説明

ハイパーブランチポリマー誘導体、光硬化性樹脂組成物及び樹脂硬化物

【課題】硬化収縮率が低く、かつ硬化速度が速く、高硬度な樹脂硬化膜を得ることのできる光硬化性樹脂組成物のポリマー成分に好適なハイパーポリマー誘導体、該ハイパーブランチポリマー誘導体を有する光硬化性樹脂組成物、および樹脂硬化物を提供する。
【解決手段】本発明に係るハイパーブランチポリマー誘導体は、光硬化性樹脂組成物のポリマー成分に用いるハイパーブランチポリマー誘導体であって、
下記化学式(I)
【化1】


で示される化合物を含むポリグリシジルエーテル化合物を塩基性触媒または酸性触媒の存在下で付加重合させることにより得られた球状ハイパーブランチポリマーの表面末端基にアクリル基又はメタアクリル基が導入されてなることを特徴する。本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、上記ハイパーブランチポリマー誘導体をポリマー成分として有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイパーブランチポリマー誘導体、該誘導体をポリマー成分として有する光硬化性樹脂組成物、及び樹脂硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーティング剤、塗料、接着剤、印刷インキなどの材料に樹脂成分として用いられる光硬化性樹脂組成物には、一般的に、高強度、高速硬化性、低い硬化収縮性という性能が求められる。高強度や高速硬化性を実現するには、重合性官能基(アクリル基またはメタクリル基)を多数導入したポリマー成分(ポリマーまたはオリゴマー)を主剤とする樹脂組成物を用いる必要がある。
しかし、重合性官能基を多数導入したポリマー成分を主剤とする樹脂を硬化させると、硬化収縮性が大きくなってしまうという欠点が生じる。すなわち、高強度、高速硬化性と低収縮性は本質的に両立困難な光硬化樹脂特性と言える(例えば、非特許文献1を参照)。
したがって、現行の光硬化性樹脂組成物には、これら相反する機能を補充するため、主剤のポリマー成分にさらに複数のモノマーやオリゴマーを補填的に配合した樹脂組成物を用いている。例えば、樹脂組成物中に高硬度、高速硬化性に寄与するモノマーおよび低収縮性に寄与するモノマーのいずれをも配合することを行っている。
しかし、上記現行の配合組成でも高強度、高速硬化性、低収縮性の同時達成は不十分である(例えば、非特許文献2を参照)。
上述の光硬化性樹脂組成物の望まれる複数の特性の同時達成の困難性について、今少し詳しく以下に説明する。
【0003】
上述のように、光硬化性樹脂は、主剤となるポリマー成分、モノマー、光重合開始剤、添加剤等で構成されており、これらの配合比を調整することで様々な機能を付与することができる。光硬化性樹脂組成物の主剤であるポリマー成分は、該樹脂成分を用いて作製される樹脂硬化物の性能を支配する要素の主たるものであり、構成する分子構造によってエポキシ型、ウレタン型、ポリエステル型、ポリエーテル型、等に分類される。
【0004】
上記エポキシ型のポリマー成分であるエポキシアクリレートは、ビスフェノール型、ノボラック型等のエポキシ樹脂の末端エポキシ基をアクリル化することで得られる。一般的に硬化が速く、耐熱性、耐薬品性に優れた硬い膜を作れる。さらに、エポキシ基由来の水酸基が残るため、ガラス基板などに対する接着性がよいという性質も有する。
【0005】
上記ウレタン型のポリマー成分であるウレタンアクリレートは、ウレタン構造中の水酸基をアクリル化することで得られる。ポリオール及びイソシアネートの選択で性能をコントロールできるので、様々な応用が可能である点が利点である。このウレタン型ポリマー成分は、一方で、粘度が高いケースが多く、一定の希釈剤が必要である場合が多い。
【0006】
上記ポリエステル型ポリマー成分であるポリエステルアクリレートは、ポリオールと二塩基酸より合成したポリエステル骨格に残存する水酸基をアクリル化することで得られる。このポリエステル型ポリマー成分は、比較的低粘度で、材料的に安価である点でメリットがある。
【0007】
上記ポリエーテル型のポリマー成分であるポリエーテルアクリレートは、ポリエチレングリコールの末端水酸基をアクリル化することで得られる。このポリエーテル型ポリマー成分は、硬化樹脂強度や粘性の点で特段に優位とはいえないが、低粘度対応が可能であるため、反応性希釈剤として利用される。
【0008】
上述のように、光硬化性樹脂組成物においては、用いるポリマー成分の分子構造の違いにより目的の樹脂硬化物の性能を制御することができるが、選択使用するポリマー成分によってそれぞれに一長一短がある。それぞれの短所は、特定のモノマーを選択し、配合することで補足される。例えば、硬度に難点を抱えるポリエーテル型ポリマー成分に対しては、多官能性モノマーのペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが配合される。
【0009】
目的の樹脂硬化物に対する要求特性は用途分野によって異なる。したがって、光硬化性樹脂組成物の性能評価を行う上では、それぞれの用途に合わせた評価法を設定する必要がある。中でも、コーティング剤、塗料、接着剤、印刷インキの分野で用いられる光硬化性樹脂組成物には、高硬度の樹脂硬化物を製造できること、製造する際の硬化速さ、低収縮性が必要最低限の要求特性である。
【0010】
樹脂硬化物の硬度は、樹脂硬化物の強度の指標となり、上記利用分野においてはより高硬度のものが望ましい。また、硬化速さについては、作業時間等短縮の観点からより速いことが望ましい。さらに、硬化時の収縮の大小は、樹脂硬化物のクラッキングやひび割れ等の問題を引き起こす原因となるので、より収縮性が小さいことが望ましい。
【0011】
しかし、これらの望ましい特性の同時達成、すなわち、硬度及び硬化速さと低収縮性の両立は本質的に困難である。この原因は以下のように説明できる。
【0012】
硬度及び硬化速さは、樹脂組成内により多数の反応性基を有することで実現できる。多数の反応性基が架橋構造をより密にするためである。一方、硬化時の収縮はポリマー間の距離がファンデルワールス距離から共有結合距離に変化するため起こる現象であるため、多数の反応性基を有するポリマーは高い収縮性を有することとなる。すなわち、硬度と硬化速さはパラレルの関係にある一方、硬度と低収縮性は相反する関係にあると言える。
【0013】
実際にコーティング剤や塗料に用いる光硬化性樹脂組成物において、高硬度の樹脂硬化物を得ることができ、製造時の硬化が速く、かつ収縮率の低いものを開発する際には、前記相反する物性のいずれかを補うために様々なモノマーやポリマーを配合する。例えば、高硬度の樹脂硬化物を得ることができ、硬化速さに優れた樹脂組成物を得るためには、補足成分として、具体例を挙げると、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性低分子モノマーが用いられる。また、低収縮性を確保するためには、補足成分として、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート等のポリエーテル系ポリマーが用いられる。
【0014】
しかし、かかる現行の手法では、必然的に成分数が多くなり、それに伴って、調製に要する制御因子が多くなる。その結果、現行の手法は、実際上、手間が多くかかり、溶解性の問題から配合に限界があり、性能面でも十分な品質が得られないなど、問題点が多いのが現状である。
【0015】
【非特許文献1】小島靖 日立化成テクニカルレポート No.42(2004−1) p.15−p.20
【非特許文献2】滝本靖之 UV硬化技術 Q&A集 pp.78−pp.83
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、樹脂硬化膜形成時の膜収縮率が低く、かつ硬化速度が速く、高硬度な樹脂硬化膜を得ることのできる光硬化性樹脂組成物のポリマー成分に好適なハイパーポリマー誘導体、該ハイパーブランチポリマー誘導体をポリマー成分として含有する光硬化性樹脂組成物、および樹脂硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、下記構成を採用したハイパーポリマー誘導体、該ハイパーブランチポリマー誘導体をポリマー成分として含有する光硬化性樹脂組成物、および樹脂硬化物を提供する。
【0018】
[1] 光硬化性樹脂組成物のポリマー成分に用いるハイパーブランチポリマー誘導体であって、
下記化学式(I)
【0019】
【化1】

