説明

ネットワーク評価装置

【課題】光パスを設定した場合の2ノード間の距離に基づく中継器の設置コストの増大を考慮してネットワークトポロジの評価を実行することを目的とする。
【解決手段】複数のノードと、該ノード間を接続する複数のリンクと、該ノードごとに設けられた複数のルータとを有する光ネットワークの設計を評価するネットワーク評価装置は、該リンクごとの伝送距離および伝送量要求値、および中継器を挿入する区間距離を記憶する記憶部と、該伝送量要求値に基づいて、該複数のノードから光パスを設ける2つのノードを選択し、該2つのノード間の信号伝搬を中継するノードおよびルータの数に基づいてコスト減少量を算出すると共に、該光パスの伝送距離および該区間距離に応じて挿入する該中継器の数に基づいてコスト増加量を算出し、該コスト減少量と該コスト増加量に基づいて光ネットワークの最適値を決定する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワークのトポロジを評価するネットワーク評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークの伝送増加に対応するため、コアネットワークでは光ファイバを用いた光ネットワークが用いられている。光ネットワークでは、一本の光ファイバに複数の異なる波長を多重する波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術を用いることにより、きわめて大容量の通信が可能となる。
【0003】
WDMネットワークは、OXC(Optical Cross Connect)と呼ばれる複数のノードと、ノード間を接続する光ファイバを有する。OXCは任意のノード間において、光パスと呼ばれる論理的な通信路を光レイヤとして作成することが出来る。光パスは、2ノード間で共通に利用可能な波長を設定することにより実現する。1本の光パスを設定することにより、2ノード間に1波長の容量に相当する大容量の通信路を論理的に作成することが出来る。
【0004】
またWDMネットワークの上位レイヤには、IP(Internet Protocol)レイヤが存在する。IPレイヤでは、ユーザからの情報がパケット単位でやり取りされる。WDMネットワークにおいて、各OXCにはルータが接続されている。各OXCに到達したパケット信号は、ルータにより解析され、転送先のOXCに転送される。
【0005】
光レイヤとIPレイヤからなるネットワークは、IP/WDMネットワークと呼ばれる。IP/WDMネットワークにおいて、各ユーザから送信されたパケットはルータによって集約される。集約されたパケットは、IPレイヤから見て下位レイヤである光レイヤを伝送路として他のノードへ転送される。
【0006】
2つのノード間の伝送路に物理的に他のノードが存在する場合であっても、光レイヤにおいて光パスを設定した2ノード間は、IPレイヤから見ると隣接していると認識される。光パスを設定した2ノード間に存在する他のノードは、OXCによって光信号の方路を切り替える処理を実行する。OXCにより処理された光信号はルータを経由しないため、光レイヤにおける光信号はパケット単位で処理されない。このようなルータを経由しない光信号の処理をカットスルーという。
【0007】
光パスによる転送に対しIPレイヤでは、OXCで受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号に基づきルータにおいてパケット単位で転送先を特定し、特定した転送先へパケットを転送するという複雑な処理が要求される。処理が複雑になるほどルータに高い性能が要求されるため、IPレイヤでの信号処理量が多いほどネットワークのコストは大きくなる。
【0008】
IP/WDMネットワークの設計は、始点ノードおよび終点ノードとその2ノード間を流れる伝送量情報の集合、および光レイヤの物理的なトポロジを入力とし、ネットワーク全体のコストが小さくなるように光パスを選択することにより行われる。光パスにより構成される論理的なトポロジを論理トポロジと呼ぶ。IP/WDMネットワークの設計評価技術として、非特許文献1には、MMT(Maximizing Multi−hop Traffic)アルゴリズムが開示されている。MMTアルゴリズムでは、伝送量が大きく、中継するルータの数(ホップ数)が多い2ノード間に光パスを設定することにより、ネットワーク全体のコストを削減する論理トポロジを求める。