説明

ネガ型平版印刷版原版

構造(I)又は構造(II)
HOOC-Ar-N(R1)(R2) (I)
HOOC-R5-N(R6)(R7) (II)
によって表される脱酸素剤及び保存寿命安定化剤を含有する最も外側の画像形成性層を有しており、それら構造中、Arはフェニレン又はナフタレン基であり、R1及びR2は独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、フェノキシ、-R5OH、-CH2-C(=O)-R3又はCH2-(=O)O-R4基であり、R3は水素或いはアルキル又はフェニル基であり、R4はアルキル又はフェニル基であり、R5はアルキレン基であり、R6及びR7は独立して水素或いはアルキル、-R5OH、-R5C(=O)-R8又はR5C(=O)OR9基であり、R8は水素又はアルキル基であり、但し、前記脱酸素剤が1以下のカルボキシル基を有することを条件とする、ネガ型平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、改良された保存寿命安定性を有する平版印刷版原版等のネガ型画像形成可能な要素に関する。この発明は、また、画像化と処理との間にベーキング工程無しで画像化されて処理される平版印刷版を提供する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
放射感受性組成物は、平版印刷版原版を含めた画像形成可能材料の調製において広く使用されている。そのような組成物は、放射感受性成分、開始剤システム及びバインダーを一般に含み、それらのそれぞれが、物理的性質、画像化性能及び画像特性における様々な改良を提供する研究の焦点となっている。
【0003】
印刷版原版の分野における最近の発展は、レーザー又は半導体レーザーにより画像形成することができ、より詳しくは、オンプレスで画像化及び/又は現像することができる放射感受性組成物の使用に関係する。レーザーはコンピューターによって直接制御することができるので、レーザー露光は中間情報媒体(又は「マスク」)としての従来のハロゲン化銀のグラフィックアートフィルムを必要としない。市販のイメージセッターに使用されている高性能のレーザー又は半導体レーザーは、少なくとも700nmの波長を有する放射(光)を一般に放ち、したがって放射感受性組成物は電磁スペクトルの近赤外又は赤外領域において感度が高いことが要求される。また一方、紫外線又は可視光放射による画像化のために、他の有用な放射感受性の組成物が設計される。
【0004】
印刷版を調製するためには放射感受性組成物を使用する2つの方法が存在する。ネガ型印刷版については、放射感受性組成物中の露光領域が硬化され、非露光領域が現像の間に洗い落とされる。ポジ型印刷版については、露光領域が現像液に溶解され、非露光領域が画像となる。
【0005】
熱画像化に際してフリーラジカルを発生させるために使用することができる様々な放射感受性組成物及び同じものを含んでいる画像化可能な要素は、多数の出版物、例えば、ポリカルボン酸を含有しているネガ型要素について記載している米国特許第6,309,792号(Hauckら)等に記載されている。その他のIR感受性ネガ型要素が、米国特許出願公開第2009/0111051号(Taoら)及び国際公開第2004/041544号(Munnellyら)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,309,792号
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0111051号
【特許文献3】国際公開第2004/041544号
【特許文献4】米国特許第7,326,521号
【特許文献5】米国特許第7,332,253号
【特許文献6】米国特許第6,569,603号
【特許文献7】欧州特許出願公開第1,182,033号
【特許文献8】米国特許第4,874,686号
【特許文献9】米国特許第7,729,255号
【特許文献10】米国特許第6,916,595号
【特許文献11】米国特許第7,041,416号
【特許文献12】米国特許出願公開第2009/0142695号
【特許文献13】米国特許第6,309,792号
【特許文献14】米国特許第6,352,812号
【特許文献15】米国特許第6,893,797号
【特許文献16】米国特許第7,175,949号
【特許文献17】米国特許第6,582,882号
【特許文献18】米国特許第6,899,994号
【特許文献19】米国特許第7,005,234号
【特許文献20】米国特許第7,368,215号
【特許文献21】米国特許出願公開第2005/0003285号
【特許文献22】米国特許第5,629,354号
【特許文献23】米国特許第4,565,769号
【特許文献24】米国特許第6,562,543号
【特許文献25】米国特許出願公開第2002/0068241号
【特許文献26】国際公開第2004/101280号
【特許文献27】米国特許第5,086,086号
【特許文献28】米国特許第5,965,319号
【特許文献29】米国特許第6,051,366号
【特許文献30】米国特許第7,524,614号
【特許文献31】米国特許第6,908,726号
【特許文献32】国際公開第2004/074929号
【特許文献33】米国特許出願公開第2006/0063101号
【特許文献34】米国特許出願公開第第2006/0234155号
【特許文献35】国際公開第2006/053689号
【特許文献36】米国特許第4,973,572号
【特許文献37】米国特許第5,208,135号
【特許文献38】米国特許第6,153,356号
【特許文献39】米国特許第6,264,920号
【特許文献40】米国特許第6,787,281号
【特許文献41】米国特許第7,018,775号
【特許文献42】米国特許第7,049,046号
【特許文献43】米国特許第7,452,638号
【特許文献44】米国特許出願公開第2008/0254387号
【特許文献45】米国特許出願公開第2008/0299488号
【特許文献46】米国特許出願公開第2008/0311520号
【特許文献47】米国特許出願第12/104,544号
【特許文献48】米国特許出願第12/177,208号
【特許文献49】米国特許第7,175,969号
【特許文献50】米国特許出願公開第2005/0170282号
【特許文献51】米国特許第5,713,287号
【特許文献52】米国特許第5,488,025号
【特許文献53】米国特許出願公開第2009/0263746号
【特許文献54】米国特許第6,478,483号
【特許文献55】米国特許第5,887,214号
【特許文献56】欧州特許出願公開第1,788,431号
【特許文献57】米国特許第6,992,688号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IUPAC、「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl. Chem. 68巻、(1996年)、2287〜2311頁
【非特許文献2】Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists、A Reiser、Wiley、ニューヨーク、1989年、102〜177頁
【非特許文献3】B.M. MonroeによるRadiation Curing: Science and Technology、S.P. Pappas編、Plenum、ニューヨーク、1992年、399〜440頁
【非特許文献4】Imaging Processes and Material、J.M. Sturgeら(編者)、Van Nostrand Reinhold、ニューヨーク、1989年、226〜262頁、A.B. Cohen及びP. Walkerによる「Polymer Imaging」
【非特許文献5】McCutcheon's Emulsifiers & Detergents、2007年版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多くの場合、そのようなネガ型の画像形成可能な要素は、酸素障壁として作用して望ましい保存寿命及び感度を提供する画像化可能な層の上のトップコートを必要とするが、材料コスト及びさらなるコーティング装置が必要性となるためにこの追加の層を排除したいという要望がある。このトップコートの存在は、画像化層が適当な現像液中で現像される前に追加の洗浄工程を多くの場合必要とし、又はそれは自動現像機の工程処理サイクルにおける現像液の寿命を短縮する。トップコートの除去は、しかしながら、印刷版原版の感度及び保存寿命(長期にわたる安定性)にマイナスの影響を与える。この酸素障壁のトップコートを感度及び保存寿命の安定性における何らの損失なしで除去することが望ましい。更に、他の画像形成可能な要素は、画像耐久性を増すために画像化と現像(現像処理)の間にベーキング工程を必要とするが、画像化スピード(画像化感度)における何らの損失なしでユーザー(顧客)のためにこの追加の工程を除去することが同様に望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材を含み、その上に最外層としてのネガ型画像形成性層を有するネガ型平版印刷版原版であって、前記画像形成性層が、
a) ポリマーバインダー、
b) フリーラジカル重合性成分、
c) 画像化放射への露光に際してフリーラジカルを提供する開始剤組成物、及び
d) 下の構造(I)又は構造(II):
HOOC-Ar-N(R1)(R2) (I)
HOOC-R5-N(R6)(R7) (II)
によって表され、上式中、Arがフェニレン又はナフタレン基であり、R1及びR2が独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、フェノキシ、-R5OH、-CH2-C(=O)-R3、又はCH2-(=O)O-R4基であり、R3が水素或いはアルキル又はフェニル基であり、R4がアルキル又はフェニル基であり、R5がアルキレン基であり、R6及びR7が独立して水素或いはアルキル、-R5OH、-R5C(=O)-R8、又はR5C(=O)OR9基であり、R8が水素又はアルキル基であり、Rがアルキル基である、脱酸素剤及び保存寿命安定化剤(但し、前記脱酸素剤は1以下のカルボキシル基を有する)
を含む平版印刷版原版を提供する。
【0010】
加えて、本発明は、平版印刷版を製造する方法であって、
A) 本発明の平版印刷版原版を画像様露光して露光及び非露光領域を提供する工程と、
B) ベーキング工程なしで、前記画像様露光した原版を現像して非露光領域を除去する工程と
を含む方法を提供する。
【0011】
この発明のいくつかの実施形態において、該平版印刷版原版は、1乃至7重量%の量で存在する4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸、4-(N,N-ジエチルアミノ)安息香酸、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]安息香酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、N,N-ジヒドロキシメチルグリシン又はそれらの混合物である脱酸素剤を含み、
ここで、該赤外線放射吸収性化合物は、赤外線放射吸収性染料であり、該開始剤組成物は、テトラアリールホウ酸塩及び同じ塩を形成するオニウム塩を更に含む。
【0012】
かくして、この方法は、平版印刷版を提供するために使用することができる。
【0013】
この発明のネガ型平版印刷版原版は、トップコートの除去を含めた多数の利点を提供する。したがって、この画像形成性層は、該原版の最外層であり、それにもかかわらず、保存寿命の安定性は減少されない。加えて、画像化と現像との間で使用される「予熱」又はベーキング工程は除去することができ、それによって平版印刷版を形成するための原版を使用する工程を、画像化速度に何らの重大な損失を与えることなく単純化する。
【0014】
これらの利点は、特定の脱酸素剤(構造I及びII参照)を該原版の画像化可能な層中に組み込むことによって意外にも見いだされた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
文脈が別途示していない限り、本明細書で使用されるときの用語「画像形成可能な要素」、「平版印刷版原版」、「印刷版原版」及び「原版」は、本発明の実施形態への言及であることを指す。
【0016】
加えて、文脈が別途示していない限り、本明細書に記載されている様々な成分、例えば、「脱酸素剤」、「ポリマーバインダー」、「フリーラジカル発生化合物」「赤外線放射吸収性化合物」及び類似の用語等は、かかる成分の混合物も指す。したがって、本願明細書の原文における、冠詞「a」、「an」及び「the」の使用は、単一の成分のみを指すことを必ずしも意味していない。
【0017】
更に、別途示されていない限り、百分率は、乾燥重量によるパーセント、例えば、全固形分又は乾燥層組成物に基づく重量%を指す。
【0018】
ポリマーに関係するどの用語に対しても定義を明確化するために、国際純粋応用化学連合(「IUPAC」)によって出版されている「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl. Chem. 68巻、(1996年)、2287〜2311頁を参照すべきである。しかし、本明細書中に明記した定義が支配的なものと見なされるべきである。
【0019】
「グラフト」ポリマー又はコポリマーは、少なくとも200の分子量を有する側鎖を有するポリマーを指す。
【0020】
用語の「ポリマー」は、高分子量及びオリゴマーを含めた低分子量のポリマーを指し、ホモポリマー及びコポリマーを含める。
【0021】
用語の「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマーから誘導されるポリマーを指す。
【0022】
用語の「主鎖」は、複数のペンダント基が結合しているポリマー中の原子(炭素又はヘテロ原子)の鎖を指す。そのような主鎖の一例は、1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「全炭素型」主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、ポリマーが縮合反応又はその他の何らかの方法によって形成される場合はヘテロ原子を含むことができる。
【0023】
画像形成性層
この発明において使用される放射感受性組成物及び画像形成性層は、以下で定義される1つ又は複数の「酸素安定剤」又は「保存寿命安定剤」を含有する。かかる化合物は、該組成物を安定化して長期にわたる保存寿命を改善するようであり、したがって、「老化防止剤」、「老化抑制剤」又は「酸素阻害剤」と考えることもできる。それらは、現像の可能性を高める化合物として作用することもできる。
【0024】
かかる脱酸素剤は、下の構造(I)又は構造(II):
HOOC-Ar-N(R1)(R2) (I)
HOOC-R5-N(R6)(R7) (II)
によって表すことができ、上式中、Arは、フェニレン又はナフタレン基であり、そのいずれかが、該化合物の意図された効果を妨げない1つ又は複数の基によって更に置換されていてもよい。
【0025】
R1及びR2は、独立して、1〜10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の線状若しくは分枝アルキル基、2〜10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の線状若しくは分枝アルケニル基、2〜10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の線状若しくは分枝アルキニル基、置換若しくは非置換のフェニル基(例えばアルキルフェニル基等)、置換若しくは非置換のフェノキシ基(例えばアルキル基が1〜4個の炭素原子を有するアルキルフェノキシ基等)、-R5OH(例えばヒドロキシメチル若しくは2-ヒドロキシエチル基等)、-CH2-C(=O)-R3、又はCH2-C(=O)O-R4基である。R3は、水素又は置換若しくは非置換のアルキル若しくはフェニル基(上で定義されているのと同じ)である。R4は、置換若しくは非置換のアルキル若しくはフェニル基(上で定義されているのと同じ)である。R5は、1〜10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の線状若しくは分枝アルキレン基である。R6及びR7は、独立して、水素又は置換若しくは非置換のアルキル基(上で定義されているのと同じ)、-R5OH、-R5C(=O)-R8、又はR5C(=O)OR9基である。R8は、水素又は置換若しくは非置換のアルキル基(上で定義されているのと同じ)であり、R9は、置換又は非置換のアルキル基(上で定義されているのと同じ)である。
【0026】
該脱酸素剤は、それぞれの分子中に1以下のカルボキシル基を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、Arは、置換又は非置換のフェニレンであり、R1及びR2は、独立して1〜4個の炭素原子を有する非置換のアルキル又はヒドロキシアルキル基であり、R5は、1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキレン基であり、R6及びR7は、独立して、水素又は1〜4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル基、或いはR5OH基であり、R5は1〜4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキレン基である。ほとんどの実施形態において、これらの基は更に置換はされていない。
【0028】
更に別の実施形態において、R1及びR2は、独立して1〜3個の炭素原子を有する非置換のアルキル基であり、R5は、1〜2個の炭素原子を有する非置換のアルキレン基であり、R6及びR7は、独立して、-R5OH基であり、R5は1〜2個の炭素原子を有する非置換のアルキレン基である。
【0029】
代表的な脱酸素剤としては、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸、4-(N,N-ジエチルアミノ)安息香酸、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]安息香酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、N,N-ジヒドロキシメチルグリシン、及びこれら化合物の2つ以上の混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
この脱酸素剤は、0.1乃至20重量%、又は典型的には1乃至7重量%の量で一般に存在する。
【0031】
この発明において有用なこの脱酸素剤は、以下の実施例において記されているような多数の商業的供給源から入手することができる。
【0032】
この画像形成可能な要素は、適当な基材上に配置された放射感受性画像化組成物を含有して放射感受性の(特にIR感受性の)画像形成性層を形成する。この画像形成可能な要素は、適切な放射を用いて架橋可能である塗布されたコーティングに対して必要性がある場合で、特にコーティングの非露光領域を露光領域の代わりに除去することが望まれる場合に、いくつかの有用性を有することができる。この放射感受性の組成物は、以下でより詳細に定義される平版印刷版原版のような印刷された型を用意するために使用することができる。
【0033】
この放射感受性組成物(画像形成性層)は、オフプレスで現像が可能なものに対して一般に使用される1つ又は複数のポリマーバインダー、例えば20乃至400(典型的には30乃至200)の酸価を有する任意のアルカリ溶液に可溶な(又は分散可能な)ポリマーを含有することができる。以下に記載のポリマーバインダーは、この様式において有用であるが網羅的な目録ではない。
【0034】
I.例えば米国特許第7,326,521号(Taoら)に記載されているような、(a)(メタ)アクリロニトリル、(b)(メタ)アクリル酸のポリ(アルキレンオキシド)エステル、ならびに場合によって(c)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン及びその誘導体ならびに(メタ)アクリルアミドの組合せ又は混合物の重合によって形成されるポリマー。この種類におけるいくつかの特に有用なポリマーバインダーは、1つ又は複数の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン及びその誘導体、ビニルカルバゾール、ならびにポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートから誘導される。
