説明

ハイダイナミックレンジカメラシステム

【課題】ハイコントラストシーンを撮像レンズの絞りで露光制御する撮像部A4と、さらにリレーレンズ光学系の絞りで露光制御する撮像部B11の映像信号を合成しハイライト部を適正再現するハイダイナミックレンジカメラシステムを提供する。
【解決手段】被写体を撮像する絞り機構を備えた撮像レンズと、撮像された光束を2系統に分光する分光光学系と、分光された1つの光路の結像位置に配設された撮像部A4とカメラ回路A5と、前記分光光学系によって分光された他の光路の結像位置に結像された光学像を第1リレーレンズで再撮像し第2リレーレンズで再結像する絞り機構を備えたリレーレンズ光学系と、前記再結像された結像位置に配設された撮像部B11とカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力する信号処理回路とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の撮像デバイスを使用したビデオカメラに係わり、よりダイナミックレンジの広い画像出力を得るハイダイナミックレンジカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像デバイスを使用した最近のビデオカメラでは、固体撮像デバイスで光電変換した信号をデジタル信号に変換して処理する方式が殆どである。その際、光電変換されたアナログ信号をA/D変換器でデジタル化するが、光量に対してリニアな特性を持つ光電変換した信号をA/D変換器に入力しただけでは、A/D変換器のダイナミックレンジを有効に使えない。そこで、モニタ上でハイダイナミックレンジの被写体画像を再現するために、人間の目の解像度は暗い方に対しては高く、明るい方に対しては低いという特性があることを利用し、光電変換されたアナログ信号に対し非線形的な伝達特性を形成する回路(一般的には、ガンマ回路、ニー回路など)をA/D変換器の前に配設するか、又は高性能化したデジタル技術で非線形化して規定された信号レベルの下である程度ハイダイナミックレンジ化された信号を得ている。
【0003】
また、固体撮像デバイスそのものの特性を技術的に向上させダイナミックレンジを広げてきているが、固体撮像デバイスの高密度化のため画素数の増加により個々の画素面積がさらに小さくなり、ダイナミックレンジがさらに狭くなる傾向にある。そのため、例えば、室内の暗い情景と窓を通して非常に明るい屋外を撮像した場合に、屋外の一定輝度以上の部分が全て白くなり情景の明暗の階調が失われた、いわゆる「白とび」や、室内の一定輝度以下の部分が黒くなり、やはり情景の明暗の階調が失われた、いわゆる「黒つぶれ」が発生しやすくなる。
【0004】
そこで、撮像レンズによる結像光を、プリズム等の分光手段を用いて複数(例えば2つ)の固体撮像デバイスに分光し光電変換して得られた信号を合成してダイナミックレンジを改善する技術が開示されている。
【0005】
その手法の一つとして、特許第3546853号において、被写体の輝度分布を高輝度領域と低輝度領域の2つの部分に分割し、高輝度領域のほぼ中間の部分が適正となるように第1撮像素子の露光制御を行い、低輝度領域のほぼ中間の部分が適正となるように第2撮像素子の露光制御を行い、高輝度領域の輝度信号が適正範囲に属する画素については第1撮像素子により得られた画像データを適用し、低輝度領域の輝度信号が適正範囲に属する画素(重複部分を除く)については第2撮像素子により得られた画像データを適用して画像データを合成することにより、被写体の輝度分布の全域に対して白とびや黒つぶれのない適正な画像を得ている。
【0006】
前記第1撮像素子と第2撮像素子の露光条件を変える方法として、様々な方法が考案され、第1の方法として、第1撮像素子と第2撮像素子の露光時間(電荷蓄積時間)及びプリズムの反射率と透過率をほぼ同じにし、第1撮像素子と第2撮像素子として本質的に感度の異なるものを用いる(第1撮像素子の感度を低くする)。
【0007】
第2の方法として、第1画像データ及び第2画像データのゲイン設定を変える。
【0008】
第3の方法として、第1撮像素子と第2撮像素子の露光時間をほぼ同じにし、ビームスプリッタによる反射率と透過率の比を変える(透過率を高くする)。
【0009】
第4の方法として、第1撮像素子と第2撮像素子の露光時間及びビームスプリッタの反射率と透過率をほぼ同じにし、ビームスプリッタと第1撮像素子の間にNDフィルタやリレーレンズ等を配置し、第1撮像素子に入射する光量を実質的に少なくする。
【0010】
