説明

ハイブリッド自動車および電動クーラの電源制御方法

【課題】バッテリ保護を十分に行ないつつアイドルストップ中の電動クーラの運転時間を調整すること。
【解決手段】アイドルストップ状態が所定のt時間以上経過したときには電動クーラ22の運転をいったん停止させるタイマ33と、アイドルストップ状態を契機としてバッテリ14の充電状態を示す充電状態値を記録するSOC記録部31と、バッテリ14の温度を測定する温度センサ30、温度情報収集部32と、SOC記録部31における前回の記録結果と今回の記録結果とから導出される充電状態値の増加傾向または減少傾向に基づきタイマ33に時間を設定すると仮定した所定の時間t1を演算し、温度情報収集部32の測定結果に基づきタイマ33に時間を設定すると仮定した所定の時間t2を演算し、時間t1または時間t2のうちのいずれか小さい方の時間をt時間として設定するタイマ設定部34とを有する車両1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車および電動クーラの電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機とエンジンとが協働して走行するハイブリッド自動車では、エンジンを停止させて電動機のみにより走行中であってもクーラが動作するように、電気的に駆動される電動クーラを装備するものがある。
【0003】
ハイブリッド自動車では、バッテリに充電が行われるのは、エンジンの稼働中またはエンジン停止中であっても走行状態を継続できる下り坂などである。一方、信号待ちなどのアイドルストップ中は、エンジンが停止していると共に、車両も停止しているため、充電は全く行われない。
【0004】
このようなアイドルストップ中であっても車内温度の上昇を避けるためには、電動クーラは停止させないことが好ましい。しかしながら、アイドルストップ中における電動クーラの使用は、バッテリを放電させる一方である。
【0005】
そのため、たとえば特許文献1に係る発明では、バッテリの残量に応じてエンジン停止時点から電動クーラの運転を継続させるタイマの設定時間を可変させる提案がなされている。特許文献1に係る発明では、図5に示すように、バッテリ残量が50%〜90%の領域において、タイマの設定時間を可変させている。これにより、図6に示すように、アイドルストップが行われるとタイマの設定時間後に電動クーラがON状態からOFF状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−108651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に係る発明のように、アイドルストップ中においても運転を続ける電動クーラを、タイマを用いて所定の時間後に停止させることはバッテリ保護の観点からみて有用である。しかしながら、単に、バッテリ残量のみによってタイマ時間を設定することは、バッテリの状況を的確に反映しているとは言えない。
【0008】
たとえば特許文献1に係る発明では、バッテリ残量が70%付近にある場合、50%付近であったバッテリ残量が上昇して70%付近になったのか、それとも90%付近であったバッテリ残量が減少して70%付近になったのかを判断していない。
【0009】
ここで仮に、90%付近であったバッテリ残量が減少して70%付近になったとすれば、バッテリ残量は減少傾向である。このような減少傾向下では、電動クーラを短時間で停止させることによりバッテリの電力をなるべく消費させず、バッテリ残量の低下を遅らせることが好ましい。反対に、50%付近であったバッテリ残量が上昇して70%付近になったとすれば、バッテリ残量は上昇傾向である。このような上昇傾向下では、バッテリの電力を消費しても直ぐにバッテリ残量の回復が見込まれるため電動クーラの運転を続けても問題はない。
【0010】
したがって、単に、バッテリ残量のみに着目することにより、上述のタイマの時間設定を可変することは、バッテリ保護の観点からみて必ずしも十分ではない。
【0011】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、バッテリ保護を十分に行ないつつアイドルストップ中の電動クーラの運転時間を調整することができるハイブリッド自動車および電動クーラの電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの観点は、ハイブリッド自動車としての観点である。すなわち、本発明のハイブリッド自動車は、エンジンと電動機とが協働して走行し、電動機に電源を供給するバッテリからの電源の供給を受けて動作する電動クーラを有するハイブリッド自動車において、電動クーラは、アイドルストップ状態においても運転が可能であり、アイドルストップ状態が所定のt時間以上経過したときには、電動クーラの運転をいったん停止させるタイマ手段と、アイドルストップ状態を契機としてバッテリの充電状態を示す充電状態値を記録する充電状態値記録手段と、バッテリの温度を測定する温度測定手段と、充電状態値記録手段における前回の記録結果と今回の記録結果とから導出される充電状態値の増加傾向または減少傾向に基づきタイマ手段に時間を設定すると仮定した所定の時間t1を演算し、温度測定手段の測定結果に基づきタイマ手段に時間を設定すると仮定した所定の時間t2を演算し、時間t1または時間t2のうちのいずれか小さい方の時間をt時間として設定するタイマ設定手段と、を有するものである。
