説明

ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル及びそのグランド接続構造

【課題】はんだ接続作業時におけるシールド導体の溶融若しくは蒸発及び絶縁体の変形若しくは溶融を防止すると共に実装密度を向上させることができるノンドレイン差動信号伝送用ケーブル及びそのグランド接続構造を提供する。
【解決手段】並列された一対の信号線導体11と、一対の信号線導体11の周囲に設けられた絶縁体12と、絶縁体12の周囲に設けられたシールド導体13と、ワイヤ15からなり、シールド導体13をグランドにはんだ接続するためのはんだ接続ピン14と、を備え、一対の信号線導体11は、その端部が絶縁体12とシールド導体13とから露出されており、はんだ接続ピン14は、シールド導体13の周囲にワイヤ15の一部が巻き付けられた巻付部14aと、ワイヤ15の端部がピン状に形成されたピン部14bと、を備えるノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル及びそのグランド接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
数Gbit/s以上の高速デジタル信号を扱う、サーバ、ルータ、ストレージ製品等の機器において、機器間、又は機器内の基板(回路基板)間の信号伝送には差動信号による伝送が用いられる。
【0003】
差動信号とは、位相を180度反転させた信号を対をなす2本の信号線導体で伝送し、受信側で受信した各信号の差分を合成・出力するものである。一対の信号線導体に流れる電流は互いに逆方向を向いて流れるため、伝送線路から放射される電磁波が小さい。また、外部から受けたノイズは、一対の信号線導体に等しく重畳するので、受信側で差分を合成出力することで、ノイズによる影響を打ち消すことができる。これらの理由から、高速デジタル信号の伝送には、差動信号による伝送がよく使われる。
【0004】
図16及びそのB−B線断面図である図17に示すように、差動信号による伝送に用いられる差動信号伝送用ケーブル160として、一対の信号線導体161と、一対の信号線導体161の周囲を一括して被覆する絶縁体162と、絶縁体162の外周に設けられたシールド導体163と、シールド導体163の外周に設けられたシース164とを有するものがある。
【0005】
なお、シールド導体163には、導体付テープ(シールドテープ)を巻き付けたもの、編組状の素線で覆ったものがある。また、シース164は、絶縁テープを巻き付けたもの、樹脂を押出被覆したものがある。
【0006】
この差動信号伝送用ケーブル160は、一対の信号線導体161が並列されたツイナックスケーブルであり、一対の信号線導体を撚り合わせたツイストペアケーブルに比べて一対の信号線導体161間の物理長の差が小さく、高周波における信号の減衰が小さい。また、シールド導体163が一対の信号線導体161を覆うように設けられているので、ケーブル付近に金属を置いても、特性インピーダンスが不安定になることもなく、加えて、ノイズ耐性も高い。これらの利点から、ツイナックスケーブルは、比較的高速で短距離の信号伝送に多く用いられている。
【0007】
ところで、差動信号伝送用ケーブル160は、ドレイン線を有していない。このため、差動信号伝送用ケーブル160を基板165に接続する際には、差動信号伝送用ケーブル160を段剥きし、一対の信号線導体161のそれぞれを基板165の信号線パッド166にはんだ167を用いて接続すると共に、シールド導体163を、基板165内の内層グランド層168にスルーホール169を介して接続されたグランドパッド170にはんだ167を用いて直接接続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−90959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、シールド導体163をグランドパッド170に直接はんだ接続するため、はんだ接続作業時にはんだコテ先の熱がシールド導体163や絶縁体162に必然的に伝わる。
【0010】
そのため、はんだ接続作業時に印加される熱(例えば、230〜280℃程度)によってシールド導体163が溶融若しくは蒸発したり、絶縁体162が変形若しくは溶融したりすることで、差動信号伝送用ケーブル160と基板165との接続部(ケーブル接続部)においてインピーダンス不整合が生じ、差動信号伝送用ケーブル160の電気特性が損なわれていた。
【0011】
また、シールド導体163の適切な(信頼性の高い)はんだ接続状態を確保するためには、はんだ層がはんだフィレットを形成している必要があり、はんだフィレットが形成される程度までグランドパッド170の幅(や面積)を大きく形成しておく必要があった。
【0012】
そのため、差動信号伝送用ケーブル160を複数本実装する場合、差動信号伝送用ケーブル160の配置間隔をグランドパッド170の幅に合わせなければならず、実装密度に制限が課せられていた。
【0013】
そこで、本発明の目的は、はんだ接続作業時におけるシールド導体・絶縁体に対する熱的負荷を防止すると共に実装密度を向上させることができるノンドレイン差動信号伝送用ケーブル及びそのグランド接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために創案された本発明は、並列された一対の信号線導体と、前記一対の信号線導体の周囲に設けられた絶縁体と、前記絶縁体の周囲に設けられたシールド導体と、ワイヤからなり、前記シールド導体をグランドにはんだ接続するためのはんだ接続ピンと、を備え、前記一対の信号線導体は、その端部が前記絶縁体と前記シールド導体とから露出されており、前記はんだ接続ピンは、前記シールド導体の周囲に前記ワイヤの一部が巻き付けられた巻付部と、前記ワイヤの端部がピン状に形成されたピン部と、を備えるノンドレイン差動信号伝送用ケーブルである。