【0035】
II.米国特許第7,332,253号(Taoら)に記載されているようなペンダントアリルエステル基を有するポリマー。かかるポリマーは、また、上記特許のカラム8、31行からカラム10、3行に記載されているようにペンダントシアノ基を含有するか様々なその他のモノマーから誘導される繰り返し単位を有することができる。
【0036】
III.全炭素型主鎖であって、その全炭素型主鎖を形成している炭素原子の少なくとも40モル%及び最大で100モル%(典型的には40乃至50モル%)が第三級炭素原子であり、全炭素型主鎖中の残りの炭素原子が第三級炭素原子ではない主鎖を有するポリマー。「第三級炭素」により、われわれは、3つの価標が水素原子(四番目の原子価を満たしている)以外のラジカル又は原子によって満たされている全炭素型主鎖中の炭素原子を指す。「第三級炭素原子ではない」によって、われわれは、第二級炭素(水素原子により2つの価標が満たされている)又は第四級炭素(水素原子が結合していない)である全炭素型主鎖中の炭素原子を指す。典型的には、ほとんどの第三級炭素原子ではない炭素原子は、第二級炭素原子である。
【0037】
第三級炭素原子を含んでいる代表的な繰り返し単位は、ビニルカルバゾール、スチレン及びその誘導体(ペンダント炭素-炭素重合が可能な基を提供するジビニルベンゼン及び類似のモノマーを除く)、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、ならびにメチルビニルケトンから選択される1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導することができる。上記のように、2つ以上の異なる繰り返し単位を使用することができる。同様に、第二級又は第四級炭素原子を有する典型的な繰り返し単位は、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリルアミド、及びα-メチルスチレンから選択される1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導することができる。
【0038】
IV.ポリマー主鎖に結合した1つ又は複数のエチレン性不飽和ペンダント基(反応性ビニル基)を有するポリマーバインダー。かかる反応性基は、フリーラジカルの存在下で重合又は架橋を受けることが可能である。ペンダント基は、炭素-炭素直接結合によるか、特に制限されない連結基(「X」)を介してポリマー主鎖に直接結合させることができる。反応性ビニル基は、少なくとも1つのハロゲン原子、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、或いはアルキル、アリール、アルコキシ、又はアリールオキシ基、特に1つ又は複数のアルキル基により置換されていてもよい。いくつかの実施形態において、反応性ビニル基は、例えば、米国特許第6,569,603号(Furukawaら)に記載されているように、フェニレン基を介してポリマー主鎖に結合される。その他の有用なポリマーバインダーは、例えば、本明細書に引用されている欧州特許出願公開第1,182,033号(Fujimakiら)及び米国特許第4,874,686号(Urabeら)、同第7,729,255号(Taoら)、同第6,916,595号(Fujimakiら)、及び同第7,041,416号(Wakataら)に、特に欧州特許出願公開第1,182,033号に記されている一般式(1)から(3)について記載されているペンダント基中にビニル基を有する。
【0039】
V.ポリマーバインダーは、米国特許出願公開第2009/0142695号(上記)に記載されているようにペンダントの1H-テトラゾール基を有することができる。
【0040】
VI.更にその他の有用なポリマーバインダーは、均質であり得るか、すなわち、コーティング溶媒に溶解されているか、又は分離した粒子として存在することができ、以下に限定はされないが、(メタ)アクリル酸及び酸エステル樹脂[例えば(メタ)アクリレート等]、ポリビニルアセタール、フェノール樹脂、スチレン、N-置換環状イミド又は無水マレイン酸から誘導されるポリマー、例えば、欧州特許出願公開第1,182,033号(上記)、ならびに米国特許第6,309,792号(Hauckら)、同第6,352,812号(Shimazuら)、同第6,569,603号(上記)、及び同第6,893,797号(Munnellyら)に記載されているもの等が挙げられる。同様に有用なのは、米国特許第7,175,949号(Taoら)に記載されているビニルカルバゾールポリマーである。微粒子型のポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/スチレンのコポリマー、カルボキシフェニルメタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリルアミド/N-フェニルマレイミドから誘導された溶解したコポリマー、ポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール/スチレン/メタクリル酸から誘導されたコポリマー、N-フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸から誘導されたコポリマー、ウレタン-アクリル中間体A(p-トルエンスルホニルイソシアネートとヒドロキシルエチルメタクリレートとの反応生成物)/アクリロニトリル/N-フェニルマレイミドから誘導されたコポリマー、及びN-メトキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/アクリロニトリル/n-フェニルマレイミドから誘導されたコポリマーが有用である。
【0041】
その他の有用なポリマーバインダーは、画像形成性層中に(通常は均一に)分配されている微粒子のポリ(ウレタン-アクリル)ハイブリッドである。いくつかのポリ(ウレタン-アクリル)ハイブリッドが、Air Products and Chemicals, Inc.(アレンタウン、ペンシルバニア州)から分散液の状態で、例えば、ポリ(ウレタン-アクリル)ハイブリッド粒子のHybridur(登録商標)540、560、570、580、870、878、880ポリマー分散液として市販されている。
【0042】
ポリマーバインダーによっては、50nm乃至1μm又は典型的には50乃至500nmの平均粒径を有するバラバラの粒子として存在する。
【0043】
別のポリマーバインダーは、オンプレスでの現像の可能性を促進するために使用され、限定はされないが、一般に架橋性ではなく分離した粒子(塊になっていない)として通常は存在するものが挙げられる。かかるポリマーは、10乃至500nm、典型的には100乃至450nmの平均粒径を有する分離した粒子として存在することができ、一般にその層内に均一に分布される。この微粒子のポリマーバインダーは、室温では、例えば水性分散液中のバラバラの粒子として存在する。しかしながら、この粒子は、また、例えばコートした画像形成性層の配合物を乾燥するために使用される温度においては部分的に融合又は変形され得る。この環境においてさえも、粒子構造は破壊されない。かかるポリマーバインダーは、ゲル浸透クロマトグラフィにより測定して少なくとも5,000、典型的には少なくとも20,000〜100,000、又は30,000乃至80,000の分子量(Mn)を一般に有する。
【0044】
有用な微粒子ポリマーバインダーとしては、例えば米国特許第6,582,882号(Pappasら)、同第6,899,994号(Huangら)、同第7,005,234号(Hoshiら)及び同第7,368,215号(Munnellyら)、ならびに米国特許出願公開第2005/0003285号(Hayashiら)に記載されているペンダントポリ(アルキレンオキシド)側鎖、シアノ側鎖、又はその両方が結合している疎水性主鎖を有するポリマーのポリマーエマルジョン又は分散液が一般に挙げられる。より具体的には、かかるポリマーバインダーとしては、以下に限定されないが、疎水性及び親水性部分の両方を有するグラフトコポリマー、ポリエチレンオキシド(PEO)部分を有するブロック及びグラフトコポリマー、ペンダントポリ(アルキレンオキシド)部分及びシアノ基の両方を有するポリマー、ならびに様々な親水性基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシ、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチル、スルホノ、又は当技術分野における熟練作業者にはすぐに分かるその他の基を有することができる様々な親水性ポリマーバインダーが挙げられる。
【0045】
別法では、この微粒子ポリマーバインダーは、複数(少なくとも2つ)のウレタン部分を含む主鎖を有することもできる。かかるポリマーバインダーは、動的光散乱により測定して、少なくとも2,000、典型的には少なくとも100,000〜500,000又は100,000乃至300,000の分子量(Mn)を一般に有する。
【0046】
このポリマーバインダーは、放射感受性組成物(及び画像形成性層)中に、該組成物及び層中の全固形分を基準として、少なくとも5重量%、最大で70重量%、典型的には10乃至50重量%の量で一般に存在する。
【0047】
したがって、放射感受性組成物(及び画像形成性層)は、1つ又は複数のフリーラジカル的に重合が可能な成分を含有し、そのそれぞれは、フリーラジカル開始を用いて重合させることができる1つ又は複数のフリーラジカル的に重合が可能な基を含む。例えば、かかるフリーラジカル的に重合が可能な成分は、1つ又は複数の付加重合が可能なエチレン性不飽和基、架橋可能なエチレン性不飽和基、開環重合が可能な基、アジド基、アリールジアゾニウム塩基、アリールジアゾスルホネート基、又はそれらの組合せを有する1つ又は複数のフリーラジカル重合性モノマー又はオリゴマーを含むことができる。同様にかかるフリーラジカル的に重合が可能な基を有する架橋可能なポリマーを使用することもできる。オリゴマー又はプレポリマー、例えば、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレート、ならびに不飽和ポリエステル樹脂等を使用し得る。実施形態によってはフリーラジカル的に重合可能な成分は、カルボキシ基を含む。
【0048】
フリーラジカル的に重合可能な化合物としては、複数の重合可能な基を有する尿素ウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートから誘導されるものが挙げられる。例えば、フリーラジカル的に重合可能な成分は、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくDESMODUR(登録商標)N100脂肪族ポリイソシアネート樹脂(Bayer Corp.、コネチカット州ミルフォード)をヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートと反応させることによって調製することができる。有用なフリーラジカル的に重合可能な化合物としては、Kowa Americanから入手できるNK Ester A-DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、及びSartomer Company, Inc.から入手できるSartomer 399(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、Sartomer 355(ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート)、Sartomer 295(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、及びSartomer 415 [エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート]が挙げられる。
【0049】
多数のその他のフリーラジカル的に重合可能な成分が当業者には知られており、Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists、A Reiser、Wiley、ニューヨーク、1989年、102〜177頁、B.M. MonroeによるRadiation Curing: Science and Technology、S.P. Pappas編、Plenum、ニューヨーク、1992年、399〜440頁、ならびにImaging Processes and Material、J.M. Sturgeら(編者)、Van Nostrand Reinhold、ニューヨーク、1989年、226〜262頁、A.B. Cohen及びP. Walkerによる「Polymer Imaging」を含めた多数の文献に記載されている。例えば、有用なフリーラジカル的に重合可能な成分は、パラグラフ[0170]から始まる欧州特許出願公開第1,182,033号(Fujimakiら)、ならびに米国特許第6,309,792号(Hauckら)、同第6,569,603号(Furukawaら)及び同第6,893,797号(Munnellyら)にも記載されている。その他の有用なフリーラジカル的に重合可能な成分としては、1H-テトラゾール基を含んでいる米国特許出願公開第2009/0142695号(Baumanら)に記載されているものが挙げられる。
【0050】
上記のフリーラジカル的に重合可能な成分に加えて、又はそれらの代わりに、該放射感受性組成物は、主鎖に結合した側鎖を含むポリマー材料を含むことができ、その側鎖としては、開始剤組成物(以下に記載される)によって生成したフリーラジカルに応じて重合(架橋)することができる1つ又は複数のフリーラジカル的に重合可能な基(例えばエチレン性不飽和基等)が挙げられる。1分子当りこれらの側鎖が少なくとも2つ存在し得る。このフリーラジカル的に重合可能な基(又はエチレン性不飽和基)は、ポリマー主鎖に結合している脂肪族又は芳香族アクリレート側鎖の一部であり得る。一般に、1分子当りそのような基が少なくとも2個、最大20個まで存在する。
【0051】
そのようなフリーラジカル的に重合可能なポリマーは、以下に限定されないが、主鎖に直接結合しているか又はフリーラジカル的に重合可能な側鎖以外の側鎖の一部として結合しているカルボキシ、スルホ又はホスホ基を含めた親水性基を含むこともできる。
【0052】
この1つ又は複数のフリーラジカル的に重合可能な成分(モノマー、オリゴマー、又はポリマー)は、該画像形成性層中に、その画像形成性層の全体の乾燥重量を基準として、少なくとも10重量%、最大で80重量%まで、典型的には20乃至50重量%の量で存在することができる。このフリーラジカル的に重合可能な成分対全体のポリマーバインダー(以下に記載)の重量比は、一般に、5:95乃至95:5、典型的には10:90乃至90:10、又は更に30:70乃至70:30である。
【0053】
この放射感受性組成物は、また、該組成物の画像化放射への露光に際してすべての様々なフリーラジカル的に重合可能な成分の重合を開始するのに十分なフリーラジカルを発生することができる1つ又は複数の開始剤を含む開始剤組成物も含む。
【0054】
この放射感受性組成物は、ラジカル重合性成分の重合を開始するのに十分なラジカルを適切な画像化放射にさらした際に発生することができる開始剤組成物を含む。この開始剤組成物は、例えば、700nm乃至1400nm、典型的には700nm乃至1250nmの幅広いスペクトル範囲に相当する赤外線スペクトル領域における電磁放射に対応することができる。別法では、この開始剤組成物は、150乃至475nm、典型的には250乃至450nmの紫外又はバイオレット領域における露光放射に対応することができる。
【0055】
一般に、IR放射及びバイオレット放射感受性組成物に対して適切な開始剤組成物は、芳香族スルホニルハロゲン化物、トリハロゲノメチルスルホン、イミド(N-ベンゾイルオキシフタルイミド等)、ジアゾスルホネート、9,10-ジヒドロアントラセン誘導体、少なくとも2つのカルボキシ基を有しており、その少なくとも1つがアリール部分の窒素、酸素、又は硫黄原子に結合しているN-アリール、S-アリール、又はO-アリールポリカルボン酸(例えば、アニリン二酢酸及びそれの誘導体ならびにWestらの米国特許第5,629,354号に記載されているその他の「共開始剤」等)、オキシムエーテル及びオキシムエステル(例えば、ベンゾインから誘導されたもの等)、α-ヒドロキシ又はα-アミノ-アセトフェノン、トリハロゲノメチル-アリールスルホン、ベンゾインエーテル及びエステル、過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル等)、ヒドロペルオキシド(例えば、クミルヒドロペルオキシド等)、アゾ化合物(例えば、アゾビス-イソブチロニトリル等)、例えば米国特許第4,565,769号(Dueberら)に記載されているような2,4,5-トリアリールイミダゾリル二量体(ヘキサアリールビイミダゾール、又は「HABI」としても知られている)、トリハロメチル置換トリアジン、ホウ素を含む化合物(例えば、テトラアリールボレート及びアルキルトリアリールボレート等)及び有機ホウ酸塩、例えば、米国特許第6,562,543号(Ogataら)に記載されているもの等、ならびにオニウム塩(例えば、アンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、及びN-アルコキシピリジニウム塩等)が挙げられるがこれらに限定されない開始剤を含む。「バイオレット」感受性組成物に対して、開始剤としては、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシムエステル、又はトリハロメチル置換トリアジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
IR放射感受性組成物のための有用な開始剤組成物としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウム、及びホスホニウム化合物を含めたオニウム化合物が挙げられる。有用なヨードニウムカチオンは、非限定で米国特許出願公開第2002/0068241号(Oohashiら)、国際公開第2004/101280号(Munnellyら)、ならびに米国特許第5,086,086号(Brown-Wensleyら)、同第5,965,319号(Kobayashi)、及び同第6,051,366号(Baumannら)を含めて当技術分野では周知である。例えば、有用なヨードニウムカチオンは、正電荷を帯びたヨードニウム、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-部分及び適切な負電荷を帯びた対イオンを含有する。そのようなヨードニウム塩の代表的な例は、Ciba Specialty Chemicals(ニューヨーク州タリタウン)からIrgacure(登録商標)250として入手可能であり、それは、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートであり、75%のプロピレンカーボネート溶液で供給される。
【0057】
したがって、このヨードニウムカチオンは、1つ又は複数のヨードニウム塩の一部として供給することができ、このヨードニウムカチオンは、適当なホウ素を含んだアニオンも含んでいるホウ酸ヨードニウムとして供給し得る。例えば、このヨードニウムカチオン及びホウ素を含んだアニオンは、米国特許第7,524,614号(Taoら)のカラム6〜8に記載されている構造(I)と(II)の組合せである置換又は非置換のジアリールヨードニウム塩の一部として供給し得る。したがって、この開始剤組成物は、テトラフェニルホウ酸塩等のテトラアリールホウ酸塩を含むことができ、実施形態によっては、このテトラアリールホウ酸塩とオニウム塩は、同じ塩であり得る(すなわち、テトラアリールホウ酸カチオン及びヨードニウムアニオン等のオニウムアニオンを有する塩)。
【0058】
有用なIR放射感受性開始剤組成物は、1つ又は複数のジアリールヨードニウムホウ酸塩化合物を含むことができ、そのそれぞれは、次の構造(III):
【0059】
【化1】

