説明

ネガ型感光性樹脂組成物、層間絶縁膜及びその形成方法

【課題】厚膜化しても、解像度、透明性、耐熱性、耐熱変色性及び耐溶媒性等の諸特性が十分優れた層間絶縁膜を形成しうるネガ型感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位:


(式中R、R、R及びRは、各々独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基若しくはアルコキシ基、又は、加水分解性シリル基、アルコキシカルボニル基、トリアルキルシロキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基及びオキセタニル基から選ばれる置換基を示す。)を含む(A)環状オレフィン樹脂と、(B)多官能性アクリルモノマーと、(C)光重合開始剤と、を含有するネガ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、層間絶縁膜及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)型液晶表示素子、磁気ヘッド素子、集積回路素子及び固体撮像管素子等の電子部品には、一般に層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が設けられている(特許文献1参照)。その材料としては、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なく、しかも十分な平坦性を有するものが好ましいことから、ネガ型感光性樹脂組成物が幅広く使用されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−10089号公報
【特許文献2】特許第3650985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電子部品のうち、TFT型液晶表示素子は、層間絶縁膜の上に透明電極膜を形成し、更にその上に液晶配向膜を形成する工程を経て製造される。このとき、当該層間絶縁膜は、透明電極膜の形成工程において高温条件に曝されるため、これに対する十分な耐性が必要となる。
【0005】
また近年、TFT型液晶表示素子においては、大画面化、高輝度化、高精細化、及び高速応答化等、多様な技術動向下にあり、それに伴って液晶表示素子の構造も複雑化している。そのため、用いられる層間絶縁膜に関しては、低誘電率、高光透過率(>80%、λ=400nm)等の面で、従来にも増して高性能が要求されていると共に、液晶表示素子の構造上、50μm程度までの厚膜化が可能であること等特殊な要求も出てきている。
【0006】
しかし、従来の層間絶縁膜の形成に通常用いられているネガ型感光性樹脂組成物では、厚膜化と、高光透過率化及び高解像度とを同時に達成することが極めて困難であり、このような特性を併せもつ層間絶縁膜を形成しうるネガ型感光性樹脂組成物の開発が強く求められていた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、厚膜化しても、解像度、透明性、耐熱性、耐熱変色性及び耐溶媒性等の諸特性が十分優れた層間絶縁膜を形成しうるネガ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、係るネガ型感光性樹脂組成物から形成された層間絶縁膜及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む(A)環状オレフィン樹脂と、(B)多官能性アクリルモノマーと、(C)光重合開始剤と、を含有するネガ型感光性樹脂組成物を提供する。式(1)中R、R、R及びRは、各々独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数5〜15のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基、又は、加水分解性シリル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数4〜20のトリアルキルシロキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルカルボニルオキシ基及びオキセタニル基から選ばれる置換基を示し、直接、又は、酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を介して互いに連結されていてもよい。
【0009】
【化1】

【0010】
上記構成を備えるネガ型感光性樹脂組成物は、厚膜化しても、解像度、透明性、耐熱性、耐熱変色性及び耐溶媒性等の諸特性が十分優れた層間絶縁膜を形成しうる。
【0011】
(A)環状オレフィン樹脂は、上記一般式(1)で表され、R、R、R及びRが水素原子である構成単位を含むことが好ましい。
【0012】
また、(A)環状オレフィン樹脂は、上記一般式(1)で表され、R、R、R及びRのいずれか一つが炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基である構成単位を含むことが好ましい。
【0013】
本発明は、当該ネガ型感光性樹脂組成物から形成された膜の少なくとも一部に波長400nm以下の紫外線を照射する工程を有する層間絶縁膜の形成方法に用いられる、ネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物はまた、(D)アルカリ可溶性樹脂を更に含有することが好ましい。
【0015】
本発明は、上記ネガ型感光性樹脂組成物から形成された層間絶縁膜を提供する。
【0016】
本発明は、上記ネガ型感光性樹脂組成物から形成された膜の少なくとも一部に光を照射する工程と、光が照射された後の上記膜を現像する工程と、現像後の上記膜を焼成し、層間絶縁膜を形成する工程と、を有する層間絶縁膜の形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、厚膜化しても、解像度、透明性、耐熱性、耐熱変色性及び耐溶媒性等の諸特性が十分優れた層間絶縁膜を形成しうるネガ型感光性樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、(A)環状オレフィン樹脂と、(B)多官能性アクリルモノマーと、(C)光重合開始剤と、を含有する。以下各成分について詳細に説明する。
【0020】
−(A)環状オレフィン樹脂−
本実施形態に係る(A)環状オレフィン樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体である。
【0021】
【化2】

【0022】
上記R、R、R及びRは、各々独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数5〜15のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基、又は、加水分解性シリル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数4〜20のトリアルキルシロキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルカルボニルオキシ基及びオキセタニル基から選ばれる置換基を示し、直接、又は、酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を介して互いに連結されていてもよい。