【0013】
本発明の他の観点は、電動クーラの電源制御方法としての観点である。すなわち、本発明の電動クーラの電源制御方法は、エンジンと電動機とが協働して走行し、電動機に電源を供給するバッテリからの電源の供給を受けて動作する電動クーラを有するハイブリッド自動車が実行する電動クーラの電源制御方法において、電動クーラは、アイドルストップ状態においても運転が可能であり、アイドルストップ状態が所定のt時間以上経過したときには、電動クーラの運転をいったん停止させるステップを実行するのに際し、アイドルストップ状態を契機としてバッテリの充電状態を示す充電状態値を記録する充電状態値記録ステップと、バッテリの温度を測定する温度測定ステップと、充電状態値記録ステップの処理における前回の記録結果と今回の記録結果とから導出される充電状態値の増加傾向または減少傾向に基づきいったん停止させるステップを実行すると仮定した所定の時間t1を演算し、温度測定ステップの測定結果に基づきいったん停止させるステップを実行すると仮定した所定の時間t2を演算し、時間t1または時間t2のうちのいずれか小さい方の時間をt時間として設定する時間設定ステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バッテリ保護を十分に行ないつつアイドルストップ中の電動クーラの運転時間を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド自動車の要部構成図である。
【図2】図1の時間設定部で用いるSOC変化量とタイマの設定時間との関係を表すグラフである。
【図3】図1の時間設定部で用いるバッテリ温度とタイマ設定時間との関係を表すグラフである。
【図4】図1の電動クーラECUの動作手順を示すフローチャートである。
【図5】特許文献1に係る発明で用いるバッテリ残量とタイマ設定時間との関係を表すグラフである。
【図6】特許文献1に係る発明における電動クーラ運転状態とタイマ設定時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の実施の形態に係るハイブリッド自動車1の構成について)
本発明の実施の形態に係るハイブリッド自動車1の構成について図1を参照して説明する。図1は、ハイブリッド自動車1の要部構成図である。なお、以下では説明を簡単にするためにハイブリッド自動車1を単に車両1と呼ぶことにする。
【0017】
車両1は、エンジン10、エンジンECU(Electric Control Unit)11、HV(Hybrid Vehicle)回転機12、HVインバータ13、バッテリ14−1〜14−4(ただしバッテリ14−1〜14−4をまとめて説明する際にはバッテリ14と記す。)、電池ECU15−1〜15−4(ただし電池ECU15−1〜15−4をまとめて説明する際には電池ECU15と記す。)、電動クーラ用インバータ16−1,16−2(ただし電動クーラ用インバータ16−1,16−2をまとめて説明する際には電動クーラ用インバータ16と記す。)、コンプレッサ17−1,17−2(ただしコンプレッサ17−1,17−2をまとめて説明する際にはコンプレッサ17と記す。)、電池ゲートウェイECU18、電動クーラ用インバータECU19、HV−ECU20、電動クーラECU21、電動クーラ22−1,22−2(ただし電動クーラ22−1,22−2をまとめて説明する際には電動クーラ22と記す。)によって構成されている。
【0018】
エンジン10は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンなどの内燃機関であり、車両1においてはHV回転機12と協働して車両1を走行させる。
【0019】
エンジンECU11は、エンジン10を制御するためのコンピュータ装置であり、HV−ECU20と連携してエンジン10の制御を行う。
【0020】
HV回転機12は、電動機または発電機の双方の機能を有するものである。エンジン10が運転中あるいは車両1が下り坂を走行中である場合、HV回転機12は、発電機として動作する。また、エンジン10が休止中あるいはHV回転機12がエンジン10をアシストする場合、HV回転機12は、電動機として動作する。
