説明

ノック式液体繰出し容器

【課題】ノックにより、本体内の液体を繰り出すノック式液体繰出し容器において、最初に液体が繰出される迄のユーザの操作の負担を軽減させることができるようにする。
【解決手段】液体を収容するタンク部Tを内蔵し、その先端開口から液体を繰出し可能となった先軸12と、前記タンク部T内を摺動して液体を先端開口方向へと押し出すピストンロッド38及びピストン40と、先軸12に対して出没可能に設けられたノック体20と、先軸12の内部にあって、ノック体20のノックをピストンロッド38及びピストン40のタンク部内の軸方向の前進運動に変換する変換機構と、先軸12に対して回転可能となった後軸16と、後軸16の回転をピストンロッド38及びピストン40への軸方向の前進運動に変換し、ピストンロッド38及びピストン40が最後退位置から少なくとも軸方向に所定距離前進するまで、回転操作体16の回転をピストンロッド38及びピストン40の軸方向の前進運動へ変換する第2変換機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノックにより、化粧用、筆記用、修正用媒体等の液体を繰り出すノック式液体繰出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のノック式液体繰出し容器としては、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1で開示されるノック式液体繰出し容器では、液体を収容するタンク部を内蔵し、その先端開口から液体を繰出し可能となった本体と、本体の側部に本体に対して出没可能に設けられたノック体と、本体の内部にあって、ノック体が作用しノック体のノックにより所定方向に回転し、ノック解除により反対方向に回転する回転部材と、回転部材の回転方向を規制する回転制御機構と、液体を繰出す繰出し体と、回転部材の回転を前記繰出し体の本体内の軸方向の前進運動に変換する変換機構と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−212418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、容器の未使用状態において、液体を収容するタンク部またはタンク部から先端開口までの間にはある程度の空気が存在している。繰出し体を作動させて、液体を先端から繰出そうとしたときには、その内部に存在する空気をタンク部から排出させてからでないと液体を繰出すことができない。
【0005】
そのため、最初に液体が繰出されるまでに必要なノック体のノック操作の回数が多くなり、ユーザにおいてその操作が煩わしいという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、ノックにより液体を繰出すものにおいて、最初に液体が繰出される迄のユーザの操作の負担を軽減させることができるノック式繰出し容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明のうち請求項1記載の発明によるノック式液体繰出し容器は、
液体を収容するタンク部を内蔵し、その先端開口から液体を繰出し可能となった本体と、
前記タンク部内を摺動して液体を先端開口方向へと押し出す繰出し体と、
本体に対して出没可能に設けられたノック体と、
本体の内部にあって、ノック体のノックを繰出し体のタンク部内の軸方向の前進運動に変換する変換機構と、
本体に対して回転可能となった回転操作体と、
前記回転操作体の所定方向の回転を前記繰出し体の軸方向の前進運動に変換し、繰出し体が最後退位置から少なくとも軸方向に所定距離前進するまで、回転操作体の所定方向の回転を前記繰出し体の軸方向の前進運動へ変換する第2変換機構と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記第2変換機構が、繰出し体が所定距離前進すると、それ以降は、回転操作体の所定方向の回転を前記繰出し体の軸方向の前進運動へ変換しないことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の前記繰出し体が、本体に対して固定のガイドに螺合されており、前記第2変換機構は、回転操作体の所定方向の回転を前記繰出し体に伝達して、繰出し体の前進運動へ変換することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前記第2変換機構が、回転操作体の所定方向の回転を繰出し体の回転に伝達する伝達部材を備えており、該伝達部材は、繰出し体に対して相対回転不能且つ摺動自在に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の前記変換機構が
