説明

ハイドロゲル外用剤

【課題】 ゲル表面からの溶液の滲出性を低下させることなく、使用時に垂れて衣類についてしまういわゆる液だれ性を解決し、さらに使用中の密着感、さらには使用後において貼付した皮膚へ水等が浸透することによって効果感(保湿感)が十分得られるハイドロゲル外用剤を提供する。
【解決手段】 網目構造を有する合成高分子、ヒロドキシプロピルグアーガム、湿潤剤、滲出剤及び水が少なくとも含まれているハイドロゲル外用剤であって、ハイドロゲル外用剤全体の100重量部中に、ヒドロキシプロピルグアーガムが0.05〜3重量部含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔、腕、足などに貼付するハイドロゲル外用剤に関する。さらに詳細にはハイドロゲル外用剤を用いた化粧品パック用ゲルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明でいうハイドロゲル外用剤は、水を大量に含有するハイドロゲルパック材の外用剤である。主にスキンケア用の化粧品パック用ゲルシートとして用いられる。これは、少し疎水性の多価アルコールを添加することによって内包する薬効成分等を含んだ水をゲル表面に滲出し、貼付した皮膚へ水等が浸透することによって保湿効果などが得られることを特徴とするものである。
【0003】
従来、特許文献1はシート状パック剤に関するもので、水溶性高分子と、多価アルコールと、保湿成分と、架橋剤と、美肌成分と、水と、を必須成分として含有していることを特徴とする。ここで水溶性高分子としてはゼラチン、ポリアクリル酸塩が記載されている。その効果は、肌に対する適度な粘着性や保湿性を持ち、製剤物性の安定性や肌に対する安全性に優れるとともに、使用時の使用感および肌に対するパック効果に優れた高含水のシート状パック剤である。
【0004】
特許文献2は、皮脂除去用シート状パック剤に関するもので、架橋したカルボキシル基含有ポリマー及び/又はその塩を含有する含水性のゲル状組成物の層を、支持体の少なくとも一方の面に設け、前記含水性のゲル状組成物の層がさらに多価アルコールを含有することを特徴とするものである。ここでカルボキシル基含有ポリマーとして、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ペクチン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体等が記載されている。
【0005】
特許文献3は、洗い流さない化粧用組成物に関し、化粧品として許容される媒体中に、少なくとも一のグァーガム及びオキシアルキレン化された基により修飾された少なくとも一のシリコーンを含有し、グァーガム/シリコーン重量比が5以下であることを特徴とする。
【0006】
特許文献4は、非洗浄化粧品組成物に関し、化粧品的に許容可能な媒体に、少なくとも1つの非イオン性グアガムと、所定コポリマー類から選択される少なくとも1つの非架橋アニオン性ポリマーを含有せしめてなることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−188527号公報
【特許文献2】特開2002−020257号公報
【特許文献3】特開平8−231375号公報
【特許文献4】特表平10−500703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ゲルシートから滲出する水等は元々有している粘度、つまり極めて低い粘度、いわゆるさらさらした触感であるため、使用時に垂れて衣類についてしまう課題(液だれ性)があり、さらに使用中の密着感、使用後に感じられる効果感(保湿感)が十分ではなかった。
【0009】
この点で、特許文献1の公報には、使用時により多くの水を効率よく外部に出すことが記載されているため、液の滲出という概念が盛り込まれているが、滲出液の状態などへの考慮は無く、使用性、使用感については不十分である。
特許文献2は、余分な皮脂や汚れを有効に除去するとともに、皮膚から剥離する際に痛みを伴わず、更にうるおいを補給しながら余分な皮脂のみを除去することが可能な皮脂除去用シート状パック剤に関するが、液の滲出なども記載が無く、特に保湿感などが不十分である。
【0010】
特許文献3は、特に経時的なヘアスタイルの保持において、特に有利な特性を持つようになることを特徴としており、ゲルパック材としての効果は実施例等には記載が無い。よって、滲出液の状態などへの考慮は無く、使用性、使用感については不十分である。
特許文献4は、内容的にはヘアケアについての実施例等が記載され、ヘアケア用のゲルをイメージしているため、ゲルの骨格(網目構造を有する合成高分子)などの記載や液のブリードについての記載は全く無い。よって、滲出液の状態などへの考慮はない。
【0011】
