説明

ハウジングと、該ハウジング内に配置された少なくとも1つの回転する部材とを備えた装置

本発明は、ハウジング(10,12)と、該ハウジング(10,12)内に配置された少なくとも1つの回転する部材(16,18)とを備えた装置であって、ハウジング(10,12)内に配置された少なくとも1つの回転する部材(16,18)が、半径方向及び軸方向又はそのいずれか一方の方向においてハウジング(10,12)内に支承されており、ハウジング(10,12)が軽金属、特にアルミニウム又はアルミニウム合金から成っており、ハウジングの少なくとも1つの部分(10,12)が、少なくとも部分的に、少なくとも1つの部材(16,18)の支承部を形成している形式のものに関する。このような形式の装置において、本発明の構成では、少なくとも1つのハウジング部分(10,12)が少なくとも、前記少なくとも1つの部材(16,18)のための支承部の領域に、ニッケル合金から成る被覆層(50)を備えていて、該被覆層(50)がその表面に、少なくともほぼ平らなミクロ構造を有しているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式の、ハウジングと、該ハウジング内に配置された少なくとも1つの回転する部材とを備えた装置に関する。
【0002】
このような形式の装置は、ドイツ連邦共和国特許公開第19625564号明細書に基づいて公知である。この装置は、内燃機関の燃料噴射装置用の歯車フィードポンプであり、ハウジングを有していて、このハウジング内に、回転駆動される一対の歯車が配置されている。歯車はハウジング内に半径方向及び軸方向において支承されている。ハウジングは例えばアルミニウムのような軽金属から成っている。ハウジングはピンを有していて、このピンには歯車が半径方向で支承されており、ハウジングの壁は、歯車のための軸方向における軸受つまりスラスト軸受を形成している。ハウジングの軽金属の硬度が低いことに基づいて、歯車フィードポンプの運転中に、強い摩耗が生じ、その結果歯車フィードポンプの耐用寿命が短くなってしまう。
【0003】
発明の利点
請求項1の特徴部に記載のように構成された本発明による装置には、次のような利点がある。すなわち本発明による装置では、ニッケル合金から成る被覆層によって、少なくとも1つの回転する部材の支承部における摩耗が僅かになり、ひいては装置の耐用寿命を延ばすことができる。
【0004】
本発明による装置の別の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。請求項3記載のように構成されていると、支承部の摩耗はさらに減じられる。
【0005】
図面
次に図面を参照しながら本発明の1実施例を説明する。
【0006】
図1は、歯車フィードポンプを分解して示す斜視図であり、
図2は、歯車フィードポンプを図3のII−II線に沿って断面して示す縦断面図であり、
図3は、歯車フィードポンプを図2のIII−III線に沿って断面して示す横断面図である。
【0007】
実施例の記載
図1〜図3に示された歯車フィードポンプの形の装置は、例えば、自動車の燃料タンクから内燃機関の燃料噴射装置の燃料高圧ポンプ又は燃料噴射ピストンに通じる搬送管路(図示せず)に配置されている。内燃機関は自己着火式の内燃機関であり、歯車フィードポンプによって搬送される燃料は、ディーゼル燃料である。歯車フィードポンプは複数部分から成るハウジングを有しており、このハウジングはハウジング部分10とカバー部分12とを有している。ハウジング部分10とカバー部分12との間にはポンプ室14が形成されており、このポンプ室14内には、外周部において互いに噛み合っている一対の歯車16,18が配置されている。ハウジング部分10はポンプ室14を形成するために、2つの凹設部20,22を有しており、両凹設部20,22の底部からは各1つの支承ピン24,26が突出している。支承ピン24,26はハウジング部分10と一体的に形成されていて、互いに少なくともほぼ平行に延びている。支承ピン24,26は、ハウジング部分10の重量を減じるために少なくとも部分的に中空に形成されていてもよい。歯車16は孔17を有しており、この孔17を介して支承ピン24に回転可能に支承されている。歯車18は孔19を有しており、この孔19を介して支承ピン26に回転可能に支承されている。支承ピン24,26は、歯車16,18のための各1つの回転軸線25,27を規定している。ポンプ室14は歯車16,18の回転軸線25,27の方向において一方では、ハウジング部分10の凹設部20,22の壁21,23によって、かつ他方ではカバー部分12の壁13によって画成されている。カバー部分12は、例えば複数のねじを用いてハウジング部分10と堅固に結合されている。ハウジング部分10及びカバー部分12は、軽金属、有利にはアルミニウム又はアルミニウム合金から成っている。歯車16,18は有利には鋼、有利には焼結鋼から成っている。
【0008】