【0021】
HVインバータ13は、HV回転機12が電動機として動作する場合、バッテリ14の直流電力を交流電力に変換してHV回転機12に供給する。なお、HV回転機12が発電機として動作している場合、HVインバータ13は、HV回転機12が発生する交流電力を直流電力に変換してバッテリ14に供給する。すなわち、HVインバータ13は、整流器としての役割も有する。
【0022】
バッテリ14は、HV回転機12および電動クーラ22のコンプレッサ17に対して電力を供給する。また、HV回転機12が発電機として動作している場合、HV回転機12が発生する電力によって充電が行われる。
【0023】
図1では4つのバッテリ14−1〜14−4に分かれている。これをHVインバータ13側からみると、バッテリ14−1とバッテリ14−3とが直列に接続されて1つのバッテリ対を構成し、バッテリ14−2とバッテリ14−4とが直列に接続されてもう1つのバッテリ対を構成している。これらの2つのバッテリ対が並列に接続されてHVインバータ13に接続されている。したがって、HVインバータ13には、2つのバッテリ14−1,14−3(または14−2,14−4)の電圧の和に相当する電圧が印加される。
【0024】
一方、電動クーラ用インバータ16−1,16−2側からみると、電動クーラ用インバータ16−1にはバッテリ14−1と14−2とが並列に接続され、電動クーラ用インバータ16−2にはバッテリ14−3と14−4とが並列に接続されている。したがって、電動クーラ用インバータ16−1,16−2にはそれぞれ1つのバッテリ14−1(または14−2),14−3(または14−4)の電圧に相当する電圧が印加される。
【0025】
このように4つのバッテリ14−1〜14−4を組み合わせることによって、異なる電圧値を生成し、異なる電圧値をHVインバータ13および電動クーラ用インバータ16にそれぞれ供給することができる。
【0026】
電池ECU15は、バッテリ14の充放電を制御するコンピュータ装置である。電池ECU15は、バッテリ14の充電状態値(以下では、これをSOC(State Of Charge)と呼ぶ)をHV−ECU20に伝達したり、HV−ECU20からの制御指示に基づいてバッテリ14の充放電を制御する。
【0027】
電動クーラ用インバータ16は、バッテリ14の直流電力を交流電力に変換してコンプレッサ17に供給する。
【0028】
電池ゲートウェイECU18は、HV−ECU20からのバッテリ14の制御指示を受け付けて電池ECU15に当該制御指示を伝達する。
【0029】
電動クーラ用インバータECU19は、電動クーラ用インバータ16を制御するためのコンピュータ装置である。電動クーラ用インバータECU19は、HV−ECU20からの制御指示を受けて、電動クーラ用インバータ16を制御する。あるいは、電動クーラ用インバータECU19は、電動クーラECU21から電動クーラ22が設置されている車内の温度情報を伝達されることにより、電動クーラ用インバータ16を制御する。これにより、電動クーラ用インバータECU19は、コンプレッサ17の稼働量を制御する。なお、電動クーラ22の稼働量のほとんどは、コンプレッサ17の稼働量である。
【0030】
HV−ECU20は、エンジンECU11、電池ゲートウェイECU18、電動クーラ用インバータECU19および電動クーラECU21の連携制御を行うためのコンピュータ装置である。
【0031】
電動クーラECU21は、HV−ECU20からの制御指示を受けて電動クーラ22の風量を制御すると共に、電動クーラ22が設置されている車内の温度情報をセンサ(不図示)で感知し、HV−ECU20および電動クーラ用インバータECU19に伝達する。
【0032】
電動クーラ22は、コンプレッサ17から冷媒を供給されて車内を冷却すると共に、車内の温度をセンサ(不図示)により測定し、その温度情報を電動クーラECU21に伝達する。
【0033】
さらに、バッテリ14には、温度センサ30(請求項でいう温度測定手段の一部)が取り付けられている。温度センサ30はバッテリ14の温度を計測する。温度センサ30の計測結果は、電池ECU15によって取り込まれる。
【0034】
また、電池ゲートウェイECU18には、SOC記録部31(請求項でいう充電状態値記録手段)および温度情報収集部32(請求項でいう温度測定手段の一部)が備えられている。
【0035】
SOC記録部31は、電池ECU15から電池ゲートウェイECU18に伝達されるSOC値を記録する。
【0036】
温度情報収集部32は、電池ECU15から電池ゲートウェイECU18に伝達される温度センサ30が計測したバッテリ14の温度情報を収集する。