【0023】
より好ましくは、R、R、R、及びRは各々独立して水素原子、1〜15のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基、又は炭素数6〜20のアルコキシ基並びに炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基から選ばれる置換基である。このような構成とすることで、各種溶剤への溶解性が向上するといった効果が得られる。
【0024】
ここで、加水分解性シリル基としては、具体的には、トリメトキシシリル、メチルジメトキシシリルが挙げられる。
【0025】
炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基としては、具体的には、メチルエステル、t−ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ベンジルエステル、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル及びアリルエステルを挙げることができる。これらのうち、耐熱性の点からメチルエステル及びベンジルエステル等が特に好ましく用いられる。
【0026】
本実施形態で用いられる(A)環状オレフィン樹脂は、上記一般式(1)で表され、R、R、R及びRが水素原子である構成単位を環状オレフィン中の式(1)の構成単位の全量を基準として1モル%以上含むことが好ましく、10モル%以上含むことがより好ましい。この割合が1モル%以上である場合、得られるネガ型感光性樹脂組成物の耐熱性が向上する傾向にある。また、上記割合は、60モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。上記割合が60モル%以下である場合、ネガ型感光性樹脂組成物調製のための溶媒への可溶性が向上する傾向にある。
【0027】
本実施形態で用いられる(A)環状オレフィン樹脂は、上記一般式(1)で表され、R、R、R及びRのいずれか一つが炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基である構成単位を環状オレフィン中の式(1)の構成単位の全量を基準として1モル%以上含むことが好ましく、10モル%以上含むことがより好ましい。この割合が1モル%以上の場合、ネガ型感光性樹脂組成物調製のための溶媒への可溶性が向上するという効果が得られる傾向にある。上記割合は、60モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。上記割合が60モル%以下である場合、得られるネガ型感光性樹脂組成物の耐熱性が向上するという効果が得られる傾向にある。
【0028】
上記(A)環状オレフィン樹脂は、下記一般式(2)で表されるモノマーを溶媒中で、金属触媒の存在下で付加共重合することによって製造することができる。
【0029】
【化3】

【0030】
(A)環状オレフィン樹脂の製造に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ニトロベンゼン及びアセトニトリル等の含窒素系炭化水素、並びに、ジエチルエーテル、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
(A)環状オレフィン樹脂の重合に用いられる触媒(E)としては、周期律表第8族元素、第9族元素及び第10族元素から選択される一つの遷移金属に、少なくともシクロペンタジエニル系配位子が配位した錯体が好ましい。具体例としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)を挙げることができる。これらのうち、触媒の重合活性を高くする観点から好ましい元素は、コバルト、ニッケル、パラジウム、及び白金であり、パラジウムを用いることが特に好ましい。
【0032】
(A)環状オレフィン樹脂の重合に用いられる助触媒(F)としては、触媒(E)をなす錯体の配位子の解離を促進するものが好ましい。例えば以下に例示する非配位性アニオンとカチオンとを組み合わせたイオン性化合物が挙げられる。
【0033】
非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリイル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート及びトリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレートが挙げられる。
【0034】
上記カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン及び遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。
【0035】
カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン及びトリ置換フェニルカルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオンが挙げられる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン及びトリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンが挙げられる。
【0036】
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン及びトリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン及びN,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、並びに、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン及びジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0037】
ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン及びトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0038】
上記イオン性化合物としては、例えば、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラ(フルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート及び1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0039】