【0060】
によって表され、ただし、X及びYは、独立して、ハロ基(例えば、フルオロ、クロロ、又はブロモ)、1〜20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル基(例えば、メチル、クロロメチル、エチル、2-メトキシエチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、t-ブチル、すべての分枝した及び線状のペンチル基、1-エチルペンチル、4-メチルペンチル、すべてのヘキシル異性体、すべてのオクチル異性体、ベンジル、4-メトキシベンジル、p-メチルベンジル、すべてのドデシル異性体、すべてのイコシル異性体、ならびに置換若しくは非置換のモノ-及びポリ-分枝及び線状ハロアルキル)、1〜20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキルオキシ(例えば、置換若しくは非置換のメトキシ、エトキシ、イソ-プロポキシ、t-ブトキシ、(2-ヒドロキシテトラデシル)オキシ、ならびに様々なその他の線状及び分枝アルキレンオキシアルコキシ基)、6〜10個の炭素原子を炭素環式芳香環中に有する置換若しくは非置換のアリール基(例えば、モノ-及びポリハロフェニル及びナフチル基を含めた置換若しくは非置換のフェニル及びナフチル基等)、又は環構造中に3〜8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル基(例えば、置換若しくは非置換のシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、及びシクロオクチル基)である。例えば、X及びYは、独立して、1〜8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル基、1〜8個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、又は環中に5若しくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、より好ましくは、X及びYは、独立して、3〜6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル基(及び特に3〜6個の炭素原子を有する分枝アルキル基)である。したがって、X及びYは、同じか異なる基であり得、その様々なX基は、同じか異なる基であり得、その様々なY基は、同じか異なる基であり得る。「対称の」及び「非対称の」両方のジアリールヨードニウムボレート化合物がこの発明によって想定されているが、「対称の」化合物が、有用である(すなわち、それらは両方のフェニル環に同じ基を有する)。
【0061】
加えて、2つ以上の隣接するX又はY基が組み合わさってそれぞれのフェニル基と縮合した炭素環式又は複素環式の環を形成することができる。
【0062】
そのX及びY基は、フェニル環の任意の位置にあることができるが、一般的にはそれらは2-又は4-位であり、或いは一方又は両方のフェニル環の特に4-位である。
【0063】
どのタイプのX及びY基がヨードニウムカチオン中に存在するかにかかわらず、X及びY置換基中の炭素原子の合計は、6乃至40個であり、好ましくは8乃至40個である。したがって、いくつかの化合物において、1つ又は複数のX基は、6個以上の炭素原子を含むことができ、Yは存在しない(qが0である)。或いは、1つ又は複数のY基は、6個以上の炭素原子を含むことができ、Xは存在しない(pが0である)。更に、X及びYの両方における炭素原子の合計が6個以上である限り、1つ又は複数のX基は、6個未満の炭素原子を含むことができ、1つ又は複数のY基は、6個未満の炭素原子を含むことができる。更に再び、両方のフェニル環には合計6個以上の炭素原子が存在し得る。
【0064】
構造IIIにおいて、p及びqは、p又はqのどちらかが1以上であることを条件として、独立して0又は整数1〜5である。例えば、pとqの両方が1であり得る。したがって、X又はY基によって置換されていないフェニル環中の炭素原子は、これらの環の位置で水素原子を有していることが理解される。
【0065】
Z-は、有機ボレートアニオンであり、下記の構造(IV)によって表される。
【0066】
【化2】

