説明

ハイスループットアッセイのための3次元組織

3次元生体人工組織を使用してアッセイを行なうことによって薬剤に対する生体人工組織の応答を検出する方法が本明細書において提供される。方法はハイスループットプラットフォームに適合可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2008年6月5日に出願された米国仮特許出願第61/059,126号の優先権に対する利益を主張し、引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究の記載]
本発明は、NIH/NCCAMによって授与されたR41助成金番号AT003984下の政府支援を得て行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(序論)
疾患状態に加えて、正常発生の間の生細胞中の多様な生体分子を特徴づける必要性から、細胞ベースのアッセイの開発が望まれている。ハイスループットの細胞ベースのアッセイは、今や生物医学研究の基礎をなすものである。これらのアッセイは、細胞の成分およびプロセスの発見などの基礎研究ならびに薬物開発などの応用研究の両方において使用される。例えば、細胞ベースのアッセイは、細胞生存率、細胞増殖、遺伝子発現、ならびに細胞内シグナル伝達および細胞間シグナル伝達などの細胞活動および細胞機能のモニタリングのために開発されている。かかるアッセイはハイスループット(HTP)スクリーニング適用のために有用である。しかしながら、検出感度またはシグナル強度が低すぎるので、多くの細胞ベースのアッセイは、ハイスループットスクリーニングに適合可能ではない。さらに、ハイスループットの細胞ベースのアッセイは単層の細胞に対してルーチンに行なわれ、これらのアッセイは組織中の細胞の挙動を適切に表現しない。細胞ベースのアッセイをハイスループット適用に適合させることができるように、感度の増加およびシグナル強度を増加させる必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、3次元組織モデルを使用するハイスループット細胞アッセイシステムおよびかかるアッセイを行なう方法を提供する。アッセイは、様々な薬剤およびストレッサーによる処理に対する組織の応答のモニタリングに有用である。3次元組織は、マルチウェルプレート中のウェル内に位置決めしたスキャフォールド上で形成される。組織はウェルの底部の上方に浮遊される。アッセイは浮遊組織上で行なわれ、アッセイのアウトプットはウェル中で測定される。
【0005】
1つの態様において、薬剤に対する組織の応答を検出する方法が本明細書において提供される。本方法は、薬剤と生体人工組織を接触させる段階と、生体人工組織を使用してインディケーターを産生するアッセイを行う段階と、ウェル中のインディケーターのレベルを検出する段階とを含む。インディケーターのレベルは、薬剤に対する生体人工組織の応答を表す。アッセイにおいて使用される生体人工組織は細胞および細胞外マトリックスを含み、組織接着を促進する留め具なしにスキャフォールド支持体上に形成される。スキャフォールド支持体はウェルの底部の上方に位置決めされる。
【0006】
アッセイのアウトプットは発色産物または蛍光産物であってもよく、産物の蓄積はプレートリーダーを使用して測定することができる。本発明に従うシステムで実行することができる例示的なアッセイは、細胞増殖アッセイ、細胞死アッセイ、アポトーシスアッセイ、タンパク質発現アッセイ、遺伝子発現アッセイ、酵素的アッセイ、シグナリングアッセイ(キナーゼ活性アッセイ、Ca2+シグナリングアッセイおよびGPCRシグナリングアッセイなど)、ミトコンドリア活性を評価するアッセイおよび細胞外マトリックス分解アッセイを含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明は、添付の図面と併用して具体的な実施形態の詳細な説明を参照することによりよく理解することができる。
【図1a】図1b中で示される三角形スキャフォールドおよび矩形スキャフォールド(代替の形状)の使用を示すハイスループットシステムを示した図である。
【図1b】再構成3次元組織が形成される支持体を提供する、直径約1ミリメートルのステンレス鋼ワイヤーで作製される三角形スキャフォールドおよび矩形スキャフォールド(代替の形状)を示した図である。
【図2a】スキャフォールドの複数の概観図を示す。スキャフォールドの上面図である。
【図2b】スキャフォールドの複数の概観図を示す。スキャフォールドの側面図である。
【図2c】スキャフォールドの複数の概観図を示す。ハイスループット適用における使用の容易性のために、複数のスキャフォールドを互いに接続する1つの手段の側面図である。
【図3】操作された典型的な3次元組織を示す写真である。
【図4】3次元組織と細胞の単層との間の差異を図示する図解である。グラフは、細胞単層の代わりに3次元組織を使用することによって実現されうる細胞ベースのアッセイシグナル強度の増加を実証する。
【図5A】パルペーター(Palpator)(商標)の写真である。システムは、温度調整プレート(d)上に等尺性力変換器(a)、プローブバス(b)およびヒドロゲル組織構築物(HTC)ステージ(c)を含む。
【図5B】x−y−z動作ロボットアーム(添付のプローブを持つ力変換器をHTCの上方に位置決めし、力測定のために組織上にプローブを低下させる)を示す写真である。
【図5C】添付の力変換器およびプローブを持つロボットアームの概略図である。
【図5D】プローブをHTCの中央面の1mm上方に位置決めし(a)、次いでそれが最初に接触するまで低下させ(b)、次いで組織を引き伸ばした(c)写真である。
【図5E】HTCをへこませる間に記録された代表的な力を示すグラフである。矢印a、bおよびcは、(D)示されるプローブ位置に関連した力測定を示す。
【図5f】Rhoキナーゼ阻害剤1(RKI1)、サイトカラシンD(CD)、ロテノン(ROT)および2,4−ジニトロフェノール(DNP)が用量依存的にHTC収縮力を減少させたことを示すグラフである。HTCをプレコンディショニングし、次いで示されるように4つの薬物の様々な濃度により処理した。力は3時間で測定した。力測定は対照の培地で処理したHTC(Fc)と比較して表した。データーは、主に4重、いくつかは2重および3重の重複測定の平均および標準誤差を示す。Z因子>0.44(#)および0.59(*)。
【図5g】Rhoキナーゼ阻害剤1(RKI1)、サイトカラシンD(CD)、ロテノン(ROT)および2,4−ジニトロフェノール(DNP)が用量依存的にHTC収縮力を減少させたことを示すグラフである。HTCをプレコンディショニングし、次いで示されるように4つの薬物の様々な濃度により処理した。力は24時間で測定した。力測定は対照の培地で処理したHTC(Fc)と比較して表した。データーは、主に4重、いくつかは2重および3重の重複測定の平均および標準誤差を示す。Z因子>0.44(#)および0.59(*)。