【0015】
前記ピン部は、前記ワイヤの両端部を捻り合わせて形成されても良い。
【0016】
前記はんだ接続ピンは、ワイヤの一部を螺旋状に成形して形成された螺旋部と、前記ワイヤの端部をピン状に成形して形成された前記ピン部と、を備えるピン部材を予め作製しておき、前記ピン部材の前記螺旋部を前記巻付部として前記シールド導体の周囲に取り付けて形成されても良い。
【0017】
前記巻付部は、前記シールド導体の周囲に前記ワイヤの一部が2周以上巻き付けられると良い。
【0018】
前記巻付部は、前記シールド導体にはんだ接続されると良い。
【0019】
前記ワイヤは、銅ワイヤと、前記銅ワイヤに施された銀めっき又は錫めっきと、を備えると良い。
【0020】
前記ピン部は、前記一対の信号線導体に対して平行に設けられると良い。
【0021】
前記ピン部は、前記一対の信号線導体の中心を通る中心線上に設けられると良い。
【0022】
前記ピン部は2本設けられても良い。
【0023】
この場合、前記ピン部は、前記一対の信号線導体の中心を結ぶ線分の中心に直交する線において線対称となるように設けられると良い。
【0024】
また、本発明は、前記ノンドレイン差動信号伝送用ケーブルと、前記一対の信号線導体を接続するための信号線パッドと前記シールド導体を接続するためのグランドパッドとが形成された基板と、を備え、露出された前記一対の信号線導体が前記信号線パッドにはんだ接続されると共に前記シールド導体が前記ピン部を介して前記グランドパッドにはんだ接続されたノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造である。
【0025】
前記信号線パッドは、前記基板の縁部に、前記縁部の辺に対して垂直、且つ前記信号線導体と等ピッチに形成されると良い。
【0026】
前記グランドパッドは、前記信号線パッドに対して平行に形成されると良い。
【0027】
前記信号線パッドと前記グランドパッドは、前記基板の縁部と間隔を隔てて形成されると良い。
【0028】
前記ノンドレイン差動信号伝送用ケーブルは、前記一対の信号線導体と前記ピン部のみが前記基板上に位置するように前記基板の縁部に配置されると良い。
【0029】
前記信号線パッドと前記グランドパッドは、前記基板の両面に形成され、前記ノンドレイン差動信号伝送用ケーブルは、前記基板の両面に実装されると良い。
【0030】
前記グランドパッドは、前記信号線パッドの両側に対称に形成されると良い。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、はんだ接続作業時におけるシールド導体・絶縁体に対する熱的負荷を防止すると共に実装密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルを示す斜視図である。
【図3】本発明が適用可能なケーブル構造の一例を示す断面図である。
【図4】本発明が適用可能なケーブル構造の一例を示す断面図である。
【図5】本発明が適用可能なケーブル構造の一例を示す断面図である。
【図6】本発明が適用可能なケーブル構造の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルを示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルを示す斜視図である。
【図9】ピン部材を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造を示す斜視図である。
【図11】図7に示したノンドレイン差動信号伝送用ケーブルを基板に接続してノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造を作製する手順を説明する図である。
【図12】本発明の変形例に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造を示す斜視図である。
【図13】図12に示したノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造を示すA−A線断面図である。
【図14】本発明の変形例に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造を示す斜視図である。
【図15】図14に示したノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造のケーブル接続部におけるインピーダンスの分布を評価した結果を示す度数分布図である。
【図16】従来技術に係る差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造を示す斜視図である。
【図17】図16に示した差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造を示すB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0034】
先ず、第1の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルについて説明する。
【0035】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10は、並列された一対の信号線導体11と、一対の信号線導体11の周囲に設けられた絶縁体12と、絶縁体12の周囲に設けられたシールド導体13と、ワイヤ15からなり、シールド導体13をグランド(例えば、後述するグランドパッドが挙げられるが、これ以外の端子等であっても構わない)にはんだ接続するためのはんだ接続ピン14と、を備え、一対の信号線導体11は、その端部が絶縁体12とシールド導体13とから露出されており、はんだ接続ピン14は、シールド導体13の周囲にワイヤ15の一部が巻き付けられた巻付部14aと、ワイヤ15の端部がピン状に形成されたピン部14bと、を備えることを特徴とする。
