説明

ハウジング形管継手

【課題】本発明は、配管内部が正圧の場合だけでなく、負圧になったとしても十分にシール性を維持できるハウジング形管継手を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係るハウジング形管継手1は、全体として環状のハウジング10と、環状弾性体からなるガスケット20とを備えている。ガスケット20は、周方向に垂直な断面が、内側が開放端となるほぼコの字形をしており、両先端部分には、内側へ張り出した内側張出部20aと外側へ張り出した外側張出部20bとが形成されている。ガスケット20は、接続される2つの配管50の双方に跨って両接続端部の外周面に装着される。ハウジング10は、ガスケット20を配管50に押圧しながらガスケット20を覆うように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を通す配管を接続するための管継手に関し、特に、ハウジング式の管継手であるハウジング形管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々のハウジング形管継手が提供されている。図4に従来のハウジング形管継手の構成を示す。同図に示すように、ハウジング形管継手100は、一対のハウジング101a,101bと、ガスケット102から構成される。ガスケット102は、相互に対向して突き合わせた接続すべき2本の配管110の双方の端部に跨って装着・配置される環状の弾性体である。ハウジング101a,101bは、それぞれ半環状の部材であり、ガスケット102を挟持するように互いに対向して配置され、両端部がボルトとナットで締結されている。
【0003】
このようなハウジング形管継手は、接続部に弾性体であるガスケットを介しており、配管のたわみや収縮を吸収することができるといった利点がある。従来のハウジング形管継手は、例えば、下記特許文献1乃至3に開示されている。
【特許文献1】特開2000−240868号公報
【特許文献2】特開2003−42361号公報
【特許文献3】特開2007−78052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のハウジング形管継手100に用いられる環状のガスケット102は、図4に示すように、周方向に垂直な断面がほぼコの字形になると共に、配管110と接触するコの字形の先端において内側へ張り出す張出部102aが形成されている。
【0005】
このような構成において、配管110内部が正圧の場合には、図5(a)に示すように、ガスケット102がハウジング101の内面及び配管110の端部表面に密着することで、シール性を担保し、流体の漏れを防止している。特に、ガスケット102のコの字形先端部分の内側に張り出した張出部102aは、配管110の端部表面に密着し、ハウジング101と配管110との隙間からの漏れを確実に防止している。
【0006】
しかし、配管内部が負圧になった場合、ガスケット102は内側に向けて押圧される。すなわち、図5(b)に示すように、ガスケット102のコの字形先端部分が内側に持ち上げられるようになり、配管に密着している張出部102aが配管から剥がされるように持ち上がってしまう。そして、負圧が大きくなると、完全に張出部102aが浮き上がってしまい、流体が漏れてしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、配管内部が正圧の場合だけでなく、負圧になったとしても十分にシール性を維持できるハウジング形管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るハウジング形管継手は、配管を接続するためのハウジング形管継手において、突き合わされた2つの配管の双方に跨って両接続端部の外周面に装着される環状弾性体からなるガスケットであって、周方向に直交する断面において、内側が開放端となるほぼコの字形であると共に、前記2つの配管の外周面に接触する両端部に、内側に張り出した内側張出部と外側に張り出した外側張出部がそれぞれ形成されたガスケットと、前記ガスケットを前記配管へ押圧しながら、前記ガスケットを覆うように配置される環状のハウジングと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るハウジング形管継手によれば、配管内部が負圧になったとしても十分にシール性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、図1及び図2に基づいて、本実施形態に係るハウジング形管継手の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るハウジング形管継手の構成を示す展開斜視図である。図2は、本実施形態に係るハウジング形管継手の構成を示す断面図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、ハウジング形管継手1は、ハウジング10とガスケット20とを備えている。ハウジング10は、一対のハウジング本体10a,10b、ハウジング本体10a,10bの両端部を対向させて締結する二組のボルト15及びナット16を備えている。
【0012】
ハウジング本体10a,10bは、それぞれ半環状のステンレス製部材であり、円周方向に垂直な断面が、内側が開放端となるコの字形となっている。このハウジング本体10a,10bに囲まれた内部に、ガスケット20が収容されることになる。
【0013】
ハウジング本体10a,10bの両端部には、ほぼ180度外側に折り曲げられて張り出した張出部11が形成されている。この張出部11の中央には、ボルト穴12が形成されており、一対のハウジング本体10a,10bを対向配置した際には、双方のボルト穴12が直線上に連通する。したがって、このボルト穴12にボルト15を挿入してナット16で締結・固定することで、全体として環状のハウジング10を構成することができる。
【0014】
配管50の接続端近傍の外表面には、環状の凹溝51が形成されている。この凹溝51には、ハウジング10を設置した際に、ハウジング本体10a,10bのコの字形先端部がちょうど嵌るように構成されている。このように、凹溝51にハウジング本体10a,10bの先端を嵌めることで、配管50に対するハウジング形管継手1の固定を強固にすると共に、シール性も向上させることができる。