歯車フィードポンプは駆動軸30を有しており、この駆動軸30はハウジング部分10に回転可能に支承されている。駆動軸30は、支承ピン24に対して少なくともほぼ同軸的に配置されており、この場合ハウジング部分10は孔を有していて、この孔は支承ピン24内において延長されていて、この孔を通って駆動軸30の端部は貫通している。孔と駆動軸30との間には、ハウジング部分10をシールするためにシャフトシールリングが取り付けられている。駆動軸30は、例えば支承ピン24の端部とカバー部分12との間に配置された連結部材36を介して、歯車30と連結されている。歯車16は歯車フィードポンプの運転時に駆動軸30を介して回転駆動され、そして歯車16はこの回転運動を、歯列(Stirnverzahnung)を介して、同様に歯列を備えていて歯車16とその外周部において噛み合っている歯車18に伝達する。歯車16,18はその歯の係合によってポンプ室14を、2つの部分領域に分割しており、両部分領域のうちの第1の部分領域は吸込み室40を形成し、かつ第2の部分領域は圧力室42を形成している。吸込み室40はこの場合、歯車16,18の周面における歯溝とポンプ室14の上側の周壁及び下側の周壁との間に形成された各1つの搬送通路44を介して、圧力室42と接続されている。吸込み室40及び圧力室42は、ハウジング部分10又はカバー部分12の壁に各1つの接続開口を有しており、この接続開口を介して吸込み室40は、燃料タンクから延びる吸込み管路(図示せず)と接続され、かつ圧力室42は、同様に図示されていない搬送管路を介して燃料高圧ポンプ又は燃料噴射ポンプの吸込み室と接続されている。吸込み室40における接続開口は入口開口を形成し、かつ圧力室42における接続開口は出口開口48を形成している。
【0009】
ハウジング部分10の支承ピン24,26は、歯車16,18のための半径方向支承部を形成し、歯車16,18の支承部の耐摩耗性を高めるために被覆層50を備えており、この被覆層50はニッケル合金から成っている。被覆層50は特にニッケル・リン酸合金から成っている。このニッケル・リン酸合金は少なくとも94%、有利には約95%のニッケルと最大6%、有利には約5%のリン酸とを含有している。の壁21,23とカバー部分12の壁13とは、歯車16,18のための軸方向における支承箇所を形成している。支承ピン24,26と択一的に又はそれに加えて、ハウジング部分10の壁21,23とカバー部分12の壁13とが、支承部の耐摩耗性を高めるために被覆層50を備えている。この被覆層50はその表面に少なくともほぼ平らなミクロ構造(Mikrostruktur)を有している。これによって、搬送される燃料によってしか潤滑されない場合や、混合摩擦(Mischreibung)、つまり歯車16,18と被覆層50との間における滑り摩擦の場合でも、被覆層50の特に高い耐摩耗性が得られる。従って被覆層50の表面はニッケルから成る公知の被覆層の表面とは大きく異なっており、公知の被覆層の表面は、凸凹のミクロ構造を、つまり、不規則に分配されたつぼみ状で球形の隆起部を備えたいわゆるカリフラワー構造を有している。被覆層50は、公知のものとは異なり、その平らなミクロ構造に基づいて、均一な層厚分布を有し、かつ表面には欠陥もしくは空隙をまったく又は僅かしか有していない。これによって被覆層50の微小硬度測定(Mikrohaertemessung)の再現可能性が改善されている。それというのは、微小硬度測定は被覆層の任意の箇所において実施することができ、しかも正確な結果を提供するからである。被覆層50は、検出可能な重金属添加物なしに、均一に輝く表面色を有している。重金属添加物が存在しないことに基づいて、歯車フィードポンプは現行の法規制に従ってリサイクル可能である。
【0010】
ハウジング部分10とカバー部分12とは、被覆層50を設ける前に特殊な形式で前処理され、被覆層50は化学的な被覆法で、ハウジング部分10及びカバー部分12の上に述べた領域に設けられる。以下においては前処理及び被覆層50の被着について詳しく述べる。まず初めにハウジング部分10及びカバー部分12は、洗浄又は前処理され、これは表面の活性化を目的として、酸浴、例えばプレマール浴(Premalbad)において、室温で約20〜60秒間行われる。次いでハウジング部分10及びカバー部分12は、単数又は複数回の洗浄過程において、超純水によって洗われる。次にハウジング部分10及びカバー部分12は、過硫酸塩溶液(Persulfatloesung)内に室温で、約45〜90秒間、浸漬され、これによって両部分10,12の表面は少なくとも部分的に酸化され、その結果酸化アルミニウムが形成される。次いで少なくとも1回、超純水による洗浄過程が行われる。次に部分10,12は亜鉛酸塩溶液(Zinkatloesung)内に20〜28℃の温度で、約20〜60秒間、浸漬される。亜鉛酸塩溶液内には亜鉛がイオン形で存在しており、そこから、元素の亜鉛が両部分10,12の表面に析出される。次に、少なくとも1回の超純水による洗浄過程が行われる。次いで両部分10,12は再び、既に述べたように、過硫酸塩溶液内に室温で、約45〜90秒間、浸漬され、これによって両部分10,12の表面は少なくとも部分的に酸化される。次に再び、少なくとも1回、超純水による洗浄過程が行われる。