。低投与量群には5mg/kgで毎日一回、中投与量群には15mg/kgで毎日一回、高投与量群には45mg/kgで毎日一回投与した。また一つの群はアデフォビル・ジピボキシルの対照群、投与量は40mg/kgで毎日一回であった。
【0090】
薬物は個体ごとに使用する投与量でサラダ油と混合して投与した。続けて6ヶ月間投与し、終止した後、21日間観察した。
【0091】
各群動物において投与期間と回復期間に異常は見られず、動物の不思議な死亡もなかった。血液学と血尿生化検査には空白対照群とTDのA型結晶の低,中,高投与量群の血液学指標および血尿生化標準はいずれも著しい差がなかった。しかし、アデフォビル・ジピボキシルの血清カルミン和尿素窒素の指標は何れも著しく高くなった。そして長期にアデフォビル・ジピボキシルを投与すると腎臓に毒性があるが、同じ投与量のTDのA型結晶は安全であることは分かった。結果は次のようである:
【表8】
【0092】
三、体内抗ウイルス試験
二ヶ月齢のダックB型肝炎ウイルスに感染されたツクシガモを使用して体内抗B型肝炎ウイルス試験をし、薬効を観察した。80匹の高郵ツクシガモは無作為に8群にわけ、各群は10匹であった。このうち、三つの群にはそれぞれTDフマル酸塩を5,15,45mg/kgで毎日一回投与した。他の三つの群にはそれぞれテノフォビルDF(tenofovir disoproxil fumarate)を5,15,45mg/kgで毎日一回投与した。もう一つの群にはアデフォビル・ジピボキシルを15mg/kgで毎日一回投与した。最後の一つの群は空白対照群であった。28日間投与し、7日ごとに採血して、PCR法でDHBV−DNAレベルに対する抑制効果を測定した。抑制率は次に示される。試験結果から、TDの体内抗ウイルス活性はテノフォビルDFとアデフォビル・ジピボキシルよりずっと高いことが分かった。
【表9】
【0093】
四、薬物動態学とテノフォビルの体内分布
1、バイオアベイラビリティ
マウス10匹は無作為に2群に分けられ、各群は5匹であった。強制経口投与により、それぞれ3H−TDフマル酸塩30mg/kg、放射投与量135μCi/kgを投与された。テノフォビルDFは30mg/kg、135μCi/kgで投与された。時間ごとに血漿を採って、放射性を測定し、血中薬物濃度に換算した。
【表10】
【0094】
2、組織中の分布
ウィスター系ラット30匹を使用して無作為に6群に分けた。12時間絶食した後、3群には強制経口投与で20mg/kgのTDフマル酸塩を投与した。他の3群には強制経口投与で20mg/kgのテノフォビルフマル酸塩を投与した。投与してから1,4,8時間後に大腿動脈瀉血によりTDフマル酸塩とテノフォビルフマル酸塩(対照群)の動物それぞれ1群を殺した。肝臓と腎臓を採って、化学天秤で湿重量を量って、蒸留水と1:3でホモジネートをし、1000gで10分間遠心分離した。上清液0.25mlを取って、共栓グラス試験管内に入れ、再蒸留水50μLと10mg/L濃度のPMEA水溶液50μL(内標準溶液)を加え、均一に混合した後、メタノール0.5mLを加え、1分攪拌し、10分間遠心分離した(3000r/分)。上清液20μLを取って、液体クロマトグラフィー質量分析で組織中のPMPA濃度を測定した。
【0095】
液体クロマトグラフィー質量分析法のクロマトグラフ条件は次のようである:
クロマトグラフィーカラムはDiamonsil C−18カラム、250mm×4.6mm,粒径5μmである。移動相はメタノール−水−ギ酸(20:80:1)である。流速は0.5mL/分である。
【0096】
質量分析条件:
アメリカFinnigan TSQ型クロマトグラフィー−質量分析−質量分析を使った。イオン源はESI源であった。電源電圧は4.5kVであった。衝突誘起解離電圧は40eVであった。陽イオンモード検出を使った;定量分析に用いたイオン反応はm/z288→m/z176であった。PMEAは内標準物質として、イオン反応はm/z288→m/z176であった。
【表11】
【0097】
TD群はTDフマル酸塩を投与した動物群であった。対照群はテノフォビルフマル酸塩を投与した動物群であった。
【0098】
ラットに同じ使用量のTDフマル酸塩とテノフォビルフマル酸塩を投与した後、肝臓においてTDフマル酸塩からのPMPAの濃度はテノフォビルフマル酸塩からのPMPAより異なる時間で約70%〜100%高く、そして肝臓腎臓分布の割合によって、TDフマル酸塩を投与した後、肝臓におけるPMPAの濃度は腎臓におけるPMPAの濃度の約4倍である。しかし、テノフォビルフマル酸塩を投与した後、肝臓におけるPMPAの濃度は腎臓におけるPMPA濃度の約2.5倍である。したがって、TDフマル酸塩はその代謝産物PMPAを肝臓に集中させ、肝臓標的な性質がある。
【実施例】
【0099】
[実施例1]
(R)−炭酸−1,2−プロピレンの合成
炭酸ジエチル(380ml,15.1モル)と(R)−1,2−プロパンジオール200gの混合物に変性アルコール40ml(50ml無水エタノールに9gナトリウム・メトキシドを溶解した溶液)を加えた。そして、溶液を80℃に加熱し、ゆっくりエタノールを蒸発除去した。反応過程はTLCで(R)−1,2−プロパンジオールが微量にまたはなくなるまで検査した。120℃でエタノールが出なくなるまで送水ポンプ減圧蒸留をした。また、真空ポンプ蒸留をして無色透明な液体111グラムを得た。収率は81.2%であった。産物の純度はGC分析により97%であった。
【0100】
[実施例2]
ジエチルp−トルエンスルホニルオキシメチルスルホン酸の合成
不活性ガス(窒素)雰囲気下で、トルエン(200ml)、ジエチル亜リン酸(400ml)、パラホルムアルデヒド(120g)とトリエチルアミン(50ml)を混合し、70℃に加熱して2時間反応させた。次に還流まで加温し、続いて反応させ、TLC(展開剤はヘキサン:酢酸エチル=1:4である)でジエチル亜リン酸が微量にまたはなくなるまで反応させた。溶液は10℃以下に冷却させ、p−トルエンスルホニルクロリド(560g)を加えた。そして約5℃で緩慢にトリエチルアミン(560ml)を加え、温度は10℃を超えないように維持した。次に室温まで加温し、TLCでp−トルエンスルホニルクロリドが微量にまたはなくなるまで8時間反応させ、ろ過により固体を除去した。固体は適量のトルエンで洗浄した。洗浄液と濾過液を合わせ、5%NaCO3水溶液と水を使ってそれぞれ2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで水を除去した後、50℃を超えない温度で溶媒を蒸発除去し、600gの無色液体を得た。純度はGC分析により86%であった。精製せずに直接に後の反応に用いてもよい。
【0101】
[実施例3]
(R)−9−[2−(ジエチルホスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニンの合成
不活性ガス(窒素)雰囲気下で、アデニン(100g)、水酸化ナトリウム(1.2g)、(R)−炭酸−1,2−プロピレン(84g)とN,N−ジメチルホルムアミド(700ml)を加え、TLC(10%MeOHのCHCl2溶液(容積比))で残ったアデニンが0.5%以下になるまで130℃で30時間反応混合物を攪拌した。反応混合物は25℃に冷却させ、水素化リチウム(8g)を加え、窒素が存在する雰囲気下で70℃に加温し、2時間反応させた。次に室温まで冷却させ、ジエチルp−トルエンスルホニルオキシメチルリン酸(300g)を加え、TLCで完全に反応するまで反応混合物を60℃に維持した。80℃以下で反応混合物を真空濃縮し、水(500ml)を加えて溶解した。水溶液はジクロロメタンで連続抽出され、ジクロロメタン抽出物を合わせ、80℃以下で抽出物を真空濃縮し、オレンジ色の粘性油状物200gを得た。HPLCによりオレンジ色の油状物には65%の(R)−9−[2−(ジエチルホスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニンを含まれていた。この粗製した(R)−9−[2−(ジエチルホスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニンは、精製せずに直接に後の反応に用いてもよい。
【0102】
[実施例4]
(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン(PMPA)の合成
(R)−9−[2−(ジエチルホスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニン(100g)粗生成物をアセトニトリル(122ml)に溶解し、窒素の存在下で臭化トリメチルシラン(207g)を加え、70℃で反応混合物を4時間還流した。TLCで原料が完全になくなった後、溶媒を減圧蒸発除去し、残留物は水200mlで洗って、20℃に冷却させ、ジクロロメタンまたは酢酸エチルで洗浄した。水相は50%水素化ナトリウム水溶液でpHを3.1〜3.5に調節し、室温で緩慢に約3時間攪拌し、濾過して固体を集め、それぞれ冷水(50ml)とアセトン(50ml)で洗浄して粗製PMPA固体60gを得た。PMPA固体の粗生成物に90℃の純水200mlを加え、十分に攪拌した後、室温まで冷却させ、一晩置いて、濾過し、冷水とアセトンで連続的に洗浄して、50℃で真空乾燥してPMPA 45グラムを得た。HPLCによるPMPAの純度は99%であった。
【0103】
[実施例5]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成とシリカゲルカラム分離・精製
窒素雰囲気下で、固体PMPA(40g)、無水N,N−ジメチルホルムアミド(160ml)とトリエチルアミン(120ml)を混合し、この懸濁液を緩慢に攪拌しながら、50℃に加温した。1時間後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を添加し、温度を50〜55℃に保持し、8時間前後反応させ、冷却させて酢酸エチル(4000ml)を加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去し、濾過液はそれぞれ5%NaHCO3と水で2回洗浄して、無水硫酸ナトリウムで水を乾燥除去した。50℃以下に有機溶媒を真空除去し、粘性の黄色油状物47gを得た。このうち、約55%の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンが含まれていた。200〜300メッシュのシリカゲル200gを取ってカラムに入れた。油状物(47g)を適量なシリカゲルを入れられたカラムに入れた。5%〜10%のメタノール/ジクロロメタンの混合液で洗って、TDを含む洗脱液を集め、組成を合わせ、溶媒を蒸発除去して精製TD油状物18.0gを得た。HPLCによる純度は95.2%であった。
1H−NMR(CDCl3):8.347(1H,s,H−8)、7.969(1H,s,H−2)、5.819(2H,s,NH2)、5.676(4H,m,CH2OP)、4.360(1H,dd,J=14.4,2.8,H−1)、4.132(1H,dd,J=14.4,7.2,H−1’)、3.933(1H,m,H−2)、3.898(1H,dd,J=14.0,8.8,H−4)、3.677(1H,H,dd,J=14.0,9.2,H−4’)、1.238(3H,D,J=6.0,CH3)、1.215(18H,d,J=6.0,CH3)(図1)
MS:分子イオンピークm/e:516.2(M+H+),538.2(M+Na+)(図2)
UV−VIS(メタノール):最大吸収ピーク260nm
【0104】
[実施例6]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と結晶の精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、エチルジイソプロピルアミン(140ml)を混合し、50℃に加温した。30分後、ピバル酸ヨウ化メチル(65ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、4時間反応させ、室温まで冷却させた。反応混合物に酢酸エチル4000mlを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで水を乾燥除去し、50℃以下で有機溶媒を真空除去して粘性の黄色油状物66gを得た。このうち、約38%の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンが含まれていた。メタノール(200ml)で油状物を溶解し、水(800ml)を加え、白色固体を得て、濾過し、少量冷凍のエタノールで洗浄し、室温で真空乾燥した後、TDの固体21gを得た。HPLCによる純度は96.3%であった。
【0105】
[実施例7]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と結晶法精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、トリエチルアミン(120ml)とトリブチル臭化ベンジル(1g)を混合し、50℃に加温し、30分後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、8時間前後反応させ、室温まで冷却させた。反応混合物に酢酸エチル4000mlを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで水を乾燥除去し、50℃以下に有機溶媒を真空で蒸発除去して粘性の黄色油状物53gを得た。このうち、HPLCにより約56%の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンが含まれていた。アセトン(200ml)で黄色油状物を溶解し、イソプロピルエーテル(800ml)を加え、混合した後、室温まで冷却させ、種結晶を加え、0℃で24時間置いた後、白色結晶を得て、濾過した後、少量のイソプロピルエーテルで洗浄して固体26gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCにより純度は98.9%であった。
【0106】
[実施例8]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と結晶法精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、トリエチルアミン(120ml)を混合して50℃に加温し、30分後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、12時間前後反応させ、室温まで冷却させ、反応混合物に4000ml酢酸エチルを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄して、無水硫酸ナトリウムで水を乾燥除去し、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去して粘性の黄色油状物49gを得た。このうち、HPLCにより約52%の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンが含まれていた。アセトン(200ml)で黄色油状物を溶解し、ブチルエーテル(800ml)を加え、0℃に24時間置いた後、白色結晶を得て、濾過し、少量のブチルエーテルで洗浄して固体22gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は98.3%であった。
【0107】
[実施例9]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と塩法精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、トリエチルアミン(120ml)を混合して50℃に加温し、30分後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、8時間前後反応させ、反応混合物に酢酸エチル4000mlを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄した。水を除去した後、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去して粘性の黄色油状物48gを得た。HPLCにより油状物に約56%のTDを含まれていた。油状物はメタノール(100ml)に溶解した後、フマル酸溶液(7gは100mlメタノールに溶解する)を加え、0℃に攪拌しながら一晩置き、濾過してTDフマル酸塩29gを得た。得たフマル酸塩は酢酸エチルに溶解し、飽和のNaHCO3水溶液200mlで三回洗浄して、さらに水で中性に洗浄して、水相を分離し、捨てた。有機相は水を除去し、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去し、TD油状物21gを得た。室温に置いた後、油状物は次第に固体状TDに凝固した。固体は真空乾燥させた後、すり潰されて固体粉末を得られた。XRD分析によりこの固体はTDのA型結晶であった。HPLCによるTD純度は99.1%であった。