本実施形態において、触媒(E)と助触媒(F)との割合は、各種の条件によって異なるため一義的には定められないが、通常はE/F(モル比)で1/0.1〜1/10000が好ましく、1/0.5〜1/5000がより好ましく、1/1〜1/2000が更により好ましい。
【0040】
本実施形態おける(A)環状オレフィン樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という)は、2×10から2×10が好ましく、2×10から1.8×10がより好ましい。Mwが2×10未満であると、得られる被膜は耐熱性及び表面硬度が低下する傾向にある。一方、Mwが2×10を超えると、現像性、感光性樹脂組成物調製用溶媒への溶解性が低下する傾向にある。
【0041】
−(B)多官能性アクリルモノマー−
本実施形態に係る(B)多官能性アクリルモノマーとしては、2官能以上の多官能(メタ)アクリレートが用いられる。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,3,5−トリメタクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリス(ヒドロキシエチルアクリロイル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチルメタクリロイル)イソシアヌレート、トリアクリロイルホルマール、トリメタクリロイルホルマール、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エタンジオールジアクリレート、エタンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシプロパンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシプロパンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、イソプロピレングリコールジアクリレート、イソプロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、N,N’−ビス(アクリロイル)システイン、N,N’−ビス(メタクリロイル)システイン、チオジグリコールジアクリレート、チオジグリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、ビスフェノールSジアクリレート、ビスフェノールSジメタクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタクリレート、ジアリルエーテルビスフェノールA、o−ジアリルビスフェノールA、マレイン酸ジアリル及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。2官能以上の多官能(メタ)アクリレートを用いることで、機械的強度が増すといった効果が得られる。
【0042】
上記多官能性アクリルモノマーは、市販品として容易に入手が可能であり、例えば、KYARAD T−1420、同DPHA、同DPHA−2C、同D−310、同D−330、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同DN−0075、同DN−2475、同R−526、同NPGDA、同PEG400DA、同MANDA、同R−167、同HX−220、同HX620、同R−551、同R−712、同R−604、同R−684、同GPO−303、同TMPTA、同THE−330、同TPA−320、同TPA−330、同PET−30、同RP−1040(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、同M−240、同M−6200、同M−305、同M−309、同M−400、同M−402、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−1310、同M−1600、同M−1960、同M−8100、同M−8530、同M−8560、同M−9050(以上、東亞合成(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400、同260、同312及び同335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)を挙げることができる。またこれら多官能性アクリルモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
これらの多官能性アクリルモノマーの中で、現像液への溶解性及び透明性から、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート及びペンタエリスリトールジメタクリレートが特に好ましい。
【0044】
−(C)光重合開始剤−
本実施形態に係る(C)光重合開始剤としては、感光性ラジカル重合開始剤を挙げることができる。感光性ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンジル及びジアセチル等のα−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン及び1,4−ナフトキノン等のキノン類、フェナシルクロライド、トリブロモメチルフェニルスルホン及びトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド、並びに、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。感光性ラジカル重合開始剤を用いることで、ネガ型感光性樹脂組成物の光に対する感度が向上するといった効果が得られる。
【0045】
これら感光性ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE−184、同369、同500、同651、同907、同1700、同819、同124、同1000、同2959、同149、同1800、同1850、同OXE−01、Darocur−1173、同1116、同2959、同1664、同4043(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、KAYACURE−DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(以上、日本化薬(株)製)、LUCIRINTPO(BASF Co.LTD製)、VICURE−10、同55(以上、STAUFFER Co.LTD製)、TRIGONALP1(AKZO Co.LTD製)、SANDORAY1000(SANDOZ Co.LTD製)、DEAP(APJOHN Co.LTD製)、QUANTACURE−PDO、同ITX及び同EPD(以上、WARDBLEKINSOP Co.LTD製)が挙げられる。また、これら感光性ラジカル重合開始剤と感光増感剤とを併用することによって酸素による失活の少ない、高感度のネガ型感光性樹脂組成物を得ることも可能である。
【0046】