第5の方法として、第2撮像素子の露光時間を第1撮像素子の露光時間よりも長くする、などの発明が開示されている。
【特許文献1】特許第3546853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の技術において、第1撮像素子と第2撮像素子として本質的に感度の異なるものを用いることは固体撮像デバイスの選択範囲が制限され、特殊な固体撮像デバイスの使用を必要とする場合もあり、また、ビームスプリッタと第1撮像素子の間にNDフィルタやリレーレンズ等を配置し、第1撮像素子に入射する光量を実質的に少なくしたり、ビームスプリッタによる反射率と透過率の比を変えることは、第1撮像素子と第2撮像素子に入射する光量比が常に一定となり変化させることができないため、被写体の照明条件に最適な撮像状態を形成することができず、さらに、第2撮像素子の露光時間を第1撮像素子の露光時間よりも長くすることは、動画像の場合露光時間の長い第2撮像素子の画像データにボケを生ずるなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は、上記課題を下記の手段により解決した。
(1)被写体を撮像する絞り機構を備えた撮像レンズと、該撮像レンズで撮像された光束を少なくとも2系統に分光する分光光学系と、該分光光学系によって分光されたいずれか1つの光路の結像位置に配設された撮像部A4及び撮像部A4で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路A5と、前記分光光学系によって分光された他のいずれか1つの光路の結像位置に結像された光学像を第1リレーレンズで再撮像し第2リレーレンズで再結像する絞り機構を備えたリレーレンズ光学系と、該リレーレンズ光学系の再結像された結像位置に配設された撮像部B11及び撮像部B11で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力する信号処理回路とを備えて構成してなることを特徴とするハイダイナミックレンジカメラシステム。
【0013】
(2)被写体を撮像する絞り機構を備えた撮像レンズと、該撮像レンズで撮像された光学像を第1リレーレンズで再撮像し、同第1リレーレンズの出射光学像を2系統に分光する分光光学系を介して前記第1リレーレンズの出射光学像をそれぞれ再結像する2つの第2リレーレンズA9、B9を備えたリレーレンズ光学系と、前記分光光学系と第2リレーレンズA9、B9のいずれか一つとの間に配設された絞り機構と、前記分光光学系によって反射(又は透過)分光された光路の前記第2リレーレンズA9の結像位置に配設された撮像部A4及び撮像部A4で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路A5と、前記分光光学系によって透過(又は反射)分光された光路のもう一つの第2リレーレンズB9の結像位置に配設された撮像部B11及び撮像部B11で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力する信号処理回路とを備えて構成してなることを特徴とするハイダイナミックレンジカメラシステム。
【0014】
(3)前項(2)の前記第1リレーレンズの出射光学像を2系統に分光する分光光学系において、
前記2系統に分光する分光光学系によって90度の反射角で反射分光された光学像をさらに90度の反射角で全反射する反射鏡を備えたことを特徴とするハイダイナミックレンジカメラシステム。
【0015】
(4)前記信号処理回路が、カメラ回路A5から出力された映像信号の前記撮像レンズの絞り制御による露光過多等で画像の明暗の階調を失った画像領域と、前記リレーレンズ光学系の絞り機構で適正露光に制御された撮像部B11及びそのカメラ回路B12から出力された前記画像の明暗の階調を失った画像領域と同等の画像領域の映像信号とを合成し補正してなることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項にに記載のハイダイナミックレンジカメラシステム。
【0016】
(5)前記リレーレンズ光学系が、前記撮像レンズによって結像された光学像を再撮像する第1リレーレンズと、第1リレーレンズの射出光束を再結像する第2リレーレンズとで構成され、各リレーレンズの焦点距離値の組み合わせにより撮像部B11に結像する再結像倍率が設定されてなることを特徴とする前項(1)〜(4)のいずれか1項に記載のハイダイナミックレンジカメラシステム。
【0017】