【0108】
[実施例10]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と塩法精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、トリエチルアミン(120ml)を混合して50℃に加温し、30分後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、8時間前後反応させ、反応混合物に酢酸エチル4000mlを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄して、水を除去した後、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去して粘性の黄色油状物60gを得た。HPLCにより油状物に約38%のTDを含まれていた。油状物はアセトン(100ml)に溶解した後、シュウ酸溶液(5gは100mlメタノールに溶解する)を加え、0℃に一晩置き、濾過してTDシュウ酸塩24gを得た。得たシュウ酸塩は酢酸エチルに溶解し、飽和のNaHCO3水溶液200mlで三回洗浄して、さらに水で中性に洗浄して、水相を分離し、捨てた。有機相は水を除去し、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去してTD油状物19gを得た。室温に置いた後、油状物は次第に固体状TDに凝固した。XRD分析によりこの固体はTD(A型結晶)と無定形TDの混合物であった。HPLCによるTD純度は99.3%であった。
【0109】
[実施例11]
TDのA型結晶の調製
95%のTD油状物2gを約35℃の無水メタノール(10ml)に溶解し、攪拌しながらこの溶液にイソプロピルエーテル(30ml)を滴下し、−4℃に置いて固体を析出させ、濾過し、真空乾燥し、TDの結晶1.38gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は98.5%であった。
【0110】
[実施例12]
TDのA型結晶の調製
95%のTD油状物2gを約40℃の無水THF(6ml)に溶解し、室温に置いて固体を析出させ、濾過し、真空乾燥してTDの結晶1.62gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は97.8%であった。
【0111】
[実施例13]
TDのA型結晶の調製
95%のTD油状物0.5gを約60℃の無水トルエン(60ml)に溶解し、室温に置いて固体を析出させ、濾過し、真空乾燥してTDの結晶0.42gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は97.2%である。
【0112】
[実施例14]
TDのA型結晶の調製
99%のTD油状物1gを1ml酢酸エチルに溶解し、速く攪拌している−20℃に冷却したヘキサン200mlに得た溶液をゆっくり滴下し、固体を析出させ、濾過し、真空乾燥してTDの結晶0.82gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は98.2%であった。
【0113】
[実施例15]
TDのA型結晶の物理特性解析
実施例11で得たTDのA型結晶はD/MAX−IIIC型自動X線回折計(日本理学電機株式会社)によりXRDスペクトル(図3)を測定した。TDのA型結晶特性は次のようであった:
【表12】
【0114】
熱分析(DSC2010,アメリカTA社)でTDのA型結晶に示差走査熱量測定を行った。10℃/分の加温速度で一つの吸収変化ピークがあった。ピーク値は100℃、起点は97℃であった(図4)。
【0115】
赤外線分光光度計(MagNa−IR550,アメリカNicolet社)を使って、KBr錠により赤外スペクトル分析を行った。TDのA型結晶の赤外線吸収スペクトルは約3334cm−1、3164cm−1、2979cm−1、1760cm−1、1659cm−1、1605cm−1、1490cm−1、1250cm−1、1142cm−1、980cm−1と910cm−1に特性スペクトル帯があった(図5)。
【0116】
デジタル融点測定装置(WRS−1B上海精密科学技術有限会社)を使って、TDのA型結晶を測定した。TDのA型結晶は96.2〜97.9℃で融解した。
【0117】
[実施例16]
TDのB型結晶の調製
99%のTD(2g)を95%のエタノール(10ml)に溶解し、室温に24時間置いてTDの結晶1.61gを得た。XRD分析により得た固体はTDのB型結晶であった。HPLCによる純度は98.8%であった。
【0118】
[実施例17]
TDのB型結晶の調製
TD(2g、95%)をアセトン(15ml)に溶解し、35〜40℃に攪拌しながら水(30ml)に滴下し、4℃に冷却させ、少量のTDのB型結晶の種結晶を加え、24時間結晶化させ、濾過し、真空乾燥して白色固体1.4gを得た。XRD分析により得た固体はTDのB型結晶であった。HPLCによる純度は97.8%であった。
【0119】
[実施例18]
TDのB型結晶の物理特性解析
実施例16から得たTDのB型結晶はD/MAX−IIIC型自動X線回折計(日本理学電機株式会社)によりXRDスペクトル(図6)を測定した。特性は次のようであった:
【表13】
【0120】
熱重量分析(TGA−7,アメリカPE社)の結果:
TDのB型結晶は35〜45℃に二つの重量減少ピークがあった。重量減少は全部で6.675%であった。TDのB型結晶に二つの結晶水を含有することが分かった。その熱重量分析(TG)スペクトルは図7のようであった。
【0121】
熱分析(DSC2010,アメリカTA会社)でTDのB型結晶に示差走査熱量測定を行った。10℃/分の加温速度で一つの吸収変化ピークがあった。ピーク値は55℃、起点は46℃であった。示差走査熱量分析スペクトルは図8に示された。
【0122】
デジタル融点測定装置(WSR−1B上海精密科学技術有限会社)を使って測定した。TDのB型結晶は63.2〜64.7℃で融解した。
【0123】
赤外線分光光度計(MagNa−IR550,アメリカNicolet会社)を使って、KBr錠により赤外スペクトル分析を行った。TDのB型結晶の赤外線吸収スペクトルは、約3373cm−1、3203cm−1、2979cm−1、1760cm−1、1652cm−1、1605cm−1、1312cm−1、1250cm−1、1034cm−1と965cm−1に特性スペクトル帯があった。TDのB型結晶の特性赤外線吸収スペクトルは図9に示された。
【0124】
[実施例19]
TDの無定形固化物の調製
99%のTD油状物1gを25mlのエタノールに溶解し、−80℃前後で冷凍凝固させ、−60℃で24時間真空冷凍乾燥して白色固体0.98gを得た。XRDスペクトルは図10に示された。これはTDの無定形固体であることが分かった。
【0125】
[実施例20]
TDの無定形固体の調製
99%のTD油状物1gを1mlのジクロロメタンに溶解し、速く攪拌されている−60℃に冷却したヘキサン200mlに得た溶液をゆっくりと滴下し、続いてまた2時間速く攪拌し、固体を析出させ、濾過し、真空乾燥して固体0.95gを得た。XRD分析によりこれはTDの無定形固体であった。HPLCによる純度は98.5%であった。
【0126】
[実施例21]
TD−β−シクロデキストリン包接化合物の調製
TD20gを取って、40ml無水エタノールで溶解した。45gのβ−シクロデキストリンを取って、567mlの水を加え、60℃の飽和水溶液にした。TDのエタノール溶液をβ−シクロデキストリンの飽和水溶液に滴下し、恒温で30分攪拌し、加熱を停止した後、続いて4時間攪拌し、冷蔵庫に置き、24時間冷凍し、そして濾過し、無水エタノールでケーキを洗って、減圧乾燥し、すり潰してしてTDのβ−シクロデキストリン包接化合物62.5gを得た。収率は96%であった。薬物負荷量は30.15%であった。
【0127】
[実施例22]
TD−β−シクロデキストリン包接化合物の調製
TD10gを取って、10mlの無水エタノールで溶解した。22.7gのβ−シクロデキストリンを取って、水284mlを加えて混合し、室温で糊状物にすり潰し、低温で乾燥した後、無水エタノールで洗浄し、そして乾燥してTDのβ−シクロデキストリン包接化合物25gを得た。収率は78%であった。薬物負荷量は21.64%であった。
【0128】
[実施例23]
TD−β−シクロデキストリン包接化合物の調製
TD10.02gと22.7gのβ−シクロデキストリンを取って、8%(v/v)の無水エタノールの水溶液300mlに攪拌しながら溶解した後、0.45μmの微多孔膜により濾過し、液体窒素タンクに冷蔵させ、約24時間冷凍乾燥してTDのβ−シクロデキストリン包接化合物を得た。収率は98%であった。薬物負荷量は30.5%であった。
【0129】
[実施例24]
TDフマル酸塩の調製
TD油状物(純度95%)5.3gを30mlのメタノールに溶解し、攪拌しながら、1.16gフマル酸を含むメタノール溶液10mlを緩慢に滴下し、25℃の恒温で続いて1時間攪拌し、不溶物を濾過除去し、0〜4℃に5時間置き、吸引濾過して白色固体4.8gを得た。融点は119℃であった。
1HNMR(DMSO−d6):8.13(1H,s,H−8)、8.03(1H,s,H−2)、7.15(2H,s,NH2)、 6.63(2H,s,フマル酸H−2,H−3)、5.54(4H,m,CH2OP)、4.21(2H,ddd,J=4,1,4.4,3,4.8)、3.94(3H,m,H−4,H−4’)、1.15(18H,d,J=3.2,CH3)、1.62(3H,d,J=6,H−3)。
【0130】
1HNMRスペクトルの6.63に一つの単一のピークはフマル酸H−2、H−3の特性ピークであった。積分によりTDとフマル酸は塩を形成した割合は1:1であった。1HNMRスペクトルは図11に示された。
【0131】
IRスペクトルは図12に示された。
【0132】
XRDスペクトルは図13に示された。特性は次のようであった:
【表14】
【0133】
[実施例25]
TDフマル酸塩の調製
純粋なTD油状物5.15gを30mlのアセトンに溶解し、攪拌すると同時に、この溶液に1.16gのフマル酸を含むメタノール溶液10mlを緩慢に滴下し、25℃の恒温で続いて1時間攪拌し、不溶物を濾過除去し、回転蒸発で溶媒を除去した。残留固体は45℃の酢酸エチル20mlに溶解し、0〜4℃に12時間置き、吸引濾過してTDフマル酸塩の白色固体5.5gを得た。融点は119℃であった。
【0134】
[実施例26]
TDシュウ酸塩の調製
TD油状物5.15gを30mlの酢酸エチルに溶解し、攪拌すると同時に、この溶液に0.9gのシュウ酸を含むエタノール溶液を緩慢に滴下し、45℃の恒温で続いて攪拌し、約20分シュウ酸エタノール溶液を滴下した後、不溶物を濾過除去し、室温まで次第に下げ、また約5時間攪拌した後、吸引濾過してTDシュウ酸塩白色固体4.6gを得た。融点は153〜154℃であった。
1HNMR(DMSO−d6):8.15(1H,s,H−8)、8.05(1H,s,H−2)、7.29(2H,s,NH2)、5.54(4H,m,CH2OP)、4.22(2H,ddd,J=0.4,14.4,35.6,H−1,H−1’,H−2)、3.95(3H,m,H−4,H−4’)、1.15(18H,d,J=2.8,CH3)、1.08(3H,d,J=6,H−3)、1HNMRスペクトルは図14に示された。
【0135】
IRスペクトルは図15に示された。XRDスペクトルは図16に示された。
【0136】
[実施例27]
TDサリチル酸塩の調製
TDの油状物、無定形固化物または結晶5.15gを30mlの酢酸エチルに溶解し、攪拌すると同時に、この溶液に1.76gのサリチル酸を含むエタノール溶液を緩慢に滴下し、45℃の恒温で続いて攪拌し、約20分間サリチル酸エタノール溶液を滴下した後、不溶物を濾過除去し、室温に次第まで下げ、また約8時間攪拌した後、吸引濾過して得た白色固体はTDサリチル酸塩であった。融点は88℃であった。IRスペクトルは図17に示された。
【0137】
[実施例28]
TDオレアノール酸塩の調製
99%のTD結晶5.15gを30mlのジクロロメタンに溶解し、そして、100mlのエタノール:ジクロロメタン(1:1)に4.5gのオレアノール酸を含有する溶液を加え、50℃の恒温で続いて120分攪拌した後、混合物中の溶媒を真空除去して得た灰白色固体はTDのオレアノール酸塩であった。融点は242℃(分解)であった。IRスペクトルは図18に示された。
【0138】
[実施例29]
TDアスパラギン酸塩の調製
99%のTD結晶1.0gを10mlのエタノールに溶解し、攪拌すると同時に、この溶液に0.266gのアスパラギン酸(L−アスパラギン酸が好ましい)を含む水溶液を緩慢に滴下し、40℃の恒温で続いて攪拌し、約20分間アスパラギン酸水溶液を滴下した後、この温度で続いて150分攪拌した後、室温まで次第に下げ、真空冷凍乾燥して白色固体を得た。融点は163℃であった。
【0139】
[実施例30]
TDタウリン酸塩の調製
99%のTD結晶1.0gを10mlのエタノールに溶解し、この溶液に0.25gタウリン酸を含むイソプロパノール溶液を滴下し、45℃の恒温で続いて120分攪拌した後、混合物中の溶媒を真空除去して白色固体を得た。融点は172℃であった。
【0140】
[実施例31]
TD塩酸塩の調製
99%のTD結晶1.03gを10mlのTHFに溶解し、0℃で1Mの塩化水素THF溶液2.2mlを滴下し、続いて約120分攪拌した後、−20℃に一晩置き、濾過して0.95g白色固体を得た。融点は192℃(分解)であった。
【0141】
[実施例32]
TDヘミスルフェートの調製
99%のTD結晶1.03gを10mlのTHFに溶解し、攪拌して0℃で1Mの硫酸メタノール溶液2.2mlを滴下し、続いて約120分攪拌した後、真空冷凍乾燥して白色固体を得た。
【0142】
[実施例33]
TD p−トルエンスルホン酸塩の調製
99%のTD結晶1.03gを10mlのTHFに溶解し、攪拌して0℃で1Mのp−トルエンスルホン酸メタノール溶液2.2mlを滴下し、続いて約120分攪拌した後、溶媒を真空除去して白色のバブル状固体を得た。
【0143】
[実施例34]
TDのA型結晶錠剤の調製
処方(1000錠):TDのA型結晶30g、乳糖200g、デンプングリコール酸ナトリウム2g、ポリビニルピロリドン(K30)15g、ステアリン酸マグネシウム0.4g、タルク1.2g。
製法:TDのA型結晶、乳糖、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)、ステアリン酸マグネシウム、タルクはそれぞれ80篩目を通させた。そして処方量のTDのA型結晶、乳糖、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)、50%処方量のステアリン酸マグネシウム、タルクは等量追加法で均一に混合させ、乾式造粒機により18篩目を通させ、造粒をした。残ったステアリン酸マグネシウム、タルクを加え、均一に混合し、ペレット成形にし、各錠30mgのTDを含有した錠剤を得た。
【0144】
[実施例35]
TDのA型結晶錠剤の調製
処方(1000錠):TDのA型結晶10g、デンプン100g、デンプングリコール酸ナトリウム2g、ポリビニルピロリドン(K30)10g、ステアリン酸マグネシウム0.4g、タルク1.2g、炭酸マグネシウム2g。
製法:TDのA型結晶、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)、ステアリン酸マグネシウム、タルクと炭酸マグネシウムはそれぞれ80篩目を通させた。そして処方量のTDのA型結晶、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)と炭酸マグネシウムを均一に混合し、適量な水を加え、軟質材料にし、篩目を通して造粒をした。乾燥し、含量と水分を測定し、ステアリン酸マグネシウム、タルクを加え、均一に混合し、錠剤にして得た。
【0145】
[実施例36]
TDのフマル酸塩の錠剤の調製