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B.Mukherjee,“Optical WDM Networks”,Springer,2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光パスを設定した2ノード間の距離が長い場合、光パスを経由させるOXCに、光信号を整形するための中継器である、光再生中継器を設置する必要が生じる。MMTアルゴリズムでは2ノード間の距離について評価しない。よって光パスを設定した場合の2ノード間の距離に基づく光再生中継器の設置コストは評価されない。
【0011】
本技術では、光パスを設定した場合の2ノード間の距離に基づく光再生中継器の設置コストの増大を考慮してネットワークトポロジの評価を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、複数のノードと、該ノード間を接続する複数のリンクと、該ノードごとに設けられ、該リンクを伝搬する信号の転送先を検出する複数のルータとを有する光ネットワークの設計を評価するネットワーク評価装置は、該リンクごとの伝送距離および伝送量要求値、および光伝送損失を補償するための中継器を挿入する区間距離を記憶する記憶部と、該伝送量要求値に基づいて、該複数のノードから光パスを設ける2つのノードを選択し、該2つのノード間の信号伝搬を中継するノードおよびルータの数に基づいてコスト減少量を算出すると共に、該光パスの伝送距離および該区間距離に応じて挿入する該中継器の数に基づいてコスト増加量を算出し、該コスト減少量と該コスト増加量に基づいて光ネットワークの最適値を決定する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
実施形態によれば、光パスを設定した場合の2ノード間の距離に基づく光再生中継器の設置コストの増大を考慮してネットワークトポロジの評価を実行することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】IP/WDMネットワーク1のブロック図である。
【図2】ネットワーク評価装置2のブロック図である。
【図3】ネットワーク評価装置2の機能ブロック図である。
【図4】IP/WDMネットワーク4のブロック図である。
【図5】AはIP/WDMネットワーク4の物理トポロジデータを示すテーブル図である。BはIP/WDMネットワーク4のデマンドデータを示すテーブル図である。
【図6】ネットワーク評価装置2の評価処理フロー図である。
【図7】デマンドごとのトータルコストの評価結果テーブル7である。
【図8】区間ADに光パスを設定した、IP/WDMネットワーク4aのブロック図である。
【図9】区間ADに光パスを設定後の各リンクでの使用波長数を管理する波長数テーブルである。
【図10】ノードAD間に光パスを設定した後の、指定区間ごとのトータルコストの評価結果テーブル7aである。
【図11】区間ADおよび区間ABに光パスを設定した、IP/WDMネットワーク4bのブロック図である。
【図12】区間AD、AEに光パスを設定後の各リンクでの使用波長数を管理する波長数テーブル85aである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施の形態について説明する。なお、各実施形態における構成の組み合わせも本発明の実施形態に含まれる。
【0016】
図1は一般的なIP/WDMネットワーク1のブロック図である。IP/WDMネットワーク1は、複数のOXC11、OXC11にそれぞれ接続されたルータ10、および2つのOXC11間を接続する光ケーブル12を有する。光ケーブルはノード間を接続するリンクとして機能する。
【0017】
OXC11は光信号を電気信号に変換すること無く、光信号のまま波長単位で他のOXC11にクロスコネクトすることが出来る。OXC11間は光ケーブル12で接続されている。光レイヤの物理的なトポロジは、OXC11および光ケーブル12で形成される。
【0018】
OXC11は他のOXC11から受信した光信号を電気信号に変換し、ルータ10に送信する。ルータ10は受信した電気信号をパケット単位で解析し、信号の転送先を決定する。IPレイヤの物理的なレイヤでは、信号はパケット単位でやり取りされる。
【0019】