【0037】
また、電動クーラECU21には、タイマ33(請求項でいうタイマ手段)および時間設定部34(請求項でいうタイマ設定手段)が備えられている。
【0038】
タイマ33は、車両1がアイドルストップを開始した時点から計時を開始し、時間設定部34によって設定された所定の時間tが経過してもなおエンジン10が始動しない場合に電動クーラ22の運転を停止させる。なお、時間tは、たとえば3分間から5分間程度である。
【0039】
時間設定部34は、後述する手順にしたがってタイマ33に時間を設定する。
【0040】
(電動クーラECU21の動作について)
次に、電動クーラECU21の動作について図2〜図4を参照して説明する。以下では、電動クーラECU21が有するタイマ33および時間設定部34の動作について説明する。
【0041】
図2は、時間設定部34で用いるSOC変化量と時間t1との関係を表すグラフである。図2では、横軸にSOC変化量をとり、縦軸に時間t1をとる。ここで、時間t1とは、SOC変化量に基づきタイマ33に時間を設定すると仮定した時間である。なお、a,b,cはそれぞれ“0”より大きな数値である。また、a<bである。図3は、時間設定部34で用いるバッテリ温度と時間tとの関係を表すグラフである。図3では、横軸に温度をとり、縦軸に時間tをとる。ここで、時間tとは、バッテリ14の温度に基づきタイマ33に時間を設定すると仮定した時間である。なお、d,e,p,q,rはそれぞれ“0”より大きな数値である。また、d<e,p<q<rである。図4は、電動クーラECU21の動作手順を示すフローチャートである。なお、設定時間tが3分間から5分間程度なので、時間t1およびtも同じ範囲で演算される。
【0042】
時間設定部34は、SOC変化量に応じて時間t1を演算する。SOC変化量は、前回記録したSOC値と今回記録したSOC値とを比較した結果である。たとえば[(今回記録したSOC値)−(前回記録したSOC値)]である。すなわち、今回記録したSOC値と前回記録したSOC値が同じであれば値は図2の“0”になる。また、今回記録したSOC値が前回記録したSOC値よりも大きければ値は図2の“0〜+c”側になる。反対に、今回記録したSOC値が前回記録したSOC値よりも小さければ値は図2の“−c〜0”側になる。
【0043】
すなわち、値が図2の“0〜+c”側にある場合、今回記録したSOC値が前回記録したSOC値よりも大きいのであるからSOC値は増加傾向にあることがわかる。また、値が図2の“−c〜0”側にある場合、今回記録したSOC値が前回記録したSOC値よりも小さいのであるからSOC値は減少傾向にあることがわかる。
【0044】
ここで、SOC値が増加傾向にある状況を考えてみると、「車両1がエンジン10によって走行している時間が多い。もしくは、車両1が下り坂を走行中でありHV回転機12による回生が多い。」などの状況が考えられる。一方、SOC値が減少傾向にある状況を考えてみると、「HV回転機12によるアシスト走行時間が多い。もしくは、車両1が上り坂または平坦地を走行中でありHV回転機12による回生が少ない。」などの状況が考えられる。
【0045】
これにより、値が図2の“0〜+c”側にある場合、SOC値は増加傾向にあるためバッテリ14の電力を消費したとしても直ちにSOC値の回復が図れる。よって、時間t1は長め(たとえばb(>a)分)でよい。一方、値が図2の“−c〜0”側にある場合、SOC値は減少傾向にあるためバッテリ14の電力の消費は控えてSOC値の減少を遅らせる必要がある。よって、時間t1は短め(たとえばa(<b)分)がよい。
【0046】
また、時間設定部34は、バッテリ14の温度に応じて時間tを演算する。バッテリ14の温度を変化させる要因としては、
(1)単位時間当りの電力消費量
(2)気温
(3)過充電または過放電
などが挙げられる。
【0047】
「(1)単位時間当りの電力消費量」は、電力消費量が多いほどバッテリ14の温度がより上昇する。「(2)気温」は、季節によって大きく変化し、日本国内では、冬場よりも夏場の方がバッテリ14の温度は高くなる。「(3)過充電または過放電」は、いずれの場合もバッテリ14の温度は高くなる。
【0048】
図3のグラフでは、横軸に温度p℃,q℃,r℃をとりp<q<rである。また、バッテリ14が許容する最高温度は、r℃よりもさらに高い温度である。また、バッテリ14が許容する最低温度は、p℃よりもさらに低い温度である。
【0049】
ここで、バッテリ14の温度が図3の“p℃〜q℃”側にある場合、バッテリ14の温度は比較的低いのでバッテリ14の電力を消費したとしても未だバッテリ14が許容する最高温度に達するまでには十分余裕がある。よって、時間tは長め(たとえばe(>d)分)でよい。一方、バッテリ14の温度が図3の“q℃〜r℃”側にある場合、バッテリ14の温度は比較的高いのでなるべくバッテリ14の電力消費量を抑えてバッテリ14の温度上昇を遅らせる必要がある。よって、時間tは短め(たとえばd(<e)分)がよい。