処方(1000錠):TDフマル酸塩50g、デンプン1000g、L−カルニチン(L−酒石酸塩)200g、デンプングリコール酸ナトリウム20g、ポリビニルピロリドン(K30)10g、ステアリン酸マグネシウム2g、タルク5g。
製法:TDフマル酸塩と処方中の添加剤はそれぞれ80篩目を通させ、そして処方量のTDフマル酸塩、デンプン、L−カルニチン(L−酒石酸塩)、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)を混合し、適量な水を加え、軟質材料にし、篩目を通して造粒をした。乾燥して含量と水分を測定し、ステアリン酸マグネシウムとタルクを加え、均一に混合し、錠剤にして得た。
【0146】
[実施例37]
TDのA型結晶カプセル剤の調製
処方(1000錠):TDのA型結晶30g、部分アルファー化デンプン200g、タルク2g。
製法:薬物と添加剤を乾燥した後、それぞれ100篩目を通させ、そして等量追加法で処方量の薬物と添加剤を均一に混合し、混合粉末の含量と水分を測定した。粉末は直接にカプセルに充填して得た。
【0147】
[実施例38]
TDフマル酸塩カプセル剤の調製
処方(1000錠):TDフマル酸塩50g、部分アルファー化デンプン400g、L−カルニチン(L−酒石酸塩)100g、タルク2g。
製法:薬物と添加剤を乾燥した後、それぞれ100篩目を通させ、そして等量追加法で処方量の薬物と添加剤を均一に混合し、乾式造粒機により18篩目を通して造粒をし、混合粉末の含量と水分を測定した。顆粒は直接にカプセルに充填して得た。
【0148】
[実施例39]
TDのA型結晶分散錠の調製
処方(1000錠):TDのA型結晶10g、部分アルファー化デンプン20g、微結晶性セルロース60g、乳糖20g、デンプングリコール酸ナトリウム25g、ドデシル硫酸ナトリウム1g、ステアリン酸マグネシウム1g。
製法:処方量のTDのA型結晶は100篩目を通させ、処方量の部分アルファー化デンプン、微結晶性セルロース、乳糖、デンプングリコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムは60篩目を通させ、均一に混合し、等量追加法で処方量の薬物と添加剤を均一に混合し、含量を測定した。粉末で直接錠剤にして得た。得た錠剤の崩壊時間は1分未満である。
【0149】
[実施例40]
TD−βシクロデキストリン包接化合物注射用粉末製剤
処方:
TD−βシクロデキストリン包接化合物(薬物負荷率30%) 10g
クエン酸三ナトリウム 5.5g
マンニトール 500g
1000mlになるように注射用水を加えた。全部で1000瓶を調製した。
製法:
処方量のクエン酸三ナトリウムは適量な注射用水に溶解させ、処方量のTD−βシクロデキストリン包接化合物(薬物負荷率30%)を加え、攪拌して溶解させ、注射用水約900mlを加え、また処方量のマンニトールを加え、攪拌して溶解させ、0.1mol/Lのクエン酸溶液でpH5.5前後に調節し、全量まで注射用水を加えた。0.03%(w/v) 注射用活性炭を添加し、30分間攪拌し、0.22μmの微多孔膜で正圧濾過して病原菌を除去し、半製品は検査に合格した後、病原菌を除去したきれいなガラス小瓶に無菌包装した。各瓶1mlとした。約24時間低温冷凍乾燥し、口を密封して得た。製品は検査に合格した後包装した。
【0150】
[実施例41]
TDフマル酸塩注射液 静脈注射用
処方:
TDフマル酸塩 3.3g
塩化ナトリウム 9.0g
注射用水 適量
全量 1000ml
全部で1000瓶を調製した。
製法:
処方量のTDフマル酸塩、塩化ナトリウムを取って、注射用水900mlを加え、80℃に加温して溶解させ、また0.1mol/Lのクエン酸溶液でpH4.0〜5.0に調節し、全量まで注射用水を加えた。0.01%w/v注射用活性炭を添加し、15分間攪拌し、砂棒より脱炭し、0.45μmの微多孔膜で濾過した。濾過液は100mlのガラス輸液瓶に装入し、ポリエステルフィルムを置いて、ゴム栓で覆って、蓋を押し、115℃に水蒸気循環で30分間滅菌し、ライトで検査して包装した。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】TDの1H核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル
【図2】TDの質量分析(MS)スペクトル
【図3】TDのA型結晶のXRDスペクトル
【図4】TDのA型結晶のDSCスペクトル
【図5】TDのA型結晶のIRスペクトル
【図6】TDのB型結晶のXRDスペクトル
【図7】TDのB型結晶の熱重量分析(TG)スペクトル
【図8】TDのB型結晶のDSCスペクトル
【図9】TDのB型結晶のIRスペクトル
【図10】TDの無定形固化物のXRDスペクトル
【図11】TDフマル酸塩の1H−NMRスペクトル
【図12】TDフマル酸塩のIRスペクトル
【図13】TDフマル酸塩のXRDスペクトル
【図14】TDシュウ酸塩の1H−NMRスペクトル
【図15】TDシュウ酸塩のIRスペクトル
【図16】TDシュウ酸塩のXRDスペクトル
【図17】TDサリチル酸塩のIRスペクトル
【図18】TDオレアノール酸塩のIRスペクトル
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(英語で9-[2-(R)-[bis[pivaloyloxymethoxy]phosphinoylmethoxy]propyl]adenine,bis-POMPMPA,以下「TD」と略称する)およびその誘導体と用途に関する。また、本発明はTDの合成方法と固体状態のTDの製造方法に関する。また、本発明は、TDを含有する組成物および組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホノメトキシヌクレオチド類縁体が広範囲な抗菌スペクトルを有することは公知である。HIV、HBV、CMV、HSV−1、HSV−2およびヒトヘルペスウイルス(人類疱疹病毒)に抗ウイルス活性がある。これらの化合物のうち、例えば9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデノシン(PMEAと略称する)と9−[(R)−2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデノシン(PMPAと略称する)は、既に臨床の抗ウイルス治療に使用されている。ホスホノメトキシヌクレオチド類縁体に含有されるホスホン酸イオンは生体の吸収に影響するため、一般的にはホスホノメトキシヌクレオチド類縁体を親油性プロドラッグに変化させて、バイオアベイラビリティを増強する。例えば、最近FDAに承認されたB型肝炎の治療に使用するアデフォビル・ジピボキシル(adefovir dipivoxil)とエイズの治療に使用するテノフォビルDF(tenofovir disoproxil fumarate)は、それぞれホスホノメトキシヌクレオチド類縁体PMEAとPMPAの親油性プロドラッグである。アデフォビル・ジピボキシルとテノフォビルDFは、体内でいずれも抗ウイルス活性を有する母薬物PMEAとPMPAに代謝される。
【化1】
【化2】
【0003】
最近の臨床試験で、アデフォビル・ジピボキシルには腎障害の副作用が見られた。アデフォビル・ジピボキシルは、毎日300mg使用するとエイズウイルス(HIV)を抑制できるが、薬物動態学の研究によって、300mgの使用量でアデフォビル・ジピボキシルは生体に摂取された後、大部分は腎臓に分布するため、腎臓毒性が発生する。しかし、アデフォビル・ジピボキシルは、50mg/日、30mg/日および10mg/日で使用すると、人体のB型肝炎ウイルス(HBV)の複製は抑制されるが、50mg/日、30mg/日投与群では副作用と腎臓機能異常の発生率が高い。したがって、アデフォビル・ジピボキシルは、10mg/日のみがB型肝炎の治療に使用できる。現在、B型肝炎ウイルスの治療期間は長いので、48週を過ぎると、10mg/日の低用量でも、腎臓に対する蓄積毒性があるかどうかはまだ観察が必要であることを提案している。
【0004】
FDAに承認されたエイズ抗ウイルス併用治療に使用するテノフォビルDFは、300mg/日と高用量である。長時間使用する病人の肝臓と腎臓にとって、大きな負担になる。また、高用量は単位製剤の生産コストも増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存文献には、TD油状物に関する報告だけがある。TD油状物の安定性はよくなく、適当な製剤の調製に不利であるため、薬物製剤の調製と貯蔵などに使用するように固化を必要する。今まで、固体状態のTDに係る報告はまだなく、TDを固化する方法も報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今、式(I)に示される化合物(R)−9−[2−[ビス[ピバロイルオキシメトキシ]ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)はアデフォビル・ジピボキシルとテノフォビルDFよりよい抗ウイルス活性と安定性を有することがみられる。この化合物は、アデフォビル・ジピボキシルの同族体とPMPAのプロドラッグである。体内にPMPAに代謝される。英語で9-[2-(R)-[bis[pivaloyloxymethoxy]phosphinoylmethoxy]propyl]adenine,bis-POMPMPAと略称する。
【化3】
【0007】
本発明は
1)固体状態のTDおよびその誘導体。例えば、結晶化TD、TDの無定形固化物、固体状態のTD塩およびTDのシクロデキストリン包接化合物。これらの固体状態で存在するTDおよびその誘導体は、産業化における大規模な合成を有利し、薬物に調製できる性質がある。
2)TDの合成方法と精製方法。例えば、有機塩基が存在する条件下で極性溶媒にPMPAをピバロイルハロゲン化メチルと接触し、TDを合成する方法、ならびにコラム分離法、結晶化法および塩法等でTDを精製する方法。
3)TD油状物の固化方法。例えば、TD油状物を結晶化TD、TDの無定形固化物、固体状態のTD塩およびTDのシクロデキストリン包接化合物に変化させる。
4)TDおよびその誘導体を含む安定な組成物およびその製法。
5)固体状態のTDおよび誘導体の抗ウイルス、特に抗HIV、HBV、CMV、HSV−1、HSV−2とヒトヘルペスウイルス(人類疱疹病毒)の活性の用途。
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
TDの合成と精製:
PMPAの合成は既存文献によって合成できる。例えば、中国特許第98807435.4号明細書、米国特許第5733788号明細書と米国特許第6653296号明細書等を参照。また、以下のフローチャート1に示されている方法で合成してもよい。
(1)容器に炭酸ジエチル、(R)−1,2−プロパンジオール、触媒ナトリウム・アルコキシド、例えばナトリウム・メトキシドあるいはナトリウム・エトキシドを加え、エタノールを留去し、反応させ、R−炭酸−1,2−プロピレン(A)を得る;
(2)不活性ガス、例えば窒素を入れられる容器に炭酸エステル(A)、アデニン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)と触媒用量のアルカリ、例えば水酸化ナトリウムを加え、反応させて(R)−9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン(B)を得る;
(3)不活性ガス(例えば窒素)を入れられる容器に亜リン酸ジエチル、パラホルムアルデヒド、トリエチルアミンとトルエンを加え、TLCで亜リン酸ジエチルがなくなるまで4〜8時間加熱反応させ、反応溶液を0℃以下に冷却させ、P−トルエンスルホニルクロリドのトルエン溶液とトリエチルアミンを加え、反応させてP−トルエンスルホニルオキシメチルリン酸ジエチルを得る(C);
(4)容器に順番に(2)から得た(B)とDMFを加え、加熱溶解した後、温度を25〜75℃に下げ、水素化リチウムを加え、2時間反応させ、(R)−9−(2−ヒドロキシプロピル)アデニンのリチウム塩を生成し、P−トルエンスルホニルオキシメチルリン酸ジエチル(C)を加え、反応させて(R)−9−[2−(ジエトキシスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニン(D)を得る;
(5)容器に順番に(4)から得た(D)、アセトニトリル、トリメチル臭化シランを加え、反応完成まで攪拌還流し、真空で揮発性液体を除去し、残留物を適量の水に溶解し、pHを3.0〜3.5に調節して(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン(PMPA)を得る。また、反応溶剤はジクロロメタンあるいはクロロホルムを使ってもよい。脱保護剤はトリメチルヨウ素シランまたはトリメチルクロロシラン/ヨウ化カリウムを使ってもよい。
【化4】
【0009】
TDの合成と精製方法は、フローチャート2に示されている:
乾燥したPMPA固体を極性溶媒に懸濁し、有機アミン類を加え、またPMPAを溶解するように触媒使用量の相間移動触媒を加えてもよく、室温で反応混合物を0.5〜2時間攪拌し、ピバロイルハロゲン化メチルを加え、20〜70℃に2〜48時間反応させ、大量の極性有機溶媒で混合物を希釈、濾過し、弱アルカリ性水溶液と水で有機相を洗浄して、乾燥し、有機溶媒を真空除去して粗製油状のTDを得る。
【0010】
上述の極性溶媒は、DMFとN−メチルピロリドン(NMP)であるのが好ましい。PMPAと極性溶媒の質量比は1:1〜1:20の範囲、好ましくは1:2〜1:10である。有機アミン類は、トリアルキルアミンまたはN,N−ジシクロヘキシル−4−モルホリンカルボキサミジン(DCM)であるのが好ましく、より好ましくはトリエチルアミン、トリブチルアミンとエチルジイソプロピルアミンである。有機アミンとPMPAのモル比は2〜6:1、好ましくは3〜4:1である。相間移動触媒はトリブチルベンジル塩化アンモニウムであるのが好ましい。ピバロイルハロゲン化メチルは、ピバロイルハクロロメチルとピバロイルヨウ素メチルであるのが好ましい。ピバロイルハクロロメチルを使うときは、置換反応の触媒としてさらにヨウ素塩あるいは臭素塩を選択的に加えてもよい。ピバロイルハロゲン化メチルとPMPAのモル比は3〜8:1、好ましくは4〜6:1である。反応温度は45〜65℃であるのが好ましい。希釈用有機溶媒は酢酸エチルまたは酢酸イソプロピルであるのが好ましい。弱アルカリ性水溶液は重炭酸ナトリウム水溶液であるのが好ましい。
【化5】
【0011】
粗製TDからTDを精製する方法:
1)カラム・クロマトグラフィー:
シリカゲルを固定相として、TD粗生成物を2%〜8%のメタノール−ジクロルメタンの溶液で洗浄して、TDを含有するものを収集し、溶媒を減圧除去して純化したTDを得る。この方法により得たTDは一般油状物である。室温において緩慢に分解されうる。
【0012】
2)結晶法:
TDの分子に一つの強い極性のアデニン基と二つの強い親油性のピバロイル基があるため、TDは多数の極性有機溶媒に溶解できる。しかし、非極性または弱極性有機溶媒および水には溶解しにくい。
【0013】
TDを溶解でき、そして溶解度が10mg/mlより高い溶媒を、TDの良溶媒と称する。TDを溶解できなく、あるいはTDに対する溶解度が1mg/mlより低い溶媒を、TDの不良溶媒と称する。TDの良溶媒は、有機アルコール系、有機ケトン系、エステル系、ハロゲン化アルキル系、有機アミド系、有機ニトリル系および一部のエーテル系溶媒から。TDの不良溶媒は、アルカン系、一部のエーテル系溶媒および水でよい。
【0014】
好ましいTDの良溶媒は、アセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、DMF、NMP、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、ギ酸エチル、テトラヒドロフランとテトラヒドロピランである。
【0015】
好ましいTDの不良溶媒は、メチルt−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘプタンと水である。
【0016】
粗製TDを適量の良溶媒に溶解し、得た溶液と適量の不良溶媒を混合し、TD溶液を飽和状態に近づける、あるいは飽和状態にする。そして温度変化、溶媒蒸発または溶媒組成変化などの方法によりTD溶液を過飽和にし、TDを結晶で析出させる。または、粗製TDを直接に良溶媒と不良溶媒を混合した溶媒に溶解させ、TDの溶液にし、結晶を析出させ、純化のTDを得る。
【0017】