【0036】
なお、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブルとは、ドレイン線を有さない差動信号伝送用ケーブルのことである。
【0037】
はんだ接続ピン14は、シールド導体13の周囲にワイヤ15を巻き付け、巻き付けたワイヤ15の端部をピン状に形成して作製される。
【0038】
巻付部14aは、シールド導体13の周囲にワイヤ15の一部が2周以上巻き付けられると良い。これにより、シールド導体13の全周に亘って巻付部14aを隙間なく接触させることができ、シールド導体13と巻付部14aとの間に隙間が生じることによって起こるワイヤ15の巻き付け箇所近傍の電界分布への影響を無くし、これに起因するインピーダンス不整合を無くすことが可能となる。
【0039】
巻付部14aは、シールド導体13にはんだ接続されると良い。これにより、シールド導体13と巻付部14aとの接触状態を確実に確保することができる。
【0040】
なお、シールド導体13はピン部14bを介してグランドに接続されるため、シールド導体13に熱が加わるのは、巻付部14aをシールド導体13にはんだ接続するときだけである。また、シールド導体13をグランドに直接はんだ接続する場合に用いるはんだ量よりも巻付部14aをシールド導体13にはんだ接続する場合に用いるはんだ量の方が少ない。これは、はんだ接続すべき面積が後者の方が小さくて済むからである。そのため、巻付部14aをシールド導体13にはんだ接続する際に加えられる熱量は、シールド導体13をグランドに直接はんだ接続する場合に加えられる熱量よりも少なく、シールド導体13の溶融若しくは蒸発及び絶縁体12の変形若しくは溶融を生じさせるような熱量ではない。
【0041】
ワイヤ15は、銅ワイヤと、銅ワイヤに施された銀めっき又は錫めっきと、を備えると良い。銅ワイヤは導電性に優れながら安価であり、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10の低価格化を図ることができる。また、銀めっき又は錫めっきを施すことによりはんだ濡れ性を向上させることができ、ワイヤ15の一部からなる巻付部14aをシールド導体13にはんだ接続したとき、及びワイヤ15の一部からなるピン部14bをグランドにはんだ接続したときに良好な接続状態を確保することが可能となる。
【0042】
ピン部14bは、一対の信号線導体11に対して平行に設けられると良い。これにより、一対の信号線導体11とピン部14bとの距離を一定に保つことができ、一対の信号線導体11とピン部14bとの距離が変動することによって起こるインピーダンス不整合を緩和することが可能となる。
【0043】
ピン部14bは、一対の信号線導体11の中心を通る中心線X上に設けられると良い。これにより、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10を基板に接続する際に一対の信号線導体11又はピン部14bをフォーミングする必要がなく(詳しくは後述する)、一対の信号線導体11とピン部14bを互いに平行に配置した状態で、且つその距離を一定に保った状態でグランドにそれぞれはんだ接続することができ、インピーダンス不整合を生じにくくすることが可能となる。
【0044】
図2に示すノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10’のように、ピン部14bは2本設けられても良い。この場合、ピン部14bは、一対の信号線導体11の中心を結ぶ線分Sの中心に直交する線Yにおいて線対称となるように設けられると良い。これにより、一対の信号線導体11に対する電界分布をより平衡とすることができ、電界分布の非対称性によって生じるインピーダンス不整合を緩和することが可能となる。
【0045】
本発明を適用可能なケーブル構造としては、図3に示すように、一対の信号線導体11と、一対の信号線導体11の周囲を一括して被覆する絶縁体12と、絶縁体12の外周に設けられたシールド導体13と、シールド導体13の外周に設けられたシース17とを有するケーブル構造30がある。図1、2に示したノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10、10’は、このケーブル構造30を採用している。
【0046】
また、これ以外にもLANケーブル等のドレイン線を有さないケーブル構造であれば全てに適用できる。例えば、図4〜6に示すように、絶縁体12に代えて発泡絶縁体18を用いたケーブル構造40(図4参照)、信号線導体11を内側スキン層19、発泡絶縁体18、外側スキン層20で被覆してなる2本の電線21を縦添えしたケーブル構造50(図5参照)、2本の電線21を縦添えし互いに融着させたケーブル構造60(図6参照)に適用可能である。なお、図5、6のケーブル構造50、60は、電線21とシールド導体13との間に空隙22がある。
【0047】
次に、第2の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルについて説明する。
【0048】
図7に示すように、第2の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70は、第1の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10と比較すると、ピン部14bがワイヤ15の両端部を捻り合わせて形成される点のみが相違する。
【0049】
