説明

ネジ脱落防止具

【課題】 電線を締結するための接続ネジの脱落防止および電線端部の動きを拘束する。
【解決手段】 端子台100に対する電線200の取付けまたは取外しの際に、電線200の端部を端子台100に締結する接続ネジ101の脱落を防止するネジ脱落防止具1であって、電線200の端部に配置可能な支持部2と、支持部2の一方に形成され、接続ネジ101を回動自在に保持可能なネジ保持部3と、支持部2の他方に形成され、電線200を着脱自在に保持可能な電線保持部4と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気機器に対する電線の取付けまたは取外しの際に、電線の端部を電気機器に締結するネジの脱落を防止するネジ脱落防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、送配電の関連設備などにおいては、電線の接続や分岐などのために端子台が使用されている。電線の端部には端子が取付けられており、端子はネジを介して端子台に締結されるようになっている。端子台に締結された電線は、設備点検や配線変更などのために端子台から一時的に取外したり付け替えられたりすることがある。端子台には複数の締結部があり、電線の端部に取付けられた端子を端子台に着脱する際には、端子を締結するためのネジが脱落して他の端子などの導電部に接触することを防止する必要がある。
【0003】
そこで、ネジのネックに回動可能に嵌合するワッシャに弾性腕を設け、この弾性腕によりドライバの軸部を挟持するようにクリップを構成したねじ保持装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ドライバを挿通する第1の開口を一端面に有し、且つネジ穴と連通する第2の開口を他端面に有したドライバ挿通穴を備えたホルダ本体と、先端部が第2の開口内に突出入自在となるようにホルダ本体によりスライド自在に支持されると共に第2の開口部内に突出したときに、先端部によりビスの雄螺子部を支持する保持部材とを備えたビスの脱落防止ホルダに関する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−242737号公報
【特許文献2】特開2009−202306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術はいずれも、ネジをドライバから脱落しないように保持することはできても、電線は別途手で保持しなくてはならないものであった。すなわち、特許文献1、2の技術は、ネジの脱落は防止することができるが、電線を端子台から外す際に電線を保持するものがなく、ネジを外すと同時に電線が跳ね上がり、外した電線の端部が通電中の他の端子に接触するおそれがある。
【0006】
このように、従来では電線の端部を端子台に着脱する時には、電線の端部に取付けられた端子が不用意に他の端子などの導電部に接触しないようにするために、取外す電線を確実に保持しておく必要がある。つまり、電線の端子の端子台に対する取付けおよび取外し時は、作業者は一方の手で端子の固定穴を端子台のネジ穴(端子装着部)に合わせた状態で、ネジが脱落しないように注意して他方の手でドライバを回してネジを締結する必要があるため、作業が煩雑になるという問題があった。また、端子台の設置場所は狭く限られたスペースであることも多く、このような狭いスペースでの煩雑な作業を行うことは困難であった。
【0007】
上述の問題は、端子台に対する電線の取付けまたは取外しに伴って生じるものであるが、これらの問題は端子台だけでなく他の電気機器についても同様であり、これらの問題を解決できる技術の開発が望まれる。
【0008】
そこでこの発明は、電気機器に対する電線の取付けまたは取外しの際に、電線を締結するためのネジの脱落防止および電線端部の動きを拘束することが可能なネジ脱落防止具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電気機器に対する電線の取付けまたは取外しの際に、前記電線の端部を前記電気機器に締結するネジの脱落を防止するネジ脱落防止具であって、前記電線の端部に配置可能な支持部と、前記支持部の一方に形成され、前記ネジを回動自在に保持可能なネジ保持部と、前記支持部の他方に形成され、前記電線を着脱自在に保持可能な電線保持部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、電気機器に対する電線の取付けまたは取外しの際には、支持部に形成されたネジ保持部と電線保持部とによって、ネジと電線とが確実に保持される