【0067】
ここで、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、1〜12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のフルオロアルキル基以外のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、すべてのペンチル異性体、2-メチルペンチル、すべてのヘキシル異性体、2-エチルヘキシル、すべてのオクチル異性体、2,4,4-トリメチルフェニル、すべてのノニル異性体、すべてのデシル異性体、すべてのウンデシル異性体、すべてのドデシル異性体、メトキシメチル、及びベンジル)、芳香環中に6〜10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素環式アリール基(例えば、フェニル、p-メチルフェニル、2,4-メトキシフェニル、ナフチル、及びペンタフルオロフェニル基等)、2〜12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルケニル基(例えば、エテニル、2-メチルエテニル、アリル、ビニルベンジル、アクリロイル、及びクロトニル基等)、2〜12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキニル基(例えば、エチニル、2-メチルエチニル、及び2,3-プロピニル基等)、環構造中に3〜8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、及びシクロオクチル基等)、又は5〜10個の炭素、酸素、硫黄、及び窒素原子を有する置換若しくは非置換の複素環基(芳香族及び非芳香族基の両方、例えば、置換若しくは非置換のピリジル、ピリミジル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、トレイアゾリル、テトラゾリル、インドリル、キノリニル、オキサジアゾリル、及びベンゾキサゾリル基等を含める)である。或いは、R1、R2、R3、及びR4の2つ以上が結合されて最大7個の炭素、窒素、酸素、又は窒素原子を有する環のようなホウ素原子を有する複素環を形成することができる。
【0068】
例えば、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、上で定義したような置換若しくは非置換のアルキル若しくはアリール基であり、又はR1、R2、R3、及びR4の少なくとも3つが、同じか異なる置換若しくは非置換のアリール基(例えば置換若しくは非置換のフェニル基等)である。実施形態によっては、すべてのR1、R2、R3、及びR4が、同じか異なる置換若しくは非置換のアリール基、又はすべての基が同じ置換若しくは非置換のフェニル基である。例えば、Z-は、フェニル基が置換若しくは非置換であるテトラフェニルボレートである。
【0069】
この発明において有用な代表的なヨードニウムボレート化合物としては、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル)-オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニル-ボレート、4-メチルフェニル-4'-ヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-ヘキシルフェニル-フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-シクロヘキシルフェニルヨードニウムn-ブチルトリフェニルボレート、4-シクロヘキシルフェニル-フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2-メチル-4-t-ブチルフェニル-4'-メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-ペンチルフェニル-ヨードニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、4-メトキシフェニル-4'-シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタ-フルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4'-ドデシルフェニル-ヨードニウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(1-イミダゾリル)ボレートが挙げられるが、これらには限定されない。有用な化合物としては、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-ヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2-メチル-4-t-ブチルフェニル-4'-メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート及び4-メチルフェニル-4'-シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、が挙げられる。これら化合物の2つ以上の混合物を該開始剤組成物中に使用することもできる。
【0070】
このヨードニウムカチオン及びホウ素を含んだアニオンは、該画像形成性層中に該画像形成性層の全体の乾燥重量を基準として、少なくとも1%、最大で15%以下、典型的には、少なくとも4%、最大で10%以下の総量で一般に存在する。
【0071】
実施形態によっては、該放射感受性組成物は、フリーラジカル発生化合物がUV放射(すなわち、少なくとも150nmで最高475nm以下)感受性であるUV増感剤を含んでおり、それによって光重合を促進する。その他の実施形態のいくつかにおいては、該放射感受性組成物は、少なくとも300nmで最高450nm以下の範囲の「バイオレット」放射に感光するようにされる。そのような組成物に対して有用な増感剤としては、いくつかのピリリウム及びチオピリリウム染料ならびに3-ケトクマリンが挙げられる。そのようなスペクトル感度に対して有用ないくつかのその他の有用な増感剤が、例えば、有用なビスオキサゾール誘導体及び類似物を記載している米国特許第6,908,726号(Korionoffら)及び国際公開第2004/074929号(Baumannら)、ならびに米国特許出願公開第2006/0063101号及び同第2006/0234155号(両方ともBaumannら)に記載されている。
【0072】
更にその他の有用な増感剤は、2つのヘテロ原子の間に共役π-システムを提供する適当な芳香族又は複素環式芳香族単位を有する国際公開第2006/053689号(Strehmelら)に定義されている構造(I)単位を有するオリゴマー若しくはポリマー化合物である。
【0073】
さらなる有用な「バイオレット」可視光放射増感剤は、国際公開第2004/074929号(Baumannら)に記載されている化合物である。これらの化合物は、芳香族複素環基と共役している少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むスペーサー部分と接続している同じか異なる芳香族複素環基を含み、上記の出版物の式(I)によってより詳細に表される。
【0074】
多くの実施形態では、画像形成性層は、1つ又は複数の赤外線放射吸収性化合物を含む放射感受性画像形成組成物を一般に含む。有用なIR放射吸収性発色団としては、様々なIR感受性染料(「IR染料」)が挙げられる。望ましい発色団を含んでいる適当なIR染料の例としては、アゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、メロシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン及びビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン色素ならびに先行の染料の種類の任意の置換型又はイオン型が挙げられるがこれらに限定されない。適切な染料は、また、米国特許第4,973,572号(DeBoerら)、同第5,208,135号(Patelら)、同第6,153,356号(Uranoら)、同第6,264,920号(Achilefuら)、同第6,309,792号(Hauckら)、及び同第6,787,281号(Taoら)、ならびに欧州特許出願公開第1,182,033号(Fujimakiら)に記載されている。赤外線放射吸収性N-アルキルサルフェートシアニン染料は、例えば、米国特許第7,018,775号(Tao)に記載されている。適当なシアニン染料の1つの種類の概要が、国際公開第2004/101280号(Munnellyら)のパラグラフ[0026]に化学式によって示されている。
【0075】
低分子量のIR吸収性染料に加え、ポリマーに結合しているIR染料の発色団も同様に使用し得る。更に、IR染料カチオンも同様に使用することができ、すなわち、そのカチオンは、側鎖中にカルボキシ、スルホ、ホスホ又はホスホノ基を含むポリマーとイオン的に相互作用する染料塩のIR吸収部分である。
【0076】
適当な染料は、通常の方法及び出発物質を用いて形成するか、American Dye Source(Baie D'Urfe、カナダケベック州)及びFEW Chemicals(ドイツ)を含めた様々な商業的供給源から得ることができる。
【0077】
いくつかの有用な赤外線放射吸収性染料は、テトラアリールペンタジエン発色団を有する。かかる発色団は、鎖中に5つの炭素原子を有する置換又は非置換のペンタジエン連結基を一般に含み、その連結基のそれぞれの末端に2つの置換又は非置換のアリール基が結合している。
【0078】
有用な赤外線放射吸収性染料は、また、昭和電工(日本)を含めた多数の商業的供給源から得ることができ、又は、それらは公知の出発物質及び手順を用いて調製することができる。
【0079】
更に別の有用な赤外線放射吸収性化合物は、例えば米国特許第7,049,046号(Taoら)に記載されているような、共有結合しているアンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム又はヨードニウムカチオン及び2つ又は4つのスルホネート若しくはサルフェート基を有する赤外線放射吸収性シアニンアニオン或いは赤外線放射吸収性オキソノールアニオンを含むことができるコポリマーである。
【0080】
該赤外線放射吸収性化合物は、IR感受性組成物(又は画像形成性層)中に画像形成性層の全体の乾燥重量にも相当する該組成物中の全固形分を基準として、一般的には少なくとも1%で最大で30%以下、典型的には少なくとも3%で最大で20%以下の量で存在することができる。この目的のために必要となる特定の量は、望ましい発色団を提供するために使用される具体的な化合物に応じて当業者にはすぐに明らかとなろう。
【0081】
有用なIR放射感受性組成物は、例えば、以下の特許、出版物及び同時係属特許出願中に記載されている:
米国特許第7,452,638号(Yuら)、
米国特許出願公開第2008/0254387号(Yuら)、
米国特許出願公開第2008/0299488号(Yuら)、
米国特許出願公開第2008/0311520号(Yuら)、
米国特許出願第12/104,544号(Rayらにより2008年4月17日に出願)、及び
米国特許出願第12/177,208号(Yuらにより2008年7月22日に出願)。
【0082】
したがって、いくつかの特に有用な実施形態としては、赤外線放射吸収性染料及びヨードニウム塩等のオニウム塩を含有するIR放射感受性組成物が挙げられ、そのような実施形態は、ヨードニウムテトラアリールボレートを含有することもできる。
【0083】
該放射感受性組成物(画像形成性層)は、それぞれが一般に200より大きく、典型的には少なくとも300で最大1000以下である分子量を有する1つ又は複数のリン酸(メタ)アクリレートを更に含むことができる。「リン酸(メタ)アクリレート」により、われわれは、「リン酸メタクリレート」及びアクリレート部分の中のビニル基に置換基を有するその他の誘導体も含めるつもりである。そのような化合物及び画像形成性層におけるそれらの使用は、米国特許第7,175,969号(Rayら)により詳細に記載されている。
【0084】
画像形成性層へのさらなる添加剤としては、発色剤又は酸性化合物が挙げられる。発色剤としては、われわれは、例えば米国特許出願公開第2005/0170282号(Innoら)に記載されている単量体のフェノール化合物、有機酸又はそれらの金属塩、オキシ安息香酸エステル、酸性白土、及びその他の化合物が挙げられるつもりである。
【0085】
該画像形成性層は、また、以下に限定されないが、分散剤、保湿剤、殺生剤、可塑剤、被覆性又はその他の特性のための界面活性剤、粘度上昇剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー調整剤又はそれらの組合せ、或いは平版技術で標準的な量で通常使用される任意のその他の添加物を含めた様々な任意選択の化合物を含有することもできる。有用な粘度上昇剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリ(ビニルピロリドン)が挙げられる。
【0086】
画像形成可能な要素
ネガ型の平版印刷版原版は、上記のような放射感受性組成物を適当な基材に適切に塗布して画像形成性層を形成することによって形成することができる。この基材は放射感受性組成物の塗布に先立って以下に記載されているような様々な方法で処理又はコートして親水性を改良することができる。一般的には、存在するのは放射感受性組成物を含む単一の画像形成性層のみであり、要素における最外層である。したがって、この要素は、画像形成性層上に塗布されて配置されている上塗り(又は酸素障壁若しくは酸素不浸透性トップコート)として従来から知られているものを包含していない。この上塗り層は、上記の脱酸素剤が存在するので必要ない。
【0087】
該基材は、親水性表面、又は画像化側に塗布された赤外線放射感受性組成物よりも少なくとも親水性である表面を一般に有する。この基材は、平版印刷版等の画像形成可能な要素を調製するために従来から使用されている任意の材料から構成することができる支持材を含む。それは、通常、シート、フィルム、又はホイル(又はウェブ)の形状をしていて、強くて、安定しており、柔軟で、かつ、使用条件下で寸法変化に対して耐性がある。典型的にはこの支持材は、アルミニウムシートを含めた任意の自己支持型のアルミニウム含有材料であり得る。
【0088】
1つの有用な基材は、物理的(機械的)砂目立て、電気化学的砂目立て又は化学的砂目立てによる通常は酸陽極酸化処理が後に続くいくつかのタイプの粗面化を含めた技術的に既知の技法を用いて処理することができるアルミニウム支持体からなる。該アルミニウム支持材は、物理的又は電気化学的砂目立てによって粗面化し、次いでリン酸又は硫酸及び標準的な手順を用いて陽極酸化処理をすることができる。有用な基材は、平版印刷用の親水性表面を提供する電気化学的に砂目立てしてリン酸陽極酸化処理をしたアルミニウム支持材である。
【0089】
中間層は、アルミニウム支持材を、例えば、ケイ酸塩、デキストリン、フッ化カルシウムジルコニウム、ヘキサフルオロケイ酸、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ[(メタ)アクリル酸]、ポリ(アクリル酸)又はアクリル酸コポリマーで処理して親水性を増すことによって形成することができる。なおも更に、このアルミニウム支持材は、無機フッ化物を更に含んでいてもよいリン酸塩溶液(PF)により処理することができる。このアルミニウム支持材は、表面の親水性を改良するために、既知の手順を用いて、電気化学的に砂目立てし、リン酸陽極酸化し、ポリ(アクリル酸)により処理することができる。