【図5h】サイトカラシンD処理が細胞F−アクチンを減少させたことを示すグラフである。薬物により24時間処理したHTCを固定し、アレクサ568コンジュゲートファロイジンにより標識した。蛍光強度をプレートリーダーで読み取り、対照の培地で処理したHTC(lc)と比較してプロットした。データーは、3重の重複測定の平均および標準誤差を示す。スチューデントのt検定によって、対照(Ctrl)に対して、@p<0.02。
【図5i−w】培地(i、n、s)、CD(j、o、t)、RKI1(k、p、u)、DNP(l、q、v)およびROT(m、r、w)により処理されたREF単層を示す顕微鏡写真である。処理後3時間(i〜m)および処理後24時間(n〜r、s〜w)で、代表的な単層を固定し、アレクサ568コンジュゲートファロイジンおよびアレクサ568コンジュゲートDAPIで染色した。CDは3時間で広範囲なアクチン解重合を引き起こした(j)。RKI1、DNPおよびROTは、限定的な効果から無効果であった。CDおよびROTにより誘導される細胞毒性は、細胞縮化(g、iおよびj)および二核性(l)および核崩壊(o)によって明らかであった。(g)および(l)中のスケールバーがより大きいことに注目。イメージは63倍水浸対物レンズを使用して、ライカ(Leica)社SP5共焦点顕微鏡上で捕捉した(スケールバー=50μm)。
【図6a】DNPの脱共役効果は、プレートリーダーを使用する細胞単層において定量化可能でないことを示すグラフである。平均および標準誤差が示される(n=11)。
【図6b】同じ効果は、HTCにおいて定量化可能であることを示すグラフである。平均および標準誤差が示される(n=4)。
【図6c】DNPにより処理したREF単層における顕微鏡で定量化したTMREシグナルの代表的なトレースを示すグラフである。
【図6d】図6(d)は、DNPにより処理されたHTCの底部細胞層における顕微鏡で定量化したTMREシグナルの代表的なトレースを示すグラフである。HTCの細胞層からの結果(c)と比較して、TMREシグナルにおける減少の大きさはより高かった。
【図6e−f】DNPの用量依存的に脱共役されたHTCミトコンドリア電位を示すグラフである。TMRE(30分間100nM)をあらかじめローディングしたHTCを、様々な濃度のCD、RKI1、DNP、およびROTにより処理した。TMRE蛍光シグナルは、処理後3時間(a)および処理後24時間(b)でプレートリーダーを使用して測定した。シグナル強度は対照の培地で処理したHTC(lc)と比較して表した。4重(いくつかは2重または3重)の重複測定の平均および標準誤差を示す。Z因子>0.64(#)および0.46(*)。
【図7a】CDおよびROTの用量依存的細胞毒性を示すグラフである。薬物で処理したHTCの生存率を24時間でMTTアッセイによって決定した。フォルマザンの吸光度(生存細胞中のMTTから変換された)をプレートリーダーで読み取り、対照の培地で処理したHTC(Ac)と比較して表した。10%DMSO処理を陽性対照としてこのアッセイに使用し、その値は0.11±9×10-3のA/Acであった(グラフ中に示されない)。対照vs.10%DMSO解析についてZ因子>0.85。データーは、主に4重、いくつかの2重および3重の重複測定の平均および標準誤差を示す。
【図7b】HTCスクリーニングのワークフロー概略図である。継続期間は、HTCの各々のプレートを処理するのに必要な時間量を示す。HTCを合成し、使用の前に48時間収縮させる。網掛けの平行四辺形は、データー収集点を示す。イン・シトゥーのインディケーター(例えばTMRE)については反復測定が可能である。終点アッセイ(例えばMTT)はHTCの犠牲を必要とし、実験の終わりで実行される。
【図7c−f】化合物のスクリーニングに使用される表現型プロフィールを示すグラフである。生理データー(すなわち、各々の化合物について24時間で組織力(力)、ミトコンドリア電位(Mit.Pot.)およびMTT変換(MTT Conv.))は、最大の効果に対して正規化され(4つの化合物のうちの1つによって)、次いで一次関数または4パラメーターロジスティック関数(線)によりフィッティングさせた。1から0に減少するプロフィールは、化合物がその特異的生理に対して最大の負の効果があることを示す。表現型プロフィールは、RKI1は最小の脱共役活性(ミトコンドリア毒性)およびMTT変換の減少(細胞毒性)を示すが組織力を効果的に減少させた(1から0に)ので、RKI1が最適候補化合物であることを明らかに示すことによって化合物選択プロセスを単純化する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
利用可能な細胞ベースのハイスループットスクリーニングアッセイの多くの有用性は、発色インディケーターまたは蛍光インディケーターによって生成されるシグナル強度が低いために限定的である。かかるアッセイは、一般的には組織中に存在する細胞ではなく、単層培養または懸濁培養における細胞を使用する。さらに、単層細胞および懸濁細胞は、必ずしも組織の3次元環境中のインビボの細胞のように挙動しない。ここで示したアッセイおよび組織により、インビボの設定により類似する組織ベースのシステムでこれらのハイスループットアッセイを行なうことが可能になる。さらに、同じ面積の細胞単層と比較して3次元組織中に存在する細胞数が多いために、3次元組織のアッセイによりアウトプットとして生成されるシグナルは増幅される。
【0009】
本発明は、光学的検出システム(分光測光プレートリーダーおよび蛍光プレートリーダーなど)を使用するアッセイのために細胞生理を測定する効率を改善する。これは操作された組織または生体人工組織などの組織を使用する生理プロファイリングシステムの追加の特色である。米国特許第7,449,306号中でこれまでに記載されるように、操作された組織(生体人工組織)は、96ウェルプレートフォーマットを含む小型化されたフォーマットで構築されうる。例えば、操作された組織中で増殖する細胞(3次元組織類器官)は、細胞内活性および/または細胞外活性の生理について報せる蛍光プローブをローディングすることができる。蛍光プローブは強度の変化または発光スペクトルのシフトによって生理的状態を報せる。
【0010】
薬剤に対する組織の応答を検出する方法が本明細書において提供される。方法は、薬剤と生体人工組織を接触させること、生体人工組織上でインディケーターを産生するアッセイを行なうこと、およびウェル中のインディケーターのレベルを検出することを含む。インディケーターのレベルは、薬剤に対する生体人工組織の応答を表す。アッセイにおいて使用される生体人工組織は細胞および細胞外マトリックスを含み、組織接着を促進する留め具なしにスキャフォールド支持体上に形成される。アッセイはハイスループットスクリーニング法に適合させることができる。
【0011】
生体人工組織は当業者に利用可能な任意の手段を介して薬剤と接触させることができる。例えば、薬剤は生体人工組織を含有するウェルに加えることができるか、または生体人工組織形成前の細胞に対して提供することができる。あるいは、薬剤は、ウイルスベクターまたはリポソームなどのベクターによって、または受容体仲介性標的化を介して細胞と接触させることができる。