本発明の課題は、ゲル表面からの溶液の滲出性を低下させることなく、使用時に垂れて衣類についてしまういわゆる液だれ性を解決し、さらに使用中の密着感、さらには使用後において貼付した皮膚へ水等が浸透することによって効果感(保湿感)が十分得られるハイドロゲル外用剤、すなわち化粧用シート状パック剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討した結果、マメ科の植物であるグアーの実から得られるグアーガムをヒドロキシプロピル化したヒロドキシプロピルグアーガムを適量添加すると、ゲルからの溶液の滲出性を低下させることなく、滲出した溶液の粘度が上昇して、液だれ性の改善、使用中の密着感、使用後に感じられる効果感(保湿感)について著しい効果が得られることを見出した。
【0013】
かくして本発明によれば、網目構造を有する合成高分子、ヒロドキシプロピルグアーガム、湿潤剤、滲出剤及び水が少なくとも含まれているハイドロゲル外用剤であって、
ハイドロゲル外用剤全体の100重量部中に、ヒドロキシプロピルグアーガムが0.05〜3重量部含まれていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハイドロゲル外用剤は、ゲルからの溶液の滲出性を低下させることなく、滲出した溶液の粘度が上昇して、液だれ性の改善、使用中の密着感、使用後に感じられる効果感(保湿感)について著しい効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(合成高分子)
合成高分子としては、網目構造を形成し、少なくとも水を含んでゲルを形成することができさえすれば特に限定されない。ハイドロゲルを化粧品の分野で経皮用途として使用する場合は、当該分野で許容される合成高分子が使用できる。特に、水と親和性がある合成高分子が使用されるが、中でもアニオン性官能基を有する合成高分子が好ましく用いられる。そのような合成高分子の例としては、カルボキシル基を官能基として有するアクリル酸、メタクリル酸等の重合性不飽和単量体の重合物及び、それらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等)、スルホン酸基を官能基として有するt−ブチルアクリルアミドスルホン酸等の重合性不飽和単量体の重合物及び、それらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。好適には親水性高分子としてポリアクリル酸ナトリウムが用いられる。また好ましい含有量としてハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に0.5〜35重量部含まれていることが好ましい。
【0016】
なお、架橋前の合成高分子は、シート状ハイドロゲルの製造を妨げない限りは、部分的に架橋していてもよい。また、製造時の取扱性を考慮すると、重量平均分子量が10万〜500万の範囲の架橋前の合成高分子を使用することが好ましい。
【0017】
(架橋剤)
合成高分子の網目構造は、架橋前の合成高分子の架橋により得ることができる。すなわち、架橋前の合成高分子に架橋剤を添加し、必要に応じて加熱することで、網目構造を得ることができる。
架橋剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、カリミョウバン、硫酸アルミニウム、アルミニウムグリシネート、酢酸アルミニウム、酸化アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
また好ましい含有量としてハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に0.1〜5重量部含まれていることが好ましい。
【0018】
(pH調整剤)
また、架橋剤の作用に最適なpHに調整し、架橋をより確実にする目的で、酒石酸、乳酸、グリコール酸等のα−ヒドロキシ酸のほか、クエン酸等の各種有機酸や塩酸等の無機酸を、pH調整剤(酸触媒という場合もある)として使用してもよい。好ましいpHの範囲は4〜7である。
好ましい含有量としてハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に0.1〜10重量部含まれていることが好ましい。
本発明のハイドロゲル外用剤は色素などで着色していても構わないが、透明からほぼ透明の外観を持つことが好ましい。本発明で言う透明とは、ハイドロゲル外用剤のゲルシートを20ポイント文字が黒色で印字されている白色上質紙の上にのせたときに、文字があることが判る程度の透明性が確保されていることが好ましい。本発明のハイドロゲル外用剤のゲルシートにおいては、ゲルシートの透明性を損なわせることなく、ゲルシートの引裂強度と取扱い性とを向上させることを目的として、ゲルシート内部に開口率が十分に大きい織布または不織布を厚み方向に内在させることが好ましい。なお、本発明において、開口率が大きい織布または不織布とは、織布または不織布を通しても20ポイントの活字を判読することができる程度に広い開口率をもつ(透明性が維持された)ものをいう。