【0050】
このようにして時間設定部34は、時間t1およびt2を演算する。そして時間設定部34は、演算した時間t1およびt2のうち短い時間の方を実際のタイマ33に設定する時間tとする。
【0051】
すなわち、SOC変化量が“0〜+c”側であり、時間t1が比較的長く設定可能であってもバッテリ14の温度が高い場合(q℃〜r℃)、時間t2は比較的短くなる。もし、ここで、比較的長い方の時間t1を実際のタイマ33の設定時間tとした場合、バッテリ14の消費電力を抑えることができず、バッテリ14の温度はさらに上昇する。このような状況は、バッテリ14にとって好ましくない状況である。よって、このような場合は、比較的短い方の時間t2を設定時間tとする。
【0052】
反対に、SOC変化量が“−c〜0”側であり、時間t1を比較的短く設定する必要がある場合であってもバッテリ14の温度が低い場合(p℃〜q℃)、時間t2は比較的長くなる。もしここで、比較的長い方の時間tを実際のタイマ33の設定時間tとした場合、バッテリ14の消費電力を抑えることができず、バッテリ14のSOC値はさらに減少する。このような状況は、バッテリ14にとって好ましくない状況である。よって、このような場合は、比較的短い方の時間tを設定時間tとする。
【0053】
あるいは、SOC変化量が“−c〜0”側であり、時間t1を比較的短く設定する必要がある場合に、バッテリ14の温度が高い場合(q℃〜r℃)、時間t2もまた比較的短くなる。このような場合には、いずれの時間t1またはtを設定時間tとしても大きな問題はない。しかしながら、時間t1またはtのうちのいずれか小さい方を設定時間tとすることがバッテリ14の保護の安全側からみてさらに好ましい。
【0054】
また、SOC変化量が“0〜+c”側であり、時間t1を比較的長く設定可能である場合に、バッテリ14の温度が低い場合(p℃〜q℃)、時間t2もまた比較的長く設定可能である。このような場合には、いずれの時間t1またはtを設定時間tとしても大きな問題はない。しかしながら、時間t1またはtのうちのいずれか小さい方を設定時間tとすることがバッテリ14の保護の安全側からみてさらに好ましい。
【0055】
次に、電動クーラECU21の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
START:電動クーラECU21は、車両1のキースイッチがON状態になるとステップS1の処理へ移行する。
【0057】
ステップS1:電動クーラECU21は、エンジンECU11から伝達される制御情報に基づいて車両1がアイドルストップ状態か否かを判断する。すなわち、電動クーラECU21は、車両1がアイドルストップ状態であると判断する場合(ステップS1でYes)、ステップS2の処理へ移行する。一方、電動クーラECU21は、車両1がアイドルストップ状態でないと判断する場合(ステップS1でNo)、ステップS1の処理を繰り返し実行する。
【0058】
ステップS2:電動クーラECU21の時間設定部34は、電池ゲートウェイECU18のSOC記録部31から前回および今回のSOC値を取得してステップS3の処理へ移行する。
【0059】
ステップS3:電動クーラECU21の時間設定部34は、前回と今回のSOC値の比較結果に基づき時間t1を演算してステップS4の処理へ移行する。
【0060】
ステップS4:電動クーラECU21の時間設定部34は、電池ゲートウェイECU18の温度情報収集部32からバッテリ14の温度測定結果を取得してステップS5の処理へ移行する。
【0061】
ステップS5:電動クーラECU21の時間設定部34は、バッテリ14の温度測定結果に基づき時間tを演算してステップS6の処理へ移行する。
【0062】
ステップS6:電動クーラECU21の時間設定部34は、時間t1が時間tよりも長いか否かを判断する。すなわち、電動クーラECU21の時間設定部34は、時間t1が時間tよりも長い場合(ステップS6でYes)、ステップS7の処理へ移行する。一方、電動クーラECU21の時間設定部34は、時間t1が時間tよりも短い場合(ステップS6でNo)、ステップS8の処理へ移行する。
【0063】
ステップS7:電動クーラECU21の時間設定部34は、タイマ33の設定時間tを時間tに設定してステップS9の処理へ移行する。
【0064】
ステップS8:電動クーラECU21の時間設定部34は、タイマ33の設定時間tを時間t1に設定してステップS9の処理へ移行する。
【0065】