(6)前記撮像部A4、B11が、該撮像部のそれぞれの固体撮像デバイスの露光時間を個々に制御する露光時間制御手段を備えてなることを特徴とする前項(1)〜(5)のいずれか1項に記載のハイダイナミックレンジカメラシステム。
【0018】
(7)前記撮像部A4、B11及びカメラ回路A5、B12が、それぞれ単板撮像方式の組み合わせ、又は単板撮像方式と2乃至4方向に分光できる分光プリズムを使用した多板撮像方式の組み合わせ、又はそれぞれ2乃至4方向に分光できる分光プリズムを使用した多板撮像方式の組み合わせで構成してなることを特徴とする前項(1)〜(6)のいずれか1項に記載のハイダイナミックレンジカメラシステム。
【発明の効果】
【0019】
本願発明により次のような効果が発揮される。
1.本願請求項1又は請求項4の発明によれば、
撮像レンズの絞り機構を制御して撮像された光学像が撮像部A4で光電変換され、その光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路A5と、撮像レンズの絞り機構を制御して撮像された光学像を、さらに第1リレーレンズで再撮像し第2リレーレンズで再結像するリレーレンズ光学系の絞り機構でさらに光量制御して撮像された光学像が撮像部B11で光電変換され、撮像部B11で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力する信号処理回路とを備え、
かつ、前記信号処理回路が、カメラ回路A5から出力された映像信号の前記撮像レンズの絞り制御による露光過多等で画像の明暗の階調を失った画像領域と、前記リレーレンズ光学系の絞り機構で適正露光に制御された撮像部B11及びそのカメラ回路B12から出力された前記画像の明暗の階調を失った画像領域と同等の画像領域の映像信号とを合成し補正できるので、
例えば、室内の情景と窓を通して明るい屋外を撮像した場合に、前記撮像レンズの絞り機構の絞り値を撮像部A4で室内の情景が適正露光で得られるように制御して撮像し、カメラ回路A5から出力された、室内の情景の階調は維持されているが、明るい屋外を撮像した明暗の階調を失い「白とび」が生じている画像領域と、前記分光光学系によって分光された光学像を、さらにリレーレンズ光学系の絞り機構の絞り値を撮像部B11で適正露光が得られるように制御し、明るい屋外が「白とび」を生じていない明暗の階調が明確なカメラ回路B12から出力された映像信号から、前記カメラ回路A5から出力された明暗の階調を失った「白とび」画像領域部分と同一画像領域の画像を抽出し、信号処理回路で、前記「白とび」が生じている画像領域と合成し補正しているので、広いダイナミックレンジの画像が得られる。
【0020】
2.本願請求項2又は請求項4の発明によれば、
撮像レンズの絞り機構を制御して撮像され、前記リレーレンズ光学系の絞り機構の直前に配設され2系統に分光する分光光学系によって反射分光され、前記一つの第2リレーレンズA9の結像位置に配設された撮像部A4で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路A5と、前記撮像レンズの絞り機構を制御して撮像された光学像を、前記分光光学系によって透過分光され、前記リレーレンズ光学系の絞り機構でさらに光量制御された光学像がもう一つの第2リレーレンズB9の結像位置に配設された撮像部B11で光電変換され、撮像部B11で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力する信号処理回路とを備え、
前記信号処理回路が、カメラ回路A5から出力された映像信号の前記撮像レンズの絞り制御による露光過多等で画像の明暗の階調を失った画像領域と、前記リレーレンズ光学系の絞り機構で適正露光に制御された撮像部B11及びそのカメラ回路B12から出力された前記画像の明暗の階調を失った画像領域と同等の画像領域の映像信号とを合成し補正できるため、ハイダイナミックレンジカメラシステムを構築できる。
【0021】
このため例えば、室内の情景と窓を通して明るい屋外を撮像した場合に、前記撮像レンズの絞り機構の絞り値を撮像部A4で室内の情景が適正露光で得られるように制御して撮像し、カメラ回路A5から出力された、室内の情景の階調は維持されているが、明るい屋外を撮像した明暗の階調を失い「白とび」が生じている画像領域と、前記分光光学系によって分光された光学像を、さらにリレーレンズ光学系の絞り機構の絞り値を撮像部B11で適正露光が得られるように制御し、明るい屋外が「白とび」を生じていない明暗の階調が明確なカメラ回路B12から出力された映像信号から、前記カメラ回路A5から出力された明暗の階調を失った「白とび」画像領域部分と同一画像領域の画像を抽出し、信号処理回路で、前記「白とび」が生じている画像領域と合成し補正しているので、広いダイナミックレンジの画像が得られる。