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載されたネジ脱落防止具において、前記支持部には、外方に突出する把持部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載されたネジ脱落防止具において、前記支持部と前記ネジ保持部と前記電線保持部は、電気的絶縁性を有する樹脂によって一体成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、支持部にはネジ保持部と電線保持部が形成されるので、電気機器に対する電線の取付けまたは取外しの際には、支持部によってネジと電線とを同時に保持することが可能となる。したがって、片手のみでネジの脱落防止および電線端部の動きを拘束することができ、電気機器に対する電線の取付けまたは取外し作業を容易に行うことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、支持部には外方に突出する把持部が形成されているので、電気機器に対する電線の取付けまたは取外しの際は、片手で把持部を把持することで支持部を間接的に把持することができ、電線の取付けまたは取外しの作業性を高めることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、支持部とネジ保持部と電線保持部は、電気的絶縁性を有する樹脂によって一体成形されているので、作業対象となる電線に対して他の電線が隣接していても、樹脂を介して他の電線との電気的な接触を回避することができ、作業の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に係るネジ脱落防止具を示す平面図である。
【図2】図1のネジ脱落防止具を示す正面図である。
【図3】図1のネジ脱落防止具を示す側面図である。
【図4】図1のネジ脱落防止具を用いた電線の端子台への取付け状態を示す正面図である。
【図5】図1のネジ脱落防止具を用いた電線の端子台への取付け状態を示す左側面図である。
【図6】図1のネジ脱落防止具を用いた電線の端子台への取付け状態を示す右側面図である。
【図7】図1のネジ脱落防止具を端子台に取り付けた状態を示す平面図である。
【図8】電線の端子台への締結状態を示す平面図である。
【図9】図8の端子台に電線を締結した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0018】
図1ないし図9は、この発明の実施の形態を示している。電気機器としての端子台100は、例えば送配電の関連設備の制御盤内に配置されている。図8、9に示すように、端子台100には複数のネジとしての接続ネジ101が並んで配設され、接続ネジ101の螺合によって電線200が締結されている。より詳しくは、接続ネジ101を電線200の先端部に取付けられた圧着端子201の固定穴に挿通し、接続ネジ101をネジ穴(図示略)に螺合させることによって、端子台100の接続ネジ101と電線200とが接続されるようになっている。
【0019】
ネジ脱落防止具1は、電気的絶縁性を有する合成樹脂で構成されている。ネジ脱落防止具1は、端子台100に対する電線200の取付けまたは取外しの際に使用するもので、図1に示すように、主として、支持部2と、ネジ保持部3と、電線保持部4とを備えている。支持部2とネジ保持部3と電線保持部4は、上述の電気的絶縁性を有する合成樹脂によって一体成形されている。
【0020】
支持部2は、水平方向に延びる棒状で、後述するように接続ネジ101と電線200とに取り付けられた状態では、電線200の上端側に軸方向に沿って延びるものである。この支持部2は、接続ネジ101と電線200とを確実に保持することができるように剛性が高くなっている。
【0021】
ネジ保持部3は、支持部2の先端側(一方)に一体的に形成され、接続ネジ101を回動自在に保持可能である。つまり、ネジ保持部3は、接続ネジ101の頭部101a外周を着脱自在に保持し、頭部101aを保持した状態で接続ネジ101がドライバなどによって回動自在となっている。このネジ保持部3は、図1に示すように、主として略円弧状の基端部31と、アーム部32、33とを備え、ネジ保持部3の先端側は、頭部101aが進入可能な開口部を有している。この開口部から、接続ネジ101の頭部101aは着脱自在となっている。
【0022】
