説明

ネルフィナビル用の投与レジメン

本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療が必要な哺乳動物に医薬組成物中の治療有効量のネルフィナビルを投与することを含む哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療方法であって、前記ネルフィナビルを食物と共に投与する、前記治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2003年2月10日に出願された米国仮出願60/446,444(これは、その全体を参照することにより本明細書に包含される)による優先権を主張する。
【0002】
本発明は、食物を伴わないネルフィナビルの投与に比べてネルフィナビルの生物学的利用能が増加するように食物と組み合わせてネルフィナビルを投与することによる、AIDSの治療方法全般を対象とする。
【背景技術】
【0003】
AIDSの病原体であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、内在性のプロテアーゼ(1型HIVプロテアーゼ)を有するレトロウイルスである。前記HIVプロテアーゼは、非感染形から感染形へのウイルスの成熟において重要である。前記HIVプロテアーゼの阻害は、翻訳後プロセシングを妨げ、そのため、未成熟で非感染のウイルス粒子が放出される。いくつかのHIVプロテアーゼ阻害剤が公知である。
【0004】
前記阻害剤の一つは、[3S−(3R,4aR,8aR,2’S,3’S)]−2−[2’ヒドロキシ−3’−フェニルチオメチル−4’−アザ−5’−オキソ−5’−(2”−メチル−3”−ヒドロキシ−フェニル)ペンチル]−デカヒドロイソキノリン−3−N−t−ブチルカルボキサミド メタンスルホン酸塩〔これは、ネルフィナビルメシレート又はネルフィナビルとしても知られており、及びAgouron Pharmaceuticals,Inc.(ファイザー・カンパニーの1つ)から商標ビラセプト[Viracept](登録商標)として販売されている〕である。ネルフィナビル、並びにその製造及び使用方法は、以下の特許:USP5,484,926(1996年1月16日発行)、5,952,343(1999年9月14日発行)、及び6,162,812(2000年12月19日発行)(これらは、参照することによりその全体が本明細書に包含される)に開示されている。
【0005】
Shettyら(1996)は、ネルフィナビルメシレートの経口的生物学的利用能が、餌を与えたラット、イヌ、及びサルにおいては43%であったが、一晩絶食させた動物においては29%であったことを観察した[Shettyら,AG1343(ヒト免疫不全ウィルス1型プロテアーゼ阻害剤)の前臨床薬物動態及び組織分布 Antimicrob.Agents Chemother.40(1),110,112(1996)]。前記餌を与えた状態は、医薬投与30分前の食事からなった(同文献111頁)。
【0006】
Kurowskiら(2002)は、パン、ジャム、バター、牛乳、及び紅茶を含む軽い朝食と共に投与したときに、パン、チーズ、バター、牛乳、コーンフレーク、ヨーグルト、及び紅茶の標準的朝食と共に投与したときよりも、ネルフィナビル投与によりもたらされるAUC0−12h(12時間にわたる積分された血しょう濃度)が13%低かったことを報告した[Kurowskiら,ネルフィナビル 1日2回投与の薬物動態における食事摂取の限定的効果 Eur.J.Med.Res.7,453,454(2002)]。前記著者は、この差を統計学的に有意であると考えているものの、彼らは、それを、臨床的に関連性のあるものと考えていなかった(同文献)。残っている試験された3つのパラメーター、すなわち、C投与後1時間、Cmax、及びC12時間に関して、前記の異なる2つの朝食に有意な効果が発見されなかった。前記軽い朝食は、脂肪13gを含み、350kcalであった。前記標準的朝食は、脂肪35gを含み、800kcalであった(同文献)。
【0007】
Aarnoutseら(2003)は、食事摂取が、ネルフィナビル及びネルフィナビル+M8(ネルフィナビルの活性代謝産物)に対するCmin値並びにAUC24h,corrにおいて、有意な効果があることを報告した[Aarnoutseら,健常人ボランティアにおけるネルフィナビルと低用量リトナビルの1日1回併用の薬物動態、食事摂取条件及び認容性 Br.J.Clin.Pharmacol.55,115,120(2003)]。「Aarnoutseら(2003)」では、完全な朝食が、610kcal、脂肪33%(約22g)、タンパク質16%(約24g)、及び炭水化物51%を有していた(同文献116頁)。軽い朝食が、271kcal、脂肪37%(約11g)、タンパク質24%(約16g)、及び炭水化物39%を有していた(同文献117頁)。
【0008】
Quartらは、絶食条件下でのネルフィナビルの単回投与量の投与は、前記医薬を食物と共に投与したときに観察されるAUC(血しょう濃度−時間プロファイル下面積)値の27〜50%のAUC値となることを発見した[Quartら,新規プロテアーゼ阻害剤AG1343のフェーズI安全性、認容性、薬物動態及び食事の影響の研究 Natl Conf.Hum.Retroviruses Relat.Infect.(2nd)167(1995)]。
【0009】
Petersenらは、食物摂取が、ネルフィナビル薬物動態において大きな効果を有し、最も多く食物を摂取した後に最も高いレベルに達すること、食物摂取が増えると共にM8濃度が上昇するが、ネルフィナビルの15〜20%にとどまること、及び薬物動態における異なる量の脂肪の寄与については、更なる研究が必要であることを発見した[Petersenら,ネルフィナビルの薬物動態[ビラセプト(Viracept)[商標]250mg 錠剤]:単回投与PKパラメータにおける食事摂取の影響 Infections Abstract544(Feb.10−14,2003)]。
【0010】
ビラセプト(商標)ネルフィナビルに関するフィジシャンズ・デスク・リファレンス(PDR)の記載(2001年11月改正)は、食物と共に投与することを推奨している。前記参考文献PDRは、絶食条件と比較して食事条件では、最大血しょう濃度及びAUCが2〜3倍高かったことを開示している。評価された前記食事は、脂肪由来の153〜313Kcalを含む517〜759kcalを有していた(同文献)。従って、ネルフィナビル投与に対する中程度の食物摂取の利点は示されているが、ネルフィナビルに対する脂肪摂取及び高カロリー摂取の効果は、充分に研究されていない。
【0011】
或る種のHIV治療剤は、生物学的利用能において、強い食物の影響を示す。エファビレンツ、AZT、ddC、及びddlを含む、或る種の抗HIV逆転写酵素阻害剤は、空の胃に投与することが推奨されている。他の逆転写酵素阻害剤は、食物と共に又は食物を伴わずに摂取することができる。HIVプロテアーゼの阻害剤は、それらの食物の影響において一様でない。インジナビル[Indinavir]は、食物なしで、多量の水で投与することが推奨されている。対照的に、サキナビル[saquinavir](別のHIVプロテアーゼ阻害剤)は、高脂肪食と共に投与することが推奨されている。アンプレナビル[Amprenavir]及びロピナビル[lopinavir]は、食物と共に又は食物を伴わずに摂取することができる。プロテアーゼ阻害剤における食物の異なる前記影響は、胃腸管からの前記プロテアーゼ阻害剤の吸収及びプロセシングの基礎をなす共通の機構の欠如を示唆している。
【0012】
