説明

ネットワーク通信機器、電子機器、およびプログラム

【課題】 電子機器の消費電力を低くしつつ電源モードの切り替えに起因するネットワーク通信障害の発生を低減する。
【解決手段】 電源制御装置3において、電源制御部32は、ネットワーク通信機能を有する画像形成装置1の電源モードを制御し、通信代行部41は、画像形成装置1のルーティング情報を取得し、電源制御部32により設定された電源モードにおいて画像形成装置1のネットワーク機能が停止されている期間に、そのルーティング情報を使用して画像形成装置1のネットワーク通信を代行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク通信機器、電子機器、およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置などの電子機器には、電源モードとして省エネモードを有しているものがある。そのような電子機器は、省エネモードでは、メインCPU(Central Processing Unit)などへの給電を停止して、消費電力の少ないサブCPUでネットワーク通信機能を維持する(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−29102号公報
【特許文献2】特開2004−34488号公報
【特許文献3】国際公開WO2006/043436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような電子機器では、電源モードの切り替え時に、ネットワーク通信を行うCPUが、メインCPUからサブCPUへ、あるいはサブCPUからメインCPUへと切り替えられるため、切り替え前後でARP(Address Resolution Protocol )テーブル、ルーティングテーブルなどといったルーティング情報の整合がとれなくなり、ネットワーク通信に障害が発生する可能性がある。
【0005】
また、省エネモードであっても、電子機器内部で、イーサーネット(商標)などのレイヤー2(以下、L2という)ネットワーク上のフレームがその電子機器宛のフレームであるか否かの判定を行っており、L2ネットワークの高速化に伴ってこの判定が多く発生するため、省エネモードであっても電子機器の消費電力が多くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、電子機器の消費電力を低くしつつ電源モードの切り替えに起因するネットワーク通信障害の発生を低減するネットワーク通信機器およびプログラム、並びに、そのネットワーク通信機器を内蔵する電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0008】
本発明に係るネットワーク通信機器は、ネットワーク通信機能を有する所定の電子機器の電源モードを制御する電源制御部と、電子機器のルーティング情報を取得し、電源制御部により設定された電源モードにおいて電子機器のネットワーク機能が停止されている期間に、ルーティング情報を使用して電子機器のネットワーク通信を代行する通信代行部とを備える。
【0009】
これにより、電子機器のルーティング情報が引き継がれるため、電源モードの切り替えに起因するネットワーク通信障害の発生が低減される。また、電源が通常切られないネットワーク機器内でネットワーク通信を代行するので、そのネットワーク機器の消費電力をほとんど増加させずに電子機器の消費電力を低くすることができる。
【0010】
また、本発明に係るネットワーク通信機器は、上記のネットワーク通信機器に加え、次のようにしてもよい。この場合、通信代行部は、電源制御部による電源モードの変更で電子機器のネットワーク機能が停止される前にルーティング情報を取得し、電源制御部による電源モードの変更で電子機器のネットワーク機能が再開された後にその時点のルーティング情報を電子機器へ供給する。
【0011】
これにより、電子機器のネットワーク機能停止時には電子機器からルーティング情報が引き継がれ、電子機器のネットワーク機能再開時には電子機器へルーティング情報が引き継がれるため、電源モードの切り替えに起因するネットワーク通信障害の発生が低減される。
【0012】
また、本発明に係るネットワーク通信機器は、上記のネットワーク通信機器に加え、次のようにしてもよい。この場合、電源制御部は、電子機器への給電を停止および開始させ、通信代行部は、電源制御部が電子機器への給電を停止させる前にルーティング情報を取得し、電源制御部が電子機器への給電を再開させた後にその時点のルーティング情報を電子機器へ供給する。
【0013】
また、本発明に係るネットワーク通信機器は、上記のネットワーク通信機器に加え、次のようにしてもよい。この場合、ネットワーク通信機器は、レイヤー2の所定のフレームタイプのフレームを使用してルーティング情報を電子機器から受信するL2通信部を備える。
【0014】
これにより、同一のレイヤー2ネットワークでネットワーク通信機器と電子機器とを接続するだけで、ネットワーク設定なしで、上述のネットワーク通信機能の代行が行われる。