【0022】
3.本願請求項3の発明によれば、
請求項2の前記第1リレーレンズの出射光学像を2系統に分光する分光光学系において、前記2系統に分光する分光光学系によって90度の反射角で反射分光された光学像をさらに90度の反射角で全反射する反射鏡を備えているので、前記撮像レンズで撮像された光学像を第1リレーレンズで再撮像し2つの第2リレーレンズでそれぞれ再結像する絞り機構を備えたリレーレンズ光学系が、第1リレーレンズと第2リレーレンズB9が光路中心上に直線的に配置され、さらに、分光光学系で反射された光路をさらに反射鏡で直角に反射させ第2リレーレンズA9を第2リレーレンズB9と平行に配置すれば平行配置型光学系を形成することもできるので、高さ方向を押さえた構造の小型のハイダイナミックレンジカメラシステムを構築できる。
【0023】
4.本願請求項5の発明によれば、
請求項1〜4の効果に加えて、前記リレーレンズ光学系が、前記撮像レンズによって結像された光学像を再撮像する第1リレーレンズと、第1リレーレンズの射出光束を再結像する第2リレーレンズで構成する各リレーレンズの焦点距離値の組み合わせにより撮像部B11に結像する再結像倍率を設定できるので、撮像部A4の固体撮像デバイスの対角線長に対し、撮像部B11に対角線長が異なる固体撮像デバイスを使用できる。また、アスペクト比の異なる固体撮像デバイスを使用する場合にも対応できる。
【0024】
5.本願請求項6の発明によれば、
前記請求項1〜5の効果に加えて、前記撮像部A4、B11が、該撮像部のそれぞれの固体撮像デバイスの露光時間を個々に、又は同時に制御する露光時間制御手段を備えているので、撮像部A4の露光時間を撮像部B11の露光時間よりも短く(又は長く)して、一方のカメラ回路から高速で動く被写体像の瞬間静止画像を出力し、他のカメラ回路からは連続した動画像を出力することができる。
【0025】
また、前記撮像レンズとリレーレンズ光学系の各絞り機構を制御して、前記カメラ回路B12から出力された明暗の階調を失った画像領域部分と同一領域の画像を抽出して合成し補正する方式に加えて、それぞれの固体撮像デバイスの露光時間を制御してさらにダイナミックレンジを広げたり、被写体像の連続した瞬間静止画像を出力することもできる。
【0026】
6.本願請求項7の発明によれば、
前記請求項1〜6の効果に加えて、前記撮像部A4、B11及びカメラ回路A5、B12が、高画素数の固体撮像デバイス及び標準画素数の固体撮像デバイスのそれぞれ単板撮像方式の組み合わせ、又は高画素数の固体撮像デバイスによる単板撮像方式と2乃至4方向に分光できる分光プリズムを使用した標準画素数の固体撮像デバイスによる多板撮像方式の組み合わせ、又はそれぞれ2乃至4方向に分光できる分光プリズムを使用した多板撮像方式の組み合わせなど、コストに重点を置いた選択、高性能化に重点を置いた選択など種々の方式に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本願発明を実施するための最良の形態を実施例図に基づいて説明する。図1は本願発明の実施例1によるハイダイナミックレンジカメラシステムのブロック図であり、図2は同発明の実施例における信号処理を説明するための信号波形図であり、図3は実施例2によるハイダイナミックレンジカメラシステムのブロック図であり、図4は同発明の実施例3によるハイダイナミックレンジカメラシステムのブロック図である。
【実施例1】
【0028】
図1において、被写体を撮像する絞り機構2を備えた撮像レンズ1と、該撮像レンズ1で撮像された光束を2系統に分光する分光光学系3と、該分光光学系3によって分光された1つの光路の結像位置に配設された単板撮像方式の撮像部A4及び撮像部A4で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路A5と、前記分光光学系3によって分光されたもう1つの光路の結像位置に結像された光学像6を第1リレーレンズ7で再撮像し第2リレーレンズ9で再結像する絞り機構8を備えたリレーレンズ光学系10と、該リレーレンズ光学系10の再結像された結像位置に配設された単板撮像方式の撮像部B11及び撮像部B11で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力端子16に出力する信号処理回路13とを備えてハイダイナミックレンジカメラシステム14を構成している。