で示される化合物を含むポリグリシジルエーテル化合物を塩基性触媒または酸性触媒の存在下で付加重合させることにより得られた球状ハイパーブランチポリマーの表面末端基にアクリル基又はメタアクリル基が導入されてなるハイパーブランチポリマー誘導体。
【0020】
[2] 前記ハイパーブランチポリマーの多角度光散乱検出器(multi-angle laser light scattering)によって測定された絶対分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography)によって測定された換算分子量(重量平均分子量)の2倍以上であることを特徴とする、上記[1]に記載のハイパーブランチポリマー誘導体。
【0021】
[3] 前記アクリル基又はメタアクリル基の導入率が1%〜100%であることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のハイパーブランチポリマー誘導体。
【0022】
[4] (A)上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載のハイパーブランチポリマー誘導体、(B)光重合開始剤を有してなる光硬化性樹脂組成物。
【0023】
[5] 請求項4に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる光硬化性樹脂組成物は、超多分岐で、球状分子となるハイパーブランチポリマーの表面の末端に重合性官能基であるアクリル基またはメタクリル基が導入されてなるハイパーブランチポリマー誘導体をポリマー成分として有することに特徴がある。
上記ポリマー成分であるハイパーブランチポリマー誘導体は、目的の樹脂硬化物中で骨格部分を構成することになり、この骨格部分が超多分岐かつ球状であるので、樹脂硬化物の硬度は大変高いものとなる。しかも、骨格部分が超多分岐かつ球状であることから、樹脂組成物が硬化するときの収縮率は大変低いものとなる。
また、樹脂組成物の硬化をもたらす重合反応は、超多分岐かつ球状のハイパーブランチポリマーの表面に導入されている重合性官能基(アクリル基またはメタクリル基)の反応により進行するので、反応の進行速度は大変高いものとすることができる。
したがって、本発明に係る光硬化性樹脂組成物によれば、従来同時達成が困難であった、高硬度の樹脂硬化物の形成と、製造時の収縮率の低さ、および硬化速度の速さという諸特性を同時に達成することができる。
さらに、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、基本的にモノマー成分および光重合開始剤から構成され、それら以外の成分と特に必要としないので、組成が簡易で、調製が容易である。
また、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、溶剤がなくても調製することができるので、製造に伴う環境に対する負荷も、従来の樹脂組成物に比較すると、格段に低いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係るハイパーブランチポリマー誘導体は、光硬化性樹脂組成物のポリマー成分に用いるハイパーブランチポリマー誘導体であって、
下記化学式(I)
【0026】
【化2】