プロテアーゼ阻害剤、例えば、ネルフィナビルの投与量の最適化は、副作用を最小化することと、HIVに対する効果を確実にすることの両方が望ましい。プロテアーゼ阻害剤療法は、しばしば、副作用、例えば、下痢、脂肪再分布、インスリン耐性、糖尿病、及び高脂血症と関連付けられている[Lenhardら,食物脂質はマウスにおけるHIVプロテアーゼ阻害剤誘発代謝性変化を変質させる Am.Soc.Nutr.Sci.2361(2000)]。更にネルフィナビルを含むHIVレジメンのウイルス学的失敗は、ネルフィナビルの低い血しょうレベルに関連付けられている[Burgerら,ネルフィナビル(NELFINAVIR)1250mg BID治療における治療医薬の監視(TDM)−未処置患者は1年後治療結果が改善:ATHENA,2d Int’l Workshop on Clinical Pharmacology of HIV Therapy,Noordwijk,the Netherlands(2001),Abstract6.2bの結果]。従って、望ましくない副作用をもたらすことのある過剰なネルフィナビル血しょうレベルにならないように治療効果をもたらす改良されたネルフィナビル療法に対する需要がある。
【発明の開示】
【0013】
(発明の概要)
本発明は、一態様においてヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療が必要な哺乳動物に、医薬組成物中の治療有効量のネルフィナビルを、少なくとも1日1回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療方法であって、少なくとも1日1回の前記ネルフィナビルは、800kcal以上のカロリーを含む食物と共に投与される、前記治療方法に関する。
【0014】
本発明は、別の態様において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療が必要な哺乳動物に、食物と共に摂取される医薬組成物中の治療有効量のネルフィナビルを経口的に投与することを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療方法であって、前記食物が、少なくとも約500kcalで、かつエネルギー量で少なくとも約50%の脂肪を含む、前記治療方法に関する。
【0015】
本発明は、更に別の態様において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療が必要な哺乳動物に、医薬組成物中の治療有効量のネルフィナビルを、少なくとも1日1回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療方法であって、少なくとも1日1回の前記ネルフィナビルを、約500kcal以上のカロリーを含み、かつ、エネルギー量で約50%を以上の脂肪を含む食物と共に摂取する、前記治療方法に関する。
【0016】
また、本発明は、治療に有効な経口投与量のネルフィナビル、並びに高脂肪食で少なくとも800kcalを含む食物と共に前記投与量を投与するための指示を含む印刷されたラベルを含む、キットにも関する。更に本発明は、脂肪:ネルフィナビルが少なくとも約25:1の重量比である脂肪及び治療有効量のネルフィナビルを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を治療するための治療組成物に関する。
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一態様において、HIVの治療が必要な哺乳動物に、食物と共に医薬組成物中のネルフィナビルの治療有効量を投与することを含み、そして前記食物が、800kcal以上のカロリーを含む、哺乳動物におけるHIVの治療方法に関する。あるいは、前記食物は、約900kcal以上又は約1000kcal以上のカロリーを含むことができる。前記哺乳動物は、好ましくはヒトである。
【0018】
本発明の方法において、好ましくは、ネルフィナビルを少なくとも1日1回、少なくとも2週間にわたって投与することによってHIVを治療する。より好ましくは、ネルフィナビルを少なくとも1日2回投与する。別の好ましい治療条件は、1日3回のネルフィナビル投与を含む。好ましくは、ネルフィナビル治療を、少なくとも2週間継続する。より好ましくは、ネルフィナビルを少なくとも4週間投与する。別の好ましい治療期間は、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、及び少なくとも1年間である。
【0019】
ネルフィナビルの投与は、食物を伴うことが好ましい。好ましくは、ネルフィナビルを、食物の摂取の30分前から2時間後の間に投与する。より好ましくは、ネルフィナビルを、食物の摂取の30分前から1時間後の間に投与する。更に好ましくは、ネルフィナビルの投与は、食物の摂取とほぼ同時である。好ましくは、ネルフィナビルを、本明細書に記載の食事の1つと共に、少なくとも1日1回投与する。より好ましくは、ネルフィナビルのそれぞれの投与が本明細書に記載の食事の1つを伴う条件で、ネルフィナビルを、少なくとも1日2回投与する。また、ネルフィナビルのそれぞれの投与が本明細書に記載の食事の1つを伴う条件で、ネルフィナビルを1日3回投与することも好ましい。
【0020】
本発明の好ましい食事の1つは、少なくとも800kcalである。より好ましくは、ネルフィナビルを、カロリーが少なくとも800kcalであり、そしてエネルギー量のパーセンテージにより測定される脂肪量が以下の範囲、すなわち、脂肪約40%〜約50%の間、脂肪約50%〜約60%の間、脂肪約60%〜約70%の間、脂肪約70%〜約80%の間、脂肪約80%〜約90%の間、及び脂肪約90%〜約100%の間の1つである食物と一緒に投与する。また、好ましくは、カロリーが少なくとも800kcalであり、そしてエネルギー量のパーセンテージにより測定される脂肪量のレベルが:40%以上の脂肪、50%以上の脂肪、60%以上の脂肪、70%以上の脂肪、80%以上の脂肪、及び約90%以上の脂肪の少なくとも1つである食物と共にネルフィナビルを投与することも好ましい。また、カロリーが少なくとも800kcalであり、そして脂肪の量が、以下のリスト、すなわち脂肪36g〜55g、脂肪40g〜55g、及び少なくとも約55gの脂肪を含む食物と共にネルフィナビルを投与することもできる。
【0021】
本発明の別の方法は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療が必要な哺乳動物に、食物と共に摂取される医薬組成物中のネルフィナビルの治療有効量を経口的に投与することを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療方法であって、前記食物は、少なくとも約500kcalであり、かつエネルギー量で少なくとも約50%の脂肪を含む前記治療方法である。好ましくは、前記食物は、少なくとも約500kcalを含み、以下の範囲、すなわち、脂肪約50%〜約60%の間、脂肪約60%〜約70%の間、脂肪約70%〜約80%の間、脂肪約80%〜約90%の間、及び脂肪約90%〜約100%の間のエネルギー量のパーセンテージにより測定される脂肪量を有する。また、好ましくは、カロリーが少なくとも約500kcalあり、かつエネルギー量のパーセンテージにより測定される脂肪量が以下のレベル、すなわち、約60%以上の脂肪、約70%以上の脂肪、約80%以上の脂肪、及び約90%以上の脂肪の少なくとも1つである食事を伴うネルフィナビルの投与である。また、ネルフィナビルは少なくとも約500kcalで、且つ以下のリスト、すなわち、脂肪36g〜55g、脂肪40g〜55g、及び少なくとも約55gの脂肪を含む食物と共に、投与できる。また、好ましくは、エネルギー量で脂肪少なくとも約50%で、かつ少なくとも600kcal、少なくとも700kcal、少なくとも800kcal、少なくとも900kcal、又は少なくとも1000kcalを含む食物を伴う、ネルフィナビルの投与である。