【0029】
被写体を撮像する撮像レンズ1は、例えば、放送用テレビカメラ等に使用されるズーミング、フォーカシング、絞り制御をサーボモータを駆動して制御する電動ズームレンズである。撮像レンズ1で撮像された被写体の光束は2つのプリズムの組み合わせ、又は半透明鏡による2系統に分光する分光光学系3を介して撮像部A4及び光学像6の位置に結像される。
【0030】
前記分光光学系3で反射された光束は撮像部A4に結像される。撮像部A4は、複数種の色フィルタが所定の順序で配列された単板カラー撮像方式の固体撮像デバイス(以後、CCDと記述)が内蔵され、電子シャッタ機能を持つCCD駆動部も備えていて、撮像部A4で光電変換された信号はカメラ回路A5によってガンマ補正、ニー補正等を行って所定の方式の映像信号に形成され、信号処理回路13へ入力される。
【0031】
一方、前記分光光学系3を透過して撮像レンズ1の結像位置に結像した光学像6は、リレーレンズ光学系10を構成する第1リレーレンズ7で再撮像され、該第1リレーレンズ7で略平行光束となった光束はリレーレンズ光学系10の瞳位置に配設された絞り機構8を介して第2リレーレンズ9により撮像部B11に再結像される。撮像部A4と同様な単板カラー撮像方式のCCD及びCCD駆動部を備えた撮像部B11で光電変換された信号はカメラ回路B12によってガンマ補正、ニー補正等を行って所定の方式の映像信号に形成され、信号処理回路13へ入力される。
【0032】
信号処理回路13では、カメラ回路A5から出力された映像信号の前記撮像レンズ1の絞り機構2の制御による露光過多等で画像の明暗の階調を失った画像領域と、前記リレーレンズ光学系10の絞り機構8で適正露光に制御された撮像部B11及びそのカメラ回路B12から出力された前記画像の明暗の階調を失った画像領域と同等の画像領域の映像信号とを合成し、補正された映像信号を出力端子16に出力している。
【0033】
図2において、本願発明のハイダイナミックレンジカメラシステム14で11ステップのグレースケールチャートを撮像したときの映像信号波形を示す。縦軸は映像信号の出力レベルを示し、横軸は、例えば、水平走査線の2ライン分(又は垂直走査線の2フィールド分)の時間軸波形を示す。
【0034】
図2(a)は、被写体を撮像したとき、撮像レンズ1の絞り機構2で撮像部A4において適正露光が得られるように絞り値を制御したときのカメラ回路A5の出力波形を示す。
【0035】
図2(b)は、図2(a)の適正露光時の約60%までの映像レベルが100%レベルになるように撮像レンズ1の絞り機構2の絞り値を制御した場合のカメラ回路A5の出力波形を示す。すなわち60%以上のレベルが「白とび」の映像信号の状態になり、被写体の明暗の階調が失われ、かつディテールも失われている。
【0036】
図2(c)は、撮像レンズ1の絞り機構2の絞り値を図2(b)と同値とし、さらに、撮像部B11で適正露光が得られるようにリレーレンズ光学系10の絞り機構8の絞り値を制御したときのカメラ回路B12の出力波形を示す。
【0037】
図2(d)は、信号処理回路13において、図2(b)で得たカメラ回路A5の出力信号の「白とび」状態の画像領域に、図2(c)で得たカメラ回路B12の出力信号の前記「白とび」状態の画像領域と同等の画像領域の映像信号を抽出し、カメラ回路A5の出力信号の「白とび」状態の画像領域にはめ込み合成して、100%の規定レベルとした信号処理回路13の出力波形を示す。
【0038】
図2の説明で明白なように、例えば、室内の情景と窓を通して明るい屋外を撮像した場合に、前記撮像レンズ1の絞り機構2の絞り値を撮像部A4で室内の情景が適正露光で得られるように制御して撮像し、カメラ回路A5から出力された、室内の情景の階調は維持されているが、明るい屋外を撮像した明暗の階調を失い「白とび」が生じている画像領域と、前記分光光学系3によって分光された光学像6を、さらにリレーレンズ光学系10の絞り機構8の絞り値を撮像部B11で適正露光が得られるように制御し、明るい屋外が「白とび」を生じていない明暗の階調が明確なカメラ回路B12から出力された映像信号から、前記カメラ回路A5から出力された明暗の階調を失った「白とび」画像領域部分と同一画像領域の画像を抽出し、信号処理回路13で、前記「白とび」が生じている画像領域と合成し補正しているので、広いダイナミックレンジの画像が得られる。
【0039】