本発明のハイドロゲル外用剤の透明からほぼ透明の外観を持つゲルシートは、貼着したゲルシートを通して皮膚の改善効果が見えるとともに、所定の部位に正確に貼れるという優れた外観の効果を有する。
本発明のハイドロゲル外用剤のゲルシートの厚さとしては、全体が均一であっても、部分的に厚さが異なっていても良いが、密着性、透明性、強度を確保するため、0.1〜3mmの厚さが好ましい。0.1mm未満ではゲルシートの強度が弱く、また3mmを超えると、ゲルシートの自重が重すぎて密着性に欠ける場合がある。尚、ゲルシート全体が厚くない場合には、ゲルシートを部分的に6mmまでの厚さに厚くすることは可能である。
【0019】
(ヒドロキシプロピルグアーガム)
本発明に使用するヒドロキシプロピルグアーガムは、マメ科植物であるグアーの種子胚乳部分に含有される天然水溶性高分子多糖類であるグアーガムを原料に、水酸化ナトリウム及び酸化プロピレンを反応させる等の方法により、ヒドロキシル基をヒドロキシプロピル基に置換させて得られるノニオン性ポリマーである。
ゲルシートから滲出する水溶液の液だれ性の改善などのために、水溶性増粘剤として用いられる他のセルロースエーテル類やセルロース、グアーガム、カチオン化グアーガム、スターチ、キサンタンガムなどの多糖類及びその誘導体等を加えることによってハイドロゲル中の水等の粘度を上げることで解決できると思われたが、ゲル自身の保水性が上昇してしまい、ゲルからの薬液成分等を含む溶液の滲出が抑制されてしまうという問題があり、一方で、滲出した溶液の粘度は上昇せずにさらさらした触感のままであり、前記の改善効果が十分ではなかった。
【0020】
ヒドロキシプロピルグアーガムは、ハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に0.05〜3重量部含まれている。ヒドロキシプロピルグアーガムは、ハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に0.05重量部未満であると、却ってヒドロキシプロピルグアーガムを含有しないものに比して、液だれ性が改善されず、使用中の密着感も低下し、使用後に感じられる保湿感も低下する。ヒドロキシプロピルグアーガムはハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に3重量部を超えて含まれている場合、ベタツキ感が強く現れすぎて使用感が悪化するため好ましくない。より好ましくはヒドロキシプロピルグアーガムは、ハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中0.1〜2重量部、最適には0.2〜1重量部、より最適には0.3重量部以上が含まれている。
本発明では、ヒドロキシプロピルグアーガムにおけるヒドロキシプロピル基の置換度が0.4〜1.2の範囲のものが好ましく用いられる。0.6〜1.0のものが更に効果が高くより好ましい。
【0021】
(滲出剤)
滲出剤とは、ハイドロゲル内の溶液を効果的にハイドロゲル表面に滲み出させるために使用される剤である。溶液滲出促進剤とも称する。例えば、親水性でありながらもある程度の疎水性を有する物質を配合することによりハイドロゲル内の水を効果的に吐出させることができる非イオン性水溶性高分子、又はハイドロゲルの網目構造を引き締める効果を発揮させることにより、ハイドロゲル内の溶液をハイドロゲル表面に滲出させることができる電解質が挙げられる。
【0022】
非イオン性水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等のグリコール、多価アルコール等の重合体が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
非イオン性水溶性高分子の好ましい含有量は、ハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に0.1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0023】
特に、グリセリンの吸湿度を100とした場合、2〜55の範囲の比吸湿度の非イオン性水溶性高分子を使用することが好ましい。比吸湿度が2より小さい場合、保水力が十分でないためにハイドロゲル表面への溶液滲出量が多くなりすぎてベタツキの原因になったり、ハイドロゲルを構成する合成高分子とのなじみが悪くなり、ハイドロゲルを形成することが困難になったりする恐れがある。比吸湿度が55より大きい場合、非イオン性水溶性高分子がもつ保水力が大きすぎるためにハイドロゲル内の溶液がハイドロゲル表面に滲出しにくくなり、潤い感、保湿効果が不足する恐れがある。更に好ましい比吸湿度の範囲は20〜45である。