OXC11で受信した光レイヤにおける光信号は電気信号に変換され、OXC11に接続されたルータ10へ送信される。一般的にネットワーク中の各ノードを通過するトラフィックを分類すると、その大部分が中継処理である。よって光パスにより効果的にカットスルーを行うことにより、IPレイヤにおける中継処理を削減することが出来る。IPレイヤにおける中継処理を削減することにより、ルータ10の小規模化や削減を行うことが出来る。
【0020】
一方、光パスの距離が長くなると、光信号は減衰する。光信号が減衰と、受信側のノードで正しい信号値を受信できない可能性が高くなる。OXC11において光信号から電気信号に変換される場合は、電気信号から光信号へ再変換されるため、減衰した光信号は回復する。一方、光パスを設定した場合、光信号は電気信号から再変換されること無く減衰する。光パスの伝送距離が長い場合、減衰した光信号を回復させるため、必要に応じてOXC11に光再生中継器を実装する必要がある。よって光パスを設定する2ノード間の伝送距離が長くなるほど、光再生中継器を実装するコストが増大する。
【0021】
以上の通り、特定の2ノード間に光パスを設けることにより、IP/WDMネットワーク1にはコスト減少およびコスト増加が発生しうる。
【0022】
図2はIP/WDMネットワーク1のネットワークトポロジを評価するためのネットワーク評価装置2のブロック図である。ネットワーク評価装置2は、RAM(Randam Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)21、記憶部22、出力部23、入力部24、CPU(Central Access Memory)25を有する。
【0023】
RAM20はデータの読み書きを電気的に行うための記憶装置である。RAM20に記憶されたデータは、ネットワーク評価装置2の電源が切断されると消滅する。RAM20はCPU25で実行されるプログラムおよびプログラムの実行結果を一時的に記憶する。
【0024】
ROM21はデータの読み書きを電気的に行うための記憶装置である。ROM21に記憶されたデータは、ネットワーク評価装置2の電源が切断されても保持される。ROM21はネットワーク評価装置2のファームウェアを記憶する。
【0025】
記憶部22はCPU25により実行されるプログラム、プログラムの評価対象データ、およびプログラムの実行結果を記憶する。記憶部22は例えばハードディスクなどである。記憶部22は物理トポロジデータ26、デマンドテーブル27、論理トポロジデータ28、波長数テーブル85、コスト計算プログラム29、デマンド評価プログラム30、論理トポロジ生成プログラム31を記憶する。
【0026】
物理トポロジデータ26は、評価対象であるIP/WDMネットワーク1の物理ネットワークトポロジ情報である。物理トポロジデータ26には、各リンクで多重化可能な波長数も含まれる。デマンドテーブル27は、特定の2ノード間に要求されるデマンドの情報である。デマンドとは、トラフィックの始点および終点と、そこを流れる信号の伝送量要求値で規定される情報のことである。論理トポロジデータ28は、IP/WDMネットワーク1の論理ネットワークトポロジ情報である。論理トポロジデータ28の初期値は、物理トポロジデータ26に基づいて決定する。波長数テーブル85は、リンクごとの使用波長数を管理する情報である。リンクごとに多重化可能な波長数の上限値が決まっているため、波長数テーブル85に基づいて、リンクごとの多重化可能な残り波長数を確認することが出来る。
【0027】
コスト計算プログラム29はCPU25に対し、トポロジ変更に伴うコストを計算させるプログラムである。デマンド評価プログラム30はCPU25に対し、トポロジ変更に伴う各ノード間のネットワークパスが、デマンドテーブル27に示す要求値を満足しているかを評価させるプログラムである。論理トポロジ生成プログラム31はCPU25に対し、物理トポロジデータ26に基づいて、論理トポロジデータ28の初期値を生成させるプログラムである。論理トポロジ更新プログラム32はCPU25に対し、特定のノード間に光パスを設定させると共に、光パス設定後の論理ネットワークトポロジデータを論理トポロジデータ28として記録させるプログラムである。
【0028】