また、第1の実施の形態の変形例に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10’と同様に、図8に示すノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70’のように、ピン部14bが2本設けられても良い。
【0050】
なお、その他の構成は、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10、10’と同一であるので説明を省略する。
【0051】
これまで説明してきたノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10、10’、70、70’においては、はんだ接続ピン14は、シールド導体13の周囲にワイヤ15を巻き付け、巻き付けたワイヤ15の端部をピン状に形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。
【0052】
例えば、図9に示すように、はんだ接続ピン14は、ワイヤ15の一部を螺旋状に成形して形成された螺旋部91と、ワイヤ15の端部をピン状に成形して形成されたピン部14bと、を備えるピン部材90を予め作製しておき、ピン部材90の螺旋部91を巻付部14aとしてシールド導体13の周囲に取り付けて形成されるものとしても良い。
【0053】
このとき、螺旋部91は、シールド導体13の周囲への取り付けが容易となるように、その内径がシールド導体13の外径よりも数μm程度大きく形成される。
【0054】
ピン部材90をシールド導体13に取り付ける際には、はんだ接続によって螺旋部91をシールド導体13の周囲に取り付けると良い。
【0055】
なお、図9では、第1の実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10のはんだ接続ピン14となるピン部材90を一例として図示したが、他のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル10’、70、70’についても同様にしてピン部材を用いることができる。
【0056】
次に、本実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造について説明する。ここでは、一例としてノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70を用いたものを説明する。
【0057】
図10に示すように、本実施の形態に係るノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造(以下、単にグランド接続構造という)100は、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70と、一対の信号線導体11を接続するための信号線パッド23とシールド導体13を接続するためのグランドパッド24とが形成された基板25と、を備え、露出された一対の信号線導体11が信号線パッド23にはんだ16を用いてはんだ接続されると共にシールド導体13がピン部14bを介してグランドパッド24にはんだ16を用いてはんだ接続されたことを特徴とする。
【0058】
信号線パッド23は、基板25の縁部に、縁部の辺26に対して垂直、且つ信号線導体11と等ピッチに形成されると良い。これにより、信号線導体11の距離を一定に保った状態で信号線パッド23にそれぞれはんだ接続することができ、ケーブル接続部におけるインピーダンス不整合を生じにくくすることが可能となる。
【0059】
また、信号線パッド23は、基板25に形成された信号線ライン27に接続され、この信号線ライン27を通じて信号が伝送される。
【0060】
グランドパッド24は、信号線パッド23の片側に、信号線パッド23に対して平行に形成されると良い。これは、ピン部14bが信号線導体11に対して平行に設けられるので、ピン部14bの配置に合わせたものである。これにより、信号線導体11とピン部14bとの距離を一定に保つことができ、ケーブル接続部におけるインピーダンス不整合を緩和することが可能となる。
【0061】
また、グランドパッド24は、スルーホール28を介して基板25内の内層グランド層29に接続される。なお、グランド層は表層にあっても良い。表層に形成する場合にはコプレーナ配線等の技術を用いると良い。
【0062】
信号線パッド23、グランドパッド24、及び内層グランド層29は、基板25の縁部と間隔dを隔てて形成されると良い。これにより、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70を基板25に接続したときに、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70のシールド導体13が信号線パッド23、グランドパッド24、及び内層グランド層29に接触するのを防止することができる。シールド導体13がグランドパッド24や内層グランド層29に接触してもインピーダンス不整合の問題はあるものの信号の伝送は問題なく行える。しかし、シールド導体13が信号線パッド23に接触してしまうとショートしてしまい信号の伝送が行えなくなってしまう。前述の構成は、この問題を回避するためのものである。
【0063】
これら信号線パッド23、信号線ライン27、及びグランドパッド24は、図示しない回路パターンと共に基板25に同時に形成される。
【0064】
ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70は、一対の信号線導体11とピン部14bのみが基板25上に位置するように基板25の縁部に配置されると良い。これは以下の理由による。
【0065】