【0012】
生体人工組織モデルは、病原菌またはベクターを含む、医薬品または可能性のある医薬品、毒素、化学物質、核酸、ペプチド、ポリペプチドおよび微生物を含むが、これらに限定されない様々なクラスの薬剤の効果を定量的および迅速に評価するために使用することができる。例えば、活性化因子として有用な薬剤はウシ胎仔血清(FBS)、リゾフォスファチジン酸(LPA);トロンビン、表皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、アンゴテンシン(angotensin)−II、エンドセリン−1、バソプレッシンおよびその組み合わせを含む増殖因子を含むが、これらに限定されない。阻害剤は、アンジオテンシンII受容体に対する受容体アンタゴニストを含む細胞表面受容体に結合する阻害剤、およびさらに細胞内に作用する阻害剤を含むが、これらに限定されない。本明細書において有用な阻害剤は、ゲニステイン、ハービマイシン、および細胞骨格に対して作用する薬剤を含むシグナル伝達経路を阻害するものを含むが、これらに限定されない。阻害剤は、サイトカラシンD、ラトランクリン(latrunclin)B、パクリトキソール(paclitoxol)、ノコダゾール、カリキュリンA、ブタン−ジオン−モノオキシム(BDM)およびその組み合わせも含むが、これらに限定されない。
【0013】
生体人工組織に提供される薬剤の量は、組織モデルからの応答または組織モデルによる応答を誘発するのに効果的な量である。効果的な量は、一般的には約1nM乃至100mMに、適切には100nM乃至1mM、より適切には500nM乃至500μMの間である。
【0014】
薬剤による処理後に、生体人工組織上でアッセイを行なうことができる。インディケーター(発色インディケーター、蛍光インディケーターまたは放射性インディケーターなど)を産生するようにデザインできる任意のアッセイは、本発明に従う3次元生体人工組織との使用に適合させることができる。細胞増殖アッセイ、細胞死アッセイ、アポトーシスアッセイ、タンパク質発現アッセイ、遺伝子発現アッセイ、酵素的アッセイ、シグナリングアッセイ(キナーゼ活性アッセイ、Ca2+シグナリングアッセイおよびGPCRシグナリングアッセイなど)、ミトコンドリア活性を評価するアッセイ、細胞外マトリックス分解アッセイを含むが、これらに限定されないアッセイを、本明細書において記載される方法において使用することができる。細胞の単層との使用のために開発されたアッセイ(特に細胞による薬剤またはアッセイ試薬の取り込みに依存するもの)は、薬剤およびアッセイ試薬が生体人工組織内の細胞によって取り込まれることを可能にするためにより長いインキュベーション時間を必要とするだろう。アッセイ試薬濃度の調整も必要とされる。
【0015】
最終的に、アッセイによって産生されたインディケーターのレベルが検出される。産生されたインディケーターのレベルは、アッセイのアウトプットまたはアッセイの実行からもたらされたシグナルを表す。レベルは、産生されたインディケーターの量またはインディケーターそれ自体の変化(例えば発光スペクトルの変化、または細胞による標識されたインディケーターの取り込み)に関連しうる。インディケーターのレベルは、薬剤に対する生体人工組織の応答を表す。インディケーターのレベルの検出は、選択されたインディケーターおよびアッセイに依存して、顕微鏡、光学プレートリーダーもしくは蛍光プレートリーダーまたはシンチレーターを利用することができる。顕微鏡によって検出されたシグナルの感度はプレートリーダーよりも高い。顕微鏡は光学シグナルを非常に効率的に収集するために細胞層上に集束する(検出体積は集束した小さいものである)。プレートリーダーは、光線によって照射された大量の分子を検出するために拡散した(非集束)光学ビーム(例えば非集束レーザー)を使用する。従来の細胞培養システムにおいて、プレートリーダーは、単一の細胞層からの光学シグナルを測定する。しかしながら、操作された組織中の細胞は少なくとも5〜10層を形成し、したがってプレートリーダーは一度に非常に多数の細胞を測定することができ、少なくとも5〜10倍増幅された光学シグナルがプレートリーダーによって検出される。図4を参照。プレートリーダーは個別の細胞上に集束させることを必要としないので、プレートリーダーはシグナルを非常に迅速に読み取ることができ、したがってプレートリーダーの使用はハイスループット適用に適切である。さらに、顕微鏡によって取り込まれたイメージのアッセイはプレートリーダーを使用して取り込まれたものよりも時間がかかる。
【0016】
細胞生理の測定のための従来の細胞ベースのアッセイは多くの場合イメージアッセイを使用する。イメージは一般的には自動化顕微鏡によって捕捉され、イメージアッセイソフトウェアによってアッセイされる。処理および処理の効果を測定するアッセイを、数百の細胞からデーターを集めることによって評価しなければならない。単一の細胞から得られたデーターの統計的分散は大きすぎるので、任意の処理の平均効果を予測することができない。統計的に有意なデーターを得るために、最低で数百の細胞からのデーターを収集しなければならない。
【0017】
プレートリーダーは同じ情報(例えばCa濃度)を得るために使用することができるが、シグナルは自動化顕微鏡によって得られたシグナルよりもずっと弱い。この問題に対する1つの解決策は、プレートリーダーによって測定される細胞数を増加させることである。細胞は操作された3次元組織中で多層を形成し、したがってプレートリーダーは同じ面積でより多くの細胞を測定することができる。
【0018】
プレートリーダーは生細胞の動力学的特性のアッセイのための顕微鏡より優れている。本明細書において開示されるような組織構築物を使用して、シグナルが改善され測定の統計的有意性が高くなることから、細胞ベースの高含有解析に多くの小規模アッセイを適用することが可能になる。現在、一般的には顕微鏡は感度の増加のために使用されるが、本明細書において記載される方法は、プレートリーダーを細胞ベースの高含有解析のために使用することを可能にする。
【0019】
スキャフォールド20を表示し、フレーム22(例えば三角形フレーム)を適切に含む、図1aおよび1bについてここで言及する。再構成組織26はスキャフォールド20上に形成される。この図示された実施形態において、ウェル42は、底部に向かってわずかにテーパーがかかる96ウェルプレート40のウェルである。スキャフォールド20は、各々のウェル42の底部の上方に(適切には約1mm)確実に位置決めされる。細胞および記載されるような適切な細胞培養培地を含有する未重合コラーゲン溶液をウェルの中へ注ぎ、ウェルの底部の上方3mmのレベルまで充填する(図1a)。96ウェルプレート40は5%CO237℃でインキュベーションすることができる。インキュベーションの間に、細胞は生体人工組織26へと自己集合し、その結果として液体を絞り出すことによってコラーゲンマトリックスを圧縮し、約10倍まで全体積を減少させる。スキャフォールド20なしでは、再構成組織または生体人工組織は組織培養培地中で小さな球体浮遊物へと収縮する。
