説明

ノイズ低減手段を備える自動車の換気装置

本発明は、ダクトに空気を送る換気ユニットに接続されると共に、車両の客室につながる入口(4)に接続する、少なくとも一つの換気ダクト(2)を備える、自動車の換気装置に関する。ダクト(2)は、空気循環パイプ(10)とブラインド中空部(12)とを備え、ブラインド中空部の中空部の口(14)はパイプの軸に対しほぼ垂直に設置されている。本発明は、客室につながる少なくとも一つの中央換気入口(4)を備える自動車の計器パネルにも関し、換気ダクト(2)は計器パネルのほぼ中央に配置されると共に前述の入口(4)に接続している。本発明は、車両の音響装置となる上記の換気装置を備える車両にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、ノイズ低減手段を備える自動車の換気装置に関する。
【0002】
自動車の換気装置は、冷却又は加熱された空気を個別の換気用ダクトを経由して送る換気又はエアコンユニットを備え、その出口が車両内部に向けて開口していることは周知のことである。
【0003】
これらの装置は、より静かに内燃機関を稼働させるという観点から最近行われている改善の結果、運転手に一層聞こえやすくなった、好ましくないノイズを発生する。
【0004】
この好ましくないノイズは、換気とエアコンユニットのファンにより及びダクトに流れる空気に発生する乱流とにより発生する。このノイズは、前述の換気ダクトを経由して車両内部に送られる。
【0005】
換気装置で発生する好ましくないノイズを減少させる試みのもとで行われてきた様々な解決方法がある。
【0006】
これらの解決方法の一つがEP1403105 A1に記されている。この解決方法は、残りのダクトの断面より大きい断面を持つ中空部を、換気ダクト上に作ることである。中空部はフラスト円錐形状であり、半径部が換気ダクトに沿った空気流と直角に、ダクトの方向に広がっている。中空部は、流れに対し縦方向に形成されている中空部の口において、ダクトに向けて開口している。
【0007】
別の解決方法がFR2822225 A1に記されている。この解決方法は、換気ダクトに沿った空気流と直角に、ダクトの方向に対して放射状に形成される中空部を換気ダクトに作ることである。中空部は、流れに対し縦方向にある中空部の口において、ダクトに向けて開口している。言い換えれば、ダクトの壁と中空部の壁との間の接続は、ダクトの軸と平行する母線を有する。中空部の入口の軸は、ダクトに沿った流れに対して直角になる。
【0008】
他の文献においてもダクトを伴う解決方法を開示しており、ダクトの開口部は、流れに対してほぼ平行に形成されており、これらの文献はFR2780347、JP60099948、JP7251628である。これらの文献において、中空部の入口又は喉部は共鳴器に擬することが可能であり、ダクトに沿った流れに対し直角に位置している。
【0009】
別の解決方法がFR2712851 A1に記されている。この解決方法は、残りのダクトの断面より大きい断面を持つ中空部を換気ダクトに形成することであり、これらの中空部は泡で充填されている。
【0010】
しかし、これらの周知の解決方法は完全に満足のいくものではない。
【0011】
本発明の一つの目的は、前述のような周知の解決方法を改善することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、実現するうえで効果的で経済的なノイズ低減手段を備える換気装置を作ることである。
【0013】
本発明は、一方ではダクトに空気を送る換気ユニットに接続し、他方では車両内部に向けて開口する通気口に接続する、少なくとも一つの換気ダクトを備える自動車の換気装置に関するものである。ダクトは、空気流パイプとブラインド中空部とを備え、ブラインド中空部の口はパイプの軸とほぼ直角に位置している。このようにして中空部の口は、中空部の口の上流側のパイプに沿った空気流に面している。言い換えれば、中空部に対する入口の軸は、中空部の口の上流側のパイプに沿った空気流と平行である。
【0014】
中空部の口では、ダクトの壁が中空部の壁、即ち、中空部の入口の周辺部に達している。
【0015】
ダクトが、第1方向に上流側の第1部分と、第2方向にパイプが走っている下流側の第2部分とを備え、中空部の口は、中空部の口が第1部分においてパイプのほぼ延長線上に置かれるように第2部分に位置するため、有利である。
【0016】
ダクトが第3方向に下流側の第3部分を備え、第2部分が中間部分になり、そこで、空気流が第1と第3部分との間で分岐されるため、有利である。
【0017】
中空部の口の断面が、中空部の口と並ぶパイプの断面の半分より小さいため、有利である。
【0018】
中空部が中空部の口に接続する喉部を備え、喉部の断面が中空部の残りの部分の断面より小さいため、有利である。
【0019】
中空部がダクトの周辺壁とダクトの内部の仕切りとによって区切られ、内部の仕切りは空気流の方向においてほぼ縦方向に位置すると共にパイプを区切る壁となっているため、有利である。
【0020】
中空部とパイプが、ダクトの周辺壁とダクトの内部の仕切りとによって区切られており、内部の仕切りがダクトの補強材となるため、有利である。
【0021】
装置が2つのダクトを備え、少なくとも一方のダクトの中空部は前述のダクトのパイプを他方のダクトのパイプに接続し、中空部が前述のパイプの中心にあるため、有利である。
【0022】
言い換えれば、本発明による2つのダクトは、ダクトごとに一つの中空部、又はダクトに共通する一つの中空部である、中央中空部を経由して接続するパイプを有している。
【0023】
中空部は、車両の構成部品と協働してダクトを固定する壁である、ダクトの周辺壁によって区切られている。