従来は、差動信号伝送用ケーブル160の端末部を基板165上に載置すると共にシールド導体163をグランドパッド170に接続し、この状態で信号線導体161を信号線パッド166にはんだ接続していたため、信号線導体161が信号線パッド166に接触するよう信号線導体161を絶縁体162の高さの約半分に相当する寸法分だけフォーミングする必要があった(図16、17参照)。このとき、絶縁体162に作用する外力によって絶縁体162が変形し、ケーブル接続部においてインピーダンスの不整合が生じ、差動信号伝送用ケーブル160の電気特性が劣化することがあった。
【0066】
これに対し、一対の信号線導体11とピン部14bのみが基板25上に位置するようにされることで、一対の信号線導体11及びピン部14bをフォーミングすることなく、信号線パッド23又はグランドパッド24にはんだ接続することができる。これにより、絶縁体12が変形してインピーダンス不整合が生じるのを防止することが可能となり、またノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70の電気特性の劣化を防止することができる。更に、絶縁体12の高さの約半分に相当する寸法分だけグランド接続構造100自体の高さを低減でき、グランド接続構造100の小型化を図ることが可能となる。
【0067】
図11に示すように、このグランド接続構造100は、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70を基板25に接続することで作製することができる。具体的には、一対の信号線導体11を信号線パッド23上に載置すると共にピン部14bをグランドパッド24上に載置し、これらをはんだ16によりはんだ接続する。このとき、一対の信号線導体11及びピン部14bのそれぞれの距離を一定に保った状態で、且つフォーミングすることなくはんだ接続する。これにより、ケーブル接続部におけるインピーダンス不整合を低減したグランド接続構造100が得られる。
【0068】
このグランド接続構造100では、ピン部14bを介してシールド導体13とグランドパッド24とを接続するため、グランドパッド24は、ピン部14bをはんだ接続することができるだけの幅(や面積)を有していれば十分である。つまり、グランド接続構造100におけるグランドパッド24の幅(や面積)は、シールド導体13を直接はんだ接続する場合に比べて小さくて良い。よって、グランド接続構造100によれば、グランドパッド24が占有する基板上の幅(や面積)が従来に比べて小さいため、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70の実装密度を従来よりも向上させることが可能となる。
【0069】
なお、図12及びそのA−A線断面図である図13に示すように、信号線パッド23とグランドパッド24は、基板25の両面の同位置に形成されても良く、この場合、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70は、基板25の両面の同位置に実装される。即ち、2本のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70がそのピン部14bの位置が互いに反転された状態で縦添えされ、各ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70の一対の信号線導体11とピン部14bがそれぞれ接続対象の面に形成された信号線パッド23とグランドパッド24に接続されて実装される。これにより、1枚の基板25におけるノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70の実装密度を更に向上させることができる。
【0070】
また、図14に示すグランド接続構造100’のように、グランドパッド24は、2つの信号線パッド23を両側から挟み込むように、ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル70の長手方向の延長線Eを軸として対称に形成されると良い。この場合、一方のグランドパッド24は、ピン部14bがはんだ接続されることのないダミーグランドパッドである。これにより、ケーブル接続部周辺の電界分布を一対の信号線導体11に対してより平衡とすることができ、ケーブル接続部におけるインピーダンス整合をより確保することができる。
【0071】
図14に示したグランド接続構造100’に基づき実際にサンプルを作製し、ケーブル接続部におけるインピーダンスの分布を評価してみると、図15に示すような度数分布図が得られる。
【0072】
この結果によれば、グランド接続構造100’では、ケーブル接続部におけるインピーダンスは95〜102Ωであり、システムインピーダンス100Ωの系に対して十分な特性が得られていることが分かる。特に高速のものでは、100±5Ωというシビアな規格が要求されるが、グランド接続構造100’はこの要件を満たしている。
【0073】
以上述べたように、本発明によれば、はんだ接続作業時におけるシールド導体・絶縁体に対する熱的負荷、つまり、例えば、はんだ接続作業時におけるシールド導体の溶融若しくは蒸発及び絶縁体の変形若しくは溶融を防止すると共に実装密度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル
10’ ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル
11 信号線導体
12 絶縁体
13 シールド導体
14 はんだ接続ピン
14a 巻付部
14b ピン部
15 ワイヤ
16 はんだ
17 シース
18 発泡絶縁体
19 内側スキン層
20 外側スキン層
21 電線
22 空隙
23 信号線パッド
24 グランドパッド
25 基板
26 辺
27 信号線ライン
28 スルーホール
29 内層グランド層
30 ケーブル構造
40 ケーブル構造
50 ケーブル構造
60 ケーブル構造