TDを溶解でき、溶解したTDを結晶で析出させる単一溶媒あるいは混合溶媒はいずれもTDの結晶溶媒と称する。TDとその結晶溶媒が形成した溶液は、TDの結晶溶液と称する。通常、TDの結晶溶媒は、一つまたは一つ以上の良溶媒、あるいは一つまたは一つ以上の良溶媒と一つまたは一つ以上の不良溶媒との混合溶媒である。
【0018】
好ましいTDの結晶溶媒は、上述の全部の良溶媒およびアセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、DMF、NMP、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、ギ酸エチル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランから選ばれた一つとメチルt−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘプタン、水から選ばれた一つの混合溶媒を含む。この中、良溶媒と不良溶媒の容積比は20:1〜1:20の範囲である。
【0019】
結晶溶媒に使う良溶媒が有機アルコール系と有機ケトン系化合物であるときは、好ましくはエーテル系化合物と水を不良溶媒とする。例えば、メタノール/ジイソプロピルエーテル、アセトン/ジイソプロピルエーテル、エタノール/水の混合溶媒である。
【0020】
結晶溶媒に使う良溶媒がエステル系とハロゲン化アルキル系化合物であるときは、好ましくはアルカン系化合物を不良溶媒とする。例えば、酢酸エチル/n−ヘキサンまたはジクロロメタン/石油エーテルである。
【0021】
結晶溶媒に使う良溶媒が有機アミド系と有機ニトリル系化合物であるときは、好ましくは水を不良溶媒とする。
【0022】
粗製油状TD中のTDの含有量は、通常5%〜60%の間である。TDの含有量が高いとき(TDの含有量が25%より高い)、高い温度で適量の良溶媒により形成した結晶溶媒に粗製油状TDを溶解し、そして温度を下げ、TDの結晶を得る。TDの含有量が低いとき(TDの含有量が25%より低い)、一般的には良溶媒と不良溶媒とで形成した混合物を結晶溶媒とする。通常、結晶溶媒と粗製TDの割合は1:1と20:1の間である。
【0023】
結晶化温度は、一般的には−20℃〜室温の間、好ましくは−10℃〜10℃の間、特に好ましくは0℃である。低温(−10℃)では結晶の収率は高いが、結晶の純度はいつも低い。0℃に近い条件で結晶させると、一般的には収率と純度がよい生成物を得られるため、生産に有利であり、経済的である。
【0024】
3)塩法:
TDと酸が形成した塩は、多くのよい結晶化能があることがみられる。TDと酸が形成した塩は、必要な結晶化条件が低く、使用する結晶溶媒の量も少ない。したがって、TDを精製する一つの方法は、粗製TDと適当な酸を塩にし、結晶化させ、精製TD塩を得、精製TD塩を適当の溶媒に溶解し、弱アルカリ性の水溶液で中和し、水で洗浄して酸基を除去し、最後に水を乾燥除去し、溶媒を除去して遊離の精製TDを得る。
【0025】
TDは多くの無機酸および有機酸と塩を形成できる。塩を形成する方法は、酸と粗製TDを適当な溶媒に混合して塩を形成し、そして塩を結晶で析出させる。塩の結晶溶媒は、塩を形成する溶媒と同一であってもよいし、異なっていてもよい。異なっているときは、塩を形成した後、溶媒を除去し、そして粗製TDの塩を結晶溶媒に溶解し、再結晶させて精製TD塩を得る。
【0026】
塩を形成する酸の当量は、通常粗製TD中のTDの当量よりやや大きい。一般的には、酸とTDの割合は1.1:1〜1.3:1の間である。粗製TD中のTDの量は、HPLCまたは紫外吸収法で測定できる。
【0027】
TDを精製する塩は、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸、シュウ酸とTD形成した塩が好ましい。
【0028】
TDの塩は、一般的にC1〜C5の有機アルコール系溶媒に溶解しやすく、有機ケトン系とエステル系溶媒にも溶解できる。
【0029】
TD塩を中和して遊離のTDを得る方法:
TD塩を水と互いに溶解しない有機溶媒に溶解する。好ましい有機溶媒は有機エステル系化合物、特に好ましくは酢酸エチルである;そして、薄いアルカリ性水溶液で溶液を洗って酸を除去する。好ましいアルカリ性水溶液は重炭酸塩水溶液である;酸を完全に中和した後、有機相は水または飽和食塩水で洗浄する;最後に、有機溶媒を乾燥除去して精製遊離TDを得る。この精製遊離TDは一般油状物で存在し、長時間置いて固化できる。
【0030】
固体状態のTDおよび誘導体の製造と確認:
TDの油状物の安定性はよくなく、適当な製剤の調製に不利である。薬物の調製と貯蔵などに使用するためには固化を必要する。今、結晶と無定形固体状態のTD、結晶あるいは固体状態のTD塩とTDのシクロデキストリン包接化合物を製造する。
【0031】
(一)TDの結晶、無定形固化物の製造と確認
I.TDのA型結晶
本発明のTDのA型結晶は、水と他の溶媒をほとんど含まないTDの結晶である。TDのA型結晶のXRD(粉末X線回折)スペクトルは、面間距離dで示すと、通常9.774Å、6.32Å、5.726Å、4.967Å、4.849Åにピークがある。さらに典型的なピークは14.917Å、9.774Å、6.32Å、5.726Å、5.387Å、5.211Å、4.967Å、4.849Å、4.647Å、4.553Å、3.817Åにある。
【0032】
DSC(示差走査熱量測定)吸熱転移温度は約100℃である。
【0033】
IR(赤外線吸収スペクトル)の吸収ピークは以下のように示される:
【表1】
【0034】
他の説明でない限り、本発明のTDのA型結晶は次のような組成物である:
組成物に無水結晶態のTDは、組成物重量の50%以上を占める、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。無水結晶態のTD以外、またTDの無定形固化物と他の結晶も含む。
【0035】
TDのA型結晶はTDを無水状態で結晶化させて得られる。一般的に、使用する結晶溶媒の含水量は0.5%より少ない。製法は次のようである。
【0036】
1.混合溶媒法:無水の有機ケトン系またはアルコール系を良溶媒として、有機エーテル系を不良溶媒として、結晶溶媒を組成する。TDを溶解した後、温度を変化させ、TDのA型結晶を得る。好ましい結晶溶媒は、アセトン:ジイソプロピルエーテルの容積比が1:2〜5である混合溶媒、メタノール:ジブチルエーテルの容積比が1:2〜10である混合溶媒である。TDを溶解する温度は35〜60℃、結晶温度は−20〜35℃、好ましくは−5〜5℃、結晶化時間は5〜48時間である。
【0037】
2.単一溶媒法:無水の良溶媒、好ましくはアセトン、ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、エーテル、トルエンである。精製TDを加熱溶解し、加熱温度は一般的に50℃を超えなく、飽和または飽和に近いTD溶液を得る。そして得た溶液を低温で結晶化させ、あるいは室温で自然に溶媒を揮発させ、TDのA型結晶を得る。アルコール系あるいはケトン系を使って結晶するときは、アルコール系あるいはケトン系は空気の中の水分を吸収しやすいため、TDのA型結晶とTDのB型結晶との混合物を得る可能性がある。ひいては全部がTDのB型結晶である。
【0038】
3.自然凝固法:精製TDを無水の良溶媒に溶解し、溶媒を真空除去し、放置してTDのA型結晶を得る。この方法で得たTDのA型結晶は無定形TDを混ぜることがある。
【0039】
II.TDのB型結晶
本発明のTDのB型結晶は二つの結晶水を含むTDの結晶である。TDのB型結晶のXRDスペクトルは面間距離dで示すと、通常20.157Å、9.995Å、4.449Å、3.965Å、3.297Åにピークがある。さらに典型的なピークは20.157Å、9.995Å、5.555Å、4.696Å、4.449Å、3.965Å、3.677Å、3.297Å、3.125Å、2.822Åにある。DSC吸熱転移温度は約55℃である。
【0040】
IRの吸収ピークは以下のように示される:
【表2】
【0041】
他の説明でない限り、本発明のTDのB型結晶は次のような組成物である:
組成物に二水和物結晶態TDは組成物重量の50%以上を占める、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。二水和物結晶態TD以外、組成物にまたTDの無定形固化物と他の結晶も含む。
【0042】
TDのB型結晶は、水が存在する条件下でTDを結晶溶液から析出して得る。一般的に、使用する結晶溶媒は少なくとも0.5%の水を含む。TDのB型結晶を製造する一般的な方法は精製TDを水と互いに溶解できる一つの良溶媒に溶解し、そして得た溶液に水を加え、TDを結晶で析出させる。あるいは、水を含有する良溶媒に精製TDを溶解し、結晶化させる。
【0043】
湿度が高いときは、TDのA型結晶は吸湿でTDのB型結晶に変化しうる。
【0044】
特に説明するのはXRDの中、結晶化合物から得た回折スペクトルは、特定の結晶に対して非常に特徴的である。この中で、スペクトル帯(特に低角度)の相対強度は結晶条件、粒径および他の測定条件による優勢配向効果で変化する可能性がある。したがって、回折ピークの相対強度は相応の結晶に対して特徴的ではない。既知の結晶と同じかどうかを判断するとき、相対強度よりピークの相対位置をより注意すべきである。XRDスペクトルに通常2θ角または面間距離dでピークの位置を示す。2θ角はX線の波長に関係するため、面間距離dで示すのはより代表的である。
両方の間には簡単な変換関係がある:
d=λ/2sinθ。
このうち、dは面間距離、λはX線の波長(Cu−Kαに対して、λ=1.54187Å)、θは回折角である。同種化合物の同種結晶にとって、XRDスペクトルは全体としては相似性がある。ピークの位置を示すd値の誤差は一般に±2%以内で、ほとんど±1%を超えない。相対強度の誤差は大きくてもよいが、変化傾向は一致する。また、結晶が同じかどうかを判断するとき、全体から見ればよい。一つの回折線は一つの物相を代表するのではなく、特定的な”d−I/I1”データはある物相を代表するからである。また、混合物の確認の際に、含量低下等の原因で、一部分の回折線は欠失になる。このとき、高純度サンプルに全部みられたスペクトル帯に頼らなくても、一つのスペクトル帯も特定的な結晶にとって特徴的である可能性がある。例えば、本発明のA型結晶の面間距離は4.849Åのピークを有し、またはB型結晶の面間距離は4.449Åのピークを有する。
【0045】
DSCで結晶構造変化あるいは結晶融解による吸熱または発熱の時の転移温度を測定する。同種化合物の同種結晶にとって、連続分析の中、熱転移温度と融点の誤差は典型的に約5℃以内、通常約3℃以内である。一つの化合物は一つの特定的なDSCピークあるいは融点を具有することを言うとき、これはDSCピークあるいは融点±5℃であることを示す。DSCは各種結晶を確認する一種類の補助方法を提供する。結晶形態はその相違の転移温度によって確認できる。混合物にとって、DSCピークあるいは融点はもっと大きい範囲に変動する可能性がある。また、物が融解する過程に分解を伴うから、融解温度は加温速度と密接に関係する。
【0046】
光に対する振動の官能基に関する特定的な化学結合による赤外線吸収は、IRで測定する。異なる結晶分子内共有結合の電環境は違うから、共有結合強度も変わる。共有結合強度の変化は異なる結晶のIRスペクトルの違いを起こす。
【0047】
III.TD無定形固化物
また、本発明はTDの無定形固化物を提供する。TDの無定形固化物のXRDスペクトルには明らかに、鋭利なピークがなく、一つの広い無定形固体ピークだけがある。通常、TDの無定形固化物に少量のTD結晶が混ざっている可能性がある。一般的には、TD無定形固化物の含有量は70%以上である。
【0048】
TD無定形固化物の製法は次のようである:
1.純化のTDを良溶媒に溶解させ、激しく攪拌する条件で大量の低温の不良溶媒に加え、TDを析出させ、固化してTD無定形固体を形成する。一般には、不良溶媒の温度は−20℃以下である。
2.純化のTDを溶解した後、真空凍結乾燥で溶媒を除去してTD無定形固化物も得る。通常、この方法で得た固体粉末はXRDで示すTD無定形固体の含有量は70%以上である。
【0049】
真空凍結乾燥法で得たTD無定形固体は通常粗鬆状固体である。水に対する溶解性は結晶状態のTDよりよく、溶解速度は高く、注射用粉末製剤の調製に適する。
【0050】
図7はTD無定形固化の粉末X線回折スペクトルである。この中には、明らかに、鋭利なピークがなく、一つの広い無定形固体ピークだけがある。
【0051】
(二)TDの塩
TDは、酸と反応して次のような構造の塩または塩型複合物を生じる:
【化6】
【0052】
この中、aは酸とTDのモル比である。aは1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1である。HAは酸である。
【0053】
TDと塩または塩型複合物を形成できる適当な酸は、TDと安定な塩を形成できる酸度がある。適当な酸は、一塩基酸または多塩基酸、例えば有機酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸および酸性基を含む肝臓保護機能がある有機化合物または天然産物である。
【0054】
適当な無機酸は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸等である。適当な有機スルホン酸は、C6〜16アリールスルホン酸、C6〜16ヘテロアリールスルホン酸とC1〜16アルキルスルホン酸、好ましくはタウリン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、α−ナフタリンスルホン酸、β−ナフタリンスルホン酸、(S)−ショウノウスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、n−プロピルスルホン酸、イソプロピルスルホン酸、n−ブチルスルホン酸、s−ブチルスルホン酸、イソブチルスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、ペンチルスルホン酸とヘキシルスルホン酸である。有機カルボン酸は、一塩基または多塩基カルボン酸、例えばC1〜16アルキルカルボン酸、C6〜16アリールカルボン酸とC4〜16ヘテロアリールスルホン酸である。好ましくは酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、アーモンド酸、マンデル酸、サリチル酸、1−フェノキシ安息香酸、ニコチン酸、パントテン酸である。有機カルボン酸はまたアミノ酸も含む。適当なアミノ酸はたくさんある。特にタンパク質成分として発見された天然アミノ酸である。好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、バリンである。
【0055】
好ましい酸性基を含む肝臓保護機能がある有機化合物または天然産物は、アスコルビン酸、オレアノール酸、ウルソル酸、グリシルリジン酸、グリシルレチン酸、サルビアニン酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルコン酸、果糖酸である。好ましいTDの塩はTDフマル酸塩、TDシュウ酸塩、TDサリチル酸塩、TDオレアノール酸とTDアスパラギン酸である。
【0056】
本発明はまたTDフマル酸塩の結晶を得る。そのXRDスペクトルは、面間距離dで示すと、通常18.706Å、6.112Å、4.562Å、3.645Å、3.561Å、3.033Å、2.596Åにピークがある。さらに典型的なピークは、18.706Å、6.112Å、5.075Å、4.562Å、4.414Å、4.141Å、4.044Å、3.776Å、3.645Å、3.561Å、3.257Å、3.033Å、2.985Å、2.596Åにある。
【0057】
TDフマル酸塩結晶のIRスペクトルの吸収は、約3311cm−1、2979cm−1、2941cm−1、2879cm−1、1752cm−1、1683cm−1、1304cm−1、1142cm−1、980cm−1にピークがある。
【0058】
TD塩の製造は、通常塩を形成する割合でTDと酸を溶液に混合する。使用する酸が少々過量でもよい。溶媒は一般有機アルコール系から選ばれる。酸が無機酸、有機スルホン酸およびある水溶性の酸例えばアミノ酸であるときは、溶媒はC1〜4のアルコール、水または水と有機溶媒が形成した混合溶媒から選ばれてもよい。ある脂溶性が強い酸、例えばオレアノール酸、ウルソル酸等によって塩を製造するときは、ハロゲン化アルキルおよびエステル系を溶媒として使用してよい。TDと酸は液体に混合した後、攪拌または冷却で塩の結晶を析出できる。TD塩の溶液の溶媒を蒸発してTD塩の固体も得る。この固体は結晶でもよく、TD塩の無定形固体あるいは両方の混合物でもよい。