【0024】
本発明は、内部に向けて開口する少なくとも一つの中央空気通気口を備える車両のダッシュボードに関するものであり、ダッシュボードは本発明による少なくとも一つの換気装置を備え、換気ダクトはダッシュボードのほぼ中央に位置すると共に前述の通気口に接続している。
【0025】
本発明はまた、このようなダクト及び/又はダッシュボードを備える車両に関するものである。
【0026】
本発明による車両は空気出口をもつ換気ユニットを備え、内部に向けて開口する少なくとも一つの通気口は、本発明による少なくとも一つの換気装置を備え、ダクトは前述の空気出口に接続すると共に車両に属する音響装置になる。
【0027】
本発明の他の特徴と利点は、下記の説明から明らかになる。
添付の図面は、非限定的な事例によるものである。
【実施例】
【0028】
従来技術による、図1に示す実施例において、自動車の換気装置は、換気ユニットを備えており、換気ユニットの出口1は空気を2つの個別の換気ダクト2に沿って送り、換気ダクト2の出口は車両の内部に向けて開口する空気通気口グリル4に接続している。この装置のダクトは、従来方式に設定されている。これらの通気口4は、空気の方向と流量とを調整する手段を、既知の方法で備えている。
【0029】
内部に向けて開口する2つの中央空気通気口が図示されているが、図示する換気ダクトは、図示されていないダッシュボードのほぼ中央に位置している。
【0030】
本発明によれば、図2に示すように、2つの換気ダクト2の各々が空気流パイプ10とブラインド中空部12とを備え、ブラインド中空部の口14は、パイプの軸に対してほぼ直角に位置している。
【0031】
中空部12は、中空部の口14が中空部の唯一の開口部になるので、ブラインドと呼ばれる。
【0032】
パイプに沿った空気流が矢印16で表されている。
【0033】
図示する例示の実施形態で、2つのダクト2は、共通中央壁2Aによって接続され分離された隣接するダクトである。パイプ10は、中央壁2Aによって接続され分離された中央中空部である、中空部12によって接続している。
【0034】
ダクト2は、第1方向に走る上流側の第1部分22の自由端で区切られる入口20を備えている。ダクト2は、下流側の第2部分24も備え、そこでは、パイプ10が第2方向に走っている。ダクトは、第3方向に走る下流側の第3部分26を備えている。第3部分26の自由端は、通気口4のグリル4に接続する、空気出口を区切っている。
【0035】
本発明の有利な態様によれば、中空部の口14は、右側の垂直横壁24Aと、左側の垂直横壁24Bと、ダクト2の最上部と底部の2つの水平壁2Bとの間で、第2部分24に位置している。左側の垂直横壁24Bは、中央壁2Aの一部分である。中空部の口14は、ダクト2の全長に沿っておおよそ中ほどの第2部分24に位置している。
【0036】
ダクト2の構成を考慮すると、第2部分24が中間部となり、そこでは空気流が第1部分22と第3部分26との間で分岐される。ここでの様々な部分は互いに角度をなし、又は互いに横方向に相殺されている。
【0037】
外部に向かって位置する第1部分22と第3部分26の横壁は、内側の第3部分でパイプ10を横方向に区切る壁と同様に、中央壁2Aに平行である。第1と第3部分に沿った空気流は従って、中央壁2Aに実質的に平行である。
【0038】
中空部12は、ダクトの周辺壁、この事例では、壁2Aと2Bとにより、及びダクトの内部の仕切り30とによって区切られている。内部の仕切り30は、空気が第2部分24に沿って且つ第3部分に沿って流れる方向において、実質的に縦方向に位置している。仕切り30は、中空部と第2及び第3部分24、26との間において、パイプ10を区切っている。仕切り30の上流側区分は、第2区分において横壁24Aに平行であり、仕切り30の下流側区分は、第3区分において中央壁2Aに平行である。
【0039】
中空部の口14が、パイプ10に沿った空気流に対しほぼ垂直であるため、有利である。この場合、中空部の口14は第1部分22に沿った空気流に面している。中空部は、実質的に前述の流れの延長である。
【0040】
利点としては、中空部の口14と中空部12が存在する結果としての圧力低下又は流量に関して目立つ障害が無いことである。
【0041】
図2の構成は、閉塞中空部で互いと分離された隣接ダクトを有する構成、即ち、中空部の口の無いものと比較して、1800Hzを超える周波数で1〜2dBの単位でノイズを減少させる。
【0042】
壁30と24Bの間における中空部の口14の断面は、横壁24Aと24B間の中空部の口と並ぶパイプ10の断面の半分より小さい。中空部の口の断面は、中空部に空気流が無いことを考慮すると、中空部の口と並ぶダクトに沿った空気流に関する断面の半分より小さい。その一方、音波は中空部を移動することができる。
【0043】
図3の第2の実施形態において、中空部は、中空部の口14に接続する喉部40を有する。喉部40の存在は、ダクト2の入口で第1部分のダクト2の横壁に平行である、この場合、壁2Aに平行である、第1部分22に沿った実質的に空気流の方向の、壁30の延長が存在することに起因する。喉部40の断面は、中空部の残りの部分12の断面より小さい。喉部40と中空部12はここで、ヘルムホルツ共鳴器を形成する。
【0044】
図3の実施形態は、閉塞中空部で分離された隣接ダクトの場合に、即ち、中空部の口の無いものでは、所定の周波数帯域、例えば2000Hzでノイズを処理する際に、更に特に効果的である。
【0045】
中空部の口14と中空部12が存在することにより、パイプ10に沿った空気流が乱されることはない。パイプ10に沿った音波の伝播だけが乱される。
【0046】
