説明

ノルボルネン系開環重合体及びその水素化物の製造方法

【課題】分子量安定性に優れ、且つ、濾過性能に優れ、触媒や異物の除去が容易なノルボルネン系開環重合体を提供する。
【解決手段】重合反応系内中に、下記(a)〜(c)成分を連続的又は断続的に添加しながら開環重合を行い得られたノルボルネン系開環重合体を水素添加触媒の存在下に、水素添加する。(a)ノルボルネン系単量体、(b)タングステン化合物溶液、(c)有機アルミニウム化合物。またこのノルボルネン系重合体の水素化物製造工程で得られるノルボルネン系開環重合体水素化物の反応液は、フィルターの目詰まりを起こし難く、フィルターの頻繁な交換を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン系開環重合体及びノルボルネン系開環重合体水素化物の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明の製造方法を用いて製造したノルボルネン系開環重合体は分子量安定性に優れ、且つノルボルネン系開環重合体を含有する反応液、及び該開環重合体を水素添加してなる開環重合体水素化物の反応液は、濾過性能に優れているため、触媒や異物の除去が容易であり、フィルターの目詰まりを起こし難く、フィルターの頻繁な交換を必要としない。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系開環重合体(「開環共重合体」を含む)及びその水素化物は、耐熱性、透明性、耐光性、耐吸水性、耐湿性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性(低誘電率及び低誘電損失)、低複屈折性、剛性、耐レーザー性等の諸特性のバランスに優れているため、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶剤キャスト法などの各種成形法により、光学材料、医療用器材、電気絶縁材料、電子部品処理用器材などとして、広範な分野で使用されている。
【0003】
ノルボルネン系開環重合体(「開環共重合体」を含む)及びその水素化物の製造方法としては、ノルボルネン系単量体を、六塩化タングステン、有機アルミニウム等からなる開環重合触媒系を用いて開環重合し、次いで、得られた開環重合体を水素添加した後に、反応液を濾過して、水素添加触媒を除去する方法が従来取られている。
【0004】
しかしながら、従来の製造方法によれば、重合時に発生する不溶成分が原因となり、得られたノルボルネン系開環重合体又は該開環重合体水素化物を含有する反応液の濾過性能が必ずしも十分ではなく、フィルターの目詰まりが発生し易いという問題があった。フィルターが目詰まりし易いと、生産ラインを中断したり、フィルターの交換を頻繁に行ったりしなければならなかった。フィルターの目詰まりによって、フィルターが破損すれば、開環重合体又はその水素化物中に触媒や異物が混入するおそれがある。
この問題を解決するため、原料モノマーを逐次添加する方法などが提案されているが、繰り返しの製造では、やはり濾過性の低下が見られ、特許文献1では、モノマーの反応率を制御しながら、開環重合を行うことが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−204605号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献1の実施例に記載の方法では、不溶成分の抑制は不十分であり、且つ得られるノルボルネン系開環重合体の分子量安定性が悪いことを突き止めた。
本発明の目的は、ノルボルネン系開環重合体の不溶成分の生成を更に抑制し、且つ分子量安定性に優れたノルボルネン開環重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして、本発明によれば、重合反応系内中に、下記(a)〜(c)成分を連続的又は断続的に添加しながら開環重合を行うことを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法が提供される。
(a)ノルボルネン系単量体、
(b)タングステン化合物溶液
(c)有機アルミニウム化合物。
【0008】
また、前記有機アルミニウム化合物は、ジアルキルアルミニウムアルコキサイドであることが好ましい。
【0009】