CCD等の固体撮像デバイスのダイナミックレンジに対し、その拡大されるダイナミックレンジの倍数は被写体の明るさ、撮像条件によって一様ではないが、リレーレンズ光学系10の絞り機構8の絞り値は、1.4/2.0/2.8/4.0/5.6/8/11/16/22というように、2の平方根を公比とする目盛りを刻むことができる。レンズに入る光の量は光束の断面積(レンズ口径の2乗)に比例するので、像の明るさはFナンバーの2乗に反比例することになり、目盛りが一段大きくなるごとに明るさは1/2倍となる。したがって、撮像レンズ1の絞り機構2の絞り値を、仮にF4.0に設定したときに「白とび」が生じた場合に対し、リレーレンズ光学系10の絞り機構8の絞り値によってどのくらいダイナミックレンジが広がったかが表現されるので、仮に、その絞り値がF22とすれば、F4〜F22=25となり、32倍に広がったダイナミックレンジを得たことになる。
【0040】
即ち、前記例のように、室内情景の明るさ2000ルックスで、窓を通して撮像した2000ルックス以上の明るい屋外情景が「白とび」の状態であれば、その倍数は、2000(ルックス)×32(倍)=64000(ルックス)となり、室内情景を再現できる最低照度から64000ルックスまで「黒つぶれ」及び「白とび」の無い映像信号が信号処理回路13の出力に得られることになる。
【0041】
ところで、CCD等の固体撮像デバイスのダイナミックレンジは一般的には狭く、画素の大きさにもよるが、コントラスト比で1:32程度と言われているので、室内情景を再現できる最低照度を、2000÷32=62.5(ルックス)とすれば、コントラスト比1:32から、62.5(ルックス):64000(ルックス)=1:1024のコントラスト比に改善されたことになる。
【0042】
また、分光光学系3の分光比率を、例えば、反射:透過=4:1とすれば、さらに4倍の、1:4096のコントラスト比に改善されたハイダイナミックレンジカメラシステムとすることも可能である。
【0043】
図1において、前記リレーレンズ光学系10が、前記撮像レンズ1によって結像された光学像6を再撮像する第1リレーレンズ7と、第1リレーレンズ7の射出光束を再結像する第2リレーレンズ9で構成する各リレーレンズの焦点距離値の組み合わせにより、撮像部B11に結像する再結像像倍率を設定できるので、撮像部A4のCCDの対角線長に対し、撮像部B11に対角線長が異なるCCDを使用できる。
【0044】
また、水平:垂直の比がH4:V3に対し、H16:V9等アスペクト比の異なるCCDを使用した撮像部B11とする場合にも対応できる。
【0045】
さらに、前記撮像部A4、B11が、該撮像部のそれぞれのCCDの露光時間を個々に、又は同時に制御する露光時間制御手段を備えているので、撮像部A4の露光時間を撮像部B11の露光時間よりも短く(又は長く)して、一方のカメラ回路から高速で動く被写体像の瞬間静止画像を出力し、他のカメラ回路からは連続した動画像を出力することができる。
【0046】
さらにまた、前記撮像レンズ1とリレーレンズ光学系10の各絞り機構2、8を制御して、カメラ回路A5から出力された明暗の階調を失った画像領域部分に対し、前記カメラ回路B12から出力された明暗の階調を失った画像領域部分と同一領域部分の画像を抽出して合成し補正する方式に加えて、それぞれのCCDの露光時間を制御してさらにダイナミックレンジを広げたり、被写体像の連続した瞬間静止画像を出力することもできる。
【実施例2】
【0047】
図3において、撮像部A4及びカメラ回路A5は実施例1と同様の単板撮像方式とし、実施例1の第2リレーレンズ9のバックフォーカス値を長くして撮像部B11との間に3方向に分光できる3Pプリズム15を配設し、実施例1の単板撮像方式の撮像部B11に代えて3板カラー撮像方式とし、撮像部11B(青)、撮像部11R(赤)、撮像部11G(緑)を備えたハイダイナミックレンジカメラシステム14を構成している。
【0048】
前記分光光学系3で反射された光束は撮像部A4に結像される。撮像部A4は、複数種の色フィルタが所定の順序で配列された単板カラー撮像方式のCCDが内蔵され、電子シャッタ機能を持つCCD駆動部も備えていて、撮像部A4で光電変換された信号はカメラ回路A5によってガンマ補正、ニー補正等を行って所定の方式の映像信号に形成され、信号処理回路13へ入力される。
【0049】
一方、電子シャッタ機能を持つCCD駆動部も備えている前記撮像部11B(青)、撮像部11R(赤)、撮像部11G(緑)の各CCDから光電変換された信号は、カメラ回路B12によってガンマ補正、ニー補正等を行って所定の方式の映像信号に形成され、信号処理回路13へ入力される。
【0050】