で示される化合物を含むポリグリシジルエーテル化合物を塩基性触媒または酸性触媒の存在下で付加重合させることにより得られた球状ハイパーブランチポリマーの表面末端基にアクリル基又はメタアクリル基が導入されてなることを特徴としている。そして、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、上記ハイパーブランチポリマー誘導体をポリマー成分として有する点に特徴がある。
以下、本発明の構成要素について、詳しく説明する。
【0027】
(ハイパーブランチポリマー)
本発明に用いるハイパーブランチポリマーは、上記化学式(I)で示される化合物を含むポリグリシジルエーテル化合物を塩基性または酸性触媒の存在下で付加重合させることにより得られた、超多分岐構造を有し、かつ分子は球状を呈する重合体化合物を意味する。このハイパーブランチポリマーは、従来の線状ポリマーとは物性面で異なる点が多数あり、一例を挙げると、表面多官能性、低粘度、非晶性などがあるが、最大の特徴は、超多分岐構造の骨格を有し、かつ分子は球状となり、球状分子の表面に修飾可能な多数の末端基を有する点にある。
【0028】
このハイパーブランチポリマーが超多分岐で、安定的に球状であるためには、該ハイパーブランチポリマーの多角度光散乱検出器(multi-angle laser light scattering)によって測定された絶対分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography)によって測定された換算分子量(重量平均分子量)の2倍以上とすることが、好ましい。
【0029】
(ハイパーブランチポリマー誘導体)
本発明にかかるハイパーブランチポリマー誘導体は、上記超多分岐構造の球状ハイパーブランチポリマーの表面末端基にアクリル基又はメタアクリル基が導入されてなるハイパーブランチポリマー誘導体であり、光硬化性樹脂組成物のポリマー成分に用いて好適である。
【0030】
(光硬化性樹脂組成物)
本発明にかかる光硬化性樹脂組成物は、上記ハイパーブランチポリマー誘導体と、光重合開始剤とを有する構成の樹脂組成物である。その他の成分として、他のオリゴマー、モノマー、添加剤、溶媒などを有してもよいが、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、特に他の成分を必要としないで、樹脂硬化物を形成することができる。
目的とする樹脂硬化物の硬度や、硬化時の硬化速度は、主に、上記ハイパーブランチポリマーの分子量と、該ハイパーブランチポリマーの表面を修飾している重合性官能基(アクリル基またはメタクリル基)の導入率とにより、制御することができる。
【0031】
(ハイパーブランチポリマー誘導体および光硬化性樹脂組成物の利点)
本発明により得られる、架橋性のアクリル基またはメタクリル基を表面末端基に有するハイパーブランチポリマー誘導体のポリマー本体(ハイパーブランチポリマー)は、高度に多分岐した主鎖構造をもっている。そのため、本発明に係るハイパーブランチポリマー誘導体および光硬化性樹脂組成物は、上記課題に対する解決アプローチにおいて次の利点を有すると言える。
【0032】
第1に、ハイパーブランチポリマー分子内の高度に多分岐された主鎖骨格が分子全体として球状構造を形成し、かつ多くの官能基を表面に保持するため、分子表面に多数のアクリル基またはメタクリル基を有する構造をとることができ、係る構造により樹脂の高硬度化及び優れた硬化速さが得られる。
【0033】
第2に、ハイパーブランチポリマーの超多分岐構造の骨格が分子鎖全体の自由な運動を阻害するため、外部環境又は分子構造の変化時における分子自身の体積変化が抑制される。この体積変化の抑制により、硬化時の収縮性が低く抑えられる。
【0034】
すなわち、本発明にかかるハイパーブランチポリマー誘導体は、高硬度な樹脂硬化物をもたらすことができ、樹脂組成物に優れた硬化速さと、低収縮性を与える、硬化樹脂組成物のポリマー成分として好適であり、上述した同時達成が困難な諸物性を単一成分で同時に発現できる。
【0035】
(樹脂硬化物)
本発明にかかる樹脂硬化物は、上記本発明に係る光硬化性樹脂組成物を硬化して得られた塗料硬化膜、接着剤層、印刷インキ層、コーティング膜などの膜状樹脂硬化物を意味する。
【0036】
(樹脂硬化物の硬度)
本発明で言う「硬度」とは、樹脂硬化物の機械的硬さで、強度の指標の一つである。硬度の測定法は様々にあるが、JIS K5600−5−4(ISO/DIN 15184)に規定された鉛筆硬度が代表的な指標である。その他に、ISO14577で規定されている、荷重−押込み深さ試験から得られるマルテンス硬度がある。マルテンス硬度とは、試験荷重が負荷された状態(押し込み)で測定される硬さであり、負荷増加時の荷重−押し込み深さ曲線の値から求められる。マルテンス硬度には、塑性及び弾性変形の両方の成分が含まれる。
【0037】
マルテンス硬度は、四角錐圧子及び三角錐圧子について定義される。具体的には、以下の式(1)で示されるように、試験荷重Fを、接触ゼロ点から圧子の侵入した表面積Asで除した値と定義される。

マルテンス硬度=F/As=F/26.43h (1)

ここで、表面積Asとは、
1)ビッカース圧子(四角錐圧子)の場合
As=(4sin(α/2)/cos(α/2))×h
2)バーコビッチ圧子(三角錐圧子)の場合
As=(3√3tanα/cosα)×h
である。
【0038】
本発明で言う「硬化性」とは、樹脂組成物の硬化する速さを表す。硬化が速いほど、硬化性に優れる。特に樹脂硬化物表面の硬化性を表面硬化性といい、硬化樹脂の表面粘着性がなくなるまでの時間(タックフリータイム)の短さによって評価される。
【0039】
本発明で言う「硬化収縮性」とは、樹脂組成物が硬化する際に体積収縮してしまう性質をいう。硬化収縮は、重合の進行に伴い、ポリマー分子間の距離がファンデルワールス距離から共有結合距離に変化するために起こる。
【0040】
以下に、本発明に係るハイパーブランチポリマー誘導体および光硬化性樹脂組成物の調製方法を説明する。
【0041】
(ハイパーブランチポリマーの調製)
本発明に用いるハイパーブランチポリマーは、下記化学式(I)
【0042】
【化3】