ステップS9:電動クーラECU21のタイマ33は、計時を開始してステップS10の処理へ移行する。
【0066】
ステップS10:電動クーラECU21は、エンジンECU11から伝達される制御情報に基づいてエンジン10が停止中であるか否かを判断する。すなわち、電動クーラECU21は、エンジン10が停止中である場合(ステップS10でYes)、ステップS11の処理へ移行する。一方、電動クーラECU21は、エンジン10が停止中でない場合(ステップS10でNo)、ステップS12の処理へ移行する。
【0067】
ステップS11:電動クーラECU21は、タイマ33がタイムアウトしたか否かを判断する。すなわち、電動クーラECU21は、タイマ33がタイムアウトした場合(ステップS11でYes)、ステップS13の処理へ移行する。一方、電動クーラECU21は、タイマ33が未だタイムアウトしていない場合(ステップS11でNo)、ステップS10の処理へ戻る。
【0068】
ステップS12:電動クーラECU21は、タイマ33をクリアしてステップS15の処理へ移行する。
【0069】
ステップS13:電動クーラECU21は、電動クーラ22を停止させてステップS14の処理へ移行する。
【0070】
ステップS14:電動クーラECU21は、エンジンECU11から伝達される制御情報に基づいてエンジン10が始動したか否かを判断する。すなわち、電動クーラECU21は、エンジン10が始動した場合(ステップS14でYes)、ステップS15の処理へ移行する。一方、電動クーラECU21は、エンジン10が未だ始動していない場合(ステップS14でNo)、ステップS10の処理へ戻る。
【0071】
ステップS15:電動クーラECU21は、電動クーラ22を起動させて処理を終了する(END)。
【0072】
(本発明の実施の形態に係る効果について)
車両1は、アイドルストップ状態を契機としてバッテリ14のSOC値を記録し、また、バッテリ14の温度を測定し、前回のSOC値の記録結果と今回のSOC値の記録結果とから導出されるSOC値の増加傾向または減少傾向に基づきタイマ33に時間を設定すると仮定した所定の時間t1を演算し、バッテリ14の温度の測定結果に基づきタイマ33に時間を設定すると仮定した所定の時間t2を演算し、時間t1または時間t2のうちのいずれか小さい方の時間をt時間として設定する。
【0073】
これにより、SOC値の増加傾向または減少傾向およびバッテリ14の温度の両面から最適なタイマ33の設定時間tを得ることができる。したがって、様々な車両1の運行状況に対応して最適なタイマ33の設定時間tを得ることができる。また、これにより、バッテリ14のSOC値を最適な値に保ちつつアイドルストップ中においても可能な限り電動クーラ22の運転を継続できる。したがって、車両1に搭乗するユーザが運転室内などの気温の上昇により不快な思いをする可能性を低減させることができる。
【0074】
(プログラムを用いた実施の形態について)
また、電池ゲートウェイECU18のSOC記録部31および温度情報収集部32の機能、および電動クーラECU21のタイマ33および時間設定部34の機能は、所定のプログラムにより動作する汎用の情報処理装置(CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)など)によって構成されてもよい。例えば、汎用の情報処理装置は、メモリ、CPU、入出力ポートなどを有する。汎用の情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、汎用の情報処理装置には、電池ゲートウェイECU18のSOC記録部31および温度情報収集部32の機能、および電動クーラECU21のタイマ33および時間設定部34の機能が実現される。また、その他の機能についてもソフトウェアにより実現可能な機能については汎用の情報処理装置とプログラムとによって実現することができる。
【0075】
なお、汎用の情報処理装置が実行する制御プログラムは、電池ゲートウェイECU18および電動クーラECU21の出荷前に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、電池ゲートウェイECU18および電動クーラECU21の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、制御プログラムの一部が、電池ゲートウェイECU18および電動クーラECU21の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。電池ゲートウェイECU18および電動クーラECU21の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶される制御プログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0076】