【0020】
スキャフォールド20は、金属または非金属またはプラスチックなどの任意の非多孔性生体適合性材料で適切に作製される。実施例において、スキャフォールドはステンレス鋼で作製されていた。当業者は、スキャフォールドを産生するためにガラス、ポリプロピレンまたはポリスチレンを含むが、これらに限定されない他の材料も適切に使用できることを認識する。
【0021】
フレーム22は、ウェル42の底部43の上方に適切に支持される。フレーム22は、テーパーがかかったウェルを持つ組織培養プレート40の使用によってウェルの側面で支持されうる。あるいは、フレーム22は、ウェルの側面に添付された作りつけのスキャフォールドを持つかまたはフレーム22が留まる棚を有するウェルを持つ特にデザインされたプレート40を使用することによって、ウェル42の底部の上方に支持することができる。別の代替の実施形態において、スキャフォールド20は、ウェルの底部の上方にフレームを支持するためにフレーム22に添付された少なくとも1つの脚24を含むことができる。フレームを支持するのに必要とされる脚24の数はフレームの形状上に依存して様々である。図1bは、4本の脚を持つスキャフォールド20を図示するが、スキャフォールドは図2中に図示されるように少ないまたは多い脚を持つようにデザインすることができる。脚24はフレームから下に突き出してウェル42の底部に接触することによってフレーム22を支持するために使用することができるか、または脚24はフレーム22から上に突き出してウェル42の上部45へのスキャフォールドの固着によってスキャフォールド20のフレームを支持することができる。例えば、脚24は、スキャフォールド20がウェルの上部からぶら下がることを可能にする小さなホック構造を端部に有することができる(図2(b))。スキャフォールド20のフレーム22はウェル42の底部の上方に適切に支持されるが、培地中に組織を浸すことができる限り正確な距離は重大ではない。適切にはフレーム22はウェルの底部の少なくとも約0.25mm上方にあり、より適切にはフレームはウェルの底部の少なくとも約0.5または1.0mm上方にある。
【0022】
スキャフォールド20は幅広いアレイ形状をとることができる。コラーゲン含有マトリックスは、図2中に図示されるように円形または矩形などの異なるスキャフォールド形状を使用して、異なる形状へと圧縮することができる。他のスキャフォールド形状(図1bおよび図2において示されるものなど)は、異なる幅および形状を持つ組織ストリップを産生した。円形、矩形、三角形、五角形、六角形、または他の高次多角形を含むが、これらに限定されない任意の形状のスキャフォールド20を使用することができる。スキャフォールドは1つ以上の部材からも形成することができる。例えば、スキャフォールド22は、それらを接続する1つまたは複数の垂直の部材ありでまたはなしで離れた間隔で配置された2つの並列部材から形成することができる(図1bおよび図2)。
【0023】
本発明の実施形態に従って、細胞は、スキャフォールド(すなわち支持体、例えばワイヤーフレーム)の形状へ順応した組織モデルを形成するように自己集合する。形成において、組織は、スキャフォールドの部材に重層し、部材と間の空間に広がる。例えば、三角形スキャフォールド上で、細胞は3つの縁部の中で膜状の広がりを形成する(図1a中で示される)。実施例におけるスキャフォールドは約1mmの断面直径を有する部材で作製されるが、スキャフォールドはより小さな断面直径またはより大きな断面直径を適切に有することができる。適切には、スキャフォールドは、約100μm乃至約2mmの間の断面直径を持つ1つまたは複数の部材から構成される。スキャフォールドは、一般的には組織が部材に重層して、組織が部材の周囲に形成されることを可能にする円筒状部材または管状部材からなる。スキャフォールドを含む部材は、力が加えられるときに組織の裂けを最小限にするために適切にはいくぶん丸くされる。例えば、力が加えられたときに組織が破れないよう縁部が丸くされるならば、矩形断面を持つ部材を利用することができる。部材は、非多孔性材料で適切には作製されており、約2mm未満、適切には約1mmの断面直径を有する。
【0024】
生体人工組織は、スキャフォールドを含む部材との間で、またはスキャフォールドを含む部材にわたって水平方向の断面空間に広がる膜構造を形成する。生体人工組織が広がる水平断面空間は適切には10μmよりも大きいが、ウェル42が許容する程度に大きくなりえ、組織は適切には約100μm乃至約5mmの間、より適切には1mm乃至4mmの間の空間に広がる。図3中に図示される典型的な生体人工組織は約4×4×0.8 mmであり、8mm×8mmの正方形チャンバー中に形成される(チャンバーの形状はサンプルの目視のために修飾した。組織はホルムアルデヒド(10%)で固定し、はっきり目視できるようにオレンジ色素で染色した)。
【0025】
図3は、スキャフォールド20を含むプロトタイプのマルチウェルプレート40を図示する。図示された実施形態において、テーブルトップCNCミル(シェーライン・プロダクツ社(Sherline Products Inc.)、ビスタ、カリフォルニア)を使用して、ポリカーボネート棒(25×60×10mm)から、8ウェルプレートを機械加工した。8×8mmの8つの正方形ウェル42は、フレーム22(直径1mm)を構成する2本のステンレス鋼棒を含有していた。2本の棒が4mm離れるように、ステンレス鋼棒の中心をウェルの底部の2mm上方およびウェルの側面から2mmに置いた。顕微鏡によるイメージングを促進するために、顕微鏡カバーグラス(ナンバー1厚、フィッシャーブランド(Fisherbrand))を使用し、シリコングルー(ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)、ミッドランド、ミシガン)を使用して各々のウェルの底部をシールした。
【0026】
ハイスループットシステムにおける使用の容易性のために、スキャフォールド20は、マルチウェルプレートフォーマットを使用して、図2C中で図示されるような、2、4、8、12または96のスキャフォールドを含むが、これらに限定されないコネクター28によってグループでともに連結することができる。スキャフォールド20をグループでともに連結することによって、スキャフォールドは、マルチウェルプレート40中で容易に位置決めすることができる。コネクター28は、容易に分離できるように、例えば迅速な牽引動作が連結を破壊するように作製することができ、使用者は使用するスキャフォールドの数のカスタマイズが可能である。本明細書において記載されるスキャフォールドおよび生体人工組織システムは、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、192ウェルまたは384ウェルのプレートを含むが、これらに限定されない任意のマルチウェルプレートにおいても当業者による使用のために取り入れることができる。