本体の内部にあって、ノック体が作用し、ノック体のノックによりある方向に回転し、ノック解除により反対方向に回転する回転部材と、
回転部材からの回転を前記繰出し体に伝達するための第2伝達部材と、
前記回転部材からの一方向の回転を第2伝達部材に伝達し、前記回転部材からの該一方向と反対方向の回転を伝達しないラチェット機構と、
を備え、該ラチェット機構は、前記第2変換機構の回転操作体からの前記所定方向の回転を回転部材に伝達しないことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の前記変換機構が、前記第2伝達部材の前記一方向の回転を許容し、該一方向と反対方向の回転を禁止する第2ラチェット機構をさらに備え、該第2ラチェット機構は、前記第2変換機構の回転操作体の前記所定方向と反対方向の回転を禁止可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、予め使用前に、回転操作体を所定方向に回転させることで、繰出し体を所定距離前進させておくことができる。繰出し体の所定距離の前進は、回転操作体の回転式操作により行うので、連続的に操作することができて作業性が良い。こうして、予め繰出し体を前進させて内部に存在する空気をある程度排出しておくことで、次にノック操作により繰出し体を繰出して液体を繰出すときに、少ないノック回数でタンク部からの液体の繰出しを開始することができる。通常のユーザの操作時には、ノック式操作によって液体を繰出すことができるため、操作性を向上させることができ、所定量ずつ液体を繰出すことができる。
【0014】
また、第2変換機構が、繰出し体が所定距離前進した以降は、回転操作体の回転を繰出し体の前進に変換しないようにすると、ユーザが回転操作体を誤って回転しても液体が繰出されることはなく、ノック操作によってのみ液体を繰出すようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のノック式液体繰出し容器の実施形態を表す全体縦断面図である。
【図2】本発明のノック式液体繰出し容器の実施形態を表す部分断面図を含む全体断面図である。
【図3】ノック式液体繰出し容器の主要要素の分解斜視図である。
【図4】回転部材の(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は(a)のc−c線に沿って見た断面図、(d)は(a)の矢印dに沿って見た矢視図、(e)は(a)の矢印eに沿って見た矢視図である。
【図5】(a)は図2の5a−5a線に沿って見た断面図であり、(b)はノック体をノックした状態の断面図である。
【図6】係合部材の(a)は平面図、(b)は(a)のb−b線に沿って見た断面図である。
【図7】内筒の(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図8】回り止め部材の(a)は側面図、(b)は(a)の矢印bに沿って見た矢視図である。
【図9】ピストンロッドガイドの(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は(a)の矢印cに沿って見た矢視図である。
【図10】スペーサの(a)は縦断面図、(b)は(a)の矢印bに沿って見た矢視図、(c)は(a)の矢印cに沿って見た矢視図である。
【図11】後軸の縦断面図である。
【図12】本発明のノック式液体繰出し容器の出荷前の状態を表す全体縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号10はノック式液体繰出し容器であり、液体繰出し容器10は、主に、使用者が把持する先軸12と、先軸12の内側に先軸12と同軸に且つ先軸12に対して回転可能に設けられた内筒14と、先軸12の後端に回転可能に取付けられた後軸16と、先軸12の先端に取付けられた先具13と、先具13に着脱可能に被着されるキャップ19と、を備えている。内筒14の内部は、例えば、修正液、筆記用、化粧用等の液体Lが収容されたタンク部Tとなっている。先軸12及び先具13によってタンク部を内蔵する本体が構成され、後軸16によって回転操作体が構成される。
【0017】
先軸12の先端部の側面には、開口12aが形成されており、この開口12aには、操作者が操作するためのノック体20が設けられており、このノック体20は、先軸12の内外方向に出没可能となっている。
【0018】
先具13内には、液体を塗布する為の液体供給体である刷毛24と、液体を刷毛24に伝達する先端パイプ26と、先具13内で固定され、同時に刷毛24及び先端パイプ26を先具13に固定するパイプホルダ28と、が設けられる。パイプホルダ28の後端は、内筒14の先端部にある縮径部14a内へと挿入されている。