【0059】
TDの塩は、多数の固体として存在する。多数のTDの塩はTDより融点が高く、安定性が良く、結晶体を形成しやすい特徴がある。産業的生産と貯蔵に有利である。また、製剤の調製と貯蔵にも有利である。TDの塩または塩型複合物は、まだTDと同じ抗ウイルス活性がある。TDは、酸性基を含む肝臓保護機能がある有機化合物または天然産物と塩または塩型複合物を形成させると、この塩は、本来の抗ウイルス活性を保持すると同時に肝臓も保護する機能がある。したがって、TDの塩または塩型複合物は抗ウイルス薬物の調製にも使用できる。
【0060】
(三)TDのシクロデキストリン包接化合物
シクロデキストリンは6,7または8のグルコース分子が1,4−グリコシド結合で連接した環状オリゴ糖系化合物、水溶性の非還元的な白色の結晶性粉末である。構造は中空で丸い。空洞の口は親水性で、空洞の内部は強い疎水性である。たくさんの分子はシクロデキストリン分子に包まれて超分子構造を形成する。
【0061】
シクロデキストリンを使って薬物を包接化合物にした後、液体薬物を固化させうる。そして薬物の安定性を高め、溶解度を増加し、バイオアベイラビリティを増加する。
【0062】
TDはシクロデキストリンと包接化合物を形成できる。そして親脂性のピバロイルはシクロデキストリンの疎水性空洞に包まれた後、ピバロイルの加水分解は難しくなって、TDの安定性は高められ、TDは水に対する溶解度と溶解速度も高められる。そして製剤の溶出度とバイオアベイラビリティを高くし、注射製剤に調製するには便利である。
【0063】
前述のTDシクロデキストリン包接化合物はTDとシクロデキストリンがモル比1:1〜1:10で形成した包接化合物である。好ましくは1:1〜1:3である。前述のシクロデキストリンはαシクロデキストリンまたは誘導体、βシクロデキストリンまたは誘導体、γシクロデキストリンまたは誘導体である。好ましくはβシクロデキストリンまたは誘導体、特に好ましくはβシクロデキストリンである。
【0064】
TDのシクロデキストリン包接化合物は、TDをシクロデキストリンと液体に混合させて得る。製法は、飽和水溶液法、研磨法、凍結乾燥法、超音波法等である。
【0065】
1)飽和水溶液法
TDを適量なアルコール系またはケトン系で溶解する。TDとのモル比で1〜10倍のシクロデキストリンをとって、50〜80℃の飽和水溶液にする。両方の溶液を混合して30分間以上攪拌し、冷却し、包接化合物を沈殿析出させ、濾過し、適量なアルコール系またはケトン系等の有機溶媒で洗浄し、乾燥して得る。アルコール系またはケトン系有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましい。
【0066】
2)研磨法
一定量のTDを適量なアルコール系またはケトン系等の有機溶媒で溶解した後、1〜10倍量のシクロデキストリンを加え、また、適量な水を添加して混合する。十分にすり潰して糊状物にし、低温で乾燥した後、またアルコール系またはケトン系等の有機溶媒で洗浄し、乾燥して得る。
【0067】
3)凍結乾燥法
モル比1:1〜10でTDとシクロデキストリンを量って、0〜20%(v/v)のアルコール系またはケトン系等の有機溶媒を含む水に攪拌溶解し、微多孔膜で滅菌する。液体窒素タンク内に置いて凍結させ、また約24時間凍結乾燥させて得る。
【0068】
TDのβシクロデキストリン包接化合物を水に溶解した後、TLCに6%のメタノール−ジクロロメタンで展開させ、紫外線の下、蛍光色でTDのβシクロデキストリン包接化合物は原点にある。Rf値は0である。遊離なTDのRf値は0.4である。以上の確認結果は、TDとβシクロデキストリンが包接化合物を形成したことを説明できる。
【0069】
固化したTDおよび誘導体の溶解性と安定性の対比は次のようである:
溶解性分析
中国薬局方2005年版二部凡例を参照して試験を行った。正確にサンプル1gをとって、一定量の溶媒をゆっくり加え、5分ごとに激しく30秒振動し、30分以内の溶解現象を観察した。結果は次に示されている:
【表3】
【0070】
安定性分析
(一)照明試験
サンプルを開口の培養皿に均一に展開し、厚さを≦5mmとした。光強度は4500±500Lxになるように距離を調節した。5,10日目にサンプルをとって、0日目の結果と比較した。結果は次に示されている:
【表4】
【0071】
(二)高温試験
サンプルをきれいな密封しているガラス瓶に置いて、60℃の恒温オーブンに置いた。5,10日目にサンプルをとって測定し、0日目の結果と比較した。結果は次に示されている:
【表5】
【0072】
(三)高湿度試験
サンプルを開口の培養皿に均一に展開し、厚さを≦5mmとした。室温(25℃)で相対湿度75±5%の恒温恒湿培養オーブンに置いた。5,10日目にサンプルをとって測定し、0日目の結果と比較した。結果は次に示されている:
【表6】
【0073】
(四)加速試験
ポリエチレン薄膜ビニール袋でサンプルを密封に包装して、40±2℃、相対湿度75±5%の恒温恒湿培養オーブンに3ヶ月間置いた。1,2,3ヶ月目末にサンプルをとって測定し、0月目の結果と比較した。結果は次に示されている:
【表7】
【0074】
以上の結果により、本発明から得たTDおよび誘導体は、いずれも良い安定性がある、任意の組成物または薬物製剤に調製できることが分かる。特にTDのA型結晶とTDの塩である。TDの結晶と固体に比して、多くのTDの塩とTDのシクロデキストリン包接化合物は、良い水溶性を有し、溶液製剤に調製できる。例えば、小輸液、溶液注射剤、経口用液体または粉末注射剤などである。
【0075】
投与経路と薬用組成物
本発明によるTDまたはその生理的に許容される誘導体は、TDのA型結晶、TDのB型結晶、TDの無定形固化物、TDの塩型複合物とシクロデキストリン包接化合物であり、治療に必要する任意の経路で投与できる。一般的には、TDまたはその生理的に許容される誘導体は、経直腸、膣、鼻、局所(目、口腔、舌下)、非胃腸(皮下、筋肉、静脈内、皮内、鞘内、脳硬膜外)等経路により投与されてよい。好ましくは経口投与である。
【0076】
TDまたはその生理的に許容される誘導体は、純粋な形式で投与できるが、通常、TDの薬物製剤で投与される。TDの薬物製剤は、TDまたはその生理的に許容される誘導体および一種類または多種類の薬用担体を含む。必要によって、また他の治療成分または補助成分を含んでもよい。例えば、他の抗ウイルス剤、免疫促進剤、肝臓保護薬物とL−カルニチンおよび塩等である。薬用担体は、結合剤、希釈剤、崩壊剤、防腐剤、分散剤、流動化剤(抗接着剤)、潤滑剤である。
【0077】
経口投与に適するTDまたはその生理的に許容される誘導体の固体製剤は、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、丸剤、散剤、大丸剤、チンキ剤、糊剤等が挙げられる。このうち、錠剤は、普通錠剤、分散錠、発泡錠、徐放錠、放出制御錠または腸溶錠である。カプセル剤は普通カプセル、徐放カプセル、放出制御カプセルまたは腸溶カプセルである。
【0078】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の錠剤とカプセル剤の単位製剤は、5〜300mgのTDを含有する。好ましくは5〜150mgである。活性成分以外に、通常、適量の充填剤、例えばでん粉、サッカロースと乳糖;結合剤、例えば水、エタノール、ポリビニルピロリドンとα−でん粉;崩壊剤、例えば微結晶性セルロース、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ等薬用担体を含有してもよい。また、貯蔵中放出したホルムアルデヒドを捕獲するように、ホルムアルデヒド除去剤(例えばリジンまたはゼラチン)も含有できる。
【0079】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の錠剤とカプセル剤は、アルカリ性薬物担体も含んでも良い。例えば、炭酸アルカリとアルカリ性水酸化物である。好ましい炭酸アルカリは、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸第一鉄と炭酸アルミニウムである。好ましいアルカリ性水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムと水酸化第二鉄である。これらのアルカリ性薬物担体は、製剤中のTDの安定性を高め、TDの分解を抑制することができる。
【0080】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の製剤は、またL−カルニチンおよびその塩(例えばL−カルニチンL−酒石酸塩(2:1))を含んでもよい。TDは、生体内に代謝により産生したピバル酸が患者体内のL−カルニチンの濃度を降下させるようである。L−カルニチンまたはその塩とTDを含有する製剤は、ピバル酸がTDを使用する患者体内のL−カルニチンに対する降下作用を抑制することができる。添加するL−カルニチンの量は、患者体内のL−カルニチンの削減程度によって確定できる。
【0081】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の分散錠は、速く崩壊するように約0.5〜60%の崩壊剤を含有する。TDの腸溶錠は腸溶材料を含有する、または腸溶性コーティング材でコーティングする。腸溶カプセル剤は、腸溶材料で調製したカプセルに装入して得られるカプセル剤でもよく、また腸溶材料でコーティングした顆粒または小球を普通カプセルに装入して得てもよい。
【0082】
TDまたはその生理的に許容される誘導体の錠剤とカプセル剤は、薬学に通用の方法で製造できる。錠剤の製造は水またはアルコールで湿式造粒した後、錠剤に調製してもよく、粉末で直接に錠剤に調製してもよい。カプセル剤は湿式造粒の後、カプセルに装入して得てもよく、粉末で直接にカプセルに装入して得てもよい。
【0083】
TDまたはその生理的に許容される誘導体は、また注射により投与されうる。製剤は例えば注射用無菌粉末と注射液体である。
【0084】
TDの生物活性
一、急性毒性試験、半数致死量(LD50)試験
TDのフマル酸塩とTDのA型結晶をそれぞれ0.1Mのクエン酸水溶液に溶解した。動物は体重18〜22gの健康な昆明マウス140を使った。乱塊法で14群に分け、各群に10匹、雌雄はそれぞれ半数であった。
【0085】
予備試験の結果によって、強制経口投与で七つの投与群に対して、それぞれ異なる投与量のTDのフマル酸塩とTDのA型結晶を投与した。マウスの毒性反応および死亡状況を14日間連続観察して、LD50を計算した。
【0086】
TDのフマル酸塩のLD50は6.05g/kgであった。95%の信頼限界は4.50〜7.87g/kgであった。
【0087】
TDのA型結晶のLD50は4.31g/kgであった。95%の信頼限界は2.83〜5.44g/kgであった。
【0088】
二、長期毒性試験
ビーグル犬はモデル動物として、アデフォビル・ジピボキシルは対照品として、TDのA型結晶の長期毒性を研究した。特にTDのA型結晶の腎臓機能に対する影響を研究した。
【0089】
30匹のビーグル犬は無作為に5群に分けて、各群は6匹であった。このうち、一つの群は空白対照群で、三つの群はそれぞれTDのA型結晶の低,中,高投与量群であった。低投与量群には5mg/kgで毎日一回、中投与量群には15mg/kgで毎日一回、高投与量群には45mg/kgで毎日一回投与した。また一つの群はアデフォビル・ジピボキシルの対照群、投与量は40mg/kgで毎日一回であった。
【0090】
薬物は個体ごとに使用する投与量でサラダ油と混合して投与した。続けて6ヶ月間投与し、終止した後、21日間観察した。
【0091】
各群動物において投与期間と回復期間に異常は見られず、動物の不思議な死亡もなかった。血液学と血尿生化検査には空白対照群とTDのA型結晶の低,中,高投与量群の血液学指標および血尿生化標準はいずれも著しい差がなかった。しかし、アデフォビル・ジピボキシルの血清カルミン和尿素窒素の指標は何れも著しく高くなった。そして長期にアデフォビル・ジピボキシルを投与すると腎臓に毒性があるが、同じ投与量のTDのA型結晶は安全であることは分かった。結果は次のようである:
【表8】
【0092】
三、体内抗ウイルス試験
二ヶ月齢のダックB型肝炎ウイルスに感染されたツクシガモを使用して体内抗B型肝炎ウイルス試験をし、薬効を観察した。80匹の高郵ツクシガモは無作為に8群にわけ、各群は10匹であった。このうち、三つの群にはそれぞれTDフマル酸塩を5,15,45mg/kgで毎日一回投与した。他の三つの群にはそれぞれテノフォビルDF(tenofovir disoproxil fumarate)を5,15,45mg/kgで毎日一回投与した。もう一つの群にはアデフォビル・ジピボキシルを15mg/kgで毎日一回投与した。最後の一つの群は空白対照群であった。28日間投与し、7日ごとに採血して、PCR法でDHBV−DNAレベルに対する抑制効果を測定した。抑制率は次に示される。試験結果から、TDの体内抗ウイルス活性はテノフォビルDFとアデフォビル・ジピボキシルよりずっと高いことが分かった。
【表9】
【0093】
四、薬物動態学とテノフォビルの体内分布
1、バイオアベイラビリティ
マウス10匹は無作為に2群に分けられ、各群は5匹であった。強制経口投与により、それぞれ3H−TDフマル酸塩30mg/kg、放射投与量135μCi/kgを投与された。テノフォビルDFは30mg/kg、135μCi/kgで投与された。時間ごとに血漿を採って、放射性を測定し、血中薬物濃度に換算した。
【表10】
【0094】
2、組織中の分布
ウィスター系ラット30匹を使用して無作為に6群に分けた。12時間絶食した後、3群には強制経口投与で20mg/kgのTDフマル酸塩を投与した。他の3群には強制経口投与で20mg/kgのテノフォビルフマル酸塩を投与した。投与してから1,4,8時間後に大腿動脈瀉血によりTDフマル酸塩とテノフォビルフマル酸塩(対照群)の動物それぞれ1群を殺した。肝臓と腎臓を採って、化学天秤で湿重量を量って、蒸留水と1:3でホモジネートをし、1000gで10分間遠心分離した。上清液0.25mlを取って、共栓グラス試験管内に入れ、再蒸留水50μLと10mg/L濃度のPMEA水溶液50μL(内標準溶液)を加え、均一に混合した後、メタノール0.5mLを加え、1分攪拌し、10分間遠心分離した(3000r/分)。上清液20μLを取って、液体クロマトグラフィー質量分析で組織中のPMPA濃度を測定した。
【0095】
液体クロマトグラフィー質量分析法のクロマトグラフ条件は次のようである:
クロマトグラフィーカラムはDiamonsil C−18カラム、250mm×4.6mm,粒径5μmである。移動相はメタノール−水−ギ酸(20:80:1)である。流速は0.5mL/分である。
【0096】
質量分析条件:
アメリカFinnigan TSQ型クロマトグラフィー−質量分析−質量分析を使った。イオン源はESI源であった。電源電圧は4.5kVであった。衝突誘起解離電圧は40eVであった。陽イオンモード検出を使った;定量分析に用いたイオン反応はm/z288→m/z176であった。PMEAは内標準物質として、イオン反応はm/z288→m/z176であった。
【表11】
【0097】
TD群はTDフマル酸塩を投与した動物群であった。対照群はテノフォビルフマル酸塩を投与した動物群であった。
【0098】
ラットに同じ使用量のTDフマル酸塩とテノフォビルフマル酸塩を投与した後、肝臓においてTDフマル酸塩からのPMPAの濃度はテノフォビルフマル酸塩からのPMPAより異なる時間で約70%〜100%高く、そして肝臓腎臓分布の割合によって、TDフマル酸塩を投与した後、肝臓におけるPMPAの濃度は腎臓におけるPMPAの濃度の約4倍である。しかし、テノフォビルフマル酸塩を投与した後、肝臓におけるPMPAの濃度は腎臓におけるPMPA濃度の約2.5倍である。したがって、TDフマル酸塩はその代謝産物PMPAを肝臓に集中させ、肝臓標的な性質がある。
【実施例】
【0099】
[実施例1]
(R)−炭酸−1,2−プロピレンの合成
炭酸ジエチル(380ml,15.1モル)と(R)−1,2−プロパンジオール200gの混合物に変性アルコール40ml(50ml無水エタノールに9gナトリウム・メトキシドを溶解した溶液)を加えた。そして、溶液を80℃に加熱し、ゆっくりエタノールを蒸発除去した。反応過程はTLCで(R)−1,2−プロパンジオールが微量にまたはなくなるまで検査した。120℃でエタノールが出なくなるまで送水ポンプ減圧蒸留をした。また、真空ポンプ蒸留をして無色透明な液体111グラムを得た。収率は81.2%であった。産物の純度はGC分析により97%であった。