【0015】
また、本発明に係るネットワーク通信機器は、上記のネットワーク通信機器に加え、次のようにしてもよい。この場合、ネットワーク通信機器は、レイヤー2の所定のフレームタイプのフレームを使用してルーティング情報を電子機器から受信するとともにルーティング情報を電子機器へ送信するL2通信部を備える。
【0016】
これにより、同一のレイヤー2ネットワークでネットワーク通信機器と電子機器とを接続するだけで、ネットワーク設定なしで、上述のネットワーク通信機能の代行が行われる。
【0017】
また、本発明に係るネットワーク通信機器は、上記のネットワーク通信機器に加え、次のようにしてもよい。この場合、上述のルーティング情報は、ARPテーブルおよびルーティングテーブルの少なくとも一方を含む。
【0018】
本発明に係る電子機器は、上述の所定の電子機器であって、上述のネットワーク通信機器を内蔵する。
【0019】
本発明に係るプログラムは、コンピューターを、ネットワーク通信機能を有する所定の電子機器の電源モードを制御する電源制御部、および電子機器のルーティング情報を取得し、電源制御部により設定された電源モードにおいて電子機器のネットワーク機能が停止されている期間に、ルーティング情報を使用して電子機器のネットワーク通信を代行する通信代行部として機能させる。
【0020】
これにより、電子機器のルーティング情報が引き継がれるため、電源モードの切り替えに起因するネットワーク通信障害の発生が低減される。また、ネットワーク機器内でネットワーク通信を代行するので、そのネットワーク機器の消費電力をほとんど増加させずに電子機器の消費電力を低くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子機器の消費電力を低くしつつ電源モードの切り替えに起因するネットワーク通信障害の発生を低減するネットワーク通信機器などが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る電源制御装置を含むネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すシステムにおいて、画像形成装置への給電停止時における電源制御装置の動作を説明するシーケンス図である。
【図3】図3は、図1に示すシステムにおいて、画像形成装置への給電再開時における電源制御装置の動作を説明するシーケンス図である。
【図4】図4は、図1における電源制御装置のL2スイッチ部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、図4に示すL2スイッチ部のデータプレーンの動作について説明するシーケンス図である。
【図6】図6は、図4に示すL2スイッチ部のコントロールプレーンの動作について説明するシーケンス図である。
【図7】図7は、通信代行時の、図4に示すL2スイッチ部のコントロールプレーンの通信代行に関する動作について説明するシーケンス図である。
【図8】図8は、給電再開時の、図4に示すL2スイッチ部のコントロールフレームの処理について説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る電源制御装置を含むネットワークシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すシステムでは、画像形成装置1の電源ラインに電源開閉装置2が接続されており、ネットワーク通信機器である電源制御装置3が、画像形成装置1とネットワーク4との間に接続されている。さらに、ネットワーク4には、端末装置5が接続されている。
【0025】
画像形成装置1は、ネットワーク通信機能を有する電子機器であって、通信装置11、通信処理部12、コントローラー13、および電源モード管理部14を有する。
【0026】
通信装置11は、ネットワークインターフェイスであって、イーサーネット(商標)などのL2ネットワークで電源制御装置3に接続されている。
【0027】
通信処理部12は、通信装置11を制御して、レイヤー2以上のレイヤーでのデータ通信を行う。
【0028】
コントローラー13は、印刷装置、画像読取装置、ファクシミリ装置などの図示せぬ内部装置を制御して、端末装置5からのユーザーによる指令などに従って各種ジョブを実行させる。
【0029】
電源モード管理部14は、通信装置11および通信処理部12を使用して、給電停止の要求、給電停止前のルーティング情報などの送信、給電再開後のルーティング情報の送信要求などを電源制御装置3へ送信する。
【0030】
この実施の形態では、ルーティング情報は、ARPテーブルおよびルーティングテーブルを含む。
【0031】
なお、通信処理部12、コントローラー13、および電源モード管理部14は、図示せぬ内蔵コンピューターでプログラムを実行することにより実現される。
【0032】