ところで、上記した各データ26〜28および各プログラム29〜32については、必ずしも記憶部22に記憶させておく必要はなく、例えば、ネットワーク評価装置2に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」、または、ネットワーク評価装置2の内外に備えられるROM21などの「固定用の物理媒体」、さらには、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してネットワーク評価装置2に接続される「他のコンピュータ(またはサーバ)」に記憶させておき、ネットワーク評価装置2がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0029】
出力部23はネットワーク評価装置2の評価結果を外部へ出力する。出力部23は例えばディスプレイである。
【0030】
入力部24はネットワーク評価装置2での評価条件を入力する。入力部24は例えばキーボードやマウスである。
【0031】
CPU25は記憶部22から読み出されたプログラムを実行するための演算装置である。
【0032】
以上の通りネットワーク評価装置2は、記憶部22に記憶されたデータに基づいて、記憶部22に記憶された各プログラムをCPU25に実行させることにより、ネットワークトポロジのコストを評価することが出来る。
【0033】
図3はネットワーク評価装置2の機能ブロック図である。論理トポロジ生成部45は、CPU25によって論理トポロジ生成プログラム31を実行することにより実現する機能ブロックである。論理トポロジ生成部45は、物理トポロジデータ26およびデマンドテーブル27に基づいて、論理トポロジデータ28を生成する。
【0034】
コスト計算部40は、CPU25によってコスト計算プログラム29を実行することにより実現する機能ブロックである。コスト計算部40はデマンドテーブル27に基づいてデマンドを選択し、デマンドの伝送を光パスに変更した場合のコスト計算を実行する。コスト計算部40は増加コスト計算部41、減少コスト計算部42を有する。増加コスト計算部41は光パスへの変更に伴うコストの増加量を計算する。減少コスト計算部42は光パスへの変更に伴うコストの減少量を計算する。コスト計算部40は増加コスト計算部41および減少コスト計算部42のコスト計算結果に基づいて、選択した2ノード間の光パスへの変更に伴うトータルコストを計算する。
【0035】
デマンド評価部44は、CPU25によってデマンド評価プログラム30を実行することにより実現する機能ブロックである。デマンド評価部44は、コスト計算部40によるコストの計算結果に基づいて、評価値が最も高いデマンドを光パスに設定するデマンドとして選択する。
【0036】
論理トポロジ更新部43は、CPU25によって論理トポロジ更新プログラム32を実行することにより実現する機能ブロックである。論理トポロジ更新部43は、デマンド評価部44による評価結果に基づいて、光パスを設定した論理トポロジを論理トポロジデータ28として記憶部22に記憶させる。また論理トポロジ更新部43は、更新後の論理トポロジデータ28に基づくネットワーク全体のコスト算出結果を記録する。
【0037】
以上の通りネットワーク評価装置2は、記憶部22に記憶されたプログラムをCPU25に実行させることにより、ネットワークの評価に必要な機能を実現することが出来る。
【0038】
図4はネットワーク評価装置2を用いて評価を行うIP/WDMネットワーク4のブロック図である。IP/WDMネットワーク4はノードA、B、C、D、E、F、50、51、52、53、54、55、およびリンクA−F、F−50、50−51、51−E、F−52、52−D、F−53、53−54、54−C、F−55、55−Bを有する。ここでリンクとは、ノード間を接続する光ファイバである。例えばリンクA−Fは、ノードA、F間を接続する光ファイバを示す。
【0039】
図中の光ファイバに添えられている数字は、それぞれのリンクの長さである。本実施例において、リンクA−Fは500km、リンクF−50は300km、リンク50−51は200km、リンク51−Eは300km、リンクF−52は200km、リンク52−Dは400km、リンクF−53は1100km、リンク53−54は1400km、リンク54−Cは900km、リンクF−55は1100km、リンク55−Bは1200kmの長さの光ファイバである。
【0040】
図4のIP/WDMネットワーク4を評価対象とした場合のネットワーク評価装置2による評価手順を以下に説明する。
【0041】