で表される化合物を含むポリグリシジルエーテル化合物を、塩基性触媒又は酸性触媒存在下、開環付加重合させることによって、得ることができる。得られるハイパーブランチポリマーは、末端にエポキシ基を含有する高度に多分岐した球状の分子化合物である。
【0043】
なお、上記開環付加重合では、上記化学式(I)で示される化合物に、該化合物以外のグリシジルエーテル基を持つ化合物を組み合わせて重合させてもよい。上記化学式(I)で表される化合物以外のグリシジルエーテル化合物としては、例えば、上記化学式(I)で示される化合物以外のグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖、分解澱粉等の水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたもの;脂肪族、芳香族、脂環族のグシリジルエーテル;グリシジルエステル;それらのEOPO付加体等が挙げられる。
【0044】
(開環付加重合に使用される塩基性触媒)
上記開環付加重合に使用される塩基性触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、それらの水素化物、アルコキシド、水酸化物、アルキル化物、炭酸塩等を挙げることができる。このうち、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウム、カリウムメトキシド、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0045】
上記開環付加重合は、上記化学式(I)で表される化合物を、塩基性触媒の存在下で、付加重合(開環付加重合、開環付加重合ともいう)させるものであり、重合の際の条件については特に限定されない。
【0046】
上記塩基性触媒の使用量は、化学式(I)で表される化合物に対して、0.1〜30質量%であることが望ましく、1〜20質量%であることが好ましい。
【0047】
上記塩基性触媒を導入する方法としては、反応槽に予め添加しておく方法、または連続的に反応槽に滴下する方法、または一定時間毎に分割して反応槽に滴下する方法等が挙げられる。
【0048】
(開環付加重合に使用される酸性触媒)
上記開環付加重合に使用される酸性触媒としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、シアン化水素酸、イソシアン化水素酸、アジ化水素酸、ホウ酸、炭酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、硫酸、亜硫酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、過塩素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸等を挙げることができ、例えば、塩酸、リン酸、硫酸等が好ましい。
【0049】
上記酸性触媒の使用量は、上記化学式(I)で表される化合物に対して、0.1〜30質量%であることが望ましく、1〜20質量%であることが好ましい。
【0050】
上記酸性触媒を導入する方法としては、反応槽に予め添加しておく方法、または連続的に反応槽に滴下する方法、または一定時間毎に分割して反応槽に滴下する方法等が挙げられる。このうち、連続的に反応槽に滴下する方法、または一定時間毎に分割して反応槽に滴下する方法が好ましい。
【0051】
上記開環付加重合は、溶媒の存在なしに進行するが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0052】
また、反応濃度(溶媒に対する上記化学式(I)で表される化合物の濃度。他のグリシジルエーテル化合物も用いる場合、該化合物と上記化学式(I)で表される化合物との合計の溶媒に対する濃度)は、1質量%〜100質量%(溶媒なし)、好ましくは、10質量%〜100質量%、より好ましくは、30質量%〜100質量%である。
【0053】
上記開環付加重合は、好ましくは、不活性ガス(Ar、Nなど)下にモノマー溶液と触媒を混合させる。この時、モノマー溶液は、一度に混合させても、反応系に滴下してもどちらでも良い。反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜160℃である。反応時間は0.5〜10時間、より好ましくは、1〜7時間として重合を完結させる。
【0054】
上記開環付加重合における反応温度と反応時間の選択は、分岐度、分子量に影響する。本発明におけるエポキシ開環付加重合では、エポキシ基の開環により、まず、2級アルコキシドが選択的に生成し、その後、プロトン交換平衡により、1級アルコキシドへと変換される。活発なプロトン交換が、分岐度を向上させることから、迅速なプロトン交換を促し、高分岐重合体を得るためには、高温(例えば、50℃以上、好ましくは80〜150℃)での反応が望ましいが望ましい。モノマーの消費が完了した後も反応温度が高い状態にあると、末端のエポキシ基が、系内の水分等によって、開環してしまう恐れがあるため、反応温度は、重合が終了した時点で速やかに室温まで低下させることが望ましい。
上記開環付加重合終了後、重合物から、触媒を濾過、イオン交換、中和等によって、除去することができる。この際、必要に応じて、重合物を好適な溶媒、例えば、メタノールに溶解させる。また、引き続き、再沈によって重合物を精製しても良い。
【0055】
上記開環付加重合で得られたハイパーブランチポリマーの重量平均分子量(Mw)は、500〜100,000であることが好ましく、2,000〜6,000であることがより好ましく、最も好ましくは6,000である。ここで、ハイパーブランチポリマーの重量平均分子量(Mw)は、0.5質量%の水溶液を調製し、温度40℃でGPC測定を行って求めることができる。
例えば、測定装置として「RI−71」(商品名:Shodex社製)を用い、移動溶媒としては水を用い、標準物質としてはポリエチレングリコールを使用することができ、後述の実施例においてもこの条件で測定している。
【0056】
上記開環付加重合で得られたハイパーブランチポリマーは、生成物の13C−NMRを測定したところ、参考文献(Macromolecules 1999,32,4240−4246,macromolecules 2000,33,8158−8166)に示されるように、分岐単位の三置換炭素原子に特異的な、79〜81ppmの共鳴を強く示すことから、高分岐体ということができる。
【0057】
本発明で用いるハイパーブランチポリマーは、末端にエポキシ基を有する。末端とは、ポリマーを構成する分岐鎖の末端を意味する。分岐鎖には、途中に−C(=O)O−(エステル結合)、−C(=O)NH−(アミド結合)、エーテル結合(−O−)などを含むアルカンから形成され、水酸基などの酸素を含む置換基を豊富に有している。ここで、末端エポキシ基の存在は、生成物の1H−NMRを測定し、δ値2.6〜3.2のピークの存在から確認することができる。
【0058】
(ハイパーブランチポリマー誘導体の調製)
本発明にかかるハイパーブランチポリマー誘導体は、上記ハイパーブランチポリマーを触媒及び重合禁止剤存在下、溶媒中でアクリル酸系化合物またはメタクリル酸系化合物とエステル化反応をさせることによって得られる。
【0059】
(触媒)
上記エステル化反応に用いる触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリエチルアミン等のアミン系触媒が挙げられる。
【0060】
(重合禁止剤)
上記エステル化反応に用いられる重合禁止剤としては、キノン系、例えばハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−Di−tert−ブチル−4−メチルフェノール;フェノール系、例えば2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−16−tert−ブチル−3−メチルフェノール、4,4−テオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、p−ニトロソフェノール;スルフィド系、例えば、ジイソプロピルキサントゲンスルフィド;アンモニウム塩;例えば、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、1,1−ジフェニル−2−ビクリルヒドラジル;1,3,5−トリフェニルフェルダジル等が挙げられる。
【0061】
(溶媒)
エステル化反応に用いられる溶媒としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソ2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、水が挙げられる。これらは、単独で使用されても、2種以上を併用しても良い。
【0062】
(アクリル酸系化合物またはメタクリル酸系化合物)
上記ハイパーブランチポリマーの表面の末端基に重合性官能基(アクリル基またはメタクリル基)を導入する導入反応に用いる導入化合物、すなわち、エステル化反応に用いられるアクリル酸系化合物またはメタクリル酸系化合物としては、特に限定はされないが、アクリル酸、アクリル酸クロリド、アクリル酸無水物、メタクリル酸、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸無水物、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。これらは、単独で使用されても、2種以上を併用しても良い。
【0063】
上記重合性官能基の導入反応における導入化合物の濃度は、上記開環付加重合で得られたハイパーブランチポリマーに対して、1質量%〜100質量%、好ましくは、10質量%〜100質量%、より好ましくは、30質量%〜100質量%である。
【0064】
上記エステル化反応は、好ましくは、不活性ガス(Ar、N)下にハイパーブランチポリマー溶液と触媒および重合禁止剤を混合させる。この時、ハイパーブランチポリマー溶液は、一度に混合させても、反応系に滴下されてもどちらでも良い。反応温度、25℃〜150℃、より好ましくは、25℃〜100℃において、0.5〜24時間、より好ましくは、3〜24時間反応させ、重合を完結させる。
【0065】
上記エステル化反応後のアクリル基またはメタクリル基(重合性官能基)の導入率は、ハイパーブランチポリマーの表面の全末端基の1%〜100%であることが好ましく、13%〜83%であることがより好ましく、最も好ましくは83%である。
重合性官能基の導入率は、得られたハイパーブランチポリマー誘導体の1H−NMR測定により求めることができる。ケミカルシフト値(δ値)5.5〜6.0のピーク(オレフィン炭素に結合する水素原子)面積とδ値3.2〜4.0のピーク(デナコール骨格(ポリグリセロール骨格)に結合する水素原子)面積の比より、以下の計算式(2)を用いて算出することができる。
【0066】
【数1】