【0022】
本発明の方法において、食物を伴うネルフィナビルの医薬組成物の投与は、結果としてネルフィナビルの血しょう濃度の増加をもたらす。前記血しょう濃度は、AUCとして測定することができる。本発明の方法は、好ましくは、その結果として、食物と共にネルフィナビルを投与した後の時間0から外挿法によって推定される無限時間までの曲線下面積[AUC(0−∞)]において、絶食した状態で投与した後のAUC(0−∞)よりも少なくとも約3倍大きくなるという増加をもたらし、より好ましくは、絶食した状態で投与した後のAUC(0−∞)よりも少なくとも約5倍大きい。
【0023】
一態様において、前記血しょう濃度は、Cmaxとして測定することができる。前記方法は、絶食した対象と比較して少なくとも約3倍のCmax値の増加を更に含むことができる。
本発明の方法の更に別の態様においては、本明細書に記載の食物を伴うネルフィナビル組成物の投与は、ネルフィナビルの代謝産物(ヒドロキシル−t−ブチルアミド,M8とも称する)の血しょう濃度を増加させる。前記方法は、絶食した対象と比較して少なくとも約3倍、及び好ましくは少なくとも5倍のM8のAUCの増加を更に含むことができる。
【0024】
投与されるネルフィナビルの量は、任意の治療有効量であることができる。例えば、成人に対しては、1日当たり1250mgを2回、又は1日当たり750mgを3回の投与量が推奨される。小児患者においては、有効投与量は、1日当たり20〜30mg/kgを3回である。ネルフィナビルは、ネルフィナビルの塩、立体異性体、溶媒和物、又はプロドラッグのような、任意の薬剤学的に許容することのできる形態で投与することができる。
【0025】
本発明の別の態様では、他のHIV薬剤が投与されていない対象に対して、ネルフィナビルを含む組成物を投与する。特定の態様において、リトナビル、サキナビル、若しくはロピナビル、又はそれらの立体異性体、溶媒和物、塩、若しくはプロドラッグを与えられていない対象に対して、ネルフィナビルを含む組成物を投与する。
【0026】
更に別の態様では、HIV感染に罹病しており、他のHIV薬剤少なくとも1種、例えば、以下に限定されるものでないが、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤、非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤、又はウイルス融合阻害剤を与えられている対象に対して、ネルフィナビルを投与する。更なるHIV薬剤は、以下に限定されるものでないが、以下の医薬1つ以上であることができる:レトロビル[Retrovir](商標)(3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン又はAZT)、エピビル[Epivir](商標)(2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン又は3TC)、コンビビル[Combivir](商標)(3TCと組み合わせたAZT)、ビデックス[Videx](商標)(2’,3’−ジデオキシイノシン又はジダノシン又はddI)、ハイビット[Hivid](商標)(2’,3’−ジデオキシシチジン又はddC)、ゼリット[Zerit](商標)(スタブジン又は2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン又は3’−デオキシチミジン−2’−エン又はd4T)、ザイアゲン[Ziagen](商標)(アバカビル)、ビラミューン[Viramune](商標)(ネビラピン)、レスクリプター(商標)(デラビルジン)、サスティバ[Sustiva](商標)(エファビレンツ)、プレベオン[Preveon](商標)(アデフォビル・ジポボキシル[dipovoxil])、クリキシバン[Crixivan](商標)(インジナビル)、アンゲネラーゼ[Angenerase](商標)(アンプレナビル)、及びハイドレア[Hydrea](商標)(ヒドロキシウレア)。
【0027】
また、本発明は、治療に有効な経口投与量のネルフィナビル、並びに本発明の方法の1つに従って食物と共に前記投与量を投与するための指示を含む印刷物を含む、キットにも関する。例えば、前記印刷物は、高脂肪食で少なくとも800kcalを含む食物と共にネルフィナビルを投与する指示を含むことができる。前記高脂肪食は、脂肪をエネルギー量で少なくとも40%を含むように指示されていることが好ましい。あるいは、前記印刷物は、少なくとも500kcalかつエネルギー量で脂肪50%を含む食物と共にネルフィナビルを投与することを指示することができる。別の態様では、前記印刷物は、前記食物が約36g以上の脂肪を含むことを指示することができる。
【0028】
また更に別の態様では、本発明は、脂肪及び治療有効量のネルフィナビルとを、少なくとも約25(脂肪):1(ネルフィナビル)の重量比で含む、HIV治療用治療組成物に関する。また、前記重量比が約30(脂肪):1(ネルフィナビル)を超える組成物も好ましい。ネルフィナビルの量は、約100mg〜約1500mgの間であることが好ましく、250mgから625mgの間(上端及び下端を含む)であることがより好ましい。
【実施例】
【0029】
(実施例1:ネルフィナビル生物学的利用能における合計キロカロリー及び脂肪の評価)
健常者ボランティアにおけるネルフィナビル250mg錠剤製剤の単回投与薬物動態パラメーターにおける合計キロカロリー及び脂肪量の影響を評価するための無作為のフェーズIオープンラベルクロスオーバー試験を実施した。
【0030】
(方法)
健常なボランティアを、前記実験に参加させ、そして、ランダムな順番で、少なくとも1週間空けて、以下の処置を受けさせた:
(1)ネルフィナビル錠剤5×250mg,絶食
(2)ネルフィナビル錠剤5×250mg(朝食 食事1,125Kcal/20%脂肪=低カロリー/低脂肪)
(3)ネルフィナビル錠剤5×250mg(朝食 食事2,500kcal/20%脂肪=中カロリー/低脂肪)
(4)ネルフィナビル錠剤5×250mg(朝食 食事3,1000kcal/50%脂肪=高カロリー/高脂肪)。
【0031】
ネルフィナビル及びその活性なヒドロキシ−t−ブチルアミド代謝産物(M8)の血しょう濃度を、検証された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定した。標準的な方法を用いて、血しょう濃度−時間データから、薬物動態パラメーターを決定した。
【0032】
以下の統計的方法を使用した:
(1)Log変換されたネルフィナビル濃度−時間プロファイル下面積(AUC)が、ネルフィナビル薬物動態における食事のカロリー及び脂肪量の効果を決定するために分析される一次パラメーターであった。
(2)二次パラメーターには、ネルフィナビルT1/2、観察された最大血しょう濃度に関する時間(Tmax)、及びlog変換されたCmax、並びにM8薬物動態パラメーターが含まれた。
(3)パラメーター値を、系列、系列内対象、期間、及び治療効果を反映するモデルを用いた分散分析法(ANOVA)によって評価した。WinNONlin Pro Version2.1を用いて導かれるタイプIII平方和を用いて、統計的検定を実施した。各パラメーターに対して、最小二乗処理平均値を決定した。
(4)ANOVAからの結果を用いて、比(試験/対照)最小二乗処理平均値(ここで、絶食状態における単独ネルフィナビル投与が、前記対照治療である)に対する90%信頼区間を計算した。
【0033】
標準化された朝食一食分のメニューは、以下のとおりである。栄養組成データは、標準対照(リリース14及び特定のブランドに対する製造者の選択されたデータ)に対するUSDA栄養データベースからのものである。
【0034】
【化1】