【0100】
[実施例2]
ジエチルp−トルエンスルホニルオキシメチルスルホン酸の合成
不活性ガス(窒素)雰囲気下で、トルエン(200ml)、ジエチル亜リン酸(400ml)、パラホルムアルデヒド(120g)とトリエチルアミン(50ml)を混合し、70℃に加熱して2時間反応させた。次に還流まで加温し、続いて反応させ、TLC(展開剤はヘキサン:酢酸エチル=1:4である)でジエチル亜リン酸が微量にまたはなくなるまで反応させた。溶液は10℃以下に冷却させ、p−トルエンスルホニルクロリド(560g)を加えた。そして約5℃で緩慢にトリエチルアミン(560ml)を加え、温度は10℃を超えないように維持した。次に室温まで加温し、TLCでp−トルエンスルホニルクロリドが微量にまたはなくなるまで8時間反応させ、ろ過により固体を除去した。固体は適量のトルエンで洗浄した。洗浄液と濾過液を合わせ、5%NaCO3水溶液と水を使ってそれぞれ2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで水を除去した後、50℃を超えない温度で溶媒を蒸発除去し、600gの無色液体を得た。純度はGC分析により86%であった。精製せずに直接に後の反応に用いてもよい。
【0101】
[実施例3]
(R)−9−[2−(ジエチルホスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニンの合成
不活性ガス(窒素)雰囲気下で、アデニン(100g)、水酸化ナトリウム(1.2g)、(R)−炭酸−1,2−プロピレン(84g)とN,N−ジメチルホルムアミド(700ml)を加え、TLC(10%MeOHのCHCl2溶液(容積比))で残ったアデニンが0.5%以下になるまで130℃で30時間反応混合物を攪拌した。反応混合物は25℃に冷却させ、水素化リチウム(8g)を加え、窒素が存在する雰囲気下で70℃に加温し、2時間反応させた。次に室温まで冷却させ、ジエチルp−トルエンスルホニルオキシメチルリン酸(300g)を加え、TLCで完全に反応するまで反応混合物を60℃に維持した。80℃以下で反応混合物を真空濃縮し、水(500ml)を加えて溶解した。水溶液はジクロロメタンで連続抽出され、ジクロロメタン抽出物を合わせ、80℃以下で抽出物を真空濃縮し、オレンジ色の粘性油状物200gを得た。HPLCによりオレンジ色の油状物には65%の(R)−9−[2−(ジエチルホスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニンを含まれていた。この粗製した(R)−9−[2−(ジエチルホスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニンは、精製せずに直接に後の反応に用いてもよい。
【0102】
[実施例4]
(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン(PMPA)の合成
(R)−9−[2−(ジエチルホスフィノイルメトキシ)プロピル]アデニン(100g)粗生成物をアセトニトリル(122ml)に溶解し、窒素の存在下で臭化トリメチルシラン(207g)を加え、70℃で反応混合物を4時間還流した。TLCで原料が完全になくなった後、溶媒を減圧蒸発除去し、残留物は水200mlで洗って、20℃に冷却させ、ジクロロメタンまたは酢酸エチルで洗浄した。水相は50%水素化ナトリウム水溶液でpHを3.1〜3.5に調節し、室温で緩慢に約3時間攪拌し、濾過して固体を集め、それぞれ冷水(50ml)とアセトン(50ml)で洗浄して粗製PMPA固体60gを得た。PMPA固体の粗生成物に90℃の純水200mlを加え、十分に攪拌した後、室温まで冷却させ、一晩置いて、濾過し、冷水とアセトンで連続的に洗浄して、50℃で真空乾燥してPMPA 45グラムを得た。HPLCによるPMPAの純度は99%であった。
【0103】
[実施例5]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成とシリカゲルカラム分離・精製
窒素雰囲気下で、固体PMPA(40g)、無水N,N−ジメチルホルムアミド(160ml)とトリエチルアミン(120ml)を混合し、この懸濁液を緩慢に攪拌しながら、50℃に加温した。1時間後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を添加し、温度を50〜55℃に保持し、8時間前後反応させ、冷却させて酢酸エチル(4000ml)を加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去し、濾過液はそれぞれ5%NaHCO3と水で2回洗浄して、無水硫酸ナトリウムで水を乾燥除去した。50℃以下に有機溶媒を真空除去し、粘性の黄色油状物47gを得た。このうち、約55%の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンが含まれていた。200〜300メッシュのシリカゲル200gを取ってカラムに入れた。油状物(47g)を適量なシリカゲルを入れられたカラムに入れた。5%〜10%のメタノール/ジクロロメタンの混合液で洗って、TDを含む洗脱液を集め、組成を合わせ、溶媒を蒸発除去して精製TD油状物18.0gを得た。HPLCによる純度は95.2%であった。
1H−NMR(CDCl3):8.347(1H,s,H−8)、7.969(1H,s,H−2)、5.819(2H,s,NH2)、5.676(4H,m,CH2OP)、4.360(1H,dd,J=14.4,2.8,H−1)、4.132(1H,dd,J=14.4,7.2,H−1’)、3.933(1H,m,H−2)、3.898(1H,dd,J=14.0,8.8,H−4)、3.677(1H,H,dd,J=14.0,9.2,H−4’)、1.238(3H,D,J=6.0,CH3)、1.215(18H,d,J=6.0,CH3)(図1)
MS:分子イオンピークm/e:516.2(M+H+),538.2(M+Na+)(図2)
UV−VIS(メタノール):最大吸収ピーク260nm
【0104】
[実施例6]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と結晶の精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、エチルジイソプロピルアミン(140ml)を混合し、50℃に加温した。30分後、ピバル酸ヨウ化メチル(65ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、4時間反応させ、室温まで冷却させた。反応混合物に酢酸エチル4000mlを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで水を乾燥除去し、50℃以下で有機溶媒を真空除去して粘性の黄色油状物66gを得た。このうち、約38%の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンが含まれていた。メタノール(200ml)で油状物を溶解し、水(800ml)を加え、白色固体を得て、濾過し、少量冷凍のエタノールで洗浄し、室温で真空乾燥した後、TDの固体21gを得た。HPLCによる純度は96.3%であった。
【0105】
[実施例7]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と結晶法精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、トリエチルアミン(120ml)とトリブチル臭化ベンジル(1g)を混合し、50℃に加温し、30分後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、8時間前後反応させ、室温まで冷却させた。反応混合物に酢酸エチル4000mlを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで水を乾燥除去し、50℃以下に有機溶媒を真空で蒸発除去して粘性の黄色油状物53gを得た。このうち、HPLCにより約56%の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンが含まれていた。アセトン(200ml)で黄色油状物を溶解し、イソプロピルエーテル(800ml)を加え、混合した後、室温まで冷却させ、種結晶を加え、0℃で24時間置いた後、白色結晶を得て、濾過した後、少量のイソプロピルエーテルで洗浄して固体26gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCにより純度は98.9%であった。
【0106】
[実施例8]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と結晶法精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、トリエチルアミン(120ml)を混合して50℃に加温し、30分後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、12時間前後反応させ、室温まで冷却させ、反応混合物に4000ml酢酸エチルを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄して、無水硫酸ナトリウムで水を乾燥除去し、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去して粘性の黄色油状物49gを得た。このうち、HPLCにより約52%の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンが含まれていた。アセトン(200ml)で黄色油状物を溶解し、ブチルエーテル(800ml)を加え、0℃に24時間置いた後、白色結晶を得て、濾過し、少量のブチルエーテルで洗浄して固体22gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は98.3%であった。
【0107】
[実施例9]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と塩法精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、トリエチルアミン(120ml)を混合して50℃に加温し、30分後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、8時間前後反応させ、反応混合物に酢酸エチル4000mlを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄した。水を除去した後、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去して粘性の黄色油状物48gを得た。HPLCにより油状物に約56%のTDを含まれていた。油状物はメタノール(100ml)に溶解した後、フマル酸溶液(7gは100mlメタノールに溶解する)を加え、0℃に攪拌しながら一晩置き、濾過してTDフマル酸塩29gを得た。得たフマル酸塩は酢酸エチルに溶解し、飽和のNaHCO3水溶液200mlで三回洗浄して、さらに水で中性に洗浄して、水相を分離し、捨てた。有機相は水を除去し、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去し、TD油状物21gを得た。室温に置いた後、油状物は次第に固体状TDに凝固した。固体は真空乾燥させた後、すり潰されて固体粉末を得られた。XRD分析によりこの固体はTDのA型結晶であった。HPLCによるTD純度は99.1%であった。
【0108】
[実施例10]
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニン(TD)の合成と塩法精製
窒素雰囲気下で、PMPA(40g)とN−メチルピロリドン(160ml)、トリエチルアミン(120ml)を混合して50℃に加温し、30分後、ピバル酸クロロメチル(60ml)を加え、温度を50〜55℃に保持し、8時間前後反応させ、反応混合物に酢酸エチル4000mlを加え、十分に攪拌し、固体を濾過除去した。濾過液はNaHCO3と水(一回200ml)でそれぞれ三回洗浄して、水を除去した後、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去して粘性の黄色油状物60gを得た。HPLCにより油状物に約38%のTDを含まれていた。油状物はアセトン(100ml)に溶解した後、シュウ酸溶液(5gは100mlメタノールに溶解する)を加え、0℃に一晩置き、濾過してTDシュウ酸塩24gを得た。得たシュウ酸塩は酢酸エチルに溶解し、飽和のNaHCO3水溶液200mlで三回洗浄して、さらに水で中性に洗浄して、水相を分離し、捨てた。有機相は水を除去し、50℃以下で有機溶媒を真空で蒸発除去してTD油状物19gを得た。室温に置いた後、油状物は次第に固体状TDに凝固した。XRD分析によりこの固体はTD(A型結晶)と無定形TDの混合物であった。HPLCによるTD純度は99.3%であった。
【0109】
[実施例11]
TDのA型結晶の調製
95%のTD油状物2gを約35℃の無水メタノール(10ml)に溶解し、攪拌しながらこの溶液にイソプロピルエーテル(30ml)を滴下し、−4℃に置いて固体を析出させ、濾過し、真空乾燥し、TDの結晶1.38gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は98.5%であった。
【0110】
[実施例12]
TDのA型結晶の調製
95%のTD油状物2gを約40℃の無水THF(6ml)に溶解し、室温に置いて固体を析出させ、濾過し、真空乾燥してTDの結晶1.62gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は97.8%であった。
【0111】
[実施例13]
TDのA型結晶の調製
95%のTD油状物0.5gを約60℃の無水トルエン(60ml)に溶解し、室温に置いて固体を析出させ、濾過し、真空乾燥してTDの結晶0.42gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は97.2%である。
【0112】
[実施例14]
TDのA型結晶の調製
99%のTD油状物1gを1ml酢酸エチルに溶解し、速く攪拌している−20℃に冷却したヘキサン200mlに得た溶液をゆっくり滴下し、固体を析出させ、濾過し、真空乾燥してTDの結晶0.82gを得た。XRD分析によりこれはTDのA型結晶であった。HPLCによる純度は98.2%であった。
【0113】
[実施例15]
TDのA型結晶の物理特性解析
実施例11で得たTDのA型結晶はD/MAX−IIIC型自動X線回折計(日本理学電機株式会社)によりXRDスペクトル(図3)を測定した。TDのA型結晶特性は次のようであった:
【表12】
【0114】
熱分析(DSC2010,アメリカTA社)でTDのA型結晶に示差走査熱量測定を行った。10℃/分の加温速度で一つの吸収変化ピークがあった。ピーク値は100℃、起点は97℃であった(図4)。
【0115】
赤外線分光光度計(MagNa−IR550,アメリカNicolet社)を使って、KBr錠により赤外スペクトル分析を行った。TDのA型結晶の赤外線吸収スペクトルは約3334cm−1、3164cm−1、2979cm−1、1760cm−1、1659cm−1、1605cm−1、1490cm−1、1250cm−1、1142cm−1、980cm−1と910cm−1に特性スペクトル帯があった(図5)。
【0116】
デジタル融点測定装置(WRS−1B上海精密科学技術有限会社)を使って、TDのA型結晶を測定した。TDのA型結晶は96.2〜97.9℃で融解した。
【0117】
[実施例16]
TDのB型結晶の調製
99%のTD(2g)を95%のエタノール(10ml)に溶解し、室温に24時間置いてTDの結晶1.61gを得た。XRD分析により得た固体はTDのB型結晶であった。HPLCによる純度は98.8%であった。
【0118】
[実施例17]
TDのB型結晶の調製
TD(2g、95%)をアセトン(15ml)に溶解し、35〜40℃に攪拌しながら水(30ml)に滴下し、4℃に冷却させ、少量のTDのB型結晶の種結晶を加え、24時間結晶化させ、濾過し、真空乾燥して白色固体1.4gを得た。XRD分析により得た固体はTDのB型結晶であった。HPLCによる純度は97.8%であった。