【0019】
タンク部T内の液体を刷毛24へと繰出すための液体繰出し容器10の繰出し機構は、図3に示すように、本体を構成する先軸12に出没可能となったノック体20と、ノック体20が直接作用する回転部材30と、回転部材30の前側に配置される係合部材32と、前記内筒14と、内筒14の後端部に設けられる回り止め部材34と、先軸12に固定されるピストンロッドガイド36と、ピストンロッドガイド36と螺合するピストンロッド38と、ピストンロッド38の先端に連結されタンク部T内を摺動可能となったピストン40と、係合部材32に付勢力を与える付勢部材としてのリターンスプリング42と、を有している。
【0020】
内筒14及び回り止め部材34は回転部材30からの回転が伝達される伝達部材を構成し、ピストンロッド38及びピストン40はタンク部T内の液体を繰出す繰出し体を構成する。そして、回転部材30、内筒14、回り止め部材34及びピストンロッド38によってノック体20のノックを繰出し体の本体内の軸方向の前進運動に変換する変換機構が構成され、係合部材32及びリターンスプリング42によって回転部材30の回転方向を規制する回転制御機構が構成される。但し、この例は一例であり、伝達部材、変換機構、回転制御機構は、任意の部材により構成することが可能である。
【0021】
後軸16内には、スペーサ44が配設されており、該後軸16とスペーサ44が繰出し体であるピストンロッド38に嵌合して、ピストン40の初期繰出しを行う第2変換機構を構成し、スペーサ44が後軸16の回転をピストンロッド38へ伝達する伝達部材を構成する。
【0022】
以下、それぞれの部材について詳細に説明する。
まず、ノック体20は、横断面逆略U字形をなしており、その両側面の下端に矩形状の切欠部20aが形成されており、該矩形状の切欠部20aの上面が回転部材30に作用する作用面20bとなる。また、ノック体20の内側面の切欠部20aに隣接する部分には、抜け止め用リブ20cが形成されている。
【0023】
図4に示すように、回転部材30は筒状形状をなしており、その内部を内筒14の縮径部14aが貫通している。回転部材30の側面には、前記ノック体20の作用面20bが押圧可能となった突起30a、30aが形成される。突起30aはバランスをとるために2つ形成されているが、実際に、ノック体20のノック力を受けるノック受突起となるのは、常にそのうちの一方の突起30aだけとなる。
【0024】
突起30a、30aに近接して、抜け止め用凹部30b、30bが形成される。抜け止め用凹部30bは、ノック体20が非ノック時に、その抜け止め用リブ20cと係合するものである。抜け止め用凹部30bと抜け止め用リブ20cとの係合は、抜け止め用リブ20cが開口12aの方向へは移動できないが、開口12aの反対方向へは移動できるように、その断面形状が設定されている(図5参照)。
【0025】
回転部材30の先端には、複数のカム斜面30cが形成されており、該カム斜面30cは軸方向に対して傾斜している。回転部材30の後端には、軸方向に弾性変形可能となった複数のラチェット歯30dが形成されている。
【0026】
次に、図6に示すように、回転部材30の前方に配置される係合部材32は筒状形状をなしており、その内部を内筒14の縮径部14aが貫通している。係合部材32の後端には、前記回転部材30の複数のカム斜面30cに係合すると共に摺接可能なカム斜面32aが形成されており、該カム斜面32aは軸方向に対して傾斜している。また、係合部材32の周面には、複数の軸方向に伸びる回り止め溝32bが形成されており、回り止め溝32bには、先軸12の内周面に形成される回り止めリブ12b(図5参照)が嵌入されており、これにより、係合部材32は、先軸12に対して軸方向に移動することはできるが、先軸12に対して回転はできないようになっている。
【0027】
図5(a)に示したように、ノック体20がノックされていない通常状態においては、回転部材30は、突起30a、30aが水平ではなく、斜めの状態を保持するように、そのカム斜面30cが係合部材32のカム斜面32aと係合している。係合部材32は、リターンスプリング42によって回転部材30の方へと付勢されているため、カム斜面30cとカム斜面32aとの係合は保持されている。突起30aの1つであるノック受突起30aは、ノック体20の作用面20bに近接している。
【0028】
次に、図7に示すように、タンク部Tを画成すると共に伝達部材を構成する内筒14は、先端部にある縮径部14aと、後端部にある拡径部14bとからなっており、縮径部14aと拡径部14bとの間の境界段部14cには、周方向に連続的に鋸歯14dが形成されている。鋸歯14dは、前記回転部材30のラチェット歯30dに噛み合い可能となっている。この鋸歯14dとラチェット歯30dとによって第1ラチェット機構が構成される。内筒14の後端部には、複数の嵌合用切欠14eが形成されている。