【0035】
【化2】

【0036】
【化3】


【0037】
前記実験に含まれる全ての対象は、前記特定の制限に自発的に従い、年齢が18〜60歳の間(上限及び下限を含む)であり、体重指数(BMI)が18〜31kg/mの間(上限及び下限を含む)であり、そしてHIV−1及びHIV−2血清陰性であった。第1日目に先立つ血清妊娠試験及び各投与前の尿妊娠試験によって検査したところ、全ての女性は妊娠中でなかった。
【0038】
全ての対象は、表1に記載のスケジュールに従ってネルフィナビルの経口投与量を投与された。
【表1】

【0039】
ネルフィナビルを、250mg錠剤5つとして、水240mLと一緒に投与した。全ての対象に、標準化されたスナックを与え、その夕方に、入院患者施設に収容した。絶食評価用に、対象は、翌朝の投与から少なくとも10時間前の一晩絶食を完了する必要があった。食事をした薬物動態評価用に、対象は、前記プロトコルに特定の標準化された朝食一食分(すなわち、食事1、食事2、又は食事3)をとる少なくとも10時間前の一晩絶食を完了する必要があった。対象には、彼らの標準化された朝食一食分を完食するのに、30分間を与えた。その朝、対象が標準化された朝食一食分を完食した直後で及び対象の投与前薬物動態試料を収集した後に、投与を実施した。対象は、投与の1時間前から又は1時間後まで、水を摂取できなかった。標準化された昼食を、朝の投与から少なくとも4時間後に与え、及び標準化された夕食を、朝の投与から少なくとも10時間後に与えた。
【0040】
対象は、ランダム化したスケジュールに従って、ネルフィナビルを与えられた。ランダム化コード、対象識別子、及び割り当てられた治療を、各研究者に提供した。
対象は、全ての臨床検査又は薬物動態学評価の前48時間以内に、激しい運動をしないようにした。
【0041】
更に、対象は、各投与の開始48時間前から、各投与後12時間まで継続してアルコールを摂取しないようにし、実験開始(第1日目)の7日前から実験完了まで継続して、グレープフルーツ及びグレープフルーツを含有する製品を断った。
対象24人が、前記実験に参加し、そして対象20人が前記実験を完了した。
【0042】
(薬物動態)
薬物動態サンプリング用に、留置カテーテル又は直接的静脈穿刺を介して、血液サンプル(それぞれ5mL)を、ヘパリン化真空管(上部がグリーンの管)中に収集した。各収集の実時間を、原書類上に記録した。各サンプル収集のタイミングは、以下のとおりであった:第1、8、15、及び22日目の投与前及び投与後0.5、1、2、3、4、6、8、及び12時間後。
【0043】
全ての血液サンプルを、遠心分離まで4℃に維持した(氷又はクライオブロック[cryoblock]を使用)。収集の1時間以内に、血液サンプルを、約1000×gで15分間遠心分離して、血しょうを分離した。その血しょうサンプルを、二等分し、そして適切にラベル付けされたポリプロピレン輸送管中で貯蔵した。血しょうを、分析まで−20℃以下で冷凍保存した。
【0044】
血しょう中のネルフィナビル及びM8に対するサンプル分析条件を、表2にまとめる。
【表2】

【0045】
薬物動態パラメーター値は、WinNonlin Pro Version2.1を用いて計算した。この実験で決定した薬物動態パラメーターを表3に示す。
【表3】