また、電源開閉装置2は、ネットワーク、周辺機器インターフェイスなどで電源制御装置3に接続され、画像形成装置1と商用電源とに接続され、電源制御装置3からの指令に応じて、画像形成装置1への給電をオン/オフする。
【0033】
また、電源制御装置3は、例えばL2ブリッジ、L2スイッチなどのネットワーク通信機器であって、L2スイッチ部31および電源制御部32を有する。
【0034】
L2スイッチ部31は、L2スイッチとして機能するとともに、画像形成装置1のルーティング情報および機器管理情報を取得し、電源制御部32により設定された電源モードにおいて画像形成装置1のネットワーク機能が停止されている期間に、そのルーティング情報および機器管理情報を使用して画像形成装置1のネットワーク通信(画像形成装置1への要求に対する応答など)を代行する通信代行部41を有する。
【0035】
通信代行部41は、電源制御部32による電源モードの変更で画像形成装置1のネットワーク機能が停止される前にルーティング情報および機器管理情報を取得し、電源制御部32による電源モードの変更で画像形成装置1のネットワーク機能が再開された後にその時点のルーティング情報を画像形成装置1へ供給する。
【0036】
この実施の形態では、つまり、通信代行部41は、電源制御部32が画像形成装置1への給電を停止させる前にルーティング情報を取得し、電源制御部32が画像形成装置1への給電を再開させた後にその時点のルーティング情報を画像形成装置1へ供給する。
【0037】
電源制御部32は、電源開閉装置2を使用して、画像形成装置1の電源モードを制御する。この実施の形態では、電源制御部32は、電源開閉装置2に、画像形成装置1への給電の停止および再開を実行させる。
【0038】
なお、電源制御部32および通信代行部41は、図示せぬ内蔵コンピューターでプログラムを実行することにより実現される。そのプログラムは、電源制御装置3内の図示せぬ不揮発性の記憶装置に予め記憶されている。
【0039】
また、ネットワーク4は、イーサーネット(商標)などのネットワークである。端末装置5は、ネットワーク4に接続され、画像形成装置1および電源制御装置3用のドライバーをインストールされたパーソナルコンピューターである。
【0040】
次に、上記電源制御装置3の動作について説明する。ここでは、画像形成装置1の給電停止時の動作と給電再開時の動作を説明する。
【0041】
(1)画像形成装置1への給電停止時の動作
【0042】
図2は、図1に示すシステムにおいて、画像形成装置1への給電停止時における電源制御装置3の動作を説明するシーケンス図である。
【0043】
画像形成装置1の電源モード管理部14は、画像形成装置1内で所定の条件(所定期間ジョブが発生しないこと、ユーザーによる指示、スケジューリングなど)が成立すると、画像形成装置1への給電停止を要求する電源モード変更要求を、通信装置11および通信処理部12を使用して電源制御装置3へ送信する(ステップS1)。
【0044】
このとき、電源モード管理部14は、通信処理部12などから、ARPテーブル、ルーティングテーブルなどのルーティング情報を取得し、通信装置11および通信処理部12を使用して電源制御装置3へ送信する(ステップS2)。
【0045】
また、このとき、電源モード管理部14は、SNMP(Simple Network Management Protocol)のMIB(Management Information Base)などの画像形成装置1の機器管理情報をルーティング情報とともに電源制御装置3へ送信する。
【0046】
電源制御装置3のL2スイッチ部31における通信代行部41は、その電源モード変更要求、ルーティング情報および機器管理情報を取得すると、通信代行が可能であるか否かを判定し、通信代行が可能である場合には、その電源モード変更要求に対する電源モード変更の許可通知を画像形成装置1へ送信し(ステップS3)、その機器管理情報を保存するとともに、そのルーティング情報をL2スイッチ部31に反映して、画像形成装置1の通信の代行を開始する(ステップS4)。このとき、通信代行部41は、ARPテーブルから画像形成装置1のMAC(Media Access Control)アドレスを抽出するとともに、ルーティングテーブルから画像形成装置1のIPアドレスを抽出し、それらが宛先となっている通信データ(フレーム,パケット)を受信し、必要に応じて応答する。
【0047】
画像形成装置1の通信の代行を行っている期間においては、通信代行部41は、ネットワーク4から画像形成装置1宛ての通信データ(各種要求など)をすべて受信し、必要に応じて応答を行い、その通信データを画像形成装置1に向けて転送しない。また、画像形成装置1の通信の代行を行っている期間においては、通信代行部41は、必要に応じて、ルーティング情報を更新していく。
【0048】
なお、通信代行が可能ではないと判定した場合、通信代行部41は、電源モード変更の拒否通知を画像形成装置1へ送信する。
【0049】
例えば、通信代行部41は、通信代行に必要なルーティング情報が取得された場合には、通信代行が可能であると判定し、通信代行に必要なルーティング情報が取得されていない場合には、通信代行が可能ではないと判定する。