また、タングステン化合物溶液が、六塩化タングステン又はオキシ四塩化タングステンとエーテル化合物を含み、タングステン化合物に対するエーテル化合物のモル比が、1〜20であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、前記の製造方法によって得られたノルボルネン系開環重合体を、水素添加触媒の存在下に、水素添加することを特徴とするノルボルネン系開環重合体水素化物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノルボルネン系開環重合体の不溶成分の生成を更に抑制し、且つ分子量安定性に優れたノルボルネン開環重合体の製造方法が提供される。また本発明の製造方法により得られたノルボルネン系開環重合体とその水素添加物は、濾過性能に優れているため、触媒や異物を効率的に濾過して除去することができる。本発明の製造方法によれば、フィルターの目詰まりの発生が抑制されるため、フィルターの目詰まりに起因する生産ラインの中断や、フィルターの破損に起因する触媒や異物の混入のない開環重合体とその水素化物を得ることができる。本発明の製造方法により得られた開環重合体とその水素化物は、従来法により得られた重合体と同等の機械的物性を有している上、濾過性能に優れるため、触媒や異物の含有量を効率的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のノルボルネン系開環重合体の製造方法は、重合反応系内中に、下記(a)〜(c)成分を連続的又は断続的に添加しながら開環重合を行うことを特徴とする。
(a)ノルボルネン系単量体、
(b)タングステン化合物溶液
(c)有機アルミニウム化合物。
必要に応じて、この重合反応の後に、水素添加反応を行うこともできる。
【0013】
<ノルボルネン系単量体>
本発明で用いるノルボルネン系単量体は、分子中にノルボルネン構造を有し、開環重合できるものであれば格別の制限はなく、ノルボルネン構造を有する多環炭化水素;そのアルキル、アルケニル、アルキリデン、芳香族等の置換誘導体;ハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性基置換誘導体;これら極性基を有するアルキル、アルケニル、アルキリデン、芳香族等の置換誘導体;などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン構造を有する多環炭化水素及びそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、芳香族等の置換誘導体などが、得られる開環重合体やその水素化物からなる成形体の耐薬品性や耐湿性などに優れ好適である。
その具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネイト、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミド、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]トリデカ−2,4,6−11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)などのノルボルナン構造を有しないノルボルネン系単量体;
【0014】
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエンなどのノルボルナン構造を1つ以上有するノルボルネン系単量体;などが挙げられる。
【0015】
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ノルボルネン系単量体は、それ単独で使用することができるが、必要に応じて、共重合可能なその他の単量体を少量成分として併用することができる。
【0016】
ノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。
【0017】
これらの共重合可能な単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
<タングステン化合物溶液>
タングステン化合物溶液は、タングステン化合物をベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;等から選ばれえる有機溶剤のそれぞれ単独であるいは2種以上に溶解したものである。
【0019】
本発明で用いるタングステン化合物としては、例えば、WCl、WCl、WCl、WCl、WBr、WBr、WBr、WF、WF、WI、WI等のハロゲン化タングステン;WOCl、WOBr、WOF等のオキシハロゲン化タングステン;W(OC等のアルコキシ化タングステン若しくはアリールオキシ化タングステン;WCl(OC等の部分ハロゲン化アルコキシ化タングステン;が挙げられる。
【0020】
これらのタングステン化合物は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。この中でも重合活性が高く且つ入手が容易な好ましい化合物としては、WCl、WOClなどのハロゲン化若しくはオキシハロゲン化タングステンが挙げられ、WCl、WOClがより好ましく、WClが特に好ましい。
【0021】