R; 導入率 (%)
S; δ値5.6のピーク面積を1としたときの、δ値3.2〜4.0のピーク面積
【0067】
上記エステル化反応後,重合物から触媒をろ過,イオン交換,中和等によって除去することができる。この際,必要に応じて,重合物を好適な溶媒,例えば,トルエンに溶解させる。また,引き続き,イオン交換水によって重合物を精製してもよい。
【0068】
(光硬化樹脂組成物の調製)
本発明にかかる光硬化樹脂組成物は、(1)主剤となるポリマー成分(上記ハイパーブランチポリマー誘導体)、(2)光重合開始剤を有してなる。これら2成分の他に、(3)他のオリゴマーまたはモノマー、(4)その他の添加剤を有してもよい。これらの配合量に特に制限はないが、(1)成分と(3)成分の合計100質量部に対して(2)成分は0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1質量部である。0.1質量部より少ないと硬化性が悪化し、10質量部より多いと硬化物内に反応性の開始剤が残存するため耐久性が悪くなる。
【0069】
(光重合開始剤)
本発明の光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤としては、前記ハイパーブランチポリマー誘導体の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができるが、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
【0070】
上記ラジカル系光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから選択することができる。ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、チオキサントン誘導体、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルファイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、1−ヒドロキシーシクロヘキシル−フェニルケトン(Irgacure−184)。2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(Irgacure−651)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Irgacure−907)が、表面硬度及び表面硬化性が良好である点から好ましい。
【0071】
(他のモノマー)
本発明にかかる光硬化樹脂組成物には、硬化物性の調整や反応性希釈剤として単官能あるいは多官能モノマーを添加することができる。これら単官能あるいは多官能モノマーに特に制限はない。
【0072】
上記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、スチレン、N−ビニルピロリドン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性p−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAの(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAの(メタ)アクリレート、ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート、トリス[2−(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2−(アクリロイルオキシ)プロピル]イソシアヌレート、2,4,6−トリス(アクリロイルオキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(アクリロイルオキシプロポキシ)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0074】
(その他の成分)
本発明の光硬化性樹脂組成物には、更に、硬化物性を損なわない範囲で増感剤を含むことができる。増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、他の物質(例えば、ラジカル発生剤、酸発生剤等)と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルや酸等の有用基を発生することが可能である。増感剤としては、縮環系化合物、アミノフェニルケトン系化合物、多核芳香族類、酸性核を有するもの、塩基性核を有するもの、蛍光増白剤核を有するものから選択される少なくとも1種を含み、必要に応じて、その他の増感剤を含んでもよい。増感剤としては、感度向上の点でさらにヘテロ縮環系化合物、アミノベンゾフェノン系化合物が好ましく、特にヘテロ縮環系化合物が好ましい。
【0075】
(樹脂硬化物)
本発明に係る光硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化物としては、例えば、UVレジスト、液状ソルダレジスト、プリント基板用レジスト、電着レジスト、ドライフィルムレジスト、液晶用レジスト、ダイシングテープ,UV硬化型塗料、UV硬化型コーティング剤、UV硬化型インキ、光ディスクコーティング剤、光ファイバーコーティング剤、光硬化型接着剤、光造型樹脂、感光性印刷版、光重合型歯科材料が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の実施例を示す。以下に示す実施例は、本発明を説明するための好適な例示であり、なんら本発明を限定するものではない。
【0077】
(合成例1)ハイパーブランチポリマー(1)の合成
まず、攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた300mLの4つ口セパラブルフラスコに、グリセロールジグリシジルエーテル100g、炭酸カリウム15gを入れ、攪拌しながら、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、140℃のオイルバスで180分加温した。加温した後、反応混合物をメタノールに溶解させ、濾過により固形分を除去した後、溶媒を留去することで、粘性液体状のポリ(グリセロール−1,3−ジグリシジルエーテル)を得た。以下、この重合体をハイパーブランチポリマー(1)と記す。
【0078】
得られたハイパーブランチポリマー(1)の収率は99%であり、GPCによる重量平均分子量は2,000、MALLSによる絶対分子量は、32,000であった。
MALLSの値が、GPCの値の4.8倍と大きく異なっていることより、本ポリマー(1)は球状であると言える。
また、1H−NMR測定の結果、開環付加重合反応に関与しなかった分のエポキシ基が、理論量残存していることがわかった。
【0079】
(合成例2)ハイパーブランチポリマー(2)の合成
まず、攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた300mLの4つ口セパラブルフラスコに、グリセロールジグリシジルエーテル100g、炭酸カリウム15gを入れ、攪拌しながら、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、140℃のオイルバスで420分加温した。加温した後、反応混合物をメタノールに溶解させ、濾過により固形分を除去した後、溶媒を留去することで、粘性液体状のポリ(グリセロール−1,3−ジグリシジルエーテル)を得た。以下、この重合体をハイパーブランチポリマー(2)と記す。
【0080】
得られたハイパーブランチポリマー(2)の収率は99%であり、GPCによる重量平均分子量は6,000、MALLSによる絶対分子量は、32,000であった。
MALLSの値が、GPCの値の4.8倍と大きく異なっていることより、本ポリマー(2)は球状であると言える。
また、1H−NMR測定の結果、開環付加反応に関与しなかった分のエポキシ基が、理論量残存していることがわかった。
【0081】
(合成例3)ハイパーブランチポリマー(3)の合成
まず、攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた300mLの4つ口セパラブルフラスコに、グリセロールジグリシジルエーテル100gを入れ、攪拌しながら、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、オイルバスで140℃まで昇温させ、リン酸2.4gを8分割して15分間隔で添加した(計120分)後、60分加温した。室温に戻して1重量%の水酸化ナトリウム水溶液98gを添加し、乾燥させることにより粘性液体状のポリ(グリセロール−1,3−ジグリシジルエーテル)を得た。以下、このハイパーブランチポリマーをハイパーブランチポリマー(3)と記す。
【0082】
得られたハイパーブランチポリマー(3)の収率は99%であり、GPCによる重量平均分子量は6,000、MALLSによる絶対分子量は、34,000であった。
MALLSの値が、GPCの値の5.7倍と大きく異なっていることより、本ポリマー(3)は球状であると言える。
また、1H−NMR測定の結果、開環付加反応に関与しなかった分のエポキシ基が、理論量残存していることがわかった。
【0083】
(実施例1)ハイパーブランチポリマー誘導体(ポリマー成分(A1))の合成
前記合成例2で得たハイパーブランチポリマー(2):10gを100mLの3つ口フラスコ中でトルエン40mLに溶解し,アクリル酸クロリド(アクリル基導入化合物):0.60g、トリエチルアミン:4.9g、p−メトキシフェノール(重合禁止剤):0.05gを加えて、95℃条件下3時間加熱攪拌をした。得られた反応物にイオン交換水20gを添加し、再沈殿によりハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A1))を得た。このアクリレートポリマーのアクリル基(重合性官能基)の導入率は13%であった。
【0084】
(実施例2)ハイパーブランチポリマー誘導体(ポリマー成分(A2))の合成
前記合成例1で得たハイパーブランチポリマー(1):10gを100mLの3つ口フラスコ中でトルエン40mLに溶解し、メタクリル酸無水物(メタクリル基導入化合物):1.9g、テトラエチルアンモニウムブロミド(縮合触媒):0.05g、ハイドロキノン(重合禁止剤):0.05gを加えて、95℃条件下3時間加熱攪拌をした。得られた反応物にイオン交換水20gを添加し,再沈殿によりハイパーブランチポリマーメタクリレート(ポリマー成分(A2))を得た。このメタクリレートポリマーのメタクリル基(重合性官能基)の導入率は50%であった。
【0085】
(実施例3)ハイパーブランチポリマー誘導体(ポリマー成分(A3))の合成
前記合成例2で得たハイパーブランチポリマー(2):10gを100mLの3つ口フラスコ中でトルエン40mLに溶解し、メタクリル酸無水物(メタクリル基導入化合物):2.5g、テトラエチルアンモニウムブロミド(縮合触媒):0.05g、ハイドロキノン(重合禁止剤):0.05gを加えて、95℃条件下3時間加熱攪拌をした。得られた反応物にイオン交換水20gを添加し、再沈殿によりハイパーブランチポリマーメタクリレート(ポリマー成分(A3))を再沈殿により得た。このメタクリレートポリマーのメタクリル基(重合性官能基)の導入率は67%であった。
【0086】
(実施例4)ハイパーブランチポリマー誘導体(ポリマー成分(A4))の合成
前記合成例2により得たハイパーブランチポリマー(2):10gを100mLの3つ口フラスコ中でトルエン40mLに溶解し、メタクリル酸無水物(メタクリル基導入化合物):1.3g、テトラエチルアンモニウムブロミド(縮合触媒):0.05g、ハイドロキノン(重合禁止剤):0.05gを加えて、95℃条件下3時間加熱攪拌をした。得られた反応物にイオン交換水20gを添加し、再沈殿によりハイパーブランチポリマーメタクリレート(ポリマー成分(A4))を得た。このメタクリレートポリマーのメタクリル基(重合性官能基)の導入率は33%であった。
【0087】
(実施例5)ハイパーブランチポリマー誘導体(ポリマー成分(A5))の合成