【0027】
以下の実施例中で理解されるように、多孔性支持材料、またはマジックテープ(Velcro fastener)などの他の留め具は、使用されるワイヤーフレームの非多孔性ステンレス鋼表面への組織接着を促進するためにさえも必要とされない。コラーゲンは膜または組織ストリップの外側部でより高い程度まで圧縮され、組織が留め具の必要なしにスキャフォールド上に浮かすことを可能にした。したがって、膜のこの外側部は細胞によって生み出された応力に耐えることができ、生体人工組織がワイヤーフレームから裂けることを防止する。
【0028】
図4中で説明されるように、本発明のいくつかの実施形態に従う生体人工組織は、現行の細胞単層の細胞ベースのアッセイよりもインビボの設定により類似した3次元組織を提供する。細胞数の増加は、特異的試験アッセイについてシグナルアウトプットの増加をもたらす。本発明は、したがって、すべての様式の細胞ベースのアッセイがハイスループットシステムにおいてうまく行える機構を提供する。さらに、他の3次元組織とは異なり、本明細書の組織は光学測定を妨害するメッシュまたはフレーム上で増殖しない。代わりに、組織はフレームに広がり、光学測定が可能である。
【0029】
本発明のシステムは、検査のために必要とされる組織の小さなサイズのために、少量の試薬を使用するだけでなく、アッセイ手順の全体にわたって一定温度および滅菌済み条件の維持を含む組織培養条件が維持された組織の解析も可能にする。例えば、生体人工組織の汚染を避けるために、アッセイは層流フード中で行なうことができる。さらに、組織内の細胞は、数時間、数日または数週間もの過程にわたって、生体人工組織の同じセットでアッセイを数回繰り返すことができるように安定である。
【0030】
マルチウェルプレート40は、生体人工組織の保持のためのスキャフォールド20を含む特別にデザインされたプレートでありえるか、または適切にはスキャフォールドを加えることができる一般的には市販で入手可能な組織培養マルチウェルプレートでありえる。1枚のプレートあたりウェルの数は変動してもよい。典型的には2乃至1000のウェルを持つプレートは使用され、適切には50乃至500のウェルを持つプレートが使用される。
【0031】
生体人工組織の形成に使用される細胞は、筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞および心臓細胞を含みうるが、これらに限定されない。生体人工組織は、細胞およびコラーゲンまたは細胞および細胞外マトリックスを含むことができる。生体人工組織の形成中に有用なコラーゲンは、タイプI〜XIIIのすべてを含むコラーゲンクラス1〜4およびその組み合わせを含む。ヒドロゲルまたはマトリゲル(登録商標)などの様々なタイプの細胞外マトリックスも生体人工組織の形成において使用することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態に従う再構成組織モデル中の細胞は、天然の組織および器官の条件に類似する環境中にある。したがって、この方法を使用するアッセイの結果は、動物モデルを使用して得られるものに類似した結果をもたらす。動物試験のうちのいくつかは本発明に従う組織モデルを使用して置換できることが意図される。例えば、皮膚上で作用する薬剤のいくつかの試験は人工的生組織を使用して行なうことができる。
【実施例】
【0033】
(方法)
直径1mmのステンレス鋼ワイヤーで作製した三角形フレームを、再構成組織が形成されるスキャフォールドとして用いた。ウェルは底部に向かってわずかにテーパーがかかり、フレームは、ウェルの底部の1mm上方に確実に位置決めされる(図1a)。細胞および適切な細胞培養培地を含有する未重合コラーゲン溶液をウェルの中へ注ぎ、底部の上方に3mmのレベルまでウェルを充填した(図1bおよび3)。図3中の8ウェルプレートを5%CO2で37℃でインキュベーションした。インキュベーションの間に、細胞は多孔性コラーゲンマトリックスから液体を絞り出すことによってコラーゲンマトリックスを圧縮した。ワイヤーフレームなしでは、再構成組織は組織培養培地中で小さな球体浮遊物へと収縮した。異なる形状のワイヤーフレームの利用によって、コラーゲンマトリックスはフレームの形状に対応する形状へと圧縮されることが見出された。例示的に、図1a中で示されるように、三角形のワイヤーフレームは3つの縁部の中で膜状の広がりを生じた。他のワイヤーフレーム形状(図1b中で示されるものなどの)は、異なる幅を持つ組織ストリップを生じた。マジックテープなどの多孔性支持材料は、ワイヤーの非多孔性ステンレス鋼表面への組織接着を促進するためにさえも必要とされなかった。コラーゲンは膜またはストリップの外側部でより高い程度まで圧縮された。したがって、膜のこの外側部は細胞によって生み出された応力に耐えることができ、膜がワイヤーフレームから裂けることを防止した。
【0034】
(細胞培養およびHTC形成)
ラット胎仔線維芽細胞(REF−52)は、10%ウシ胎仔血清(FBS、S11050、アトランタ・バイオロジカルズ(Atlanta Biologicals)社、ローレンスヴィル、ジョージア)を追加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、MT10013CM、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)社、ピッツバーグ、ペンシルバニア)中で培養された。細胞は2乃至3日ごとに継代培養した。ヒドロゲル組織構築物(HTC)を製作するために、REF−52細胞(継代40乃至70の間)は、10乃至15分間0.05%トリプシン(MT−25−025−CI、フィッシャー・サイエンティフィック社)で処理することによって培養プレートから解離した。次いで細胞を1000gで10分間遠心分離した。トリプシン溶液をデカントし、細胞沈殿を10%FBS含有DMEM培地中で再懸濁した。1mlあたり8×105細胞の最終濃度を達成するように、この細胞懸濁液をHTC組織溶液中で希釈した。HTC組織溶液は、10%FBS含有DMEM、0.02N酢酸中の1mg/mlの1型コラーゲン(354249、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)社、サンホセ、カリフォルニア)、コラーゲン中の酸を中和するのに十分な水酸化ナトリウム、ならびにコラーゲンおよびNaOHの体積を補うのに十分な5×DMEMからなっていた。早期コラーゲン重合を防止するために、HTC組織溶液はカスタムメイド組織モールドの中に分配するまで冷凍した(図3)。モールドは各々、2本の作りつけの水平方向の支持棒を持つ8個の分離したHTC形成ウェルを含有する。300マイクロリットルのHTC組織溶液をこれらのモールド中の各々のウェルの中へ小分けし、次いで37℃および5%CO2で30分間インキュベーションした。インキュベーション期間後に、350mlの10%FBS含有DMEM培地を各々のウェルに加え、モールドをさらに48時間インキュベーションした。この時、溶液が収縮してウェル中の支持棒に広がるHTCを形成する。