【0090】
該基材の厚さは、変化させることができるが、印刷による磨耗に耐えるのに十分であり、版胴に巻きつけるのに十分な薄さでなくてはならない。有用な実施形態としては、少なくとも100μmで最大で700μm以下の厚さを有する処理したアルミニウムホイルが挙げられる。この基材は、また、上部に塗布された放射感受性組成物を有するシリンダー状のアルミニウム表面、それ故、印刷機の一体部分でもあり得る。そのような画像化シリンダーの使用は、例えば、米国特許第5,713,287号(Gelbart)に記載されている。
【0091】
該放射感受性組成物は、任意の適切な装置及び手順、例えば、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出機ホッパーコーティング等を用いてコーティング液状態の溶液又は分散液として基材に塗布することができる。この組成物は、また、適切な支持材(例えばオンプレス印刷シリンダー等)に吹き付けることによって塗布することもできる。一般的には、この放射感受性組成物は、塗布及び乾燥して画像形成可能な最外層を形成する。
【0092】
上記の製造方法の例は、適切な有機溶媒又はそれらの混合物[例えば、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、メタノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、γ-ブチロラクトン、n-プロパノール、テトラヒドロフラン、及び技術的に簡単に知られるその他のものならびにそれらの混合物]中で、脱酸素剤、ポリマーバインダー、開始剤組成物、放射吸収性化合物及び放射感受性組成物の任意のその他の成分を含めた特定の画像化化学反応のために必要な様々な成分を混合すること、得られた溶液を基材に塗布すること、及びその溶媒を適切な乾燥条件下での蒸発によって除去することである。いくつかの代表的なコーティング溶媒及び画像形成性層の配合が以下の実施例に記載されている。適切な乾燥の後、該画像形成性層のコーティング重量は、一般に、少なくとも0.1g/m2、最大で5g/m2以下、又は少なくとも0.5g/m2、最大で3.5g/m2以下である。
【0093】
画像形成性層の下には、現像性を高めるため又は熱絶縁層として作用するための層を存在させることもできる。
【0094】
様々な層が基材に一旦塗布されて乾燥すると、米国特許第7,175,969号(上記)に記載されているように、そのネガ型の画像形成可能な要素は、その要素を往復する水分の移動を実質的に防ぐ水不浸透性材料中に閉じ込められ、「熱調整され」得る。
【0095】
画像化条件
使用中、該画像形成可能な要素は、放射感受性組成物中に存在する放射吸収性化合物に応じて、露光用放射の適切な光源にさらされて、150乃至475nm又は700乃至1400nmの波長である特定の感受性をもたらす。例えば、画像化は、波長が少なくとも750nmで最大で1400nm以下、典型的には少なくとも700nmで最大で1200nm以下の赤外線レーザー(又はレーザーのアレー)からのような画像化用又は露光用放射を用いて行うことができる。画像化は、必要に応じて複数の波長の画像化用放射を同時に用いて行うことができる。
【0096】
該画像形成可能な要素を露光するために使用されるレーザーは、ダイオードレーザーシステムが、信頼性があり低保守であるために、通常はダイオードレーザーであるが、その他のレーザー、例えば、ガス又は固体レーザーも使用することができる。レーザー画像化に対する出力、強度及び露光時間の組合せは、当業者にはすぐに分かることであろう。現在、市販のイメージセッターに使用されている高性能のレーザー又はレーザーダイオードは、少なくとも800nmで最大で850nm以下又は少なくとも1060nmで最大で1120nmの波長の赤外線放射を放出する。
【0097】
該画像化装置は、ドラムの内側又は外側柱面に据え付けられた画像形成可能な部材を有する平台型の記録器又はドラム型記録器として構成することができる。有用な画像化装置の例は、近赤外放射を830nmの波長で放出するレーザーダイオードを含むEastman Kodak Companyから市販されているKodak(登録商標)Trendsetterプレートセッターをモデルとして利用できる。その他の適当な画像化ソースとしては、1064nmの波長で作動するCrescent 42Tプレートセッター(イリノイ州シカゴのGerber Scientificから入手可能)及びScreen PlateRite 4300シリーズ又は8600シリーズのプレートセッター(イリノイ州シカゴのScreenから入手可能)が挙げられる。
【0098】
赤外線放射による画像化は、画像形成性層の感度に応じて、少なくとも30mJ/cm2で最大500mJ/cm2以下、典型的には少なくとも50mJ/cm2で最大300mJ/cm2以下の画像化エネルギーで一般に実施することができる。
【0099】
有用なUV及び「バイオレット」画像形成装置としては、Prosetter(Heidelberger Druckmaschinen、独国、から)、Luxel V-8(FUJI、日本、から)、Python(Highwater、英国)、MakoNews、Mako2、Mako4若しくはMako8(ECRM、米国、から)、Micra(Screen、日本、から)、Polaris and Advantage(AGFA、ベルギー、から)、Laserjet(Krause、独国、から)及びAndromeda(登録商標)A750M(Lithotech、独国)、イメージセッターが挙げられる。
【0100】
スペクトルのUVから可視領域、そして特にUV領域(例えば、少なくとも150nm、最大で475nm以下)での画像形成放射は、通常は、少なくとも0.01mJ/cm2、最大で0.5mJ/cm2以下、そして典型的には少なくとも0.02、最大で0.1mJ/cm2以下のエネルギーを用いて行うことができる。例えば、UV/可視輻射線感受性画像形成性要素を、エネルギー源(バイオレットレーザー又はエキシマー源)によって、少なくとも0.5、最大で50kW/cm2以下、そして典型的には少なくとも5、最大で30kW/cm2以下の範囲の出力密度で画像形成することが望ましいであろう。
【0101】
本発明の実施においてレーザー画像化が望ましいが、熱画像形成は、熱エネルギーを画像様のやり方で与えるいずれかの他の方法によっても提供することができる。例えば、画像化は、例えば米国特許第5,488,025号(Martinら)に記載されている、「サーマル印刷」として知られているものにおいて用いられているように、耐熱ヘッド(サーマル印刷ヘッド)を用いて、行うことができる。サーマル印刷ヘッドは、商業的に入手可能である(例えば、FujitsuサーマルヘッドFTP-040 MCSOOl及びTDKサーマルヘッドF415 HH7-1089)。
【0102】
多くの既知の方法とは異なり、ネガ型画像形成可能な要素の画像化後、現像前の潜像の形成を促進するために、「予備加熱」又はベーキングの工程は必要としない。
【0103】
加えて、トップコートがないため、画像化と現像との間にプレリンスを必要としない。
【0104】
現像及び印刷
画像化後、その画像化された要素は、本明細書に記載されている適切な処理溶液を用いて「オフプレス」で処理することができる。そのような処理は、画像化された画像形成性層の非露光領域のみを主として除去するのに十分な時間行って基材の親水性表面をあらわにするが、露光領域の相当量を除去するのに足りるほど長くはない時間行われる。あらわにされた親水性表面は、インクを弾き、一方、露光領域はインクを受け入れる。したがって、除去されるべきその非露光領域は、それらが留まるべき領域よりもより容易にその処理溶液中に除去、溶解、又は分散されるために、その中に「可溶性」か又は「移動性」である。用語の「可溶性」は、「分散性」も意味する。
【0105】
現像は、「マニュアル」現像、「ディップ」現像として知られるものを用いるか、又は自動現像装置(プロセッサー)による処理によって達成することができる。「マニュアル」現像の場合、現像は、画像化した要素全体を適当な現像液(以下に記載)を十分に含浸させたスポンジ又は綿パッドによりこすり、続いて水ですすぐことによって行う。「ディップ」現像は、画像化した要素を、適当な現像液を含んでいるタンク又はトレー中に撹拌下で10〜60秒(特に20乃至40秒)間浸漬し、続いてスポンジ又は綿パッドによるこすりあり又はなしで、水ですすぐことを含む。自動現像装置の使用はよく知られており、一般に、現像液又は処理溶液を現像タンク中にポンプで注ぎ込むかスプレーノズルからそれを噴出することを含む。画像化した要素は、適当なやり方で現像液と接触させる。その装置は、また、適当な摩擦機械(例えば、ブラシ又はローラー)及び適切な数の輸送ローラーを含有することができる。現像装置によっては、レーザー露光手段を含み、その装置は画像化区域と現像区域とに分割される。
【0106】
現像液又は処理溶液は、通常、界面活性剤、キレート剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸の塩等)、有機溶媒(例えばベンジルアルコール等)、及びアルカリ成分(例えば、水酸化物、重炭酸塩、ホスフェート、及び有機アミン等)を含む。該現像液のpHは、一般に6より大きく、最大14までであり、少なくとも7、最大で12までである。画像化した要素は、一般に、通常の処理条件を用いて現像される。水性アルカリ現像液及び有機溶媒を含んでいる現像液の両方が使用され得る。
【0107】
有機溶媒を含んでいる現像液は、一般に、水と混和性である1つ又は複数の有機溶媒の単相の処理溶液である。有用な有機溶媒としては、フェノールのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの反応生成物[例えば、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)等]、ベンジルアルコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの6個以下の炭素原子を有する酸とのエステル、ならびにエチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールの6個以下の炭素原子を有するアルキル基とのエーテル、例えば2-エチルエタノール及び2-ブトキシエタノール等が挙げられる。該有機溶媒は、全体の現像液重量を基準として、0.5乃至最大で15%の量で一般に存在する。この有機溶媒を含んでいる現像液は、pHが、中性、アルカリ性又はわずかに酸性であり得、好ましくは、それらはpHがアルカリ性である。
【0108】
代表的な溶媒系現像液としては、ND-1 Developer、Developer 980、Developer 1080、2 in 1 Developer、955 Developer、D29 Developer(以下に記載)及び956 Developer(すべてEastman Kodak Companyから入手可能)が挙げられる。これらの現像液は、必要に応じて水で希釈できる。
【0109】
場合によっては、単一の処理溶液が、画像化した要素を主に非露光領域を除去することによって現像し、また、保護層又はコーティングを画像化し、そして現像した全体の外側表面に提供する両方のために使用される。この態様において、その処理溶液は、印刷版上の平版画像を汚染又は損傷(例えば、酸化、指紋、埃又は引っ掻きによる)に対して保護することができるガムにやや似たように作用することができる。そのような処理溶液は、例えば、同時係属で同一出願人による米国特許出願公開第2009/0263746号(K. Rayら)に記載されている。かかる処理溶液は、適当な量の酸又は塩基を用いて調整されて、2より大きく最大11まで、典型的には6乃至11又は6乃至10.5のpHを一般に有する。それらは、任意選択の成分(例えば非イオン界面活性剤等)が必要に応じて存在してもよいが、1つ又は複数のアニオン界面活性剤を一般に含む。有用なアニオン界面活性剤としては、カルボン酸、スルホン酸、又はホスホン酸基(又はそれらの塩)を有するものが挙げられる。スルホン酸(又はその塩)基を有するアニオン界面活性剤が、特に有用である。例えばそのようなアニオン界面活性剤としては、脂肪酸の塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホネート、アルカンスルホネート、ジアルキルスルホスクシネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、分岐アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテルの塩、ナトリウムN-メチル-N-オレイルタウレート、モノアミドジナトリウムN-アルキルスルホスクシネート、石油スルホネート、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪族アルキルエステルの硫酸エステルの塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル、脂肪族モノグリセリドの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硝酸エステルの塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、アルキルリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステルの塩、スチレン無水マレイン酸コポリマーの部分的に鹸化された化合物、オレフィン無水マレイン酸コポリマーの部分的に鹸化された化合物及びナフタレンスルホネートホルマリン縮合物を挙げることができる。アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(例えば、ドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム等)、アルキル化ナフタレンスルホン酸、スルホン化アルキルジフェニルオキシド及びメチレンジナフタレンスルホン酸が、主要なアニオン界面活性剤として特に有用である。かような界面活性剤は、McCutcheon's Emulsifiers & Detergents、2007年版に記載されているような様々な供給業者から入手することができる。
【0110】
1つ又は複数のアニオン界面活性剤が、少なくとも1重量%、典型的には5重量%から、又は8重量%から、最大で45重量%まで又は最大で30重量%まで(固形分%)の量で一般に存在できる。実施形態によっては、1つ又は複数のアニオン界面活性剤が、8乃至20重量%の量で存在することができる。
【0111】
該処理溶液(又は現像液)は、画像化した要素に、ラビングするか、吹き付けるか、噴射するか、浸漬するか、スロットダイコートするか(例えば、Maruyamaらの米国特許第6,478,483号の図1及び2を参照)又はリバースロールコートするか(Kuruiらの米国特許第5,887,214号の図4に記載されているように)、或いはその外層を処理溶液でワイピングするか又はそれをローラー、含浸させたパッド、又はガムを含んでいる塗布器と接触させることによって塗布することができる。例えば、画像化された要素は、処理溶液と共にブラシがけすることができ、又はそれは、例えば欧州特許出願公開第1,788,431号(上記)の[0124]及び米国特許第6,992,688号(Shimazuら)に記載されているようなスプレーノズルシステムを用いて十分な力で吹き付けることによって画像化面に浴びせかけ又は適用して非露光領域を除去することができる。上記のように、この画像化された要素は、処理溶液中に浸漬して手によるか又は器具によりラビングすることができる。