【0050】
画像形成装置1では、電源モード管理部14は、通信装置11および通信処理部12を使用して、電源モード変更の許可通知を受信すると、当該画像形成装置1への給電を停止させる電源モード変更指令を電源制御装置3へ送信する(ステップS5)。
【0051】
電源制御装置3では、L2スイッチ部31がその電源モード変更指令を受信すると、電源制御部32は、給電停止指令を電源開閉装置2へ送信する(ステップS6)。電源開閉装置2は、給電停止指令を受信すると、画像形成装置1の電源ラインを遮断して、画像形成装置1への給電を停止する(ステップS7)。電源開閉装置2は、画像形成装置1の電源ラインを遮断すると、給電停止通知を電源制御部32へ送信する(ステップS8)。
【0052】
このようにして、電源制御装置3による通信代行が開始された後、画像形成装置1への給電が停止される。この給電停止により、画像形成装置1内のルーティング情報は消失する。これにより、画像形成装置1のルーティング情報が電源制御装置3に引き継がれるため、通信障害などが発生しない。
【0053】
(2)画像形成装置1への給電再開時の動作
【0054】
図3は、図1に示すシステムにおいて、画像形成装置1への給電再開時における電源制御装置3の動作を説明するシーケンス図である。
【0055】
画像形成装置1の給電を再開させる場合、ユーザーは、例えば端末装置5を操作して、画像形成装置1の給電を再開させるための電源モード変更指令を電源制御装置3へ送信させる(ステップS21)。
【0056】
電源制御装置3では、L2スイッチ部31がネットワーク4を介してその電源モード変更指令を受信すると、電源制御部32は、給電開始指令を電源開閉装置2へ送信する(ステップS22)。電源開閉装置2は、給電開始指令を受信すると、画像形成装置1の電源ラインを接続して、画像形成装置1への給電を開始する(ステップS23)。これにより、画像形成装置1への給電が再開され、画像形成装置1は、起動処理を開始する(ステップS24)。電源開閉装置2は、画像形成装置1の電源ラインを接続すると、給電開始通知を電源制御部32へ送信する(ステップS25)。
【0057】
電源制御部32は、給電開始通知を受信すると、画像形成装置1への給電が再開されたことを示す電源モード変更開始通知を、L2スイッチ部31を使用して端末装置5へ送信する(ステップS26)。端末装置5は、その電源モード変更開始通知を受信すると、給電が再開されたことを示すメッセージを表示する。
【0058】
画像形成装置1では、起動処理において、電源モード管理部14が、ルーティング情報の送信要求を、通信装置11および通信処理部12を使用して、電源制御装置3へ送信する(ステップS27)。
【0059】
電源制御装置3では、通信代行部41が、その送信要求を受信すると、その時点でのルーティング情報を取得し、電源モード管理部14へ送信する(ステップS28)。
【0060】
電源モード管理部14は、そのルーティング情報を受信すると、そのルーティング情報を通信処理部12に反映する(ステップS29)。これにより、通信処理部12は、そのルーティング情報を使用してネットワーク通信を開始する。
【0061】
そして、起動処理が完了すると、電源モード管理部14は、起動処理完了通知を、通信装置11および通信処理部12を使用して、電源制御装置3へ送信する(ステップS30)。
【0062】
電源制御装置3では、通信代行部41は、起動処理完了通知を受信すると、通信代行を終了し(ステップS31)、通信代行終了後に画像処理装置1宛ての通信データを受信すると、画像形成装置1へ転送する。なお、通信代行部41は、ルーティング情報の送信(ステップS28)から通信代行の終了(ステップS31)までの期間に、画像形成装置1宛てのフレームを受信すると、そのフレームをバッファリングし、通信代行の終了時(ステップS31)に、バッファリングしているフレームを、画像形成装置1に宛てて送出する。
【0063】
また、電源モード管理部14は、通信代行が終了すると、電源モード変更完了通知を、L2スイッチ部31を使用して端末装置5へ送信する(ステップS32)。端末装置5は、その電源モード変更完了通知を受信すると、画像形成装置1がネットワーク4等を介して使用可能になったことを示すメッセージを表示する。これにより、端末装置5からのユーザーによる画像形成装置1の利用が可能となる。
【0064】
このようにして、給電が再開された後、電源制御装置3から画像形成装置1へその時点でのルーティング情報が適用される。その後、電源制御装置3による通信代行が終了する。これにより、電源制御装置3のルーティング情報が画像形成装置1に引き継がれるため、通信障害などが発生しない。
【0065】
ここで、電源制御装置3のL2スイッチ部31の詳細について説明する。
【0066】