タングステン化合物溶液には、エーテル化合物を含むことが好ましい。エーテル化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等の直鎖ジアルキルエーテル;ジイソプロピルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル等の第二級ジアルキルエーテル;アニソール、フェニルエーテル等の芳香族エーテル;が挙げられる。
【0022】
これらのエーテル化合物は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。この中でも重合活性が高く且つ不溶成分抑制効果が高い好ましい化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等の直鎖ジアルキルエーテルが挙げられる。
【0023】
タングステン化合物に対するエーテル化合物のモル比は、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜15、更に好ましくは3〜12である。エーテル化合物が多いと、単量体の反応率が低下する恐れがあり、エーテル化合物が少ないと不溶成分抑制効果が低くなる恐れがある。
【0024】
タングステン化合物溶液の使用量は、重合条件により適宜選択されるが、通常、タングステン化合物の、全ノルボルネン系単量体に対するモル比で、1/10〜1/1,000,000、好ましくは1/100〜1/100,000、更に好ましくは1/1,000〜1/10,000の範囲である。この範囲にあるときに分子量の制御が行いやすくなる。
【0025】
<有機アルミニウム化合物>
本発明で用いる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルハライドアルミニウム;ジメチルアルミニウムメトキサイド、ジエチルアルミニウムメトキサイド、ジプロピルアルミニウムメトキサイド、ジブチルアルミニウムメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムエトキサイド、ジイソブチルアルミニウムイソプロポキサイド、ジイソブチルアルミニウムブトキサイド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキサイドなどのジアルキルアルミニウムアルコキサイド;メチルアルミニウムジメトキサイド、エチルアルミニウムジメトキサイド、プロピルアルミニウムジメトキサイド、ブチルアルミニウムジメトキサイド、イソブチルアルミニウムジメトキサイド、イソブチルアルミニウムジエトキサイド、イソブチルアルミニウムジイソプロポキサイド、イソブチルアルミニウムジブトキサイド、イソブチルアルミニウムジイソブトキサイドなどのモノアルキルアルミニウムジアルコキサイド;などが挙げられる。
【0026】
これらの有機アルミニウム化合物は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。この中でも重合活性が高く、且つ不溶成分の生成が抑制される好ましい化合物としては、ジアルキルアルミニウムアルコキサイドが挙げられ、ジイソブチルアルミニウムメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムエトキサイド、ジイソブチルアルミニウムイソプロポキサイド、ジイソブチルアルミニウムブトキサイド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキサイドなどのジイソブチルアルミニウムアルコキサイドがよりに好ましい。
【0027】
これらの有機アルミニウム化合物の使用量は、タングステン化合物1mol当たり、通常0.01〜30mol、好ましくは0.1〜20mol、更に好ましくは1〜10molである時に、ゲルや高分子量成分の発生が少なく、かつ、重合活性が高く分子量の制御が行いやすくなり好ましい。
【0028】
<開環重合方法>
開環重合は、溶媒を用いなくても可能であるが、通常は、不活性有機溶媒中で実施することが好ましい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;スチレンジクロリド、ジクロルエタン、ジクロルエチレン、テトラクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。ノルボルネン系開環重合体は、これらの有機溶媒に溶けるため、反応中に生成ポリマーが析出することなく重合することができる。更に、これらの有機溶媒を用いると、開環重合後に有機溶媒を置換することなく、引き続いて水素添加反応を効率よく行うことができるので好ましい。
【0029】
有機溶剤の使用量は、単量体100重量部に対して、通常10〜1,000重量部、好ましくは50〜700重量部、より好ましくは100〜500重量部の範囲内である。
【0030】
本発明では、ノルボルネン系単量体、タングステン化合物溶液及び有機アルミニウム化合物の一部を連続的又は断続的に添加する。
【0031】