図5は図4のIP/WDMネットワーク4に関するテーブル図である。図5のAはIP/WDMネットワーク4の論理トポロジデータ28を示すテーブル図である。図5のAに示すテーブルは、記憶部22に記憶されている。また図5のBはIP/WDMネットワーク4のデマンドテーブル27を示すテーブル図である。図5のBに示すデマンドテーブル27は、記憶部22に記憶されている。
【0042】
図5のAは、各光ファイバの始点および終点に接続されたノードと、光ファイバの長さを示すテーブル図である。図5のAにおいて、列60は始点となるノード、列61は終点となるノード、列62は光ファイバの長さを示す。
【0043】
図5のAのテーブル図の各行は、各リンクの始点ノード、終点ノード、およびリンクの長さを示す。例えば行63は、リンクの始点ノードがA、終点ノードがF、長さが500kmであることを示す。他の行も同様である。
【0044】
図5のBは、各デマンドの情報を示すデマンドデータのテーブル図である。図5のBにおいて、列64はトラフィックの始点ノード、列65はトラフィックの終点ノード、列66はノード間に要求される伝送量要求値を示す。
【0045】
図5のBのテーブル図の各行は、デマンドごとのネットワーク区間の始点ノード、終点ノードおよび伝送量の要求値をそれぞれ示す。例えば行67は、デマンドが設定された区間の始点ノードがA、終点ノードがB、伝送量の要求値が8Gbpsであることを示す。他の行も同様である。
【0046】
以上の通りネットワーク評価装置2は、評価対象となるIP/WDMネットワーク4に関する情報を記憶部22に記憶する。
【0047】
図6はIP/WDMネットワークに対するネットワーク評価装置2の評価処理フロー図である。ネットワーク評価装置2において、論理トポロジ生成部45は、物理トポロジデータ26およびデマンドテーブル27に基づいて、評価処理の初期値となる論理トポロジデータを生成する(S11)。
【0048】
コスト計算部40は、生成された論理トポロジデータに基づいて、デマンド値が指定されている区間を光パスに設定した場合の、IP/WDMネットワークの増加コストおよび減少コストを計算する(S12)。
【0049】
デマンド評価部44は、コスト計算部40による、デマンドごとのコスト計算結果に基づいて、もっともトータルコストの削減効果が高い区間を光パスに設定する(S13)。
【0050】
デマンド評価部44は、デマンド値が設定されている区間を含む全区間について、各ノードのルーティング処理を実行させる(S14)。各リンクは切り替え可能な光信号の波長数の上限値を有する。デマンド評価部44は、ルーティング処理により、各リンクでの光信号の切り替え波長数が制約を満たしているかを波長数テーブル85に基づいて確認する(S15)。
【0051】
各リンクでの光信号の切り替え波長数が制約を満たしている場合(S15:YES)、デマンド評価部44は評価処理を継続する。あるリンクでの光信号の切り替え波長数が制約を満たしていない場合(S15:NO)、論理トポロジ更新部43は、デマンド評価部44による評価結果に基づいて、記憶部22に記憶された論理トポロジデータを更新する(S18)。また論理トポロジ更新部43は、更新後の論理トポロジデータに基づいて、波長数テーブル85を更新する。
【0052】
デマンド評価部44は波長数に続いて、論理トポロジがフルメッシュか否かを判定する(S16)。ここでフルメッシュとは、全ての区間が光パスに設定されている状態をいう。論理トポロジがフルメッシュの場合(S16:YES)、これ以上の評価は不要であるため、論理トポロジ更新部43は、デマンド評価部44による評価結果に基づいて、記憶部22に記憶された論理トポロジデータを更新する(S18)。
【0053】
論理トポロジがフルメッシュでない場合(S16:NO)、論理トポロジ更新部43は論理トポロジと対応するIP/WDMネットワーク全体のトータルコストを記録する(S17)。ネットワーク評価装置2は、ステップS12からステップS18の処理を繰り返す。
【0054】
以上の通りネットワーク評価装置2は、光パスの設定による増加コストおよび減少コストを考慮してネットワークを評価することが出来る。
【0055】
図7はデマンド評価部44による、デマンドごとのトータルコストの評価結果テーブル7である。評価結果テーブル7において、列75、76は図5のBのデマンドテーブルから参照した区間および伝送量要求値である。
【0056】