図4は、図1における電源制御装置3のL2スイッチ部31の詳細な構成を示すブロック図である。L2スイッチ部31は、データプレーン51とコントロールプレーン52とを有する。データプレーン51は、イーサーネット(商標)などのL2でのフレームの転送処理を行う。コントロールプレーン52は、上述の通信代行部41を実現する。
【0067】
データプレーン51には、物理層61、L2チェッカー62、およびL2フォワーダー63が含まれる。
【0068】
物理層61は、L2でのフレームを電気信号として送受する通信回路である。
【0069】
L2チェッカー62は、物理装置61で受信されたL2でのフレームのヘッダーを解釈し、そのフレームのフレームデータをコントロールプレーン52に渡すか否かを判定する。
【0070】
この実施の形態では、L2チェッカー62は、受信されたフレームのフレームタイプが所定の値を有する場合、そのフレームのフレームデータをコントロールプレーン52に渡し、そうでない場合には、そのフレームをL2フォワーダー63から転送させる。
【0071】
この実施の形態では、通信代行時には、フレームタイプの値が、0x0800(IPv4)、0x86DD(IPv6)、0x9000(CTP:Configuration Testing Protocol)、および上述の電源制御に関する通信のための指定値のいずれかである場合、フレームデータがコントロールプレーン52に渡される。
【0072】
この実施の形態では、通信代行を行っていない時には、フレームタイプの値が、0x9000(CTP)、および上述の電源制御に関する通信のための指定値のいずれかである場合、フレームデータがコントロールプレーン52に渡される。
【0073】
L2フォワーダー63は、L2チェッカー62およびコントロールプレーン52により指定されたフレームを物理層61で転送させる。
【0074】
また、コントロールプレーン52には、コントローラー71、IP処理部72、TCP/UDP処理部73、およびアプリケーション部74が含まれる。
【0075】
コントローラー71は、データプレーン51からのフレームデータの受け付け、データプレーン51へのフレームデータの出力などを行う。コントローラー71は、フレームタイプの値が0x9000または上述の指定値である場合、フレームデータをアプリケーション部74に渡し、フレームタイプの値が0x0800または0x86DDである場合、IP処理部72に渡す。また、コントローラー71は、通信代行時に、必要に応じてARPテーブルを更新する。
【0076】
IP処理部72は、IP(Internet Protocol)(つまり、レイヤー3)での通信処理を行い、L2フレームとIPパケットとの間の変換を行う。また、IP処理部72は、通信代行時に、必要に応じてルーティングテーブルを更新する。
【0077】
TCP/UDP処理部73は、TCP(Transmission Control Protocol)およびUDP(User Datagram Protocol)(つまり、レイヤー4)での通信処理を行う。
【0078】
アプリケーション部74は、コントローラー71、IP処理部72、およびTCP/UDP処理部73を使用して通信代行を行うとともに、画像形成装置1との間でルーティング情報の送受を行う。また、アプリケーション部74は、電源制御に関する指令を受信すると、その指令を電源制御部32に転送する。
【0079】
図5は、図4に示すL2スイッチ部31のデータプレーン51の動作について説明するシーケンス図である。
【0080】
物理層61は、フレームの受信(ステップS51)を、L2チェッカー62に通知する(ステップS52)。
【0081】
通信代行を行っていないときは、L2チェッカー62は、そのフレームのフレームタイプの値が0x9000(CTP)、および上述の電源制御に関する通信のための指定値のいずれかであるか否かを判定する(ステップS53)。そのフレームタイプの値がそれらのいずれでもない場合、L2チェッカー62は、フレーム転送要求をL2フォワーダー63に供給し、L2フォワーダー63は、そのフレームの宛先に対応するポートにそのフレームを送出する(ステップS55)。そして、そのフレームは、物理層61によりそのポートから送出される(ステップS56)。
【0082】
通信代行を行っているときは、L2チェッカー62は、そのフレームのフレームタイプの値が0x0800(IPv4)、0x86DD(IPv6)、0x9000(CTP)、および上述の電源制御に関する通信のための指定値のいずれかであるか否かを判定する(ステップS53)。そのフレームタイプの値がそれらのいずれでもない場合、L2チェッカー62は、フレーム転送要求をL2フォワーダー63に供給し、L2フォワーダー63は、そのフレームの宛先に対応するポートにそのフレームを送出する(ステップS55)。そして、そのフレームは、物理層61によりそのポートから送出される(ステップS56)。
【0083】
図6は、図4に示すL2スイッチ部31のコントロールプレーン52の動作について説明するシーケンス図である。
【0084】
物理層61は、フレームの受信(ステップS51)を、L2チェッカー62に通知する(ステップS52)。