アーム部32、33は、弾性変形可能な部材で構成され、接続ネジ101の着脱時には変形して着脱しやすくなり、接続ネジ101が取り付けられた状態では弾性力によってネジ保持部3は接続ネジ101を押圧して保持するようになっている。このアーム部32は、図1ないし図3に示すように、基端部31の一端部側から水平方向に延びる水平部32aと、水平部32aの外側から上方に向かって内側に傾斜して立設し、接続ネジ101の頭部101aを覆うような曲面状に構成されている側面部32bとを備えている。また、アーム部33はアーム部32と同様に構成され、基端部31の他端部側に対向して配置されている。さらにまた、水平部32a、33a間の距離は、接続ネジ101のネジ部の直径と略同等またはわずかに小に設定され、頭部101a底面の直径より小に設定されている。このようにして、図4ないし図6に示すように、接続ネジ101は頭部101a底面(ネック部)が水平部32a、33aによって下方から保持され、接続ネジ101の頭部101a側面が側面部32b、33bによって水平方向に押圧されて保持されるようになっている。
【0023】
電線保持部4は、支持部2の他端側(他方)に一体的に形成され、電線200の外周を軸方向に沿って着脱自在に保持するものである。この電線保持部4は、図2、図3に示すように、支持部2から下方に延びる中空状で、下側に電線200を進入可能な切欠部を有している。この切欠部によって、電線保持部4は電線200を着脱自在となっている。また、電線保持部4は弾性変形可能な部材で、内周は電線200の外周よりもわずかに小さく設定されている。つまり、電線200の着脱時には変形して着脱しやすくなり、図5に示すように、電線200が取り付けられた状態では弾性力によって電線保持部4は電線200を押圧して保持するようになっている。
【0024】
把持部5は、支持部2の外方に突出して一体的に形成された平板状で、作業者が把持しやすい形状、大きさ、剛性に設定されている。
【0025】
そして、後述するように、接続ネジ101の着脱時は、ネジ保持部3によって接続ネジ101の頭部101aが保持され、電線保持部4によって電線200が保持された状態となり、接続ネジ101と電線200とは同時に保持されるようになっている。すなわち、ネジ脱落防止具1に接続ネジ101と電線を取り付けた状態では、作業者はネジ保持部3の把持部5を把持するだけで、接続ネジ101と電線200とを同時に保持できるようになっている。
【0026】
次に、このような構成のネジ脱落防止具1の使用方法および作用について説明する。
【0027】
電線200を端子台100に取り付ける場合は、まず、端子台100と接続ネジ101の頭部101aとの間にネジ保持部3が差込可能な程度に、接続ネジ101がゆるめられる。そして、端子台100と頭部101aとの間に、ネジ保持部3の開口部が差し込まれ、ネジ保持部3によって頭部101a外周を保持するように取り付けられる。そして、一方の手によって把持部5が把持された状態で、他方の手に把持されたドライバによって、接続ネジ101がさらにゆるめられて端子台100から取り外される。
【0028】
つづいて、電線200の圧着端子201の固定穴に、ネジ保持部3によって頭部101aが保持された接続ネジ101が挿通され、ネジ脱落防止具1の支持部2が電線200に沿わされた状態で、電線保持部4で電線200の外周を保持するように切欠部から押し込むようにして取り付けられる。これにより、接続ネジ101と電線200とはネジ脱落防止具1によって保持される。
【0029】
つぎに、一方の手によってネジ脱落防止具1の把持部5が把持された状態で、他方の手に把持されたドライバによって、接続ネジ101が端子台100のネジ穴に締め付けられて締結される。そして、電線保持部4が電線200の外周から取外され、ネジ保持部3が頭部101a外周から取り外されて、ネジ脱落防止具1が接続ネジ101および電線200から取り外される。その後さらに、圧着端子201と端子台100とが密着し導通するように接続ネジ101が締結される。このようにして、電線200が端子台100に取り付けられる。
【0030】
また、電線200を端子台100から取り外す場合は、まず、圧着端子201と接続ネジ101との間にネジ保持部3が差込可能な程度に、接続ネジ101がゆるめられる。そして、端子台100と頭部101aとの間に、ネジ保持部3の開口部が差し込まれ、ネジ保持部3によって頭部101a外周を保持するように取り付けられる。そして、支持部2が電線200に沿わされた状態で、電線保持部4が電線200の外周を保持するように取り付けられる。これにより、接続ネジ101と電線200とはネジ脱落防止具1によって保持される。
【0031】
つづいて、一方の手によってネジ脱落防止具1の把持部5が把持された状態で、他方の手で把持されたドライバで接続ネジ101がゆるめられて端子台100から取り外される。そして、電線保持部4が電線200の外周から取外されて、電線200がネジ脱落防止具1、接続ネジ101から取り外される。