【0024】
電解質としては、易水溶性であり、化粧品等での使用実績のあるものであれば使用可能であるが、溶解性やpH変動が少ない等の点から、強酸と強アルカリとの中性塩が好適に用いられる。このような電解質としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等が挙げられる。
電解質の好ましい含有量は、ハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜5重量部である。非イオン性水溶性高分子と電解質はどちらか一方を単独で配合してもよいし、両者を併用して配合してもよい。
【0025】
(湿潤剤)
湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルビトール、トレハロース、ラフィノース、キシリトール、マンニトール、ヒアルロン酸及びその塩、トレハロースやラフィノース等の各種誘導体、トリメチルグリシン、サイクロデキストリン、ヒアルロン酸及びその塩等のグリコール類、多価アルコール類及び多糖類等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
好ましい含有量としてハイドロゲル外用剤(全体)100重量部中に1〜30重量部含まれていることができる。
【0026】
(薬効成分)
本発明において配合することができる薬効成分としては、従来、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料、雑貨等で使用されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オオムギエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クマザサエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、スイカズラエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センブリエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユズエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
【0027】
また、デオキシリボ核酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜等の生体高分子;アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、トリメチルグリシン等の保湿成分;スフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質等の油性成分;ε−アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β−グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン等の抗炎症剤;ビタミンA,B2,B6,D,E,パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド等のビタミン類;アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分;トコフェロール、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤;γ−オリザノール、ビタミンE誘導体等の血行促進剤;レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤;セファランチン、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエステラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ−アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウム、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ヒドロコルチゾン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、鎮痛剤、精神安定剤、抗高血圧剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤、抗菌性物質等も挙げられる。