【0085】
通信代行が行われていないとき、L2チェッカー62は、そのフレームのフレームタイプの値が0x9000(CTP)、および上述の電源制御に関する通信のための指定値のいずれかであるか否かを判定する(ステップS53)。そのフレームタイプの値がそれらのいずれかである場合、L2チェッカー62は、そのフレームのフレームデータをコントロールプレーン52のコントローラー71に渡す(ステップS61)。
【0086】
コントローラー71は、そのフレームデータをアプリケーション部74に渡し(ステップS62)、アプリケーション部74は、そのフレームデータにより指定された処理を実行する(ステップS63)。
【0087】
CTPのフレームデータの場合、アプリケーション部74は、CTPに従って応答処理を行う。
【0088】
上述の電源制御に関する通信のためのフレームデータの場合(上述の電源モード変更要求:ステップS1、ルーティング情報:ステップS2、電源モード変更指令:ステップS5)、アプリケーション部74は、上述したように、そのフレームデータに対応する処理を行う。
【0089】
そして、アプリケーション部74は、処理結果を示す応答データを生成し、コントローラー71に出力する(ステップS64)。コントローラー71は、その処理結果をL2フォワーダー63に供給し(ステップS65)、L2フレームでL2フォワーダー63から、上述のフレームの送信元へ向けて送出させる(ステップS66)。
【0090】
図7は、通信代行時の、図4に示すL2スイッチ部31のコントロールプレーン52の通信代行に関する動作について説明するシーケンス図である。
【0091】
物理層61は、フレームの受信(ステップS71)を、L2チェッカー62に通知する(ステップS72)。
【0092】
通信代行を行っているときは、L2チェッカー62は、そのフレームのフレームタイプの値が0x0800(IPv4)、0x86DD(IPv6)、0x9000(CTP)、および上述の電源制御に関する通信のための指定値のいずれかであるか否かを判定する(ステップS73)。そのフレームタイプの値がそれらのいずれかである場合、L2チェッカー62は、そのフレームのフレームデータをコントロールプレーン52のコントローラー71に渡す(ステップS74)。
【0093】
そのフレームタイプの値が0x0800(IPv4)または0x86DD(IPv6)である場合、つまり、通信代行に関する、画像形成装置1宛ての応答要求である場合、コントローラー71は、そのフレームデータをIP処理部72に渡す(ステップS75)。
【0094】
IP処理部72およびTCP/UDP処理部73は、IP並びにTCPまたはUDPでその応答要求を受信し(ステップS76)、アプリケーション部74へ供給する(ステップS77)。
【0095】
アプリケーション部74は、その応答要求に対応する応答データを生成し(ステップS78)、TCP/UDP処理部73に渡す(ステップS79)。例えば、アプリケーション部74は、TCP/UDP処理部73の上位プロトコルに従って要求された機器管理情報を特定し、その機器管理情報を含む応答データを生成する。例えば、アプリケーション部74は、SNMPにより要求された情報を、機器管理情報として保存しているMIBを参照して取得する。
【0096】
そして、その応答データは、その応答要求の経路を逆に辿って伝送される(ステップS80〜ステップS83)。
【0097】
なお、そのフレームタイプの値が0x9000(CTP)または上述の電源制御に関する通信のための指定値である場合、図6の場合と同様に、そのフレームデータをアプリケーション部74に渡す。
【0098】
図8は、給電再開時の、図4に示すL2スイッチ部31のコントロールプレーン52の動作について説明するシーケンス図である。
【0099】
給電再開時には、画像形成装置1からルーティング情報送信要求が送信されてくる(上述のステップS27)。
【0100】
ルーティング情報送信要求を含むフレームがデータプレーン51により受信され、物理層61は、そのフレームの受信(ステップS71)を、L2チェッカー62に通知する(ステップS72)。
【0101】
この送信要求に関するフレームのフレームタイプの値は、上述の電源制御に関する通信のための指定値であるので、L2チェッカー62は、そのフレームのフレームデータをコントローラー71に渡す(ステップS74)。このフレームデータには、ルーティング情報送信要求が含まれている。
【0102】
コントローラー71は、そのフレームデータ、つまりルーティング情報送信要求をアプリケーション部74に渡し(ステップS91)、アプリケーション部74は、ルーティング情報を取得する(ステップS92)。例えば、アプリケーション部74は、ARPテーブルをコントローラー71から取得し、ルーティングテーブルをIP処理部72から取得する。
【0103】