【0015】
ガスケット20は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製の環状弾性体であり、周方向に垂直な断面が、内側が開放端となるほぼコの字形となっている。ガスケット20の両先端部分には、内側へ張り出した内側張出部20aと外側へ張り出した外側張出部20bとが形成されており、ガスケット20の両先端部分は逆T字形となっている。そして、ガスケット20を設置する際には、内側張出部20aから外側張出部20bとつながる外表面(環状のガスケット20の内側表面)が、配管50の端部表面に密着することになる。
【0016】
このような構成のハウジング形管継手1を用いて配管50を接続する際には、まず、2つの配管50,50を直線上に並べて互いの接続端部を突き合わせる。このとき、環状のガスケット20の一方側の張出部20a,20bを一方の配管50の端部に被せておき、他方の配管50をガスケット20の他方の張出部20a,20b内に挿入するようにすれば良い。なお、図2に示すように、2つの配管50を若干の隙間を空けて付き合わせた状態としておけば、配管の伸縮や曲がりをハウジング形管継手1により吸収できる。
【0017】
このようにして、ガスケット20を、接続される2つの配管50の双方に跨って、両接続端部の外周面に装着した後に、ガスケット20を配管50に押圧しながら覆うように、ハウジング本体10a,10bを互いに突き合わせて配置する。そして、ハウジング本体10a,10bの各張出部11,11どうしを、ボルト15及びナット16によって締結すれば、ハウジング形管継手1の設置が完了し、2つの配管50,50がシール性を保って接続される。
【0018】
以上、本実施形態に係るハウジング形管継手1の構成について説明したが、以下、ハウジング形管継手1で接続した配管50内が正圧になった場合と、負圧になった場合の作用について図面を参照しながら説明する。図3は、配管内の圧力が変化した際のガスケットの変形態様を示す断面図であり、図3(a)は、配管内が正圧の場合の断面図、図3(b)は、配管内が負圧の場合の断面図である。
【0019】
図3(a)に示すように、配管50内が正圧の場合には、外気圧よりも配管50内の圧力が高くなるため、ガスケット20が外へ膨張するように変形する。このとき、ガスケット20の壁が外側に変形しても、張出部20a,20bの外表面がしっかりと配管50の接続端部表面に密着しているため、配管50接続部分のシール性が確実に担保されている。
【0020】
一方、図3(b)に示すように、配管50内が負圧になった場合には、外気圧よりも配管50内の圧力が低くなるため、ガスケット20が内へ収縮するように変形する。このとき、ガスケット20の壁が内側に変形しても、張出部20a,20bの内側表面がしっかりと配管50の接続端部表面に密着したままとなっているので、配管50接続部分のシール性を確実に担保できている。
【0021】
以上、本実施形態に係るハウジング形管継手1について説明したが、本実施形態によれば、環状弾性体であるガスケット20の配管50と接触する端部に、内側に張り出す内側張出部20aと、外側に張り出す外側張出部20bとの双方を形成したので、配管50内部が負圧になって、ガスケット20の側壁が内側に引っ張られても、張出部20a,20bが確実に配管50の接続端部外表面に密着し、漏れを防止することができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、本実施形態に係るハウジングやガスケットの材料は適宜他の材料を用いることができる。本実施形態では、ガスケットの材料として、EPDMを用いたが、弾性材料であれば、シリコンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムを用いても良い。
【0023】
また、ハウジングの構成も、2つの半環部材を突き合わせだけでなく、3つの1/3環部材からなるハウジングであっても良く、ガスケットを配管へ押圧しながらガスケットを覆うことのできる部材であれば良い。
【0024】
また、本実施形態では、ガスケットの形状を、周方向に直交する断面が、内側が開放端となるほぼコの字形としているが、ほぼコの字形には、U字形やC字形等ももちろん含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本実施形態に係るハウジング形管継手の構成を示す展開斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るハウジング形管継手の構成を示す断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る配管内の圧力が変化した際のガスケットの変形態様を示す断面図である。
【図4】図4は、従来のハウジング形管継手の構成を示す断面図である。
【図5】図5は、従来のハウジング形管継手における配管内の圧力が変化した際のガスケットの変形態様を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ハウジング形管継手
10 ハウジング
20 ガスケット
20a 内側張出部
20b 外側張出部
50 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を接続するためのハウジング形管継手において、
突き合わされた2つの配管の双方に跨って両接続端部の外周面に装着される環状弾性体からなるガスケットであって、周方向に直交する断面において、内側が開放端となるほぼコの字形であると共に、前記2つの配管の外周面に接触する両端部に、内側に張り出した内側張出部と外側に張り出した外側張出部がそれぞれ形成されたガスケットと、
前記ガスケットを前記配管へ押圧しながら、前記ガスケットを覆うように配置される環状のハウジングと、
を備えることを特徴とするハウジング形管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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