ノルボルネン系単量体は反応器に添加するが、ノルボルネン系単量体の一部を予め反応器中に入れることができる。その場合、予め反応器に入れるモノマーの量は、反応に用いるノルボルネン系単量体全量中、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。予め反応器に入れる量が多すぎると不溶成分抑制効果が不十分になる恐れがある。
【0032】
2種類以上の単量体を用いる場合、それらを混合して添加しても良いし、別々に添加しても良いし、交互に添加しても良い。
【0033】
タングステン化合物溶液は反応器に添加するが、一部を予め反応器に入れることが出来る。反応器に予め入れるタングステン化合物溶液の量は、反応に用いるタングステン化合物溶液全量中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。予め反応器に入れる量が多すぎると不溶成分抑制効果が不十分になる恐れがある。
【0034】
有機アルミニウム化合物は反応器に添加するが、一部を予め反応器に入れることができる。反応器に予め入れる有機アルミニウム化合物溶液の量は、反応に用いるアルミニウム化合物全量中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。予め反応器に入れる量が多すぎると不溶成分抑制効果が不十分になる恐れがある。
【0035】
反応器には、ノルボルネン系単量体、タングステン化合物及び有機アルミニウム化合物以外にも、例えば、分子量調整剤やエーテル化合物を仕込むことができる。分子量調整剤としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20個を有するα−オレフィン;が挙げられる。
エーテル化合物としては前述のものを用いることができる。
【0036】
添加するノルボルネン系単量体の濃度は、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上である。濃度が低すぎると反応効率に劣る傾向がある。
【0037】
添加するタングステン化合物溶液中のタングステン化合物の濃度は、通常0.005〜0.1mmol/gであり、好ましくは0.001〜0.005mmol/gである。タングステン化合物の濃度が高すぎるとタングステン化合物が析出する恐れがあり、タングステン化合物の濃度が低すぎるとノルボルネン系単量体の反応率が低下する恐れがある。
【0038】
有機あるに見に生む化合物は、不溶成分の生成をより抑制する観点から、不活性有機溶媒で希釈して添加することが好ましい。添加する有機アルミニウム化合物の濃度は、通常5〜0.00001mmol/gであり、好ましくは2〜0.0001mmol/gである。有機アルミニウム化合物の濃度が高すぎると不溶成分が多くなる恐れがあり、有機アルミニウム化合物の濃度が低すぎるとノルボルネン系単量体の反応率が低下する恐れがある。
【0039】
反応液に添加するノルボルネン系単量体、タングステン化合物溶液及び有機アルミニウム化合物は、それぞれ別々に添加することができるし、ノルボルネン系単量体と有機アルミニウム化合物を混合した後に、タングステン化合物溶液と別々に添加することができる。また、添加は同時でも、交互でもよく、また、一方が連続的で、他方が断続的など異なる添加方法によっても良い。それぞれの添加速度は特に制限されないが、それぞれの添加開始時と添加終了時とが、実質的に同時であることが、反応率制御の容易さの観点から好ましく、具体的には各成分の添加開始時間及び添加終了時間の差は、好ましくは15分以下、より好ましくは5分以下である。また、開環重合反応中、反応液を継続的に攪拌するのが好ましい。
これによって、低分子量成分の含有量を抑制することが可能である他に、実質的にゲル分を含まず、好ましい分子量分布を持ったノルボルネン系開環重合体とすることが可能である。また、添加する開環重合触媒やノルボルネン系単量体の温度は、通常15〜65℃であり、20〜45℃であるのが好ましい。
【0040】
重合温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは40〜70℃である。重合温度が低すぎると、転化率が十分に上がらない。重合温度が低すぎると、ノルボルネン系単量体の反応率が低くなる恐れがあり、重合温度が高すぎると分子量分布が広くなる恐れがある。
【0041】
通常、ノルボルネン系単量体、タングステン化合物溶液及び有機アルミニウム化合物の全ての添加を完了した後、反応液を10〜60分間、継続的に攪拌することで後反応を進行させる。後反応時間が短いと、ノルボルネン系単量体の反応率が低くなる恐れがあり、後反応時間が長いと分子量分布が広くなる恐れがある。
【0042】