上記感光性ラジカル重合開始剤の中で、感光性樹脂組成物調製液への溶解性、露光後の透明性から、α,α’−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2−メチル(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン及び2−メチル(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンが特に好ましい。
【0047】
−(D)アルカリ可溶性樹脂−
本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基等)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶媒に可溶で弱アルカリ水溶液によって現像可能なものである。
【0048】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル重合開始剤の種類及び量、並びに、溶媒の種類等の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0049】
上記線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号及び特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体及び水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させた高分子重合体等が挙げられ、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0050】
これらの中でも特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体及びベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。このほか、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合したもの等も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0051】
上記以外に、特開平7−140654号公報に記載の2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0052】
(D)アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。上記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アリール及びビニル化合物等が挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
【0053】
上記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、トリルアクリレート、ナフチルアクリレート及びシクロヘキシルアクリレートを挙げることができる。
【0054】
また、上記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR〔ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を示す。〕及びCH=C(R)(COOR)〔ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を示す。〕を挙げることができる。これら共重合可能な他の単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
好ましい共重合可能な他の単量体は、CH=CR、CH=C(R)(COOR)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びスチレンから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、CH=CR及び/又はCH=C(R)(COOR)である。
【0056】
−ネガ型感光性樹脂組成物の調製−
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、上記(A)環状オレフィン樹脂、(B)多官能性アクリルモノマー及び(C)光重合開始剤の各成分を混合することによって調製される。上記ネガ型感光性樹脂組成物は、好適には、適当な溶媒に溶解して溶液状態で用いられる。例えば(A)環状オレフィン樹脂、(B)多官能性アクリルモノマー、(C)光重合開始剤、及び必要に応じ、その他の配合剤を、所定の割合で混合することによって、溶液状態のネガ型感光性樹脂組成物を調製することができる。
【0057】
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、(A)環状オレフィン樹脂10重量部に対して、(B)多官能性アクリルモノマーを、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは40〜120重量部の割合で含有する。(B)多官能性アクリルモノマーが10重量部未満の場合は、感光性が十分得られない傾向にある。一方、150重量部を超える場合は、破断強度が低下する傾向にある。また(C)光重合開始剤は、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは3〜35重量部の割合で含有する。(C)光重合開始剤が1重量部未満の場合は、耐熱性、表面硬度及び耐薬品性が得られない傾向にある。一方、40重量部を超える場合は、透明性が低下する傾向にある。
【0058】
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物の調製に用いられる溶媒としては、(A)環状オレフィン樹脂、(B)多官能性アクリルモノマー及び(C)光重合開始剤の各成分を溶解し、各成分と反応しないものが用いられる。具体的には、メタノール及びエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコール類、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル及びプロピレングリコールブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート及びプロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート及びプロピレングリコールブチルエーテルプロピオネート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン及び4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、並びに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ブトキシプロピオン酸エチル、3−ブトキシプロピオン酸プロピル及び3−ブトキシプロピオン酸ブチル等のエステル類が挙げられる。
【0059】