【0035】
(HTC力測定)
パルペーター(商標)(米国特許第7,449,306号中に記載され、その全体は参照することにより本明細書に組み入れられる)を、HTCの収縮性を定量するために使用した。モールドを、パルペーター(商標)(各々のウェルの中へプローブを自動的に挿入し、個々のHTCを引き伸ばす)のステージ上に配置した。プローブは、力変換器(引き伸ばしに応答してHTCで誘導された抵抗力を測定し、記録のためにコンピューターへ値をエクスポートする)に接続された。カスタムマトラボ(Matlab)アルゴリズムを使用して力データーを処理およびアッセイし、HTC中の活性細胞力を表す数値パラメータを報せる。HTC収縮力の安定した測定を得るために、実際の力測定の前の3回の引き伸ばしによるHTCのプレコンディショニングが必要であった。後続する力測定が前の引き伸ばしの30分以内であったならば、プレコンディショニングは必要ではなかった。処理後24時間のHTCは、力測定の前に常にプレコンディショニングした。
【0036】
HTCのTMRE標識およびMTTアッセイ
テトラメチルローダミンのエチルエステル(TMRE、T−669、インビトロゲン(Invitrogen)社、カールズバッド、カリフォルニア)を使用してHTCのミトコンドリア電位を定量した。HTCを30分間100nMのTMRE中でインキュベーションし、次いで60分間フェノールレッド不含10%FBS含有DMEM中でインキュベーションした。TMRE蛍光読み取りに対する妨害を防止するために、フェノールレッド不含培地を使用した。標識後に、HTCを3回の引き伸ばしによりプレコンディショニングし、次いでバックグラウンド力を測定した。次いでHTCのTMREシグナルをシナジーHTプレートリーダー(バイオテック・インストルメンツ(Biotek Instruments)社、ウィヌースキー、バーモント)で読み取った。カスタムメイドの取付板を使用してプレートリーダーのプレート保持ラック上に組織のモールドの位置決めをする。蛍光シグナルは、543/590の励起/放射フィルターセットおよび50のゲイン設定を使用して底部から読み取った。薬物処理後に所定時間点で各々の力を測定し、続いてTMRE蛍光強度も読み取った。
【0037】
3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムを使用してHTC中の細胞生存率を定量した。薬物暴露後の所定時間で、0.5mg/mlを達成するように各々のウェルにMTTを加えた。MTTを2時間ウェル中に放置し、次いで除去した。次いで細胞中で形成されるフォルマザン色素を、500μlの0.1N塩酸含有イソプロパノール(S77795、フィッシャー・サイエンティフィック社)中で懸濁した。次いで、200マイクロリットルのフォルマザン溶液を96ウェルプレートのウェルの中に入れ、シナジーHTプレートリーダーで読み取る。570nmおよび650nmの吸光度を記録し、差(A570−A650)をフォルマザンの吸光強度として使用した。
【0038】
(HTC薬物処理)
すべて化学物質は、特に断りのない限り、シグマ(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)社、セント・ルイス、ミズーリ)からのものである。サイトカラシンD(CD、C8273)およびロテノン(ROT、R8875)、2,4−ジニトロフェノール(DNP、D198501)およびRhoキナーゼ阻害剤1(RKI1、555550、カルビオケム(Calbiochem)社、ギブスタウン、ニュージャージー)は、保存のためにジメチルスルホキシド(DMSO、D4540)中で懸濁した。1mMのCD、ROTおよびRKI1のストック溶液を、フェノールレッド、FBS、グルコースまたはピルベートなしの(−F/P/G)DMEM中で100μM、10μMおよび1μMへ連続的に希釈した。DNPはDMSO中で1Mに希釈し、次いで−F/G/PのDMEM中で100mM、10mMおよび1mMに希釈した。HTCプレコンディショニングおよびバックグラウンド力(すなわち薬物処理前)測定に続いて、50μlの適切な薬物希釈物を各々のウェルに加えて所望の処理濃度を達成する。50マイクロリットルの−F/G/PのDMEMを対照ウェルに加えた。薬物添加に際して、ウェル中の培地を4回のピペッティングによって混合した。
【0039】
REF−52細胞の処理および固定
REF−52細胞を10%FBS培地(2ml)中で35mm培養用ディッシュ(50,000細胞)でプレーティングした。細胞を一晩インキュベーションし、次いで化合物により処理する。濃縮液のCD、RKI1、DNPおよびROTを−F/G/P培地中で溶解し、次いで細胞の各々のプレートの中に10×で希釈する(2mlの培地あたり220μl)。固定の24時間前に、細胞を薬物と共にインキュベーションした。固定するために、処理した細胞を2mlのリン酸緩衝食塩水(PBS、D5652)で1回すすぎ、次いで1mlの4%パラホルムアルデヒド(シグマ)溶液(PBS中)中で30分間インキュベーションした。固定した細胞を2回すすぎ、次いで2mlのPBS中で保存した。
【0040】
REF−52の標識およびイメージング
固定したREF−52細胞を、1mlの0.1%トリトン(BP151、フィッシャー・サイエンティフィック社)溶液(PBS中)中で15分間インキュベーションすることによって透過性にした。透過性にした細胞は、1mlのTBSTバッファーで2回すすぎ、次いで1mlのTBST中の5%ヤギ血清で1時間ブロックした。次いで1ミリリットルの2%ヤギ血清含有TBST中で1:200に希釈したアレクサ568コンジュゲートファロイジン(A12380、インビトロゲン社)を、細胞に加えた。この染色溶液は400nMのDAPI(D9564)も含有した。細胞を30分間染色し、次いでTBSTで2回すすいだ。標識した細胞を、ベクタシールド(Vectashield)(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)社、バーリンゲーム、カリフォルニア)によりマウントし、カバースライドで覆い、次いでマニキュア液で密封した。次いでプレートをライカSP5共焦点顕微鏡(ライカ・マイクロシステムス(Leica Microsystems)社、バノックバーン、イリノイ)の上で裏返しにし、63倍水浸対物レンズでイメージングした。アレクサ568は543のレーザー線を使用して励起し、DAPIはマイタイ(MaiTai)多光子レーザーを使用して励起した。
【0041】
統計的解析
スチューデントのt検定を使用して対照HTCに対するCD処理したHTCの蛍光シグナルの減少を検定する(図1h)。Z因子を使用してパルペーター(図1fおよび1g)、TMRE(図2aおよび2b)およびMTT(図3a)のアッセイのシグナル対ノイズ比を評価した。MTTアッセイにおいて、10%DMSOを陽性対照として使用した。