評価結果テーブル7において、列77は列75で指定された区間におけるホップ数である。ホップ数は、デマンドの区間に光パスを設定した場合に通過するリンク数である。列78は列77のホップ数に対応するコストの減少値である。列79は図5のAの区間の長さを考慮した場合の、光再生中継器挿入に伴うコストの増加値である。列80はコストの減少値およびコストの増加値に基づくトータルコストの評価値である。
【0057】
IP/WDMネットワーク4の評価における前提条件を例えば以下の通り定める。IP/WDMネットワーク4において、1波長当りの容量値を20Gbps、1本のリンクに多重可能な波長数を3波長、光再生中継器の設定が必要な最長設置間隔を1500km、OXCに搭載されるWDMポート、光再生中継器、ルータに搭載されるIPポート1個当りのコストの比を1:2:5とする。前提条件はあらかじめ記憶部22に記憶させても良いし、入力部24から入力可能としても良い。
【0058】
コストの減少値は減少コスト計算部42により計算される。コストの減少値は、例えば減少値=(ホップ数−1)×(伝送量の要求値)×(1個当りのIPポートとWDMポートのコストの和)により計算することが出来る。
【0059】
またコストの増加値は増加コスト計算部41により計算される。コストの増加値は、例えば増加値=(伝送量の要求値)×(増設が必要な光再生中継器の数)×(1個当りの光再生中継器のコスト)により計算することが出来る。
【0060】
評価結果テーブル7において、行71から74はそれぞれの指定区間における、トータルコストの評価結果である。行71はIP/WDMネットワーク4の区間ABに光パスを設定した場合の評価結果である。行72はIP/WDMネットワーク4の区間ACに光パスを設定した場合の評価結果である。行73はIP/WDMネットワーク4の区間ADに光パスを設定した場合の評価結果である。行74はIP/WDMネットワーク4の区間AEに光パスを設定した場合の評価結果である。
【0061】
例えば行71の場合、区間ABの伝送量の要求値は8Gbpsであり、ホップ数は3である。また区間ABの距離は図4より2800kmである。以上の条件により区間ABにおけるコストの減少値は、(3−1)×8×(1+5)=96となる。一方、区間ABにおけるコストの増加値は、8×2×2=32となる。よって評価値は96−32=64となる。
【0062】
区間ABと同様に区間AC、AD、AEについても算出すると、距離に基づくコストの増加値を考慮しない場合、コストの減少値が最大になるのは行71より区間ABであることがわかる。一方、コストの増加値を考慮すると、区間AD、AEは2ノード間の距離が1500km以下であるため、光再生中継器の設置によるコスト増加がゼロと算出される。よって、コストの増加値を考慮した評価値で判断すると、評価値が最も高いのは列80より、区間ADであることが分かる。
【0063】
ネットワーク評価装置2において、デマンド評価部44はコスト計算部40の計算結果に基づき、区間ADに光パスを設定するよう、論理トポロジ更新部43へ通知する。論理トポロジ更新部43は、通知された情報に従って区間ADに光パスを設定した論理トポロジで論理トポロジデータ28を更新する。
【0064】
以上の通りネットワーク評価装置2は、2ノード間の距離に基づく光再生中継器の設置コストの増大を考慮して、ネットワークトポロジの評価を実行することが出来る。
【0065】
図8はIP/WDMネットワーク4の区間ADに光パスを設定した、IP/WDMネットワーク4aのブロック図である。IP/WDMネットワーク4aにおいて、IP/WDMネットワーク4と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0066】
図8において、光パス8はノードAからノードDに設定されている。光パスを設定した区間の光信号は、実際にはノードFおよびノード52を経由する。前述の通り、それぞれのノードは最大3波長を多重可能である。ノードAF間に着目すると、1波長はノードAD間の光パスに使用され、1波長は他の信号を送信するために使用されるため、残り1波長となる。
【0067】
図9はノードA―D間に光パスを設定後の各リンクでの使用波長数を管理する波長数テーブルである。波長数テーブル85は記憶部22に記憶されている。
【0068】
波長数テーブル85において、列91はリンクの区間を示す。列92はデマンドテーブル27において指定された区間のうち、列91に示すリンクを通過する区間を示す。列93は、列92の通過指定区間のうち、光パスを設定したデマンドの区間を示す。列94は、列91に示すリンクを通過する光信号の伝送に使用する波長数を示す。