特に音響的な観点においては、各換気ダクトに沿って移動する音波が、中空部の口14で断面の変動に遭遇し、これにより換気ユニットから発信される音波を乱すインピーダンスの遮断が起きることにより、ノイズを低減できる。
【0047】
ダクトの内部の仕切り30がダクトの補強材となるため、有利である。
【0048】
中空部が、車両の構成部品、例えば、ダッシュボードの構造の部品と協働するダクト固定壁であるダクトの周辺壁によって区切られているため、有利である。
【0049】
本発明の一実施形態においては、中空部12は、パイプ10と共にプラスチック製の一体部品として成形され、ダクトは、最上部と底部の2つの半シェルから形成されている。
【0050】
図示した実施形態の換気装置は、2つのダクトを備えている。実施形態の代替形態において、装置は、1つの単体ダクト又は2つ以上のダクトを備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来の設計の換気装置の斜視図であり、2つの個別の換気ダクトの最上部を示す。
【図2】本発明による換気装置の第1実施形態の縦方向における断面図である。
【図3】本発明による換気装置の第2実施形態の縦方向における断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方でダクトに空気を送る換気ユニット(1)に接続し、他方で車両の内部に向けて開口している通気口(4)に接続する、少なくとも一つの換気ダクト(2)を備える自動車の換気装置であって、ダクト(2)は、空気流パイプ(10)とブラインド中空部(12)とを備え、ブラインド中空部の口(14)は、パイプの軸に対してほぼ直角に位置するため、中空部の口の上流側のパイプに沿った空気流に面していることを特徴とする、自動車の換気装置。
【請求項2】
ダクト(2)が、第1方向に上流側の第1部分(22)と、第2方向にパイプ(10)が走っている下流側の第2部分(24)とを備え、中空部の口(14)は、中空部の口が第1部分(22)においてパイプ(10)のほぼ延長線上に置かれるように、第2部分に位置することを特徴とする、請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
ダクト(2)が第3方向に下流側の第3部分(26)を備え、第2部分(24)が中間部になり、そこでは、空気流が第1部分(22)と第3部分(26)との間で分岐することを特徴とする、請求項2に記載の換気装置。
【請求項4】
中空部の口(14)の断面が、中空部の口と並ぶパイプ(10)の断面の半分よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項5】
中空部(12)が中空部の口(14)に接続した喉部(40)を備え、喉部の断面が中空部の残りの部分の断面より小さいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項6】
中空部(12)はダクトの周辺壁(2A、24A、2B)とダクト(2)の内部の仕切り(30)とによって区切られ、内部の仕切りは空気流の方向においてほぼ縦方向に位置すると共にパイプ(10)を区切る壁になることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項7】
中空部(12)とパイプ(10)が、ダクト(2)の周辺壁(2A、24A、2B)とダクトの内部の仕切り(30)とによって区切られ、内部の仕切りがダクトの補強材になることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項8】
2つのダクト(2)を備え、少なくとも一方のダクトの中空部(12)が前記ダクトのパイプ(10)を他方のダクトのパイプ(10)に接続し、中空部(12)が前記パイプの中心になることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項9】
中空部(12)が、車両の構成部品と協働するダクト固定壁である、ダクト(2)の周辺壁(2A、24A、2B)によって区切られていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項10】
内部に向けて開口した少なくとも一つの中央空気通気口(4)を備える車両のダッシュボードであって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも一つの換気装置を備え、換気ダクト(2)がダッシュボードのほぼ中央に位置すると共に前記通気口(4)に接続することを特徴とする、車両のダッシュボード。
【請求項11】
空気出口(1)と内部に向けて開口した少なくとも一つの通気口(4)とを装着する換気ユニットを備える車両であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも一つの換気装置又は請求項10に記載のダッシュボードを備え、ダクトは前記空気出口(1)に接続すると共に車両に属する音響装置であることを特徴とする、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−512588(P2009−512588A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536091(P2008−536091)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050949
【国際公開番号】WO2007/045778
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】