このようにして得られるノルボルネン系開環重合体は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常、3,000〜30,000、好ましくは5,000〜20,000の範囲内にあり、また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常1.5〜5.0、好ましくは1.6〜4.0、より好ましくは1.7〜3.0の範囲にある。
また、ノルボルネン系開環重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上である。加工性の観点から、Tgの上限は300℃以下、好ましくは200℃以下である。
【0043】
ノルボルネン系単量体の開環重合によって得られる重合体は、主鎖中に炭素−炭素二重結合を有している。また重合させたモノマーの種類によって主鎖や5員環に結合した基(以下、側鎖という)の中に、炭素−炭素二重結合を有することもある。これらの炭素−炭素二重結合を水素添加して飽和結合にすることによって、耐熱性、耐候性、耐光性、耐溶剤性、耐薬品性、耐水性などの特性が改善されることがあるので、開環重合体を水素添加することが好ましい。水素添加は、常法に従って、水素添加触媒の存在下でノルボルネン系開環重合体の溶液に水素を供給し付加反応させることにより行うことができる。
【0044】
水素添加触媒としては、オレフィン化合物の水素添加に際して一般に使用されているものであれば、特に制限されない。水素添加触媒には均一系触媒と不均一系触媒とがある。均一系触媒は、遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒によって代表され、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせからなるものが挙げられる。
不均一系触媒は、ニッケル、パラジウム、白金、又はこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒によって代表され、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の組み合わせからなる触媒が挙げられる。
【0045】
水素添加反応は、通常、不活性有機溶媒中で実施する。不活性有機溶媒としては、生成する水素添加物の溶解性に優れていることから、炭化水素系溶媒が好ましく、環状炭化水素系溶媒がより好ましい。このような炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。水素添加反応の効率の点から、不活性有機溶媒として、n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素;又はこれらのハロゲン化物(例えば、クロロホルム、ジクロロエタン等);テトラヒドロフラン等の環状エーテルが好ましい。これらの不活性有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。水素添加反応に用いる不活性有機溶媒として重合反応溶媒と同じものを選択した場合には、重合反応を行った後の液に水素添加触媒を添加して水素添加反応させることができる。
【0046】
水素添加反応の反応条件は、使用する水素添加触媒によって若干異なるが、通常、−20℃〜250℃の温度範囲で、0.1〜50kg/cm2の水素圧力下で行う。
【0047】
この水素添加により、主鎖中の炭素−炭素二重結合と、側鎖の脂肪族性炭素−炭素二重結合の合計量の、通常95モル%以上、好ましくは98モル%以上、より好ましくは99モル%以上を飽和させることが好ましい。側鎖に芳香環が存在する場合に限り、光学材料などの用途に使用する場合には、屈折率向上の観点から、芳香環のみ未水添のままで残存していてもよいが、芳香環を水素添加してもよい。水素添加反応後、水素添加物を含む溶液から、必要に応じて、常法により水素添加触媒を脱灰し、次いで、乾燥により溶媒を除去して、水素添加物を回収することができる。乾燥方法としては、凝固分別して乾燥する方法、あるいは溶媒を直接除去する直接乾燥法などがある。
【0048】
このようにして得られるノルボルネン系開環重合体水素添加物は、シクロヘキサンを溶媒とするGPCにより測定されたポリイソプレン換算のMn、Mw、及びMw/Mn、並びにTgが、前述してノルボルネン系開環重合体のMn、Mw、及びMw/Mn、並びにTgと同様の特性を有している。
【0049】
本発明の方法により得られる開環重合体及びその水素添加物は、必要に応じて、有機又は無機の充填剤、安定剤、帯電防止剤、滑剤等の各種配合剤が添加されていてもよい。また必要に応じて他のポリマーがブレンドされていてもよい。
【0050】
本発明の方法により得られる開環重合体及びその水素添加物は成形材料として使用でき、各種の成形品に成形することができる。成形方法としては、例えば、射出成形法、ブロー成形法、真空成形法、回転成形法、押出成型法及び、圧縮成型法などが挙げられる。成形時の樹脂の溶融温度は、通常150〜350℃である。また、他の樹脂との多層成形や二重壁成形で、ガスバリア性、耐候性、耐光性などを高めることができる。