【0029】
内筒14の後端部に設けられる回り止め部材34は筒状形状をなしている。図8に示すように、回り止め部材34の外周面には、内筒14の嵌合用切欠14eに嵌合する複数の嵌合用突起34aを備えており、この嵌合用突起34aが嵌合用切欠14eに嵌合することで、内筒14と回り止め部材34は一体的に連結される。内筒14と回り止め部材34は一体品として構成することも可能であるが、成形上は別部品とすることが望ましい。
【0030】
回り止め部材34の内部には内筒部34bが形成されており、内筒部34bの中心には前記ピストンロッド38が貫通する非円形孔34cが形成されている。ピストンロッド38の横断面形状は、非円形形状となっており、非円形孔34cがピストンロッド38の横断面形状に合致することで、ピストンロッド38は回り止め部材34に対して相対回転不能となる。
【0031】
また、回り止め部材34の後端には、軸方向に弾性変形可能となった複数のラチェット歯34dが形成されている。
【0032】
次に、図9に示すように、回り止め部材34の後方に配置されるピストンロッドガイド36は、筒状形状をなしており、その外周面には、多数の軸方向に伸びる回り止め用リブ36aが形成されている。この回り止め用リブ36aは、先軸12に形成される回り止め用溝12cに嵌合し、これにより、ピストンロッドガイド36は、先軸12に対して回り止めされる。また、回り止め部材34とスペーサ44に挟まれて、ピストンロッドガイド36は先軸12に固定される。さらに、ピストンロッドガイド36の外周面に形成された環状突起36bが後軸16内の凹部に嵌合されて、後軸16に対して相対回転可能に固定される。
【0033】
また、ピストンロッドガイド36の内部には内筒部36cが形成されており、内筒部36cの中心には前記ピストンロッド38の外周面に形成された雄ネジ38aが螺合する雌ネジ孔36dが形成されている。このピストンロッド38の雄ネジ38aとピストンロッドガイド36の雌ネジ孔36dとによって、ネジ機構が構成される。
【0034】
さらには、ピストンロッドガイド36の外筒部と内筒部36cとの間に形成されて前方に面する周方向に伸びる面には、周方向に連続的に鋸歯36eが形成されている。回り止め部材34の後端部は、ピストンロッドガイド36の外筒部と内筒部36cとの間に挿入されており、前記鋸歯36eは、前記回り止め部材34のラチェット歯34dに噛み合い可能となっている。この鋸歯36eとラチェット歯34dとによって第2ラチェット機構が構成される。
【0035】
次に、図10に示すように、ピストンロッドガイド36の後方に配置されるスペーサ44は、筒状形状をなしており、その後端部の外周面には、多数の凹凸が連続する凹凸部44aが形成されており、また、その内部には、内筒部44bが形成されており、内筒部44bの中心には前記ピストンロッド38が貫通する非円形孔44cが形成されている。非円形孔44cがピストンロッド38の横断面形状に合致することで、ピストンロッド38はスペーサ44に対して相対回転不能且つ相対摺動可能となる。
【0036】
図11に示すように、スペーサ44がその内部の底部まで挿入されて固定される後軸16の内部には、前記スペーサ44の凹凸部44aに嵌合する複数の突起16aが形成されており、これによって、後軸16はスペーサ44と相対回転不能となる。
【0037】
以上のように構成される繰出し機構を備えた液体繰出し容器10においては、タンク部T内に液体Lが充填されるが、タンク部Tと先端開口の間にある程度の空気が存在している。
【0038】
そのため出荷する前に、後軸16を所定の方向に回転させる。この後軸16の回転によりスペーサ44が共に回転すると、最後退位置にあるピストンロッド38が回転する。ピストンロッド38の回転に応じて回り止め部材34及び内筒14も一緒に回転するが、鋸歯14dがラチェット歯30dに対して滑ることができ、第1ラチェット機構は内筒14の回転部材30に対する回転を許容する。また、回り止め部材34のラチェット歯34dはピストンロッドガイド36の鋸歯36eを滑ることができ、この第2ラチェット機構も回り止め部材34の回転を許容する。
【0039】
こうしてピストンロッド38が回転すると、ピストンロッド38は先軸12に固定されたピストンロッドガイド36の雌ネジ孔36dに螺合しているために、軸方向に前進し、ピストンロッド38に連結されたピストン40を前方へと押圧する。ピストン40はタンク部Tを摺動して、空気を内部から排出させることができる。
【0040】
この後軸16の回転操作は連続的に行うことができるため、出荷前に製造者等が行うとしてもその作業性は良好である。
【0041】
