説明

ハイブリット屋上水槽

【課題】屋上水槽の内部で水温躍層が促進されるよう効率良く自然原理並びに自然エネルギーを利用して加温したり、温水と冷水を別々に取水可能とする。
【解決手段】屋上水槽の内部で、上部がより高温で、下部がより低温になる水温躍層の原理が形成されるように、下部の低水温部に静かに水道水を給水するので、従来のように既に形成された水温躍層を攪拌し破壊するといった問題が解消される。そのほか、上部の高温水層からの温水の取水と下部の低温水部からの冷水の取水が行えるように、2箇所の取水口を備える、水槽の高温水層外面に塗料等の塗布層を備えるか及び/又は赤外線(熱線)は透過させて風雨を遮るための透明のガラス板、合成樹脂板若しくは合成樹脂シートから成る遮断層を設ける、冷水を確保すべき水槽下部が太陽光線に晒されないように遮光機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道の断水時に備えて生活用水を貯水する屋上水槽の内部の水が、太陽熱エネルギーなどに由来する自然エネルギーで水温躍層が促進されるようにした屋上水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、従来の屋上水槽1は生活用水さえ確保されればよく、太陽熱で暖められた温水を積極的な利用していない。すなわち、水槽1への給水は、水温の高い上部水面2へ水道水(冷水)をフロートバルブから吹き出す結果、温水部を攪拌することとなり、水温を下げてしまう。
また、水槽1からの取水は、水温の低い下部に設けられた取水口3しかなく、温水と冷水の選択取水が出来ない為、生ぬるい水が供給されることとなる。なお、取水口3、取水管4を経て取水された水は、ボイラー5で温められたり、そのまま使用される。6は水道管である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−251580
【特許文献2】特開平8−113290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対し、特許文献1のように、貯水槽自体が内部の貯留水と協同してレンズして作用可能とし、光→エネルギー変換素子に照射したり、特許文献2のように、屋上水槽が直射日光や風雨に晒されないように、プラスチックフォーム材やセルラーラバー材からなるカバーをタンクの外周面に対して添装状態に取付けることが提案されている。
しかしながら、このような構成でも、屋上水槽中の水を効率良く自然エネルギーを利用して加温したり、温水と冷水を別々に取水することはできない。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、屋上水槽の内部で水温躍層が促進されるよう効率良く自然原理並びに自然エネルギーを利用して加温したり、温水と冷水を別々に取水可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1は、水槽の内部で、上部がより高温で、下部がより低温になる水温躍層の原理が形成されるように、取水によって水槽内の水位が低下したことを検知した時に給水すべく、水道水を下部の低水温部に静かに給水することを特徴とする水槽の制御方法である。上方から太陽光を受けることによって、水槽内は上部がより高温になっているので、水温躍層が実現されている。
【0006】
請求項2以下は請求項1に記載の方法発明を実施する装置の発明であって、水槽の内部で、上部がより高温の水層で、下部がより低温になる水温躍層の原理が形成されるように、取水によって水槽内の水位が低下したことを検知した時に給水すべく、水道水を下部の低水温部に静かに給水するように給水口を下部に備えることを特徴とする水槽である。
検知手段のいかんは問わないし、機械的に検知して開弁する手段も光学的や電気的に検知して開弁する手段も含まれるものとする。なお、給水は公共の水道管で行われるものとする。
【0007】
請求項3は、上部の高温水層からの温水の取水と下部の低温水部からの冷水の取水が行えるように、2箇所の取水口を備えていることを特徴とする請求項2に記載の水槽である。
上部の高温水層から取水した温水は給湯ボイラーやシャワーに供給してもよいし、下部の低温水部から取水した冷水は、そのまま冷水として使用したりシャワーで混ぜたりする場合に好都合である。
【0008】
請求項4は、効率よく温水の生成と保温ができるように、水槽の高温水層外面に塗料等の塗布層を備えるか及び/又は赤外線(熱線)は透過させて風雨を遮るための透明のガラス板、合成樹脂板若しくは合成樹脂シートから成る遮断層を設けて水槽と前記遮断層との空間を確保可能としたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水槽である。
塗料は、熱を吸収し易いように黒系の色が適している。遮断層は、窓を閉め切った車内が高温になるのを利用している。この両者を併用するとなおよい。