【0046】
ネルフィナビルCmax及びAUCの記述的統計、並びにC12値を、これらのパラメーター値の変動における種々のKcal量の食事の影響を求めるために検討した。
個々のネルフィナビル血しょう濃度は、種々のKcal量の食事と共にBIDで投与する間の定常血しょう濃度を予測するために用いられた。このシミュレーションには、WinNonlin Pro Version3.2ノンコンパートメントの重ね合わせを使用した。予測された定常Cmax及びCmin値を比較した。
ネルフィナビルにおける食物の影響を、種々のKcalレベルにおいて観察されるAUC及びCmaxと、絶食条件下で観察されるAUC及びCmaxとの間の対数差によって推定した。この実験の主要な指標は、絶食条件と比較した各カロリー摂取群間のAUCにおける対数差である。
【0047】
絶食条件下における625mgの生物学的同等性について2×2交さ実験の結果に基づき、log−AUCに対する二乗平均平方根誤差は、交さANOVAモデルから0.4である。2種のKcalレベルの間の平均AUCにおける35%差は、log−AUCにおける0.3平均差と等しかった。5%第一種過誤及び両側検定により、前記実験における21対象は、任意のカロリーレベル2つの間の平均AUCにおける35%差の検出において、90%の検出力を有することが好ましい。
【0048】
(薬物動態の結果)
絶食対象に対する、試験食事を伴うネルフィナビル投与の比較における薬物動態パラメーター値を、表4にまとめ、そして図1〜7において示す。
【表4】

【0049】
こうして、時間0から外挿法によって推定される無限時間までの血しょう濃度−時間プロファイル下面積[AUC(0−∞)]値に基づくと、ネルフィナビルの生物学的利用能は、食事1、2、及び3を伴う投与の後では、絶食対象における生物学的利用能と比較して、それぞれ、2.2、3.1、及び5.2倍高かった。
【0050】
カロリー量を増加させていく食事を伴うネルフィナビルの投与は、ネルフィナビルの観察された最大血しょう濃度値に達する時間(tmax)がより長く、Cmax値がより高くという結果になった。平均tmax値は、低、中、及び高カロリー食と一緒に投与した場合に、絶食対象における平均tmax値と比較して、それぞれ、約1、1.5、及びほぼ2時間長かった;平均Cmax値は、それぞれ、2、2.3、及び3.3倍高かった。一般的に、カロリー量は、平均値が3.6〜5.6時間であるネルフィナビル半減期(t1/2)値において、重大な影響はなかった。
【0051】
図1に示すように、高カロリー/高脂肪食と共に投薬を受ける対象におけるネルフィナビルC12値は、絶食対象におけるCmax値よりも高かった。更に、食事を伴う投与は、ネルフィナビル血しょう濃度における変動性を減少させる。ネルフィナビルC12値の平均及び変動係数(%CV)は、以下のとおりであった:
絶食: 0.41μg/mL(121%)
125Kcal/脂肪20%: 0.65μg/mL(55%)
500kcal/脂肪20%: 1.19μg/mL(51%)
1000kcal/脂肪50%: 2.07μg/mL(42%)。
【0052】
薬物動態に関する結果の概要を表5に示す。
【表5】

【0053】
それぞれの治療に対する平均血しょうネルフィナビル濃度−時間プロファイルを、図1に示す。絶食対象に対する、試験食事を伴うネルフィナビル投与との比較における、平均ネルフィナビル薬物動態パラメーター値を、後出の表に示す:
【0054】
図2は、ネルフィナビルの経口投与量1250mgの投与後の個々のCmax及びAUC(0−∞)値を(もしあるならば、関連する食事のエネルギー量の関数として)示す。
【0055】
平均ネルフィナビル血しょう濃度を、伴う食事のカロリー値の関数として、図3に示す。実線は、AUC(0−∞)(r>0.97)を表し、そして破線は、Cmax(r<0.95)を表す。
【0056】
平均フィナビル血しょう濃度を(もしあるならば、伴う食事のタンパク質量の関数として)図4に示す。実線は、AUC(0−∞)(r>0.99)を表し、そして破線は、Cmax(r<0.95)を表す。
【0057】
各処置に対する平均血しょうM8濃度−時間プロファイルを、図6に示す。平均M8薬物動態パラメーター値を、比及び信頼区間と共に、表6に記載する。個々のCmax及びAUC(0−∞)の値を、図7に記載する。
【0058】
(カロリー量の影響)
この実施例は、最も多い食物摂取の後に最も高いレベルが達成されたので、ネルフィナビル薬物動態学において食物摂取は顕著な影響があることを示す。AUC値は、500〜1000kcal及び脂肪20〜50%を含む食事を伴うネルフィナビルの投与により、絶食状態におけるAUC値よりも3〜5倍増加した。
【0059】
代謝産物であるM8の血しょう濃度は、大体、ネルフィナビルのそれに追随した。時間0から外挿法によって推定される無限時間までの血しょう濃度−時間プロファイル下面積[AUC(0−∞)]値に基づき、M8の生物学的利用能は、カロリー摂取の増加に伴い、絶食と比較して1.3、1.8、及び4.1倍高かった。食事状態では、M8 AUC/ネルフィナビル AUCが、15〜21%の範囲であった。
【0060】
ネルフィナビルに対するM8のパーセンテージは、食事投与法と絶食投与法との間で同じままであった。
【表6】