尚、この後軸16の操作時に、後軸16を前記所定の方向と反対の方向に回転しようとすると、回り止め部材34のラチェット歯34dがピストンロッドガイド36の鋸歯36eと噛み合うために、その方向には回転することはできず、後軸16は回転することができない。よって、後軸16は、第2ラチェット機構によってピストンロッド38の前進方向の移動に対応する所定の方向にしか回転することができないようになっている。
【0042】
ピストンロッド38及びピストン40が所定距離軸方向に前進移動すると、ピストンロッド38の後端はスペーサ44から脱出するために、後軸16の回転はもはやピストンロッド38に伝達することはなく、この状態で出荷されて、ユーザへと供給される。
【0043】
ユーザが液体繰出し容器10を使用する場合には、キャップ19を取り外して、刷毛24を用いて液体Lを供給する。刷毛24には、タンク部Tからの液体Lがパイプホルダ28及び先端パイプ26を介して供給される。
【0044】
さらに、液体Lをタンク部Tから繰出す場合には、ノック体20を押圧して、先軸12内へと押し出す。ノック体20の作用面20bが、回転部材30のノック受突起30aを図5(a)の下方へと押圧するために、回転部材30は図5(a)において時計回りに回転する。回転部材30が回転すると、回転部材30のラチェット歯30dが内筒14の鋸歯14dに噛み合っており、この第1ラチェット機構は、回転部材30の時計回りの回転を内筒14に伝達するために、内筒14が同じ方向に回転し、一緒に回り止め部材34が回転する。回り止め部材34のラチェット歯34dはピストンロッドガイド36の鋸歯36eを滑ることができ、この第2ラチェット機構は回り止め部材34の回転を許容する。ピストンロッド38は、回り止め部材34の回転と一緒に回転し、且つ、ピストンロッドガイド36の雌ネジ孔36dに螺合しているために、軸方向に前進する。こうして、ピストンロッド38に連結されたピストン40が前方へと押圧されるために、ピストン40はタンク部Tを摺動して、タンク部T内の液体Lを前方へと繰出すことができる。
【0045】
予め後軸16の回転操作により、ピストン40はタンク部T内で既にある程度前進されているために、最初に液体Lを繰り出すときにノック体20の数回のノックにより液体Lを繰出すことができる。
【0046】
ノック体20の1回のノック当たり、回転部材30が図5(a)に示す状態から図5(b)に示す状態まで回転し、これに同期したピストンロッド38も同じ角度回転するために、(回転角度/360)×ピッチ分だけ軸方向にピストン40が移動することとなる。
【0047】
この回転部材30が図5(b)に示す状態へと回転したときに、係合部材32は回転することはできないため、係合部材32のカム斜面32aは、回転部材30のカム斜面30cを摺接して、係合部材32はリターンスプリング42の付勢力に抗して前方へと移動する。
【0048】
次に、ノック体20のノック力を解除すると、リターンスプリング42の復元力により係合部材32は後方へと戻り、回転部材30のカム斜面30cは係合部材32のカム斜面32aを摺接して、図5(b)において反時計回りに回転して、図5(a)に示す元の位置へと戻る。
【0049】
このとき、内筒14及び回り止め部材34は、回り止め部材34のラチェット歯34dがピストンロッドガイド36の鋸歯36eに噛み合っており、この第2ラチェット機構は内筒14及び回り止め部材34の反時計回りの回転を禁止するために、回転部材30と共に回転することはできない。よって、回転部材30のラチェット歯30dは、内筒14の鋸歯14dを滑り、回転部材30のみが回転して元の状態に戻り、ノック体20は、これにより図5(a)に示す上方の位置へと戻る。
【0050】
ノックしていない状態では、リターンスプリング42によって係合部材32が後方へと付勢されており、回転部材30が図5(a)に示す姿勢に固定されるため、不用意に回転部材30が回転することはない。
【0051】
こうして、ノック体20をノックする度に、ピストン40及びピストンロッド38が前進して、液体Lを本体の先端にある刷毛24から繰出すことができる。ノック体20をノックすることによって、液体Lを繰出すことができるようになるため、握っていた先軸12を持ち変える必要がなく、また、両手を使用することもなく、簡単に操作することができるようになる。
【0052】
予め出荷前に後軸16の回転操作によりピストン40が前進されているので、ユーザにおいては、ノックの過度な負担なく、液体を繰り出すことができるようになる。また、ユーザが誤って後軸16を回転したとしても、ピストンロッド38はスペーサ44と離反しているので、後軸16の回転はピストンロッド38に伝達されず、後軸16は空回りすることができて、誤操作を防ぐことができる。また、後軸16の操作は出荷前だけではなく、ユーザにおいて行ってもよい。