【0009】
請求項5は、冷水を確保すべき水槽下部が太陽光線に晒されないように遮光機能を備えたことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載の水槽である。
例えば鍔部やフランジなどの遮光手段を設けたりして、太陽熱で水槽下部が加熱されるのを防ぐことと、風通しを良くして直接冷風に晒されることによって、冷却効果が発揮出来るものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の方法によると、水槽の内部で、上部がより高温で、下部がより低温になる水温躍層の原理が形成されるように、下部の低水温部に静かに水道水を給水するので、従来のように、水道水(冷水)をフロートバルブより上部の高温水域に吹き出して、既に形成された水温躍層を攪拌し破壊するといった問題が解消される。水面への給水口からの吹き出しでない為、震動に起因するフロートバルブの故障も少なくなる。
【0011】
請求項2によると、水槽の内部で、上部がより高温で、下部がより低温になる水温躍層の原理が形成されるように、下部の低水温部に静かに水道水を給水するので、従来のように、フロートバルブより上部の高温水域に水道水(冷水)を吹き出して、既に形成された水温躍層を攪拌し破壊するといった問題が解消される。水槽の上部は太陽熱を受けて加熱されているので、水温躍層が起き易くなっている。
【0012】
請求項3のように、上部の高温水層からの温水の取水と下部の低温水部からの冷水の取水が行えるように、2箇所の取水口を備えているので、上部の高温水層から取水した温水は給湯ボイラーやシャワーに供給し、下部の低温水部から取水した冷水は、そのまま冷水として使用したり、シャワーで湯と混ぜたりできる。
【0013】
請求項4によると、水槽の高温水層外面に黒色塗料等の吸熱塗布層を備えるか及び/又は赤外線は透過させて風雨を遮るための透明のガラス板、合成樹脂板若しくは合成樹脂シートから成る遮断層を設けて水槽と前記遮断層との空間を確保可能としたので、効率よく温水の生成と保温ができる。すなわち、遮断層と水槽の間に出来た空間により、暖まった水槽が冷風に直接晒されることがない為、水槽の冷却防止による保温効果が得られる。
【0014】
請求項5によると、冷水を確保すべき水槽下部が太陽光線に晒されないように遮光機能を備えているので、水槽下部の低水温部が加熱されて水温躍層が水槽下部から破壊されるという問題が解消される。さらに、風通しに晒されるので、水槽下部が冷却され水温躍層の生成が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の屋上水槽の配管を示す図である。
【図2】本発明による水温躍層型のハイブリット屋上水槽の配管を示す図である。
【図3】本発明による水温躍層型のハイブリット屋上水槽の詳細を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明によるハイブリット屋上水槽が実際上どのように具体化されるか実施形態を詳述する。図2は、本発明による水温躍層型ハイブリット屋上水槽の配管を示す図であり、主要部だけを示している。水温躍層の原理を利用すべく、図2では、屋上水槽1’の内部で、上部がより高温の高温水層71が形成され、下部がより低温の低水温層72が形成されるように、水温躍層7の原理が作用する。
【0017】
この水温躍層の作用を促進すべく、本発明では数々の工夫がなされている。すなわち、従来は屋上水槽から取水して水位が低下したことをフロートバルブで検出した際は、上部のフロートバルブから上部の高温水に吹き出して攪拌するので、すでに形成された水温躍層が破壊されるとことになった。
これに対し、本発明では、図2のように、水道管6で下部の低水温部72に静かに給水するので、屋上水槽1’の上部が少なくとも太陽熱で自然に加熱されることと相まって、従来のように水温躍層7が破壊されることはない。なお、水槽1’は、地上に設置することも可能である。
静かに給水するために図3の実施形態では、給水管61の開口面積より多数の出口の総面積を大きくした抑勢出口62を形成してある。上方向への水流を抑制する傘や邪魔板を設けると、上向き水流の抑勢がより効果的に行われる。
なお、水位検出は、従来のようにフロートバルブ等で機械的に行なっても良いが、光学的、電気的に検出してもよい。図3のようにフロートバルブfで検出する場合は、屋上水槽1’の外の弁を開放した際に水が低水温部72への給水管61側に出るようにすれば足りる。
【0018】
屋上水槽1’からの取水に際しては、冷水の取水に備えて冷水管41を設け、また上部の高温水層71からの取水に備えて高温水管42を設けてある。高温水の取水口の高さは、対流を考慮すると、できるだけ高い位置が望ましいが、屋上水槽1’から取水した場合の最低水位よりも多少低い位置となる。