前記合成例2で得たハイパーブランチポリマー(2):10gを100mLの3つ口フラスコ中でトルエン40mLに溶解し、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(メタクリル基導入化合物):7.6g、テトラエチルアンモニウムブロミド(縮合触媒):0.05g、ハイドロキノン(重合禁止剤):0.05gを加えて、95℃条件下3時間加熱攪拌をした。得られた反応物にイオン交換水20gを添加し、再沈殿によりハイパーブランチポリマーメタクリレート(ポリマー成分(A5))を得た。このメタクリレートポリマーのメタクリル基(重合性官能基)の導入率は83%であった。
【0088】
(実施例6)ハイパーブランチポリマー誘導体(ポリマー成分(A6))の合成
前記合成例3で得たハイパーブランチポリマー(3):10gを100mLの3つ口フラスコ中でトルエン40mLに溶解し、アクリル酸クロリド(アクリル基導入化合物):1.5g、トリエチルアミン:4.9G、p−メトキシフェノール(重合禁止剤):0.05gを加えて、95℃条件下3時間加熱攪拌をした。得られた反応物にイオン交換水20gを添加し、再沈殿によりハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A6))を得た。このアクリレートポリマーのアクリル基(重合性官能基)の導入率は33%であった。
【0089】
(実施例7)ハイパーブランチポリマー誘導体(ポリマー成分(A7))の合成
前記合成例3で得たハイパーブランチポリマー(3):10gを100mLの3つ口フラスコ中でトルエン40mLに溶解し、メタクリル酸クロリド(メタクリル基導入化合物):3.4g、トリエチルアミン:4.9g、p−メトキシフェノール(重合禁止剤):0.05gを加えて、95℃条件下3時間加熱攪拌をした。得られた反応物にイオン交換水20gを添加し、再沈殿によりハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A7))を得た。このアクリレートポリマーのアクリル基(重合性官能基)の導入率は66%であった。
【0090】
(実施例8)光硬化性樹脂組成物(R1)の調製
ポリマー成分として、実施例1で得たハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A1))を用いた。また、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分(A1):9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(R1)と記す。
【0091】
(実施例9)光硬化性樹脂組成物(R2)の調製
ポリマー成分として、実施例2で得たハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A2))を用いた。また、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分(A2):9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(R2)と記す。
【0092】
(実施例10)光硬化性樹脂組成物(R3)の調製
ポリマー成分として、実施例1で得たハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A3))を用いた。また、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分(A3):9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(R3)と記す。
【0093】
(実施例11)光硬化性樹脂組成物(R4)の調製
ポリマー成分として、実施例1で得たハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A4))を用いた。また、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分(A4):9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(R4)と記す。
【0094】
(実施例12)光硬化性樹脂組成物(R5)の調製
ポリマー成分として、実施例1で得たハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A5))を用いた。また、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分(A5):9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(R5)と記す。
【0095】
(実施例13)光硬化性樹脂組成物(R6)の調製
ポリマー成分として、実施例1で得たハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A6))を用いた。また、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分(A6):9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(R6)と記す。
【0096】
(実施例14)光硬化性樹脂組成物(R7)の調製
ポリマー成分として、実施例1で得たハイパーブランチポリマーアクリレート(ポリマー成分(A7))を用いた。また、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分(A7):9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(R7)と記す。
【0097】
(比較例1)
ポリマー成分として、ポリエステルポリオール−アクリル酸エステル(ダイセル−サイテック社製、商品名「Ebecryl−884」、重量平均分子量:3000)を用い、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分:9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(Rc1)と記す。
【0098】
(比較例2)
ポリマー成分として、ポリエチレングリコール−ジメタクリル酸エステル(第一工業製薬社製、商品名「PEM1000」、重量平均分子量:1800)を用い、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分:9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(Rc2)と記す。
【0099】
(比較例3)
ポリマー成分として、 ポリエチレングリコール−ジアクリル酸エステル(日本化薬工業社製、商品名「PEG400−DA」、重量平均分子量:600)を用い、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分:9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(Rc3)と記す。
【0100】
(比較例4)
ポリマー成分として、ポリエステルポリオール−ヘキサアクリル酸エステル(新日本化薬社製、商品名「DPCA−120」、重量平均分子量:1800)を用い、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分:9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(Rc4)と記す。
【0101】
(比較例5)
ポリマー成分として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製、商品名「DPHA」、重量平均分子量:592)を用い、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分:9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(Rc5)と記す。
【0102】
(比較例6)
ポリマー成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成社製、商品名「TMP3A」、重量平均分子量:310)を用い、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「Irgacure−184(商品名)」を用いた。
上記ポリマー成分:9.9gに上記光重合開始剤:0.1gを溶解して、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。以下、この紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物(Rc6)と記す。
【0103】
(実施例15)樹脂硬化膜の作製
上記光硬化性樹脂組成物(R1)をバーコーターによりガラス基板(厚さ2.5mm)上に塗布して、100mm×100mmの広さに、厚さ9.2μmの塗膜を形成した。
上記塗膜に、高圧水銀灯(セン特殊光源社製、商品名「HL100G」、出力;100W、照射高さ;3cm、平均照射エネルギー;14mJ/cm)由来の紫外線を15分間照射(総エネルギー量;12000mJ/m)し、樹脂硬化膜(以下、樹脂硬化膜(M1)と記す)を得た。
【0104】
(実施例16〜21)樹脂硬化膜の作製
光硬化性樹脂組成物(R1)の替わりに上記光硬化性樹脂組成物(R2)〜(R7)をそれぞれ用いたこと以外、上記実施例13と同様にして、樹脂硬化膜(M2)〜(M7)を作製した。
【0105】
(比較例7〜12)樹脂硬化膜の作製
光硬化性樹脂組成物(R1)の替わりに上記光硬化性樹脂組成物(Rc1)〜(Rc6)をそれぞれ用いたこと以外、上記実施例13と同様にして、樹脂硬化膜(Mc1)〜(Mc6)を作製した。
【0106】
(光硬化性樹脂組成物の硬化速度評価)
各例の光硬化性樹脂組成物をバーコーターによりガラス基板(厚さ2.5mm)上に塗布し、100mm×100mmの範囲に厚さ9.2μmの塗膜を得た。
得られた各塗膜に高圧水銀灯(セン特殊光源社製、商品名「HL100G」、出力;100W、照射高さ;3cm、平均照射エネルギー;14mJ/cm)由来の紫外線を照射し、目視判定により各塗膜表面に指紋が付着しなくなる最小の紫外線照射時間(タックフリータイム(秒))を測定し、この測定値を硬化速度値として評価した。
測定結果を下記(表1)に示した。
【0107】
(光硬化性樹脂組成物塗膜の収縮性評価)
各例の光硬化性樹脂組成物(R1〜R6、Rc1〜Rc6)をアルミニウム製型枠(アズワン株式会社製、商品名「アルミトレー丸型」、直径98mm)へ1.7g流し込み、これに高圧水銀灯(セン特殊光源社製、商品名「HL100G」、出力;100W、照射高さ;3cm、平均照射エネルギー;14mJ/cm)由来の紫外線を照射(15分間、総エネルギー量12000mJ/m)し、樹脂硬化物を得た。
【0108】
(硬化後比重)
得られた各樹脂硬化物を2mm角の小片に砕き、これをバイアル管(National Scientific社製、商品名「Target DP Vials C4000−1W)に入れて、密栓した。各バイアル管にその中の各硬化樹脂小片の不溶溶剤であるクロロホルム(関東化学社製、商品名「07278−4B」;原子吸光分析用)を1.0mL添加し、続いてヘキサン(関東化学社製、製品コード「18041−81」、鹿1級)を一定量添加してよく混合し、各硬化樹脂小片の溶剤中における浮き-沈みの境目を目視で測定した。このときのクロロホルムとヘキサンの添加量の比から、混合溶剤の比重を算出し、その算出値から各硬化樹脂小片の比重(硬化後)を求めた。
測定された各例の硬化後の比重を、下記(表1)に示した。
【0109】
(硬化前比重)
各例の光硬化性樹脂組成物の硬化前の比重を、ワードン法により求めた。
上記各例の光硬化性樹脂組成物(R1〜R6、Rc1〜Rc6)を、予め重量のわかっている25mLメスフラスコ(本体と蓋の全重量W0g)の最上部まで入れ、25℃の恒温槽に30分間静置した。その後、スリ付の蓋をし、あふれた液を十分に拭き取って全重量(m25g)を小数点以下第四位まで測定した。
次に、同フラスコに超純水を最上部まで入れ、同様に25℃の恒温槽に30分間静置し、その後スリ付の蓋をし、あふれた液を十分に拭き取って全重量(Mcg)を小数点以下第四位まで測定した。
以下の計算式(3)より、硬化前の各光硬化性樹脂組成物の比重を算出した。得られた各光硬化性樹脂組成物の硬化前の比重を下記(表1)に示した。
【0110】
【数2】