【0053】
または、スペーサ44とピストンロッド38との嵌合する距離を延ばして、即ち、スペーサ44の内筒部44bの長さを延ばして、後軸16の回転操作を所定距離を超えて可能にすることもできる。この場合には、製造者等において、後軸16の回転量を把握する必要がある。例えば、後軸16の予めの回転量を回転回数で把握するか、または本体及び内筒を透明材料で構成して、タンク部を外部から視認可能として、ピストン44がある程度の位置に到達したところで、ピストン44の位置を把握することもできる。そして、その後ユーザにおいて、後軸16の回転操作と、ノック体20のノック操作を使い分け可能になるようにしてもよい。
【0054】
以上の実施形態において複数の部材で構成した部品を単一部材で構成することも可能であり、または単一の部材で構成した部品を複数の部材で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
12 先軸(本体)
13 先具(本体)
14 内筒(第2伝達部材)
14d 鋸歯(第1ラチェット機構)
16 後軸(回転操作体)
20 ノック体
30 回転部材
30d ラチェット歯(第1ラチェット機構)
34 回り止め部材(伝達部材)
34d ラチェット歯(第2ラチェット機構)
36 ピストンロッドガイド
36e 鋸歯(第2ラチェット機構)
38 ピストンロッド(繰出し体)
40 ピストン(繰出し体)
44 スペーサ(伝達部材)
L 液体
T タンク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するタンク部を内蔵し、その先端開口から液体を繰出し可能となった本体と、
前記タンク部内を摺動して液体を先端開口方向へと押し出す繰出し体と、
本体に対して出没可能に設けられたノック体と、
本体の内部にあって、ノック体のノックを繰出し体のタンク部内の軸方向の前進運動に変換する変換機構と、
本体に対して回転可能となった回転操作体と、
前記回転操作体の所定方向の回転を前記繰出し体の軸方向の前進運動に変換し、繰出し体が最後退位置から少なくとも軸方向に所定距離前進するまで、回転操作体の所定方向の回転を前記繰出し体の軸方向の前進運動へ変換する第2変換機構と、
を備えることを特徴とするノック式液体繰出し容器。
【請求項2】
前記第2変換機構は、繰出し体が所定距離前進すると、それ以降は、回転操作体の所定方向の回転を前記繰出し体の軸方向の前進運動へ変換しないことを特徴とする請求項1記載のノック式液体繰出し容器。
【請求項3】
前記繰出し体は、本体に対して固定のガイドに螺合されており、前記第2変換機構は、回転操作体の所定方向の回転を前記繰出し体に伝達して、繰出し体の前進運動へ変換することを特徴とする請求項1または2記載のノック式液体繰出し容器。
【請求項4】
前記第2変換機構は、回転操作体の所定方向の回転を繰出し体の回転に伝達する伝達部材を備えており、該伝達部材は、繰出し体に対して相対回転不能且つ摺動自在に配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のノック式液体繰出し容器。
【請求項5】
前記変換機構は、
本体の内部にあって、ノック体が作用し、ノック体のノックによりある方向に回転し、ノック解除により反対方向に回転する回転部材と、
回転部材からの回転を前記繰出し体に伝達するための第2伝達部材と、
前記回転部材からの一方向の回転を第2伝達部材に伝達し、前記回転部材からの該一方向と反対方向の回転を伝達しないラチェット機構と、
を備え、該ラチェット機構は、前記第2変換機構の回転操作体からの前記所定方向の回転を回転部材に伝達しないことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のノック式液体繰出し容器。
【請求項6】
前記変換機構は、前記第2伝達部材の前記一方向の回転を許容し、該一方向と反対方向の回転を禁止する第2ラチェット機構をさらに備え、該第2ラチェット機構は、前記第2変換機構の回転操作体の前記所定方向と反対方向の回転を禁止可能であることを特徴とする請求項5に記載のノック式液体繰出し容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−193919(P2010−193919A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38653(P2009−38653)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000156134)株式会社壽 (69)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】