取水した高温水は、給湯ボイラー5に供給して更に加熱してもよい。切り換えバルブVは非常用であり、常時は閉じておき、給湯ボイラー5が使えないなどの非常時に開けて冷水と混ぜて使用する。
結局、上部の高温水層71からの高温水の取水管42と下部の低温水部72からの冷水管41に通じる2つの取水口42h、41hを屋上水槽1’に備えている。高温水管42は、折角加熱した高温水が冷めないように、断熱被覆を行なうのがよい。
【0019】
図2の屋上水槽1’は、効率よく温水の生成と保温ができるように、水槽1’の高温水層71の外面に塗料等の塗布層8を備えている。この塗料は、熱を吸収し易いように黒系の色が適している。
低水温部72の外面は、温水の生成と保温用の塗料は塗布しない。冷水の生成と水温躍層の形成に支障を来すからである。
同じく温水の生成と保温目的から、図3の実施形態では、赤外線(熱線)を透過させ、風雨は遮るための透明のガラス板、合成樹脂板若しくは合成樹脂シートから成る遮断層9を設けてある。その結果、水槽1’と前記遮断層9との断熱空間9’を確保できる。
ガラス板や合成樹脂板、合成樹脂シートは、強風にも耐えられるように強化する必要からコスト高となるので、エアクッションで屋上水槽1’の外面を覆うこともできる。エアクッションは複数層にしてもよい。なお、断熱空間9’の形成と、前記塗布層8の形成を併用するとなお効果的である。
【0020】
10は小型の風力発電装置であり、その電力によって水槽1’中の電熱ヒータHを作動させ、槽内の高温水層71を加熱して水温躍層7の形成を促進する。電力を熱に変換するので、風力や風速が変化して発電機の出力が変動しても支障は生じない。
また太陽電池で発電した電力を前記の電熱ヒータHに供給してもよいし、この太陽電池と前記の風力発電を併用して加熱してもよい。
屋上水槽1’内の下部の低温水部72の領域が高温になって水温躍層7を破壊しないように、水槽1’下部が太陽光線に晒されないように、庇ないし鍔部やフランジ11などを設けて太陽光を遮るための遮光機能を備えている。
【0021】
なお、Ofはオーバーフロー水管を示し、屋上水槽1’が異常増水したときに備えたものである。dは、ドレンバルブである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上説明したように、この発明によれば、屋上水槽への給水手段と温水・冷水の選択取水手段、また、保温手段により、商用電力や化石燃料を使用しない快適な貯留水の利活用が出来る。さらに、自然エネルギーの有効活用によりCO2削減と給湯燃費の節減に寄与する効果がある。
【符号の説明】
【0023】
1・1’ 屋上水槽
f フロートバルブ
41 冷水管
42 高温水管
5 給湯ボイラー
V 切り換えバルブ
6 水道管
7 水温躍層
71 高温水層
72 低水温層
8 吸熱塗布層
9 遮断層
9’ 断熱空間
10 小型の風力発電装置
H 電熱ヒータ
11 遮光フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の内部で、上部がより高温で、下部がより低温になる水温躍層の原理が形成されるように、取水によって水槽内の水位が低下したことを検知した時に給水すべく、水道水を下部の低水温部に静かに給水することを特徴とする水槽の制御方法。
【請求項2】
水槽の内部で、上部がより高温の水層で、下部がより低温になる水温躍層の原理が形成されるように、取水によって水槽内の水位が低下したことを検知した時に給水すべく、水道水を下部の低水温部に静かに給水するように給水口を下部に備えることを特徴とする水槽。
【請求項3】
上部の高温水層からの温水の取水と下部の低温水部からの冷水の取水が行えるように、2箇所の取水口を備えていることを特徴とする請求項2に記載の水槽。
【請求項4】
効率よく温水の生成と保温ができるように、水槽の高温水層外面に塗料等の塗布層を備えるか及び/又は赤外線は透過させて風雨を遮るための透明のガラス板、合成樹脂板若しくは合成樹脂シートから成る遮断層を設けて水槽と前記遮断層との空間を確保可能としたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水槽。
【請求項5】
冷水を確保すべき水槽下部が太陽光線に晒されないように遮光機能を備えたことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載の水槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−102960(P2012−102960A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253394(P2010−253394)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(500048100)
【Fターム(参考)】