【0051】
上記の成形材料は、透明な成形品を得るのに好適である。この成形品は、耐衝撃性等の機械的強度に優れ、水分や水蒸気の透過率が低く、耐溶剤性にも優れることから、レンズ、プリズム、偏向フィルム等の光学用途;プレススルーパッケージ、ディスポーザブルシリンジ、薬液バイヤル、輸液バッグ等の医療用途;電線被覆、ウエハシッパー等の電気又は電子材料用途;カーボート、グージング等の建材;ラップフィルム、ストレッチフィルム、シュリンクフィルム、ブリスターパック等の包装フィルム;ボールペン芯等の文具用途;等に好適であり、中でも、フィルムやシートに形成されて用いられるのに適している。
【0052】
上記の成形材料をフィルム又はシートに成形する方法としては、例えば、Tダイを用いた溶融押出成形法、インフレーション成形法、溶剤キャスト法などが挙げられる。得られるフィルム又はシートは、必要に応じて延伸することにより、防湿性に優れたプレススルーパッケージに用いることができる。更にヒートシールが可能なことから薬品分包用フィルムとしても用いることができる。このフィルム又はシートは、自己密着性があることから、ラップフィルム又はストレッチフィルムとして好適である。更に透明性と低複屈折性が良好であることから、偏光フィルム、位相差フィルムとして用いることができ、強度が優れることから、高速道路透光板、自動販売機パネル、カーポートとして、あるいは、耐候性に優れることから、反射フィルム、マーキングフィルムとして用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0054】
以下に各種物性の測定法を示す。
(1)ノルボルネン系開環重合体の分子量
ノルボルネン系開環重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn):開環重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
【0055】
測定装置として、GPC−8020シリーズ(DP8020、SD8022、AS8020、CO8020、RI8020、東ソー社製)を用いた。
【0056】
標準ポリスチレンとしては、重量平均分子量(Mw)が、500、2630、10200、37900、96400、427000、1090000、5480000の計8種の標準ポリスチレン(東ソー社製)を用いた。
【0057】
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、測定試料をテトラヒドロフランに溶解後、カートリッジフィルター(ポリテトラフルオロエチレン製、孔径0.5μm)で濾過して作成した。
【0058】
測定は、カラムに、TSKgelGMHHR・H(東ソー社製)を2本直列に繋いで用い、流速1.0ml/min、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
【0059】
(2)重合転化率:
ノルボルネン系開環重合体の重合転化率は、ガスクロマトグラフィにより、残留単量体量を測定し、その測定値から算出した。
【0060】
(3)水素化率:
ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素化率は、溶媒に重クロロホルムを用いる、1H−NMR測定により求めた。
【0061】
(4)ノルボルネン系開環重合体の濾過性評価
ノルボルネン系開環重合体の不溶成分の定量として、重合反応溶液の濾過性を評価した。10回の重合反応終了後の各反応液を、重合体濃度が0.5%になるようにシクロヘキサンで希釈した後、孔径0.45μmのディスポーザブルフィルター(ADVANTEC社製、製品名「DISMIC−13HP045」)で0.2MPaの圧力で濾過し、5分間で濾過できた反応液量を測定し、10回の反応液量の平均値を求めた。濾過できた反応液を多いほど不溶成分量が少ないことになる。
【0062】
(5)濾過時間延長率:
濾過時間延長率は、10回の水添反応で得られた、各水添反応溶液300gを濾過面積17.3cmの濾布(仁方鉄工所社製、製品名「PS#9A」)で、それぞれ1回づつ濾過し、1回目と10回目の濾過時間より、以下の式により求めた。
濾過時間延長率%=〔(10回目の濾過時間−1回目の濾過時間)/1回目の濾過時間〕×100
【0063】
[実施例1]
(タングステン化合物溶液の調製)
窒素雰囲気下中ガラス容器に、脱水したシクロヘキサン、六塩化タングステン10mmol及びジエチルエーテル60mmolを加え12時間攪拌し、タングステン濃度が0.015mmol/gのタングステン溶液を調製した。
【0064】
(有機アルミニウム化合物の調製)
窒素雰囲気下中ガラス容器に、脱水したシクロヘキサン、トリイソブチルアルミニウム10mmol及びイソプロピルアルコール10mmolを加え1時間攪拌し、アルミニウム濃度が1.0mmol/gのジイソブチルアミニウムイソプロポキサイド溶液を調製した。