【0061】
(実施例2:ネルフィナビル生物学的利用能における脂肪の評価)
健常者ボランティアのネルフィナビル250mg錠剤製剤の単回投与薬物動態パラメーターにおける脂肪量20%及び50%における一定キロカロリーの食事の影響力を評価するための無作為のフェーズIオープンラベルクロスオーバー3×3試験として、実験を実施した。
【0062】
(方法)
対象に、1週間の間隔で3回ネルフィナビル1250mgを投与し、そして前記投与それぞれの後で24時間PKプロファイルを収集した。投与前に、各対象に、ラテン方格法を用いて、脂肪量の異なる3種の食事(絶食,脂肪20%を含む500kcal,脂肪50%を含む500kcal)を指定した。
【0063】
本実験には、対象24人が参加し、そして22人が本実験を完了した。各対象は、第1、8、及び15日目に、ランダムな順序で、以下の処置を受けた:絶食させ5×250mgネルフィナビル錠剤;500Kcal/脂肪20%を含む食事と5×250mgネルフィナビル錠剤;及び500kcal/脂肪50%を含む食事と5×250mgネルフィナビル錠剤。
前記中カロリー/低脂肪食は、脂肪20%(脂肪11.3グラム)を含む500kcalからなる。前記中カロリー/高脂肪食は、脂肪50%(脂肪27.8グラム)を含む500kcalからなる。
【0064】
対象には、薬物動態評価の朝に、ネルフィナビル1250mg(250mg錠剤5つ)を投与した。血しょう中のネルフィナビル終末半減期(terminal t1/2)は、典型的には、3.5〜5時間である。評価の間のネルフィナビルクリアランスを確実にするために、投与の間に7日間のウォッシュアウトになるように第1、8、及び15日目にPK評価を実施した。対象は、外来ベースで参加する。ただし、各PK評価前の夕方には入院患者施設に入ることができ、そして投与後約16時間は前記入院患者施設内にとどまった。前記対象は、翌朝(8時間後)に、薬物動態学的抜血の最後の24時間のために、戻った。全ての薬物動態学的評価は、入院患者施設内で実施した。血液サンプルを収集し、そしてネルフィナビル及びM8の血しょう濃度について分析した。
【0065】
絶食評価用に、対象は、翌朝の投与から少なくとも10時間前の一晩絶食を完了することを要求された。食事をしたPK評価用に、対象は、前記プロトコルに規定の標準化された朝食一食分をとってから少なくとも10時間前の一晩絶食を完了することを必要された。対象には、彼らの標準化された朝食一食分を完食するのに30分間を与えた。その朝、対象が標準化された朝食一食分を完食した直後でかつ対象の投与前PK試料を収集した後に、投与を実施した。対象は、投与の1時間前から又は1時間後まで、水を摂取できなかった。標準化された昼食を、朝の投与から少なくとも4時間後に与え、標準化された夕食を、朝の投与から少なくとも10時間後に与えた。
【0066】
実際のサンプリング時間を用いて、全てのデータを評価した。平均Cmax及びAUC値を、最小二乗平均log変換値の真数(幾何平均と類似)として計算した。Cmax及びAUC値に対する比及び信頼区間も、log変換値に基づく。他の全ての薬物動態パラメーターに対する平均値は、最小二乗平均である。これらのパラメーターに対する比及び信頼区間は、無変換の値に基づく。
【0067】
実施例1と同様に、あらゆる人種、両方の性別で18〜60歳(上限及び下限を含む)の健常なボランティアを、前記実験に使用した。体重指数(BMI)が18〜31kg/m(上限及び下限を含む)であり、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)−1/HIV−2に対して血清陰性であるボランティアを選択した。女性は、妊娠中でないか又は受胎調節に関し信頼性のある避妊法を用いているか、外科的不妊手術を施されているか、あるいは閉経後であることを必要とした。
【0068】
(薬物動態)
血液サンプル(それぞれ5mL)は、実施例1と同様に収集した。各サンプル収集のタイミングは、以下のとおりであった:第1、8、及び15日目の投与前及び投与後0.5、1、2、3、4、6、8、12、16、及び24時間。全ての血液サンプルを、遠心分離終了まで、4℃(ウェットアイス又はクライオブロックのどちらかを使用)に維持した。収集から1時間以内に血液サンプルを、3000rpm(約2619×g)で15分間遠心分離して、血しょうを分離した。前記血しょうサンプルを、均等に2分割し、そして適切にラベル付けされたポリプロピレン輸送管中で貯蔵した。血しょうを、分析終了まで20℃以下で冷凍保存した。
血しょう中のネルフィナビル及びM8に対するサンプル分析を表7にまとめる。
【0069】
【表7】

【0070】
実施例1と同様の標準的ノンコンパートメント薬物動態学的方法を用いて、血しょうネルフィナビル及びM8濃度−時間データから、薬物動態パラメーター値を計算した。
【0071】
Log変換されたネルフィナビルAUCが、ネルフィナビル薬物動態学における食事脂肪量の潜在的効果の評価に使用した第一のパラメーターであった。この分析における第二のパラメーターには、ネルフィナビル終末半減期(t1/2)、最大血しょう濃度到達時間(tmax)、及びlog変換されたCmax、並びにM8薬物動態パラメーターが含まれる。パラメーター値は、系列、系列内対象、期間、及び治療効果を反映するモデルを用いる分散分析法(ANOVA)によって評価した。WinNONlin Pro Version2.1を用いて導かれるタイプIII平方和を用いて、統計的検定を実施した。各パラメーターに対して、最小二乗処理平均値を決定した。
【0072】
ANOVAからの結果を用いて、比(試験/対照)最小二乗処理平均値(ここで、絶食状態における単独ネルフィナビル投与が、前記対照治療である)に対する90%信頼区間を計算した。信頼区間は、WinNonlin Pro Version2.1を用いて計算した。信頼区間は、データ判定における補助として使用した。ネルフィナビルCmax及びAUCの記述的統計を試験して、これらのパラメーター値の変動における種々の脂肪量の食事の影響を決定した。
【0073】
ネルフィナビル及びM8の血しょう濃度を、検証された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定した。標準的ノンコンパートメント法を用いて、血しょう濃度−時間データから薬物動態パラメーターを決定した。
【0074】
(統計的方法)
Log変換されたネルフィナビル血しょう濃度−時間プロファイル下面積(AUC)値が、ネルフィナビル薬物動態学における食事の脂肪量の影響を決定するために分析される第一のパラメーターであった。対照(絶食)に対する試験(試験食事を伴う)のAUC並びに観察された最大血しょう濃度(Cmax)値の最小二乗平均の比に対する90%信頼区間は、log変換されたデータを用いて計算し、そして対照平均のパーセンテージとして表した。ネルフィナビル暴露と食事の脂肪量との間の関連性を考察した。
【0075】
(薬物動態の結果)
絶食対象(対照)、中カロリー/低脂肪食時、及び中カロリー/高脂肪食時に対するネルフィナビル錠剤5×250mgの投与後の、ネルフィナビル薬物動態パラメーター値を、以下の表8にまとめる。
【表8】