次いで両部分10,12はもう一度、亜鉛酸塩溶液内に20〜28℃の温度で、約20〜60秒間、浸漬され、その結果元素の亜鉛が両部分10,12の表面に析出される。次に、少なくとも1回の超純水による洗浄過程が行われる。両部分10,12の表面に付着した亜鉛は、次いで被着されるニッケル・リン酸合金のための結合層を形成する。両部分10,12はこの場合溶液内に28〜36℃で、約3〜10分間浸漬され、溶液にはイオン形のニッケルとオルト亜リン酸塩(Orthophosphit)とが含有されていて、この溶液からニッケル・リン酸合金が部分10,12の表面に析出される。その後で超純水によって少なくとも1回の洗浄過程が行われる。次いで部分10,12は溶液内に浸漬され、この溶液にはイオン形のニッケルとオルト亜リン酸塩が含有されていて、この溶液からニッケル・リン酸合金が部分10,12の表面に析出されるが、この場合部分10,12は約80〜90℃で、必要な層厚が得られるまでの時間、前記溶液に浸漬される。次に部分10,12の乾燥は第1段階において約55〜65℃の温度で約1.5〜3分間、脈動するもしくは断続的な送風によって行われ、第2段階では約55〜65℃の温度で約6〜15分間、高温空気によって行われる。次いで部分10,12はさらに約200〜220℃の温度に約1〜2時間加熱され、これによって被覆層50の硬度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】歯車フィードポンプを分解して示す斜視図である。
【図2】歯車フィードポンプを図3のII−II線に沿って断面して示す縦断面図である。
【図3】歯車フィードポンプを図2のIII−III線に沿って断面して示す横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10,12)と、該ハウジング(10,12)内に配置された少なくとも1つの回転する部材(16,18)とを備えた装置であって、前記少なくとも1つの部材(16,18)がハウジング(10,12)内に半径方向及び軸方向又はそのいずれか一方の方向において支承されており、ハウジング(10,12)が軽金属、特にアルミニウム又はアルミニウム合金から成っており、ハウジングの少なくとも1つの部分(10,12)が、少なくとも部分的に、少なくとも1つの部材(16,18)の支承部を形成している形式のものにおいて、少なくとも1つのハウジング部分(10,12)が少なくとも、前記少なくとも1つの部材(16,18)のための支承部の領域に、ニッケル合金から成る被覆層(50)を備えていて、該被覆層(50)がその表面に、少なくともほぼ平らなミクロ構造を有していることを特徴とする、ハウジングと、該ハウジング内に配置された少なくとも1つの回転する部材とを備えた装置。
【請求項2】
被覆層(50)がニッケル・リン酸合金から成っている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
被覆層(50)が温度処理によって硬度を高められている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
ハウジング部分(10)が少なくとも1つの支承ピン(24,26)を有していて、該支承ピン(24,26)に前記少なくとも1つの部材(16,18)が半径方向で支承されており、少なくとも1つの支承ピン(24,26)がその表面に被覆層(50)を備えている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
ハウジング部分(10,12)が、前記少なくとも1つの部材(16,18)の回転軸線(25,27)に対して少なくともほぼ垂直に配置された壁(21,23;15)を有しており、該壁(21,23;15)が、前記少なくとも1つの部材(16,18)の軸方向の軸受つまりスラスト軸受を形成していて、少なくともハウジング部分(10,12)の壁(21,23;15)が被覆層(50)を備えている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
装置がポンプであり、前記少なくとも1つの部材(16,18)がポンプの搬送エレメントである、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
ポンプが歯車ポンプであり、少なくとも1つの搬送エレメント(16,18)が歯車である、請求項6記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−504892(P2006−504892A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547373(P2004−547373)
【出願日】平成15年7月4日(2003.7.4)
【国際出願番号】PCT/DE2003/002241
【国際公開番号】WO2004/040139
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】