【0112】
この処理溶液は、また、その処理溶液が塗布されると同時に画像化された要素をラビング又はブラッシングするための少なくとも1つのローラーを有する適当な装置中の処理ユニット(又はステーション)中で塗布することもできる。かかる処理ユニットを使用することによって、画像化された層の非露光領域をより完全にそして迅速に基材から除去することができる。残りの処理溶液は、除去してよく(例えばスキージ又はニップローラーを使って)、又は得られた印刷版上にすすぎの工程なしで残してもよい。過剰の処理溶液は、タンクに集めて数回使用することができ、必要に応じて貯留容器から補充することができる。その処理溶液補給液は処理で使用されるものと同じ濃度のものであっても、或いは、濃縮形態で供給されて適切な倍率の水で希釈してもよい。
【0113】
オフプレス現像に続いて、その得られた平版印刷版は、UV又は可視光放射へのブランケット露光又はフラッド様露光あり又はなしでポストベークすることができる。或いは、ブランケットUV又は可視光放射への露光は、ポストベーク作業なしで行うことができる。
【0114】
印刷は、平版印刷インクと湿し水を、画像化され現像された要素の印刷面に適用することにより行うことができる。湿し水は、非画像化領域、すなわち画像形成及び処理工程により露出した親水性基材の表面によって取り込まれ、インクは、画像化層の画像化(非除去)領域によって取り込まれる。そのインクは、次に、適切な受容材料(例えば、布地、紙、金属、ガラス又はプラスチック)に転写され、これら材料上に望ましい刷り上がりの画像をもたらす。必要に応じて、中間の「ブランケット」ローラーを使用して、インクを、画像形成された部材から受容材料に転写することができる。画像形成された部材は、印刷の合間に、必要に応じて、従来のクリーニング手段を使用して洗浄することができる。
【0115】
この発明で使用されるいくつかの画像形成可能な要素は、特にその要素がポリマーバインダーをその画像形成性層中にバラバラの粒子の形で含んでいるとき、「オンプレスで」現像可能である。その画像化された要素は、画像形成性層内の非露光領域が、初期の印圧が加えられるときに、適当な湿し水、平版印刷インク又はその両方の組合せによって除去される工程Bの後に、印刷機に直接取り付けられる。典型的な水性の湿し液の成分としては、pH緩衝剤、減感剤、界面活性剤及び湿潤剤、保湿剤、低沸点溶剤、殺生剤、消泡剤及び金属イオン封鎖剤が挙げられる。湿し水の代表例は、Varn Litho Etch 142W+Varn PAR(アルコール代替物)(イリノイ州アディソンのVarn Internationalから入手可能)である。
【0116】
本発明は、少なくとも次の実施形態及びそれらの組合せを提供する:
1. 基材を含み、その上に最外層としてのネガ型画像形成性層を有するネガ型平版印刷版原版であって、前記画像形成性層が、
a) ポリマーバインダー、
b) フリーラジカル重合性成分、
c) 画像化放射への露光に際してフリーラジカルを提供する開始剤組成物、及び
d) 下の構造(I)又は構造(II):
HOOC-Ar-N(R1)(R2) (I)
HOOC-R5-N(R6)(R7) (II)
によって表され、上式中、Arがフェニレン又はナフタレン基であり、R1及びR2が独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、フェノキシ、-R5OH、-CH2-C(=O)-R3、又はCH2-C(=O)O-R4基であり、R3が水素或いはアルキル又はフェニル基であり、R4がアルキル又はフェニル基であり、R5がアルキレン基であり、R6及びR7が独立して水素或いはアルキル、-R5OH、-R5C(=O)-R8、又はR5C(=O)OR9基であり、R8が水素又はアルキル基であり、Rがアルキル基である、脱酸素剤及び保存寿命安定化剤であって、
前記脱酸素剤が1以下のカルボキシル基を有することを条件とする脱酸素剤及び保存寿命安定化剤。
2. Arがフェニレンであり、R1及びR2が独立して1〜4個の炭素原子を有する非置換のアルキル又はヒドロキシアルキルであり、R5が1〜4個の炭素原子を有するアルキレンであり、R6及びR7が独立して水素或いは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はR5OH基であり、ただしR5が1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基である実施形態1の平版印刷版原版。
3. R1及びR2が独立して1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R5が1個又は2個の炭素原子を有するアルキレンであり、R6及びR7が独立して-R5OH基であり、ただしR5が1個又は2個の炭素原子を有するアルキレン基である実施形態1又は2の平版印刷版原版。
4. 脱酸素剤が、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸、4-(N,N-ジエチルアミノ)安息香酸、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]安息香酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、N,N-ジヒドロキシメチルグリシン、又はそれらの混合物である実施形態1から3までのいずれかの平版印刷版原版。
5. 脱酸素剤が、0.1乃至20重量%の量で存在する実施形態1から4までのいずれかの平版印刷版原版。
6. 脱酸素剤が、1乃至7重量%の量で存在する実施形態1から5までのいずれかの平版印刷版原版。
7. ポリマーバインダーが、50nm乃至1μmの平均粒径を有するバラバラの粒子として存在する実施形態1から6までのいずれかの平版印刷版原版。
8. 開始剤組成物が、オニウム塩及び赤外線放射吸収性化合物を含む実施形態1から7までのいずれかの平版印刷版原版。
9. 赤外線放射吸収性化合物が、赤外線放射吸収性染料である実施形態8の平版印刷版原版。
10. 開始剤組成物が、テトラアリールホウ酸塩を更に含む実施形態8の平版印刷版原版。
11. テトラアリールホウ酸塩及びオニウム塩が同じ塩を形成する実施形態10の平版印刷版原版。
12. 支持体がアルミニウムを含んでいる支持体である実施形態1から11までのいずれかの平版印刷版原版。
13. 750乃至1400nmの波長を有する放射に感受性がある実施形態1から12までのいずれかの平版印刷版原版。
14. 平版印刷版を提供する方法であって、
A) 実施形態1から13までのいずれかの平版印刷版原版を画像様露光して露光した及び非露光領域を提供する工程と、
B) ベーキング工程なしで、前記画像様露光した原版を現像して非露光領域を除去する工程と
を含む方法。
15. 平版印刷版原版が、750〜1250nmで画像化放射を提供するレーザーを用いて画像様露光される実施形態14の方法。
16. 現像工程が、9乃至14のpHを有する処理溶液を用いて行われる実施形態14又は15の方法。
17. 現像工程が、少なくとも7で最高で12までのpHを有する処理溶液を用いて行われる実施形態14から16までのいずれかの方法。
18. 平版印刷版原版が、1乃至7重量%の量で存在する4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸、4-(N,N-ジエチルアミノ)安息香酸、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]安息香酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、N,N-ジヒドロキシメチルグリシン、又はそれらの混合物である脱酸素剤を含む実施形態14から17までのいずれかの方法であって、
赤外線放射吸収性化合物が、赤外線放射吸収性染料であり、開始剤組成物が同じ塩を形成するテトラアリールホウ酸塩及びオニウム塩を更に含む上記方法。
19. 実施形態14から18のいずれかの方法から得られる平版印刷版。
【0117】
以下の実施例は、この発明の実地を説明するために提供され、いかなる方法によっても限定することを意味するものではない。
【0118】
(実施例)
(比較例1)
ポリマーAを含むラテックス合成:
64.8gの脱イオン水及び241.4gのn-プロパノールの混合物に溶解したポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート[40g、PEGMA-50%水溶液(Aldrichから入手可)]溶液を、1000mlの四つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下でゆっくり加熱して76℃でわずかに還流させた。20.0gのスチレン、60.0gのアクリロニトリル、及び0.7gのアゾイソブチロニトリル(Vazo-64、Dupont de Nemours Coから)の予混合物を2時間かけて加えた。6時間後、別の0.35gのアゾイソブチロニトリル(Vazo-64)をその反応混合物に加えた。反応温度をそのとき80℃に上げた。3時間後、0.35gのVazo-64を追加し、反応の19時間後、グラフトコポリマーへの転化は、不揮発分パーセントの測定に基づいて95%を超えていることが分かった。得られたポリマーラテックスは、ポリマーAが基本的にすべてのラテックス中の固体成分を表す以下の実施例における画像形成性層のコーティング配合物の調製において直接使用される。PEGMA/スチレン/アクリロニトリルの重量比は、ポリマーA中で20:20:60であり、それはn-プロパノール/水(比率は76:24である)中、23.8%固形分で存在した。ラテックスの粒径及び分布は、Microtrac Ultrafine Particle Analyzer UPA 150及び動的光散乱を用いて測定した。そのラテックス粒子の平均粒径は、295nmであり、その粒子の90%は、400nmより小さい直径を有した。
【0119】
版コーティング及び評価:
コーティング溶液を下のTABLE I(表1)に示されている組成により製造した。この配合は、この発明による構造(I)又は(II)の安定化化合物を含んでいない。このコーティング溶液は、水:フェノキシエタノール:Dowanol(登録商標)PM:MEK(メチルエチルケトン)(22:0.3:9.2:68.5重量比)中8%固形分で作製し、ポリ(ビニルホスホン酸)後陽極酸化処理により処理されている硫酸陽極酸化処理したアルミニウム基材上にワイヤ巻きロッドにより塗布した。その印刷版原版は、110℃で1分間乾燥した。その画像形成性層の乾燥コーティング重量は1.65g/m2であった。1つの印刷版原版はコーティング直後の新鮮なときに評価し、他の印刷版原版は48℃の乾燥条件下又は40℃で80%の相対湿度(RH)の高温多湿の条件下で5日間エージング後評価した。
【0120】
すべての印刷版原版は、13ワットの出力で40mJ/cm2乃至150mJ/cm2の一連の露光エネルギーを有するKodak 3244xプレートセッター上で画像化した。その画像化された原版は、NE-34プロセッサー中、市販の現像液のSWD1現像液(Kodak Graphics Communications、日本、から)の1+3の希釈(その初期強度の25%)中で5フィート/分(1.5m/分)及び23℃で現像した。そのベタ画像の光学密度(OD)を、シアンフィルターを取り付けたX-Riteスペクトロデンシトメーターモデル500を用いて測定した。そのODを、次に、露光エネルギーに対してプロットした。そのOD-エネルギー曲線が勾配を変化させて水平に達した点がその印刷版原版の感度であると見なした。
【0121】
新たにコートした原版及び高湿度条件下でエージングした原版は、60mJ/cm2の感度を有したが、乾燥条件下でエージングした原版は、90mJ/cm2のより低い感度(より高い画像化エネルギー)を有しており、一部の領域でプロセッサー中のブラシにより触れられないコーティングの保持を示した(TABLE II(表2)参照)。その原版は、また、市販のScotch(登録商標)ブランドのテープの一片を50%スクリーンの領域に注意深く押し当てて取り込まれていた空気を除去することによって貼り付け、次いでそのテープを一回の素早い動きで引き離す接着試験にかけた。そのスクリーンはチッピングについて観察し、テープは、引き離された材料について観察した。乾燥状態でエージングした原版のコーティングは、低い感度を示したばかりでなく、脆性挙動及び粘着テープにより試験したとき接着ロス(50%スクリーンのチッピング)を示した。乾燥条件下でエージングした原版は、また、30%〜99%のスクリーンでかなりの範囲のコーティングロスを有した。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
(比較例2)
コーティング溶液を下のTABLE III(表3)に示されているコーティング配合により作製した。この配合には、本発明による脱酸素剤化合物を含んでいない。このコーティング配合物は、水:IPA:MEK(10:20:70重量比)中8%固形分で作製した。その配合物を次に比較例1におけるのと同様に処理した硫酸陽極酸化処理したアルミニウム基材にスロットダイを用いてコートした。得られた平版印刷版原版は、110℃で1分間乾燥した。その印刷版原版は、比較例1におけると同様に、コーティング直後の新鮮なときならびに乾燥した及び高湿度条件下で5日間エージングした後評価した。それら原版は、Kodak(登録商標)3244xプレートセッターを用いて40mJ/cm2と150mJ/cm2の間の一連の露光エネルギーにより画像化した。その画像化された原版は、NE-34プロセッサー中、SWD1現像液の1+2の希釈(その初期強度の33%)中で5フィート/分(1.5m/分)及び23℃で現像し、その感度を比較例1におけるのと同様に評価した。新鮮な原版及び高湿度でエージングした原版は、60mJ/cm2の感度を有し、乾燥状態でエージングした原版は90mJ/cm2の感度を有した(下のTABLE IV(表4)参照)。乾燥状態でエージングした原版は、比較例1で観察されたと同様に脆いようであった。
【0125】
その平版印刷版を、次に、Miehle印刷機に取り付け、タルク、OS Kodak #9を含む磨耗性インク及びDay International Inc.からのPARファウンテン濃縮物(fountain concentrate)及びSupreme Font 6038をそれぞれ4オンス/水1ガロン(30g/1リットル)混合することによって製造した湿し水により印刷するために使用した。何らかの磨耗の兆候が見られる前に、新たにコートした印刷版は、25,000通しを印刷し、高湿度でエージングした印刷版を使用して35,000通しを印刷し、乾燥状態でエージングした印刷版を使用して10,000通しを印刷した。
【0126】
その印刷版は、また、Allied Pressroom ChemicalsからのUVプレートクリーナーに対する耐薬品性についても試験した。画像の隅が、5,000通しの後UVウォッシュにより拭われ、画像の侵蝕が示された。その印刷版は、また、Kodakからのプレートクリーナー/プリザーバAqua Imageによりそれらを洗浄して一晩保存することによっても影響を受ける。その印刷版が、印刷部数の少ないときに洗浄され、次いで翌日まで保存された場合、印刷の耐久性が低下した。例えば、新しい印刷版が5,000通しの後に洗浄され、次いで一晩保存された場合、耐久性は、25,000から15,000通しまで低下した。
【0127】
【表3】