【0076】
前記表中で使用する用語の定義は、以下のとおりである。「比」は、治療平均値の比〔パーセンテージ(100%×試験/対照)として表す〕である。「90%信頼区間」は、治療平均値の比(試験/対照)に対する90%信頼区間推定〔対照平均のパーセンテージとして表す〕である。
【0077】
カロリー量が同様で及び脂肪量が20%及び50%の食事を伴うネルフィナビルの投与は、その結果として、最大血しょう濃度値到達時間(tmax)がより長くなり、及びCmax値がより高くなった。平均tmax値は、脂肪量20%及び50%の食事を伴う投与のときに、絶食対象における平均tmax値に比べて、約2時間長かった。平均Cmax値は、脂肪量20%及び50%の食事において、それぞれ約2.5倍及び3.8倍高かった。時間0から外挿法によって推定される無限時間までの血しょう濃度−時間プロファイル下面積[AUC(0−∞)]値に基づくと、ネルフィナビルの生物学的利用能は、脂肪量20%及び50%を含む食事の投与後で、絶食対象における生物学的利用能に比べて、それぞれ、約3倍及び約5倍高かった。ネルフィナビル終末半減期(t1/2)値において、脂肪量は、重大な影響はなかった。絶食対象に対する投与後及び試験食事を伴う投与後のネルフィナビル消失半減期(elimination t1/2)値は、同様であり、平均して約4時間であった。
【0078】
20%及び50%脂肪量の食事を伴うネルフィナビルの投与は、その結果として、血しょう濃度におけるばらつきが、絶食対象のそれと比較してより低かった。AUC(0−∞)に対する変動の%係数(CV)の値は、絶食対象において75%であり、そして脂肪20%及び50%を含む試験食事をとった対象において、それぞれ、48%及び43%であった。
【0079】
M8血しょう濃度は、大体、ネルフィナビルの血しょう濃度に追随した。脂肪20%及び50%を含む試験食事の後は、絶食対象のそれと比べて、平均 M8AUC(0−∞)がそれぞれ3倍及び6.8倍高かった。
【0080】
(結果)
(ネルフィナビル)
それぞれの治療に対する平均血しょうネルフィナビル濃度−時間プロファイルを、図8に示す。絶食対象に対する、試験食事を伴うネルフィナビル投与との比較における、平均ネルフィナビル薬物動態パラメーター値を、比及び信頼区間と共に表9に記載する。個々のCmax及びAUC値を、図9に記載する。M8濃度−時間プロファイルに対応するデータ、並びにM8 Max及びAUCも、それぞれ、図10及び11に記載する。
【0081】
【表9】

【0082】
表9に記載のパラメーター
比=治療平均値の比,%(100%×試験/対照)として表される。
90%信頼区間=治療平均値の比(試験/対照)に対する90%信頼区間推定,対照平均のパーセンテージとして表される。
【0083】
(結論)
本実施例は、脂肪摂取が、単回投与量暴露後のネルフィナビル薬物動態パラメーターにおいて顕著な効果を有することを示す。AUC値は、絶食AUCと比較した場合に、500kcalで脂肪20%の朝食ありでは3.2倍増え、そして同Kcalであるが脂肪50%の朝食ありでは、5.2倍増えた。これらの値は、500kcalで脂肪20%の朝食及び1000kcalで脂肪50%の朝食に対して予め測定した値と同様であった。従って、食事中の脂肪量は、Kcal量に対する平坦効果を示唆するそのKcal量とともに、ネルフィナビルPKに影響する。
【0084】
500kcal及び1000kcalは、それらが脂肪50%として投与された場合には血しょう暴露において同じ倍率の増加が生じるという発見は、ネルフィナビルの最適な使用に対する重要な意味合いを有する。500kcal/50%脂肪食は、ローストピーナッツ3.5〜4オンス、ココナツクリーム缶詰1カップ足らず、又は種々の米国の朝食ファーストフードとして供給することができる。また、前記脂肪依存性は、その薬剤の最適な投与によりコンプライアンスを向上させるであろう脂肪を伴うネルフィナビルの製剤の開発も可能とする。
【0085】
また、この実施例は、脂肪摂取の増加と共にM8濃度が上昇するが、ネルフィナビルに対するM8のパーセンテージは、約10%と同じであることも示す。
【表10】