【0069】
波長数テーブル85の各行は、各リンクの通過指定区間、光パス区間、および使用波長数を示す。例えば行95は、リンクA−Fにおいて、通過指定区間はA−B、A−C、A−D、A−Eであり、このうち光パスに設定された区間はA−Dであり、使用波長数は2であることを示す。すなわち行95は、区間A−Dに設定した光パスおよび他のデマンドで指定された伝送量を伝搬させるのに、リンクA−Fには2つの波長が使用されていることを示す。
【0070】
また行96は、リンクF−55において、通過指定区間はA−Bであり、光パスは設定されておらず、使用波長数は1であることを示す。さらに行97は、リンクF−52において、通過指定区間はA−Dであり、光パスはノードAD間に設定されており、使用波長数は物理リンクに設定した1に対し、更に光パスを1追加した2であることを示す。
【0071】
波長数テーブル85の列94を参照すると、いずれのリンクにおいても使用可能な波長数の上限である3に達していないことが分かる。よって論理トポロジ更新部43は、波長数テーブル85を設定することにより、更に光パスを設定可能か否か判定することが出来る。
【0072】
図10はノードAD間に光パスを設定した後の、指定区間ごとのトータルコストの評価結果テーブル7aである。評価結果テーブル7aにおいて、評価結果テーブル7と同一構成の各列には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0073】
評価結果テーブル7aの各行は、各区間の評価結果である。ノードAB間は光パスが設定されたので、評価結果テーブル7aは評価結果テーブル7の行73を削除したものとなっている。
【0074】
行71、72、74において、列78のコスト減少値のみに着目すると、もっともコストの減少値が大きいのは行71の区間ABとなる。一方、光再生中継器の設置によるコストの増加値を考慮すると、最も評価値が高いのは区間AEとなる。
【0075】
よってネットワーク評価装置2において、デマンド評価部44は区間ADに加え、区間AEに光パスを設定するよう、論理トポロジ更新部43へ通知する。論理トポロジ更新部43は、通知された情報に従って区間ADおよび区間AEに光パスを設定した論理トポロジで論理トポロジデータ28を更新する。
【0076】
以上の通りネットワーク評価装置2は、2ノード間の距離に基づく光再生中継器の設置コストの増大を考慮して、ネットワークトポロジの評価を実行することが出来る。
【0077】
図11はIP/WDMネットワーク4の区間ADおよび区間AEに光パスを設定した、IP/WDMネットワーク4bのブロック図である。IP/WDMネットワーク4bにおいて、IP/WDMネットワーク4と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0078】
図11において、光パス8に加え、光パス9がノードAからノードEに接続されている。光パスを設定した区間ADおよび区間AEの光信号は、いずれもリンクA−Fを通過する。
【0079】
図12は区間AD、AEに光パスを設定した後の、各リンクでの使用波長数を管理する波長数テーブル85aである。波長数テーブル85aにおいて、波長数テーブル85と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0080】
波長数テーブル85aの行95aにおいて、リンクA−Fを通過する指定区間のうち、光パスに設定された区間は区間AD、AEの2つである。よってリンクA−Fでの使用波長数は3となる。また行98において、新たに区間AEに光パスを設定したことにより、リンクF−50での使用波長数は2となる。
【0081】
前述の通り、それぞれのリンクに多重化可能な波長の最大値は3である。行95aのリンクA−Fに着目すると、1波長はノードAD間の光パスに使用され、1波長はノードAB間の光パスに使用され、残り1波長は他の信号を送信するために使用される。よってリンクA−Fでの使用波長数は、多重化可能な最大値である3波長となる。
【0082】
論理トポロジ更新部43は、更新された波長数テーブル85aに基づいて、各リンクにおける光信号の使用波長数をチェックする。本実施例において論理トポロジ更新部43は、リンクA−Fの使用波長数が3であると判定する。
【0083】
いずれかのリンクで使用波長数が最大値となった場合、ネットワーク評価装置2はコスト計算処理を終了する。
