説明

ネオン回収方法

【課題】 キセノン−塩素系ガスを使用するエキシマレーザ装置から、その大部分を占めているネオンガスを効率よく回収する方法を提供する。
【解決手段】 キセノン−塩素系エキシマレーザガスを使用したエキシマレーザ装置(1)からの排出エキシマレーザガスから塩化水素成分を除去する第1ステップと、第ステップ1でのスルーガスを触媒装置(8)に通過させることで排出エキシマレーザガスから水素成分を除去する第2ステップと、第2ステップでのスルーガスをキセノン沸点温度で第1次低温吸着処理する第3ステップと、第3ステップでのスルーガスを窒素沸点温度で第2次低温吸着処理する第4ステップとを含む処理工程で、エキシマレーザガス中のネオンガスを精製回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマレーザ装置から排出されたエキシマレーザガスからネオンを回収する方法に関し、特に、キセノン−塩素系のエキシマレーザガスからネオンガスを回収する回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマレーザは、高出力の紫外線光として、半導体製造工程や液晶製造工程に利用されている。このエキシマレーザでは、エキシマレーザガスとして高価な希ガスを使用するため、その希ガスを回収して再利用することが図られている。
【0003】
エキシマレーザに使用したガスから希ガスを回収再利用するものとして、従来例えば、レーザ発振装置から取り出された不純ネオンガスからフッ素やクリプトンを除去回収するようにしたものや(特許文献1)、レーザ発振媒質であるクリプトン−フッ素をベースガスとしてのネオンガスで希釈したエキシマレーザガスを回収してネオンの精製を行うようにしたもの(特許文献2)が知られている。
【特許文献1】特開2001−232134号公報
【特許文献2】特許第3805073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエキシマレーザ装置では、通常レーザ発振媒質としてクリプトン−フッ素系(KrF)ガスを使用し、このクリプトン−フッ素ガスをべースガスであるネオン(Ne)で希釈したエキシマレーザガスを使用している。近年、長い波長でかつ、やや控えた出力を得るためにレーザ発振媒質として、キセノン−塩素系(XeCl)ガスを使用するものが提案されている。
【0005】
ところが、キセノン−塩素系ガスの場合、塩素成分として塩化水素ガスをネオンガスで希釈したガスを使用することから、レーザ発振装置から排出されたガス中に水素成分が混入しており、ネオンガスの精製回収を効率よく行うことが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされてもので、キセノン−塩素系ガスを使用するエキシマレーザ装置から、その大部分を占めているネオンガスを効率よく回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために本発明は、キセノン−塩素系エキシマレーザガスを使用したエキシマレーザ装置からの排出エキシマレーザガスを塩化水素除害装置を通過させることで排出エキシマレーザガスから塩化水素成分を除去する第1ステップと、触媒装置を通過させることで排出エキシマレーザガスから水素成分を除去する第2ステップと、第2ステップでのスルーガスをキセノン沸点温度で第1次低温吸着処理する第3ステップと、第3ステップでのスルーガスを窒素沸点温度で第2次低温吸着処理する第4ステップとを含む処理工程で、エキシマレーザガス中のネオンガスを精製回収するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、キセノン−塩素系エキシマレーザガスを使用したエキシマレーザ装置からの排出したエキシマレーザガスを塩化水素除害設備を通過させることで、排出エキシマレーザガスから塩素成分を取除き、その後、塩素成分を取り除いた排出エキシマレーザガスを触媒装置で処理することにより、排出エキシマレーザガス中に含まれている水素成分を取り除き、その水素成分を除去した排出エキシマレーザガスをキセノン沸点温度まで冷却させてキセノンガスを吸着除去し、ついで、排出エキシマレーザガスを窒素沸点温度まで冷却して、窒素ガスや酸素ガスを吸着除去するようにしていることから、キセノン−塩素系エキシマレーザガスから成分の大部分を占めるネオンガスを精製・回収することができる。この結果、リサイクル使用ができランニングコストを低減することができるうえ、廃棄ガスによる環境汚染を低減させることができることから環境負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図は、本発明の回収方法を実施する処理系の概略フロー図である。符号(1)はキセノン−塩素系エキシマレーザガスを使用するレーザアニーリング装置であり、このレーザアニーリング装置(1)には、キセノンガス貯蔵容器(2)と塩化水素ガス貯蔵容器(3)及びバッファガスとしてのネオンガス貯蔵容器(4)が連通接続してある。なお、キセノンガス貯蔵容器(2)にはキセノンガスとネオンガスの混合ガスが、また、塩化水素ガス貯蔵容器(3)には塩化水素ガスとネオンガスの混合ガスがそれぞれ充填されている。