【0028】
これらの成分の配合量は、その素材により有効成分量が異なるため一概には規定できないが、一般にシート状製剤の質量に対して0.001〜80質量%であるのが好ましく、0.05〜30質量%であるのがより好ましい。
【0029】
(製造方法)
例えば、合成高分子と、ヒドロキシプロピルグアーガムと、湿潤剤と、水とを少なくとも混合して得られた混合物に、さらに架橋剤と、滲出剤と水を加えて混合し、反応させることを特徴とするハイドロゲル外用剤の製造方法が採用することができる。好ましくはpH調整剤(酸触媒)を加えて混合溶液のpHを4〜7となるように調整して反応させることを特徴とする製造方法を採用することができる。
ここで重要なことは、ヒドロキシプロピルグアーガムをあらかじめ合成高分子と湿潤剤に加えておき、ヒドロキシプロピルグアーガムを溶解させて、その後、架橋剤と滲出剤とを加えるという点である。いいかえれば、ヒドロキシプロピルグアーガムは、ゲル形成前に添加することが望ましい。ヒドロキシプロピルグアーガムをゲルを作成してから添加すると工程が多くなるためコストが高く、パックも均質なものが出来ない。すなわち、ヒドロキシプロピルグアーガムをゲルを作成した後から添加する場合、固体であるヒドロキシプロピルグアーガムをゲル表面に均質に分散させることは困難であるし、例えば水溶液にして添加する場合も高粘度であるため均質に分散させることは困難である。一方、低粘度にするために低濃度の水溶液を作成して添加しても、過剰の水により求める特性(使用性、効果感)が得られない。また、均質に分散できない場合は滲出液の粘度がばらつき、例えば部分的に剥がれやすくなったり、保湿効果が局所的になったりするなど、求める特性が得られないため好ましくない。
【0030】
例えば、合成高分子を0.5〜35重量部、好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは2〜25重量部と、ヒドロキシプロピルグアーガムを0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部、更に好ましくは0.2〜1重量部と、湿潤剤を1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部と、さらに架橋剤を0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部と、滲出剤を0.1〜20重量部を、好ましくは滲出剤が非イオン性高分子の場合は1〜10重量部を、滲出剤が電解質の場合は0.2〜5重量部を、加えて混合し、反応させることを特徴とするハイドロゲル外用剤の製造方法である。
ここで、より好ましくは、pH調整剤(酸触媒)を加えて、混合溶液のpHを4〜7となるように調整して、反応させることを特徴とするハイドロゲル外用剤の製造方法である。
【0031】
なお、水は全部で60〜97重量部、好ましくは70〜95重量部加えることが好ましい。前記水の一部を、架橋剤と滲出剤との混合物に加えて、混合溶液として加えることが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
(実施例)
次の表に示すゲル形成用組成物を用いて、以下の手順に従って、化粧品用パックに用いられる各実施例・比較例のゲルシートを作成した。合成高分子とヒロドキシプロピルグアーガム(HPグアーガム)もしくはその他の増粘剤に湿潤剤を加え、さらに水を加えて均一になるまで十分に混練した。この混合物に、滲出剤、架橋剤および水を加えてよく分散させスラリーとしたものにさらにpHが5〜6となるようにpH調整剤(酸触媒)を加えて合計100部として、十分に混練攪拌する。次に、平滑なガラス板上に乗せた38μm厚みのPETフィルムの四隅に1mmの厚みのスペーサーを置き、その中央部分に適量の上記組成物を混合終了後直ちに流し込み、目付け量17g/mのナイロン編布(トリコットハーフ)と、もう一枚の38μm厚のPETフィルムを重ね、その上からガラス板で挟んでそのまま24時間放置し、厚さ1mmのハイドロゲル外用剤のゲルシートを得た。このゲルシートを5cm×5cmにカットし、評価用の試料とした。
【0034】
【表1】

【0035】
ゲルシートからの液体の滲出量は以下のように測定した。
ゲルシートは測定直前に袋から取出して両面のPETフィルムをはがし、重量(a)を測定した後、片面のみにPETフィルムを貼りつけておく。2枚のガラス板(100×100mm 厚さ3mm)と、ろ紙(アドバンテック製5A 直径150mm 円形)を用意し、ろ紙の重量(b)を測定して1枚のガラス板上にのせる。ろ紙の中央部にゲル面を下に向けてゲルシートを貼り、その上からもう一枚のガラス板をのせ10分間静置する。その後、ガラス板とゲルシート上のPETフィルムを取り除き、更に、ゲルを取り除いて円形ろ紙のみの重量(c)を測定し、あらかじめ測定しておいたろ紙重量との差から、滲出した液の重量を算出する。この液量を元のゲル重量に対する比率で表し滲出量((c−b)/a)とする。測定値は同様のテストを3枚のゲルで行った結果の平均値を用いる。