【0128】
【表4】

【0129】
(比較例3)
この例においては、既知の溶解促進剤及びエージング安定剤の、米国特許出願公開第2009/0111051号(Taoら)に記載されているポリエチレングリコール二酸(Sigma Aldrichから)を、よりよい現像を得ることを期待してポリマー及びモノマーを犠牲にして5%のレベルでTABLE I(表1)に示されている配合1に加えた(下のTABLE V(表5)参照)。溶解促進剤は、コーティング組成物に加えたとき水性現像液中で現像性を加速することができる極性基を含んでいる化合物である。955現像液が処理のために使用されたこと以外は、すべての原版製造条件及び処理は比較例1と全く同じであった。
【0130】
【表5】

【0131】
下のTABLE VI(表6)は、印刷版原版の感度を示している。溶解促進剤ポリエチレングリコール二酸の存在は、版の画像化エネルギーを増し(感度を低下し)、特に乾燥状態でエージングした原版のそれは、90mJ/cm2から110mJ/cm2まで増加させた。乾燥状態でエージングした原版のコーティングもまた脆いままであった。したがって、ポリエチレングリコール二酸の使用は、乾燥状態でエージングした後の低目の感度及びコーティングの脆さの問題を解決しなかった。それどころか、それは更に、感度を低下し、接着ロスを引き起こし、粘着性を導いた。
【0132】
【表6】

【0133】
(比較例4)
既知の溶解促進剤(Aldrich Chemicalから入手)を下のTABLE VII(表7)に示されているように5%のレベルで試験した。そのコーティング溶液は、BLO(γ-ブチロラクトン):水:PGME:MEK(10:20:19:51重量比)中8%固形分で作製した。その原版の作製及び処理条件は、955現像液を使用したこと以外、比較例1のそれと同様であった。その結果を下のTABLE VIII(表8)に示す。
【0134】
【表7】

【0135】
【表8】

【0136】
溶解促進剤、4,4'-ジフタル酸無水物及びピロメリット酸二無水物は、感度を許容できない水準(110mJ/cm2以上)まで低下した。溶解促進剤、N,N-アニリノ二酢酸(ADAA)、及びN-フェニルグリシンは、乾燥状態及び高湿度でのエージングの後のコーティング残留を与えた。
【0137】
(比較例5)
この例では、米国特許出願公開第2009/0111051号(上記)に記載されている脱酸素剤N,N'-エチレン尿素(2-メチルイミダゾリドン)及びN,N'-トリメチレン尿素(テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン)を使用した。顔料濃縮物を、Hostaperm Green GG-01(Hoechst Celanese Corp.)から調製した。その顔料濃縮物は、顔料:Dysperbyk(登録商標)191:フェノキシエタノール:PGME:水(10:2:8:26:54重量比)の組成を有した。配合5A、5B、及び5C(下のTABLE IX(表9))を有するコーティング配合物を、水:フェノキシエタノール:Dowanol(登録商標)PM:MEK(22:0.3:9.2:68.5重量%)の溶媒混合物中8%固形分で作製した。該印刷版原版は、処理のために現像液SWD1の1+1(初期強度の50%)を使用したこと以外比較例1に記載の手順に従って作製及び評価した。
【0138】
【表9】

【0139】
脱酸素剤を有する配合5B及び5Cを、脱酸素剤のない配合5Aと比較した(下のTABLE X(表10)参照)。脱酸素剤N,N'-エチレン尿素及びN,N'-トリメチレン尿素は、乾燥状態及び高湿度でのエージングの後の画像原版現像性を悪化した。
【0140】
【表10】

【0141】
(発明実施例1)
この例は、この発明による脱酸素剤としての(ジメチルアミノ)安息香酸(DMABA、Alpha Aesar)の使用が、比較例1に記載されている乾燥状態でエージングした版の低い感度、脆性及びコーティング残留の問題を、同時に感度を改善しながらいかに解決したかを示している。
【0142】
Paliogen Blue L 6482(BASFから)の顔料濃縮物を、顔料:Dysperbyk(登録商標)191:フェノキシエタノール:Dowanol(登録商標)PM:水(10:2:8:30:50重量%)の組成を有するように調製した。
【0143】
TABLE XI(表11)中の2つのコーティング配合1A及び1Bを、5%のDMABA添加剤なし及びありで調製した。そのコーティング配合物は、水:フェノキシエタノール: Dowanol(登録商標)PM:MEK(22:0.3:9.2:68.5重量%)の溶媒混合物中8%固形分で作製した。
【0144】
PVPA後陽極酸化処理されている硫酸陽極酸化処理したアルミニウム版を、スロットダイを用いてコートした。その印刷版原版は、それらを230°F(110°C)のコンベアベルトオーブン中を1分間通過させることによって乾燥した。そのコーティング重量は、1.65g/m2と測定された。この原版は、コーティング後新鮮なものと48℃及び40°C/80%RHの乾燥及び高湿度条件下でそれぞれ5日間エージング後のものを評価した。その原版は、感度を測定するために40〜150mJ/cm2の間の一連の露光エネルギーを有するKodak(登録商標)3244xプレートセッターを用いて画像化した。その画像化された原版は、現像液濃縮液、SWD1現像液を用いて、NE-34プロセッサー中、1+3の希釈(その初期強度の25%)中で、23℃及び5フィート/分(1.5m/分)の速度で現像した。様々なエネルギーのストリップの測定された光学密度(OD)をエネルギーに対してプロットし、その版の感度は、この曲線がその水平状態を得るエネルギーとして測定した。新鮮な及びエージングした比較例1の原版(DMABAなし)の感度が、下のTABLE XI(表11)に、5%のDMABAを含んでいる発明実施例1の原版に対する結果と比較して与えられている。本発明の新鮮な版ならびに乾燥及び高湿度条件で5日間エージングした版は、60mJ/cm2の感度を有した。乾燥版の接着は、上記の粘着テープ試験により測定され、新鮮なものと高湿度で試験した版が同等であった。比較すると、比較例1のDMABAなしの乾燥原版は、低目の感度90mJ/cm2を有し、脆さ、スクリーン詰まり、及び接着ロスを示した。
【0145】
【表11】

【0146】
【表12】

【0147】
(発明実施例2)
2つのコーティング溶液をDMABAあり及びなしで、下のTABLE XIII(表13)に示されている化合物を用いて作製した。コーティング配合物は、水:IPA:MEK(10:20:70重量%)中8%固形分で作製した。その配合物は、硫酸陽極酸化処理したアルミニウム基材(PVPAによる仕上げ)にスロットダイによりコートし、110℃で1分乾燥した。得られた印刷版原版は、乾燥及び高湿度条件下で5日間、それぞれ48℃及び40°C/80%RHでエージングした。新鮮な版及びエージングした版を、40mJ/cm2と150mJ/cm2の間の露光のシリーズを用いて画像化した。その画像化された原版は、NE-34プロセッサー中、SWD1現像液の1+2の希釈(その初期強度の33%)中で5フィート/分(1.5m/分)及び23℃で現像し、その感度を比較例1におけるのと同様に評価した。
【0148】
【表13】

【0149】
配合6A及び6Bにより作製した印刷版原版は、110mJ/cm2で画像化し、上記のように現像し、Miehle印刷機に取り付けた。その印刷版を、タルク、OS Kodak #9を含む磨耗性インク及びDay International Inc.からのPARファウンテン濃縮物及びSupreme Font 6038をそれぞれ4オンス/水1ガロン(30g/1リットル)混合することによって製造した湿し水により印刷するために使用した。5%DMABA脱酸素剤と共に配合6Bから新たに調製されるか又は乾燥及び高湿度条件下でエージングされるかして作製された印刷版原版は、ベタ画像中に何らかの磨耗の兆候が見られる前に45,000枚を印刷した。シアンフィルターを装着したX-riteスペクトロデンシトメーターモデル500により測定した2%〜50%スクリーンのドット密度は、35,000枚印刷されるまで、10%以内で安定したままであり、その後ドット密度は急速に低下した。
【0150】
配合6Bにより作製された印刷版は、Allied Pressroom ChemicalsからのUVプレートクリーナーに対する耐薬品性を有した。各5,000通しした後、画像の隅をUVクリーナーで拭い、それによって35,000通しの後まで、印刷にどのようなマークも示さなかった。その印刷版は、Kodak Aqua Imageクリーナー/プリザーバで洗浄し、続いて一晩保存することによって影響を受けなかった。
【0151】
配合6A(DMABAなし)を用いて作製した印刷版原版は、特に乾燥状態でエージングした版が、劣った性能を有しており、この発明の印刷版に対する45,000通しと比較してより低い印刷耐久性、10,000通しを示した(TABLE XIV(表14)参照)。
【0152】
【表14】