db = 硬化前比重(g/cm3)
ms = 樹脂組成物を含むフラスコ全重量(g)
m0 = 空のフラスコ全重量(g)
Mc = 超純水を含むフラスコ全重量(g)
Dw = 雰囲気温度における水の比重(g/cm3)
【0111】
(硬化収縮率の算出)
上記硬化前後の比重の値を下記計算式(4)に当てはめて、各光硬化性樹脂組成物の硬化収縮率Dを算出した。得られた各収縮率を下記(表1)に示した。
【0112】
【数3】

db; 硬化前の比重[g/cm3]
da; 硬化後の比重[g/cm3]
【0113】
(樹脂硬化膜の硬度評価)
以下の鉛筆硬度試験法により各樹脂硬化膜(M1〜M7(実施例)、Mc1〜Mc6(比較例))の硬度を評価した。
JIS K5600−5−4の方法に従い、樹脂硬化膜表面に、順次に硬度を増しつつ鉛筆の芯を押し付けることによって「鉛筆硬度」を測定した。「鉛筆硬度」は、上記押し付けにより樹脂硬化膜表面に圧痕が生じるまで鉛筆芯の硬さを増し行き、目視判定で圧痕が生じなかった最大の鉛筆の硬さとした。
鉛筆は「Hi−uni](MITSU−BISHI製、芯硬度:HB,F,H,2H,3H,4H,5H)を用い、試験条件は、鉛筆の芯を膜面に対して45度の角度で当て、荷重750gで、引っ掻き速度1mm/sとした。
測定結果を下記(表1)に示した。
【0114】
【表1】