信号処理回路13では、カメラ回路A5から出力された映像信号の前記撮像レンズ1の絞り機構2の制御による露光過多等で画像の明暗の階調を失った画像領域と、前記リレーレンズ光学系10の絞り機構8で適正露光に制御された前記カメラ回路B12から出力された前記画像の明暗の階調を失った画像領域と同等の画像領域の映像信号を抽出し、カメラ回路A5の出力信号の「白とび」状態の画像領域にはめ込み合成し補正している。
その他の構成及び作用は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0051】
図4において、被写体を撮像する絞り機構2を備えた撮像レンズ1と、該撮像レンズ1で撮像された光学像6を第1リレーレンズ7で再撮像し2つの第2リレーレンズA9、B9でそれぞれ再結像する絞り機構8を備えたリレーレンズ光学系10と、該リレーレンズ光学系10の絞り機構8の直前に配設され2系統に分光する半透明鏡3HMと反射鏡3Mを備えた分光光学系3と、該分光光学系3の半透明鏡3HMによって90度の反射角で反射分光され、さらに90度の反射角で全反射する反射鏡3Mによって反射された光路の前記第2リレーレンズ10の内の一つの第2リレーレンズA9の結像位置に配設された撮像部A4及び撮像部A4で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路A5と、前記分光光学系3の半透明鏡3HMによって透過分光された光路のもう一つの第2リレーレンズB9の結像位置に配設された撮像部B11及び撮像部B11で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力する信号処理回路13とを備えてハイダイナミックレンジカメラシステム14を構成している。
【0052】
前記撮像レンズ1で撮像された光学像を第1リレーレンズ7で再撮像し、前記2つの第2リレーレンズA9、B9でそれぞれ再結像する絞り機構8を備えたリレーレンズ光学系10が、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズB9が光路中心上に直線的に配置され、さらに、分光光学系3の半透明鏡3HMで直角に反射された光路をさらに反射鏡3Mで直角に反射し第2リレーレンズA9を第2リレーレンズB9と平行に配置することによって平行配置型光学系を形成している。該平行配置型光学系を使用することにより、高さ方向を押さえた構造の小型のカメラ装置を構築できる。
その他の構成及び作用は、実施例1と同様である。
【0053】
上記実施例にとらわれることなく、前記撮像部A4、B11及びカメラ回路A5、B12が、高画素数のCCD及び標準画素数のCCDのそれぞれ単板カラー撮像方式の組み合わせ、又は高画素数のCCDによる単板カラー撮像方式と2乃至4方向に分光できる分光プリズムを使用した標準画素数のCCDによる多板カラー撮像方式の組み合わせ、又はそれぞれ2乃至4方向に分光できる分光プリズムを使用した多板カラー撮像方式の組み合わせなど、コストに重点を置いた選択、高性能化に重点を置いた選択など種々の方式に対応できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
極めて広いダイナミックレンジの画像が得られため、非常に大きなコントラスト比で照明された被写体を撮像する機会の多い放送、監視、計測、FA、画像処理等のハイダイナミックレンジカメラシステムを必要とする産業に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本願発明の実施例1によるハイダイナミックレンジカメラシステムのブロック図。
【図2】同発明の実施例における信号処理を説明するための信号波形図。
【図3】同発明の実施例2によるハイダイナミックレンジカメラシステムのブロック図。
【図4】同発明の実施例3によるハイダイナミックレンジカメラシステムのブロック図。
【符号の説明】
【0056】
1:撮像レンズ
2、8:絞り機構
3:分光光学系
3HM:半透明鏡
3M:反射鏡
A4:撮像部
A5:カメラ回路
6:光学像
7:第1リレーレンズ
9、A9、B9:第2リレーレンズ
10:リレーレンズ光学系
B11、11B,11R、11G:撮像部
B12:カメラ回路
13:信号処理回路
14:ハイダイナミックレンジカメラシステム
15:3Pプリズム