これらの溶媒の中で、溶解性、各成分との反応性及び塗膜の形成のしやすさから、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類及び芳香族炭化水素類が好ましく用いられる。
【0060】
さらに上記溶媒と共に高沸点溶媒を併用することもできる。併用できる高沸点溶媒としては、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン及びフェニルセロソルブアセテートが挙げられる。本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記以外に他の成分を含有していてもよい。
【0061】
上記のように調製されたネガ型感光性樹脂組成物は、孔径0.2〜0.5μm程度のミリポアフィルタ等を用いて濾過した後、使用に供することもできる。
【0062】
−層間絶縁膜の形成方法−
本実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法は、少なくとも下記の工程を含んでいる。(1)上記ネガ型感光性樹脂組成物の膜を基板上に形成する工程、(2)上記膜の少なくとも一部に光を照射(以下、「露光」という場合がある。)する工程、(3)露光後の上記膜を現像する工程、(4)現像後の上記膜を焼成し(以下、「ベーク」という場合がある。)、層間絶縁膜を形成する工程。
【0063】
ここで、本実施形態でいう「光」とは、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、分子線、γ線、シンクロトロン光及びプロトンビーム等を含むものを意味する。
【0064】
以下、これらの工程について詳細に説明する。
【0065】
−(1)工程−
(1)工程においては、ネガ型感光性樹脂組成物を、好ましくは液状組成物として、基板表面に膜を形成し、プレベークを行うことによって溶媒を除去して、ネガ型感光性樹脂組成物の膜を形成する。
【0066】
使用できる基板の種類としては、ガラス基板、シリコンウエハー及びこれらの表面に各種金属が形成された基板等を挙げることができる。組成物溶液の膜形成方法としては、特に限定されるものではないが、塗布による方法が好ましい。塗布方法としては、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、スリットダイ塗布法、バー塗布法及びインクジェット法等の適宜の方法を採用することができる。
【0067】
プレベークの条件は、ネガ型感光性樹脂組成物の構成成分の種類及び使用割合等によっても異なるが、例えば、60〜130℃で30秒間〜15分間とすることができる。形成される上記膜の膜厚としては、プレベーク後の値として、5〜20μmが好ましい。
【0068】
−(2)工程−
(2)工程においては、形成された上記膜の少なくとも一部に露光する。この場合、上記膜の一部のみに露光する際には、通常、所定形状のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。
【0069】
露光に用いられる光としては、例えば、i線(波長365nm)等の紫外線、KrFエキシマレーザー及びArFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン光等のX線、並びに、電子線等の荷電粒子線を挙げることができる。これらの光のうち、紫外線が好ましく、波長400nm以下の紫外線がより好ましく、i線を含む紫外線が更により好ましい。露光量は、50〜10000J/m程度とすることが好ましい。
【0070】
−(3)工程−
(3)工程においては、露光後の上記膜を現像して、未露光部を除去することによって、所定形状のパターンを形成する。
【0071】
現像に用いられる現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン及び1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の水溶液が好ましい。上記アルカリ性化合物の水溶液には、メタノール及びエタノール等の水溶性有機溶媒、並びに、界面活性剤を適量添加することができる。
【0072】
また、本実施形態においては、ネガ型感光性樹脂組成物が充填材や顔料等の不溶性成分を含有しない場合、現像液として、構成成分を溶解する各種の有機溶媒を使用することもできる。
【0073】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法及びシャワー法等の適宜の方法を採用することができる。
【0074】
現像時間は、ネガ型感光性樹脂組成物の配合組成によっても異なるが、例えば、30〜300秒間とすることができる。なお、従来から層間絶縁膜の形成に使用されているネガ型感光性樹脂組成物は、現像時間が最適条件から20秒以上超過すると、形成されたパターンに剥がれ等の不具合が生じるため、現像時間を厳密に制御する必要があったが、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の場合、最適現像時間からの超過時間が30秒以上となっても、良好なパターンを形成でき、製品歩留まりが向上する。
【0075】
−(4)工程−
(4)工程においては、現像後の上記膜を、必要に応じて後露光したのち、ホットプレート及びオーブン等の加熱装置によってベークすることで、上記膜を硬化させ、層間絶縁膜を形成する。後露光に用いられる光としては、例えば、i線(波長365nm)等の紫外線、KrFエキシマレーザー及びArFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン光等のX線、並びに、電子線等の荷電粒子線を挙げることができる。
【0076】
これらの光のうち、紫外線が好ましく、波長400nm以下の紫外線がより好ましく、i線を含む紫外線が更により好ましい。後露光の露光量は、50〜10000J/mとすることが好ましい。ベーク条件は、ネガ型感光性樹脂組成物の構成成分の種類及び使用割合、所望のパターン形状、並びに、使用される加熱装置等によっても異なるが、ホットプレートの場合は、例えば、150〜240℃で10〜30分間であり、オーブンの場合は、例えば、150〜240℃で30〜90分間である。また、ベークに際しては、2回以上加熱処理するステップベーク法等を採用することもできる。
【0077】
このようにして、目的とする層間絶縁膜を基板上に形成することができる。得られた層間絶縁膜は、厚膜化しても、解像度、透明性、耐熱性、耐熱変色性及び耐溶媒性等の諸特性に優れており、例えば、TFT型液晶表示素子を含む各種の液晶表示素子、磁気ヘッド素子、集積回路素子及び固体撮像素子等の電子部品等に極めて好適に使用することができる。また、本実施形態の層間絶縁膜の形成方法によると、優れた特性を有する層間絶縁膜を高い製品歩留まりで簡便に形成することができる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
−ネガ型感光性樹脂組成物の調製−