【0115】
上述の評価結果を、使用した光重合性樹脂化合物を得た実施例1〜7および比較例1〜6とそれらに用いたポリマー成分に対応させて再掲すると、以下の(表2)のようになる。
各特性の評価の基準としては、鉛筆硬度がB以上、タックフリータイムが1200秒以下、硬化収縮率が10%以下であれば、優良であると判断できる。
【0116】
【表2】

【0117】
上記表から明らかなように、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、高い硬度の樹脂硬化物を作製することが可能であり、しかも、硬化速度が高く、低収縮性に優れていることが分かる。これに対して、比較例の光硬化性樹脂組成物は、いずれかの特性が不良である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上のように、本発明にかかるハイパーブランチポリマー誘導体および該誘導体をポリマー成分として有する光硬化性樹脂組成物は、高硬度な樹脂硬化膜を短い時間で、低い収縮率を伴って得るための材料として有用であり、特に、コーティング剤、塗料、接着剤、印刷インキなどの樹脂材料に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂組成物のポリマー成分に用いるハイパーブランチポリマー誘導体であって、
下記化学式(I)
【化1】

で示される化合物を含むポリグリシジルエーテル化合物を塩基性触媒または酸性触媒の存在下で付加重合させることにより得られた球状ハイパーブランチポリマーの表面末端基にアクリル基又はメタアクリル基が導入されてなるハイパーブランチポリマー誘導体。
【請求項2】
前記ハイパーブランチポリマーの多角度光散乱検出器(multi-angle laser light scattering)によって測定された絶対分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography)によって測定された換算分子量(重量平均分子量)の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のハイパーブランチポリマー誘導体。
【請求項3】
前記アクリル基又はメタアクリル基の導入率が1%〜100%であることを特徴とする請求項1または2に記載のハイパーブランチポリマー誘導体。
【請求項4】
(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイパーブランチポリマー誘導体、(B)光重合開始剤を有してなる光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物。

【公開番号】特開2010−150325(P2010−150325A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327770(P2008−327770)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】