16:出力端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する絞り機構を備えた撮像レンズと、該撮像レンズで撮像された光束を少なくとも2系統に分光する分光光学系と、該分光光学系によって分光されたいずれか1つの光路の結像位置に配設された撮像部A4及び撮像部A4で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路A5と、前記分光光学系によって分光された他のいずれか1つの光路の結像位置に結像された光学像を第1リレーレンズで再撮像し第2リレーレンズで再結像する絞り機構を備えたリレーレンズ光学系と、該リレーレンズ光学系の再結像された結像位置に配設された撮像部B11及び撮像部B11で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力する信号処理回路とを備えて構成してなることを特徴とするハイダイナミックレンジカメラシステム。
【請求項2】
被写体を撮像する絞り機構を備えた撮像レンズと、該撮像レンズで撮像された光学像を第1リレーレンズで再撮像し、同第1リレーレンズの出射光学像を2系統に分光する分光光学系を介して前記第1リレーレンズの出射光学像をそれぞれ再結像する2つの第2リレーレンズA9、B9を備えたリレーレンズ光学系と、前記分光光学系と第2リレーレンズA9、B9のいずれか一つとの間に配設された絞り機構と、前記分光光学系によって反射(又は透過)分光された光路の前記第2リレーレンズA9の結像位置に配設された撮像部A4及び撮像部A4で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路A5と、前記分光光学系によって透過(又は反射)分光された光路のもう一つの第2リレーレンズB9の結像位置に配設された撮像部B11及び撮像部B11で光電変換された信号を所定の方式の映像信号に形成するカメラ回路B12と、前記カメラ回路A5、B12から入力された映像信号を合成して出力する信号処理回路とを備えて構成してなることを特徴とするハイダイナミックレンジカメラシステム。
【請求項3】
請求項2の前記第1リレーレンズの出射光学像を2系統に分光する分光光学系において、
前記2系統に分光する分光光学系によって90度の反射角で反射分光された光学像をさらに90度の反射角で全反射する反射鏡を備えたことを特徴とするハイダイナミックレンジカメラシステム。
【請求項4】
前記信号処理回路が、カメラ回路A5から出力された映像信号の前記撮像レンズの絞り制御による露光過多等で画像の明暗の階調を失った画像領域と、前記リレーレンズ光学系の絞り機構で適正露光に制御された撮像部B11及びそのカメラ回路B12から出力された前記画像の明暗の階調を失った画像領域と同等の画像領域の映像信号とを合成し補正してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイダイナミックレンジカメラシステム。
【請求項5】
前記リレーレンズ光学系が、前記撮像レンズによって結像された光学像を再撮像する第1リレーレンズと、第1リレーレンズの射出光束を再結像する第2リレーレンズとで構成され、各リレーレンズの焦点距離値の組み合わせにより撮像部B11に結像する再結像倍率が設定されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイダイナミックレンジカメラシステム。
【請求項6】
前記撮像部A4、B11が、該撮像部のそれぞれの固体撮像デバイスの露光時間を個々に、又は同時に制御する露光時間制御手段を備えてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイダイナミックレンジカメラシステム。
【請求項7】
前記撮像部A4、B11及びカメラ回路A5、B12が、それぞれ単板撮像方式の組み合わせ、又は単板撮像方式と2乃至4方向に分光できる分光プリズムを使用した多板撮像方式の組み合わせ、又はそれぞれ2乃至4方向に分光できる分光プリズムを使用した多板撮像方式の組み合わせで構成してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハイダイナミックレンジカメラシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−165826(P2006−165826A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352100(P2004−352100)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(392025696)株式会社ジェイエイアイコーポレーション (5)
【Fターム(参考)】