【0065】
(開環重合)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン600g、1−ヘキセン22.7mmol、ジエチルエーテル0.91mmol、及び、上記で調製したジイソブチルアミニウムイソプロポキサイド0.41mmol分のイソブチルアミニウムイソプロポキサイド溶液を、攪拌器付ステンレス鋼製オートクレーブに予め入れ、攪拌混合した。その後、攪拌下で55℃に保ちながら、ジシクロペンタジエン(「DCP」と略記)300gと上記で調製したタングステン0.40mmol分のタングステン溶液と、上記で調製したジイソブチルアミニウムイソプロポキサイド0.95mmol分のイソブチルアミニウムイソプロポキサイド溶液とを3時間かけて反応液に連続添加した。更にに30分攪拌し重合反応を完了し、ノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。得られたノルボルネン開環重合体の分子量、重合転化率、不溶成分の定量の測定を行った。
【0066】
(水素化反応)
上記で得た重合反応液を耐圧の水素化反応器に移送した。そこへ、ケイソウ土担持ニッケル触媒(ズードケミー触媒社製、製品名「T8400」、ニッケル担持率58重量%)0.5重量部を加えた。180℃、水素圧4.5MPaで6時間反応させ水添反応溶液を得た。
【0067】
(濾過)
上記で得た溶液300gを、加圧濾過器(ADVANTEC社製、製品名「KST−47」)及び
濾布(仁方鉄工所社製、製品名「PS#9A」)を使用し、70℃、圧力0.20MPaで窒素加圧の加圧濾過を行った。
【0068】
上記開環重合から濾過の作業を10回繰り返した。
尚、濾過については、濾過終了後、濾過層を取り除き、同じ濾布を用いて次の濾過作業を行った。
【0069】
10回の重合で得られたノルボルネン開環重合体の重量平均分子量の平均値とその標準偏差及び、分子量分布の平均値とその標準偏差を求め、重合転化率を測定し、また、濾過性の評価を行った。結果を表1に示す。
また、1回目の濾過時間は120分で、10回目の濾過時間は122分であり、したがって、濾過時間延長率は2%であった。
[実施例2]
(タングステン化合物溶液の調製)
窒素雰囲気下中ガラス容器に、脱水したシクロヘキサン、六塩化タングステン10mmol及びジブチルエーテル100mmolを加え12時間攪拌し、タングステン濃度が0.015mmol/gのタングステン溶液を調製した。
【0070】
(有機アルミニウム化合物の調製)
窒素雰囲気下中ガラス容器に、脱水したシクロヘキサン、トリイソブチルアルミニウム10mmol及びイソブチルアルコール10mmolを加え1時間攪拌し、アルミニウム濃度が1.0mmol/gのジイソブチルアミニウムイソブトキサイド溶液を調製した。
【0071】
(開環重合)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン600g、1−ヘキセン21.3mmol、ジブチルエーテル7.47mmol、及び上記で調製したジイソブチルアミニウムイソブトキサイド0.62mmol分のイソブチルアミニウムイソプロポキサイド溶液を、攪拌器付ステンレス鋼製オートクレーブに予め入れ、攪拌混合した。その後、攪拌下で55℃に保ちながら、ジシクロペンタジエンとテトラシクロドデセン(「TCD」と略記)の混合物(重量比7/3)300gと上記で調製したタングステン0.60mmol分のタングステン溶液と、上記で調製したジイソブチルアミニウムイソブトキサイド1.49mmol分のイソブチルアミニウムイソプロポキサイド溶液とを3時間かけて反応液に連続添加した。更に30分攪拌し重合反応を完了し、ノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。得られたノルボルネン開環重合体の分子量、重合転化率、不溶成分の定量の測定を行った。
【0072】
(水素化反応)
上記で得た重合反応液を実施例1と同様にして水添反応溶液を得た。
【0073】
(濾過)
上記で得た水添反応溶液実施例1と同様にして加圧濾過を行った。
【0074】
上記開環重合から濾過の作業を10回繰り返した。
尚、濾過については、濾過終了後、濾過層を取り除き、同じ濾布を用いて次の濾過作業を行った。
【0075】
10回の重合で得られたノルボルネン開環重合体の重量平均分子量の平均値とその標準偏差及び、分子量分布の平均値とその標準偏差を求め、重合転化率を測定し、また、濾過性の評価を行った。結果を表1に示す。
また、1回目の濾過時間は130分で、10回目の濾過時間は132分であり、したがって、濾過時間延長率は2%であった。
【0076】
[実施例3]
(開環重合)
タングステン溶液の調整にジブチルエーテルを用いない以外は実施例2と同様にして開環重合を行った。
【0077】
(水素化反応)