【0119】
[実施例18]
TDのB型結晶の物理特性解析
実施例16から得たTDのB型結晶はD/MAX−IIIC型自動X線回折計(日本理学電機株式会社)によりXRDスペクトル(図6)を測定した。特性は次のようであった:
【表13】
【0120】
熱重量分析(TGA−7,アメリカPE社)の結果:
TDのB型結晶は35〜45℃に二つの重量減少ピークがあった。重量減少は全部で6.675%であった。TDのB型結晶に二つの結晶水を含有することが分かった。その熱重量分析(TG)スペクトルは図7のようであった。
【0121】
熱分析(DSC2010,アメリカTA会社)でTDのB型結晶に示差走査熱量測定を行った。10℃/分の加温速度で一つの吸収変化ピークがあった。ピーク値は55℃、起点は46℃であった。示差走査熱量分析スペクトルは図8に示された。
【0122】
デジタル融点測定装置(WSR−1B上海精密科学技術有限会社)を使って測定した。TDのB型結晶は63.2〜64.7℃で融解した。
【0123】
赤外線分光光度計(MagNa−IR550,アメリカNicolet会社)を使って、KBr錠により赤外スペクトル分析を行った。TDのB型結晶の赤外線吸収スペクトルは、約3373cm−1、3203cm−1、2979cm−1、1760cm−1、1652cm−1、1605cm−1、1312cm−1、1250cm−1、1034cm−1と965cm−1に特性スペクトル帯があった。TDのB型結晶の特性赤外線吸収スペクトルは図9に示された。
【0124】
[実施例19]
TDの無定形固化物の調製
99%のTD油状物1gを25mlのエタノールに溶解し、−80℃前後で冷凍凝固させ、−60℃で24時間真空冷凍乾燥して白色固体0.98gを得た。XRDスペクトルは図10に示された。これはTDの無定形固体であることが分かった。
【0125】
[実施例20]
TDの無定形固体の調製
99%のTD油状物1gを1mlのジクロロメタンに溶解し、速く攪拌されている−60℃に冷却したヘキサン200mlに得た溶液をゆっくりと滴下し、続いてまた2時間速く攪拌し、固体を析出させ、濾過し、真空乾燥して固体0.95gを得た。XRD分析によりこれはTDの無定形固体であった。HPLCによる純度は98.5%であった。
【0126】
[実施例21]
TD−β−シクロデキストリン包接化合物の調製
TD20gを取って、40ml無水エタノールで溶解した。45gのβ−シクロデキストリンを取って、567mlの水を加え、60℃の飽和水溶液にした。TDのエタノール溶液をβ−シクロデキストリンの飽和水溶液に滴下し、恒温で30分攪拌し、加熱を停止した後、続いて4時間攪拌し、冷蔵庫に置き、24時間冷凍し、そして濾過し、無水エタノールでケーキを洗って、減圧乾燥し、すり潰してしてTDのβ−シクロデキストリン包接化合物62.5gを得た。収率は96%であった。薬物負荷量は30.15%であった。
【0127】
[実施例22]
TD−β−シクロデキストリン包接化合物の調製
TD10gを取って、10mlの無水エタノールで溶解した。22.7gのβ−シクロデキストリンを取って、水284mlを加えて混合し、室温で糊状物にすり潰し、低温で乾燥した後、無水エタノールで洗浄し、そして乾燥してTDのβ−シクロデキストリン包接化合物25gを得た。収率は78%であった。薬物負荷量は21.64%であった。
【0128】
[実施例23]
TD−β−シクロデキストリン包接化合物の調製
TD10.02gと22.7gのβ−シクロデキストリンを取って、8%(v/v)の無水エタノールの水溶液300mlに攪拌しながら溶解した後、0.45μmの微多孔膜により濾過し、液体窒素タンクに冷蔵させ、約24時間冷凍乾燥してTDのβ−シクロデキストリン包接化合物を得た。収率は98%であった。薬物負荷量は30.5%であった。
【0129】
[実施例24]
TDフマル酸塩の調製
TD油状物(純度95%)5.3gを30mlのメタノールに溶解し、攪拌しながら、1.16gフマル酸を含むメタノール溶液10mlを緩慢に滴下し、25℃の恒温で続いて1時間攪拌し、不溶物を濾過除去し、0〜4℃に5時間置き、吸引濾過して白色固体4.8gを得た。融点は119℃であった。
1HNMR(DMSO−d6):8.13(1H,s,H−8)、8.03(1H,s,H−2)、7.15(2H,s,NH2)、 6.63(2H,s,フマル酸H−2,H−3)、5.54(4H,m,CH2OP)、4.21(2H,ddd,J=4,1,4.4,3,4.8)、3.94(3H,m,H−4,H−4’)、1.15(18H,d,J=3.2,CH3)、1.62(3H,d,J=6,H−3)。
【0130】
1HNMRスペクトルの6.63に一つの単一のピークはフマル酸H−2、H−3の特性ピークであった。積分によりTDとフマル酸は塩を形成した割合は1:1であった。1HNMRスペクトルは図11に示された。
【0131】
IRスペクトルは図12に示された。
【0132】
XRDスペクトルは図13に示された。特性は次のようであった:
【表14】
【0133】
[実施例25]
TDフマル酸塩の調製
純粋なTD油状物5.15gを30mlのアセトンに溶解し、攪拌すると同時に、この溶液に1.16gのフマル酸を含むメタノール溶液10mlを緩慢に滴下し、25℃の恒温で続いて1時間攪拌し、不溶物を濾過除去し、回転蒸発で溶媒を除去した。残留固体は45℃の酢酸エチル20mlに溶解し、0〜4℃に12時間置き、吸引濾過してTDフマル酸塩の白色固体5.5gを得た。融点は119℃であった。
【0134】
[実施例26]
TDシュウ酸塩の調製
TD油状物5.15gを30mlの酢酸エチルに溶解し、攪拌すると同時に、この溶液に0.9gのシュウ酸を含むエタノール溶液を緩慢に滴下し、45℃の恒温で続いて攪拌し、約20分シュウ酸エタノール溶液を滴下した後、不溶物を濾過除去し、室温まで次第に下げ、また約5時間攪拌した後、吸引濾過してTDシュウ酸塩白色固体4.6gを得た。融点は153〜154℃であった。
1HNMR(DMSO−d6):8.15(1H,s,H−8)、8.05(1H,s,H−2)、7.29(2H,s,NH2)、5.54(4H,m,CH2OP)、4.22(2H,ddd,J=0.4,14.4,35.6,H−1,H−1’,H−2)、3.95(3H,m,H−4,H−4’)、1.15(18H,d,J=2.8,CH3)、1.08(3H,d,J=6,H−3)、1HNMRスペクトルは図14に示された。
【0135】
IRスペクトルは図15に示された。XRDスペクトルは図16に示された。
【0136】
[実施例27]
TDサリチル酸塩の調製
TDの油状物、無定形固化物または結晶5.15gを30mlの酢酸エチルに溶解し、攪拌すると同時に、この溶液に1.76gのサリチル酸を含むエタノール溶液を緩慢に滴下し、45℃の恒温で続いて攪拌し、約20分間サリチル酸エタノール溶液を滴下した後、不溶物を濾過除去し、室温に次第まで下げ、また約8時間攪拌した後、吸引濾過して得た白色固体はTDサリチル酸塩であった。融点は88℃であった。IRスペクトルは図17に示された。
【0137】
[実施例28]
TDオレアノール酸塩の調製
99%のTD結晶5.15gを30mlのジクロロメタンに溶解し、そして、100mlのエタノール:ジクロロメタン(1:1)に4.5gのオレアノール酸を含有する溶液を加え、50℃の恒温で続いて120分攪拌した後、混合物中の溶媒を真空除去して得た灰白色固体はTDのオレアノール酸塩であった。融点は242℃(分解)であった。IRスペクトルは図18に示された。
【0138】
[実施例29]
TDアスパラギン酸塩の調製
99%のTD結晶1.0gを10mlのエタノールに溶解し、攪拌すると同時に、この溶液に0.266gのアスパラギン酸(L−アスパラギン酸が好ましい)を含む水溶液を緩慢に滴下し、40℃の恒温で続いて攪拌し、約20分間アスパラギン酸水溶液を滴下した後、この温度で続いて150分攪拌した後、室温まで次第に下げ、真空冷凍乾燥して白色固体を得た。融点は163℃であった。
【0139】
[実施例30]
TDタウリン酸塩の調製
99%のTD結晶1.0gを10mlのエタノールに溶解し、この溶液に0.25gタウリン酸を含むイソプロパノール溶液を滴下し、45℃の恒温で続いて120分攪拌した後、混合物中の溶媒を真空除去して白色固体を得た。融点は172℃であった。
【0140】
[実施例31]
TD塩酸塩の調製
99%のTD結晶1.03gを10mlのTHFに溶解し、0℃で1Mの塩化水素THF溶液2.2mlを滴下し、続いて約120分攪拌した後、−20℃に一晩置き、濾過して0.95g白色固体を得た。融点は192℃(分解)であった。
【0141】
[実施例32]
TDヘミスルフェートの調製
99%のTD結晶1.03gを10mlのTHFに溶解し、攪拌して0℃で1Mの硫酸メタノール溶液2.2mlを滴下し、続いて約120分攪拌した後、真空冷凍乾燥して白色固体を得た。
【0142】
[実施例33]
TD p−トルエンスルホン酸塩の調製
99%のTD結晶1.03gを10mlのTHFに溶解し、攪拌して0℃で1Mのp−トルエンスルホン酸メタノール溶液2.2mlを滴下し、続いて約120分攪拌した後、溶媒を真空除去して白色のバブル状固体を得た。
【0143】
[実施例34]
TDのA型結晶錠剤の調製
処方(1000錠):TDのA型結晶30g、乳糖200g、デンプングリコール酸ナトリウム2g、ポリビニルピロリドン(K30)15g、ステアリン酸マグネシウム0.4g、タルク1.2g。
製法:TDのA型結晶、乳糖、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)、ステアリン酸マグネシウム、タルクはそれぞれ80篩目を通させた。そして処方量のTDのA型結晶、乳糖、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)、50%処方量のステアリン酸マグネシウム、タルクは等量追加法で均一に混合させ、乾式造粒機により18篩目を通させ、造粒をした。残ったステアリン酸マグネシウム、タルクを加え、均一に混合し、ペレット成形にし、各錠30mgのTDを含有した錠剤を得た。
【0144】
[実施例35]
TDのA型結晶錠剤の調製
処方(1000錠):TDのA型結晶10g、デンプン100g、デンプングリコール酸ナトリウム2g、ポリビニルピロリドン(K30)10g、ステアリン酸マグネシウム0.4g、タルク1.2g、炭酸マグネシウム2g。
製法:TDのA型結晶、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)、ステアリン酸マグネシウム、タルクと炭酸マグネシウムはそれぞれ80篩目を通させた。そして処方量のTDのA型結晶、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)と炭酸マグネシウムを均一に混合し、適量な水を加え、軟質材料にし、篩目を通して造粒をした。乾燥し、含量と水分を測定し、ステアリン酸マグネシウム、タルクを加え、均一に混合し、錠剤にして得た。
【0145】
[実施例36]
TDのフマル酸塩の錠剤の調製
処方(1000錠):TDフマル酸塩50g、デンプン1000g、L−カルニチン(L−酒石酸塩)200g、デンプングリコール酸ナトリウム20g、ポリビニルピロリドン(K30)10g、ステアリン酸マグネシウム2g、タルク5g。
製法:TDフマル酸塩と処方中の添加剤はそれぞれ80篩目を通させ、そして処方量のTDフマル酸塩、デンプン、L−カルニチン(L−酒石酸塩)、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(K30)を混合し、適量な水を加え、軟質材料にし、篩目を通して造粒をした。乾燥して含量と水分を測定し、ステアリン酸マグネシウムとタルクを加え、均一に混合し、錠剤にして得た。
【0146】
[実施例37]
TDのA型結晶カプセル剤の調製
処方(1000錠):TDのA型結晶30g、部分アルファー化デンプン200g、タルク2g。
製法:薬物と添加剤を乾燥した後、それぞれ100篩目を通させ、そして等量追加法で処方量の薬物と添加剤を均一に混合し、混合粉末の含量と水分を測定した。粉末は直接にカプセルに充填して得た。
【0147】
[実施例38]
TDフマル酸塩カプセル剤の調製
処方(1000錠):TDフマル酸塩50g、部分アルファー化デンプン400g、L−カルニチン(L−酒石酸塩)100g、タルク2g。
製法:薬物と添加剤を乾燥した後、それぞれ100篩目を通させ、そして等量追加法で処方量の薬物と添加剤を均一に混合し、乾式造粒機により18篩目を通して造粒をし、混合粉末の含量と水分を測定した。顆粒は直接にカプセルに充填して得た。
【0148】
[実施例39]
TDのA型結晶分散錠の調製
処方(1000錠):TDのA型結晶10g、部分アルファー化デンプン20g、微結晶性セルロース60g、乳糖20g、デンプングリコール酸ナトリウム25g、ドデシル硫酸ナトリウム1g、ステアリン酸マグネシウム1g。
製法:処方量のTDのA型結晶は100篩目を通させ、処方量の部分アルファー化デンプン、微結晶性セルロース、乳糖、デンプングリコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムは60篩目を通させ、均一に混合し、等量追加法で処方量の薬物と添加剤を均一に混合し、含量を測定した。粉末で直接錠剤にして得た。得た錠剤の崩壊時間は1分未満である。
【0149】
[実施例40]
TD−βシクロデキストリン包接化合物注射用粉末製剤
処方:
TD−βシクロデキストリン包接化合物(薬物負荷率30%) 10g
クエン酸三ナトリウム 5.5g
マンニトール 500g
1000mlになるように注射用水を加えた。全部で1000瓶を調製した。
製法:
処方量のクエン酸三ナトリウムは適量な注射用水に溶解させ、処方量のTD−βシクロデキストリン包接化合物(薬物負荷率30%)を加え、攪拌して溶解させ、注射用水約900mlを加え、また処方量のマンニトールを加え、攪拌して溶解させ、0.1mol/Lのクエン酸溶液でpH5.5前後に調節し、全量まで注射用水を加えた。0.03%(w/v) 注射用活性炭を添加し、30分間攪拌し、0.22μmの微多孔膜で正圧濾過して病原菌を除去し、半製品は検査に合格した後、病原菌を除去したきれいなガラス小瓶に無菌包装した。各瓶1mlとした。約24時間低温冷凍乾燥し、口を密封して得た。製品は検査に合格した後包装した。
【0150】
[実施例41]
TDフマル酸塩注射液 静脈注射用
処方:
TDフマル酸塩 3.3g
塩化ナトリウム 9.0g
注射用水 適量
全量 1000ml
全部で1000瓶を調製した。
製法:
処方量のTDフマル酸塩、塩化ナトリウムを取って、注射用水900mlを加え、80℃に加温して溶解させ、また0.1mol/Lのクエン酸溶液でpH4.0〜5.0に調節し、全量まで注射用水を加えた。0.01%w/v注射用活性炭を添加し、15分間攪拌し、砂棒より脱炭し、0.45μmの微多孔膜で濾過した。濾過液は100mlのガラス輸液瓶に装入し、ポリエステルフィルムを置いて、ゴム栓で覆って、蓋を押し、115℃に水蒸気循環で30分間滅菌し、ライトで検査して包装した。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】TDの1H核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル
【図2】TDの質量分析(MS)スペクトル
【図3】TDのA型結晶のXRDスペクトル
【図4】TDのA型結晶のDSCスペクトル
【図5】TDのA型結晶のIRスペクトル
【図6】TDのB型結晶のXRDスペクトル
【図7】TDのB型結晶の熱重量分析(TG)スペクトル
【図8】TDのB型結晶のDSCスペクトル
【図9】TDのB型結晶のIRスペクトル
【図10】TDの無定形固化物のXRDスペクトル
【図11】TDフマル酸塩の1H−NMRスペクトル
【図12】TDフマル酸塩のIRスペクトル
【図13】TDフマル酸塩のXRDスペクトル
【図14】TDシュウ酸塩の1H−NMRスペクトル
【図15】TDシュウ酸塩のIRスペクトル
【図16】TDシュウ酸塩のXRDスペクトル
【図17】TDサリチル酸塩のIRスペクトル
【図18】TDオレアノール酸塩のIRスペクトル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
で表される化合物(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンまたはその生理的に許容される誘導体の抗B型肝炎ウイルスとしての用途。