【0153】
(発明実施例3)
この例は、比較例2で使用したコーティング配合物を使用し、ただし、この発明による脱酸素剤として、5%のビス(2-ヒドロキシエチルグリシン)(BHEG)を添加する。コーティング配合物は、水:IPA(イソプロピルアルコール):MEK(20:20:60重量%)中、8%固形分で作製した。印刷版原版は、110℃で1分間乾燥した。この印刷版原版は、比較例2に記載したのと同じ条件下で、新鮮なものとエージングしたものを評価した。しかしながら、この例において画像化した版は、SWD1現像液を用い、希釈1+3(その元の強度の25%)で現像した。
【0154】
コーティング配合物を、PVPA仕上げされている硫酸陽極酸化処理したアルミニウム基材にスロットダイにより塗布し、110℃で82秒間乾燥して、乾燥コーティング重量1.67g/m2の画像形成性層を提供した。その原版を乾燥及び高湿度条件下で5日間、それぞれ48℃及び40℃、80%RHでエージングした。新鮮な原版とエージングした原版を40mJ/cm2と150mJ/cm2の間の一連のエネルギーを用いて画像化した。その画像化した原版を、SWD1現像液の希釈1+3を用い、NE-34プロセッサー中23℃で、5フィート/分(1.5m/分)で現像し、感度を前の例におけるのと同様に評価した。BHEGを含んでいる新鮮な、そして乾燥及び高湿度エージングした印刷版原版は、60mJ/cm2の感度を有した(下のTABLE XV(表15)参照)。上記の粘着テープ試験により測定した接着は、エージング後何らのロスも示さなかった。
【0155】
110mJ/cm2で画像化した印刷版原版を、Miehle印刷機に取り付け、タルク、OS Kodak #9を含む磨耗性インク及びDay International Inc.からのPARファウンテン濃縮物及びSupreme Font 6038をそれぞれ4オンス/水1ガロン(30g/1リットル)混合することによって製造した湿し水と共に印刷するために使用した。ベタ画像に何らかの磨耗の兆候が見られる前に、該新鮮な原版及び該乾燥状態でエージングした原版は、45,000通しを印刷するために使用され、高湿度エージングした版は、35,000通しを印刷するために使用された。シアンフィルターを有するX-riteデンシトメーターモデル500により測定した2〜50%スクリーンのドット密度は、35,000通し印刷されるまで、10%以内で安定したままであり、その後それは急速に低下した。
【0156】
配合3B(BHEGを含む発明品)により作製された印刷版原版は、UVプレート洗浄に対して耐薬品性を有した。該画像の隅を5,000枚の間隔でUV洗浄により拭い、35,000通し後までベタ画像中に磨耗は見られなかった。その印刷版原版は、プレートクリーナーで一晩保存する洗浄によって影響を受けなかった。BHEGなしで配合3Aを用いて調製した印刷版原版は、特に乾燥状態でエージングした原版が、低い連続運転時間を有しており、ベタ画像中に磨耗が検出される前にたったの10,000枚を印刷したのみであった(TABLE XVI(表16)参照)。
【0157】
【表15】

【0158】
【表16】

【0159】
(発明実施例4)
顔料:Dysperbyk(登録商標)191:フェノキシエタノール:Dowanol PM:水(10:2:8:30:50重量%)の組成を有するPaliogen Blue L 6482の顔料濃縮物(BASFから)を用意した。TABLE XVII(表17)に示されている2つのコーティング配合物、配合4A及び4Bを、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート開始剤のRgen 1130(Chitec Technology Co.)を用い、それぞれ5%のDMABA脱酸素剤なしとありとで調製した。これらコーティング配合物は、最終組成、水:フェノキシエタノール:Dowanol(登録商標)PM:MEK(22:0.3:9.2:68.5重量%)を有する溶媒中8%固形分で作製した。
【0160】
これら配合物を、PVPAにより仕上げられている硫酸陽極酸化処理されたアルミニウム基材上にコートした。それら印刷版原版を、110℃で82秒間乾燥して1.7g/m2のコーティング重量の画像形成性層を提供した。それら印刷版原版を、エージングし、処理のための現像液が、SWD1の1+3(元の強度の25%)であったこと以外は比較例1と同様の処理をした。
【0161】
【表17】

【0162】
配合4Aによる印刷版原版(DMABAなし)は、エージング後コーティング残留を有した。5%DMABA(発明)を含む配合4Bによる原版は、エージングが良好できれいに現像され、60〜70mJ/cm2の感度を有した(下のTABLE XVIII(表18)参照)。
【0163】
【表18】

【0164】
(発明実施例5)
ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレートの代わりに、Sigma-Aldrichからのジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート開始剤を含み、5%のDMABA脱酸素剤ありとなしのコーティング配合物を作製した。それら配合物は、水:フェノキシエタノール:Dowanol(登録商標)PM:MEK(22:0.3:9.2:68.5重量%)の溶媒混合物中、8%固形分で作製した。それら印刷版原版を、エージングし、画像化し、処理を25%濃度に水で希釈した現像液SWD1を用いて行った以外は比較例1におけるのと同様に現像した。
【0165】
【表19】

【0166】
【表20】

【0167】
配合5A(DMABAなし)を用いて作製した印刷版原版は、新鮮のとき又は乾燥状態でエージングした後70mJ/cm2及び高湿度エージングの後60mJ/cm2の感度を有した。しかしながら、乾燥状態でエージングした版は、いくらかの詰まったスクリーンの領域を有した。配合5Bにおけるように、5%のDMABAを使用することにより、感度は保持しながらスクリーン詰まりの問題は解決された。
【0168】
(発明実施例6)
2つの異形のジフェニルアルセノニウムヘキサフルオロホスフェート開始剤を含み、DMABA脱酸素剤がありとなしのコーティング配合物を作製した。それら配合物は、水:フェノキシエタノール:Dowanol(登録商標)PM:MEK(22:0.3:9.2:68.5重量%)中8%固形分で作製した。印刷版原版は、硫酸陽極酸化処理したアルミニウム基材上に用意して110℃で82秒間乾燥させた。これら原版をエージングして画像化し、比較例1におけるのと同様に評価した。唯一の相違点は、処理がSWD1、1+3(25%)を用いて行われたことである。
【0169】
【表21】

【0170】
【表22】

【0171】
DMABAなしで調製した印刷版原版(配合6A)は、いくらかの領域でスクリーン詰まりを示した。その問題は、配合6B(発明)におけるように5%DMABAの使用によって解決された。
【0172】
(発明実施例7)
Ebecryl(登録商標)220の代わりにSartomerからのSR 399及び脱酸素剤としてDMABAの代わりにBHEGを使用した。その画像化した印刷版原版(TABLE XXIII(表23))は、NE-34プロセッサー中、5フィート/分(1.5m/分)及び23℃でSWD1の1+4(元の強さの20%)を用いて現像した。感度の評価が比較例1に記載されているように行われ、下のTABLE XXIV(表24)に示されている。
【0173】
【表23】

【0174】
【表24】

【0175】
配合8A(BHEGなし)を用いて調製した印刷版原版は、乾燥状態のエージング後に低目の感度(90mJ/cm2)ならびに乾燥及び高湿度条件下のエージング後にコーティング残留を示した。5% BHEGの使用(発明)は、乾燥状態でエージングした原版の感度を60mJ/cm2まで持っていきそれを改善し、コーティング残留の問題を排除した。
【0176】
(発明実施例8)
この例では、下のTABLE XXV(表25)に示されている配合9A及び9Bにおいて、IR染料Iの代わりにFewからのIR染料S0507を使用した。得られた印刷版原版は、上記のように画像化し、NE-34プロセッサーを、5フィート/分(1.5m/分)及び23℃で使用してSWD1の1+4(元の強さの20%)中で現像した。感度の評価は、比較例1に記載されているように行われ、その結果が、下のTABLE XXVI(表26)に示されている。
【0177】
【表25】

【0178】
【表26】

【0179】
またしても、本発明による脱酸素剤としての5%DMABAの添加は、乾燥条件下でエージングした印刷版原版の感度を、画像化エネルギーを80mJ/cm2から60mJ/cm2まで低下することによって改善した。同時に、それは、乾燥及び高湿度条件下でのエージング後のコーティング残留の問題を解決した。
【0180】
(発明実施例10)
この例では、ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの混合物(ChitecからのChivacure 1190)を含む開始剤組成物を使用した。これら印刷版原版は、TABLE XXVII(表27)に示されている配合10A及び10Bを用いて調製し、NE-34プロセッサー中、5フィート/分(1.5m/分)及び23℃で現像液SWD1の1+4(元の強さの20%)を用いて処理した。感度の評価は、比較例1に記載のごとくであり、その結果を下のTABLE XXVIII(表28)に示す。
【0181】
【表27】

【0182】
【表28】

【0183】
脱酸素剤としての5%BHEGの使用(発明)は、乾燥条件下でエージングした印刷版原版の感度を20mJ/cm2改善し、乾燥状態及び高湿度でのエージング後のコーティング残留の問題を根絶した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を含み、その上に最外層としてのネガ型画像形成性層を有するネガ型平版印刷版原版であって、前記画像形成性層が、
a) ポリマーバインダー、
b) フリーラジカル重合性成分、
c) 画像化放射への露光に際してフリーラジカルを提供する開始剤組成物、及び
d) 下の構造(I)又は構造(II):
HOOC-Ar-N(R1)(R2) (I)
HOOC-R5-N(R6)(R7) (II)
(式中、
Arはフェニレン又はナフタレン基であり、
R1及びR2は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、フェノキシ、-R5OH、-CH2-C(=O)-R3又はCH2-(=O)O-R4基であり、
R3は、水素或いはアルキル又はフェニル基であり、
R4は、アルキル又はフェニル基であり、
R5は、アルキレン基であり、
R6及びR7は、独立して、水素或いはアルキル、-R5OH、-R5C(=O)-R8又はR5C(=O)OR9基であり、
R8は、水素又はアルキル基であり、
Rは、アルキル基である)で表される、脱酸素剤及び保存寿命安定化剤(但し、前記脱酸素剤は1以下のカルボキシル基を有する)
を含む平版印刷版原版。
【請求項2】
Arがフェニレンであり、R1及びR2が、独立して、1〜4個の炭素原子を有する非置換のアルキル又はヒドロキシアルキルであり、R5が、1〜4個の炭素原子を有するアルキレンであり、R6及びR7が、独立して、水素或いは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はR5OH基(R5は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基である)である、請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
R1及びR2が、独立して、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R5が1個又は2個の炭素原子を有するアルキレンであり、R6及びR7が、独立して、-R5OH基(R5は1個又は2個の炭素原子を有するアルキレン基である)である請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
脱酸素剤が、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸、4-(N,N-ジエチルアミノ)安息香酸、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]安息香酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、N,N-ジヒドロキシメチルグリシン又はそれらの混合物である請求項1から3のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
脱酸素剤が、0.1乃至20重量%の量で存在する請求項1から4のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
ポリマーバインダーが、50nm乃至1μmの平均粒径を有する個別の粒子として存在する請求項1から5のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
開始剤組成物が、オニウム塩及び赤外線放射吸収性化合物を含む請求項1から6のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
開始剤組成物が、テトラアリールホウ酸塩を更に含む請求項1から7のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
テトラアリールホウ酸塩及びオニウム塩が同じ塩を形成する請求項8に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
支持体がアルミニウムを含んでいる支持体である請求項1から9のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
平版印刷版を提供する方法であって、
A) 請求項1から10のいずれかに記載の平版印刷版原版を画像様露光して露光及び非露光領域を提供する工程と、
B) ベーキング工程無しで、前記画像様露光した原版を現像して非露光領域を除去する工程と
を含む方法。
【請求項12】
平版印刷版原版が、750〜1250nmで画像化放射を提供するレーザーを用いて画像様露光される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
現像工程が、6以上且つ14以下のpHを有する処理溶液を用いて行われる請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
現像工程が、7以上且つ12以下のpHを有する処理溶液を用いて行われる請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項11から14のいずれかに記載の方法により得られた平版印刷版。

【公表番号】特表2013−510338(P2013−510338A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537976(P2012−537976)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/055341
【国際公開番号】WO2011/056905
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】