70 ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル
70’ ノンドレイン差動信号伝送用ケーブル
100 グランド接続構造
100’ グランド接続構造
d 間隔
S 線分
X 中心線
Y 線
E 延長線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列された一対の信号線導体と、
前記一対の信号線導体の周囲に設けられた絶縁体と、
前記絶縁体の周囲に設けられたシールド導体と、
ワイヤからなり、前記シールド導体をグランドにはんだ接続するためのはんだ接続ピンと、
を備え、
前記一対の信号線導体は、その端部が前記絶縁体と前記シールド導体とから露出されており、
前記はんだ接続ピンは、前記シールド導体の周囲に前記ワイヤの一部が巻き付けられた巻付部と、前記ワイヤの端部がピン状に形成されたピン部と、を備えることを特徴とするノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項2】
前記ピン部は、前記ワイヤの両端部を捻り合わせて形成される請求項1に記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項3】
前記はんだ接続ピンは、ワイヤの一部を螺旋状に成形して形成された螺旋部と、前記ワイヤの端部をピン状に成形して形成された前記ピン部と、を備えるピン部材を予め作製しておき、前記ピン部材の前記螺旋部を前記巻付部として前記シールド導体の周囲に取り付けて形成される請求項1又は2に記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項4】
前記巻付部は、前記シールド導体の周囲に前記ワイヤの一部が2周以上巻き付けられる請求項1〜3のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項5】
前記巻付部は、前記シールド導体にはんだ接続される請求項1〜4のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項6】
前記ワイヤは、銅ワイヤと、前記銅ワイヤに施された銀めっき又は錫めっきと、を備える請求項1〜5のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項7】
前記ピン部は、前記一対の信号線導体に対して平行に設けられる請求項1〜6のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項8】
前記ピン部は、前記一対の信号線導体の中心を通る中心線上に設けられる請求項1〜7のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項9】
前記ピン部は2本設けられる請求項1〜8のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項10】
前記ピン部は、前記一対の信号線導体の中心を結ぶ線分の中心に直交する線において線対称となるように設けられる請求項9に記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブル。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブルと、
前記一対の信号線導体を接続するための信号線パッドと前記シールド導体を接続するためのグランドパッドとが形成された基板と、
を備え、
露出された前記一対の信号線導体が前記信号線パッドにはんだ接続されると共に前記シールド導体が前記ピン部を介して前記グランドパッドにはんだ接続されたことを特徴とするノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造。
【請求項12】
前記信号線パッドは、前記基板の縁部に、前記縁部の辺に対して垂直、且つ前記信号線導体と等ピッチに形成される請求項11に記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造。
【請求項13】
前記グランドパッドは、前記信号線パッドに対して平行に形成される請求項11又は12に記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造。
【請求項14】
前記信号線パッドと前記グランドパッドは、前記基板の縁部と間隔を隔てて形成される請求項11〜13のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造。
【請求項15】
前記ノンドレイン差動信号伝送用ケーブルは、前記一対の信号線導体と前記ピン部のみが前記基板上に位置するように前記基板の縁部に配置される請求項11〜14のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造。
【請求項16】
前記信号線パッドと前記グランドパッドは、前記基板の両面に形成され、
前記ノンドレイン差動信号伝送用ケーブルは、前記基板の両面に実装される請求項11〜15のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造。
【請求項17】
前記グランドパッドは、前記信号線パッドの両側に対称に形成される請求項11〜16のいずれかに記載のノンドレイン差動信号伝送用ケーブルのグランド接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−77545(P2013−77545A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174052(P2012−174052)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】