【0042】
結果
化合物スクリーニングについて細胞力学を測定するために、我々は、小型化されたヒドロゲル組織構築物(HTC)を製作する技術、および組織の力学的特性を定量するハイスループットスクリーニングシステム(パルペーター(商標))(図5a、5b、5c)を開発した。3次元HTCはより自然な微小環境を提供し、細胞はよりインビボの形態および生理を模倣することができる。さらに、自己支持型HTCは細胞力学の測定のための力プローブを使用して引き伸ばすことができる(図6d)。このシステムを使用すると、HTCの力学的特性は、細胞標識、高度な顕微鏡検査、またはイメージアッセイなしに、定量的に測定することができる(図6e)。
【0043】
この研究において、周知の標的および生物学的効果を持つ4つの異なるクラスの化合物をHTCに加え、HTC力学に対するそれらの用量依存的効果を決定した。rhoキナーゼ阻害剤(RKI)(H−1152)およびサイトカラシンD(CD)(アクチン重合を妨害する)によりHTCを3時間および24時間処理すると、用量依存的に組織力が減少した。(両方のEC50は〜0.1μM、図5f、3時間)。ジニトロフェノール(DNP)(ミトコンドリア膜電位(MMP)の脱共役剤)も組織力を減少させたが、H−1152またはCDよりも〜10,000倍高い濃度であった。ロテノン(ROT)(哺乳類細胞に対する周知の毒性効果を持つ広く使用される殺虫剤)も組織力を減少させた。水性培地中で低可溶性(〜100μM)であるために、ROT濃度をさらに増加させることができなかった。一般的には、すべての化合物の24時間のインキュベーションは、力減少に対する効果を促進した(図5g)。特に、DNPのEC50は、追加の〜20時間のインキュベーションによって1.3mMから20μMまで低下した。しかしながら、最高濃度のDNP、CDおよびH−1152は24時間で組織力をさらに減少させず、これらの用量が3時間で最大効果を達成したことを示唆する。これらの結果は、各々の化合物が組織力を減少させることに効果的であることを実証する。
【0044】
組織力は、細胞骨格(特にアクチンおよびミオシン)の全体性を介して維持される。化合物により処理されたHTC中のF(線維状)−アクチンの量を定量化するために、HTCをアレクサ546コンジュゲートファロイジンにより染色した。アレクサファロイジンの強度をプレートリーダーによって測定したところ、CD(2μM)により処理したHTC中のF−アクチン含有量は有意に減少した(図5h)。これは、組織力のCD仲介性減少がインタクトなF−アクチンの損失のためであるという我々の以前の報告に一致している。しかしながら、H1152およびDNPによる力減少はF−アクチンの損失に関連しなかった。これらのHTC中のアレクサファロイジン標識は対照と同等だった。F−アクチンはROT処理によっても減少したが、この結果は不十分な統計的有意性のために決定的でなかった。2μMのCDにより処理したファロイジン染色細胞の顕微鏡アッセイから、早ければ3時間でF−アクチンが広範囲に破壊されていることが示された(図5j)。24時間までに、あまり伸展していない(図5o)二核の(図5t)細胞内に、短いF−アクチンは再分布した。
【0045】
RKI、DNPおよびROTはF−アクチン形態にめざましく影響しなかった(図5k−m)。RKI処理細胞は、膜ラッフリングの限定および細胞の中央領域のファロイジン染色の減少を示した(図5c)。DNP(図5q)およびROT(図5r)により24時間処理した細胞の密集度は、対照(図5n)の密集度より少なかった。ROT処理細胞における顕著な核断片化は、アポトーシスの誘導を示した(図5w)。これらのイメージにおけるこれらの形態変化は手動で見分けることができるが、自動化定量HTP解析は高度な解析アルゴリズムを必要とする。
【0046】
化合物が組織力を減少させる原因となる機構をさらに同定するために、ミトコンドリア電位の変化を生物学的色素テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)を使用して定量した。TMREは陽イオン性であり、MMPの関数としてミトコンドリア中に蓄積する。DNP処理した96ウェルプレート中の単層およびHTCの最初の研究から、TMRE標識のDNP仲介性減少はプレートリーダー上の単層において検出可能でない(図6a)が、HTCにおいて容易に定量化可能である(図6b)ことが示された。共焦点顕微鏡を使用するTMRE蓄積に対するDNPの効果のより詳しい研究から、単層およびHTCの両方においてシグナル検出が改善された(図6c、d)。しかしながら、HTC実験は、DNPによる用量依存的MMP減少の検出において細胞単層実験よりも優れた感度を示した。シグナル検出の優れた感度、データーの改善されたシグナル対ノイズ比、およびHTP適用に対するプレートリーダースキャニングの適合性を考慮して、化合物のMMPに対する効果の研究のためにHTCを使用した。
【0047】
3時間のDNP処理により、MMPは脱共役され、EC50は〜340μMでTMREシグナルを用量依存的に減少させた(図6e)。追加の21時間のインキュベーションは、わずかにDNPの効果を促進し、EC50を〜95μMまでさらに減少させた(図6f)。24時間の処理によるTMREのEC50のこの3.6倍の減少は、組織力に対するDNPの効果のEC50の65倍の減少よりも有意に少なかった(図5f、g)。この差は、DNPの迅速なMMP脱共役により細胞収縮活性の段階的な減少がもたらされることを示唆する。アクチン重合およびミオシン依存的細胞収縮はATPを必要とするので、MMPの迅速な損失はミトコンドリアにおけるATP産生を減少させ、したがって細胞収縮性を減少させることが予想される。組織力のこの時間遅延の減少は、細胞内ATP蓄えの存在および/またはATP産生のための解糖をアップレギュレートする細胞の能力を示す。解糖を介するATP産生のアップレギュレーションは腫瘍細胞およびいくつかの細胞株で報告されている。CD、RKIおよびROTの処理によりミトコンドリア膜電位は減少したが、それらがMMPを減少させた程度は10〜20%に限定された(図6e、f)。
【0048】
最終的に化合物の細胞生存率に対する効果を測定するために、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を使用するアッセイを行なった。細胞において、黄色のMTTはコハク酸デヒドロゲナーゼによって紫色のフォルマザンに変換され、この変化を500〜600nmの間の光線吸光度によって定量することができ、プレートリーダーを使用して定量的に記録した。MTTアッセイによって検出されるように、3時間の処理は生存率の有意な損失をもたらさなかった(結果は示さない)。24時間のCDおよびROTの処理により、HTCの生存率は用量依存的減少を示した(図7a)。0.2μMおよび2μMのCD処理によりMTTシグナルは40%減少した。CD毒性の観察されたレベルは、ヒト類表皮細胞株において5〜30μMと報告されているLD50に類似していた。より高いROT濃度(10μM)がMTTシグナルを40%減少させるために必要であった(図7a)。ROT毒性のこのレベルは、HepG2細胞において今までに報告された25%毒性よりもわずかに高い。24時間のRKIおよびDNPの処理はMTTシグナルに影響しなかった。