【0010】
そして、キセノンガス及び塩化水素ガスのそれぞれのの濃度が所定の濃度となるように3つのガスを混合してレーザアニーリング装置(1)に供給し、図示を省略したエシマレーザ発振器の作用により励起したエキシマレーザでレーザアニーリング装置(1)内に配置した半導体基板等を処理する。
【0011】
レーザアニーリング装置(1)から排出された排出エキシマレーザガスは塩化水素除害装置(5)に導入される。この塩化水素除害装置(5)にはソーダライム等の吸着剤が収容されていて、排出エキシマレーザガス中の塩化水素ガスは中和による乾式除害で分離除去するように構成してある。
【0012】
塩化水素ガスを取り除かれた排出エキシマレーザガスは、一旦回収容器(6)に回収された後、圧縮機(7)で加圧されてパラジウム等の触媒を充填した触媒装置(8)に送給され、排出エキシマレーザガス中の水素成分が触媒装置(8)内で触媒の作用で酸素と反応して水になる。ここで、一旦回収容器(6)に回収するのは、レーザアニーリング装置(1)から一時的に大量排出される排出エキシマレーザガスを短時間で処理してレーザアニーリング装置(1)の稼働率を高めるようにするとともに、爾後の処理時間を充分に確保できるようにするためである。この触媒装置(8)を出た排出エキシマレーザガスは、吸着剤が収容されている常温吸着装置(9)に導入されて、触媒装置(8)で生成された水分や炭酸ガスを吸着除去する。
【0013】
常温吸着装置(9)で水分や炭酸ガスを除去した排出エキシマレーザガスは、ネオン精製装置(10)に送給される。このネオン精製装置(10)は一次熱交換器(11)、第1次低温吸着装置(12)、二次熱交換器(13)、第2次低温吸着装置(14)を順に接続して構成してある。常温吸着装置(9)からの排出エキシマレーザガスは、一次熱交換器(11)で冷却された状態でキセノンガスの沸点温度まで冷却されている第1次低温吸着装置(12)に送り込まれて、キセノンガスの沸点温度(165K)で排出エキシマレーザガス中のキセノンガスを液化除去され、このキセノンガス成分を取り除かれた排出エキシマレーザガスは二次熱交換器(13)でさらに冷却された状態で窒素ガスの沸点温度(77K)まで冷却された第2次低温吸着装置(14)に送り込まれて、酸素ガス及び窒素ガスを液化除去して、排出エキシマレーザガス中のネオンガスを精製ネオンガス回収容器(15)に精製回収する。なお、この低温吸着装置(12)(14)及び熱交換器(11)(13)の運転熱源としては、小型の冷凍機を使用する。
【0014】
キセノン−塩素系エキシマレーザガスを使用した場合には、塩化水素除害装置(5)で除害後のサンプルガスから、水素ガスが体積比率濃度で70ppm程度検出された。この水素ガスはエキシマレーザガスとして導入した塩化水素を原料としてレーザ励起により生成されたと考えられる。ちなみに、レーザ励起をしない状態でも、体積比率で数十ppm程度の水素ガス生成が確認できた。このキセノン−塩素系エキシマレーザガスを使用した場合に発生した水素ガスは低温分離で取り除くことは困難である。
【0015】
そこで、本発明にあっては、触媒の存在下で酸素と反応させて、水を生成し、この水分を吸着除去することで排出エキシマレーザガスから水素成分を取り除いている。そして、水素成分を取り除くことによって、エキシマレーザガスからネオンガスを高収率で分離回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、キセノン−塩素系(XeCl)ガスを使用するエキシマレーザ装置からの排ガスからの希ガス(Neガス)の精製回収に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る回収方法を実施する処理系の概略フロー図である。
【符号の説明】
【0018】
1…レーザアニーリング装置、5…塩化水素除去装置、8…触媒装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマレーザ装置から排出されたエキシマレーザガスからネオンを回収する方法であって、
キセノン−塩素系エキシマレーザガスを使用したエキシマレーザ装置(1)からの排出エキシマレーザガスを塩化水素除害装置(5)を通過させることで排出エキシマレーザガスから塩化水素成分を除去する第1ステップと、第1ステップでのスルーガスを触媒装置(8)に通過させることで排出エキシマレーザガスから水素成分を除去する第2ステップと、第2ステップでのスルーガスをキセノン沸点温度で第1次低温吸着処理する第3ステップと、第3ステップでのスルーガスを窒素沸点温度で第2次低温吸着処理する第4ステップとを含む処理工程で、エキシマレーザガス中のネオンガスを精製回収するようにしたことを特徴とするネオン回収方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−168169(P2008−168169A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−921(P2007−921)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】