【0032】
つぎに、一方の手によってネジ脱落防止具1の把把持部5を把持した状態で、他方の手で把持されたドライバで接続ネジ101が締結されて端子台100に取り付けられる。そして、ネジ保持部3が接続ネジ101の頭部101a外周から取り外され、さらに、接続ネジ101と端子台100とが密着するように接続ネジ101が締結される。このようにして、電線200が端子台100から取り外される。
【0033】
このようにして、接続ネジ101の着脱時は、ネジ脱落防止具1によって接続ネジ101と電線200とを同時に保持可能であり、作業者は把持部5を把持するだけで、接続ネジ101の脱落と電線200の保持とを確実に行うことができる。
【0034】
以上のように、このネジ脱落防止具1によれば、支持部2にはネジ保持部3と電線保持部4が形成されるので、端子台100に対する電線200の取付けまたは取外しの際には、支持部2によって接続ネジ101と電線200とを同時に保持することが可能となる。したがって、片手のみで接続ネジ101の脱落防止および電線200端部の動きを拘束することができ、端子台100に対する電線200の取付けまたは取外し作業を容易に行うことができる。また、接続ネジ101の着脱時に接続ネジ101や電線200が接続ネジ101などに不用意に接触することを確実に防止することができる。
【0035】
また、ネジ保持部3と電線保持部4とは、弾性力によって接続ネジ101や電線200を保持するので、接続ネジ101の大きさ、形状や電線200の径が異なる場合であっても適用可能である。
【0036】
また、既設の端子台100、接続ネジ101、電線200などに変更を加えずに、ネジ脱落防止具1を使用して電線200の取付けまたは取外し作業ができるため、既設のすべての端子台100に対して、容易にネジ脱落防止具1を適用することができる。
【0037】
また、支持部2には外方に突出する把持部5が形成されているので、端子台100に対する電線200の取付けまたは取外しの際は、片手で把持部5を把持することで支持部2を間接的に把持することができ、電線200の取付けまたは取外しの作業性をより高めることができる。
【0038】
さらにまた、支持部2とネジ保持部3と電線保持部4は、電気的絶縁性を有する樹脂によって一体成形されているので、作業対象となる電線200に対して他の電線200が隣接していても、樹脂を介して他の電線200との電気的な接触を回避することができ、作業の安全性を高めることができる。
【0039】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、ネジ保持部3は、接続ネジ101の頭部101aのみを保持するようにして説明したが、接続ネジ101の頭部101aと電線200の圧着端子201とを保持するようにしてもよい。
【0040】
さらに、電線200が接続される電気機器は上述の端子台100以外でもよく、例えばバッテリー同士を接続する電線の取付けまたは取外しについても、ネジ脱落防止具1を適用することができることはもちろんである。
【符号の説明】
【0041】
1 ネジ脱落防止具
2 支持部
3 ネジ保持部
32、33 アーム部
4 電線保持部
5 把持部
100 端子台(電気機器)
101 接続ネジ(ネジ)
200 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に対する電線の取付けまたは取外しの際に、前記電線の端部を前記電気機器に締結するネジの脱落を防止するネジ脱落防止具であって、
前記電線の端部に配置可能な支持部と、
前記支持部の一方に形成され、前記ネジを回動自在に保持可能なネジ保持部と、
前記支持部の他方に形成され、前記電線を着脱自在に保持可能な電線保持部と、
を備えることを特徴とするネジ脱落防止具。
【請求項2】
前記支持部には、外方に突出する把持部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のネジ脱落防止具。
【請求項3】
前記支持部と前記ネジ保持部と前記電線保持部は、電気的絶縁性を有する樹脂によって一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載のネジ脱落防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145162(P2012−145162A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3628(P2011−3628)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】