上記で得た重合反応液を実施例1と同様にして水添反応溶液を得た。
【0078】
(濾過)
上記で得た水添反応溶液実施例1と同様にして加圧濾過を行った。
【0079】
上記開環重合から濾過の作業を10回繰り返した。
尚、濾過については、濾過終了後、濾過層を取り除き、同じ濾布を用いて次の濾過作業を行った。
【0080】
10回の重合で得られたノルボルネン開環重合体の重量平均分子量の平均値とその標準偏差及び、分子量分布の平均値とその標準偏差を求め、重合転化率を測定し、また、濾過性の評価を行った。結果を表1に示す。
また、1回目の濾過時間は140分で、10回目の濾過時間は147分であり、したがって、濾過時間延長率は5%であった。
【0081】
[比較例1]
(開環重合)
予めオートクレーブに入れるジイソブチルアミニウムイソプロポキサイドの量を1.36mmolとし、その後ジイソブチルアミニウムイソプロポキサイドを添加しないこと以外は実施例1と同様にして開環重合を行った。
【0082】
(水素化反応)
上記で得た重合反応液を実施例1と同様にして水添反応溶液を得た。
【0083】
(濾過)
上記で得た水添反応溶液実施例1と同様にして加圧濾過を行った。
【0084】
上記開環重合から濾過の作業を10回繰り返した。
尚、濾過については、濾過終了後、濾過層を取り除き、同じ濾布を用いて次の濾過作業を行った。
【0085】
10回の重合で得られたノルボルネン開環重合体の重量平均分子量の平均値とその標準偏差及び、分子量分布の平均値とその標準偏差を求め、重合転化率を測定し、また、濾過性の評価を行った。結果を表1に示す。
また、1回目の濾過時間は160分で、10回目の濾過時間は180分であり、したがって、濾過時間延長率は13%であった。
【0086】
[比較例2]
(開環重合)
予めオートクレーブに入れるジイソブチルアミニウムイソブトキサイドの量を1.81mmolとし、その後ジイソブチルアミニウムイソブトキサイドを添加しないこと以外は実施例3と同様にして開環重合を行った。
【0087】
(水素化反応)
上記で得た重合反応液を実施例1と同様にして水添反応溶液を得た。
【0088】
(濾過)
上記で得た水添反応溶液実施例1と同様にして加圧濾過を行った。
【0089】
上記開環重合から濾過の作業を10回繰り返した。
尚、濾過については、濾過終了後、濾過層を取り除き、同じ濾布を用いて次の濾過作業を行った。
【0090】
10回の重合で得られたノルボルネン開環重合体の重量平均分子量の平均値とその標準偏差及び、分子量分布の平均値とその標準偏差を求め、重合転化率を測定し、また、濾過性の評価を行った。結果を表1に示す。
また、1回目の濾過時間は180分で、10回目の濾過時間は220分であり、したがって、濾過時間延長率は22%であった。
【0091】
【表1】

【0092】
この結果から以下のことがわかる。
本発明に従って、ノルボルネン系単量体、タングステン化合物溶液及び有機アルミニウム化合物を連続的に添加しながら開環重合を行うと、開環重合体のMw(万)とMw/Mnの標準偏差が低く重合安定性が高く、また、開環重合体濾過性評価が良好であり重合での不溶物生成量が低く、水添反応後の濾過時間延長率が低く濾過フィルターの詰まりが低いことがわかる(実施例1〜3)。それに対して、有機アルミニウム化合物を後から添加せず、予め全量反応器に入れたものは、開環重合体のMw(万)とMw/Mnの標準偏差が高く、開環重合体濾過性評価が低く、水添反応後の濾過時間延長率が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合反応系内中に、下記(a)〜(c)成分を連続的又は断続的に添加しながら開環重合を行うことを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法。
(a)ノルボルネン系単量体、
(b)タングステン化合物溶液、
(c)有機アルミニウム化合物。
【請求項2】
有機アルミニウム化合物が、ジアルキルアルミニウムアルコキサイドである請求項1記載の重合方法
【請求項3】
タングステン化合物溶液が、六塩化タングステン又はオキシ四塩化タングステンとエーテル化合物を含み、
タングステン化合物に対するエーテル化合物のモル比が、1〜20であることを特徴とする請求項1又は2に記載のノルボルネン系開環重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の製造方法によって得られたノルボルネン系開環重合体を、水素添加触媒の存在下に、水素添加することを特徴とするノルボルネン系開環重合体水素化物の製造方法。

【公開番号】特開2013−75976(P2013−75976A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216141(P2011−216141)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】