【0084】
以上の通りネットワーク評価装置2は、ノードのいずれかが切り替え可能な波長数に達するまで、光パスの設定を含むネットワークトポロジの評価を実行することが出来る。
【符号の説明】
【0085】
1 IP/WDMネットワーク
2 ネットワーク評価装置
4、4a、4b、IP/WDMネットワーク
7、7a 評価結果テーブル
8、9 光パス
10 ルータ
11 OXC
12 光ケーブル
20 RAM
21 ROM
22 記憶部
23 出力部
24 入力部
25 CPU
26 物理トポロジデータ
27 デマンドテーブル
28 論理トポロジデータ
29 コスト計算プログラム
30 デマンド評価プログラム
31 論理トポロジ生成プログラム
32 論理トポロジ更新プログラム
40 コスト計算部
41 増加コスト計算部
42 減少コスト計算部
43 論理トポロジ更新部
44 デマンド評価部
45 論理トポロジ生成部
85、85a 波長数テーブル
50、51、52、53、54、55 ノード
A、B、C、D、E、F ノード



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードと、該ノード間を接続する複数のリンクと、該ノードごとに設けられ、該リンクを伝搬する信号の転送先を検出する複数のルータとを有する光ネットワークの設計を評価するネットワーク評価装置であって、
該リンクごとの伝送距離および伝送量要求値、および光伝送損失を補償するための中継器を挿入する区間距離を記憶する記憶部と、
該伝送量要求値に基づいて、該複数のノードから光パスを設ける2つのノードを選択し、該2つのノード間の信号伝搬を中継するノードおよびルータの数に基づいてコスト減少量を算出すると共に、該光パスの伝送距離および該区間距離に応じて挿入する該中継器の数に基づいてコスト増加量を算出し、該コスト減少量と該コスト増加量に基づいて光ネットワークの最適値を決定する制御部と
を有するネットワーク評価装置。
【請求項2】
該記憶部はさらに該ノードからの信号転送先の選択が可能な選択波長数を記憶し、
該制御部は、該伝送量要求値および該使用波長数に基づいて該複数のノードのうちの任意の2つのノードを直接接続する光パスを設けた場合に、該2つのノード間の信号伝搬を中継するノードの数に基づいてコスト減少量を算出することを特徴とする、請求項1に記載のネットワーク評価装置。
【請求項3】
該記憶部はさらに、該ノード、該ルータ、および該中継器のコストの比率を記憶し、
該制御部は、該コストの比率に基づいて、該コスト減少量および該コスト増加量を算出することを特徴とする、請求項1に記載のネットワーク評価装置。
【請求項4】
該リンクごとの伝送距離および伝送量要求値、および光伝送損失を補償するための中継器を挿入する区間距離を記憶する記憶部を有するコンピュータに、複数のノードと、該ノード間を接続する複数のリンクと、該ノードごとに設けられ、該リンクを伝搬する信号の転送先を検出する複数のルータとを有する光ネットワークの設計を評価させるネットワーク評価プログラムであって、該コンピュータに、
該伝送量要求値に基づいて、該複数のノードから光パスを設ける2つのノードを選択させ、
該2つのノード間の信号伝搬を中継するノードおよびルータの数に基づいてコスト減少量を算出させ、
該光パスの伝送距離および該区間距離に応じて挿入する該中継器の数に基づいてコスト増加量を算出させ、
該コスト減少量と該コスト増加量に基づいて光ネットワークの最適値を決定させる
ネットワーク評価プログラム。
【請求項5】
さらに該コンピュータに、
該ノードからの信号転送先の選択が可能な選択波長数を記憶させ、
該伝送量要求値および該切替波長数に基づいて該複数のノードのうちの任意の2つのノードを直接接続する光パスを設けた場合に、該2つのノード間の信号伝搬を中継するノードの数に基づいてコスト減少量を算出させることを特徴とする、請求項4に記載のネットワーク評価プログラム。
【請求項6】
さらに該コンピュータに
該ノード、該ルータ、および該中継器のコストの比率を記憶させ、
該コストの比率に基づいて、該コスト減少量および該コスト増加量を算出させることを特徴とする、請求項4に記載のネットワーク評価プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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