【請求項2】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常9.774Å、6.32Å、5.726Å、4.967Å、4.849Åにピークがある、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの結晶。
【請求項3】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常14.917Å、9.774Å、6.32Å、5.726Å、5.387Å、5.211Å、4.967Å、4.849Å、4.647Å、4.553Å、3.817Åにピークがある、請求項2に記載の結晶。
【請求項4】
示差走査熱量分析スペクトルは、100℃前後に最大吸熱ピークがある、請求項2に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの結晶。
【請求項5】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常20.157Å、9.995Å、4.449Å、3.965Å、3.297Åにピークがある、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの結晶。
【請求項6】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常20.157Å、9.995Å、5.555Å、4.696Å、4.449Å、3.965Å、3.677Å、3.297Å、3.125Å、2.822Åにピークがある請求項5に記載の結晶。
【請求項7】
示差走査熱量分析スペクトルは、55℃前後に最大吸熱ピークがある、請求項5に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの結晶。
【請求項8】
TD無定形態の含有量は70%以上である、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの無定形固化物。
【請求項9】
式(II)
【化2】
[式中、aは酸と(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンとのモル比であり、aは1〜5の間にあり、HAは酸である]
で表される(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの塩。
【請求項10】
HAは、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、タウリン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、α−ナフタリンスルホン酸、β−ナフタリンスルホン酸、(S)−ナフタレンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、n−プロピルスルホン酸、イソプロピルスルホン酸、n−ブチルスルホン酸、s−ブチルスルホン酸、イソブチルスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、ペンチルスルホン酸、ヘキシルスルホン酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、アーモンド酸、マンデル酸、サリチル酸、1−フェノキシ安息香酸、ニコチン酸、パントテン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリン、アスコルビン酸、オレアノール酸、ウルソル酸、グリシルリジン酸、グリシルレチン酸、サルビアニン酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルコン酸または果糖酸である、請求項9に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの塩。
【請求項11】
HAは、フマル酸、シュウ酸、サリチル酸、オレアノール酸またはアスパラギン酸である、請求項9に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの塩。
【請求項12】
式(III)
【化3】
で表される、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンのフマル酸塩。
【請求項13】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常18.706Å、6.112Å、4.562Å、3.645Å、3.561Å、3.033Å、2.596Åにピークがある、請求項12に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンのフマル酸塩の結晶。
【請求項14】
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンとシクロデキストリンとのモル比は1:1〜1:10である、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンのシクロデキストリン包接化合物。
【請求項15】
請求項2、請求項5、請求項8、請求項9、請求項12または請求項14に記載の固体状態の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンおよびその誘導体の抗ウイルスの用途。
【請求項16】
固体状態の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンまたはその生理的に許容される誘導体と薬用担体とを含む組成物。
【請求項17】
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンまたはその生理的に許容される誘導体は、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンのA型結晶、B型結晶、無定形固化物、塩またはシクロデキストリン包接化合物である、請求項16に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンまたはその生理的に許容される誘導体。
【請求項18】
L−カルニチンまたは塩をさらに含む請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
アルカリ性薬用担体をさらに含む請求項16に記載の組成物。
【請求項1】
式(I)
【化1】
で表される化合物(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンまたはその生理的に許容される誘導体の抗B型肝炎ウイルスとしての用途。
【請求項2】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常9.774Å、6.32Å、5.726Å、4.967Å、4.849Åにピークがある、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの結晶。
【請求項3】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常14.917Å、9.774Å、6.32Å、5.726Å、5.387Å、5.211Å、4.967Å、4.849Å、4.647Å、4.553Å、3.817Åにピークがある、請求項2に記載の結晶。
【請求項4】
示差走査熱量分析スペクトルは、100℃前後に最大吸熱ピークがある、請求項2に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの結晶。
【請求項5】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常20.157Å、9.995Å、4.449Å、3.965Å、3.297Åにピークがある、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの結晶。
【請求項6】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常20.157Å、9.995Å、5.555Å、4.696Å、4.449Å、3.965Å、3.677Å、3.297Å、3.125Å、2.822Åにピークがある請求項5に記載の結晶。
【請求項7】
示差走査熱量分析スペクトルは、55℃前後に最大吸熱ピークがある、請求項5に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの結晶。
【請求項8】
TD無定形態の含有量は70%以上である、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの無定形固化物。
【請求項9】
式(II)
【化2】
[式中、aは酸と(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンとのモル比であり、aは1〜5の間にあり、HAは酸である]
で表される(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの塩。
【請求項10】
HAは、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、タウリン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、α−ナフタリンスルホン酸、β−ナフタリンスルホン酸、(S)−ナフタレンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、n−プロピルスルホン酸、イソプロピルスルホン酸、n−ブチルスルホン酸、s−ブチルスルホン酸、イソブチルスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、ペンチルスルホン酸、ヘキシルスルホン酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、アーモンド酸、マンデル酸、サリチル酸、1−フェノキシ安息香酸、ニコチン酸、パントテン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリン、アスコルビン酸、オレアノール酸、ウルソル酸、グリシルリジン酸、グリシルレチン酸、サルビアニン酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルコン酸または果糖酸である、請求項9に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの塩。
【請求項11】
HAは、フマル酸、シュウ酸、サリチル酸、オレアノール酸またはアスパラギン酸である、請求項9に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンの塩。
【請求項12】
式(III)
【化3】
で表される、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンのフマル酸塩。
【請求項13】
粉末X線回折スペクトルは、面間距離dで通常18.706Å、6.112Å、4.562Å、3.645Å、3.561Å、3.033Å、2.596Åにピークがある、請求項12に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンのフマル酸塩の結晶。
【請求項14】
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンとシクロデキストリンとのモル比は1:1〜1:10である、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンのシクロデキストリン包接化合物。
【請求項15】
請求項2、請求項5、請求項8、請求項9、請求項12または請求項14に記載の固体状態の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンおよびその誘導体の抗ウイルスの用途。
【請求項16】
固体状態の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンまたはその生理的に許容される誘導体と薬用担体とを含む組成物。
【請求項17】
(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンまたはその生理的に許容される誘導体は、(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンのA型結晶、B型結晶、無定形固化物、塩またはシクロデキストリン包接化合物である、請求項16に記載の(R)−9−[2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスフィノイルメトキシ]プロピル]アデニンまたはその生理的に許容される誘導体。
【請求項18】
L−カルニチンまたは塩をさらに含む請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
アルカリ性薬用担体をさらに含む請求項16に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2008−545802(P2008−545802A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516109(P2008−516109)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001269
【国際公開番号】WO2006/133632
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507407113)博瑞生物医葯技▲術▼(▲蘇▼州)有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHTGENE BIO−MEDICAL TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】ROOM 318,BINHE ROAD 1326,SUZHOU NEW DISTRICT,JIANGSU CHINA(ZIP CODE 215011)
【出願人】(507407593)江▲蘇▼正大天晴葯▲業▼股▲ふん▼有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU CHIA TAI TIANQING PHARMACEUTICAL CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】NO.8 JULONG BEILU,XINPU DISTRICT,LIANYUNGANG,JIANGSU,CHINA(ZIP CODE 222006)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001269
【国際公開番号】WO2006/133632
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507407113)博瑞生物医葯技▲術▼(▲蘇▼州)有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHTGENE BIO−MEDICAL TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】ROOM 318,BINHE ROAD 1326,SUZHOU NEW DISTRICT,JIANGSU CHINA(ZIP CODE 215011)
【出願人】(507407593)江▲蘇▼正大天晴葯▲業▼股▲ふん▼有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU CHIA TAI TIANQING PHARMACEUTICAL CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】NO.8 JULONG BEILU,XINPU DISTRICT,LIANYUNGANG,JIANGSU,CHINA(ZIP CODE 222006)
【Fターム(参考)】
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