【0049】
HTC力測定、TMRE定量化およびMMTアッセイは同じHTCサンプルで行なわれた。統合されたスクリーニングワークフロー(図7b)の図解は、HTCを使用する高含量の生理的情報の獲得の効率を示す。結果を、化合物の生理的影響力を表わす表現型プロフィールのパネルとして要約した(図7c〜f)。DNP、CDおよびRKIのすべては、HTC力の減少に非常に効果的であった。しかしながら、DNPはミトコンドリア電位の大規模な脱共役効果を示すが(図7c)、CDは高毒性である(図7d)。一方ROTは、HTC力、ミトコンドリア電位および生存率に対して穏やかな負の影響を有していた(図7f)。RKIは、限定的なミトコンドリア毒性および生存率毒性を持ち、0.1μMの力減少のEC50を持つ最も優れた候補化合物であると同定された。RKIが組織硬度を効果的に減少させることができる心臓保護性非毒性化合物であることが周知であるので、この結果は驚くべきことではない。さらに、RKI薬物(ファスジル)は、アテローム性動脈硬化症および高コレステロール血症についての第II相臨床研究を最近完了した。
【0050】
要約すると、本発明者は、組織収縮力を減少させることができ、さらにミトコンドリア機能および細胞生存率に対して最小効果を有する化合物についてスクリーニングするために、どのようにHTCを使用することができるか実証した。このHTCベースのスクリーニングシステムにより、2次元培養と比較してより自然な微小環境(すなわち、3次元マトリックス構造中に包埋された)内で細胞生理学を研究し、力学的力を定量することができる。
【0051】
さらに、HTC中の細胞のコンパクトで多層の配列は、検出限界および蛍光アッセイのシグナル対ノイズ比を大幅に増加させた。0.44乃至0.85にわたるZ因子であり、アッセイが高精度およびロバスト性があるので、既存のHTPスクリーニングワークフローへとHTCを組み入れことが促進されるだろう。
【0052】
要約すると、本発明者は、細胞ベースのアッセイを行なうために3次元組織モデルを利用するハイスループットシステムを提供する。前述の説明は本発明の原理の例証に過ぎないと見なされる。さらに、当業者であれば多数の修正および変形形態を容易に考えつくことができるので、本発明は、図示され記載された厳密な構成および方法に限定されるものではなく、したがって、すべての修正および均等物は本発明の範囲以内にあると考えられる。
【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤に対する組織の応答を検出する方法であって、
(a)生体人工組織は細胞および細胞外マトリックスを含み、生体人工組織は組織接着を促進する留め具なしのスキャフォールド支持体上に形成され、スキャフォールド支持体はウェルの底部の上方に位置決めされて、薬剤と生体人工組織を接触させる段階と、
(b)生体人工組織を使用してアッセイを行ない、アッセイでインディケーターを産生する段階と、
(c)薬剤に対する生体人工組織の応答を表す、ウェル中のインディケーターのレベルを検出する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記細胞が、筋細胞、非筋細胞、内皮細胞および心臓細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウェルがマルチウェルプレート内に位置決めされる、請求項1または2のいずれか一項に方法。
【請求項4】
前記マルチウェルプレートが2乃至10,000のウェルを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スキャフォールド支持体がワイヤーフレームである、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ワイヤーがステンレス鋼ワイヤーである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が疾患に関与することが既知である細胞を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記インディケーターが、発色測定用インディケーターまたは蛍光測定用インディケーターである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記インディケーターのレベルが顕微鏡を使用して検出される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記インディケーターが放射性標識である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記インディケーターのレベルがシンチレーターを使用して検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インディケーターのレベルがマルチウェルプレートリーダーを使用して検出される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アッセイが、細胞増殖アッセイ、細胞死アッセイ、アポトーシスアッセイ、タンパク質発現アッセイ、遺伝子発現アッセイ、酵素的アッセイおよび細胞シグナリングアッセイからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が候補医薬品である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法がハイスループットスクリーニング方法である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図7−1】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図5−1】
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【公表番号】特表2011−524167(P2011−524167A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512695(P2011−512695)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046431
【国際公開番号】WO2009/149363
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510321893)メディカル カレッジ オブ ウィスコンシン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】