滲出量は小さいと肌への密着性が低下するため使用中に剥がれやすく、皮膚へ浸透する液量も少ないため、保湿感などの効果が不十分であり、大きすぎるとゲルの重さによりズレ落ちたり、過剰な液が垂れて(液ダレ)衣服などに付着してしまうので、滲出量の好ましい範囲は、20〜35(%)である。
【0036】
[パック剤としての評価]
上記のように形成したゲルシートを上体が起きた状態で10人の女性被験者の頬に貼り、20分間静置した時の密着性および液ダレ性についての評価と、20分後にはがした後の肌状態の保湿感を下記の1〜5の5段階で表現してもらい、パック剤としての使用性や効果感として評価し、全被験者の合計点数を以って評価結果とした。従って、これらの評価の値は性能、効果の大小を示している(満点50点)。その結果を表に示す。
【0037】
効果感(保湿感) 評価
5:肌が著しく保湿された気がする。
4:肌が保湿された気がする。
3:肌がやや保湿された気がする。
2:肌がわずかに保湿された気がする。
1:効果が感じられない。
【0038】
使用性(液ダレ性) 評価
5:液ダレが全く無い。
4:液ダレがわずかにある。
3:液ダレはややある。
2:液ダレが多い。
1:液ダレが多すぎ、滲出した液が衣服に付くほどである。
【0039】
使用性(密着性) 評価
5:皮膚に完全に密着しておりズレはない。
4:皮膚にほぼ密着しており、ズレはわずかである。
3:皮膚に密着していない部分もあり、ズレはややある。
2:皮膚に密着しにくく、ズレは多い。
1:ズレが大きく落下する。
【0040】
表1より、実施例のゲルシートは、HPグアーガムが無添加の比較例1と比べて、滲出量は適当で、使用性(液ダレ性、密着性)、効果感(保湿感)が優れている。
これに対して、他の増粘剤としてグアーガム、カチオン化グアーガム、キサンタンガムの比較例3〜5の場合、滲出量は適当であるが、液ダレ性、密着性が不十分で、保湿感が不足している。また他の増粘剤として、ヒドロキシエチルセルロース、ヒアルロン酸Naの比較例6、7の場合、液ダレ性は良いが、滲出量が不足し、密着性が低下し、保湿感が不足している。
【0041】
HPグアーガムも置換度が0.4〜1.2である実施例1〜3の場合、いずれも滲出量は適当で、使用性(液ダレ性、密着性)、効果感(保湿感)が優れている。ただし、HPグアーガムがハイドロゲル外用剤全体の100重量部に対して0.05重量部未満である比較例2の場合は、HPグアーガムが少なすぎるため、滲出量は適当であるが、添加量が0である比較例1よりもさらに液ダレ性、密着性が不十分で、効果感が不足している。HPグアーガムがハイドロゲル外用剤全体の100重量部に対して0.05重量部以上である実施例4の場合、滲出量は適当で、使用性(液ダレ性、密着性)、効果感(保湿感)が優れている。反対にHPグアーガムがハイドロゲル外用剤全体の100重量部に対して3重量部の実施例5の場合は、滲出量は適当で、使用性(液ダレ性、密着性)、効果感(保湿感)が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ハイドロゲル外用剤として顔、腕、足などに貼付して使用でき、ハイドロゲル外用剤を用いたスキンケア用の化粧品パック用ゲルシートとして有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目構造を有する合成高分子、ヒロドキシプロピルグアーガム、湿潤剤、滲出剤及び水
が少なくとも含まれているハイドロゲル外用剤であって、ハイドロゲル外用剤全体の100重量部中に、ヒドロキシプロピルグアーガムが0.05〜3重量部含まれていることを特徴とするハイドロゲル外用剤。
【請求項2】
前記滲出剤がハイドロゲル外用剤全体の100重量部中に0.1〜20重量部含まれている請求項1記載のハイドロゲル外用剤。
【請求項3】
請求項1記載のハイドロゲル外用剤の製造方法であって、
ヒドロキシプロピルグアーガムをあらかじめ合成高分子と湿潤剤と水に加えておき、ヒドロキシプロピルグアーガムを溶解させて、その後、この混合物に架橋剤と滲出剤を加えて混合し、反応させるハイドロゲル外用剤の製造方法。


【公開番号】特開2010−215553(P2010−215553A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62991(P2009−62991)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】