そして、アプリケーション部74は、その送信要求の応答として、そのルーティング情報をコントローラー71に出力する(ステップS93)。コントローラー71は、そのルーティング情報をL2フォワーダー63に供給し(ステップS94)、L2フレームでL2フォワーダー63から、上述のフレームの送信元へ向けて送出させる(ステップS95)。
【0104】
以上のように、上記実施の形態によれば、電源制御装置3において、電源制御部32は、ネットワーク通信機能を有する画像形成装置1の電源モードを制御し、通信代行部41は、画像形成装置1のルーティング情報を取得し、電源制御部32により設定された電源モードにおいて画像形成装置1のネットワーク機能が停止されている期間に、そのルーティング情報を使用して画像形成装置1のネットワーク通信を代行する。
【0105】
これにより、画像形成装置1のルーティング情報が引き継がれるため、電源モードの切り替えに起因するネットワーク通信障害の発生が低減される。また、電源が通常切られないネットワーク機器(電源制御装置3)内でネットワーク通信を代行するので、そのネットワーク機器の消費電力をほとんど増加させずに画像形成装置1の消費電力を低くすることができる。
【0106】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0107】
例えば、上記実施の形態では、電源開閉装置2および電源制御装置3は、画像形成装置1とは別体とされているが、その代わりに、電源開閉装置2および電源制御装置3を、画像形成装置1に内蔵させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、例えば、プリンター、複合機などの画像形成装置の電源制御に適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 画像形成装置(電子機器の一例)
31 L2スイッチ部(L2通信部の一例)
32 電源制御部
41 通信代行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク通信機能を有する所定の電子機器の電源モードを制御する電源制御部と、
前記電子機器のルーティング情報を取得し、前記電源制御部により設定された前記電源モードにおいて前記電子機器のネットワーク機能が停止されている期間に、前記ルーティング情報を使用して前記電子機器のネットワーク通信を代行する通信代行部と、
を備えることを特徴とするネットワーク通信機器。
【請求項2】
前記通信代行部は、前記電源制御部による前記電源モードの変更で前記電子機器のネットワーク機能が停止される前に前記ルーティング情報を取得し、前記電源制御部による前記電源モードの変更で前記電子機器のネットワーク機能が再開された後にその時点のルーティング情報を前記電子機器へ供給すること、
を特徴とする請求項1記載のネットワーク通信機器。
【請求項3】
前記電源制御部は、前記電子機器への給電を停止および開始させ、
前記通信代行部は、前記電源制御部が前記電子機器への給電を停止させる前に前記ルーティング情報を取得し、前記電源制御部が前記電子機器への給電を再開させた後にその時点のルーティング情報を前記電子機器へ供給すること、
を特徴とする請求項2記載のネットワーク通信機器。
【請求項4】
レイヤー2の所定のフレームタイプのフレームを使用して前記ルーティング情報を前記電子機器から受信するL2通信部を備えることを特徴とする請求項1記載のネットワーク通信機器。
【請求項5】
レイヤー2の所定のフレームタイプのフレームを使用して前記ルーティング情報を前記電子機器から受信するとともに前記ルーティング情報を前記電子機器へ送信するL2通信部を備えることを特徴とする請求項2記載のネットワーク通信機器。
【請求項6】
前記ルーティング情報は、ARPテーブルおよびルーティングテーブルの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のネットワーク通信機器。
【請求項7】
前記所定の電子機器であって、請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のネットワーク通信機器を内蔵することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
コンピューターを、
ネットワーク通信機能を有する所定の電子機器の電源モードを制御する電源制御部、および
前記電子機器のルーティング情報を取得し、前記電源制御部により設定された前記電源モードにおいて前記電子機器のネットワーク機能が停止されている期間に、前記ルーティング情報を使用して前記電子機器のネットワーク通信を代行する通信代行部、
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97478(P2013−97478A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238151(P2011−238151)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】