また、制御プログラムは、汎用の情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0077】
このように、汎用の情報処理装置とプログラムによって電池ゲートウェイECU18および電動クーラECU21の機能を実現することにより、大量生産や仕様変更(または設計変更)に対して柔軟に対応可能となる。
【0078】
(その他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り、様々に変更が可能である。たとえばSOC記録部31および温度情報収集部32は電池ゲートウェイECU18が有し、タイマ33および時間設定部34は電動クーラECU21が有するとして説明したが、これらSOC記録部31、温度情報収集部32、タイマ33および時間設定部34を集約して別個のECUを構成してもよい。
【0079】
また、SOC変化量を、[(今回記録したSOC値)−(前回記録したSOC値)]として説明したが[(今回記録したSOC値)/(前回記録したSOC値)]としてもよい。この場合には、(今回記録したSOC値)=(前回記録したSOC値)であれば“1”となり、SOC変化量が増加傾向である場合は“1”より大きな値となり、SOC変化量が減少傾向である場合は“1”より小さな値となる。あるいは、[(前回記録したSOC値)/(今回記録したSOC値)]としてもよい。この場合には、(前回記録したSOC値)=(今回記録したSOC値)であれば“1”となり、SOC変化量が増加傾向である場合は“1”より小さな値となり、SOC変化量が減少傾向である場合は“1”より大きな値となる。
【符号の説明】
【0080】
1…車両(ハイブリッド自動車)、10…エンジン、12…HV回転機(電動機)、14−1〜14−4…バッテリ、22−1,22−2…電動クーラ、30…温度センサ(温度測定手段の一部)、31…SOC記録部(充電状態値記録手段)、32…温度情報収集部(温度測定手段の一部)、33…タイマ(タイマ手段)、34…時間設定部(タイマ設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと電動機とが協働して走行し、上記電動機に電源を供給するバッテリからの電源の供給を受けて動作する電動クーラを有するハイブリッド自動車において、
上記電動クーラは、アイドルストップ状態においても運転が可能であり、
アイドルストップ状態が所定のt時間以上経過したときには、上記電動クーラの運転をいったん停止させるタイマ手段と、
アイドルストップ状態を契機として上記バッテリの充電状態を示す充電状態値を記録する充電状態値記録手段と、
上記バッテリの温度を測定する温度測定手段と、
上記充電状態値記録手段における前回の記録結果と今回の記録結果とから導出される上記充電状態値の増加傾向または減少傾向に基づき上記タイマ手段に時間を設定すると仮定した所定の時間t1を演算し、上記温度測定手段の測定結果に基づき上記タイマ手段に時間を設定すると仮定した所定の時間t2を演算し、上記時間t1または上記時間t2のうちのいずれか小さい方の時間を上記t時間として設定するタイマ設定手段と、
を有する、
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項2】
エンジンと電動機とが協働して走行し、上記電動機に電源を供給するバッテリからの電源の供給を受けて動作する電動クーラを有するハイブリッド自動車が実行する電動クーラの電源制御方法において、
上記電動クーラは、アイドルストップ状態においても運転が可能であり、
アイドルストップ状態が所定のt時間以上経過したときには、上記電動クーラの運転をいったん停止させるステップを実行するのに際し、
アイドルストップ状態を契機として上記バッテリの充電状態を示す充電状態値を記録する充電状態値記録ステップと、
上記バッテリの温度を測定する温度測定ステップと、
上記充電状態値記録ステップの処理における前回の記録結果と今回の記録結果とから導出される上記充電状態値の増加傾向または減少傾向に基づき上記いったん停止させるステップを実行すると仮定した所定の時間t1を演算し、上記温度測定ステップの測定結果に基づき上記いったん停止させるステップを実行すると仮定した所定の時間t2を演算し、上記時間t1または上記時間t2のうちのいずれか小さい方の時間を上記t時間として設定する時間設定ステップと、
を有する、
ことを特徴とする電動クーラの電源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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