(B)多官能性アクリルモノマーとしてアロニックスM−305(東亞合成(株)製、商品名)10gをトルエン36.4gに溶解し、得られた溶液に、R、R及びRが水素原子であり、Rがメチルエステル基であるモノマーと、R、R、R及びRが水素原子であるモノマーと、を1:1(モル比)で共重合させた(A)環状オレフィン樹脂1gと、(C)光重合開始剤として2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:IRGACURE−907)0.6gと、を加え、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過して、全体の固形分濃度が30質量%であるような溶液状態のネガ型感光性樹脂組成物(S−1)を調製した。
【0080】
−層間絶縁膜の形成−
ネガ型感光性樹脂組成物(S−1)をガラス基板上に、卓上塗工機を用いて塗布した後、80℃の防爆乾燥機内で10分間プレベークして、塗膜を形成した。次いで、この塗膜に所定形状のパターンを有するフォトマスクを介して、波長365nmの紫外線を積算露光量が100mJ/cmとなるように露光した。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、25℃で5分間ディッピング現像したのち、純水で1分間洗浄することによって、不要な部分を除去して、パターン状薄膜を得た。
【0081】
次いで、得られたパターン状薄膜を200℃のオーブン中で30分間ベークして、硬化させることによって、所定のパターン形状を有する膜厚50μmの層間絶縁膜を得た。
【0082】
−評価−
次いで、下記の要領で評価を行った。評価結果を、層間絶縁膜の膜厚と併せて(以下同様)、表1に示す。
【0083】
−解像度の評価−
得られた層間絶縁膜において、直径50μmのマスクパターンを用いて解像度を評価した。50μm平方のホールパターンが解像できる場合を良好(A)、50μm平方のホールパターンが解像できない場合を不良(B)として評価した。
【0084】
−透明性の評価−
得られた層間絶縁膜の連続膜部分について、波長400nmにおける透過率を、ダブルビーム分光光度計 U−2900((株)日立製作所製、商品名)を用いて測定して評価した。この透過率が90%を超えるとき、透明性が良好(A)であるといえる。
【0085】
−耐熱性の評価−
得られた層間絶縁膜を、220℃のオーブン中で60分加熱し、加熱前後での膜厚の変化率(%)〔=(加熱前の膜厚−加熱後の膜厚)×100/加熱前の膜厚〕を(株)ミツトヨ製デジマチックインジケーターを用いて測定して評価した。この変化率が5%以内のとき、耐熱性が良好(A)であるといえる。
【0086】
−耐熱変色性の評価−
得られた層間絶縁膜を、250℃のオーブンを窒素パージし、その中で60分加熱し、層間絶縁膜の連続膜部分について、波長400nmにおける透過率を、ダブルビーム分光光度計 U−2900(商品名、(株)日立製作所製)を用いて測定して、加熱前後での透過率の変化率(%)〔=(加熱前の透過率−加熱後の透過率)×100/加熱前の透過率〕によって評価した。この変化率が5%以内のとき、耐熱変色性が良好(A)であるといえる。
【0087】
−耐溶媒性の評価−
層間絶縁膜を形成したガラス基板を、50℃のN−メチルピロリドン中に15分間浸漬し、浸漬前後における層間絶縁膜の膜厚の変化率(%)〔=(浸漬後の膜厚−浸漬前の膜厚)×100/浸漬前の膜厚〕を(株)ミツトヨ製デジマチックインジケーターを用いて測定して評価した。この変化率が±10%以内のとき、耐溶媒性が良好(A)であるといえる。
【0088】
(実施例2)
実施例1において、アロニックスM−305 10gの代わりにアロニックスM−402(東亞合成(株)製、商品名)、10gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、溶液状態のネガ型感光性樹脂組成物(S−2)を調製して、所定のパターン形状を有する膜厚40μmの層間絶縁膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
実施例1及び2、どちらの層間絶縁膜も、厚膜化しても、解像度、透明性、耐熱性、耐熱変色性及び耐溶媒性に優れることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位:
【化1】


(式中R、R、R及びRは、各々独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数5〜15のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基、又は、加水分解性シリル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数4〜20のトリアルキルシロキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルカルボニルオキシ基及びオキセタニル基から選ばれる置換基を示し、直接、又は、酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を介して互いに連結されていてもよい。)を含む(A)環状オレフィン樹脂と、
(B)多官能性アクリルモノマーと、
(C)光重合開始剤と、を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)環状オレフィン樹脂が、前記一般式(1)で表され、R、R、R及びRが水素原子である構成単位を含む請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)環状オレフィン樹脂が、前記一般式(1)で表され、R、R、R及びRのいずれか一つが炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基である構成単位を含む請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
当該ネガ型感光性樹脂組成物から形成された膜の少なくとも一部に波長400nm以下の紫外線を照射する工程を有する層間絶縁膜の形成方法に用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(D)アルカリ可溶性樹脂を更に含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物から形成された層間絶縁膜。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物から形成された膜の少なくとも一部に光を照射する工程と、
光が照射された後の前記膜を現像する工程と、
現像後の前記膜を焼成し、層間絶縁膜を形成する工程と、を有する層間絶縁膜の形成方法。

【公開番号】特開2013−101365(P2013−101365A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−278290(P2012−278290)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2011−509751(P2011−509751)の分割
【原出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】