【0086】
90%信頼区間(90%CI)は、前記CIを上回る比に対して計算されている。ネルフィナビル代謝産物のネルフィナビルに対する血しょうレベルの比を、「M8AUC∞/ネルフィナビルAUC∞(×100)」として表す。
【0087】
特定の及び好ましい態様を参照することにより本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明のルーチン的実験法及び実施を通じて変形及び改変を加えることができることを認められよう。従って、本発明の範囲は、前記の説明により制限されるものでないが、付属する特許請求の範囲及びそれらの均等物により定められるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、絶食対象(黒塗円)、低カロリー/低脂肪食を伴う(白抜円)、中カロリー/低脂肪食を伴う(黒塗四角)、及び高カロリー/高脂肪食を伴う(白抜四角)経口投与量1250mgの投与後の平均ネルフィナビル血しょう濃度時間プロファイルである。上のグラフ及び下のグラフは、それぞれ、直線プロット及び片対数プロットを用いる。
【0089】
【図2】図2は、絶食対象(0Kcal)、低カロリー/低脂肪食を伴う(125Kcal)、中カロリー/低脂肪食を伴う(500Kcal)、及び高カロリー/高脂肪食を伴う(1000Kcal)ネルフィナビル経口投与量1250mgの投与後の、個々のネルフィナビルCmax(上のグラフ)及びAUC(0−∞)(下のグラフ)の値である。個々の対象及び平均値を、それぞれ、数字及び三角形によって表す。
【0090】
【図3】図3は、食事カロリー量の関数としての平均ネルフィナビル血しょう濃度である。AUC(0−∞)(菱形,実線)の値は、単位がμg・hr/mLであり、そしてr>0.97の相関がある。Cmax(四角,破線)の値は、単位がμg/mLであり、そしてr>0.89の相関がある。ネルフィナビル経口投与量1250mgの投与後に測定した。
【0091】
【図4】図4は、食事タンパク質量の関数としての平均ネルフィナビル血しょう濃度である。AUC(0−∞)(菱形,実線)の値は、単位がμg・hr/mLであり、そしてr>0.99の相関がある。Cmax(四角,破線)の値は、単位がμg/mLであり、そしてr>0.96の相関がある。ネルフィナビル経口投与量1250mgの投与後に測定した。
【0092】
【図5】図5は、絶食対象(黒塗円)、低カロリー/低脂肪食を伴う(白抜円)、中カロリー/低脂肪食を伴う(黒塗四角)、及び高カロリー/高脂肪食を伴う(白抜四角)経口投与量1250mgのBID投与後の、シミュレートされた平均ネルフィナビル定常血しょう濃度−時間プロファイルである。棒は、標準誤差を表す。
【0093】
【図6】図6は、絶食対象(黒塗円)、低カロリー/低脂肪食を伴う(白抜円)、中カロリー/低脂肪食を伴う(黒塗四角)、及び高カロリー/高脂肪食を伴う(白抜四角)ネルフィナビル経口投与量1250mgの投与後の、平均M8血しょう濃度−時間プロファイルである。上のグラフ及び下のグラフは、それぞれ、直線プロット及び片対数プロットを表す。
【0094】
【図7】図7は、絶食対象(0Kcal)、低カロリー/低脂肪食を伴う(125Kcal中カロリー/低脂肪食を伴う(500Kcal)、及び高カロリー/高脂肪食を伴う(1000Kcal)ネルフィナビル経口投与量1250mgの投与後の、個々のM8 Cmax(上のグラフ)及びAUC(0−∞)(下のグラフ)の値である。個々の対象及び平均値を、それぞれ、数字及び三角形によって表す。
【0095】
【図8】図8は、実施例2による、絶食対象(黒塗円)、中カロリー/低脂肪食時(白抜円)、及び中カロリー/高脂肪食時(黒塗四角)に対するネルフィナビル錠剤5×250mgの投与後の、平均ネルフィナビル血しょう濃度−時間プロファイルである。上のグラフ及び下のグラフは、それぞれ、直線プロット及び片対数プロットである。
【0096】
【図9】図9は、実施例2による、絶食対象、中カロリー/低脂肪食時、及び中カロリー/高脂肪食時に対するネルフィナビル錠剤5×250mgの投与後の、個々のネルフィナビルCmax(上のグラフ)及びAUC(0−∞)の値(下のグラフ)である。個々の値及び平均値を、それぞれ、白抜円及び三角形で表す。
【0097】
【図10】図10は、実施例2による、絶食対象(黒塗円)、中カロリー/低脂肪食時(白抜円)、及び中カロリー/高脂肪食時(黒塗四角)に対するネルフィナビル錠剤5×250mgの投与後の、平均M8血しょう濃度−時間プロファイルである。上のグラフ及び下のグラフは、それぞれ、直線プロット及び片対数プロットである。
【0098】
【図11】図11は、実施例2による、絶食対象、中カロリー/低脂肪食時、及び中カロリー/高脂肪食時に対するネルフィナビル錠剤5×250mgの投与後の、個々のM8Cmax(上のグラフ)及びAUC(0−∞)の値(下のグラフ)である。個々の値及び平均値を、それぞれ、白抜円及び三角形で表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療が必要な哺乳動物に、医薬組成物中の治療有効量のネルフィナビル又はその立体異性体、溶媒和物、塩、若しくはプロドラッグを、少なくとも1日1回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療方法であって、少なくとも1日1回の前記ネルフィナビルが、800kcal以上のカロリーを含む食物と共に投与される、前記治療方法。
【請求項2】
ネルフィナビルの投与が、食物の摂取の30分前から2時間後の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ネルフィナビルの投与が、食物の摂取とほぼ同時である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食物が、エネルギー量で40%以上の脂肪を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
食物を伴うネルフィナビル投与後の、時間0から外挿法によって推定される無限時間までの曲線下面積[AUC(0−∞)]が、絶食した状態での投与後のAUC(0−∞)よりも少なくとも約3倍大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療が必要な哺乳動物に、食物と共に摂取される医薬組成物中の治療有効量のネルフィナビル又はその立体異性体、溶媒和物、塩、若しくはプロドラッグを経口的に投与することを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療方法であって、前記食物が、少なくとも約500kcalで、かつエネルギー量で少なくとも約50%の脂肪を含む、前記治療方法。
【請求項7】
ネルフィナビルの投与が、食物の摂取の30分前から2時間後の間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ネルフィナビルの投与が、食物の摂取とほぼ同時である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
食物と一緒にネルフィナビルを投与した後の、時間0から外挿法によって推定される無限時間までの曲線下面積[AUC(0−∞)]が、絶食した状態で投与した後のAUC(0−∞)よりも少なくとも約3倍大きい、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療が必要な哺乳動物に、医薬組成物中の治療有効量のネルフィナビル又はその立体異性体、溶媒和物、塩、若しくはプロドラッグを、少なくとも1日1回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療方法であって、少なくとも1日1回の前記ネルフィナビルを、約500kcal以上のカロリーを含み、かつ、エネルギー量で約50%以上の脂肪を含む食物と共に摂取する、前記治療方法。
【請求項11】
ネルフィナビルの投与が、食物の摂取の30分前から2時間後の間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ネルフィナビルの投与が、食物の摂取とほぼ同時である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記食物が、エネルギー量で約60%以上の脂肪を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
食物と一緒にネルフィナビルを投与した後の、時間0から外挿法によって推定される無限時間までの曲線下面積[AUC(0−∞)]が、絶食した状態で投与した後のAUC(0−∞)よりも少なくとも約3倍大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
脂肪:ネルフィナビルが、少なくとも約25:1の重量比である脂肪及び治療有効量のネルフィナビルを含む、哺乳動物におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)治療用の治療組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−517221(P2006−517221A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502411(P2006−502411)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000313
【国際公開番号】WO2004/069251
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】